昨年十一月アメリカのマリナー 9 号とソ連の火星 2 号および 3 号が火星周よって作られたものと見ている。これは、月の高地地帯と対応するもので、 辺に到達し、あるいは着陸に成功してから、すでに半年の余が過ぎたが、そこれを見た初期の観察者たちが、火星を、地球よりは月に似ていると考えた の成果の中間発表が、このほどひらかれた国際宇宙探査委員会の第一五回例のだった。 会の席上で行なわれ、同例会に参加した三五カ国からの一〇〇〇人以上の科 こうした新らしい発見のなかでも、とくに目ざましいものは、南極地方の 学者たちの注目を集めた。 クローズアップ写真からもたらされた。 なかでも最も目ざましかったのはマリナー 9 号によるデータ収集の成果だ これまで、天文学者たちは、火星南極の極冠はほとんど氷結した炭酸ガス った。マリナー 9 号は約半年を経過した現在なお火星の周辺をまわりながら つまりドライアイスからできているもので、夏になると完全に消減する 情報を地球にむかって送りつつあり、これまでにすでに六八〇〇枚におよぶと信じてきた。だが、クローズアツ。フ写真によると、真夏でも、南極のほ・ほ 火星表面の写真をとって送信してきた。 中心部には、直径一一〇〇マイル ( 三二〇キロメートル ) の小さな極冠が存在 これらの写真は、カルテック ( カリフォルニア工科大学 ) のジェット推進していることがはっきりわかった。しかも、その形状から たとえばその 研究所で慎重に復原され組みあわされて、赤道を中心とした火星表面の、お非常に鋭角をなす縁などからーーーみて、極冠が、凍結した氷から形成されて よそ三〇。ハーセントに当たる地域および火星南極の全体の詳細な地図が作製 いるのではないかという説が再び有望になりつつある。 されつつある。実際、この写真地図はきわめて詳細にわたるもので、東西一 もしかりに、極冠の内部に水がとじこめられているとすると、これは、生 〇〇ャード ( 約九〇メートル ) の範囲が一単位になっており、火星表面が、 物学的に大きな、複雑な意味合いを持ってくる。火星の自転軸は、太陽のま おどろくほど刻明に写されている。 わりをまわるにつれてゆっくりとしたよろめき現象を起している。そのた それらの写真によって、この地域には少なくとも四つの非常に高い火山が め、極冠は一定の期間をおいて、普通の時よりも太陽光線に多くさらされる 観察され、その最も高いものは、地球の最高峰工ペレスト ( 約八五〇〇メー ことになり、その結果、約二万五〇〇〇年毎に極冠は完全にとけてしまい トル ) の少なくとも一二倍の高さを持つらしい。そして、そのうち二、三は、 とけた水が、火星の大気内の水蒸気をふやして、雨をふらせる。雨は、惑星 現在なお噴火している可能性があるといわれる。 の乾燥しきった表面を急流の大河や小川や湖やのネットワークでおおったで また、火星には地球上のどこよりも混沌とした、複雑をきわめる地形のとあろう。あるいは寿命の短い海でさえ、出現したかもしれない。 ころが多く見られるが、そうした峡谷のうちには、明らかに、比較的近い地 このほかにも、火星の火山の噴火が、火星の地表に氷結していた氷をとか 質学的時代において、水が流れて出来たものと思われるものがある。この地した可能性もある。その結果一時に大量に発生した水は洪水となって地表を 域の様相は、東アフリカのグレート・リフト谿谷を思わせるものがあるが、 流れたにちがいない。 その規模はけたはずれで、長さ二五〇〇マイル ( 四〇〇〇キロメートル ) 幅 火星の地表に見られる谿谷様の谷や、とくにニックス・オリン。ヒカ周辺の 七五マイル ( 一二〇キロメートル ) 深さ四マイル ( 六一一〇〇メートル ) にも波によって侵蝕されたような地形は、こうして発生した水によってつくられ 及ぶ。 たものかもしれない アメリカの天文学者たちは、こう推察するのであ る。 クレーターの密集した地域もある。科学者はこれらのクレーターが隕石に 連載ⅱサイエンス・ジャーナルー。」火星からのレホート 加藤喬 4 4
たゝいて吐く ! 」 「どのロもこのロもない。知っているから『ほざ』くまでだ」 汐見はこっち以上に冷たく静かに応じた。 「それも何から何までこ切をだーーーな・せって、これはおれ達がや ってるんだからな」 「ーーーお前、誰なんだ」 自分は身ノ内に冷気の広がるのを感じながら元の部下を見、衣嚢 のなかで・携えてきた武器をにぎりしめた。「おれと二年やってき た男じゃないナ。、何者だ」 「やめなさい」相手はせゝら笑った。「そんなもので私は破壊され はしない。異質なんだ。日本のこの地域にあんたと二年いた者なこ とに変りはない、今までどおり汐見と呼んでくれていゝ。があんた 方の世界の者じゃないんだ」 「じやどこから来たんだ。そして何をしようというんだ。もちろん イがいるのだろう ? 」 「いるーー・数えられないほどネ。この天体を吾々の故郷とおなじよ うにする為にやってきた。一ばん水が豊富なのでネ」 「故郷って、どこだ」 「海王星。あんた方がネプトウヌスとかポセイドンとか呼んでいる 世界だ」 「アンモニアの結晶とメタン・ガスの下の氷の世界に生物がいるの ー三〇〇度の」 「中は暖い。 NH も CH - もともに水の素に富んだ・熱をとりたが る物質だ。適応した型の生命を生んでも不思議はない」 「よし、解った。前から素振のおかしい男とは思っていたが、侵略 者の手先とは知らなかった ! ーーでは海王星の派出した活動員 " つま はざ かくし だが、アシモフは、そうなることを変え、生活の方法を変えて、充分 自体は、我々にとって決定的に致命に順応していけるだろう。 だが、それらが突然に、或は、か 的なことではない、と言う・ 現に、過去において、地球上の気なりのハイ・ペースで起こってきた 温が非常に高くて、地球上にひとか場合には、我々人類にとっては大き な打撃になるだろう、と彼は言う。 けらの水もなかった時代があった、 アシモフが問題にしているのは、 という また、反対に、地球の寒気がきび目下のように人類の工業技術が毎日 しくて、厚さ一マイルを越す程の水莫大な量のチリと炭酸ガスとを大気 河が発生し、地球上の何百万平方マ中に放出しつづけている時に、チリ イルという大陸をおおっていたことは、太陽光線を遮断して、その貴重 な熱が地球上にとどくのをさまたげ もあった。 て地球上を冷くし、一方、炭酸ガス しかし、そのどちらの場合にも、 は太陽熱をとらえて、地球をあたた 相当数の生物が生き永らえて行くの かくする、このお互いに相反する効 に充分なだけの陸地部分があったと 果が、いつどんな変化をするかも知 いうのである・ 地球の大陸の大きな部分を高い水れないことだ、という。 そこでもし、一方が急に他方より 河がおおっていた時代には、大洋の 水がかれ上って、大陸の近くのいわ圧倒的に多くなり、地球の大気が極 ゆる「大陸棚」といわれる部分が水端に冷くなるか熱くなるかすると、 ほんの一〇〇年かそこらで、地球上 面の上に出て、それだけ生物の住め に大洪水が生じたり、次の水河期が る面積を大きくしていた。 襲って来るということが、ないとも また、地球上の氷が全部溶けて、 地球上の大洋の総面積が大いにひろ限らない。もしそういうことになれ がっていた時分には、地球全体に亘ば、これは我々地球人類にとってま って、今はど寒冷地帯や砂漠地帯は ことに大変なことだ : : : と彼は言う のである。 なかったであろうから、生物の住め る面積はやはり予想以上に大きかっ そう言われてみれば、今後地球上 たろう、という。 での生活はどう変わっていくのであ したがって、こういう変化が長い ろう・・ : : 今から百年後、我々地球人 期間かかって起こって来るものなら類はどんな生活をしているのであろ ば、そのこと自体は、それ程致命的うか ? 非常に気になって来るでは だと考えなくともよい。その間に人ないか ! 類は、充分に適応して、住居の場所 ( 近代宇宙旅行協会提供 ) 界みすてり・とびつ 2 幻
った。一ばん先に現場上空へついた航空機だけがかろうじてその沈市も大ぶヾん・世界の半ば同様水の下にな 0 ていた。たゞ地勢 : 工の高いがわにあった県庁 没を目撃した。搭乗航空士は、よく墜落せずに帰ってきたと思われがこゝでは大きく傾斜しているのて田 るほど取乱して、「海面が盛上 0 てアウグストを押包むようにな 0 や、われわれの天体庁その他の疎開諸機関が一部ぶじだ 0 たが、そ た」とか「舷側の鋼鉄部をのこして船体が溶けてゆきながら沈んれも時間だけの命運だった。 自分は二次疎開の準備で忙殺されていた。軍隊は陸海空が一体と だ」とかいうことを口走った。このときの彼は信用されるよりさき なって「くらげ」退治に必死になっていたが、相手が水ではいかな に病院ゆきを強いられたのだった。 だが後には、おなじような事件が続々おこりはじめた。木造船はる兵器もやくにたゝないことに絶望していた。それに陸軍は近接す ると兵員がやられ、海軍は舟艇と潜艦が奇妙な透明の膠状ゲルに押 地球の海には浮べなくなった。 包まれて船体人員ともに身動きと呼吸ができなくなってしまうのだ そして、水位があがり始めたのである。 雨が十年ふりつゞいたって、海面は上りはしない。地球のもっ水った。 量に増減はないからである。しかし両極の氷がいちどに溶ければ現空軍だけが、空からあらゆる火器攻撃をこころみてやゝ活発な抵 とは科学読物の説く常識であ抗をつゞけていたが、「くらげ」どもの噴出する注水はときとして 在水位はもう廿尺ほど高くなる る。これらの読物は、読者を怖がらすのにあまり自信がないらし数百メートルの高さにも届くことがあ「た。すると航空機の溶けな 、われわれの常識判 いばあいでも抱いている火薬が爆発するという いつも『あいにくのことに、世界の主要都市は大半海岸ないし 平地にあり、地上 % の都市生活は破壊されるだろう』と但し書つき断をこえた事態が生じるのだった。「『重重水』は水ではない」とい う一部科学者の反論も、したがって充分考慮されうる根拠があった。 で脅かすに止まっているが、二百メートル上ることは夢にも考えな 「イヤア、またやったぞ ! 」 いから、関東山地の渋川あたりまでが水浸しになった場合の対策に 県庁屋根の「くらげ」と戦闘機がたゝかっているのを、テレビ劇 ついては一こうにご指示はない。 しかし我々はいまやその段階にいるのだった。伊藤所長のことがでも観るように窓から眺めていた汐見がさけんだ。「すごい まのは確実に五〇〇米は吹上げた ! 」 あってからは、世界のいろいろな方面で科学者の失踪がはじまり、 どうじに海洋がぐん / 、、拡がりはじめた。「天体物理庁」はなにを「なんだ、人が忙しがっているのに手伝いもしないで ! 」 と自分は叱言をいった。 してるんだ、という四面の楚歌も、われ / 、が恐縮していた時期は ごく僅かで、いまでは地上人類そのものが、仲間の攻撃どころでは「お前さんの言い草をきいていると、まるで怪獣が地球人をやつつ なくなってしまった。何者とも判らぬ、得体のしれぬ存在のくりひけるのを面白がっているようだぜーーそんな閑があるんだったらミ ろげだした殲減作戦に、われわれ地球の生物が十把一からげに締上ネをさきに「峠」まで運んじゃ 0 てくれないかナ。きようは午後か ら降る予報だろ」 げられ、日一日と命をちゞめているのだったから。
この割り合いで氷が溶け続けると、西暦二 0 〇 〇年には、北極海から氷がすっかり無くなってし まう。海面の気温も上昇して、最も寒い冬でも月 ~ 。一平均摂氏六度ほどまでしか下がらず、もちろん再 結氷は、あり得ないことになるという。 もしその通りになるとすると、気になるのは二 ん ′の〇兆トン以上もの融水の影響。海の水位が上昇し 4 ・亠て、海岸近くにある各国の都市は、水浸しになる 朝のではーーと心配する人もいるだろう。 だがポールチェン氏の調査によると、この一〇 〇年近くの間に、一〇〇兆トン以上の氷が溶けて いるのに、水位はわずか二三センチしか上昇して いない。従って水浸しになることは、絶対に起ら 、ないそうだ。 水位の点は問題がないとしても、北極海の氷の 蒸発によって、地球は大きな影響を受ける。第一 は北半球の気象である。 現在、北半球の気象は、北極海周辺の極地気団 の働きに左右されている。ところがその極地がそ れほど寒冷でなくなるとすると、この気団も性格 がまるつきり、ちがってくるにちがいない。冬に ■北極から氷が消えるー なっても寒冷気団が南下せず、かなりの高緯度地 北極といえばぶ厚い氷に閉ざされた荒涼たる風方まで、すつぼり南の太平洋気団に覆われる。シ ペリアのツンドラでも植物が繁茂し、生物相がす 景を思い浮かべるだろうが、その氷が急ビッチで 溶けており、一面の海水面がのそく日が近づいてつかり変ってしまう。 産業面でも大変革が来る。北極海は太平洋諸国一一、 ~ 一 ( = 、 ~ 《 ' 三。 いる A 」い、つ。 まさか、といいたくなるが、これは米国の極地と大西洋諸国をつなぐ海上輸送路となり、未開の まま残されたアラスカやカナダ、シベリアの極北北極海の氷原だがこれも近く溶けて ーント・ポールチェン氏が、長 探検界の長老、 年の調査の結果、つきとめたもの。まずはその結部から、石油やウラ = ウムなどの鉱物資源が開発論争が始まり、誌の科学 = 、ース欄でも紹介 され、北極海に面して多くの大都市や避暑地が建 果を紹介すると ということになるかも知れない。 北極海の面積は一二八〇万平方キロで、一八九設されることになるだろう。 でもホントに北極から氷が消えるのでしようか 三年には平均一三メートルの厚さの氷で覆われてその時期までわずか三〇年足らずーーとは全く ねえ、ポールチェンさん ? いた。つまり氷は一六六兆四〇〇〇億トンもあつおどろくべき話だが、もっともびつくりするの た。ところが地球の気温上昇でこの氷が溶け始 は、はるか宇宙の彼方から、この地球を観察して・レーザーで洋服裁断 、る他の天体人だろう。 め、現在では平均二メートルの厚さとなってしまし った。重量でいえば二四兆六〇〇〇億トン。何と見る見るうちに北極の輝きが消え、南の緑地帯レーザーといえば宇宙通信などで脚光を浴びて 七分の一に減ってしまったのだ。 が北上して行く。この現象をめぐってあれこれとし日 、る明日の科学の武器。地上兵器としても使えな 6
。ハーしているようだ。 いかと、各国の軍部は懸命に応用研究を進めてい体的に説明しよう。これまではウール生地をカッ るが、その平和的利用法が英国で考案された。 トするのに、カッターを使っていた。しかしこの このシステムはもともと船舶用につくられたも 発案者は英ゥール産業研究協会と、溶接研究協力ッターなるものは、ス。ヒードが遅いうえ、次第ので、スコット ( 船舶衛星通信システムの略 ) と 呼ばれている。これまでは水平線の向うの船や陸 会。それがどうしてレーザーなどをーー首をかしに刃先がにぶって、能率が悪くなる。 げたくなるが、何とこれで洋服を裁断する方法をそこで目につけたのがレーザー光線。出力八〇地とは、極超短波での通信ができなかったが、ス 考えたというのだから、全くおどろいた話だ。具〇ワットの炭酸ガスレーザーを使い、生地に当てコットによって衛星を中継させれば、見通し範囲 る。生地はたちまち溶解して切れる。こうしてコ外の相手とも交信ができる。 衛星電波をキャッチする世界最小の ンビューターで制御しながら、一分間に三〇メー 通信衛星からの中継電波を、直接受信する方法 宇宙通信アンテナ トルのス。ヒードで、洋服の裁断することにしたとはすでに開発が進められており、将来はテレビも いうわけだ。 直接受信になるだろうといわれている。これが実 レーザー光線の産業利用としては、金属の切断現すれば多くの地上中継局や高い送信アンテナも や成形、溶接などがあるが、それで洋服作りとは いらなくなる。スコットはこの直接受信の先駆者 思い切ったアイデア。宇宙通信の主役、レーザーとなるものと関係者は大きな期待を寄せている。 の応用法としてはッグンの声高い 地球とりまく三つのリング ■ ミニ宇宙通信装置 ■ 宇宙から見ると地球はどんな姿に ? どなたも 人工衛星を利用した宇宙通信システムは、情報こうおっしやるにちがいない。昼の部分は光り輝 伝達の主役となりつつあるが、困ったことにこれき、雲や海洋や陸地が、もやもやと独特の模様を 作って : ・ は大がかりな装置が必要だ。 つまり月面や宇宙船上から撮影した地球の写真 直径数メートルから十数メートルもの巨大なパ ラボラアンテナ。それを収めるドーム。強力な増そのままというわけだが、果してそうだろうか。 アポロ号の宇宙飛行士は、月のデカルト高地に 幅装置。そして高性能の送受信機などなど。 静止通信衛星の場合はまだよいとしても、軌道特殊望遠カメラをすえ、地球をカメラに収めた 衛星を利用するとなると、自動的にそれを追尾すが、その地球は、これまでの姿と、まるつきりち る複雑な機構も必要となる。簡単に通信というがっていた。 が、実際に送受信するための装置を作るのは並み月のように昼の部分が輝いているのは従来と同 大ていではない。 じだが、地球のまわりに三つの光り輝くリング 何とか手軽に宇宙通信ができないか、通信衛星があり、夜の部分まで見事に取り巻いていたの を利用できないものかーー各国の通信技術陣は懸だ。 リングの一本は南極の上空を通り、一本は赤道 命になっているが、英国防当局はこのほど世界最 小の簡便な宇宙通信システムを開発した。 の上空を通っている。そして残りの一本は、それ パラボラ式のアンテナは直径わずか一メートとタスキがけに交差している。まるで人工衛星の ル。しかし精密な追尾装置を持ち、宇宙からの電軌道のようなこのリング、地上からではまるつき 7 波を正確に受信できる。アンテナの直径が小さい り見えないのに、どうして写真にキャッチされた 2 ほどキャッチできる電波も少なくなるが、増幅装のだろうか。 、、こ置などの性能を向上することによって、それをカ実をいうとこの特殊望遠カメラは紫外線だけを
と云った。「ひろい宇宙には、珪素生物どころか、硫黄生物だっ て燐生物だってあるでしよう。、どうしてリチウム生物がいちやア 不可ないんです。或るところで、そうした 1 族の銅系生物が、酸水 化物を栄養にしたり海や大気にしたりしながら、その等価物質を自 由につかうため家畜化することに、し 、つ成功するか知れはしません ・せ。地球でヒトが、おなし炭素族をそうしているように」 「じゃ : ・ : ・あのときの出ていった水は 自分はかすれ声でささやいた。 「もちろん、そうなった博士です」 汐見はことも無けに言ってのけた " 「カプシュルはそういう風に 三段階ぐらいに働くようになっています。世界じゅうで、とくに科 学者ばかりがきゅうに居なくなっているのはその為です。しかしわ が伊藤所長はさすがに大したもんでしたナ " 同化とどうじに生体活 トロビズム 動の基礎向性が注込まれるから、ホンの一瞬間だが地球人の理性が 双方の思念をあわせ持って、委細を知るんです。博士はそいつを仲 間に警告することを行ってる ! おどろいたナ。ほかの連中はみん な一コロに死っちゃってるのに、奴さんだけはどういう訳か強靱な 意志をのこして抵抗してるーーー特異体質なのかも知れないが、こい つはあまりウマくないんだナア」 語句のおわりはまるで別人のように上司を奴さん呼ばわりして囎 いている汐見を、自分は薄気味わるく見据えた。 「お前、何を知っているんだ」 できるだけ平静を装いながら自分は言った。 「どうして儀牲者の精神状態や、よその国の人々のことまで言える んだ。所長の語る、にたえた誠実さを「うま」くないとは、どのロ や うそぶ 世界大洪水が起こったら : : : ? 人工的な原因による大目然の均衡から少しかさが減って約八百万立方 マイルの水となるが、その大部分は の破壊にもとずく災害の発生 は、これまで何度となく言われ、ま大地に吸収してもらえなくて、大陸 た驚告されてきた。また、大自然そを取りまく海に流れこむ。 のものも、いつまでも同じ状態にと ところが、目下の地球上のすべて どまっていてくれるわけではなくの大洋の総面積は、約一億四千万平 て、次々に変わって行って、時には方マイルだから、もしこれらの水が 思いがけない大災害や大変化を人類平均にそれだけの海の表面にかぶさ にもたらす。 ったとすると、大洋の高さは、約百 たとえば、何らかの原因で自然の四十分の八マイル、即ち、〇・ 0 五 均衡が破れ、地球の気温が上昇し、 七マイルーーーということは、メート 南北両極の氷がとけてしまったら、 ル法に直して、約九一・ニメートル どういうことになるのか ? 世界大上昇する。 洪水が起こって、我々は住む所がな とはいえ、これだけ大洋の水が上 くなるのではないだろうか ? 昇すれば、当然それらの増加した水 その反対に、気温が急下降し、新は、海の周辺の今まで海でなかった しい氷河期が襲ってきたら、どうな海岸地帯へもあふれ出し、地球全体 るのか ? その場合にもまた同様の の大洋の表面積は大幅にふえるか 結果となろう。 ら、それだけ実際に地球上の水位が この重大な問題に対して、御存知上るわけではないし、またそれ程大 作家で、同時に博学なサイェシ洋の水がふえたのでは、大洋の底に ス・ライターでもあるアイザック・ 及ぼす重量も大きくなるので、大洋 アシモフが、最近の「サイエンス・ 底も幾分沈み、更にその水位を低く ダイジススト」誌上で述べた意見をするが、それでも、おそらく、地球 御紹介しておこう。 上の大洋の水位は、六 0 メートル位 それによると、地球の大地は、目 は、今よりも上昇するだろう、とい 下約九百万立方マイルの氷を支えて おり、その約八十五パーセントは南 だとすると、これは大問題であ 極大陸の上にかたまっている・ る。世界の大都市の多くは、水底に さて、これらの水が全部溶ける沈んでしまわざるを得ないだろうー と、水の密度は水の密度より大きい ・まさに、世界大洪示である・ 220
ニアまで届くだろうぜ。地殻からすれや海なんて浅いもんだから 汐見はおどろいた態で自分の腕をつかんだ。「やめなさい ! 」と 彼は叫んだ。「何だ、それは ! 何をやらかしたんだ ! 」 「だから実験だと言ったろう ? 」と自分はそれを取込みながら答え 自分はそう言って今までの溜飲をいちどに下げながら、汐見は怒 フォ′グル カカれの顔色はた た。「吹鳴器具の試験につかう音響管だよ。自由な音波が出せるんって自分を射ち殺すかもしれないと思っていた。・、、 だ。おれはネ、研究所のカビネットの窓で、所長の水がしきりにおしかに変ったが、態度はすこしも変らなかった。かれは黙ってジッ れに何か報せようとしていたとき、君が癇声でおれを呼んだとたと坐ったまゝ、長いこと自分を見つめていた。そしてやがて静か ちりめん んに物妻い縮緬皺をたてゝ崩れ落ちたのを見たんだョ。君の声もヒに、 ステリーじみていたが、所長の構造もまだやわだったんだろう。し「どうしてそんな事をこゝで試したり話したりするんだ」 かし音の伝わりが、水中では空中より三倍も速く強いことを考えて ときいた。「それでは吾れ々々が生かして帰さないだろうとは思 みるのは無駄じゃない 、と思ったのさ。きみら水諸君が音に弱いこわないのか ? 私が約東を守ろうとしたって他の者が承知しなくな とはほゞ確実になったネ。我々は震動波できみらを攻撃する。覚悟る」 よろ なさるが宜しかろう ! 」 「思ったが敵地で実験しなきや本当の成果は分らんからさ こんどは汐見の顔いろも変った。かれは険しい態度で自分から音とも。殺したまえ。我々だって捕虜や軍使の違反は銃殺する。だが おれが帰らなければ、実験は成功したことになるんだよ。おれは劉 響管をひったくると、両手にもって仔細に検べはじめた。 「たゞの発振器だ」とかれは動じない風をみせようとしながら、そ博士とそう打合せて来たんだ」 れを自分に返して言った。「一部的な、あんた方どうしの戦う銃弾汐見は以前からよくそんな目付で自分をみた・お得意の促すよう われわれが地球動物より音に敏な視線をそゝぎ、それから窓外にまた円盤が人をおそう蜂のように ぐらいの効果しかありやしない 群がってくるのをチラと見ると、噛んで吐出すように、 感なのは事実だが、しかしもうほゞ全体を海洋にしちまってるー あんたは地球という言葉の出来を忘れてるのか ? 丸い天体の全球「ばか ! 」 と言った。「本気でそんな事やってるのか ? 」 面をどうやって音波で掃蕩するつもりだ。どんな高い所からーーそ んな所はもうありやしないが、発射しても、音の波は小さな弦だけ「敵にたいしちゃ奇妙な質問だナ。本気は当り前だろうじゃない の部分しか衝たずに大部分はむだに宙へ去ってしまう " 中波の無電か」 「阿呆い」 とおなしことさ。決め手にゃならんよ」 「地上ではそうだ。だがおれ達は月からやるよ。この・自然が億万 ふたゝび強くそう叫ぶとともに汐見はみる / 、艇の天井へ届くく 9- 年前からあてがってくれた監視衛星からレーザー線で全地球面にグらいの一ッ目に変身した。そして、水泡のはじけるようなぶくぶく ルリとまんべんなく震動波をお見舞する , ーー秒速一キロでポセイドした含み声になって呶邱りつけた " みなわ
は、一九六〇年、彼四十五歳のとき。以後、アメい・ , 1 ジング、ファンタスティック、ギャラクシイ誌〕・ をおもな舞台に、ユーモアと幻想の入りまじった . ・ ふしぎな作品を書きつづけたが、なにぶん短篇ば かりなのと、地方にひきこもって。フロやファンと の接触がまったくないため、一部の人びとに認め , られただけの地味な存在だった。それが急に注目 ~ されはじめたのは、六八年に始めて長篇を、それ . ・ ) 勢「 ( 「一・い【 ~. ・ - もたてつ・つけに三冊、発表したときからだろう。 ~ ・ ート。ヒア惑星の支配者たちが、彼らの世【・・ 2 未来のユ 界を脅かす危機を打開するため、地球の過去から . 《《 ー・トマス・モアをひつばってくる 処刑寸前のサ という "PAST MASTER"P ホメロスの『オデ : ュッセイア』を宇宙版に書きなおした豪快な冒険 譚 "SPACE CHANTEY"' そして、異星から きた七人の無邪気で利発で残酷なプーカ族の子供 たちが、彼らの作る詩の力で地球人をみな殺し にしようとする。 "THE REEFS OF EAR- TH"O どれもそれぞれに好評だったが、中でも・一 . "PAST MASTER" は、「シリアスな哲学的、 思弁的作品が、かくも華麗に抒情的に書かれたの一 ~ 】 : は一つの小奇蹟」 ( メリル ) 「奔馬性狂気の傑作」 ( エリスン ) と絶讃を受け、その年のヒュ ネビュラ両賞候補にもの・ほった。同時に、短 篇のほうでも、『オービット』『クオーク』『ニ ュ ・ワールド・オプ・ファンタジイ』などのオ リジナル・アンソロジイに欠かせない名前となっ てきた。そして、七一年には、第四作目の長篇一二 ' を "FOURTH MANSIONS" を含めてネビュラ 賞の三部門の候補にのぼり、ラフアティー旋風を まきおこした。最近では創作のビッチもぐっと上 がったのか、すでに七冊目の長篇と一一冊目の短篇 集が近刊予告にはいっている。 さて、ラフアティーの作風だが、これの説明に は弱ってしまう。アメリカほら話の流れをうけっ いだ、とてつもない誇張とユーモア、アイルラン ド伝説のロマンティックな幻想、詩、シンポリズ 4. 当ト - 幸斗厩。ゾ ム、言葉の遊び、的要素、土臭さ、特異な言 語感覚が生み出す ( 翻訳者泣かせの ! ) 文章、生 活者の知恵、それらが渾然一体になった、きわめ て個性的なファンタジイとしか言いようがない。 「ラフアティーについて、これだけは知っておか ねはならない。彼は小説を書いているのではな ′おノ、 0 ・ ~ しお話を語っているのだ。彼の現実はわれわれ ルの現実ではない。そして、彼の描く人物は、ふつ うわれわれの考える登場人物とちがって、どれも ラフアティーの声なのだ。子供も、おとなも、異 も . な摯星人も、コン。ヒ】タも、みんなラフアティー語 ・ : そして、この登 をしゃべっているのである。 第ッド 場人物たちをあまり真剣にとってはいけない。彼 」・らはしばしば不愉快な死をとげるーー・もっとも、 たいていはそれほどの苦痛なしにだが。つまると ・「ころ、彼らはお話の部分にすぎないのだ。道具な 第「 ... 気 ' ~ のだ。彼の『スナ , フルズ』という中篇で、わた しは、ある出来のわるい惑星の上を追い回される ・二人の地球人に感情移入するという、失敗をやら ・かした。この惑星の創造主は、おもちゃの熊に似 ・・た大きな生き物なのだが、地球からきた探険隊の 。態度に腹を立てて、ほかのメイ ( ーを殺してしま ったのだ。そして、最後にこの神は、残った二人 も殺してしまう : : : 」 ( リチャード・ガイス ) まあ、とやかく説明するより、小説を読んでも らうのがいちばんてっとりばやい。本格的な紹介 はこれからだが、こんどの特集でこの異色作家 . ド ( というより、ホラ吹きおじさんと呼ぶほうが似 つかわしいかもしれない ) の力のいくぶんなり ' 、幺かをお伝えきたら幸」だと思う。 ( ・おりである。『長い火曜の夜だった』はギャラク シイ誌六五年四月号。『町かどの穴』はデーモン ・ナイト編のアンソロジイ『オービット 2 』 ( 六 メこ ~ 七年 ) 。そして、『山上の蛙』は、第一短篇集 €'NINE HUNDRED G RANDMOTHERS" 5 ( 七〇年 ) のための書きおろし。 1 ・罍い
日本 S 齏 / ヴェルズ 新たな SF の地平を拓く べく登場する気鋭の作品群 ! - 早川書房 四六版上製本 駆使して創みだした新機軸六篇を結集 ! の第一人者が膨大な情報と鋭利な感覚を 説を書くという事は」他 - ー一日本 SF 界 「牙の時代」ユニークな文学世界観「小 報の内発的変化に進化の神秘を探るカ作 全生物遺伝子の共通の根に起こる基礎情 小松左泉定価繝円 牙の時代 イクションに仮託して探る意欲大作 ! 造する著者が、種としての人類の可能性をフ れぬ洞察力でまったく新しい独自の思想を創 されるのか ? ーー一人類・文明・社会への底知 遙かな未来からの思いもかけぬ来訪者に征服 生みだすのか ? あるいはまた、遠い宇宙、 とも自ら築いた文明のうちに、その後継者を 人類は果たして、地球の最終王朝か ? それ 小松左泉定価 650 円 継ぐのは誰か ? 最新刊絶賛発売中 /
てるし、あそこで戦ってたときはまるでローアそっくりに見えたでは、そのことを隠したり打ち消したりすると、おらは聞かされた ナし力しのもんが闇の家来を念じ出せるもん 8 だ。おらはあんたを、ローアとおんなじぐらいに尊敬し、愛してるだ。だけどここじゃ、こ、・、、 だ。それに、地球人はローアとおんなじくらいおらたちの役に立つだで、隠すこともねえだ。それにおもしろいだよ。見てなせえ、お ことがわかったもんだで、おらの仲間たちがあの崖の下で、あんたらがいまから風みてえに、あの藪をそよがしてみせるでな。ほら が落っこちてきたら八つ裂きにすべえと待ちかまえてただ。それ ルターガイト に、おらたちオガンタは、殺されそうなようすのやつを見ると、殺「ふしぎな阿呆だ。騒霊を持っている ! 」 や、おらが騒霊だだ。そ 「うんだ、それが地球の呼び名だだ。いい したい衝動が起きるだよ。おらたちは、おなじオガンタ仲間でも、 殺されそうなようすのやつを見ると、殺しちまうことがよくあるれでいて、おらは目に見える生き物でもあるだ。むかしは、時がた つにつれて、おらたちはどっちかの形を捨てて、どっちかになった だ。これは、おらも間尺に合わねえこんだと思うだが 「わたしもそう思うよ、チャヴォ。小さな岩がいくつか、むこうのもんだ。闇の体をおさらばして目に見える生き物たけになるか、見 える体を腐らかして、幽霊だけになっただ。でもいまは、オガンタ 斜面の上で踊りをおどっているそ。わたしの目の錯覚だろうか ? の待ち時代だで、おらたちはどっちの形も持ってるだ。それで、そ あれは、岩そっくりの小動物がじゃれあっているのだろうか ? 」 「いいや、あれは岩が踊 0 てるだよ、ガラマスクのだんな。あんたの形のむこうさ行くことはできねえだ」 の目の錯覚じゃねえだ。ほら、おらがこのヒターをもういっぺん弾「いまはおまえたちがなにかを待っ時代だというのか、チャヴォ ? よこを待っている ? 」 く。すると、また踊りだすだ。ほら ! ほら ! 気のうきうきするオ冫 「おらたちになにが起こるか、それを見るだよ。いまは待っ時代で 音楽だと思わねえかね、ガラマスクのだんな ? 」 、、シゴだもん もいちばん気がかりなときだだ。えらく幅のせましノ 「わたしならそうはいわんな。くそ、たいがいにしろ、チャヴォ。 どうしても、わかりきった質問をさせたいのか ? なにがあの岩をで、いっときに、ほんのわずかなもんしか登れぬえ。それに、てつ ペんも、むかしみてえな、てつべんらしいてつべんとちがうだよ」 踊らしているんだ ? 」 「わたしはもう寝るそ、チャヴォ。それから、あのいまいましい楽 「おらが岩を踊らしてるだよ、ガラマスクのだんな。でなけりや、 器もおまえの声も、今夜は一一度と聞きたくない」ガラマスクは無表 おらの闇の仲間が踊らしてるだ。なんでそうびつくりするだね ? 情な声でつづけた。「しかし、眠っているまに、おまえがわたしを 地球でも、おんなじことがあるでねえか ? 」 殺さないという保証はあるか ? 」 「もしあるにしても、わたしは聞いたことがない」 「いや、あるだ。聞いた話だが、地球では十人に一人の若い衆が闇「ガラマスクのだんな、オガンタが夜をけがすと思うかね ? 」 の仲間を持ってて、それには地球ドイツ語でちゃんと名がついてる「ふん、そんなことをわたしが知るか ! とにかく眠るぞ」そうい だ。だけど、どっちの場合でも、闇の仲間は自分の家来ただ。地球うと彼は眠りにおちた。むかっ腹で、あっというまに、ふかぶか