問題 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1972年7月号
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1. SFマガジン 1972年7月号

1 S F でてくたあ ウエルズの厖大な著作の主要な部分は、古ン・テーマのはしりでもある。初期からトの『第二創世紀・・ーー来たるべき生物学時代 への提言』 THE SECOND GENESIS ・ 69 0 くは明治後期から、この七〇年間にほとんど後期の思想小説への移行の中間段階にあるこ 翻訳が出たはずだが、今では、最も典型的なの作品は、その意味でもさまざまな示唆に富 ( 巻正平訳・七八〇円 ) と読売新聞社刊のジ エラルド・リーチの『・ハイオクラットーー試 数冊の初期のと、いわゆる純文学作品をんでいる。 除くと、意外に入手しにくくなっている。そジョン・ファウルズの『魔術師 —・Ⅱ』験官ベビーから人造人間まで』 THE BIO- の意味でも今度、早川書房からそうしたもの THE MAGUS ) 65 ( 小笠原豊樹訳・河出書 CRATS 40 ( 袖井林二郎・孝子訳・七八〇 円 ) である。副題に明かにされているように、 の一冊である『神々の糧』 THEFOODOF 房新社・各八五〇円 ) は、ではないが、 この二冊は、ともに現在非常に大きな問題と THE GODS ( 一 904 ) ( 小倉多加志訳・・ 読者ならば、決して失望することのない、 なっている生物工学の問題を、その技術面か ・ t-0 ・四三〇円 ) が出たことは、クラシ不思議な魅力を持った異色の小説である。 ら、モラル面まで、最も新しい話題および問 ック・ファン及びを系統的に読もうとすイギリスのアパ ー・ミドル・クラスの青年 題提起を含んだかたちで取りあげたものであ るものにとって有難い がロンドンを嫌ってギリシャの小島の英語教 る。生物学的技術の発達はいま、事の当否を 二人のイギリス人科学者が生物の発育促進師となって赴任してゆく。この島で彼は、教 問わず、人間を含む生物全般の、さまざまな 物質ヘラクレオフォビアの合成に成功しヒョ養の高い億万長者コンヒスの邸宅に招かれる 形でのコントロールを可能にしつつある。臓 コなどを用いて実験を進めているが、偶然そ が : : : そこでは、現実と非現実の混淆した世 器移植や人工臓器の問題をはじめとして、死 の一部がネズミや雀に食われてしまう。やが界が彼を待っていた。コンヒスは、巨万の富に の限界、人間の遺伝子操作から複製 ( クロー てその地方に、巨大化したスズメバチやアものいわせて、大勢の俳優を使い : : : たとえ ン人間 ) の製造、人間精神のコントロールな リ、ネズミ、雀などが現われ、人畜を襲撃しばドイツ軍将校の扮装をさせて、主人公の青どの現在と将来を技術的に展望し、それが、 てくる。これらの怪物はやがて戦争そこのけ年をいっか第二次大戦の最中であるかのよう果して正しいかーーというよりは、それが正 》の軍隊の大量投入によって全減させられ、事な錯覚に陥らせる。そしてくりひろげられるしい科学の在り方か、という問題にまで、読 なきを得たかに見えたが : : : 何年かたって人魔術、心霊術、黒ミサ、仮面劇ーー・ 。オクス者を導いていく。これらの問題は、もちろん 人は更に恐るべき事実に直面する。この異常フォード出身で、詩にしか興味を持たず、現読者といわず、現代人一般の積極的関 発育促進物質を与えられた子供たちが、身の実に何の積極的意志もなく、無関心とシニシ心事でなければな 丈一二メートルもの巨人となって出現したのズムしか持っていなかった主人公は、しからないが、それに 実 だ。普通人たちはこれらの巨人族を忌み嫌し、この現実と非現実の間のつくられた世界しても読みすす 、彼らを法律によって限られた地域内に押の中で、そうした無感動の世界からの脱出のむうちに、こうし 正 ョ しこめ人類社会から隔離しようとするが、巨チャンスをむ。この小説はまた、一種のた問題について、 人族の自由への願望はついに爆発し、普通人「モンテクリスト伯」式の復讐劇ともなってはっきりした考え ク一邑 と巨人族とは宿命的なー・ーそして最終的な対おり、豊富なドンデン返しやトリックが巧妙方が、自分の中に 決を迫られる : ・ に用いられていて、とにかく面白い。読も、社会的にも確 当 立していないこと 科学物質による動物や人間の巨大化、怪獣者も一読の必要はあろう。 に気づくだろう。 化というアイデアのはしりであると同時に、 ノン・フィクションが一一冊。 普通人と超能力者の対決というスーパーマ早川書房刊のアル・ハート・ローゼンフ第ル ゞぐ

2. SFマガジン 1972年7月号

らしい面つくりながらでも、とにかく、人は性についてひっきりな しに感じたり考えたり物いったりすることを強いられている。 もちろん、巷に氾濫しているのは、実はセックスそのものという 巷にセックスが氾濫している。 よりは、商品化されたセックス情報であろう。これを見て、現実が マスコミの殆んどがーー週刊誌も、月刊誌も、一般誌も、そのて情報どうりだと思いこんでしまうのは、まるで、チョコレートや化 の専門誌と大差ないセックス小説や、セックス風俗のあれこれにつ粧品や車や洗剤の Oäをそのまま真に受けて、それらの商品によっ いての記事か、ヌードフォトを、必要不可欠のものとして扱ってい て幸福がもたらされると信ずるようなものである。 る。 だが、こうした商品化されたセックス情報が氾濫するのは、当然 街を歩けば、煽情的なポルノ映画の、臆面もないポスターが目白買手があるからだ。少なくとも、買手があると売手が思いこむ雰囲 押しに並びーーー必すしもポルノ映画ではないものも、その限界定か気があるからにちがいない。 テレビのスイッチを ならぬシーンを売物にすることを忘れない そして事実、そうした雰囲気をもたらす現実の動きはある。全世 ひねれば、放送コ 1 ドすれすれのいわゆるお色気番組が・フラウン管界的な離婚件数の増加、婚前性交、婚外性交の増大などに現われて に現われ : : : そして人々は、好んで、フリー セックスや、夫婦交換いるセックス・モラルの変化がそれだ。セックスを蔑視しあるいは ーテイや、ホモセクシュアルや、レズビアンや、サド・マゾや、罪悪視することは、ついこのあいだまでとは正反対に、とんでもな ポルノ解禁の是非や、そして性教育の問題などを話題にする。 間違いであり、認識不足であり、なによりも〈古くさい〉ことと それがいいの悪いのというわけではない、しかし、現象的にいえなってしまったし、セックスと生殖とを切り離すことに、正面きっ ニンフォマニアック て反対をとなえること自体ーーー少なくとも最近のわが国ではーーー多 ば、現代は多分に色情狂的たというしかない。 こ花咲かせるときのようなうすら笑いを浮かべな少の勇気を必要とするまでになってきている。 酒席で、ワイ談冫 つまりいま世界は、一見それほどとは見えないけれども、旧来の がらでも、テレビ討論会で性教育問題を扱うときのようなしかつめ ェッセイ特別寄稿 (J) IL はポルノに乗るのか 福島正実 ー 42

3. SFマガジン 1972年7月号

セックス・モラルの改変を、はげしく要求されているのだ。そして罪悪感に目をつぶっても、中絶に踏みきる良識を持っている。 実状は、改変の見通しのつかないまま、その過去の権威だけが、不その証拠に、わが国の人口増加率は、アジアではもちろん最低で あるばかりか、先進国の中でもかなり低い上昇カーヴを維持して、 安定化し、壊れようとしているのだ。 科学も、この傾向に積極的に力を借している。避妊薬、ーーとくに西欧諸国から、奇蹟とさえ評価されているのだ。もしこれが、たと モー = ング・アフター・ビルなどの経ロ避妊薬の普及は、おそらえば東南アジアなみ、インドなみの上昇カーヴを持 0 ていたら く、どんな思想的要因にもまして、セックスの解放促進に役立つだ現在の日本がどれほどちが 0 た立場におかれていたか考えてみるが 、、 0 つまり日本人は、殆んど本能的ともいえる・ ( ランス感覚で、 ろう。さらに、中絶処置が医療施備や技術の充実によってきわめて セックスの生殖からの自律性を自らかちとったといっても、オー 安全になったことも、以前にはとうてい考えられなかったほど、セ ーな表現ではないのだ。 ックスの自律性をたかめたはずである。 こうした傾向は、経済的余裕と生活水準の向上とともにさらに強 もちろん、わが国に、強硬な中絶反対論者がいることもーーそし て、心情的に ( とくに表面的に ) その立場に組するかなりの数の市められようとしている。それが、優生学的にも正しく、合理的であ るという考え方に、異論を持つものは少なくなりつつある。こうし 民層のあることもまた事実である。彼ら・はわが国を堕胎天国といっ て自らおとしめるのがーー、そして、そうした処置を行なう医師たちたいわばワールド・ = ンセンサスともいうべき意識が、旧来のセッ を一方的に犯罪者扱いにし、処置を受ける市民たちを痴呆扱いにすクス・モラルの改変を促し、変動を求めているのだ。 そして、その結果社会に、少なからぬ動揺や混乱がおきようとし ることによって、正義の味方面をするのが何よりも好きだ。だが、 要するにそれは、よくてせいぜい無力なセンチメンタリズムであるている。 この状況は、ちょうど、科学、技術が、その自律的な自己拡大に か、心情的自己満足であるにすぎず、問題の解決にはこれつぼっち の役にも足たない。どころか、しばしばそれは、何とかして犯人をよ 0 て生産性をたかめ社会を高能率化していき、その結果さまざま 仕立てあげてリンチにかけたいという兇暴な欲望を満足させようとの矛盾を惹き起しているのによく似ている。あらゆる情報も、それ している偽善的な権力亡者である場合が多く、問題の解決を、さらに基く予測技術も、そうした矛盾をすべて予防することは不可能 だし、とくに、そのために悩む個人個人の不幸を防ぐことには、全 に遠くにおしやっているにすぎないのだ。 法の欠陥に便乗して暴利をむさぼる悪徳医師を糺弾することとこくとい 0 ていいほど役には立たない。 れとは別問題だ。正義の騎士ぶ「て生命の尊さなんそを説教する程それと同じことが、セ ' クス・モラルの問題についてもいえるの 度のことで問題が解決するなら、もともと問題などおきはしないのだ。セックス・モラルは、明らかに改変される時期に来ている。し かしそのために起る混乱を、とくに個人個人のそれを。予防するた である。 だが実は、そうした心情的中絶反対論者の市民たちもテレビの = めの目算はない。その意味では、最近もてはやされているライヒ = ースショーや人前でなければ、こうしたことに、ちゃんと気がつも、ウイルソンも、。 ( ッカードもーー他の多くの社会学者たちの仕 3 いている。ロでは別のことをいっても、心中ではセックスと生殖と事も、不十分なもののように、ぼくには思われる。というよりも、 がもはや同一次元のものではなく、両者は切り離されなければなら思想やイデオギーがこの問題を処理できるほどには、状況が熟し ず、したがって、やむを得ない場合には、社会から押しつけられるていないように思われてならないのだ。

4. SFマガジン 1972年7月号

なものまで考慮に入れると、目に見える人討をやらかしてみよう。 的な問題なのである。 ご存知のように生態学は「生物の集団」工物だけでなく、人間の意志や空想上の産 生めよふやせよ を対象とする、生物科学の一分野だった。物、内宇宙的な存在までふくめた生態系を 一般に生物界では、ある特定の種だけが 人間のことは、 いままでは社会科学の分野考えてゆかねばならないかもしれない。そ であっかっていたが、人間はヒトという動れはともかく、現在のエコロジーは狭義の無茶苦茶にふえるということはあまりな 物だから、特別扱いにしすぎるのはまちが生態学だけでなく、地球物理学や経済学ま たとえば約三年の寿命をもっネズミたち っている。植物がつくった酸素を吸い込んで入れた、複雑で巨大な領域とならざるを は、三週間あまりで大きくなり、そのくら で炭酸ガスを吐き出す、という点はまったえなかった。 このなかで、もっとも焦点となるのは、 いの妊娠期間後に八、九匹の赤ちゃんを生 く同じだ。したがって、これもいっしょに そこでもう少しよく考人口を中心とした″種″の数量的な問題とみこれをくり返すから、一匹の生存期間中 入れたほうがいし に三億匹あまりになる。この計算どおりに えると、人間がつくった工場やある種の機公害などをふくめた″環境″の問題だ。 この一部は、たしかゆくと、実験用に飼育され殺される純系た 械類も、しばしば酸素 に予測の範囲内にあるちは別としても、あっという間に地球はネ を消費して炭酸ガスを ズ公だらけになりそうだが、そんなにはふ 次元の未来だが、一 吐き出している。ここ 日本のネズミの推定数は約三億匹 部は、それだけではどえない で公害の問題が生じる ち うにもならない次元 >•< だから、三年分ほどである。どうやら自然 のだが、だとすれば、 の生態圏では、個体数をある程度以上には こうした工学的、社会 子の未来でもある。 の それを宇宙的な規模ふやさぬようなメカニズムがあるらしいの 学的なものも生物なみ ス ウのなかで考えてみよう に扱って、一つの生態 マ というわけだが、この これには食糧の問題もからんでおり、ふ 系として把握するほう ス が合理的だ。 原稿を書いている一九えすぎれば餌がなくなるので、自然に増加 - イ ス 七二年は、なんの因果がとまるという点もあるだろう。北欧のレ 生態系というのは、 ある空間に生活してい ミング ( タビネズミ ) みたいに、爆発的な 純か「子の年ーだ。ネズ ミが十二支のトップに大発生で過密化がおこると、谷も海もなん る生物のすべてと、そ 真すえられたのは、そののその、盲目的な大移動をやらかし、あっ れを除いたいわば無機 繁殖力に敬意を表してばれな集団自殺をとげる連中もいる。 物的な自然からなる系 だが面白いのは、・・テイラーの いるせいかもしれない である。そこへ人工物 から、まず人口問題あ『続・人間に未来はあるか』のなかで紹介 が入り込んできたわけ たりから、空想的な検されている、ジェームス・アイランド島に だが、情報公害みたい 7

5. SFマガジン 1972年7月号

セックスはそんなにいいのかというさっきの設問は、じつはこう 愛を描いてみせるにしろ、精巧なーーー人間の女など機能的に問題に い換えられるべきだったのだ。なぜ、誰も彼もセックスをそれほ もならないほど優れた官能を持っセックス・ロポットを登場させる にしろ、感覚映画や体験装置が日常茶飯のものになっている未来社どデモーニッシ、で抵抗し難いものとして語るのか。 じつはそれほどのことはないのではないか ? 会を舞台にするにしろ、近親相姦や性倒錯が縦横に描かれる場合に しろーーーもっとも、その場合でも、小数の例外をのそいて、の ェロチック・シーンの描写は、一般のそれにくらべてかなり控えめ 5 でセックス描写のタ・フ】はたいていの場合守られているーーその根 ここで、最初の疑問にもどろう。 底には、ロマンチックで理想主義的な純愛主義がーーただし、せい なぜ人々は、セックスをこうも熱心に物神化するのだろう ? な ハリウッド製のーーー守られている。また革命前後に性の自由化 に失敗したにがい経験を持っソ連のなどでは、愛というものぜ、セックスについての情報を、かくも熱心に追い求めるのだろ が、物理学の法則と同じ種類の恒常的普遍性を持っと考えているか のようである。 人間は動物だからという答えかたがある。動物にとって性欲は、 こんな有様を見ていると、少くともセックスに関するかぎり、種族保存のため不可欠な本能である。人間も動物である以上、そう が常識に挑戦するスベキュレーションの小説だなどとはお世辞にした本能を持って当然なのだ。そして本能である以上、それは食欲 もいえなくなるような気さえする。とすれば作家たちは、結局と同様に、一つの生理的欲望にすぎない この答えが、あまりに社撰であることは、きわめて明瞭だ。 は酒席の酔漢のように、セックスをただ結構な悦楽として捉えるだ けのーー道具立てばかりそれらしいながら、結局はセックスそのも第一に動物には生殖のシーズンがあるが人間にはない。それは進 化の上の比較の問題にすぎないというのは、進化というものの概念 のに迫ることのない常識的な保守主義者なのだろうか。 を捉え損ねた考えだ。すでにこれだけの違いは、質的な違いに転化 もちろん、そんなことはないはずだ。 彼らの中には、セックスを、人間性の根源につながる暗く底知れしているからである。 第二に性欲は食欲とちがう。よほどの飢餓を耐え忍んだ直後でで ない衝動として、生そのものの持っ複雑で重い負目として認識し、 それを、ルビ = スやロレンスや、 7 オークナーやミラーや、そのもなければ、どんなに美味な食物を見ても、性欲に対するほどの興 奮を感じはすまい。さらには、どんな食道楽でも、性倒錯とおなじ 他数多い現代作家たちの到達したところまで行ったものも や、さらに奥深い淵をすら模索しようと試みたものもいる。 程度に食物を追求しようという気にはなるまい。そして、こうした 興奮や満足をより深くより大きくしたいという欲望は、人間と動物 だがーーー問題は、まさにそこにあるのだ。 セックスを、たんなる悦楽とみるか地獄の業火とみるかが問題なとのあいだの決定的な違いを構成する。高等な動物には、人間同 のではない。セックスを、なぜそれほどに : : : 酔漢も痴漢も、エロ様、自然がスムーズな生殖を行なわせるため性本能に賦与した快感 はある。しかし、人間ほどに強烈で持続的で全身的な快楽は決して 事師も大衆作家も、文学者も芸術家も、誰も彼も否定するはずのな これが問持ち得ない。それは、動物生態学が証明している。 い強烈・深遠なものとして捉えなければならないのか なぜか。 題なのである・ 協 9

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まり、時間軸を空間軸に変換してみるわけよう。すると、これらの遣伝子による三つ だ。じつをいうと、これは人口問題解決のの遺伝子型のうち、と " が異常をあ 7 、移住の問題を考える手掛りにもなりそらわすことになる。そしてふつうの場合 は、これらが淘汰の圧力により集団内から うなのである。 取りのぞかれ、「すべてこの世はこともな 佑異境と超優性 し」というわけだ。ところが、ヘテロ個体 球 血 一九七一年夏の火星大接近のさい、・ほく。 ) の適応度がどちらのホモ個体 赤 は ( いい歳をして ! ) 夜ごと屋上に望遠鏡、よりも高いことがあり、これは 、ー・ドミナンスと呼ばれて 鎌をかついであがり、「あそこに住めないも超優性、オー のだろうか」と空想にふけったものだ。 左 ヒトのヘモグロビン遺伝子座というや なるほど、最高でマイナス二〇度 0 、最 血低がイナス九〇度 o という、ソ連の火星つにもこの現象がみられ、この異常として は、ホモ個体 (< ) の鎌状赤血球貧血 毒 3 号が記録した温度はいかにも寒い。だ ( ・ ~ ~ 、一 ( ~ 鉛が、 = キ、ーなんかは基礎代謝が・ほくらと、〈テ。個体。 ) の鎌状赤血球症と より二五 % も低く、寒さに適した体質がでがある。正常なヒト赤血球は、中央の凹ん だ円盤形をしているが、この場合は、草を 。籌′、朝真きあが「ているから、人類という種のなか にも、火星で生活できるような亜種が生じ刈る鎌みたいな三日月型をした異常赤血球 が出現するのだ。前者が貧血をおこすのに ないともかぎらないだろう。 それにひょっとしたら、異常個体が異常対して、後者はべつに症状はでないが、面 な環境下で生きのびることがあるかもしれ白いことにこの〈テ 0 個体は、悪性「ラリ よ、。じつのところ、ふつうならミ = ータアに対する抵抗性の点では正常個体 ( て、いろいろの不利な状況を克服する用意オし をしておかねばならないような気がするのントは環境に対する適応度が低いので生存。 ) よりもすぐれている。つまり、悪性「 ラリアの多い地方では、正常個体よりも適 しにくいが、″所かわれば品かわる″、ヒ たとえば、「地球が月や火星のような状トの場合でも、淘汰がミ = 1 タントの味方応が高く、超優性とな「ている。 さて、ホモの異常個体 (<<<) が子供を 態になったら」と仮定してみよう。もちろをすることだ「て、ないことはない。 つくることは少いが、このオー んそれは、はるかな未来のことにちがいな ここに、対立遺伝子とがあり、がナンスのため、異常遣伝子は〈テロ個体に い。だが、「もし月や火星に住むとした に対して優性だとし、しかも、が突然よって保持されるので、この遺伝子の頻度 ら」というふうに問題をおき換えると、現 在の時点で考えることができるだろう。っ変異による有害な ( ) 遺伝子だとしてみは、部分的にはかなり高い。ある集団での

7. SFマガジン 1972年7月号

1 向けて出発させたように、宇宙船が飛びた 第章狭すぎる地球 っこともありうるだろう。 いったい何種類ぐらいの生物が、その原産地から移住して の世界では、・・フリッシュ作『時 行ったものだろうか。もちろん誰にもわからない話だが、数 の凱歌』のなかに、不死の人アマルフィが 万種を下ることはあるまい 野草からアンチ・アガック ( 抗老化剤 ) を 分離精製するところがある。これなどは、 チャ】ルズ・ cn ・エルトン『侵略の生態学』 製薬メーカーのサイエンス・エデイターだ ( 川那部浩哉、他・訳 ) った作者の本職がちらと顔をのそかせて、 史、世界史のような空間的な区分もあるの小説とは別の興味をそそる一節だが、じっ 宇宙のエコロジー序曲 だから、未来についても地球未来、太陽系さい抗生物質なんかはおかしな場所の土壌 前章では、過去から現在におこなった生未来、銀河系未来といったふうな形でとらから発見されることも多いのだから、いっ 物学的な事件にふれ、これからさきの問題えて、・ほくたちホモ・サピエンスの個や種の日か偶然に、宇宙船が奇妙なクスリを載 として、「次元 e< と次元 >•< の未来」というの寿命を考えることもできるはずだ。 せて帰還する可能性だってないわけではな 概念をだしておいた。 そうした未来のある日、かって秦の始皇 未来といえば、当然、時間尺上の問題で帝が徐福に命じて、不老不死の仙丹を求め ナカいまここで、・ほくがとりあげたい ある。だが過去については、日本史、東洋るため金銀財宝を積んだ舟をホーライ山に と思っているのは、エコロジー ( 生態学 ) 6

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いる星よりもずっと多いかもしれないの が、入射エネルギーを減らしたりクロレラは、惑星とみてよかろうとのことだ。恒星 の多くが惑星系をもっているとすれば、生だ。どの星にしても、高等生物の生存期間 7 を送りこんだりして、地球化する構想を一 は、全生命の生存期間の一部だけだし、生 部の人は検討している。また木星は、重力命のいる星の可能性も増してくるわけだ。 じっさい、科学知識の向上につれ、他の命の発生に好適な条件があっても、そのす が大きすぎるし寒すぎるが、アメリカのサ ガン博士らは木星にも生物がいると考えて星にも生物のいることを認めるほうが、むべてに生命が発生するとはかぎらないか いるから、太陽系内もまだ見捨てたものでしろ常識的とな「てきた。・サリヴァンら、住める星はかなりあるにちがいない。 もっとも太陽系外となると、行きつくま 著『われわれは孤独ではない』のうけ売り はあるまい それに一九七〇年には、オーストラリアみたいだが、もちろんだとも、宇宙には生で寿命がもたないだろうが、それには人工 冬眠の手も使えるし、のなかでよくみ のビクトリア州に落ちた隕石から、生命の物がたんといるのさ。 基本物質であるアミノ酸が発見され、地球まったく、銀河系のなかだけでも、生命られる、世代を重ねながらおこなう大移動 よ、 いかにも雄大である。そして O ・・ 外のものであることがアメリカ航空宇宙局をもっ惑星は一〇万個・シャプレー ) のポナンベルマ博士により証明されたかといわれ、他の計算では高等な生物のいそフォントネイ作『荒廃の惑星』では、アル ら、宇宙に生物のいる可能性はかなり増大うな太陽系は一〇億にちかい ( 小尾信弥教フィン艇長が、「惑星に植民できるかぎり してきた。 授 ) ともいう。こうした生物のいる確率のは、植民するのが当然です」という。お とい「ても、太陽のような恒星は燃えて計算は、まだ信頼できるほどの基礎はも「お、その調子だ。しかも、生態学上の問題 光「ているのだから、美しくみえてもまずていないから、かなりの差が生じるのは仕も考えながらね。でなきゃあ、ストレス死 無理。それをとりまいている、地球や火星方がないが、サガンは交易できるような世してしまいますよ ! もちろん、こんな呑気なことをいってい みたいな惑星でないとダメだ。それを探す界が一〇〇万個あるという仮定をたててい のがまず一苦労だが、光度の変化からあるるし、アメリカ航空宇宙局のキャメロンると、あまりにも現実ばなれした空想だと は、すぐれた社会が数百万もあるとしてい笑われそうだし、地球の現状すら解決でき 程度推測できるだろう。惑星がまわってい れば、通過中に恒星を隠すような位置にくる。ず 0 と内輪に見積っても、生命のいるないのにと叱られるかもしれない。だが ということは確人口爆発や公害のような問題も、これくら 星は地球だけじゃあない、 ることがあるはすだからである。 いの規模で前向きに考えねば、文明の停 また、戦道の乱れも利用できるだろう。実だ。だとすれば、それらの星に、ヒトが たとえば、連星である白鳥座の六一番は、住めないと断言することもできないのでは滞、ホモ・サピ = ンスという種の衰退をき たすかもしれないし、少くとも次元の未 楕円軌道にわずかな乱れがある。そこからないだろうか。 もし、それらの生命が地球型のものだっ来は開拓できないだろう。 第三の天体があるのではないかという疑い さてそれでは、そこにはどんな未来人が たら、問題はわりに少い。おそらくヒトや をうけ、やがて伴星が発見されたのだが、 その子孫たちも住めるだろう。それに住め登場するのだろうか ? 未来人は不死人た 花山天文台長の宮本正太郎教授によると、 これや = リダヌス座イ。フシロンなどの伴星る星は、さきに挙げたような、高等生物のりうるのだろうか ?

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えしてきた地殻変動のはじまりだろう、との連中ならそこでは生きられないので、彼 空想不死術入門ページより ) らのいない部分ができる。もし生えるやっ 考える者もいるのだ。地球磁場の変動とい がいれば、それは耐性菌であり、多分ミュ ったような問題もある。前章で述べたよう ータントだ。細菌からみれば抗生物質の添 解決できないことが多いのだろうが、いずに、洪積世前期や鮮新世には磁場が完全に 加は、とほうもない異常事態、環境の激変 れにしても、ここらで滅びてしまうのは知混乱した時期があったが、じつは同じよう 恵のない話である。 な変化がおこりだしているのだ。アメリカだったのである。 さいわい、一九七一一年は国際環境年。の地質学者によると、現在、地球の磁場は人間なら、そうした有害物質を必死にな "Only One Earth' 》「かけがえのない地球 弱くなりだしており、こ @.まま進行すれって除去し、もともとの環境を保存しよう を守ろうーをスローガンに、六月五日からば、一一〇〇〇年後には完全に消失すると考とするだろう。だが、さっき述べたよう スエーデンのス トックホルムで最初の国連えられている。 な、人間の歴 異常環境一正常環境 史になかった ・人間環境会議が開かれるから、現実的な面こうした環境の激変が 1 な ほどの変動が は専門家にお任せするとしても、どうにもおこれば、かなりの生命 1 気がかりなことがまだ残っているのだ。 が減びるのではなかろう っ地球におこ に り、現在の技 たとえば熱汚染は、地球の氷をとかすだか。ひょっとしたら生き ろう。大陸氷が一〇 % とけると、海水面はのびるのは、その環境に x 一 X 現の術がおよばぬ 出〇 の△ようなもので 六メ 1 トル上昇する計算になる。一九三〇適した突然変異体だけか 年から四八年までに、海面が六インチ上昇もしれない。第川章では、 優あればどうな 超応るのか ? こ したという報告もあった。この速度は、過耐性菌を例にして突然変 る適 けのんな具合に考 去数千年来の、海面の平均上昇速度の数倍異を説明したが、それで翅 だ。ソ連のデータからも、このままゆくと は、ここでもう一度考え 十 X に境えてゆくと、 境 ◎ 公害の問題 地球は水びたしになると予測されている。 てみよう 環臨 常伝も、むかしの この原因がすべて人為的なものなら、社会適当な栄養分をふくん ようなきれい の良識で解決できそうだが、人間の限界をだ寒天培地に、少量の細 な環境を求め 越えたところで動いているものなら、別の菌を塗りつけておくと、 るだけでは不 面から考えなおさねばならないかもしれなやがて増殖し一面に生え△ てくる。だが〈写真 2 〉 伝充分であり、 のように、、 しろんな抗生 雀もっと前向き じっさい、全地球にわたる異常気象や天物質をしみこませた紙の はで大規模な思乃 考実験をやっ 変地異を、地球がこれまでに幾度もくりか小片を入れてやると、並 0

10. SFマガジン 1972年7月号

增加がわるかろうはずがない。 一九六八年には、 だとすると、曰がクローズアップされてイタリアの大洪水や くるのだが、そのまえにÜの問題がひかえ中国と韓国の大干ば ている。・ほくらが住んでいる空間は、数的・つがおこり、寒波の 物理的な人口の圧力以外のファクターによ ためアイスランドと っても、ますます狭くいじけたものになりグリーンランドが流 氷でつながった。そ つつあるのではなかろうか。 の翌年も世界的な寒 高温化と低品化 波がみられ、さらに 一九七〇年にもワル 身近かなところから考えてみよう。雪が めつきり少くなったと感じる人は多いはずシャワでは異常な低 図 1 生命と温度 だ。事実、地球の温度が上っていることを温が記録されたが、 示す証拠はいくらでもある。 エジ。フトやインドは四九度という熱波に見 これに対して寒冷化の主犯は、核実験や デンマークのリスガードによると、一九舞われ、・ハレンツ海の水は姿を消した。 ジェット機などが空中にばらまく微小浮遊 一四年から四〇年までの三〇年ほどのあい これらは、一九六三年一月にみられた、物 ( ェアゾル ) で、これが太陽光線をさえ だに、地球全体の平均気温が〇・三三度上数千年ぶりの異常気圧配置がきっかけになぎるからだ。また森林伐採も、太陽熱の反 昇した。極地が熱帯ぐらいの暑さになるの ったといわれている。高緯度地帯では寒さ射をたかめるので、地球が受ける太陽エネ ルギーは減少する。ソ連の・・フディコ博 に、たった二六年しかかからないという報がまし、中緯度地帯は高温化し、低緯度地 告もある。だとすれば、・ (..5 : ハラード 帯では雨が多くなったのだが、やがて、こ士によると、反射率の上昇は毎年〇・〇四 の『燃える世界』のような、暑い状況に遭れには人工的な要因がからんでいるのでは % である。 遇しなければならないのだろうか ? なかろうか、といわれだしたのである。 これを地球全体でみると、炭酸ガスの温 ところが逆に、寒くなりだしたというデ この温暖化の主犯は、炭酸ガスだといわ室効果よりもエアゾルの冷却効果のほうが ータもある。一九五四年ごろから、北極はれている。これがガラス張りの温室みたい大きく働く、という説が支配的た。すでに 低温となり氷がふえ、一九六八年には一度に作用するからだ。ことに都市化のすすん地球は氷河期へむかってすすみだしてい 0 近くも下降したのだ。一九六九年には、 だ地帯は暑くなる。もちろん、炭酸ガスだる、という警告もあり、イギリスのラブロ ック博士は、これがナダレのようにおこる 北大西洋の氷は、過去六〇年のどの年よりけが犯人ではない。アメリカの・ナマイ も多かった。このまますすめば、今度は凍アス博士は、消費エネルギーの増加にとものは一〇年以内だというが、そのとき人類 死の番だが、いったい、どっちが本当なのなう、海の熱汚染を指摘する。とりわけ原は生き残れるだろうか ? そもそも自然のなかで、生命がどのあた だろうか ? じつはどちらも本当なのた。子力発電などが問題になるわけだ。 9