過することによって、人間に危害を及・ほしてはならない』っていうでしようーーー」 んですもの。どんな人間でも、よ。これが、ロポットの人生観のエ 「なぜですって ? なにか重大なことに、自分の耳にしたことが重 ッセンスなの。ロポットは決して差別はしないわ。ロポットにとつ大なことであるのに、彼はたぶん気づいたのね。それに、マダリアン て、人間はすべて平等なのよ。そして、やなをえず、ロポットのレは彼に充分チップをはずんで、なにも口外しないように頼んだ、と ベルで仕事をしなければならないロポット心理学者にとっても、すは思わなくって ? あなたは、活動中のロポットが、不法にも地球 ・ヘての人間はまったく平等なのよ。 上を運搬されていたっていうニュースが広がってもいいというの」 自動車の運転手が答えを聞いたということなど、マダリアンの頭「じゃあ、彼は、ジェーンの言ったことを思いだすでしようか ? 」 にはうかばなかったのね。あなたがたにとって、運転手は科学者で ヒーター、あなたは、運転手は猿のちょっ 「あたりまえじゃない。。 はなくて、自動車の単なる動く付属品にすぎないのね。でも、マダと上で、記憶力などないと思っているようね。でも、運転手にも頭 リアンにとっては、彼は人間で、証人だったのよ。それ以上でもな はあるのよ。答えは、とても印象が強いでしようし、きっと何か覚 く、それ以下でもないわ」 えているわよ。たとえ、言葉や数字を少し間違えて覚えていても、 ポガートは信じられず、一頭を振った。「でも確信がありますか ? 」無限を扱うわけじゃないでしょーー約八十光年内にある五千五百の 「もちろん、あるわ。あなたは、もう一つの問題点に、どんな説明恒星もしくは恒星系を扱えばいいわけよ。わたしは正確な番号を捜 しだしたわけじゃないわ。あなたがたは、正しく選びだすことがで をつけられるっていうの ? 証人がドキッとした、とマダリアンが 言ったことについてよ。ジェーンは箱に入れられていたんでしょ ? きるのよ。必要なら、心理探査も使えるでしようーー」 二人の男は彼女をまじまじと見つめた。ついに、ポガートが信じ でも、彼女は活動を止めていなかった。記録によれば、マダリアン 「どうして確信があるんです ? 」 は、直感ロポットの活動を止めることに絶対反対だったのね。そのるのを恐れながら小声で説いた。 しばらの間、スーザンは今にも、こう言おうとしていたーーー・な 上、ジェーン 5 号は、他の四台のジェーンと同じく、ひどく無ロだ ったわね。たぶん、箱の中では静かにしているように、とジェーンぜって、・お・ハ力さんね、フラッグスタッフに電話をかけたからよ。 に命じることなど、マダリアンは思いもしなかったのでしよう。そそして、運転手と話したからよ。そして、彼が、聞いたことを教え う、箱の中でのことだったのよ、答えがついに形をとったのは、当てくれたからよ。そしてフラッグスタッフのコン。ヒュータでそれを 然、彼女はしゃべり始めたわ。美しいアルトの声が突然、箱の中か調べ、その情報に適合した、たった三つの星を選びだしたからよ。 ら聞こえてきたわけね。もし、あなたが運転手だったら、その瞬そして、ポケットに、その名前を書いた紙が入っているからよ。 間、どうするかしら ? きっと、あなたはドキッとするわね。運転でも、彼女は言わなかった。全部、彼に調べさせてやろう。注意 「どうして 深く彼女は立ちあがり、そして、嘲笑うように言った。 手が事故を起こさなかったことこそ、不思議よ」 ただの女の直感よ」 「でも、かりに運転手が証人だとして、彼はな・せ申しでなかったの確信があるのか、ですって ? ーー
アベ・ ( イオス行動制御作用を制御できるようになると、以前の精 夜の、通りを若い一一人連れがぶらついていると、乞食があらわれ 神状態はどもっていたとしかいいようのないほど、何事も速く、な めらかに進行するようになった。その作用は全く役に立たない 「なかなか結構な晩で」乞食は言って、帽子に手をかけ会釈した。 「ところでご親切なおふたかた、一財産つくろうと思 0 ているんで誰もがそれを認めた。幼児期に簡単な暗示手術が施されるようにな り、アベ・ハイオス行動制御作用は、完全に取り除かれた。 すがね、千ドルばかりご都合願えないもんでしようか」 輸送や生産は、すでに瞬間的に行なわれるようになっていた。数 「この間の金曜日に千ドルやったじゃないか」若い男が言った。 「おおせの通りで」乞食は答えた。「ですが、宵のうちに十倍にしカ月、数年かかったものが、今やほんの数分、数時間でこと足り る。八時間のうちに、何度でもちがった生活がおくれるようになっ て、使いの者に持たせましたよ」 たのだ。 「そうよ、シ ・ヨージ。返してくれたじゃない」若い女が言った。 メイナス・モテュ フレ一アイ ・フィキシコは、触知度量計器を発明したところだっ 「あげなさいよ。信用できそうだもの」 ニグダス た。フレディは夜盲族であり、度量計器といえば、この種族だけが そこで男は千ドルやった。乞食は帽子に手をかけて礼を言うと、 持っているものである。人々は、それそれの性質と傾向とによっ 財産づくりに出かけていった。 オーロリア / ズへメロピアンズニクタフス 金銭取引所にはい「ていくと、彼は、この街き 0 ての美人、イルて、三種族にわかれていた。夜明族、昼盲族、夜盲族ーーあるい ドーナーズ は、朝行族、昼行族、夜行族とも呼ばれる。午前四時から正午ま ーラに出くわした。 デフォンサ・インパ 「今晩結婚してくれないもんかね、イルディ ? 」乞食は、愛想よくで、正午から午後八時まで、午後八時から午前四時までというの が、それそれの活動期だ。この三種族の文化形態、生活様式、経済 たずねた。 ニクタロ・フス 「まず、しないでしようね、パジル」彼女が言 0 た。「あなたとな状況、活動内容などは、少しずっちが「ていた。夜盲族であるフレ ディの仕事時間は、長い火曜日の午後八時に始まったのだった。 ら何度でも結婚するだろうけど、今夜はまるで予定にはいってない フレディはまず、仕事場を借りて、設備を整えた。所要時間は一 でも、。フレゼントしてくれるのはかまわないのよ。。フレゼ メイナス・モデュ 分。交渉、選択、設置ーーあっという間のことだった。触和度量計 ントって大好きですもの」 だが、彼と別れると、彼女はつぶやいた。「今夜は誰と結婚しょ器を発明したのはそれからだ。これに、もう一分。ついで、工業 化、商品化ーーー三分たっと、すでに大手商社の手に握られていた。 うかしら ? 」 メイナス・モデュ ーゲルべイカーといった。彼は、一時間半で触和度量計器はあたった。魅力は充分あった。三十秒とたたない 乞食よ、・、ジレ・・、 世界一の大金持になる。八時間のうちには、四度財産をつくりあうちに、注文の波がおしよせはじめた。八時十分・・ーー金持連中は、 げつ四度ともすっからかんになってしまうーーーしかもその財産たるそれぞれこの新式モデールを手にしており、大勢は決まったも同 然だった。何百万もの大衆が、先をあらそって買いはじめた。今宵 や、並の人間には及びもっかないほど桁はずれなものだ。 た。 オフィス 9 6
ができりや、 - ジェ 1 ン型ロポットは直感力で答えをひきだすことだ スを楽しんでいるのに気づいていた。 ひそかに、ポガートは、自分がいびっているのが、今はいないスろう。よっぽどの運にめぐまれない限り、われわれには手にできな 3 いものをね」 ーザン・キャルヴィンならばなあ、と思っていた。マダリアンは、 かってのスーザンより、もっと元気がよく、大げさであったーー物「わたしは思うんですが」・ホガートがそっけなく言った。「もし、 事がうまくいっている時のはなしだ。うまくいっていない時は、もあなたがそんなロポットを手にしたら、その特別な才能にだけでき ろくもふさぎこんでしまうのだった。ス 1 ザンが決してへこたれなることは、はじからやらせるのでしようね」 かった程度の困難のもとでも、である。マダリアンの狙っている的マダリアンは力強くうなずいた。「そのとおりだよ、。ヒーター というのは、まさしく金的であった。スーザンですら、おいそれとばくは自分でそう言っただろうね。お歴々をおどろかす心配がなけ は狙わないような代物である。 りやの話しだけれども。たのむから、彼らにはないしょだ・せ」 マダリアンは、ポガートの言葉に反応を示さなかった。かっての 「本当に天才ロポットが必要だとお思いなのですか ? 」 スーザン・キャルヴィン以上である。スーザンならまったく軽蔑し「言葉とは何だろう ? ぼくはロポットに、無作為に相互関係をつ きった態度をみせたものだが、彼ときたら、何の反応も示さなかっくる能力を付与しようとしているんだ。それも、超ス。ヒードで、高 たのだ。実は、ポガートの言葉を聞いていなかったのである。 い認識能力を持ったやつをね。そして、陽電子頭脳にそれらの言葉 彼はいどむように言った。「やっかいなのは、認識の問題なんを代入しようと努めている。それができたと思ったけど、実はでき てないんだよ、まだ」 だ。ジェーン 2 号は相互関係に敏感に反応するように作られてい る。彼女はどんな代物でもその相互関係をつかむことができるんだ彼はジェーン 2 号を不満げに見た。そして言った。 が、つかんではみても、価値のあるなしを見わけられないんだな。 君のもっているうちで、もっとも重要なことは何だね ? 」 こっちには、彼女のつかんだ相互関係がどんなものかわからない。 ジェーン 2 号の顔がまわって、マダリアンを見たが、何も言わな 重要な相互関係を言わせるようにプログラムするのは、容易なこと かった。マダリアンはあきらめの口調でささやいた。「彼女は今、 じゃない」 相互関係・ハンクの中を調べまわっているんだ」 「わたしが思うに、あなたは、幻ダイオ 1 ド接合点における。ホテ ジェーン 2 号はついに単調な口調で言った。「自信がありませ ンシャル低下のことを考えていて、スパークがーー」 ん」それが彼女のだした最初の音だった。 マダリアンの眼が天井を向いた。「彼女は、不定の答えのできる 「ちがう、ちがう、ちがう、ちがう , ーー」マダリアンの声はしだい に小さくなっていった。「ロポットにすべてを吐きださせることは式をたてるに等しいことをやっているんだ」 「あなたは、この計画 「わたしにはわかりませんがーとポガート。 できない。われわれ人間なら自分でそれができる。問題は、ロポッ トに重要な相互関係を認識させ、結論をはきださせることだ。それをすきなように進めてもいいのですか。それとも、今すぐ手をひい
スーザン・キャルヴィンは、あたりをゆっくり見回しながら、ポなことだった。だから、その二つの間には、関係があるに違いない ガートのオフィスに入ってきた。そのあとやっと、彼女の眼は、研わ。無関係な一一つの異常な出来事がつづけて起こる可能性はあまり 究主任の上でとまった。彼女は、引退した時に比べて、かなりふけに低くて、気にかけることもできないくらいよ。始めから話してち ようだい。 ていた。髪の毛はすばらしい白髪になっており、顔のしわもふえた 自分が・ハ力なことをしたのが・ハレてしまうなんてこと ようだ。弱々しく、まるで、向こうが透けてみえるかのようだっは、気にしなくていいのよ。そんなこと、わたしにはずっと昔から た。つきさすような、妥協を許さぬ二つの眼だけが、かっての面影わかっているんだから」 をとどめているようだった。 ポガートは弱々しいせきばらいをして、話し始めた。 , - 彼女は注意 ポガートは手をさしだして、元気よく歩みでた。「スーザン ! 」深く聞き耳をたてていた。時折、その枯葉のような手をあげて、彼 スーザン・キャルヴィンはその手をとって、言った。「お元気その言葉をとめ、質問した。 うね、ビータ 1 、年の割には。わたしがあなただったら、来年まで彼女は、あるところでは、大声で笑った。「女の直感ですって ? 待ちませんよ。今すぐ引退して、若い人に譲るわねーーマダリアン 坊や、あなたがたは、そんなものをロポットに求めていたの ? 正 は死んだのね。昔の仕事をやらせるために、わたしを呼んだの ? しい結論に到達した一人の女性といままでずっと顔を合わせていた 肉体が死んでから何年もたつのに、あなたは古代の遺物にすがらな くせに、その女性が知力において、あなたがたと同等もしくは優れ ければならないの ? 」 ているという事実を受けいれなかったあなたがたが、『女の直感』 、え、とんでもない、スーザン。わたしがあなたを呼んだのはというものを発明したっていうの」 」言葉が途切れた。結局、いかに切りだすべきか、よい考えが「えー、まあ、そうですね、スーザン。でも、どうか続けさせてく まったく浮かばずじまいだった。 ・こさし 」彼は続けた。ジェーンのアルトの声のことを話すと、 だが、スーザンは、今なお、昔のように容易に彼の心を読んでい 彼女は言った。「男性に対して反抗的に感ずるか、単にそれを卑し た。関節が硬ばっているので、注意深く椅子に坐り、言った。「。ヒむべきものとして捨てさるかは、時には、難しい選択ね」 ーター、あなたはやっかい事にまきこまれたので、わたしを呼んだ「ええ、まあ、続けさせてください」とポガート。 のね。さもなければ、あなたは、生身のわたしを一マイル以内に呼彼がすべて話しおえると、スーザンは言った。 びよせたりしないもの」 を、一、二時間、使わせていただけない ? 」 「そんな、スーザンーー」 「かまいませんとも。ですがーーー」 「おべんちゃらで時間を無駄にしないでちょうだい。四十の時か彼女は言った。「あらゆる記録を調べてみたいのよーーージェーン ら、わたしには無駄な時間は一秒もないの。今でもそうなのよ。マのプログラム。マダリアンの連絡。フラッグスタッフでのあなたの 4 ダリアンの死も、あなたからの呼びだしも、わたしにとっては異常インタヴュー この新品のきれいなシールド式レーザー電話と、あ 「このオフィス
り、その達成したことが、今や永遠に手の届かぬところへ行ってし いかなる協力も拒んでいた。その態度があまりに毅然としていたの サービス まったという事実には、言葉につくせぬほど心が痛んだ。 で、引退の発表はニュース会社に流されることもなかった ) 、マダ ユナイテッド・スティッ・ロポットの主任ロポットむ理学者も、 リアンは彼女の地位をついだ。 ロポットと共に死亡していたが、その事をとりあげる値うちは、ほ彼が。フロジ = クトを開始したのは、この新しいポストについ とんどないようだった。 た時のことであった。 このプロジェクトには、いままでユナイテッド・スティッ・ロポ クリントン・マダリアンは、十年前に入社した。そのうちの五年ットが負担せねばならなかったもののうちでも、最も巨額の資金が 「、彼は不平もならさず、スーザン・キャルヴィンの気むずかしい使われることにな「たが、その金額は、マダリアンがおだやかに手 監督下で働いた をひと振りして却下した程度のものでもあった。 マダリアンの才能は明々白々であった。スーザン・キャルヴィン 「無駄使いにはならないよ、。ヒーター」と彼は言った。「重役会を は年功にとらわれず、彼を、彼より年をく「た人々の長に任命し説得してくれよ。たのむぜ」 彼女はその理由を、研究主任の。ヒーター・ポガートに決してあ「根拠を教えてください」はたして教えてくれるだろうか、といぶ かさなかった。 : 、 力あいにくと、理由は必要なかった。あるいは、 かりながら、・ホガートは言った。スーザン・キャルヴィンは決して むしろ、理由は明白たった。 教えてくれなかったものだが。 いくつかの非常にきわだった点で、マダリアンには、高名なキャ だが、マダリアンは「いいとも」と言って、オフィスの大きな肘 一ルヴィン博士とは正反対のところがあった。彼は、その顕著な二重掛椅子に身を沈めた。 顎からうける印象とはうらはらに、ひどく肥っているというわけで ポガートは畏敬といってもいい眼射しで相手を見つめた。ポガー はなか「た。しかしながら、ス 1 ザンはほとんど気にしなかったのト自身のかっては黒か「た髪も、今はほとんど白くな「ている。あ だが、彼の態度はまことに圧倒的なものであった。そのがっちりし と十年もたたぬうちに、彼もスーザンのあとを追って引退すること た顔の造作や、きらきら輝く赤茶色のモジャモジャ髪や、血色のい になろう。それは、ユナイテッド・スティッ・ロポット株式会社 い肌や、ぶうんと響くような声や、大きな笑い声や、そしてとりわを、複雑さや重要さの点で、国家に匹敵する全地球的企業に育てあ け、手におえぬほどの自信過剰や、自分の成功談を話すときのとくげた最初の仲間たちの最後を意味していた。どういうわけか、彼 とくたる様子は、部屋にいる彼以外のすべての人に、気づまりな感も、彼より先に去「た人々も、会社の巨大な広がりを完全に理解し じを抱かせるのだった。 ていたとはいえなかった。 スーザン・キャルヴンがとうとう引退した時 ( 彼女は前々か だが、今は新しい世代の時代だ。新しい仲間は、この巨人と気楽田 ら、彼女への敬意の印として催されるはずの感謝ディナーに関して、 にやっている。彼らには、驚異の感覚が欠けていて、不信感で二の コロサス
つかく強くなったリクシーノが、おらがこんどの王様だそって見せ のがまるでふしぎみたいに思えて、あとでいつもガタガタ震えがと るために、山を登って大リクシー / の後釜へはいるのかもしれねえ 8 まらねえだ」 「おまえの恐怖は伝染するな。わたしまで尻がこそばゆくなってきだ。おらはリクシ 1 ノとは何度も戦ったことがあるだが、大リクシ 1 ノははじめてだで、こわくてしかたがないだ。やつがおっそろし たぞ。よし、ぐるっと迂回して登り、上からやつを攻撃しよう」 だが、ガラマスクも心中ひどく不安を感じており、こんどの狩りくでつかくて荒つぼいのは、おらが保証するだよ」 「やつが見えたそ」さらにしばらく登ったところで、ガラマスクは に対する彼の興奮は沈滞ぎみだった。きようの彼は加減がわるく、 こっちから追っていこう。むこうはま 熱つぼかった。きのうサイネクとの戦いで人工手もろとも犬歯をもいった。「たしかにでかい。 ぎとられたため、顔が目からのどにかけて腫れあがっていた。顔とだ決心がついてないようだ」 頭・せんたいが疼き、のどがひりひりし、慣れない歯のすきまから涎「あんたが見てるのは大リクシーノじゃないだ。王様が山にいると きは、ほかの仲間はだれも手むかってこねえだよ。それに、見ての をたれ流していた。その上、ささらになった耳もズキズキ痛んだ。 とおり、あの匂いはまだ一人前じゃないだ」 いくら頑健そのものの男でも、高重力のもとで病気には勝てない。 しかも、ぐるっと迂回して登り、上からリクシーノをおそう計画「わたしにはけっこう一人前に思えるぞ」・ガラマスクはひりつく が、ロでいうほど簡単ではなかった。リクシーノも彼らのペースにのどから声をし・ほりだした。「仕止めてやる」 合わせて、のこのこと上へあがってきたからだ。その特徴ある臭気 ガラマスクは獣に突進した。相手は一声咆えて後肢で立ちあが も、しだいに上昇を重ねてきた。そのおかげで、ふたりの側では獲る。身の丈は彼の一倍半もあった。大きな前肢を宙にふりまわし、 物の位置がかなりよくわかったが、まだその姿を見つけることがで大きな口をがっとあけた。ガラマスクは低い姿勢でとびこみ、爪先 きなかった。というわけで、ふたりはくたびれ儲けの数時間を費しと膝の短剣で相手の後肢を突き刺し、頭の長剣で腹を切り裂き、手 て、山の大半を登りきった。 の鉤爪でその急所を思いきりひっかいた。獣は仰向けにひっくりか 「きっとこれは大リクシーノ、リクシーノの王様にちがいねえだ。 えり、ごろごろと転がり、ようやく起きあがって、悲鳴をあげなが ほかのやつらはこんな上には棲まねえし、ほかのやつらは巣の入口ら逃げだした。ガラマスクはそのあとをよろよろと追いかけたが、 でしか戦わねえだ。大リクシーノが帰ってきたのは、あんたらの勘むこうが足をゆるめぬかぎり、つかまえられる見込みはなかった。 定で二年前に殺されてからこっち、はじめてのこんだよ」 「追っかけてもむだだよ、ガラマスクのだんな」チャヴォが呼びか 「おなじ動物が生き返ってくると、おまえは本気で信じているのかけた。「あれは大リクシーノじゃないだ。ガキみたいに逃げていく ただのガキだだ。まだ歯も生えそろわねえガキを追いかけて、一日 「ローアは信じねえが、おらたちオガンタはそう信じてるだよ、ガ棒にふるのはよしたがええだ」 ラマスクのだんな。だけども、びよっとしたら、ほかのだれよりで 「あいつのために、もう何日も山登りしたような気分だな」ガラマ
あの 雪の夜 : 年拾好と ひょっレ J すると姉銖か 亠のるいは・ 血がつながる ものかもしれ それだけに千之介にとって お時のことは忘れがたいものになり 心を疼かせるのだった : ・ふいに呼ぶのをやめて 千之介を見あげた大きな 美しい瞳 4 す 千之介自身我知らす身裡を 走りぬけた微妙な戦慄も同様に しつかりと記憶に刻みつけられて いた・ ーーあれは決 して罪を犯し た者の目では なかった あの娘は無実 だった 宗門奉行の手に移され : 牢中で不可思議なちからにより 女囚どもをたぶらかしたとかで切 支丹屋敷へ : : : その後は : あの大き 一な理といい 繊細な鼻 花弁のような 唇といし あの娘 お時にそっ あの大きくみはられ瞬きも せぬ瞳の中にあった不可解な 驚きと、酔ったような光は 忘れがたいものだったー
ポガートが言「た。「一世紀近くにわた「て惑星学者の心を占領ーンがあの問題をフラッグスタッフで解いたのなら、彼は間違いな していた問題の答えがジェーンの口からとびだしたので、びつくり くフラッグスタッフから連絡してきたでしようね。彼は飛行機から したのではないでしようか ? 」 連絡してきたのだから、彼らがフラッグスタッフを出たあとで、ジ 「でも、彼らは、彼女が答えをだすのを待「ていたのよ。彼女があ = ーンは問題を解いたのに絶対間違いないわ . そこへ行「た理由はそれじゃありませんか。それに、彼の言い方を「でもーー」 考えてごらんなさいよ。マダリアンの言葉では、証人は驚いたので 「おわりまで言わせて、おわりまで言わせて。マダリアンは、飛行 はなくて、ドキッとしたようよ。あなたがたに、この違いがわかれ場からフラッグスタッフ天文台まで、がっちりした、中が見えない ばの話ですけどね。その上、『ジェーンが ・ : しゃべり始めた時』ようになづた地上車で運ばれたのじゃなくって ? そして、ジェー いいかえれば、言葉が始まったその瞬間に、彼はとびあがった ンは木箱に入って、彼といっしょに運ばれたのじゃなくって ? 」 のよ。ジ , ーンが言ったことの内容に驚いたのだったら、証人はそ「そのとおりです」 れを理解するだけの時間、彼女の言葉を聞かなければならないでし 「じゃあ、恐らく、マダリアンと箱に入ったジェーンは、戻り道 よ。それなら、マダリアンはこう言ったはずよーーー証人は、ジェー も、天文台から飛行場まで、がっちりした、中の見えないようにな カかくかく言ったのを聞いたあとで、二フ ィートとびあがった った地上車で運ばれたのでしようね。どう ? 」 ぜ、とね。『時』ではなく、『あと』になるはずよ。そして、『突「ええ、もちろんですとも」 然』という言葉はいらないんだわ」 「そして、彼らは、往復とも、車内に二人きりではなかったわけ ポガートが不安そうに言った。「あなたに、一つの言葉を吟味しね。最初の連絡でマダリアンは言ってるわ。『われわれは、飛行場 て、微に入り細をうがった考え方ができるとは思えませんね」 からフラッグスタッフ天文台の管理ビルへ車で運ばれた』ってね。一 「できるのよ、と、スーザンが冷たく言った。 「なぜって、わたし彼が、運ばれたって言うのなら、それは、地上車には運転手が はロポット心理学者ですもの。そして、マダリアンがそうしたとわ人間の運転手が いたからだっていうわたしの結論は正しいと思 かるの。な・せって、彼も、ロポット心理学者だったのですもの。さうんだけど」 て、この二つの奇妙なことを説明しなくてはならないわね。マダリ「なんてこった ! 」 アンの連絡の奇妙な遅れと、証人の奇妙な反応のことよ」 「ヒーター、あなたが悩んでいたのは、あなたが惑星学の情報につ 「あなたにそれが説明できるのですか ? 」ロノ ・、】トスンが説ねた。 いての証人を考えた時、惑星学者を考えてしまったところにあるの 「もちろんよ、とスーザン。「ちょ「とした価単な論理を使「たのよ。あなたは人間をいくつかに分類し、その大部分を見くだし、見 ですもの。ダリアンはいつものように、間髪をおかず連絡してきのがしてしま「たの。 0 ボ、 , トはそんなことをしない一条よ 2 たのか、それとも、なにかの拍子で少し遅れたのか ? もし、ジェ 『。ポ ' トは人間に危害を与えてはならない。また、その危険を「
に慰めを見出そうとしていた。 るはずです。他のロポットに女性の声をつけることもできます。そ ポガートは頭を振って、悲しそうに言った。「度しがたい大衆のれが、大衆の容認を助長するたすけになるならの話ですけどね イメージを良くして、あのやくたいもないフランケンシ、タイン・ だが、女性は、なんと言うでしようね ? もしわれわれが、ジェー コンプレックスを克服する最高の機会ーーーロ・ホットがいままでン 5 号の言ったことを知ってさえいたらなあ ! 」 に手にしたうちでも最高の機会を失ったのですね。このロポット 「最後の連絡で、マダリアンは、証人がいると言ったね」 は、人間の住める惑星の問題にどんな答えを用意していたのでしょ ・ホガートが答えた。「そうです。そのことはもう考えてみまし うね。別のロポットたちが - 〈スペース・ジャン。フ〉の開発を助けたた。わたしがフラッグスタッフと連絡をとらなかった。とお思いで あとをうけて、このロ・ホットは、われわれに〈銀河〉を開いてくれすか ? あの場所にいた誰も、ジ = ーンがいつもと違うことを ただろうに。同時に、この科学知識を、確実と思われる一ダースば居住可能惑星問題の答えらしきものをーー言 0 たのを聞いていませ かりの異なった分野におし進めていたらーーーおお、なんてこった。 ん。そして、あそこにいた誰かが、確かに答えを聞いているはずな もう、人類とわれわれの利益になる道はないのだ」 のです。答えがあったらの話ですけれどねーーあるいは、少なくと ハートスンが言った。「別のジェーンを作ることはできないだも、そんなことがあったかもしれない、ということで思いだしたは ろうか ? マダリアンがいなくても ? 」 ずです」 「そりゃあできますよ。でも、もう一度、正しい相互関係をあてに 「マダリアンが嘘をついていた、ということはないかな ? あるい できるでしようかね。あの結果がでる可能性がどれくら、氏、 は、気が狂ったとか ? 自分を守ろうとしていたってことはないだ 誰にもわかりません。マダリアンが、。 ( イオ = アとして、幸運のきろうか・ー・」 まぐれなかけらをつかんだのだとしたら ? 隕石がどんびしやとぶ「答えを手にいれたと主張して、名声を保っために、というわけで つかったことは いや、まったく信じられませんがーーー」 すね。そして、ジェーンに仕掛をほどこして、しやべれなくし、 ロ・ハートスンは、ためらいがちなささやき声で言った。「こうい 『おや、残念、故障したな。ああ、なんてこった ! 』と言うわけで うこともあるかもしれんよーーーっまり、つまり、もしわれわれが知すか。ちょっと考えられませんねえ。彼が隕石を用意しておいたと るように予定されていなかったら、もしも、あの隕石が神の裁きー考えるのも同じでしよう 「では、どうするね ? 」 彼の声は、ポガートの人を縮みあがらせるような眠っきにあっ ポガートは重々しく言った。「フラッグスタッフへ戻るのです。 て、しだいに消えていった。 答えはあそこにあるのに違いありません。もっと突っこんで調べて ポガートは言った。「これは、まったくの失敗ではないと思いまみなければなりませんね。マダリアンの課の者を一「三人っれて行 す。他の四台のジ = ーンはなんらかの点で、われわれを助けてくれってきます。天文台を床下から天井まで、隅から隅まで調べつくし 2
生が宿直をよばれる前にちゃんと外してそこらへ置かれたのが、き やつめはなおイヤな言い方をした。 「それに実さい匂いもするし濡れてもいるのは、この部屋としちゃみらのドャドャ駁ぎで床に落ちたのだ。不思議はない」 変ですよ。博士は水なんか溢したことはありません ~ それもこんな「先生はそれを付けて仆れておられました」 と宿直どもがぬかした。 にタップリとネ」 夜勤係たちは、いるかもしれない尸骸盗人のことは忘れて汐見の もう何も言うことはなかったー、ーとうとう、『変な事つづき』が 指のさしているヘんの床上に首をあつめ、あたりの空気を嗅いだり おれ達のとこまで手をひろげて来やがったのだ。しかしそれにして して、その通りだと賛成した。 もまだ人間が、あるいは屍体が、じぶんで黴章を丁寧にはずしてか 自分はそんなふうにモタ / \ やっているのが、 ( もちろん自分も ら消えてなくなり、あいている扉の錠を空気がかけた事例はない。 ふくめて ) 、いやになってきてすこし尖った声をだした。 「きみ達の誤認と、先生のきゅうな体調変化のほうへ賭けてみよう 「い & からもうそろ / 、、、人間ふうに立ってくれよ。こうなっちゃ、 君じゃないがど 0 ちみちおれ達の手にや負えない。もう一度念のたじゃないか」 と自分はむりに言ってみた。 め調べてから、警察にわたそう」 「ほかのことは警察まかせだーーーじゃ、あとでつつこまれないよう それから、苦笑いしい / \ 人間らしい姿勢にもどった汐見の膝の にもうひと渡りよく検ておいて " おれは本庁へゆかんきゃなるまい あたりを見るなり、尖ってさえいられない情ない音をあげた。 から、汐見きみが残って警察連中に応待してくれーーーオイ、きいて : いったい何だ、それや 「き、きみ : るのか ? 」 自分はよく識っているのであるーーおなしよう 何だ、ではない。、 汐見はロのなかで「えゝ聞いてます」と言ったが、そうでないこ にそれに気づいて顔いろを変えた四人の所員たちとともに。『①』 とは明らかだった。 はもちろん、所長の標識番号だ。 かれはまた背を跼めて部屋の片隅を注視しながら、 : これは : : ・・先生の : : : 」 汐見はズボンにく「付いた襟章を気味わるげにつまんで取りなが「変だナ、ーー動いている」 と呟き、それに誘われた所員たちがまた揃ってそのあたりを覗き ら呟いた。 こむ 「これ、しかし落ちるわけないナアーー留め。ヒン、ちゃんと締まっ 自分はこのときほどこの、才覚のいゝ、何をやらせてもそっのな てるもんナア これやもう最高にイヤな言い草だ 0 た。自分はせい一ばい二い部下に ( ラが立 0 たことはない。なにより癪にさわるのは、やっ がこれだけの騒ぎにたいして顔の筋ひとっ動かさず、自分などがも 度目の寒けに抵抗しながらどなった。 「いゝかげんにしろよ ! でないどプン殴るそ。それやつまり、先う度を失 0 てまご / \ しているのに〈こんな事はもと / \ 馴れ「こ 円 2