時間 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1972年4月号
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1. SFマガジン 1972年4月号

( 万年前 ) は漸新世だ。中新世には、一部の学者が人 小説なんかはいかにもみみっちいし、時計新世代は、第三紀と第四紀にわかれる。 とカレンダーでこまぎれにされた、一見合第三紀は、暁新世 ( 七五〇〇万年 ~ ) 、始類に入れている、身長一三〇センチほどの 理的な生活に、疑問のわく瞬間もある。べ新世 ( 六〇〇〇万年 ) 、漸新世 ( 四〇〇〇オレオビテクス ( 一五〇〇 ~ 五〇〇万年 つに、現実から逃避しようというのではな万年 ~ ) 、中新世 ( 二八〇〇万年 ~ ) 、鮮新前 ) が出てくる。 。むしろ、現在を認識するためには、遠世 ( 一二〇〇万年 ~ ) で、そのあとに、二第四紀になると、猿人・オーストラロビ くから眺めた、長い年月の出来事を考える〇〇万年前からはじまる第四紀がつづくわテクスがあらわれる。故郷はアフリカ、時 必要もあるだろう、というのである。 けだ。これは洪積世と沖積世からなるが、 代は洪積世の早期で、万国博のタンザニア 宇宙的な規模の巨大な時間、地球の誕生人類の発生に関係の深い洪積世は、四つば館に頭蓋骨が出品されていたジンジャント と長い地質学的な過去・ーーライエルによるかりに大別される。 ロ。フス ( 一七〇万年前 ) もこの仲間だ。と 第一紀 ~ 第四紀、フィリツ。フスの古世代 ~ ころでこの猿人、道具を使った形跡がある すなわち、早期 ( ビラフランカ期など ) 、 新世代。それらは、目の粗い過去の時間尺前期 ( ギ = ンツ氷期や第一間氷期 ) 、中期が、菜食主義者のパラントロプスと、なん であり、また叙事詩そのものだ。全部を記 ( ミンデル氷期、第三間氷期、リス氷期なでも食うテラントロ。フスにわかれ、後者に 述していたらきりがないが、せめて、新世ど ) 、後期 ( 第三間氷期やビュルム氷期 ) は。ヒテカントロ。フスへの移行があったらし などである。 代以後だけでも眺めてみよう。 、。。ヒテカントロプスの出現は五〇万年 これらはすべて旧石器文化の時代であ前、火を使った ( 北京の ) シナントロ。フス り、その後に、一万年前からはじも同じ仲間で、現在の学名はホモ・エレク まる沖積世がっ・つく。それらは、 トスだ。これらは原人と呼ばれており、故 一種の時間尺上の目盛りとして使郷はアジアかアフリカだ。 し うことができるし、このあたりま もっと人間くさくなるのは第三間氷期 ま らでくると、文化人類学的な過去との、旧人と呼ばれるネアンデルタール人か のなってくるが、さて・ほくらのご先らである。ソロ人やローデシア人もこの変 祖は、地質時代のあいだに、どこ種とみられ、旧人はサビエンス種のなかに ま 生でどんなに変化していっただろう入れられている。彼らは最後の第四氷期に 世期期期期世世世世世 絶減したと思われていたが、じつはかなり 積 後中前早新新新新新二一人 の多様性をもっており、西アジアでは、」 沖洪積世鮮中漸始暁第第 かなり単純に割りきって、模式部が新人・クロマニョン人や現生人類へと 第四紀 第三紀代代表 的に述べてみると、第三紀の暁新移行したらしい。クロマニョン人が生存し 中 世に最初の霊長類があらわれた。 新生代 ていた洪積世の末期は苛酷な気候の時代だ ヒト科に関係の深い狭鼻類の出現ったが、この頃すでに、白・黒・黄の人種 新人 1 旧人 100 猿人 200 1200 人と猿 2800 の祖先 4000 6000 7500 霊長類

2. SFマガジン 1972年4月号

必要補給物資のリストを持って帰る。そしてそれらの補給物資を夏ノしよっくニタエルダケノ体力ガデキティナケレ・ハナラナイ の間に溜った郵便物や学術雑誌といってよい、河川の凍結する少し手術のショックとは、苦痛をも意味するのである。 前に運んで来るのだった。 二度目の猛吹雪がおそって来た。この季節にはどのみち、一日に 夏の間に多分一度か二度ぐらい、そして時には冬期に一度ぐら陽の射す時間は三時間ほどしかなかったが、しかし吹雪の吹き荒れ い、誰か他人が彼の住居にとどまることがある。しかしそこに二度ている間には、極地の暗い夜と、青白い昼とは何んらの差異もなく と訪れる者は極めて稀だった。ダニル教授は人好きのする人物では なるのだった。風があまりたけだけしく荒れ狂うので、ダ - ニルは屋 なく、自分より知的に劣った者に対しては、とことんまでに嘲弄的内にとどまった。二日間に一一度だけ彼は死に物狂いで戸外の大舎ま だったからだ。彼は人間社会を欲しなかったし、また誰をも必要とで行き、大たちに食物を与えた。三日めに彼は仔犬たちのなかの一 しないという態度をはっきりと表現していたのである。 匹を住居に持って帰ろうとした。早く実験を開始したいという願望 ー・テ イミンズでさえ、補給物資を運んで来た時には、河岸にたえられなくなったのだ。彼は仔大が外科的処置の第一日めにさ にキャンプして夜を明かした。知的に劣った他の人間たちとの接触え生抜けられるとは思ってはいなかった。しかしそれでも、他の仔 を避けるために、ダニル教授は薪さえも自分でつくるまでに、他人犬たちの実験の時に役立つような、ある種の細々とした知識が得ら にたよらない性格になっていた。寒気から二重に絶縁した、 , 彼の極れないともかぎらない : 彼が仔大に手をのばした時、デーナは吠え声と唸り声の中間にあ 地用家屋でも、かなりな量の燃料を必要としたのだが。 たるような一種の声をだした。ダニル教授は牝大に陰気に笑いかけ 四、五日連続して、彼は薪づくりに専念した。丸一日、鋸をひい た。彼は手をひっこめたが、それも少しの間だった。 たこともあった。仔犬の実験を始めたら、余分の時間がほとんどな くなることを彼は知っていたので、時期が来るまでに相当余分に薪「結局のところ」と彼は言った。「お前をつくったのはこのわしな んだ、デーナ ! わしはお前の仔どもたちをどうしようと勝手なん をつくっておかなければならなかったのだ。しかし彼はひどく、 らいらして来始めた。 彼は左手を毛皮上着のポケットにつつこんだ。彼の右手がまたも ″実ニイラダタシイコトダ″と彼はノートブックに書きつけた。 ″仔大タチがマダ幼イ時ニ実験ガデキナイトハ。明ラカニ、実験のびてきた。 ヲ始メルノガ早イホド、ソレダケ早ク、学習能力ノナイ、成犬頭蓋デーナはその手首にガッチリと噛みついた。怒りの音声を発しな 形状へノ変化ヲ阻止スルコトガデキルノダ。頭蓋形状ノ成長が終了がら、噛みつけてはなさなかった。しかし手を噛み砕いたりは、な シタ時、ソレガ幼児型デアレ・ハアルホド、心ノ受容力ハ大キクナぜかしなかった。ダニルは冷やかな、それでいて激しい怒りにから リ、シタガッテ知能モ高クナル : : シカシ満足 / ュク結果ヲ得ルタれた。 / 。 彼ま今までにもこういった激怒の発作を起して、実験をだい メニ ( 創傷ヲックルコトガ必要デアリ、シタガッテ実験材料ハ手術なしにしたことが数々あった。しかし彼には自分のそういった怒り け 8

3. SFマガジン 1972年4月号

酔いは、自分の寝ぐらにもどってからまわ「てきた。青い焔石。枚の紙片となる。折りたたまれて、しまいこまれる。は起きあが 0 た。外はもう暑くな 0 ている。は仕事場〈出掛ける。石機械が 8 は今日一日中、ほとんど喋らなかったことに気づいた。人間は、 一生の間にどのくらい言葉を話すのだろうか。このアルセ 0 ナでごとんごとんと音をたててまわりはじめた。不思議なメカニズム。 は、数えられるほどわずかだろう。石の沈黙が、美徳とされている石機械はひとりでまわる。 な・せ。どんなメカ = ズムで動くのか誰も知らない。誰も知ろうと この街では。は、石の寝台に身を横たえて、ねむろうとした。い い夢をみよう。その世界には時間の重圧はない。時間は軽やかに流はしない。風が吹くように、それも自然現象なのだ。粉引場の石日 。丘や街があるよ もそうだ。それはただ、回るのである。ただ : れていくのだ。少なくとも、あのすりへっていく時間はないのだ。 うに、それは在る。太陽が東より昇り西に沈むようにあたり前のこ は眠りに入った。 と、また例の砂時計が姿をあらわした。ここでは、砂時計は世界とである。星辰がめぐるように回転する。石機械は自然と同じこと を支配している。砂時計の時間は世界の時間なのだ。砂時計は世界なのであ 0 た。それ以外ではない。物は上より下〈おちる。水は高 きより低きに流れる。な・せと問う必要はない。太陽が西より東へめ 時間そのものなのだ。砂時計は支配者だ。砂時計の意志によって、 世界は動かされている。砂時計は時間をすりつぶしていた。「ほぐることがないように、きめられている。これが自然なので、全て ら、こんなにすりへらした」とうそぶいているかのように。死んだが調和しているのであると、教えられている。それを乱すことは、 時間が、下の方の透明な壺にたまる。死骸になった時間。まるで、大いなる摂理にそむくことなのだ。人々は、このアルセロナに生ま 死んだ殻虫の殻みたいだ。もう生きている上の方の時間はのこり少れ育ち住むかぎり、これで十分であ 0 た。石機械はレ・ ( 1 を入れる ない。しかし、とめようがないのだ : ・ : ・。夢の中の意識は、醒めきと回わり、外すと止るのであ 0 た。石機械がそれにそむいたことは っている。冷静に、その石鐘楼の砂時計を眺めているのだ。の目なかった は、アルセロナの街の外にあった。上の方の時間が、すっかり無く石機械は、はじめは苦し気にきしみ、それから一定の速度で、ご な 0 たとき、一体何がおこるのだろうか。は好奇心をも 0 て眺めとごとと回わりだした。やがて、日射しが岩のひさしにあた 0 てつ くる影の線が、短かくなっていき、しるしをつけられた場所にくる ている。は虚無と化しているのは憎悪だろうか。嫉妬だろうか。 ときまで、まわりつづけた。それまでに、石が幾枚か切られ、・午前 一切を虚無へひきずりこみたい。あの娘もふくめた、 呪いか : はおわる。いつものように広場に、水売りがやってきて、石工たち このアルセロナの街を。夢の世界に、虚無の風が吹きぬけていく : ・ は水をかい、粉を練って食事をすませると、ごろりと横になって午 目覚める。は、夢の中で果しおえた欲望の痕跡に気づいた。ア睡に入るのだ 0 た。 フ 0 デを自分のものとしたのだ。詳しくは思い出せない。は無意珍らしくは、自分の穴倉にはもどらなか 0 た。詰所は薄暗いま 識の井戸にいそいでふたをする。幻想の世界は光を失 0 ている。一ま、ひんやりとしている。岩膚の部分は、ごっごっとして、ところ

4. SFマガジン 1972年4月号

「はい。危険ですから、もっとも安全な岩体の中央部につくってあ女の知的な欲望は、広い世界を強く求めていた。彼女の物質的な欲 ります。油は一旦、加熱してから精製します。そのとき油かすを除望と権力への意志は、世界の征覇を狙っていた。古代帝国の再建 2 は、セミラミス女皇陛下の手によってなしとげられるのだ。 去します」 そのような野望が、あのとき、やさしくを招き入れた、美貌の 「いいですね。砲塔は回転しますか」 : ・。だがそれは、彼女の罪では 女皇の心の中にひそんでいたとは : 「ええ、あらゆる方角に : : : 」 女皇は満足して目を細めた。彼女自身が、この空中機に乗りこんないのだ。人間という生物は、本質的に、また本性的そのように運 で、直接、指揮をとるつもりなのだ。だがなぜ : ・ : ・。彼の腕に抱か命づけられているのだろう。それは、どんな平凡な人間の心の中に 。も、何らかの型で巣食っているのだろう。権力を手に入れたとき、 るときは、いつも世界の終末におそれおののく彼女がなぜ : ・ にはわからなかった。女の本性が持っ複雑さのためだろうか。おそ人間は変わってしまうのだろう。 らく彼女自身にもわからなかっただろう。 しかし、なんと一切がちつぼけで無意味にみえることか。は、 打合せがおわって、女皇はいった。「早速、建造にとりかかるよまた、あの時間が、粉つばくすりへっていく感覚にとらわれてい う、軍長官に伝えます。国中の石工を動員すれば、数ヶ月以内に完た。それは解決のしようのないこと、そして彼が生きているという そのこと自身なのだった。いま、が、この架空庭園の中にとらわ 成するでしよう。その間にわたしは、僧院側を説得いたします」 は一礼して、女皇のもとを辞した。何の喜びもない。 れているように、は時間の檻の中にとらえられているのだった。 いま小鳥がさえずっている。時間は、非情の流れを流れつづけている。意味もなく、ただ流れて 青い空。いま風が乾いている。 いるのだ。大きな流れだ。の存在そのものにくみ入れ、さらにそ は、白い石段をおりていった。幾層かの回廊が、さらにその内側を めぐっている。そのところどころに、手入れのいきとどいた芝生やの他諸々のありとあらゆる存在をくみ入れて流れているのだ。その ことをは、いまはっきりと悟らされている。 白い休憩室がもうけられていた。 いまも砂をおとしつづけているのだが、 石鐘楼の砂時計は、 は水辺におりていった。朝夕の雑役から解放された女たちが、 は、その意味するものを考えていたのだ。それは、明らかにあるも そこでたわむれている光景を眺めつつ、物想いにふけるために。 石機械はとぶだろう。には確信があった。それは無敵の空中戦ののモ一 : メントなのだ。だが、何を示し、何を象徴しているのだ 艦となるはずだった。そしてアルセロナは、これによって強大な武ろうか。何ゆえに、それが造られたのだろうか。 器を手に入れることになるのだ。もはや、岩砂漠の中で、人目をし奴隷たちは、水辺の繁みに・腰をおろしているには気づかぬの のぶように、細々と生きつづける必要もなくなるのだ。過去の栄光か、誰はばかることのない奔放な姿態をみせていた。自然 : : : 。自 然そのものの姿をみせていた。鳥やけものや石と同じように。ふだ を回復することもできるのだ。 には、女皇の抱いている野心が手にとるように理解できた。彼んはおおい隠されている部分さえあらわに現われていた。その間に ピッチ

5. SFマガジン 1972年4月号

ひろげるようになってから、二十四年たっ」 最後にまわすことにした。時間は無駄にできないが、シカゴのほう 「くそっ」クリスは長怖の表情でいった。そして慎重に間をおく は、フリーダがディリーとスモッグ・マシーンの後始末をやってく と、たずねた、「では宇宙からの侵略者とわかったところで教えてれているし、正直にいって、時間などくそくらえだ ! もしかする クリス ほしいんですか、スパイダーは〈理性抹殺を目的とする兇悪残忍と、これがスパイダーとの最後の対決になるかもしれない。 な侵略者〉 (Scabrous, Predatory lnvaders Determined 5 Elimi ・ はヒルトップを呼びだし、自分が計画の残り七項目をとことん根絶 やしにするつもりでいること、ウォーレスが射程にはいるのはクリ nate Rationality) のことですか ? 」 ディリーはまじまじと見つめた。「わたしに聞かんでくれ。そんスマス季節になることを報告した。ぎりぎりまで仕事を抱えてしま うわけだが、工場はポポが立派にとりしきってくれているはずだっ なことは、だれも知らん」 そして台座からとびおりると、発電所のドアにむかって駆けだした。それに、やるべきことは : : : やってしまわねばならない。相当 た。クリスはそのうしろ姿を見送ったのち、かなてこを拾うと、スめんどうな仕事になるだろう。彼は北極海のわが家に思いをはせ モッグ・マシーンの破壊にとりかかった。潰れ、ねじまがった残骸た。唸りをあげる幸せいつばいのおもちや工場、そしてことに、彼 のなかで、汗みずくの作業が終わったとき、彼は開いた戸口に立ちがをたつぶりしみこませた角砂糖をきしだすと、掌に鼻をす つくしているディリーに気付いた。 りよせてくるプリツツェン、ラリった母猫たちのはしゃぎよう。 「何か用ですか ? 」と、彼はきいた。 やがて彼は、心のなかからそうした幸福な時間と涼しい気候をふ ディリーは希望に満ちた徴笑をうかべた。 りはらうと、スパイダー打倒の決意を固めた。そして残り七人を順 ぐりにかたづけはじめた。 「いや。見物しているだけさ。こうして真人間にかえったら、わた しのでたらめで野蛮な暴力の最後の標本を見たくなった。これから のシカゴは平穏な都市になるだろう」 丿ーガンーーーカリフォルニア州カマリロ 「がんばってくださいよ、市長さん」クリスは感情をこめていっ こ 0 精神科医のおせつかいが必要なものはこの州にはひとりもいない という反証の余地ない論拠から ( 「それはみんな各人の頭のなかの 〈八項目計画〉を締めくくる鍵は、アラ・ハマにあるようだった。ウ問題だ ! 」一皿五百ドルの在郷軍人会連盟夕食会の席上で、 オーレスである。だがウォーレスは遊説に出かけており、計画を締ンがそうぶったのは、わずか六カ月前のことである ) 州立精神病院 めくくるためには、どうやら彼の特別な手腕 ( それを可能にするのをすべて閉鎖してしまったリーガンは、カマリロの打ち捨てられた は彼の頭のなかにいるスパイダーエ作員のさらにデリケートな手腕施設の一階男子用トイレットで、オールバックの髪をとかしている 9 である ) がなくてはいけないらしかった。クリスは、ウォーレスをところをクリスにおさえられた。

6. SFマガジン 1972年4月号

つまり彼は、生命にかんする全部の歴史らぬほどの遠い過去である。 も、解きあかすことはできないのだ。 を、一年という長さにおきかえてみたの新世代の開始は十一一月の中旬になってか だ。地球における生命史を、ごくひかえ目らで、その月の最後の週に哺乳類がはびこ未来の時間尺 に一二億年として、一ヶ月を一億年にみた りだす。そして、十二月三十一日の二十時明日以後の世界ーーそれはトムゼン式 てたわけだが、最初の六ヶ月はなにもわかに第四紀がはしまり、二十一時にビテカン に、用いる道具によって石器・青銅器・鉄 トロプスがジャワの森林に増えはじめ、二器時代とたどってゆけば、「。フラスチック 十三時、最後の一時間になってネアンデル時代」式に延長することができるかもしれ タール人があらわれる。現生人類の出現ない。また、化石人類の例にならって、フ は、最後の十五分だ。 ィリップス流に表現すれば未世代とでもい 二十三時五十七分、やっとエジプトで有うところか。ライエル式の数字を使えば、 来 史時代の幕が開かれようとし、最後の九秒第四紀以後、第五紀のようなものになるか 来 のところで西暦がはじまり、経済人間ホもしれないが、人類は人工環境を作ること の モ・エコノミクスが活躍するのは、一秒以 によって、もうパラ第四紀に入っていると 下の範囲内・ : これらは、生命の歴史をもいえるだろう。 元 次尺十二億年としてのことだが、最近の計算で だが、未来予測の手掛りとして、比較的 間 は、二十数億年と考えられているから、人 よくひきあいにだされるのは、梅棹忠夫京 時 未年 の間の歴史は、もっと短いものとして表現し大教授の、一〇号ベキ数による方法である。 中千 未なければならなくなるだろう。 すなわち、現未来 ( 十年 ) 、近未来 ( 百年 ) 、 だが他方、人類はまもなく絶減してしま中未来 ( 千年 ) 、遠未来 ( 一万年 ) といっ 来 図うにちがいない、という証拠もないのだ。 たオーダーの区切りだ。そして、現未来は いままでに流布されてきた、うんざりする社会学や経済学の手法で扱い、近未来は歴 ほどたくさんの悲観論や終末論にもかかわ史学的方法、中未来は文化人類学、遠未来 らす、現在までのところ、地球も人類も安は地質学的な方法で扱えるのではないか、 泰だった。そして、『四万時間』のなかでというものである。ちょうど、過去につい 来 フーラスティエは、ぼくらの子孫が、一〇て調べた手順を、現在を原点として未来へ 万ないし五〇万年以内に消減するおそれが投影したようなものと思えばよいが、これ にも欠点がないわけじゃあない。その一つ あるとは考えられぬ、というのである。 だが、それについて考えぬかぎり、種属は、遠未来というのが、ひどく近すぎるこロ の寿命の針の動きも、個体の不死性の問題とだ。この梅棹式未来尺を延長しても、一 27 の未来 28 の未来 21 。の未来 22 。の未来 次元 A の未来 (B)

7. SFマガジン 1972年4月号

「タンクは排出をつづけていました。彼はわたくしにこう言いましり断罪者である代訴官の腕にかかえられていた。粉のふりかかるよ た。『わたしを許してくれるだろうね、ライナ。なぜなら、わたしうな迫りくる夜の静けさの中で、ライナはセンフの体を吐息の影に 7 も同胞を愛しているからだ。どこの世界、いつの時代に住む人びとおろした。 をも。愛さなくてはならない。こんな非人間的な分野にたずさわっ 「な・せきみはあのときわたしをとめた ? 」口をもった皺がいった。 ていると、それだけが頼みの綱だ。だから、わたしを許してくれる ライナは殺到する闇のほうへ目をそらした。 ね』それから、彼は干渉行為を犯したのです」 「な・せだ ? 」 委員会の六十名のメン・ハー ことセンターの中に、まだチャンスがあるからだよ」 、このセンターに存在する各種族の代「ここ、 表ーー・鳥人と青い生きものと巨頭人のふるえる繊毛を持ったオレン 「そして、彼らには、外にいる彼らのぜんぶには : : : もう永久にチ ジの匂いとーー・彼らの全員が漂うセンフを見つめた。センフの頭もャンスがないのか ? 」 胴体も、茶色の紙袋のように皺くちゃだった。毛髪は一本もない。 ライナは両手を金色のもやの中に掘り沈めながらゆっくりと坐り 目は鈍く白茶けている。素裸で、きらきらと光りながら、彼はわずそれを彼の手首の上でふるいにかけて、世界の待ちうける肉の中へ かに横のほうへと漂っていった。と、壁のない広間に起こった気まもどした。「もし、われわれでここでそれに着手できたら、そし ぐれな微風が、彼をもとの位置へ吹きもどした。センフは自分自身て、もしこの境界を外へ押しひろげていくことができたら、たぶん を排出にかけたのだ。 いっかはその小さなチャンスによって、時の果てまでたどりつける 「わたくしは、この男に最終流動刑の宜告をくだすことを、当委員かもしれない。それまでは、たとえ一つでも、狂気のないセンター 会に要求いたします。よしんば彼の干渉がほんの数瞬のものであろを持つにこしたことはない」 うと、それがいかなる損害あるいは不自然さをこの交叉時点にもた センフは急きたてられるようにしゃべった。彼の終末は、大股で らしたかは、知る方法がないのであります。彼の目的は、排出機構刻々と近づきつつある。「きみは彼らのぜんぶに刑を宣告したよう を過負荷とし、それによって作動不能に持ちこむためであったと、 なものだ。狂気は生きた蒸気だよ。力だ。それをびんに閉じこめる わたくしは主張いたします。この行為、このセンターの六十種族にことはできる。ただし、いちばん強力な悪霊を、いちばん栓の抜け 狂気の依然として跳梁する未来を与えようとした野獣的行為は、最やすいびんに閉じこめるようなものだがね。そして、きみは彼らを 終流動によってのみ処罰しうるのであります」委員会は空白化し、 つねにそれといっしょに暮らすことにさせた。愛の名においてだ」 冥想にふけった。時間のない時間のあと、委員会は再結合し、代訴ライナは言葉にならぬ声を出したが、すぐにそれをひっこめた。 官の告発を支持した。処罰の要請は聴き届けられた。 センフは、かっては手であった一つの震えで、ライナの手首にふれ た。指が柔らかさと温かみの中に溶けた。「きみも気のどくな男だ ひそやかな思考の岸辺で、パビルスと変った男は、彼の友人であな、ライナ。きみの不幸は、ほんとうの人間であることだ。この世 クロスホ工 /

8. SFマガジン 1972年4月号

′、ヤカワ・ノンフィクション 新刊 第世記 THE SECOND GENESIS 学時代への提言 来たるべ 脳を含むな器植命の合成までカ、単 に時間、の間なケ第、る、生命制御の時代が到 来しつつあるのだ。性誕生という普遍事実が 崩れ去った後に来る それと まユートピ 来たるべき生物学時代に赴こりうる諸問 題を鋭く洞察し、人問観・世界観の転換を迫る ! ( 写真は人工子宮内の 9 週問めの胎児 ) アルバート・ローゼンフェルト / 巻正平訳 / 予価 650 円 好評発売中 くシートン伝 > 燃えさかる火のそばで ジュリア・ M ・シートン / 佐藤亮一訳 / 1500 円 本書は、いわゆる「シートン動物記」に親しん 人たちにはその楽しみを更新させるだろうし、 ンにはじめて接する人には、彼の伝える世界が 活気と魅力にみちているかをほば正確に示すも えるだろう。 朝日 真鍋最近、日本は公害間題だとか、人間性回 動物愛護とかいってますが、シートンはすでに 二年にはじめている ー毎日新聞、真鍋博氏 - 大庭みな子氏対談書 シートンとジュリア夫人

9. SFマガジン 1972年4月号

。〇の五乗は一〇万年だ。これでは、生物学 このような、物理的時間からいちどはな種属の寿命も無限大になるはずである。 的な未来を考えるのには、少し足りない。 れたものとしては、野口悠紀雄氏らが『二、もちろん、二の一〇乗以後というのは仮 7 だが都合のよいことに、日本語で単位をあ一世紀の日本』でおこなった経済学上の尺定の話であり、無限の未来にでもならねば げてゆくと、万のつぎは億である。ここま度がある。すなわち、一〇倍経済の時代を実現しそうにもないし、無限の未来という でつくって、超未来としておけば、まずたレ・ヘル e-* 、一〇〇倍経済をレベルⅡの未来ものがあるかどうかわからないとすれば、 いていの場合をふくむことができそうだかとするもので、目標による未来区分だ。 まったく空想上世界だともいえる。少く ら、最後の部分だけちょっとつけ加えて、 ・フーラスティエの『四万時間』も、。おとも、「学」としての対称ではなく 0 「論」 物理的な時間の上に目盛りをつけたのが なしような一つの設定だが、生物学的にの世界だといったほうがいい 〈図 2 〉の囚である。 は、なにをもってきたらよいだろうか ? だとすれば思いきってここでもう一つ、 だが逆に、科学技術における未来予測のそれでは、ヒト化の話のところにできごく大まかな未来区分をつくることができ ようなときには、文明における変化の加速た、二を底としたベキ数の話、寿命につい そうだ。その第一は、寿命や生命の存在に 度からして、遠い未来になるほど時間の幅ての部分を想いだしていただきたい。 ついての予測をしうるような、科学的事実 を狭くすべきではないか、という疑問もわ ここで・ほくは、「二の六乗のところにヒ から外插法で描きだせるような範囲であ いてくる。たとえば渡辺陽氏の「年ト化がある」といった。この範囲から、・ほ る。これを次元の未来と呼んでおこう。 表、によると、現代の一年は = ジ。フト時代くらは個体の寿命を眺め、それを超えようどちらかといえば、近い将来の予想 ()n ・ の二〇〇年、人類発生当時の五〇万年に相としてきたわけだが、これを延長していっ ticipation) の未来である。これに対して、 当するようだ。この調子だと、いまの一年た場合には、「二の”乗の未来尺、をこしどちらかといえば遠い未来についての、科 は、未来の一ヶ月、あるいは一週間、一らえることができそうである。すなわち、 学技術の予測の限界をこえたより大きな部 日、と短くなるだろう。したがって未来のぼくは第 2 章でヒトの寿命の限界を、いち分を、次元の未来と呼んでおこう。 時間は、対数、あるいは平方根で表示するおう一〇〇年ないし一二〇年としておい 〈図 2 〉の 0 がそれを示しているが、人類 ほうが合理的かもしれない た。科学が少しばかり進歩しても、そこにの今後の動向いかんによって , は、次元 >•< の ただしその場合は、未来は先細りとなはひとつの限界がある。したがって、二の未来が、次元の予測を裏切って、より早く り、はるかな未来への展望がきかなくなっ七乗 ( 一二八年 ) は、平均寿命については到来することがあるかもしれない。また、 てしまう。なんだか話がちくはぐになりだ未来の領域になるし、特定の個体についてこの生物学的な発想から生じた未来区分 したが、要するに目的によって、目盛りのも、二の八乗 ( 二五八年 ) は、未来の話には、時間たけでなく、空想をもふくめて、 とり方を工夫しなければいけないわけだ。 なるだろう。これが⑧である。この二の一地球上の未来だけでなく、地球外未来の形 必ずしも、物理的な時間の数字、グラム・〇乗 ( 一〇二四年 ) は、もう脱動物の世界で問題を提起することもできそうだ。 メートル・セコンドの延長にある〃年とといってもよさそうだし、もしもれが無限そこで第章、第昭章では、こうした面 いう単位を使う必要すらないはずである。大、つまり個体の寿命が無限大となれば、 から考えることにしてみよう。

10. SFマガジン 1972年4月号

射した。恐るべき針は・ヘッドシーツを突き抜けてとんだが、命中しにんまり笑った。まあ、つぎのクリスマスはがんばるさ。今回がず なかった。クリスはナイトスタンドの上の暗黒弾をとり、投げつけさんだったのも無理はない : : にせのサンタ・クロースにどれたけ 9 仕事ができよう ? ポポとユーロが肩車し、自分たちの身体の三倍 もある赤服を着て動きまわるのでは、サンタクロースの能率もタカ 一瞬、地底のおもちや工場全体に闇がおりた。 ・フロンド女が腕のなかでもがくのが感じられた。ス。 ( イダー寄生が知れている。だがクリスが世界を救うのに忙殺されていたあの時 体が、身の安全を求めて逃げこんだ場所はわかっていた。彼女の体点では、ほかに取るべき方法はなかったのだ。 全世界から苦情の電話がかかっていた。 内である。殺すほかはなかった。しかし毒針銃は彼女が放り投げて こともあろうにヒルトップからも。 しまい、はだかのまま、漆黒の闇のなか、べッドの上で、抵抗する 女をおさえこんでいるクリスにとって武器といえるものは ただ「ポポ」電話をむりやり黙らせると、クリスはいった。「おれはも ひとつ、この世に生まれたとき神が彼に与えたもうたそれだけだっ う出ないそ。かかってきたら、フランスのアンチー・フに行ったとい ってくれ。三カ月ばかり眠るから。四月には起きるつもりだ」 オフィスから出ようとしたとき、コーロが大慌てで駆けこんでき それは特別な武器であり、彼女を殺すには一週間近くかかった。 た。「ギー・フル・ギッ。フ・フリーシー ジムジム」と、コーロ。ク しかし、すべてが終わったとき、闇もまた晴れていた。彼はべッ リスは椅子にぐったりと沈みこんだ。 ドに横たわり、考えた。十ポンドも痩せ、小猫のように弱まり、消 そして両手に顔を埋めた。 耗しきっていたが、考えることだけはやめなかった。 そしてスパイダーの意味をとうとう理解した。 〈伊達男〉が〈雌ギッネ〉を孕ませてしまった、というのだ・ 寄生体は小さく黒く毛むじゃらで、たくさんの足ですばやく動く「くそっ、これで長生きできるか」クリスはつぶやき、泣きだし 〈八項目計画〉の目的は、人びとを不快にすること 生き物だった。 なのである。わかりきった話ではないか。その存在は、人間をいら だたせる。そしていらだった人間は、殺しあいを始める。人間同士編集部註ーー慧眼の読者諸氏はすでにお気づきのとおり、エリスン が殺しあいをすれば、世界はスパイダー ( 蜘蛛 ) にとって住みやす氏の作品には小さな破綻がひとつあります。恐るべき〈八項目計 い場所になる。 画〉には、当初スパイロ・アグニューなる人物も含まれていまし 彼がしなければならないのは、そこから句点を消すことだけだ。 た。作者は書いている途中で、彼のことを忘れてしまったらしいの です。もっとも作者ひとりが忘れたわけではなさそうですが。 翌週、時間 / 運動調査報告が届いた。今季の集配率は、記録破り のずさんさだということだった。クリスとポポは報告書をめくり、