文明の墓場と化して、宇宙空間を惰性で廻っているに過ぎなかっそれを分割し、その電子を、装置に結びつけて働かせて来た。仏国 た。金星の灰はどんどん冷たくなっていた。水星、木星そして土星の偉大な科学者、べカレルの発見に従って、人は、すべての原子ー ポテンシアル ー殊にラジウムのそれ・ーーの潜在エネルギーがほとんど無限に近い はすでに断末魔の苦悶に呻吟していた。天王星と海王星の冷えきっ ことを知った。そして、原子の崩壊は放電を伴うので、人はこのエ た不毛の荒野にいたっては、最初から人類を拒絶していた。 そんなわけで、オメガという名前ははなはだ適切につけられた結ネルギーを制御する方法を学んだ。ォメガの機械は、いたるところ 果となったようだ。このあからさまな真理は、かってなかったほどにある原子、 = ーテルのそれすらも利用して、それを電磁波によっ に、彼を不安に戦慄させ、彼は、ただアルフアの出産だけが、これて放射能〈と分解し、固定した戦道上を動き廻る、その電子の = ネ ルギーを役立てるものだった。放射性物質は四十種あったので、オ からさき自分が生き続けるための勇気をあたえてくれるもののよう メガはそれらをすべて活用し、原子ーー・それが水素原子核のまわり に感じたのたった。 「さあ、アルフアのために準備をしてやらなければな」海の怪獣ののものであれ、ヘリウム原子核のそれであれーー・の原子量を等しく ことを思って心を痛めていたにもかかわらず、オメガはそう言っして、原子を破壊し、電荷を目的の方角に向けるのだった。次い た。「召使いどもに露払いの役を言いつけなければな。ここの谷間で、彼の動力機が放電を増幅し、電流の仲介を通じてそれを不可視 で、人類の新種族が生まれなければならないんだ。生は死をのり越の原子放射線の形で射出し、彼はそれを制御し、任意の物体にそれ えて来なきゃならん。さあおいで、サルマ」 をあて、交流電流の作用によって意のままにそれをささえたり動か したりするのだった。 彼の自信満々な態度に安心して、サルマはほほ笑み返した。そし まもなく山腹上に、安全に装備調整された、巨大な放射線形の屈 て二人でそろって船の下側の区画へと人った。この区画には、オメ折鏡が出現した。これを使用すれば彼は、電動電流を世界のぐるり ガの言った召使いども , ーー様々な機械や、その他、人間の造った不に流し、エーテル中にすでに記録された痕跡を鏡面に再生すること 思議な品々 が入っていた。ォメガはいくつかのボタンを押しによって、地球表面のあらゆる場所の眺めをキャッチできるのだ。 た。すると船体の一部分がわきに巻き縮んだ。彼は他のボタンを押そしてその中央部の下側には受信装置が付属しており、それによっ し、 ( ンドルを廻した。すると巨大な鏡面の各部分が空中にせり出てエネルギーはまた世界中からの最も微細極まる音響を吸収する。 し、見たところ指示もあたえず操作もしていないようなのに、それ聞くだけの音響があればだが。 小型の原子動力機ーーそれはエネルギーを水素原子核、空間のエ らはけわしい山腹のはるかな高所に、それ自身で組み上り始まった のだ。しかしそれはすべて完全な操作の下になされていた。不可視ーテル及びすべての金属放射性物質から吸収するーーが今や、山腹 の原子放射線を使 0 て、オーガはそれらを自由自在に動かしていた上の大鏡面のほど近くに設置された。そこで動力機は、必要とあら 8 ばいつでも、どこにでも、電球その他の容器なしに、灯火を点する のだ。数え切れぬほどの数の世紀の昔以来、人類は原子を従属させ、
タニアは頷いた。 込んだ。ローラはゲリラたちの一人一人にキスをして廻り、最後に 「つまり、私も二日間しかいなかったつもりなのに一ヶ月ぐらい居 8 ローラと握手した。 たことになりますのね」 「すてきね。タニアさん」 「ええ、結局のところフリーランドは一種のまがいものの自由都市 ローラは大きな眼を見開いてタニアを見上げた。タニアはローラ のほほにキスをしてクラッチを踏み込んだ。アクセルをいつばいにのように思えます。あれはシンポル以上のものではないのでしょ 吹かせてセカンドギアで勢いよく飛び出すと、手を振るローラの周う」 囲に砂塵が立ち昇った。 ホードがいうと、タニアは小さく笑った。そしてその笑いを打ち 消すように顔をあげて力強くハンドルを廻し、ホードに横眼を向け 「アディオス、ローラ」 タニアは叫んだ。ジープは更にスビードを上げ、小石を蹴りながていった。 「でも。私達のフリーランドは存在しますわ。チカノです ! 」 ら坂道を勢っていった。 ロ 1 ザは前方に見えてきたべアロックを指差した。ホードはよう 「でも、変だわ」 やく揺れの少なくなったジープの鋼鉄をたたいてリズムをとった。 タニアは呟いた。 「私がフリ 1 ランドにいた時はとても静かでゲリラの姿など見かけむろんクランのリズムである。 タニア、タニア なかったのよ」 セニョリータ、タニア、タニア ホードはゆれ動くジープの席で飛び上がりながらタニアに小さな レポルシオナリーア、タニア 顔を向けた。 タニア、一ア、フリーランド 「ええ。そういうこともあるようです。私にもフリーランドのこと デア、タニア、タニア はよくわからないのです」 ジープは坂を昇り切って岩石の間の曲がりくねった道にかかって ホードはフリーランドで流行していた組曲フリーランドの中の いた。後部のゲリラたちは手すりを握りしめて眠っている。 『タニアの歌』を歌った。詩は簡単なもので、同じ言葉が何度もく 「ホード。あなたはずっとどこにいらっしやったの ? 」 り返される。後部で眠っていたゲリラたちも、いっかホードに加わ って歌っていた。 タニアはいった。 べアロックでジープをとめると、全員が歌いながらジープを飛び 「廃墟です。何もないただの廃墟ばかりの場所でした。そこには十 数人のゲリラがいて指令を待っていたのです。でも不思議なこと降りて、踊りながら食事の準備を始めた。タニア自身もその自分の 曲をまるで古くから親しんできたもののように歌っていた。 に、私は僅か三ヶ月ぐらいそこにいただけと思っていたのに、ロー ローラの用意してくれた食事は簡単なものだったが、歌と踊りと ラの店へ戻ってきた時には何年も経っていたのです」
その岩の隆起を台にした豪華なべッドから、するりと滑りおり、床すると美女は、イーゴルと名来る美青年をみあげるようにして言 っこ 0 に立った。おり立った美女の肩へ美青年が左手をまわした。 「やつばり、ロープをおろしてあげてよかったわね」 「宝石にならないあなたがたま、 。いったいどういう人なの」 美女が口をきいた。まるで、体の中に黄金のチャイムをかくして美青年は優しく頷き、 いるような、音楽的な美しい響きであった。 「お名前をうかがわせてください。僕はさきほども言ったとおり、 ィーゴルと一一 = ロいます」 「私たちはこの世界の人間ではありません。元いた世界へ戻るた め、出口を探して旅を重ねている者です」 「私の名はラクラ : 全裸の山本が、全裸も忘れて吉永に言った。 山本が言った。こういう場所は何と言っても山本の出番である。 「やつばりメリットのムーン・。フールだ」 品がよくて落着いていて : : 。だがこの時ばかりはそれも怪しかっ 「僕は吉永佐一です」 た。つい身動きをして、シャリシャリ、 パチン、カシャンと衣服が 砕け散り、臍から下、ズボンの膝の辺りまでが一気にむきだしにな「僕、山本麟太郎」 「伊東五郎」 ってしまったのだ。 「同じく三波伸夫 : : : 」 「これは失礼 三波は言ってしまってから、あっ、と驚いて伊東の顔を見た。 流石の山本麟太郎も大いに慌て、横を向こうとしたから、残りの 伊東は両手で顔を掩ったまま、台本を読むようにゆっくり言っ 衣服も派手な音をたててはじけ飛ぶ。 こ 0 「やだ。若様も素つばだか」 伊東が体を堅くして言った。プ 1 ルからあがってまだ柔らかい内「莫迦、何が同じくだ」 に両手を顔へ当てたのが、たちまち結晶化して手をおろせば服が割 れてしまうのである。したがって、いや応なく顔を掩いつばなし 3 「以前、ここから月の池へとび込んで、向う側へ出て行った人があ太古の昔、月的な力に満ちたトランシルヴァニアに、その力を ります」 利用して精神の神秘的な能力を開発した、一大文明が興ったのであ 「ジョーカンジーという人でしよう」 「そうです。お知り合いですの」 人々はその月的な力を単にルナと呼び、そのルナが最も集中して 「僕らは彼の来た方へ、逆にたどっているのです。そうすれば元の いる場所を求めた。 世界へ出られるかも知れませんので」 それがナン・マタル湖の中心であることが判ってから、人々は念 ルナティック 4 3
和 3 年キ月 12 お 3 種郵使物畍 ! ・昭物年貶日 . を国鉄喫局特別扱水物ユ第 682 号昭川 4 月い印刷・発行 ( 毎月】回・ 1 日発行 ) 第巻・第信り、 マカンツ ,
ただ、ダム・ルースだけはお父上の裏切りを存じていたはずでくようにな 0 た。クランのリズム楽器による演奏のテープをかけ、 タニアの。ヒアノは組曲フリーランドを演奏し続けた。毎日のように 新しい曲が加わっていった。父のテーマやイッフ = とホードのテー ィッフェよいっこ。 マ。父は静かに何かを待っているようにクランのリズムの中に孤立 「母は ? 私の母はどんな人だったの ? 」 タ = アはイ , フ = の真剣な瞳の炎が消えない間にたたみかけるよし、イ , フ = のテーにより消されてしまう。イ , フ = のテーの 若々しいメロディがフリーランドのテーマと和合して明るいクラン うに聞いた。 「お母上は、あなたにそ 0 くりでした。しかし一度お逢いしただけのリズムに乗 0 た。だが、やがてイ , フ = のテーも乱れていき、 遂に孤立する。いっか父のテーマは重って静寂の中に消えていっ で、どのように亡くなられたかは存じません」 こ 0 ィッフェがいった。 父は偽国家を作ろうとしていたのよ。ィッフ = は誤解していたん 「ありがとう」 タニアは考えた。でも、問題は偽国家がどういうものだ ・こ、わ 0 タニアは答えた。 ったかということね。偽国家と本物の国家とは簡単に見分けられる 「あなたのお父上を暗殺した人物を知っているのは私と、あなた と、ゲリラの今は亡き私の上官だけです。あなたのお父上はアルビものでもないわ 彼女は。ヒアノのキーを両手いつばいにたたきつけた。そして立上 ラ連邦の兵士に殺されたことになっています」 がると薄暗い録音室のガラス窓にホードの小さな首がみえた。 「ええ、タンテ・ルースがそういってました」 「ホード いっかィッフ = の顔に官僚としてのマスクが戻ってきて、無関心 タニアは叫んだ。ホードはスタジ・オに入ってくると、タニアに向 な瞳が焦点のない視線を漂わせていた。 タニアはその日の名刻にサーディ将軍とデ 1 トした。ナイトクラけて初めて笑顔を作った。 「同志、タニア」 ・フとレストラン、そして夜の海岸のドライヴ。それはヨーロッパの ホードよ、つこ。 生活の延長のものだった。 そして次の日にはソホラープ将軍と逢った。タ = アは極力政治や「今日の演奏もすてきでした。この組曲フリーランドのテープを私 に下さい」 軍事に対する関心を示さないよう務めた。サ 1 ディ将軍もソホラー 「ええ、もちろんよ。あなたに聞いてもらいたかったのよ」 プ将軍も、ともにタ = アの父に関して知っているようであったが、 「同志タニア。お別れですね」 二人共その話題には触れようとはしなかった。 「ええ、フリーランドのために」 次の日からタ = アは暇があればスタジオへ行って一人ビア / を弾「あなたの演奏を聞けなくなることだけが心残りです。お元気で美 5 6
最後の煙が炎上する兵員輸送車から夜明けの湿った空中に上昇し配線を直していた。陣内にはビアソンの三十人の部下が武器や弾薬 ていった時、。ヒアソン少佐は丘陵の戦闘司令所から三百メートル離箱や足もとに積み上げられた電話線に腰を降ろしている。奇襲攻撃 8 で疲労しきっていて、河を渡るエネルギーなどほとんど残っていな れた河の銀の面を見た。砲火に粉砕されて水路の堤防はクレーター に崩れ落ちてしまっている。草地に流れ出した水は輸送車の燃料いはずだ。 タンクのディー・ セルオイルで汚れていた。痩せた手で双眼鏡を操作「軍 : ・ : ・テ、ーロック軍曹 ! ービアソンは過度に明確な教師の声 しながら、。ヒアソンは対岸に並ぶ樹木を観察した。河は小川というをわざと荒つぼくして呼びかけた。半ば予想していた通り、テ = ー ロックはその叫びを無視した。一対の銅の端子を鋭い口で締めつけ より僅かに広く、精々腰までの深さしかないが、両岸の草原はビリ たまま、彼はほぐしたワイアを結びつづけた。このゲリラ隊を指揮 ャードの台ほどには開けている。早くもアメリカ軍のヘリコ。フター が街の周辺基地から飛び立って、愚鈍な鳥の群のように流域上空にしているのは。ヒアソンだが、実際の主導権はこのスコットランド人 にあったのである。六年前にアメリカ軍が上陸する以前からのゴー 騒々しい集団を作っていた。 兵員輸送車の運転室の爆発がドアと風防を吹き飛ばした。その光ドン・ ( イランダーの正規員として、軍曹は民族解放軍の中核をな ーロックが自分でも公然と は水につかった草地一面を燃え立たせ、この戦闘司令所の後壁をなす最初の抵抗部隊に参加していた。テ = リ自慢している通り、反乱車に引き込まれたのは主としてイングラン す記念碑の薄れた文字を一瞬孤立させた。。ヒアソンは最も近いへ コプター小隊を注視した。その隊は二キロ下流の自動橋を旋回してド人を殺戮するという目的によるものであった。ビアソンは何度も 考えたものである、軍曹はいったいどの程度まで、アメリカの占領 おり、破壊された乗物と周辺の死体に気づくにはまだかなり遠い。 この奇襲攻撃は、成功したとはいえ、計画的なものではなかったの軍の庇護下にあるロンドン傀儡政府と彼を同一視しているのだろう だ。輸送車は愚かにも、ビアソンの隊が渡河準備を進めている最中か。 に堤防をやってきたのである。 彼が小掩蔽壕から這い出した時、自動橋の中央の横梁で銃火が閃 いた。。ヒアソンは記念碑の台座の陰で待機した。そして西方八キロ 運が良ければ、とビアソンは期待する。渡河作戦は中止されて丘 陵奥地に退却するよう命令が下るだろう。彼はポロの制服の中で身のところにあるアメリカ軍の飛領土からの重曲射砲の轟音に耳をす 震いした。べンソン伍長が昨日の朝、死んだ海兵隊の機関銃射手のませた。そこでは九百人の海兵隊砲兵が反乱軍の二個師団相手に数 ズボンをはぎ取っていたのだが、腰から腿一面にこびりついているカ月も抵抗しているのである。ヘリコプータによる空輸補給を受け て、アメリカ軍は深い掩蔽壕から七十挺の銃で日に数千もの弾丸を 血を洗い落とす時間はなかった。 記念碑の裏側の砂袋を積んだ入口は貯蔵トンネルに通じている。発射して闘い続けている。その飛領土周辺の草地は水没した月面の そこでは、テ、ーロック軍曹と、昨晩青年隊から送られてきた十七景観を呈していた。 歳の少尉が野戦ラジオに取り組み、〈ッドフォーンと・ ( ッテリーの砲弾が湿った空中に唸りを上げ、爆発が粉砕された土を持ち上げ
市の生活を写しだしているのにちがいないことを強としても不思議ではない。サ ( ラの砂とプラジルの中央に浮かぶ女だけの島では、美しい巫子との恋に 張して、息をひきとる。死にぎわに立ちあった探検砂州台地とは、同じ土質から出来あがっているのた落ちたモースが、清らかな愛のロマンを歌いあげ 家スタンリー ・モースは、かれから手渡された黄金から ! 」 る。そして物語は、兄妹の王権争いをあいだにはさ の鉢が、なんと地中海文明圏で作りだされたもので大洪水の伝説と、アトランチスの謎を解きあかすんで一進一退のシーソーゲームをつづけたあと、つ あることを知って、冒険心をそそられる。 ために、モースはレイドロ , ー教授と共に、蜃気楼のいに火山爆発というクライマックス場面へと急転す る かれはさっそく問題の鉢をメトロポリタン博物館都市ド , ールをめざす大探検隊を組織する に持ちこむ。博物館の鑑定も、予想した通りギリシ要するに、主人公モースのキャラクタ , 、は『ソロ物語は、新聞小説の。 ( ターンに従って、何ページ ャあるいはクレタ産と出た。副 ~ 。「長は、この品物がモン王の洞窟』以来二十作に及ぶ長編に登場した ( めかには必ず小さなクライマックス場面を挿人して 南アメリカから出上したことを聞いて腰をぬかす。ガードの分身〈アラン・クオーターメン〉であり、読者の気をそらさないように配慮されてある。それ 博物館の紹介で、かれはアトランチス学の権威レイレイドロー教授はコナン・ドイルの創作になる不屈はうれしいのだけれど、今どきこんな子供だましに ドロー教授と面談することになる の科学者チャレンジャー博士の焼き直しなのだが、血湧き肉おどらせる読者がいるだろうか ? とみえ 「さて、南アフリカとヨーロツ。 ( にちょうど向かい設定はさすがにしつかりしている。世界がまだ広くこんでしまうのも事実た。二〇年代の。 ( ルプ小説に あった南北アメリカの形を見てもらおう。低地地域人間がまだ単純なキャラクターしか持ちあわせてい現代人が、当時の人々の抱いた期待とスリルをその の多くが今はとっくに浅い海におおわれてしまってなかった一九二〇年代の小説は、発想の観点からしまま要求したって始まらないわけだけれど、たたし いるにしても、どうだね、両方の形を示した地図は、て、現代人にはもう書けっこない。ある意味では この無害で無邪気なアナクロニズムには、・ほくたち ハラ・ハラに分断された。 ( ズル絵に似てないかね ? 力、、ハ力しいし、別な意味ではうらやましくもある。の心を暖めてくれる要素が充満している。とにかく プラジルの東方向、セント・ロック岬のあたりは、けれど。この種の古典にからまる・ ( カ・ ( 力しさを許世界のでかいこと ! ここにのめりこんだら、・ほく ギニア湾のなかに。ヒッタリとおさまりそうな形だす余裕がなくなったら、もう。 ( ル。フ小説なんかに目たちはもいちど小さくなれる。 し、サ ( ラの大砂漠は、だんだん海面下に沈んでいをくれる必要はないのだ そして唐突に笑ってしまった。な・せって、前に書 く南アメリカ北東部の沿岸地帯に沿って同じような激流をの・ほり、断崖を越えて、ようやく目ざすアいたヨーコ・オノの『グレープ・フレーツ』にあった 形で走っているし、どだい南アメリカの下半分の海トランチスの都市ドールにたどりついた探検隊は、 ヨーコ自身の序文が、なにか瞳小的だったから 線は、西南アフリカのそれと。ヒッタリ対応しあっそこで国を二分する兄妹の王権争いに巻きこまれる読み終ったら、この本は燃してください ているとは思わんかね。 魔女的な妹にはアトランチスの宗教を牛耳る高僧が って。ついでに、ジョン・レノンのあとがきが だとすれば ! 世界を襲った一大天災が地形を変味方し、いつ。ほう正義漢の兄にはモースたち一行がもっと泣けたのです え、ヨーロツ。 ( とアメリカとを分断したあと、生き味方として加わる。競技場では、ドール最強の闘士この本はぼくが燃やしたうちでいちばんりつばな のこったミノア人たちがプラジルで都市を再興したとモースが血みどろの肉弾戦を展開してみせ、湖の本だった。 0 0 0 0 0 5
ジェリーは一日中郵便局の周辺をうろついた。彼の打電には何のとジェリーは考えたが、少年は駈け出して慌しく裏通りへ曲ってし 返電もなかった。しかし、それが却って朗報なのかもしれない。旧まった。 市街のあるーに入ると、スウェーデン人フォーク歌手に追い払わ ジェリーはどぶに唾を吐き棄てる。 れた。流しの人力車を拾って城壁廻りをした。ネックレスと櫛を買 っこ 0 く ・スウェ通りでは、追い越そうとする市街電車に撥ねられ そうになり、電信柱に倚り掛っていると、カラン・カクサ保安刑事 07 ・ 00 日スポポダ大統領がラジオで個人的声明を行なって冷静 二名に旅券の提示を求められた。旅券は彼らに感銘を与えた。彼らさを要講した。侵略に関する説明は私には出来ないと彼は述べた。 が舗道上の群衆の中をうろついて靴磨きの少年を検挙し、あとから 徐行してくるトラックの上に押し込むのを、彼は眺めていた。カタ ルシス的行為だ、丁重なやり方とはいえないが。 ジェリーが熱線銃のトランジスタを点検する間、マクスウエルは ふと気づいてみると、路上には人の姿はなかった。ジ = リーはブ仕度の出来ていない寝台に横たわってその様子を眺めている。「他 ラシと・ほろ切れと靴墨を拾い上げる。箱に収めてそっと近くの店のには仕事がないのかね、コーネリアス君 ? 」 戸口に置いた。何人かが姿を見せ始めていた。市街電車も動いてい 「あれやこれややっていますよ」 る。向い側の歩道上に、ジ = リーはキャプテン・マクスウ = ルの姿「政治上の説得工作というやつはどんなものかね ? 」 を見た。技師は疑ぐるような眼付でこちらをみつめていたが、見ら「こりや一本取られましたよ、キャ。フテン・マクスウ = ル」 れていることに気づくとすぐに快活に手を振った。ジ = リーは知ら「うちの僧の話によると、君は、政治上の信念をもっということは ないふりをして・ほろの日除けの影へと引っこんだ。店舗自体は通り神への信仰を保つことと同じように幼稚なことだと言ったとか」マ にあるよその店と同じく一時閉店となって、扉もシャッターも重いクスウエルは腰帯をゆるめた。 南京錠がかけられている。或る扉の羽目板に、布告が糊で貼られて「そいつは事実なんですか ? 」 いた。「ビイー・ダウン・スー マイアンマ・ナインガン・ドウ」 「それとも君は、これが言いがかりだとでもいうのかね ? 」 ジェリーは熱線銃の組立てを終えた。「それも一つの可能性です とジェリーは単語を拾った。では、これは当局の公式告示なのか。 ジェリーは、街路に行き交う人力車や自動車や電車、そして時折見ね」 えるトラックに眼を走らせた。 やがて靴磨きの少年は戻って来た。ジェリーは道具類を指し示 す。少年はそれを拾い上げると腋に抱えて歩き出し、ステイトラー ーヒルトンの見える広場へと向った。ついていっても悪くあるまい 0 8 ・ 2 0 " 。ヒルゼンラジオは「チェコスロ・ハキアにおける最後の 自由な放送」であるとして自らを述べた。 ヒーダ 8 9
る。しかし、それ故に彼女はこのフリーランドを出なければならな タニアは再び坂道を昇ってチカノ側のキト着いた。店の戸は開い いといえるだろう。タニアはある意味で、ここにきて初めて自分のていたが、そこにもローラの姿は見えない。 「セニョリータ・ローラ ! 」 目的を自ずから認めたともいえるのだ。 タニアは大声で叫んだ。店内で小さな物音がして、カウンターに 空は急速に青くなり、太陽は真赤な炎を地平線に燃え立たせた。 地平線の霧はその炎を屈曲させ、一面の大地に広げていった。 男物の帽子が持ち上げつた。タニアは思わずジ 1 プの背後に飛び降 りながらベルトの銃を抜いていた。 「わかったわ、タンテ・ルース」ローザは地平線の炎上を見つめな 「セニョ 1 ラ ! 」 がら呟いた。「フリ 1 ランドはいつまでも遠いところなのね ! 」 彼女はエンジンを始動してクラッチを踏み込んだ。ジ 1 プは坂道カウンターから現れた小さな頭は確かにホードのものだった。ホ を昇り、朝霧は谷底の街へ降りていく。そして小岩石の高地までく ードは勢いよくカウンタ 1 に飛び来ると身軽に店の外まで一気に走 ると太陽は完全に空に浮き上がって強力な白光を放出し始めた。 り出た。 フリーランド側のキトへ着くと、相変らずタ・ハコを吸っている老「ホード ロ 1 ラが、眠っているような笑っているような眼でテ 1 プルからタ タニアもジープを飛び越えて叫んだ。ホードのあとからは武装し ニアをみつめていた。 た三人の男とロ 1 ラが現れた。 「セニョーラ、チカノへ戻りたいのです」 「タニアさんがおいでになったとローラがいうので、きっと戻って タニアがジ 1 プを降りて店の前からいうと、老ローラはゆっくり いらっしやると思って待っていたのです」 立ち上がり、店を出て空を見上げた。 ホードまいっこ。 「たぶん、向こうのローラが兵隊と話し込んでいるはずだから、そ「ずっとあなたを捜していましたのよ」 の間に検問を走り抜けるといいよ」 タニアはいった。 「もし、セニョリータ・ローラがいなければどうすればいいの ? 」 「チカ / では戦争が始っています。ィッフ工とソホラープが大統領 タニアがいうとと老ロ 1 ラは煙を大量に吐き出した。 を暗殺してクーデターを起こし、サ 1 ディ将軍がソホラープと戦闘 「やはり検問を一気に走り抜けることね」 中なのです。我々だけでなく、フリ 1 ランドからは次々ゲリラがチ 老ロ 1 ラはいっこ。 カノに向かっているのです。同志タニア、これは全てあなたの工作 タニアはジープに乗り込んで坂道を降りた。草原を走って検問のの御成果です ! 」 手前で車を停めたが、検問には人の姿が見えなかった。アクセルを「わかりましたわ。みなさんジープにお乗り下さい。荷物を捨てて いつばいに踏み込んで小屋の前を走りながら覗き込むと、やはり兵下さって結構です」 タニアがいうと、ホードが助手席に、三人のゲリラが荷台に乗り 士の姿はなく、屋根についていた小さな旗も折られて倒れていた。 9 7
しいタニア」 そしてホードは去った。 タニアはその夕刻、サーディとデートした。 2 況に追い込まれていた。ソホラープは遂に彼女の父のことを話し、 彼女の父と現大統領との間をとりもっために彼自身が様々な活動を したことを告白した。 タニアがタンテ・ルースのもとに引きとられた頃、イッフ工とソ ホラープは二十代の若者として、当時のフリーランド側の首脳であ ったタニアの父に選択を迫っていたのである。そしてタニアの父は タ = アはサーディとソホラープに関する情報を送ることができるソホラープを選んだ。 ようになっていた。どちらかがチカノを離れることが多く、その都「タニア、君と私とは不思議な運命の緒で結ばれているんだ」 ンホラープ将軍はいった。そして、その一言でタニアの決心はっ 度タニアへのいいわけのために軍の行動に関して二人は話した。タ ニアはそうしたことには関心がないかのように聞き流し、のちに暗いたのである。彼女は自分の運命にいっか反抗してやろうと考えて いた。彼女はイッフェが忠告した通り、サーディを選ぶことにした 号文にして送り出した。連絡先はイッフェだけでなく、様々なゲリ のだ。 ラに伝えられた。一人に何度も連絡することは危険だったからだ。 サーディはソホラ 1 プよりも十才近く若く、タ一一アともさほど離 やがてサーディとソホラープはタニアに求婚した。二人はもとも と仰が良くなかったが、タニアの一件によってアルビラ連邦の上層れていないだが、その若さでタニアが知り合ってのちも次々と勢 部に於ける最悪の関係となっていた。そのためかョンロエルがチカカをたくわえていき、今では事実上ョンロエルの最実力者にのし上 ノ政庁に反抗するような出来事も多くなったのだ。それはタニアのがっていた。ソホラープのようにキザっぽいところはなく、殆んど 見事な工作であったといえるだろう。ョンロエルはフリーランドへ軍務と政治以外には関心を示さない男である。そしてソホラープに の攻撃をやめて全軍をチカ / 中央軍に向けて待機させ始めていた。対するやきもちも、ソホラー。フのサーディに向けられるものよりも 大統領はこの両者を調停した。その結果、実質的な行動は生まれずっと少なかった。 タニアはサーディと婚約し、共にパーティに出るようになった。 なかったが、その後もョンロエルは軍を自国に駐留させたままであ ーティで驚かされたのは、イッフェの行政庁での進出がめざま る。しかし、その間のフリーランド側の動きについてはタニアにも わからなかった。報道管制のためだけでもないようで、将軍たちのしいことである。ィッフェはもともとザコフグラッドの官吏で、フ リーランド革命の時も専らザコフグラッド政庁側に属しながら解放 間ですらフリーランドの事が殆んど話題に出ることはない。 フリーランド それはタニアにとって、いつまでも遠い国であ戦線に情報を流していた。そしてザコフグラッド政庁が崩壊すると タニアの父の連邦参加案に反対し、暗殺計画を実行すると亡命者と ったのだ。 タニアはサーディとンホラープのどちらかを選ばねばならない状してチカノに入った。当時はイッフェ自身が大物ではなかったし、