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検索対象: SFマガジン 1972年9月号
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1. SFマガジン 1972年9月号

ます : : : 」マンストン博士は車から降りて高架道路の端へ歩いた。 れた竸技場を形成しているクロ・ハー型交差路の中央で彼は立ちどま その三十メートル下ではヴォースターが築堤の側辺に立っており、 り、椅子を前方に疾走させた。これは片側に傾き進み、湿ったセメ カメラが胸の前のガードレールの上で待ち構えていた・ ントを横切ってガプリエル・ザルツマンを振り落した。彼は金属の 胴具をつけた彼女を見おろした。クロミウムの車輪は陽光の中で回 転している。五十メートル離れてヴォースターが片膝で屈みこみ両 間奏曲 牧歌的な静けさのこの期間中、彼とガ・フリエル・ザルツマンはとも手でニコンを操作していた。彼は接近し始め、カメラの後ろに顔を に親密で激烈な楽しい夢想のなかで行動していた。精神病院の庭隠し、変形した機械の様式化されたダンスのように足を動かして、 を斜めに横切り通った。それらの通行は模様の刻印さ で、二人は接見式の従者に対するように患者たちの空白の顔を嘲笑コンクリート しながら彼らの間をさまよった。二人が抱きあうと廃棄されたテラれたガラス板、ガプリエル・ザルツマンの絶叫を含んだ字幕を形成 スの円型・ハルコニーが切断された翼のような彼らを包みこんだ。狂していた・ 人の瞳が性交中の二人を眺めていた・ 線群 ガプリエル・ザルツマンのこうした傷跡は閉ざされた空間の鍵、時 発射地域 彼よ空を見上げ 彼は砂丘に重いコンヴァーチプルを駐車した。荒廃した入江の青い間と風景の虚偽の遠近法を解読するコードだった。 , を 海水がコンクリート防波堤の間で壊れた鏡のように動いていた。温た。遂にそれは開かれた。彼の意識の穏やかな未開の青空がヴォー スターはまだカメラの後ろに顔を隠して、彼から二、三歩のところ かい陽光がその腐食した表面でたわむれている。彼はガプリエル・ ザルツマンを車から降ろす手助けを始めた。彼女の手首に触れるにいた。シャッターのちらっきが風景の対称性を破壊していた。 と、彼の指の周囲で明るいクロミウムが閃いた。彼女を陽にさらさ れた雑草のやぶの間に押し出した彼は、浜辺のコンクリート築堤の出口の様式 間を動き回っているヴォースターに気づいた。キャップのないニコヴォースターの脚を跨いで、彼は二つの身体から違ざかった。高架 ンのレンズが日光の中でちらついていた。 道路ではマンストン博士とヘレン・クレメントが車の窓から眺めて 。彼は竸技場を横切って歩き、高架道路の下のアーケードに入 り、遂に暴力とエロティシズムの幾何学を受け入れた・ 急遽 クロミウムの椅子を高架道路に向けて進ませながら、彼の足は固ま っていないコンクリート を横切って疾走した。両側にはコンクリー トの柱が雄大な洞窟への入口を形成していた周囲の築堤がありふ 5 3

2. SFマガジン 1972年9月号

「いってくるぜ . るものではなかった。今のところ、死傷者と呼べるものにいちばん 「了解、 リッジ。元気でな」 近かったのは、アルビレオ号の気閘の外側にある梯子から足を踏み ート下に転落しかけた男だった。 リッジングは、肩越しにビーコン山を見やった。そこには中継所外して、危く一五〇フィ それでもシャンダラは慎重たった。トラクターが滑るように進む が置かれているので、そう呼ばれていた。隕石よけの鉛のドーム が、光を反射して輝いて見えた。 、ルバルスの低い峰々の大部分間も、彼の眼は行く手の地面に眼をくばり、宇宙服に包まれた手を は、もう地平線の彼方に沈んでしまい リッジングやシャンダラが ・フレーキと操縦装置の上に軽く置いていた。 見慣れた土地ともこれでおさらばというわけだった。お。互いの顔を 、ル。ハルスや中継所はいもう見えなくなっていた。リッジング 別とすれば、彼らを乗せたタービン式トラクターの響きだけが、人は、もう一度ふり返ってそれを確かめた。これで数週間このかた初 間社会との唯一の絆だったーーー細い三日月形をした故郷の惑星は、 めて他の仲間との接触を断たれたわけだが、彼はこのことがそんな 太陽に近すぎてよく見えなかったし、外側から見た地球は、どっちにいし 、思いっきだったんたろうかと、今さらのように思うのだっ みちあまり「人間的」な眺めではないのだ。 た。厳重な指示が出ていた。早くから設定されていた探査の行動半 もちろん、これから先の風景が特に変っているというわけではな径を越えてはならないというのだった。リッジングは、それに全く い。これまでの四週間の間に、シャンダラは、月のどこかを見れば異存なかったのだが、この予定を変更するきっかけとなったのが、 全部見たも同じさと一度ならずぼやいたものだった。彼に賛成する外ならぬ彼の受持ちの観測装置だったのである。 者もかなり多かった。普通なら性分としていつも何かおこらないか 月に関する疑問の一つで、ここに来るまでは誰の答も推測の域を と待ち構えているリッジングでさえ、ここには少々うんざりしかけ出なかったのは、月の磁場についてだった。一行が月面に降りたと ていた 9 ここは危険でさえないのだ。真空に身をさらせばどうなる , き、磁場の存在はたちまち明らかになったが、計器の読みを比較し かは彼も十分に心得ていたが、宇宙服や気閘のバル・フを点検するこてみると、磁場の南極 ( あるいはその一つ ) がそこから数百マイル とは、とうの昔に第二の天性になってしまっていた。 のところにあることが示されていた。そこで計画を変更して、その 宇宙線は、プラスチックの宇宙服や生身の体をガラスのように突地域を調べることが決定されたのだ。というのは、月をとりまく大 き抜け、 - 吸収されないので、ほとんど影響はなかった。隕石は、金気が徴かにでもあるとすれば、それを知る最後の頼みの綱はオーロ 属箔に眼に見えないほどの孔をあけたが、これまでの経験では、宇、ラの観測にあると思われたからである。リッジングは、自分がいっ 宙服や外壁にはほとんど痕跡も留めないのだった。人間や乗物にとの間にか、何で調査を買ってでたりしたんだろう、そもそも何でそ んな気になったんだろうと考えているのに、我ながら呆れてしまっ って気をつけないと危いと思われていた「砂塵に隠されたクレバ ス」などは、まるつきり存在しなかったー」・砂塵は極度に乾燥してた。彼は自分を臆病者だと思ったことは一度もなかったし、いまこ いて、孔をすっかり埋めてしまう以外には、どんな種類の孔も隠せうしてトラクターの中にいることについては、誰にも文句のつけよ

3. SFマガジン 1972年9月号

の姿を認めると、軽く手を振って見せた。吉兵衛の手もとからアカ 「こうして無事に舞い戻ってみりゃあ残った連中に済まねえような が矢のようにその方へ走り去る。二人の間には溢れんばかりの陽光気もするが、抜ける時は運賦天賦だ。人さまの命まで張る気にゃあ に輝く天地があり、島抜けの重罪人が現われるにしては、ひどくあなれねえもんさ」 つけらかんとした舞台であった。 新吉は自嘲めいた微笑をみせて言った。平吉は黙って何度もうな 相手が二間ほどの距離に近づいた時、吉兵衛は照れたような表情ずいている。 で椽から腰をあげた。 「とにかくあがってくれ。 : : : 平吉、とりあえず俺の部屋へ通して 「アカの奴、はしゃぎやがって : : : 」 万事新さんのいいようにはからって置いてくれ」 一瞬合った目と目をすぐにそらせ、跳ねまわる大を見ながらそう「親爺つあんはどこへ : 言った。 「寺尾の旦那に会って来る」 「妙なものさ。世間がどう変っていようと、アカだけは達者でいる「そんなの、あとでいいじゃねえですか。折角稲荷の兄いが来てる んだし」 に違えねえと思い込んでいた : : : 」 平吉は不服顔だ。しかし吉兵衛はかまわす部屋へとって返し、す 「世間たってそう変っちゃいねえさ」 吉兵衛はそう言ってから、あらためて稲荷の新吉をまともにみつぐにふところへ何かをねじこみながら出て来た。 めた。 「妙なつらをしてねえで、さっさと酒の仕度でもしろ。こうなった からには、今夜にでも動き出そうてえのが新さんの気性だ。忘れた この前別れた時から七年たっている。もともと色は浅黒いほうな のが、七年間の島暮しで漁師そこのけの赤銅色に焼け、肉の落ちたのか」 吉兵衛は平吉を叱りつけ、「とに角この土地の話だけはつけて来 頬の辺りに凄味が漂っている。 : ロではそう言ったものの、帰って来た新る」 そう変ってはいない : と新吉に一一一一口った。 吉がこれから渡って行かねばならぬ世間は、七年前とはくらべ物に 「済まねえな。旦那によろしく言ってくれ」 ならぬくらい厳しいものになっている。そう思うと吉兵衛の表情に 新吉は軽く頭をさけ、しばらく吉兵衛を見送ってから家の中へ入 どうしようもなく同情の色がさすのだった。 「島も住んでみりゃあ、あれでなかなか乙なもんさ」 新吉は吉兵衛の顔に泛んたそれを見てさり気なく言った。 「お一人だったんですかい」 傍に突っ立って、憧れるようなまなざしで新吉の横顔をみつめて いた平吉が口をはさんた。 内藤新宿の寺尾左内と言えば、江戸中のわけ知りの間に聞えた名 に 3

4. SFマガジン 1972年9月号

手で腰をかかえて走った。 向キヲ変エタ。彼女ハソコニイタ。濃イ煙ノタダ中ニ、手ノ中ニ何 カヲ持ッテイタ。私ハ叫ビ、彼女ニ向カッテ走リダシタ。彼女ガ私 ノ声デコチラヲ向クノガ見エタ・ : ・ : 》 《大キナ発電機ガ重々シクウナッテイタ。すばーくガトビ散ッタ。 ふれいじあガ叫ンテイタガ、ナント言ッティルノカワカラナカッ 私は冷たい石に顔をつけ、床に横たわっていた。発電機のうなり タ。サクラ色ヲシタ五せんち幅ノ溶接帯ヲ見ツメテイタ。百万どる ノ装置トナル ( ズ / モノダッタ。百万どる、トンデモナイ、十年間が、床を伝わって力強くひびいてくる。私は頭をおこし、マンホー ルのロを見た。そのそばに、黒い道具箱が置いてあった。ジェスの ナッタラ、ふれいじあニタチウ デ一億どるダ ! 技術処理ノコトト チデキル者ハナイ。彼ハ、私ガ泥中ノ蓮ヲ見ッケルノョリ速ク、ウ物である。外扉を開けるのに使ったあと、ここに置いておいたの ・フ毛ノハ〒タ多勢ノ卒業生ノナカカラ、天才 / 素質フモッタ者ヲ捜だ。私は大送水管の上の維持気閘にいた。ごうごういう音は、下方 シダス能力フモッティルノダ。新シイぶろせすハ食料加工業者フ怒のポン。フがだしているのだ。どうやってここまでたどりついたのか ラセルコトニナロウ。〈どらこ有限会社〉ガソノ唯一 / 所持者トナ覚えがなかった。 ルノダ : 上半身をおこそうとしたが、腹部に切り裂くような痛みがはしつ ふれいもあハマダソコニイタ。私 / 服ヲ強ク引キ、部屋ノ向コウ た。私は身体をまるめ、しばらくの間、火の奔流をこらえた。それ ラ指サシテイタ。外扉ガ開イテイタ。間カラ白イ光ガ輝イテイタ。 から、手をマンホールの縁にかけ、身体を引きよせた。下方に、水 一秒程、ソ / 光ノ中ニ二人ガしるえっとニナル / ガ見エタ。ソシテが黒くひらめくのが見えた。もうひとがんばりだ。ドラヴェク、や どあガ閉マリ、二人 ( 大キナ部屋へト入ッティッタ。私 ( 手ヲ振ルりゃあできるんだ。片方の腕はたいして助けにならなかったが、腕 ト、ソノ方へ歩キ始メタ。頭上ヲ何カガ動キ、すば 1 くガばちばちは二本も必要ではない。膝をうまくつかった。胸がマンホールの縁 ィッタ。誰カガ叫ンデイタ。溶接とーちノギラギラスル光ノュラメ についたのが感じられた。私はすべって、急速に近づく、ぼんやり キガ消エタ。ふれいじあハ腕ヲ振リマワシ、ソノ方へ進ンディッした闇へと落ちこんでいった : タ。誰カガ叫ンデイタ。 ショックが私をはじきとばした。しばらくの間ーーー数秒、あるい 「 : : : 熱イゾウー ソノ場所カラ離レルンダ。ぶろうにい は、もっと長い間かもしれぬがーー私は、荒れ狂う流れにまきこま ケ、ソノ子ヲ止メロ ! スグニ止メルンダ ! 」 れた。それから、何かにしたたかにぶつかった。その痛みが、頭の 私ハ、金属ノ板ガ落チテ、溶接機カラ三め 1 とる離レタトコロデてつべんから爪先まで、しゃんとさせてくれた。まったく突然、自 太イけーぶるヲ切リトッタ方へ歩イティッタ。モウモウタル煙デ、分が送水管の中にいるのだと悟った。高圧流に運ばれているのであ 石炭ガラノョウナ悪臭ガタチコメテイタ。コンナコトヲシタ組立工る。頭が一定の間隔をおいて、壁にぶつかった。送水管が広くなっ引 ニ気ノキイタ警句ヲ言ッテャロウトシテイタノダ。ガ、何カガ私ノたのを感した。格子扉が前方にあるのを思いたし、水中ジェットを マヌ

5. SFマガジン 1972年9月号

雲に咳こみ、膝をゼリーに深く埋め そしてアダムとかれの転落を考える ぼくらみんなを欺した精神異常を ぼくは冥王星の絶対零度に立った そしてやっと知るのはぼくが英雄でないこと ひどい闇黒が押しよせてくる ぼくが手に入れるべき惑星はもうないのだ ぼくらはもどってきた宇宙のバイロット 地面にしみとおる陽光の中でぼくらは笑う ふくれ上がる虚空のバイロット 星間の天候をつき進み 太陽系帝国を探ぐり すべての惑星を治めるもの 、 , ただほくらの地球を別にして エーテル 、 , 第を拿

6. SFマガジン 1972年9月号

1972 年度 恒例ハヤカワ SF フェア 早川書房のスペシャル。セール 全国主要書店にて開催 ☆フェア開催期間く昭和 47 年 7 月 1 日 ~ 8 月 31 日 > このたび、毎夏恒例の「 1972 年々、ヤカワ SF フェア」を開催 いたします。 文庫 / SF シリーズ / 日本 SF ノヴェルズ / 世界 SF 全集 の四部門から、本年は日本人作家の代表作品を中心に、世界 の話題作、間題作を網羅。夏休み、緑陰の好読物として読者 に提供 ! 早 ) 日書房振 - 、替東京 47799 ロ 9

7. SFマガジン 1972年9月号

土や し事 の しカ フ・ 。曜選あ だ異れ実 した フ し人 人た 、 . ろ 、な ン′ 日 : な 。絶 。問 いを う絶 誰て 無が か叫 も知 ン プ れや憶さ 。を ス持 係点 存オ ル グ でそ 第 はれ 離方 出け で以 が しを 法一 の記 無と 切 、出 に要 いる 、そ り 成点そ彼 係あ 、な 十ろ 換 。中 きれ っ 立押 選午 いそ事味 て たを ま絶 しは ちえ ん実すそ 、て た叫 ウ 。当 関ナ レ私 ム レ 。で 。め いあ イ し : そ サ 。め れが も要 人話 ツ か出 カ 人女 しな 子な 場 しす全も 存絶 る 騒 行 機 陸 し た そ し て 陸 コ ド プ レ イ う あ は 何 / か の で れ を だ で は な 聞 ん れ な し 日 九 ハ 月 十 日 、四 十 五 分 に よ ば で だ 年抜日 七き付 て た 、だそ う そ 。あし り と る 日 る と 選 ん た だ く る う は ーし、 音 で あ り 先 々 聞 く と が 苦 痛 な 搏 音 も く っ た そ叫記 騒 日 現 . に し て る よ う に 先 々 に も 現 な 中 の ス ク リ ム と は な も の 、た留 他 の 他 の か る 、れ か 置 て し と し い な れ し も か る のれ繰 視 い疑度 は も う と し、 う り し は か を 、意成 る と を 止 め て し ま う も し を 縛 り つ け お う 程 の も う 度 も う 度 れ な ク ム 実 も そ れ が 事 ー・実ム な 十 の 子 つ と をよ 憶 の で ス ク リ 1 よ り 、重 は 間 の 関 な も の の 上 り れ で 在叫し と . 要 な く そす無 ら な だ だ ろ 結 、構 をれ女 も い係 で が彼よ 間がそ 彼 女 カく し た と 外 をよ が し と を う 度 し、 お う そ ん な と 関 そ う し た 全 て 力、 彼 女 が 在 た し一 を た 冫よ 知 ら な も う っ し ぁ た さ 分 目リ に 。分あ だ間な の 一供カ に う し と で る の う か 私 さ 人気力ウン歹 1972 年 6 月号分集計結果・ 順位 1 2 3 4 5 作 ロロ いかなる海の洞に 性炎樹の花咲く時 妖異関ヶ原 時を止めた少女 ビネロビへの贈りもの ・ F ・ヤング ト・ F ・ヤング ・ F ・ヤング ロ′ヾート ロ / ヾー - 半村良 荒巻義雄 ロ′ヾ・一ト 評点 3. 3.70 3.65 3.23 ・わ・・ 0 、 0 ・ 00 0 ・・ 0 ル 0 ・・ 0 ・・ 0 マを 0 ・・ 0 ・イ 000 ・・し 009 今月は , 前々から読者の要望が高かったヤングを個人特集しました。 首位の「いかなる海の洞に」をはじめ , 好評だったと言えましよう。 これから票の出るヤングに続く個人特集の点がたのしみです . 今月 7 篇に対し , 規定の方式 ( 秀作 5 , 佳作 4 , 水準作 3 , それ以 下に 2 , 1 ) に従って葉書にてご投票ください。同評価の作品が何 篇あってもかまいません。住所・氏名・年齢は必ず明記のこと。 締切は 9 月末日。 ~ 抽選で 5 名の方にハヤカワ S F シリーズ最新刊を進 呈 . 今月は下記の方に「虚構の大地」プライアン・ W ・オールディス をお贈りします。 8 大牟田市飯田町 51 月足康博様 , 5 滋賀県大津市松原町 4 の 25 森谷久和様 , 8 北海道岩見沢市日の出台 5 四支庁公宅第 3 アバート 7 号本間洋様 , 9 四一 03 石川県河北郡津齧町字下河合座主裕美 様 , 701 ー 12 岡山県岡山市尾上 4 の 5 大森邦彦様 43

8. SFマガジン 1972年9月号

ド的ラディカルな志向性を持ったイギリス派と、 し、自身の思考を展開し、そのことで自 6 ディレーニイ的修正主義の間に有形、或いは無形身の内宇宙に語りかけるものである。だ の対立が生まれるかも知れず、その時第二の新しから、これらの作品には一元的な解釈は い波が生まれるかも知れない。 できず、個々の主体の知識や体験、状況 私個人としては、すでに、ディレーニイ、エリ によって様々な意味を持ち得るのであ スン、ヴォネガットなど、アメリカの新しい波へる。 の期待は断ち切った。そして、新しい波以前と同これから述べる私の解説も、単に一つ 様、ディックのスベキ、レイティヴ・フィクショの読み方でしかないといえるだろう。そ ンや、ライ・ハーのイナースペース・ファンタジイれなりに読者と共通する考え方があると を、より愛読し続けるだろう。私個人にとって、 思えるので、無意味な解説とは思わない ジュディス・メリルはアメリカの権威体系を 大きく改めた。 新しい波の収獲は、・ハラードを中心とする、ジョ が、個々の読者には夫々より深くこだわ ーンズ、ムアコック、ロ・ハ ーツなどイギリス派のる部分があるだろうし、無関心な面もあるだろな効果で使われる。そして、そうした用語や文章 みであり、また僅かなアメリカへの期待は、ディ 説明的なコンティニュイティを持たず、空隙を ッシュの帰国後の活動と、ル・グイン、エムシュ この解説はいかなる権威をも代表するものでな通じて対位する。この空隙は、ぶラードが「神経 イラーなど一部の新しい個人的活動を続けているい ことを断っておきたい。 空隙」という形で説明しているが、神経せんい間 作家に残されている。ル・クインのスベキュレイ の空隙を伝達する。ハルスに例えたものといえよ う。従って、文章は一方向へ一元的に流れること ティヴなファンタジイは、第二世代のディックや・・バラード「クレイターを越える旅」 ライ・ ( ーに成長する可能性は充分あるようだ、ま先例に従って作者と作品の位置について述べるはなく、様々な方向へ意味を拡げながら、他の用 ーツ、ムアコックらのイギリス派の、最べきかも知れないが、・・・ ( ラードに関して語に関連し、用語間の復合が次々構造を組み立て 近のアメリカでの出版数も多く、これらが、いか今更多くの解説は不要だろう。私の個人的感想をることで一つの世界を形成する。それが一つの内 に発展するかも注目されるだろう。 述べるならば「の名の下に登場した人間で尊宇宙の投影であるが、読者はその複合を自己世界 敬できるといえる人物は・・・ハラードだけに築き上げることになるのである。各センテンス 〈アベンディクス作品解説〉 だ」ということになり、メリル女史にそう話すは一つの短いプロックを形成しており、個々のプ ロックにはシチュエイションが存在している。そ この特集に訳された三作は、い ずれも先に述べと、彼女も「同感です」と答えてくれた。 た新しい波の殆んど全てを満足するスベキ = レイ「クレイターを越える旅」は「残虐行為展覧会」れらが夫々ストーリイ的に一方向への流れとして ティヴ・フィクションで、アメリカ的なアイデ以後に書かれたコンデンスド・ノヴ = ルで、・ ( ラは存在せず、有機的に全ての・フロッグとかかわっ ア・ストーリー や巨視的な未来世界を画いたもの ードの最も新しい作品の一つである。コンデンスている。 ではない。また、読者にそのまま受け入れられて この作品の内容に関しては、読者個人のスベキ ド・ノヴェルとは・ハラード流の方法論であるが、 楽しみやメッセージを伝達し得るものでもない。 的な虚構世界の拡がりと、シュールレアリスュレイションに委ねられるわけだが、他の作品に これらの作品は、読者にも主体的な観念を要求ム的な無意識世界を結合させたもので、各用語及関連して少しだけ説明しておこう。 ラードが・目 例えば、セックスについてだが、・ハ し、スベキ、レイティヴに対応する。読者はこれび文章は夫々潜在的な意味を持ち、いわばシー らの作品のシチ、エイションやセンテンスに対ルレアリスムの自動記述の役割を逆用させたよう身の「一 : ーワールズ」誌に掲載した広告 (Z

9. SFマガジン 1972年9月号

いむ の 新 し 於ける文明観のギャツ。フ、近年の文学界に訪れた発言に触発され、また「ニ、ーワールズ」の新し 転換に対する小説観のギャップなどが旧世代とのい編集方針にのって多くの新人が生まれた。ラン 1 ともかく総括ー 間にあり、国籍的には、ウエルズ、ハックスリグドン・ジョ 1 ンズ、チャールズ・プラット、マ スベキレイナイヴ・プイクッ第ン ・—・マッスン、 ′タ】ウォース、 イ、クラークなどシリアスな思考 説のイクル・・、 新しい波とは、一九六〇年代中期以後に展開さ伝統を持つイギリスの観と、スペース・オペ・・ ( リスン、クリストファー・プリース テす - 一カル・フィ′ウ置ン ノミラ・ゾリーン、ヒラリイ・ペイリイ、ジ れたの変動状況であり、そうした状況の中でラの繁栄によって娯楽的な技巧小説を発達さ ヨージ・コリンなどである。また、キース・ロ・、 若手作家を中心に発展したの革新運動であせたアメリカの観とのギャップ、大国アメリ る。 力と大国であることを放棄したイギリスとの文明ーツ、・・ペイリイなど比較的古くから活躍 その状況と運動は以下のように分析できるであ観のギャツ・フなどがアメリカ作家との間にあしていた作家たちも大きな影響を受け、新しい試 ろう。 った。・ハラードは思想的、文学論的、文明論的、行ととり組むようになった。 ③アメリカではディック、・ヘスター、ライバ など様々な角度から旧を積極的に批判し、新 ①イギリスに於いてオールディス、・ハラー ーネス、スミス、スタージ プラッドベリ、ハ ド、ムアコックら界に育った若手作家たちしいの理想像を示しながら、それを理論化し が、五十年代までに繁栄したアメリカに不満た。オールディスは旧の評価を改め、のヨンなど独自の観による特異な作風を持った を持ち、独自の観から新しい傾向のを創転換の必然性を体系づけ、ムアコックは雑誌「ニ作家が多数いたが、その多くは界でのアウト 造しはじめた。彼等がそれまでのアメリカに , ーワールズ」を全く新しい方針で編集し、多くサイダーとされていた。しかし、イギリス界 ではこれらの作家を高く試価し、同時にアメリカ 不満を持った理由としては世代的なものと国籍的の新人を育成した。 なものとが考えられ、世代的には急変する現代に②イギリスでは・ハラード、オールディスらのでも若手作家たちが主流作家以上に、こうした作

10. SFマガジン 1972年9月号

いたドアから煙が渦巻いてでていく小さな部屋や、緑に塗られた大た。助けにはならなかった。 きなタンクの夢を見た。白い制服の男がいた。顔に血をつけてい 「ジェス、あんたはおれの好奇心をそそるんだよ」あえがぬよう努 「これは命令だ。勇気がめてしゃべった。「あんたは重要な情報を握っているに違いないん る。泣き叫ぶ女がいた。私は言っていた。 ないのか ! 」やがて、みな遠ざかっていった。私は包みを小脇にか かえて、煙ったドアを通って部屋に入った。背後に女の声が聞こえ 「おたくが親指を喉からはなしてくれりゃあ、おれたちゃ、文明人 る。泣いていた : のように話しができるがね」かすれ声であった。「話せることなら 話してやらあ。さもなけりゃあ、おれを殺して、おめえもくたばり 明るい青い空が、緋色と紫色に変わってから、この部屋の主人がやがれ」私は少しゆるめた。 ングしていた。女もいっしょであ「奴らが誰かってことから始めよう・せ。おれに生きていてもらいた 帰ってきた。歯の間で小さくハミ った。一分後、女は出ていった。彼が親指で私のまぶたを裏返してがった方だ」 いる間、仮病をよそおった。それから、彼は壁際に歩いていき、コ 「〈・フラッキイ〉だ。委員会の手先だ」 「もっとわかりやすく」 ンソール上のボタンを忙しく押した。スロットから何かをとりた これ以上、どうやさしく言 し、明りにかざして、眉をしかめて見入った。私のところに戻って「ちえつ、〈死コントロール〉だよー くると、私の腕をとった。それが、彼の首をつかむきっかけであっ えってんだ」 た。彼はわめき、両腕を振った。手の中の物が床に叩きつけられ「奴らが欲しがっているのがおれだと、どうしてあんたたちにわか た。私は立ちあがった。彼は片手をポケットに突っこんだ。私は握ったんだ ? 」 り方を変え、彼を壁に投げとばした。眼を見張って私を見た。 「奴らがしゃべ . っているのを聞いたんだーーー公園で」 「レテノ ールの二日酔いによくきくものを持っちゃいないかね、ジ 「それで、私を奴らの鼻先からかすめとったのか。私に、それだけ の価値があるのかね ? 」 エス ? 」私は彼にのしかかり、親指をゆるめて、一呼吸させた。 「ジェス、おたくは誰だ ? 職業は何だね ? 」 「あんたが公園に入るのを見たっていうこと以外、何も聞いちゃい 彼は噛もうとした。彼の頭を数回、壁にぶつけてやった。りきんないんた。ついでだが、あんたはどうしてあそこにいたんたね ? 」 「通りをふらふら歩いていたんだ。ちょっと酔っていたんじゃない だので、再び頭がガンガンしてきた。「ジェス、あんたはタフだ」 、刀オー 「だが、おれはもっとタフだぜ」 と言った。 彼は指で眼をつついてきた。彼を打ち倒すと、膝を背中にあてて「今、どんな気持だね ? 」私の答えには大した値打ちがあって、ど 床におさえつけ、ポケットをさぐった。匂いのついたティッシ、んな含みも聞きのがしたくないというように、頭をおこしてね と、プラスチックの代用貨幣が数個あった。彼は二こと三こと言っ こ 0