それから、背後で 「どうでえ、飛ぶか ? 飛んでって、月を空から追っぱらってやる か ? あそこに星が三つ見えるだろう ! あいつを追っぱらってや ろうってやつはいないか ? 」ロジャーが足をひろげてサイクル・ラ ックの上に立ち、ふらふらしながら夜空に向かって拳固を振ってい た。「おれは飛ぶそー・飛びまわって、あそこにほうきの柄で穴を あけてやるそ ! 神々の野郎ども、いまのを聞いたか ? これから おれたちがそっちへ行くからな ! てめえたちにやられる前に、ほ うきの柄で死ぬまでてめえたちをぶちのめして、いやってほど流れ 星を降らせてやる : ・ : ・」 周囲で一同が喊声をあげた。一台のサイクルが咳きこんだ。つづ いてもう一一台。 最初の″ほうきの柄″がラックを離れるのと同時に、ロジャーは とびおり、一同はうしろにさがった。サイクルは斜めにポーチをす べってゆき、その端からとびだすと、木の梢に向かって上昇し、黒 い翼をひろけながらその上空へ出た。 「おまえ、おれといっしょにくるか ? 」 わたしは肩をすくめかけた。 かれの手がわたしのうなじを打ち、それをさえぎった。「あそこ には神がいる、おれたちはぜひそいつらの顔を見てやらなきゃなら ん。おまえ、おれといっしょにやつらを見おろしてやるだろう ? 」 あたりには、ビールだけでなく、煙もとびかいはじめていた。 「神様なんて毒にも薬にもならん存在さーわたしは言った。「聖ア ウグスチヌス、。ペヨーテ・インディアン : : : それがどんなふうに働 くかわかるだろうーー」 かれが手を裏返したので、かれの手の甲がわたしの頸に触れるよ 定まらぬ宇宙創生仮説ーー反物質はやつばり実在するか ? 在するという確実な証拠をつかんだ 大宇宙の宏大さに比較すれば全く と言い出したのは、米国メリーラン とるにも足らぬチリのような、この ド州にあるのゴッダード宇 小さな地球上で数百年、数千年にわ たって科学者たちは、あらんかぎり宙飛行センターの三人の物理学者、 ・・ステッカー、・・モー の智慧をしぼり、あらゆる方法を駆 がン、・プレデカンプの三人であ 使して、この大宇宙の秘密を探り出 る。 そうと懸命の努刀を続けている。 現在考えられている、反物質を考 大宇宙に誕生や終焉はあるのか ? 現在想定されている大宇宙の膨張慮に入れた宇宙開びやく説の大部分 では、同量の物質と反物質とが、大 は、いっか限界に達し、その後、縮 爆発に始まる宇宙膨張の原初期に、 小し始めるのであろうか ? 普通の おのおの宇宙の別個の部分に散在し 物質でできた我々の世界の他に、反 て存在するようになったと仮定して 物質で出来た世界はあるのであろう ••etc いるが、そういう宇宙では、物質の カ 当然ではあろうが大宇宙の謎は余領域と反物質の領域とが接触すると そこに大爆発が起り、双方共に完全 りにも深く、科学者たちが骨身をけ に消滅して強大なエネルギーが放出 ずってひき出した結論も、反転また される。 反転し、いつになったら本当の結論 こういうエネルギー発生の大きな に到着出来るのか、見当もっかな 。ハーセンティジを占めるものは、プ ロトン ( 陽子 ) がアンチプロトン 早い話が、本誌 ( 三月号 ) の本欄 ( 反陽子 ) と結合して発生するバイ に、この大宇宙には反物質はどうや 中間子である。これと同時に、もっ ら存在しない。もしあってもごく少 : というドイ と他の組合せによる物質消滅とエネ 量でしかないらしい ルギー発生、例えば、電子が反電子 ツ・ポン大学のミヒュエル・ライン ( 陽電子 ) と結合してガンマー線を ハルト博士の研究を紹介した。 ところがまた一方では、大規模な発生することも起るが、とてもプロ トン・プラスアンチプロトンの場合 反物質の世界が存在するらしいとい の比ではない・ う確たる証拠が見つかったと言い出 ところで、この。ハイ中間子の中の している研究者たちがある。 今度反物質がたしかに大規模に存一部で、電荷をもっていない分は、 幻 6
第ま - 第一↓物ご アトランティス大陸の存否と、その沈んだ場所とをめぐっての興味と論争るような一種の耐震建築をつくり、オリーヴを栽培し、その当時もっとも強 とは、それこそプラトンの昔から絶えず消えかかっては不死鳥のように燃え大だったと思われるクレータ島のクノッソスから発見されるミノア文明のそ 上ってとどまるところを知らず、関係文献は数えきれないーーー大著『アトラれに非常によく似たっ・ほ類を製作していた。マリナトス教授たちは、ここで ンチス大陸研究』の著者 Z ・・ジロフによれば欧米各国の出版物を集めれ発掘に従事し、とくにサントリニ島南端の半島附近で一九六七年以来数多く ば数千冊に達するという が、最近またもや最新の説が、ギリシャ考古学 の遺跡を掘りだすことに成功した。そして最近そこから出土したフレスコ画 庁のス。ヒリドイ・ドン・マリナトス教授によって主張され、大きな話題を投が、同教授に、サントリニ島アトランティス説に踏み切らせたのだった。 げている。 このフレスコ画は、一見して、その当時地中海世界にあったどの文明圏の マリナトス教授がアトランティス伝説の真実の発生地としてあげたのは、 それよりもすぐれたものだった。たとえばクノッソスのフレスコも、これと エーゲ海の小島サントリニ島 ( 原地名はテラ THERA 島 ) で、最近この島較べればその繊細さ、自由さ、流動性、リズムにおいてはるかに劣る。 で行なった一連の考古学的発掘の結果、ここにアトランティス帝国が存在しや、はるかに後代 ( 約一一〇〇〇年後 ) のものに属するポンペイのそれとくら たという確証があがったというのである。 べても、はるかに味わいが深く、技巧的でない点で優れている。 しいかえれ アトランティス大陸の存在を信ずる人々が主張するその所在は、大別して ばサントリニ島には、青銅器文明の粋があったと考えていいのだ。そして、 二つあり、主流派は大西洋のアゾーレス群島附近を主張し、小数派が地中。フラトンの描写するアトランティスは、まさに青銅器文明の理想郷だったー 海、とくにギリシャに近いエーゲ海を主張するのはすでにかなり前からのこ ーとするならば、サントリニ島こそ、アトランティスだ・ーーマリナトス教授 とで、実はマリナトス教授がいいだしたサントリニ島も、以前から地中海派はこう主張するのだ。 のアトラントローグたちがもっとも有力な候補地として挙げていたところ 「従来も、エーゲ海文明こそプラトンのいうアトランティス文明であるとい ・エヴァンズも、ミノス文明 で、必ずしも今度がはじめてではなかった。だからマリナトス教授の主張う説があった。ク / ツンスを発掘したア 1 サー は、今度こそそれを裏づける決定的な証拠があがった、というものだった。 とアトランティス文明とは同じものだと主張した。しかしプラトンに従え サントリニ島は、長さ二〇キロメ 1 トルほどの細長い彎曲した火山島で、 ば、アトランティスは海に沈んだことになっているのに、クノッソスは そのなかに、周囲六〇キロメートルほどの潟をかかえている。潟のほ・ほ中央もちろんクレータ島にいまも現存するのだから・ー・、・沈んでいない。サントリ 部には、二つの噴煙をふきあげる黒い溶岩塊がある。つまり現在のサントリ ニ島は大爆発を起してその大半が沈んでいる。これを見ても、サントリニ島 ニ島は、かっての火山島の爆発したなれのはての姿で、潟はそのときの噴火がアトランティスである可能性ははるかに大きい。」 ロ、本島は外輪山なのである。 マリナトス教授によれば、悲劇はつぎのようにして起ったと考えられる。 サントリニ島が爆発を起したのは今からほぼ四〇〇〇年前と推定され、そ紀元前一五〇〇年頃、サントリニは激しい噴火をはじめ、やがて決定的な大 の頃まではほ・ほ円形にちかい形をしていた。そして、考古学的調査によって爆発をひき起した。島の大半は吹っ飛び、その部分に海水が侵入してきた。 この島には、当時、非常に高い文明を持った住民が住んでいたことが、かな この大惨事はおそらく、人類はじまって以来最大の恐るべき大爆発だったと り以前からわかっていた。たとえば彼らは、しばしば起る火山性地震に耐え 思われる。 4
ひたすら清浄な存在であり、穢れは悪のように償わなくても手段に よって祓い浄めることができる。 本来この国土にあった観念を、ヒは純粋に継承している。ヒも本 来日や火を意味し、ひたすら清浄な存在という観念なのである。ヒ真夜中。 やネの意味が判りにくくなったのは、外来の仏教がこの国土に定着ヒの一軒の家からまだ灯りが洩れている。雪が風に舞い、板戸が してからのことである。悪を犯し罪を得て地獄へ : : この一見理論ガタガタと鳴っている。 的な筋道も、ヒやネを基として生きるこの国の人々の間では、その粗未な板敷きの間に円座を置いて随風が坐っている。当然その前 発生した土地の人々ほど直截には受けとられていない。足して二でには飛鹿毛と猿飛。 割ったように、悪にも罪にも地獄にも、穢れの観念がしのび入り、 「ネではない 従ってたやすく浄めうるかのようなあいまいさがある。 随風はかすれた声で断言した。「ネとは動きじゃ。里者の世にヒ ともあれいま飛鹿毛は随風の病状をネではないかと感じている。 の力が加わりすぎたとき、時として生ずる世の動きじゃ。だれの身 ヒの清浄さが、織田信長擁立という俗界への介入で穢れたのである。 にもせよ、一身にかかわることではない」 介入して穢れを来さないのは、ひとり天皇家の存続のみであった。 飛鹿毛も猿飛もかしこまって聞いている。「それよりも、信玄め 「ネならば禝わねばならぬぞ」 また生きのびておるとはのう」 猿飛はそう言った。祓い浄めればネは消える。仮りに随風がネに随風はそう言って嘆息した。 襲われて死んだとしても、肉体が自然の大地に戻れば、祖霊になる「やがて死にましよう」 のみで地獄に堕ちることも迷うこともあり得ない。つまり人間は自猿飛がなだめるように言う。 然の諸要素が凝って生じ、自然の諸要素に還元して行く・かりそめの「待ってはおれぬ。信玄もあれだけの祈りを受けて息たえだえで むすび 存在でしかない。来世がなくとも死は恐れるものではないし、執着あろうに。あとひと突き : : : 産霊の地に入ってくればすぐにでも息 あれ する程生が稀有のものでもないのである。谺や川のせせらぎにも生の根をとめようものを」 があり、人間はそれらの祈りの部分として、自然の中を動きまわ「信玄の進む道に当分産霊山はござりませぬ」 っている。祈るものであるからこそ、浄く純粋であるべきで、穢れ 飛鹿毛は何かを考えながら言った。「しかし、あの六所ロでの仕 は祓わねばならない。 掛けがうまく働きましたからには、今一度ためしてみる術がござ 猿飛が祓うことを言ったのは、だから随風の死を回避させるためる」 ではない。 ・ : このような思考をするだけでも、ヒは元亀の時代相「なんと。策があると申すか」 とはかけ離れた存在だったのである。 随風は厳しい表情で飛鹿毛をみつめた。ヒでなければ、飛毛は まら 6 9
殊な体質を持っていた。だが念力で一瞬のうちに遠隔地へ移動するてて乱れに乱れた世をたて直し、泰平の世をもたらすのがヒの最も 場合、念者は次の行先きをよく理解し、記憶にとどめていなければ現実的な方法であると信している光秀も、そのためにかつぎあげた 8 から ならなかった。行先きの詳細を知らず無理にテレポートすれば、空織田信長が、日一日と怪物化し、破壊をほしいままにしているのを ワタリと称する恐ろしい結果が待ちうけている。同一次元ではな見ては、往古に戻って芯の山発見に努めるほうがどれほど気が安ま く、異次元におちこんで二度とこの世界へは戻れないのである。 るかと思うのであろう。 「おそらく、芯の山を念じたのでござろう」 随風にもその気持はよく判っている。だが神代から探し求めて遂 随風は言った。芯の山とは各地に点在するすべての産霊山の上位に発見できぬ芯の山が、いま急に都合よく探し出せようとも思えな にある、究極的な産霊山であった。ヒはその芯の山の所在を求めていのだ。 神代の頃から山野をへめぐって来た。芯の山の所在はその時代によ「ヒは神代の昔より天下の泰平を求めてこそヒでござ「た。飛鹿 り、筑紫とされ、日向とされ、出雲とされ、大和とされて来た。し毛、猿飛の一一人が六所ロ近くのヒの宿の者どもを率い、東国に芯の かしそのことごとくが芯の山ではなかった。 山を求めて今なお働いており申す。したがそれはそれとして、こ 生きとし生けるものの明日への願いが凝って白銀の矢となり、各の乱世を鎮めるためには、いま十兵衛どののお働きが要りますのじ 地の産霊山にとぶ。各地の産霊山はその願いを集めて芯の山に送や」 り、そこで明日が定められる。神武以来、いやそのはるか以前か「それは判っておる。儂はヒとして、決してっとめをなげすてはせ ら、人々は芯の山に直接白銀の矢を奉って明日をおのれの意の儘にぬつもりじゃ」 迎えたいと考えて来たのだ。産霊山の存在は次第に秘事となり、遂「十兵衛どのがいちばん辛い役をひきあてておられる : ・ : ・が、やら みかど には皇室のみに伝わる大秘事となった。各時代の帝は芯の山とおぼねばなりませぬ。東では甲斐の武田が相模の北条と和を講じ、さら しきあたりに都を定め、明日への願いを奉って来た。しかし、芯のに安房の里見、常陸の佐竹とも手を結んだ模様でござる。そのうえ 産霊山は結局見つからなかった。皇室は平城京以後芯の山を求めてついさき頃は浅井、朝倉にも兵を貸すことを約しており、越前、越 むなしい遷都をくりかえすことをやめ、それは同時にヒの目的をも中、加賀三国の一向宗徒が越後の上杉にはむこうてござる。信玄め いもうとむこ 否定することとなっている。 は顕如上人の妹婿に当り、北陸の一向宗徒は武田の手で操られて だが飛稚はいまわのきわにその伝説の芯の山を信じてワタリを試おるのは明らか : : : さらに伊勢の北畠も家臣を甲府に送って密議を みたのである。その行動がいま、光秀と随風の二人のヒにひとつの凝らしたとか。つまりは武田が上洛の挙に出る前触れでござろう」 感動をもたらしているらしい 光秀は深刻な顔でそれを聞いていた。 おさ 「儂とて芯の山が欲しい」 「ヒの長の報らせであれば逐一まことであろう。武田に上杉の動き 光秀はカなく言「た。ヒに武力がない以上、里者の勇者をもりたが封じ得れば、必ず上洛することとは察してお「たが : ・ : ・少し早 まっ まっ
られた。ひと頃は " 消減病。と呼ばれ伝染性があると考えられた。在によ「て実体を保 0 ていて、常にこの二つのサイクルを往復する この説もまだ否定されていず、むしろ最も一般的な理論となってい ことで宇宙は存在している。ところが偶然このサイクルが逆になっ るが、そうだとすれば約五カ月で急速に全世界に蔓延したことになた人々が逆の世界へ行ってしま 0 たという説がある。この考え方 る。消減が病気なら、 e や男がその病気に対する抗体を偶然持「ては、半数近い人間が消えた頃にロシアの物理学者が発表したものだ いたとも考えられるし、特異体質という可能性もある。 った。 e はその理論が気に入っていて、それを紹介した新聞の切り 「だけど、次々人が消えていくとすれば、必ず最初に消える人も最抜きを持っていた。記事冫ー、 こよ次のような図も付いていた。 後に消える人もいるでしよう。私たちが最初である可能性もあった し、例え最後となってもそのことに特別の理由はないのかもしれま せん」 はいった。男は自分でも納得しようとするかのように大きく頷 「私もそう思うんです。そうですね。私たちも消えるんでしよう ね」 山影に陽が傾いて急速に周囲が薄色にかすみ始めた。太陽の隠れ た山陵だけが紅に染っている。男は立ち上がってランプに灯をつけ 「まあいいでしよう。消えるまでは生きていなきや仕方がないん だどっちへ転んでもいいことではないや ! 」 男はそういって部屋を出た。茶の間の向こうに台所が半分みえて いた。男はそこで湯をわかしたり、料理を作ったりしているようだ これは反物質という観念を時間的に理解したものであるが、た った。 e は沈んだタ陽によって姿を失っていく雲を眺めていた。僅だ、偶然反世界に入り込んだという理由が解明されていなかった。 かに雲の底だけが赤く輝いて風に乗って流れている。完全に太陽が正反の世界の・ ( ランスが崩れたためとか、存在世界の障壁に突き当 沈んでしまえば、それらもみえなくなるたろう。或いは人の消減と 0 たためとか様々な想像が展開されていたが、それが人間だけに起 て同じようなものかも知れない。の前からは姿を消していても実こった理由にはならない。むしろこの仮説を認める場合も他に人間 際には別の世界でみんな生き続けている可能性もある。例えば交流的な理由が付け加えられなければならないだろう。 電気の。フラスとマイナスのサイクルのように、世界は二つの極の存 . はふと男にその理論について話してみようと思「て立ち上が 0 く 0 〉 はこの現実の存在 - は消滅者たちの存在
Cat 0 “全地球カタログ最終版の表紙 ( 上 ) イギリス版「全地球カタログ」の紹介 ( 下 ) ろな分野に首をつ っこんでいると ( 雑学ですね ) 独 得の嗅覚がはたら いて、これはおも しろそうな本だー ーーというカンが養 われてくる。そう した本のなかに は、アナーキスト に必要なあらゆる 道具の使用法を記 した「アナーキス ト料理読本、があ るし、マリワナに ついてのすべてを ど、とにかく、雪が乾いていて、けむり まとめた「ポッ のように舞いあがるから、ますます現実 ト・ア•—ト」 ( ホ 感がなくなり幻想的な世界になる。濡れ ップ・アートにあ た雪 , ーーというのは、まだ生活の匂いが らす ) という楽しい絵入りの本もある。自然のなかでコ、、 残っているが、パサバサした粉雪は、もう、あっけなく、 ューンを作って生活する女性の体験記 I 、 iving On the 生活感を消してしまう。 1 = Earth は、あるアート・ディレクターに貸したら、雑発 一月一一六日から、二月一五日に東京に帰ってくるまで、 「アンアン」で、八ページの記事となって紹介された。そ 札幌でなにをしていたかというと、ヒゲを育てていたので ーズの方 ある。私のヒゲは二週間でなんとかか「こうがっき、三週れから、家庭の主婦のための「ストリ ' プ・ティ 間で完成する。そしてちょうど三週間の札幌滞在の後、ヒ法」という本もある。なにしろ、日曜大工の本みたいにス トリップの本があるのだからね、アメリカという国は ゲづらで東京に戻り、そして、「全地球カタログ最終版」 そうした一連の、私ごのみの本のなかでも、「全地球カ を手にいれたのだった。 タログ」は、その存在を知ったときから、なんとしても欲 コミックス関係の本はもちろんだが、私のところには、 。それで、昨年アメリカ しかったもの。第一、名前がい いろいろ奇妙な本が集ってくる。不思議なもので、いろい し n に ed Kengdom Earth Catalogue Ⅲ 1 ト仁示 ui( ”Ⅲ、一 }\. 寡を 0 わ 0 を・は / ) 0 ( /. は曾 三 ? いリ「つりな / ! おけ . ' 7 ( / ル 0 0 「 : ごれ ) 「しし ) し朝をゾ日「 .å嶹 , つリ 4
「おう。もう十二時半だ。竹島くん。めし食いに行こうか」 分局にはすでに全員が帰ってきていた。新九郎の息子をよそおっ ていた時間密航者のなかまたちはす・ヘて捕えられ、すでに支局に送係長の声が聞えた。 「さようでございますね。十一一時三十一分ですか。まいりましよう られていた。 「秋山有心がペ = シリンに気がついたのは医者として当然だが、そか」 さあ、また出荷場の仕事がおれを待っている。 れをこっそり手に入れようとさえしなければ、かれらの存在は知ら 「平石さあん ! ラーメンのおかね ! 忘れちゃだめじゃないか」 れなかったかもしれない , こっちでは青山の婆さんが声を荒げていた。 主任が深い息を吐いた。 「おれたちの方からやつらに先制攻撃をかけることはできないんだ からなあ。いつも後手後手なんだ」 ュイが肩をすくめた。 「いや。時間密航者はいつでも潜入はできるが、いっかは必ずその 存在の痕跡を示すものだ。われわれはじっとそれを待っていればい いんだよ」 「じっとね」 乞食姿のフィフが汚ない手ぬぐいをかぶりなおした。 「さあ、またはじめるか」 おれも帰らなければ。おれはみなに別れを告げた。 「さよなら」 イナ / が小さく手をふった。 いつもこごとばかり言われているんだ。少し自分で気をつけ たまえ」 係長は短かくなったたばこをぐいと灰皿にねじりつけた。おれは そっと事務室のドアを開いた。格納庫のような薄暗い出荷場の奥か ・、ーなカラー写真のようにどぎつ ら見えるおもての街路が焼付オー い鮮明さでおれの眼にしみた。 ハヤカワ 3 ・ SFZ いシサーズ ショートショートの名手 星新一の傑作集 都会的な洗練されたスタイルから生み出 される意表をついたアイデアと、鋭利な 刃先を思わせるアイロニーで界にひ ときわ異彩を放っ星新一の珠玉短篇集 ! 宇宙のあいさっ¥三三〇 妖精配給会社¥三 8 悪魔のいる天国竺七〇 午後の恐竜平三五〇 既刊 285 点 日本セクション 7 6
目をしろくろしたのはおもしろかったね。ほんとってラヴクラフトの「クトウリュー神話」の辺が必須栄養物。 は小学校で 2 、 3 回やっただけだったけど、 ( 面の いと思うのだが。それに昨年十月の増刊号では今の俺は、に対して何か引け目を持ってい 2 る。先月の書籍購入のうち部門約七・五 % 厚さがものを言う ) それから狼の怨歌読んだ ? ヒロイック・ファンタジイ特集をやっていたが、 あれはひどいよ、まったく。あんなのなら書かなふだんの時もやるべきである。それに、これは直 ( 一五〇〇円。・山野・筒井 ) 辺境地長 い方がましだと思うな。よかったのは表紙ぐらい接関係はないが先月号の追悼アート特集でフィン崎。内省的のみ考察。を捨てた者のへの なものだ : ・ 。と、読み返すと話がぼんぽんとんレイをやっていたが、この中で『「ホビット」よ謝罪の存在 ? しかし彼は無言。 ・でるなあ。これもリトミ , クのせいと思 0 ていたり』というのがある。ところで、これはイギリス汝、友を裏切るなかれ。 そして、今、この「てれぼーと」欄より察する だきましようか。 のヒロイック・ファンタジイの大家・・・ トールキンの "THE HOBBIT" という小説のに、俺はまだまだ新米の部類。俺のそこは常に混 ( 埼玉県浦和市上木崎五四木 / 下秀子 ) 一場面である。これは岩波書店から「ホビットの沌。逆さまの暗闇。背中から感じるジレンマ。そ MJ アアア : これで高校入試も終ったし、テ冒険」としてでているからヒロイック・ファンタして、殺してやりたい程の彼らの存在・ーーチクシ ヨー。おい。こら。待ちゃがれ。お前だ。そう オフラストスの「形而上学」からフランク・ハリジイに興味を持っていてまだ読んでいない者は是 だ。そこのヤツ。お前だ。俺より先に行くな。プ スのポルノグラフィーまで読んで読んで読みまく非読んだらいい。 ってやると考えている今日このごろの小生であり いろいろゴチャゴチャ書いてきたが、早川書房チ殺すぞ・ーーそれが、俺には、作家を上げ 6 ます。その中で、特に読みたいのがでありまの方々。「クトウリュー神話」のことよろしくおる事ができない。勉強不足 ? 資料の不足 ? み てろ。今に部屋中、一杯にしてやるからな。馬鹿 す。小生は幼少のころよりに興味を持ち、マ願しまあすい アファンの一人であります。 : : : ただし、こ ( 京都市伏見区深草中ノ島町十九ノ六 れはヒロイック・ファンタジイがのジャンル 赤井敏夫 ) 彼らは、彼岸の友であったのです。 さあ、川を埋めちゃおう。橋をかけよう。たと の一つならばの話でありますが ( 先月号の論 壇「明日はどっちだ ! 」の中で川又千秋さんはヒロ いっ頃から、を買ったのか。誰の何を最初え、真暗闇であっても。彼らが向う側から橋をか ニュー・ウェープ ィック・ファンタジイは「新しい波」の流れの一 に読んだのか。もう全く忘れている。そして、今けるのだ。俺は川のこちら側から。 だから、万歳。そして万歳。万 つに入れていますが : : : ) さよう ! 小生は大のの俺にとって、それを思い出す旅がなぜか。 ヒロイック・ファンタジイファンなのでありま俺のイメージは、以前は、暗闇の中に輝く星々。歳。ン。工へへへ。穴。穴。穴。 ( 長崎市清水町六の七梅原方打浪敏郎 ) す。特に・・ハワード、・・・トー そして、星より大きな俺。今はもう、そ・の暗闇だ ルキン、 O ・・ルイス等の名を耳にすると小生け。希薄な俺。今さら星を欲しいとは、思っては ・・ハインライン五 の体は喜びのために震えるのでありますい いない。暗く存在する、その中において、何かを レイ・・フラッドベリ二 ハワードで思いだしたが、近ごろ小生は早川書しきりに動かそうとしている俺。しかし、容易で ・ O ・クラーク 房に対して少し腹をたてているのであります。とはない。そこには、読書は存在していないのかも 安部公房 いうのは、文庫内のコナン・シリーズが昨年しれない。思考全体が、それにうずまってしまっ 七 小松左京 十一月の "The Return of Conan" から実にているのだ。読書は単なる腕 ? 俺の読書は 四 星新一 三カ月も発行が停滞しているからであります。タから ? 確かあの頃だったと思う。俺も自分で これ、何だかわかりますか ? 実は、先日・ほく を書いた事がある。ノートが十冊ぐらいになっ ・ーザン・シリーズなどは一カ月に一冊でるのに : ・ : なんたることかあい ていただろうか。今は手元にない。非常に断絶をのクラスのの意識調査をした結果、右にあけ 少し興奮したが、文庫にハワードが登場し感じる。あの頃には、読書より想像の方が走ってた作家の書いた作品をひとつでも読んだことのあ たのでかねてからハワードと交遊があった・ いた俺。その想像力もいっ頃か。風呂の焚き口にる人に手を上げてもらったんですが、下の数字は ・ラヴクラフトとクラーク・アシュトン・スミス入れてしまった。本は読まねばならない。そこにその人数を示しています。ぼくのクラスは四十八 のも文庫から出したらいいと思う。さしあた非常な飢餓を感じる。は俺の子守歌。そして人ですが、を読んでいない人がほとんどなの
「あなた一人だけが残ったのですか ? 」 「あと一一人いたのですが、若い男女だったのでどこかへ行ってしま いました。他にも数人東京に残っているようです。新宿には危険な 男がいます」 「知っています。人と闘いたがっています」 「えゝ、彼と我々とは考え方がちがっていました。我々は素晴しい コミュニティを作る予定だったのです。どこか暖かい肥えた土地へ e は須田町の交差点で叫んだ。古い家なみが不規則にならび、そ行って農業と牧畜を行うのです。五十人というのは丁度いい数でし よう」 れらを断ち切るように小さなビルが突き出ている。彼は歩き出し、 何度か声を出して人を呼んだ。朱色に塗られた大きなビルの横の一一男はいってようやくタ・ ( コを口にくわえた。「お茶でもいかがで すか ? 」男はいっこ。 階建のビルのガラス戸にもたれて白髪の男が立っていた。 道路を渡り小さな喫茶店に入り、カウンターに入ろうとした時、 「どこからきました ? 」 男は消えた。カウンターに崩れ落ちるように衣類だけが宙空を動 男はいっこ。 き、一度カウンターにひっかかったのち、床上に落ちていった。 「田舎に行っていたのです」 すでに人の消減に対する複雑な感受性を失ってしまっていた。む e は答えた。そして「誰もいないのですか ? 」と尋ねた。 しろ、眼前でコミュニティ最後の男が消減するのを確認して、自分 「昨日、みんな消えました」 男はいった。「五日前には五十人ほどここに集っていたのです。もまた消えることができることを知って勇気づけられたほどであ その日も次の日も一人も消えなかったので、もう誰も消えないのかる。 日は暮れていた。僅か三日間だけ存在したユート。ヒアは闇にのみ と思ったのですが : : : 」 「では、やはりみんな消えてしまうのですか ? 」 こまれ、 ハリケードの影を妖怪たちの住み家に変えていた。彼は車 「そうでしよう。二日間消減者がでなかった時には、残った人間がに戻り、ホテルへ向けてゆっくり車を走らせた。 この病気に対する免疫者だと考えたり、もし神のような存在がみん なを消しているのなら、その手からもれたのだろうと想像したので次の日の朝、彼がホテルの玄関のシャッターを上げると、すぐ前 にトラックが一台置かれ、その正面に衣服が一つ下がっていた。そ すが」 男はカなく眼を伏せ、ポケットからタ・ハコをとり出したが、火をれは酔った男の着ていたダークスーツで、ワイバーには縞のネクタ 9 イがかけてある。 つける様子もなく手でもて遊んだ。 さようなら 1 億の友よ
た。台所では湯がわき上がっていた。 し、ここでも東京の放送が受信できるはずだった。今日から放送が 「存在サイクル論というのを知ってますか ? 」 なくなったのかそれとも出力が弱くなってここまで届かないのか、 はいいながら新聞の切り抜きを手に台所へ入った。しかし、返どこを廻しても人工の電波らしきものは出てこなかった。一瞬人声 事はなく、流しの手前に男の着ていたジャンパーとズボンが落ちてらしきものを聞いたように思って、その付近のサイクルを捜してみ たが、一一度と同じ声は聞けなかった。彼はあきらめてスイッチを切 人の消滅現場に居合わせたのは五度目だった。二度は人の消えるった。 瞬間をみており、他の三度は視線の盲点で消えた。人が消える時に 男は消減事件に関する資料をかなり集めていたようで、部屋の隅 叫び声をたてたことはない。本人は全く苦しむ様子はなく、何も気には週刊誌が積み上げられていた。 e はその中から自分のみていな づいていないようだった。おそらく神経パルスの速度より早い瞬間 い雑誌を捜してきて開いた。むろん人間消減を特集しており、様々 にそれが起こるのだろう。丁度テレビの画面を消した時のように、 な人々による短い発言が掲載されていた。 消減者の動作が継続している間に別の視界からそれを消してしまう物理学者氏 ようだった。一度、秒間五百コマという高速度で撮影された人間消『これまでの物理学があまりにも現実的なものに眼を向けすぎてい 減がテレビで流されたが、そのフィルムでも一コマの間に人が完全たため、こういった存在の本質にかかわる問題の研究が遅れていた に消え、次のコマでは衣服の落下が始まっていたのである。 のではないだろうか ? 事実予算をとるには現実的成果が必要だっ H はそこに立ちすくんだまま、いつまでも消減した男の服を眺めたし、成果によって学界に注目されるという状況があった。また、 ていた。闇が完全に村を閉ざし、その中にが一人だけ見捨てられこうした問題は物理学という一ジャンルたけで理論化することは不 たように呆然とたたずんでいた。 H の周囲にも暗闇は押し寄せ、 可能で、細かくジャンルに分化され、互いに繩張り意識を持ってい まにも残された僅かな光を飲み込んでしまいそうだった。小川 の流たことも弊害となっていたようだ』 れだけは天地を支配したかのように巨大な音をたてており、時折野党委員長氏 大の遠吠えがそれに加わった。彼の周囲数キロに人間は全くいなか『国連に特別機関を設置し、全世界のトツ。フ科学者を一堂に集める 案をわが党は一カ月前に提示した。政府は今頃になって各国に働き かけている。この問題は人類史上最大の危機であり、もはや政治的 H は男の準備した。ハンとサラダをつまんでみたが全くのどを通さ配慮を論じている場合ではないのだ。実行力のない内閣はすぐ総辞 なかった。部屋に戻りトランジスターラジオを発見してスイッチを職をすべきで、この際党派を離れて実行力ある大合同内閣を発足さ 入れた。ていねいにダイヤルを廻し放送している局を捜したが雑音せるべきだ』 すらあまり聞こえない。昨日には東京でラジオを聞くことができた評論家氏 2 2