男 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1972年6月号
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1. SFマガジン 1972年6月号

「知らないよ。でも、いつも変な大人の人と一緒にいるよ」 「いや、よく知っているよ。以前、わたしが王宮の書庫にいたと 「おれも知ってる。あの人はアガって名なんだ」と別な子がいっき、その記録をみたことがある。だが、なぜそんなことをきくのか ね」 誰だろう。仲間たちから離れると、足が自然にそこへむいてい 「ちょっと知りたいだけです」 「なるほど。知識欲だね、それは」 ォルジーはいなかった。その代り、その変な大人はいた。静かに 「なんですか。知識欲って」 冥想にふけっていた。彼は、ちょっとためらったが、勇気をだして「未知のものを知りたいという欲求さ。人間は、誰でも持ってい ちかよっていった。足音に、男は頭をあげた。 る」 「あの、アガさんってあなたですか」 「あなたもですか」 「そうだが。君は誰かね」 「ああ、そうだ。・ : カわたしの場合は、程度をこえて知りすぎてし 静かな声だ。聖者みたいだ、と彼は思った。 まったが : : : 」と男は、自分にいいきかせるようにいった。「忠告 「おれ、マニヤです。ォルジーを知りませんか」 しておくが、君の好奇心は、手のとどく範囲にとどめておいた方が 「ああ、あの女の子だね。毎日、きていたが、このところ姿をみせ しいね」 ないようだ」 「手のとどく範囲 : : : ? 」マニヤの背はもう男とほとんど同じだっ 「そこに坐っていいですか」と、彼は尋ねた。 た。彼は澄んだ瞳を、まっすぐ男にむけて尋ねた。「どういうこと ししとも。何か用事かね」 ですか」 「別に : ・ : 」と、一旦マニヤはいった。でも、その男は何でも知っ 「つまり、このエロータスで生活するために必要な知識のことさ。 ていそうな気がしていた。 貝がどこで沢山とれるとか、布の織り方とか、まあそんなところ 「あの」彼は、しばらく黙っていたが、ロを開いた。「お尋ねしてだ。すでに十分知っているだろう。それらは」 もいいですか」 「ええ。大抵のことは でも、なぜ、それ以外のことを知っち 「いいとも。何かききたいのかね」 ゃいけないのですか」 「もし、知っていたら教えてください。白い崖のある陸地までどの「知る必要がないからさ。君は、白い崖に関心を持っているらしい くらいあるんですか」 が、何のためかね。そこへ、わざわざ荒海をこえて、行く必要があ 「白い崖 ? 」 るのかね。崖の上の陸地には、おそろしい怪獣たちがいるというこ 「知りませんか」 とだ。海の中にもいる。こわくはないのかね」 「白い崖か : : : 」と男は、遠くをみるようにいった。 「そりゃあ、こわいですよ」 幻 6

2. SFマガジン 1972年6月号

たったいまあなたは あたしに力を借して くださるとおっしやった ばかりではありませんか」 「煮えきらないかた : すれば抱いていただける のですか ? 」 「ではどのよ、つにお願い 「弱ったな、ど - つも・ 「理由 理由はふたつある」 「お、つか力いい← , し土 6 ーレよ、つ」 「ひとつは、おまえさんには愡れた男がいるってことだ」 「北町奉行与方、山本千之助 : : : 」 ・、。ほかの男に愡れてい 「ずばり的中したろうカ る女に手出しはしたくねえ」 「町方与力の山本さまには一度お目にかかっただけです。 それにあたしは切支丹として山本さまに召捕られた身 : : : 」 「俺はおまえさんの心をすっかり読んじまった んだせ。男と女の仲に理屈などあるものか : 「冷やかしちゃいけれえ。 俺は本当のことをいってる だけで : : : 」 「女にはもてる。そうなので 「弱ったな、どうも。そう気 をまわされちやかなわねえ」 「あたしにも女のプライドが あります・ : ・ : 」

3. SFマガジン 1972年6月号

そいそとその男のために尽すのだった。まるで、マニヤのいることいっかせていたことや、短かい胴着が、裾の方で風をはらませてい など、忘れてしまったみたいに : ・ たことや、その背景にそよいでいた背の高い葦や、青い空の広がり やがて、あのオムニガミイの祭がき、男と共に家をあけた彼女などを : は、数日後、顔一杯に疲労をうかべてひとりで帰ってくる。そのま ま、放心した状態で、何日も床の上で横たわっているのだった。彼 3 女が元の母親にもどるのは、性炎樹の花が、完全にしぼみきって、 地上におちる頃、海をふきわたってくる風が、どこか透明さをおび その頃、オルジーは、自分のために与えられた小粒な胞状体の中 る秋の初めだった。 で、ひる間、突然おこったことをおもいかえしていた。母親から マニヤは、そんな何かにとりつかれているときの母親の姿をみるは、さり気なく教えられていたので、予想はしていたが、実際にお のが、きらいだった。まるで別人みたいなのだ。家の中に入りこんこってみると、やはりショックだったのだ。心の動揺がおさまるま でくる見知らぬ男をも憎んだ。そのために、マニヤと母親だけの平で、誰にもいわずに隠しておこう、とオルジーは心にきめていた。 和さが、みだされる。 期待と不安が、同時に、彼女の心の中を満たしていた。 その、彼にとってはゆううつな夏が、やがてまたやってくる。食「あたしの最初の相手はどんな男の人だろう」 事をつづけながら、マニヤは、母親の顔をじっと眺めていた。その彼女は、ばんやりと考えていた。色々想像してみるが、映像はは つきりと姿をむすばなかった。 いつも黙々としている母親からは、想像もっかない。その季節にな ると、彼女は、身のこなしまでが、どこかふだんとちがってくるの ふと、マニヤのことを考えて、彼女はひとりで頬をそめた。「マ だった。訪れてくる男を待っている間の、そわそわとした様子や、 ニヤじゃ、いやだわ。だって、知りすぎているもの」 やがて、やってきた男を迎え入れるときの、いそいそとした物腰 : 二人の間柄は、事実上、兄妹のようなものだった。二人はおなじ 。そして、急に冷やかになる、マニヤをみる目つき。もはや母も年だった。ただ、少しばかり、彼女の方が、おそく生まれた。ォル 子もないのだ。彼が、邪魔な存在となるのだった。 ジーは、母親と男がおこなっていた、あの光景をおもいうかべる。 マニヤは、満腹すると、ごろりとその場に横になった。母親は、 また、彼女は、頬を赤らめる。脚を開いてマニヤにおさえつけられ 食事の跡をかたづけるために立っていく。マニヤは、大羊歯の葉をている自分の姿を想像する。 かぶって、背をむけた。 「彼とじゃ、とっても恥しくて、あんなことはできないわ」 彼は、今日一日をすごした浅海の緑色の海原を想い出している。 ォルジーは、糸虫のはきだめ繊維をおってつくった白布の中で、 それから、彼がみているのを知って、くるりと背をむけてしまった寝がえりをうった。彼女の手が、そこへ伸びていた。ひる間、血を 彼女は目をとじた。マニヤの ォルジーのすんなりとした姿態を。微風が、彼女の髪を、頬にまと流したその部分は、もう治っていた。 / 2

4. SFマガジン 1972年6月号

よ。あのね、ム , ゲンポルトというのはね、アルタイルⅥの赤道の彼女を待 0 ているわ。彼女の足音に、金輪が三本はま「ていたでし よ ? あれは彼女が仕とめた男の数をあらわしているのよ。ムツゲ 近くにある女系国家で、あそこの結婚制度は、あたしたちのとあな たたちのとちがうように、ちが 0 ているのよ。ム , ゲンポルトの女ン・ホルトの古い習慣なの。おそらく今日は四本はめているでしよう がム , ゲンポルトの社会に受けいれられるためには、夫を四人もたね。毎年地球から消えていく男たちが、ほんとはどうな「ているか なければならないの、ところがムツゲンポルトには、もうそんなに考えたことはないの、ロジャー」 男がのこ 0 ていないから、よその惑星にさがしにくるわけなの。で「ああ、ないね。ただひとつだけ不思議に思うことがあるよ。きみ もそれだけじゃないのよ。四人まとまったらムツゲンポルトへ連れは地球へなにしにやってきたの ? 」 アルタイルのエレインの目は伏せられた。 てかえって、一日に十一一時間、クリッチ畑で働かせて、自分たちは 「あたしがーーーあたしがきたのはね、あのね、プゼンポルグでは ークン材の家で、ル 1 テンツーガ 一日じゅう、クーラーのきいた・ハ ね、男が女を追いかけるんじゃなくて、女が男を追いかけるの」 の実をポリポリたべながらテレビを見てるのよ ! 」 「アルタイルⅥじゃ、それがふつうの行動らしいね」 こうなるとロジャーも怒るより、おもしろくなってくる。「で、 その夫たちはどうなの ? おとなしくいわれるとおりにして、妻を「そのわけは、ムツゲン・ホルトばかりじゃない、惑星全体にわたっ て男が払底しているからなのよ。押しボタン方式の宇宙船ができて ほかの三人の男と共有していても平気だというんだね ! 」 「わか 0 ちゃいないのね ! 」アルタイルの = レインは刻一刻といきからは、・フゼン・ホルグの女もムツゲンポルトの女と同じように、そ りた 0 てくる。「夫側に選択の余地はないのよ。かれらはたぶらかの船を賃借りして、よその惑星に夫をさがしに出かけるようにな 0 されちゃっているんですからねーーベッキイがあなたをたぶらかしたの。それから、・フゼンポルグの女子校でもムツゲンポルトの女子 たように。彼女に結婚してくれってたのんだのは、自分の意志だと校でも、よその星の言葉や習慣を教えるようになったの。データは 思 0 ているんでよ ? それが、そうじゃないのよ ! それは彼女のかんたんに手に入るのよ。アルタイル政府は、地球や地球型の惑星 意志で、催眠術を使ってあなたの心に植えつけたのよ。グレイの光に、数年前から、文化人類学研究班をひそかに送りこんでいるか ら。だから、わがほうといたしましては、あなたがたが、宇宙旅行 る目に気がっかなかった ? あれは魔女よ、ロジャー、ひとたび、 がっちりとあの手につかまれたら、あなたは一生彼女の奴隷になるをスターして、超惑星連盟の一員となる資格を得たあかっきに のよ。もうだいたいものにしたと思っているにちがいないわ、さもは、あなたがたと接触する準備はしてあるんです」 「プゼンポルグの夫の割り当て数は ? ーとロジャ 1 は皮肉たつぶり なきや、今日、あなたを彼女の宇宙船に連れて行きはしないわ ! 」 . ぐしュー 「ほかの三人の夫候補はどうするの ? 田舎へドライ・フにいく・ほく 「一人よ。だから・フゼンポルグの女は、ウジェットを携帯している たちにくつついてくるのかい ? 」 の。あたしたちはムツゲンポルトの女とはちがうのよ。彼女たちは 「まさか。かれらはもう船の中よ、すっかり彼女の手中におちて、

5. SFマガジン 1972年6月号

オクトプリアーナとラクダ 、を : ・ 4 ツ第第第まをミッ 0 巛なよ第 0 = 一》〉に乗 0 たオクトリプに天空に浮遊するワダー・〉〉を救いの神としてあが一 リアーナとその仲間は、 めた。〈黒い太陽〉から降りてきたオクト・フリアーナたち g この事態をなんとかしょはコリャック族に歓迎される。魚やトナカイの肉、そして、 うと北太平洋の氷山地帯コリャックの女たち。だが、最後の五〇本のコカ・コーラ を飲みつくし、ついに河の泥水を飲まなければならなくな へと飛んだ。ワンダー マシンからとび出した飛ったとき、一行は、北方の火山地帯へと旅立っていく。 だが、コリャック族に、危機が迫りつつあった。狂暴な 一行艇は、セイウチやアザ ラシを、どんどん捕えてチュクチ族が、コリャック族の女と毛皮を奪いにやってく いく。そして獲物は、カるのだ。男たちは罠にかかって全減し、残った女たちはチ ムチャッカ半島の放射能ュクチ族のトナカイ部隊にとり囲まれてしまった。危機一 火山へと運ばれる。放射髪ーーーそのとき、オクト・フリアーナのワンダー・マシンが 能の作用で巨大化した獲戻ってきたのだった。 ききん 一物は、処理され飢饉地帯オクト・フリアーナの部下の男たちは、オーストラリアの 一に食糧として送り届けら砂漠にある秘密の寺院で、その不老不死の体質を十年ごと れるのたった。もちろんに更新しなければならなかった。そして、そのときがその オクトプリアーナの科学十年目だった。急がなければ、男たちは死ぬ。だが、チュ 装置により、放射能はすクチ族をほうっておけば、コリャックの女たちは全減する つかり無害なものに変え だろう。二者択一を迫られたオクトプリアーナは男たちに られてあった。 命令した。「女たちだけの民族は亡びてしまう。最後の命 オクト・フリアーナにも令だ。おまえたち、降りて行って、出来るだけ多くのコリ 失敗はあった。宇宙からャック族の女たちをはらませるのだ。これが、おまえたち の侵略者と戦っているあいだに、子どものセイウチを火山の最後の務めだ 9 生まれてくるおまえたちの子どもたちの ために、死ぬのだ」 島の火口に残してきてしまったのだ。数年のうちに、セイ ウチは巨大化し、火口いつばいに成長して、ついに火山の男たちは、地上に降り、チュクチ族を追い払いコリャッ 爆発を誘うことになってしまった。カムチャッカ地方をゆクの女たちを抱きながら、勝利のうちに、時が来て、死 ぬ。オクトプリアーナは女たちに向って、今から十カ月後 るがす大地震がおこり津波がおしよせてくる。ワンダー マシンは、不思議な〈力の場〉を放射し、津波が陸にに、ウラジオストックから出産用の医療船を送り届けるこ とを約東し、ひとり、タ陽のなかをワンダー・マシンを駆 近づくのをくいとめる。 コリャック族はいっせいにひざまずき、黒い太陽のようって飛び去る。 ブオース・フィールド

6. SFマガジン 1972年6月号

お時は声を立てて笑った。相手の無邪気な困惑 ぶりがおかしく、ひさしぶりに胸が晴れる感じを味わっていた。 長襦袢の衿を合わせ、手早く着物を身につけはじめた。 帯を締めながら見ると、男はなにやら面白くなさそうな 顔をしていた。 「おまえさんみたいな別品 ( こ、さあどうぞと据膳すえられて 手を出ねえなんざ、われながら正気の沙汰じゃねえな。」 愾然な面持だった。 「もうニ度と据膳はさしあげません」 「俺はまったく大馬鹿野郎だ」 「女のプライドを踏みにじった報いです」 「まったくだせ」 お時はふきだして袂で顔をおさえた。 「あなたはとても、 しいかたなのですね」 「礼をいう元気もねえ」 お時は笑うつもりがいっしか泣いていた 「やれやれ・ : ・ : あやまるよ。ぶらいどとやらを踏みにじって 悪かった」 お時は男の厚い胸板に顔を埋めて泣いた。子どもの ように声をあげて泣いた。 : : : なにも言わないで : ・・ : 」 「おねがい しいさ。好きなだけ泣きな。さんざんつらい思いをしてき たんだからなあ」 あたたかい涙が、男の装束を通して胸の皮膚を濡ら した。男は手をのばし、お時の震えわななく肩を ` るような化物だ。江戸中を焼きはらって禍根を絶っぐら いのことはやりかねねえな」 「いったいどうすれば : : ・・ 「おまえさんの使命はもうひとつある。お蝶の身を幻魔 から護ることだ。とりもなおさず、過去のおまえさん自 身をな」 月影の発想は、完全にお時の意表をついた。 「おまえ、こりやよっぽどしつかりしないとならねえな。ひと っ心構えをしつかり持っことだ」 月影はふいにばちりと指を鳴らした。 「うん、そうだ。ペあとりすのくれた銀の平打の釵だ / あ の姫さまは、ひょっとすると、幻魔がおまえさん追っかナ るってことを勘づいてたのかもしれねえな。あの釵は吏、 かたによっちゃ、どえらい武器になるかもしれんぜ」 「あの叉は : : : 難産で苦しむみちさまのお護りに残し て : : : みちさまはどうなさったのでしよう。あれからもう・ 七夜も・ : : ・」 「生れていれば、張孔堂正雪の子だったのだな」 月影が呟ゃいた。 「生まれていれば卩」 お時は胸に鋭く長い針を刺し通されたような衝撃 を感じた。 「というと : : : みちさまは・ は - っ 「いけなかったようだよ。胎の中の子もろとも死んたと 聞いた」 「お気の毒な : ・・ : みちさま・ お時は両手で顔を覆った。 恟 8

7. SFマガジン 1972年6月号

ン " = - 、冫霧「ニイづンっ - ま : アすレ′をい . = ま嘱物ミ ( この男 甲賀伊賀者 たちの持っ 陰惨さが、 まったくない 奴らの忍びの術 なんざ、餓鬼の遊 びと変らねえ。 違うな。 俺は甲賀者でも 伊賀者でもねえのさ。一 犬神一族というのは いわば忍びの者の総 元締なのだ。 徳川に飼われている 服部半蔵は忍者の 総元締などといわ れているが・ 犬神の者にいわせりや 子どもだましょ : 犬神一族とは、 真正の強力な 超能力者の家系 なのだ / 超力者だ / 自分が探し求め ていたのは、眼一別 のこの男だった のかリ ) ( まぎれもない 心配する お前さんの心の 中にあるものを、、、 のぞかせてもら 、つにけ 0 。 そのほうが ロでしゃべる より・てつトり ばやい

8. SFマガジン 1972年6月号

「では、恐怖心を振りはらってまで、何のためにいく」 「わかりません。でも、その白い崖が、荒海につき立ってつづいて いる光景が、目に浮かぶんです。おれは、それをこの目で確かめて みたいんだな。きっと」 以来、日が経った。性炎樹の花は、蕾を少しずつ開きはじめてい た。その匂いがたちこめ、エロータスは盛夏へむかって、ものうげ 「なぜだ。なぜ、確かめたいのだ」 な時をすごしていた。 「わかりません」マニヤは、男の声が強かったので、とまどいなが らいっこ。 照りつける頭上の太陽は、緑色の浅海をあたため、白い蓮華の街 「知ろうとする病気にかかっているらしいな。君はどうやら、わたに、日に一度のスコールをもたらした。蒸し暑さが街にみなぎる しと同じらしい。実は、わたしも、以前は君のようにその白い崖のと、人々は動くことも大儀となり、家の中にこもるときが多くなっ ていた。子供たちだけが、外へ出され、人気のなくなったような通 ことを考えていたのだ」 りや広場を走りまわり、また物蔭に姿を消した。ときには、涼をも 「おじさんもですか」 「そうだ。が、勇気がなかった。わたしは愛する人の命を惜しんだとめて、街の外へ出て、浅海をかけまわっていた。 マニヤは、もう、彼の仲間には入らなかった。あの空地の男は、 のだ。いや、わたし自身が命を惜しんだのかもしれない。だから、 わたしは、頭の中で空想するだけで、満足する他なかった : ・ : こと急に姿をみせなくなっていた。むろん、それまでに、何度も彼とは 逢っていた。 いった男の表情に、何か寂しそうな陰が横切った。 その間に、幾つかの新しい知識が、アガの口からマニヤに伝えら 水汲みの仕事がのこっていたことを、マニヤは思いだした。 れていた。ときには、熱心に、またなぜかときには、ためらいがち 「おれ、帰ります」マニヤは立ちあがった。 「またきます。色々と教えてください」 あの白い崖へは、舟でふた月かみ月はかかるという。「方向はど 「いいとも。いつもここにいる」 うして定めるのですか」と、陸地の姿さえみえなくなる大海原を航 男は微笑を浮かべた。マニヤはペこんと頭をさげた。それから、 海する方法をいぶかりつつ、マニヤは尋ねてみた。 長くひき締った脚が、生垣をこえた。 アガは、それを見送っていたが、われにかえったようにつぶやい しつも動かない星があ 「星をみるのだ」と彼はいった。「天には、、 ていた。「確かに、あの少年は、わたしにはなかった何かを持ってる。その星のみつけ方さえ知っていれば、方角は定められる」 いそうだ。また、わたしは彼に知識を授けることができる。だが、 その夜、マニヤはエロータスの中央塔へのぼって、彼からその輝 く星を教えてもらった。夜空はよく晴れており、熱帯のすんだ天球 教えてやるべきだろうか : : : 」 は、宝石をちりばめたように輝いていた。 結論はでなかった。 6 2

9. SFマガジン 1972年6月号

オクトプリアーナのワン 、こダー・マシン ュニスト時代のマル ンに共鳴していた。「あたしは、コミ のだった。 キ ・ド・サドよ」と彼女はいった。サドの作品のなかでも 彼女は、党の大物ミコャンの養女だということだった。 ェット」が、いちばん気にいっていた。彼女のイ 十六歳でみじめに処女を失って以来、彼女の性的飢餓を「ジ = リ 満たすには、リアリティよりも、ファンタジイのほうが役マジネーションには際限がなく、やさしく処女を破るため にたった。彼女は、男女両方に興味を持っていたが、レスの、それそれ違った二十三もの方法を考え出したりした。 ビアンだった。女のすべすべしたからだが好きだった。男白い・フーツだけの、はだかの姿で歩きまわり、いろいろな はむしろ女のためのい性的な拷問のしかたを考案しては楽しんでいた。 には、若い女性も多くいたが、リディアがやって けにえとして扱うのだ ことってそれほどのも った。「アンナに、あくるまでは、セックスは、メン・ハー冫 たしの胸とお尻を愛撫のではなかった。ところが、この魔女がやってきて「さっ さと服をお脱ぎ。きようは体位第一四三番でやるんだよ してもらったほうが、 ! 」というぐあいになったのだった。 亠ターザンみたいな男に ぎゅうじ セックスされるより彼女がを牛耳っているあいだ、すべてはセックス ーティは、セックスの にはじまり、セックスで終った。パ も、ずっと早くオルガ スムに達するわ」と彼乱痴気さわぎになった。やがてセックスはありきたりのも のとなり、禁断の木の実という感じがなくなってしまっ 一女はいう。セックス・ 1 ティで、いちばんた。 リディア ( 彼女は、後に精神病院に収容されたが ) がや 好きなことは、すつば ゆか ってきた頃、の雑誌に、体制の権威への反抗精神を だかで床の上に寝て、 一そのからだの上で、若表わすコミック・ストリップを載せる企画が進められてい い男たちにマスターべた。いろいろな伝説資料から主人公のイメージが形成され ーションをさせることていった。オクト・フリアーナ ( ロシア語では Oktyab 「一 na ) 1 だった。彼女はからだという名は、一九一七年のロシア十月革命の精神を象徴し じゅうにくつついた精ている。は、十月革命の精神をすばらしいものだと 一液をこすりながら、 = 思 0 ているのだが、それが現在のソ連に生かされていない クスタシーに達するののを怒っているのである。 ・こっこ 0 オクト・フリアーナは、そうした彼らの政治上の夢をたく 7 7 リディアは、アッチしたキャラクターであるばかりでなく、同時に、彼らの、 , = 第。 = 」ラ大王や、ジンギスカワイルドな性的なファンタジイを具体化したものでもあっ を 3 をい 0 、

10. SFマガジン 1972年6月号

ヘレンは当惑するというより、むしろ楽しんでいた。彼女への影 響は少なかったものの、事態の深刻さがそれで救われるわけではな かった。男が自分の見たものを他人に話すことは、はじめからわか りきっている。と同時に、そんな話をうのみにする人間がどこにも その春、〈レンはディビッドの反対を押しきって、雪解けが始まいないことも、想像がつく。しかし人びとの好奇心がかきたてら れ、農場がいちゃく注目の的になることは大いにありそうである。 るとすぐ湖で泳ぎだした。低い水温もいっこうに気にならないよう で、肉体的な成長のほかにも彼女の体に何か変化がおこっているの遅かれ早かれ、また柵をくぐりぬけるものが現われ、だれかが〈レ ンの足跡やヘレン自身を見つけるのは、もう時間の問題だ。そのと ではないかと、ディビッドは案じはじめた。だが、その考えを煮っ める時間はなかった。農場を売りはらい、西海岸にむけて出発するきには石はころがりだしており、それを記事にする新聞も出てくる 決心を、一夜にして彼にかためさせるできごとが、四月の末になつだろう。 ておこったからである。 ヘレンのプライ・ハシーを保つことのできる場所がひとっしかない ことは、ディビッドもとうに気づいていた あとになってそのできごとをふりかえったディビッドは、家のま ル、サンゴ海の彼の島である。彼がその決断になかなか踏みきれな わりの電流柵と立入禁止の立札を、ティン・ハーヴィルの村人たちが 永久に尊重すると思いこんでいた自分のうかっさに気づいた。大部いでいたのは、そこが彼女にとって不帰の島であるからだった。し 分の人びとはそのとおりであったかもしれない。だが、いっかそれかし、もうぐずぐずしていることはできない。 を無視するものが出てくるのは、当初から避けがたいことだったの また彼女を人目にさらさずに島に移す方法も、たったひとっしか だ。そうした例外のひとりを、ヘレンは「案山子そっくりの灰色のなカった 髪の中年男」と形容した。彼女の話によると、どうしたものか男は そのできごとがおこった翌日、彼は。ヒックアップで・ハッファロー 柵をくぐりぬけ ( おそらく針金の下を這ったのだろう ) 、森を通っに行くと、それを売り払い、全長三十フィートのトレイラーと牽引 て湖岸にやってきたーー・ちょうどそのとき彼女が水面に顔を出した車を買った。トラック運転の免許証は忘れずに更新していたので、 のだという。ヘレンを見て、男はほんとうに案山子のようになってあと必要なのはナン・ハ ー・プレートをとりつけ、保険をかけること しまった。うすよごれた白い顔が文字通り白くなり、やがて青くなだけだった。その手続きをすますと、彼はゴードン・ローリ ーを訪 った。右腕に二一一口径のライフルをかかえていたところからするれ、大きな家と小さな家の鍵をあずけ、二つの農場の売却を依頼し と、狩猟をするつもりだったらし い。だが、その日はとうとう狩猟た。そして、ローリーに白紙の小切手を手わたし、真正偽造を問わ ができなかった。ライフルを地面に落とすと、彼が殺しに来た小動ず船長免状をとってリース・アンド・ ハリスン社タコマ造船所宛て 物顔負けの速さで森にかけこんでしまったからだ。 に送るよう命じた。ローリーははじめしぶったが、とうとう首をた わいい指で包装紙を破った。靴を見たとたん、彼女は泣きだした。 5 8