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検索対象: SFマガジン 1973年12月号
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1. SFマガジン 1973年12月号

みたいな名前の怪しい人物がいた「軍談で人を集めてれが正夢になって子供が生まれた。名前を浅之進とつけ の 談 は、大人のオモチャ屋に売っているような松茸のかっこる。深井浅之進なんて語呂合わせみたいだが、浅草観音 軒 うをした木製の変てこなもので調子をとり、猥雑滑稽なにちなんでの名前だ。両親がかわいがることこのうえな 志 ことをいう妙なおやじだ。このおやじの説くところは、 。やがて二男、三男が生まれたので、両親は浅之進を 黜人神道も儒教も仏教もごったまぜ、老子、荘子も十把一か出家させることにした。浅之進としては、好んで出家す らげにして、でたらめをしゃべるから、泣いている子供る気はなかったのだが、当時は新憲法が制定されておら まで笑いだす始末で、しらない者はない。そのころ、江ず、自由意志の尊重なんてこともなかったから、まあ仏 戸には二人の名物男がいた。一人は市川海老蔵でもう一縁だからしかたがないということで小僧になった。どう 人が、この志道軒おやじだ。しかし、海老蔵はもう死んせ僧侶になったのだから名僧になろうと決心し、競馬も だから、いまではこのおやじが江戸唯一の名物男だ。なマージャンもしないで、ただひたすらに仏の道を勉強し ぜ、このおやじがこんな名物男になったのか、その生いた。 立ちゃ由来を調べてみるのも一興だ。 そんなある日、不思議なできごとが起こった。浅之進 が勉強している机のうえに、一羽のツ・ハメがとんできて ここまでがプロローグにあたるが、当時、志道軒とい 卵を産んだのだ。見ているうちに卵は二つに割れて小人 う人物が江戸にいたのは事実で、源内はこれをもとにしが現われた。小人はたちまちのうちに、ふつうの人間の て、これから先をフィクションに仕上げている。 いくら仏 大きさの美女になった。美女は彼を庭へ招く の道に仕えるものでも男は男だ。につこりほほえまれる ( ストーリイとぜんぜん関 この志道軒おやじの父はある屋敷の用人で、深井甚五と、もう誘惑には勝てない。 左衛門といっ係ないけど、ぼくのところにも美女がやってきて、その た。四十になっ美女が山本陽子みたいだったら、「こてん古典」なんか ても子供ができほっぽらかして誘惑されてしまうんだけどなあ ) 美女に ないので浅草観ついていくと築山の後に直径五、六寸の穴がある。不思 音に祈願したと議にも美女に手をとられて歩いていくと穴の中に入って ころ、満願の夜しまった。すると、トランプの国があるのは「不思議の の明け方に、妻国のアリス」で、ここは四季の草花が咲き乱れ、うぐい が南のほうからすと千鳥が一緒に遊んでいる桃源境。玉を飾った楼閣が 金色の松茸がとあり、そこへ招かれると美女がいつばい。上野のキャ・ハ んできて腹に入レー「ポーナス」や大井町の「ウラシマ」よりたくさん る夢を見た。そ女の子がいる・流行の唄を聞かせてくれるし、お酒は飲 し .

2. SFマガジン 1973年12月号

かしく、十万匹ぐらいの個体を集めてわずかに〇・何グラムという はひたすらに食う ! 微量な結晶を得られるに過ぎないという。ミッパチやアシナガバチ 4 なら十万匹という多数の個体を集めることもできようが、一匹ずつ で生活している孤独性の狩人蜂を、それも同じ条件のもとで十万匹 それではアオムシやヨトウムシにこのような不動金縛りをもたらもの個体を集めることなどおよそ不可能である。しかしかれらの持 すジガ・ ( チの針の毒とはいったいどのような性質を持っているものつ毒液の成分もアシナガ・ ( チやスズメバチの毒液のそれとあまり大 きな違いはないと思われる。それはアシナガ・ハチにごく近い種類の なのだろうか ? ドロバチやトックリバチなどというどろをこねて美しいっ・ほ型の巣 もっともよく知られているアシナガバチの毒液でいうならば、そ じやどく れは蛇毒とたいへん似た構造を持っている。つまり医療に用いられを作る ( チもやはりガの幼虫に針の一撃を加えて麻痺させ、自分の るノボカインやシロカインのようなアルカロイド性の麻酔剤と異な幼虫のえさにするからだ。だから何のへんてつもないアシナガバチ り、それ自体では毒性をあらわすことはないが、動物の体内に入っや兇漢と呼ぶにふさわしいスズメバチも、あるいはその気になれば てタンパク質と結びついてタン。 ( ク質を変化させるいわゆる毒タン精妙な手練のわざをほこる針使いになれるのかもしれない。その気 にならないからかれらはそのくぎぬきのような大顎でくちゃくちゃ 。ハクであり、アシナガ・ハチの属名のポリステスとタン。ハク質のキニ かんでアオムシの肉だんごなどを作っているのだろう。そしてそれ ンをつないでポリステキニンと呼ばれている。これは麻酔剤ではな いからその毒に犯された組織が時間がたてばもとのように回復するは親が子供に新鮮なえさを与えるためにに、たえずはたらきつづけ なければならないことでもある。またアシナガバチにくらべると、 ということがない。もちろん機能を失ったり壊死した細胞や組織が ジガ・ハチの方がはるかに数が少ないのも、その手間のかかる子供の しだいに欠落して、そこに新たに生じた細胞や組織がとって代るこ とによって機能はもとにもどるのだが、そうなるまでの間、あるい育て方とおおいに関係があるだろう。このような大きな違いがどう はならなければ以後ずっと、機能障害がつづくことになるし結節をして出てきたのか、単なる適応や進化では十分な説明はなし得ない 作ったりして広い意味での後遺症を残すことになる。アシナガ・ハチような気がする。 に刺されたあとが、痛みはひいても紫赤色に腫れ上った部分がいっ までも硬いしこりになって残ったりするのがこれだ。アシナガ・ハチ ちょっと脱線するが、ハチに刺されるとたいへん痛い、というの に近い種類のスズメ・ハチなどでは体も大きいし、毒液も強いので何はどなたも経験ずみのことと思うが、多くの場合、そのハチはミッ ハチ、アシナガ・ハチであろうし、まれにクマバチやスズメ・ハチであっ 十匹ものスズメ・ハチに襲われると人間はもちろん馬や牛でもあえな 一命をうばわれることになる。スズメ・ハチやアシナガ・ハチ、ミッ たりする。これらのハチの持っ毒液は前にのべたようにポリステキ ・ハチなどの毒液の成分はよく知られているのだが、ジガ・ハチやアナニンであり、タンパク質におよぼす化学変化が痛感覚細胞に強烈な ・ハチなど狩猟蜂の毒液の性質は残念ながらまだわかっていない。、 / 刺激を与える結果、いたずら坊主も悲鳴を上げてとび上ることにな チの著名な研究家として知られる東京科学博物館の石川良輔氏に最る。それにもうひとっ針による痛みは持続的ではないが刺された場 近聞いたところによると、ハチの毒液の分析というのはたいへん難所によってはかなりはげしい。それでは針による一撃をとくいとす

3. SFマガジン 1973年12月号

る。その衝撃の間に、橋の向こうでも攻撃が始まって小火器の射撃島に送り得たのは二十万たらずの兵で、それは数十もの民族解放軍 音が響いてきた 1 。ヒアソンは貧弱な肩に軽機関銃をかけてトンネルを相手にした全地球戦争においてここが遠隔の入江にすぎないから であった。毎夜偵察へリコ。フターが頭上を飛ぶトンネルの中でビア に駈け戻った。 ソンとテューロックが躰を縮めながら聞いている地下ラジオの自主 「何のおかげで我々は足止めを喰らっているんだ ? 軍曹。このラ 放送は、ビレネーからパ・ハリア・アルプス、コーカサス、カラチに ジオは大隊で検査しておくべきだったな」 彼は泥の飛び散ったコンソールに手を伸ばしたが、テ = ーロック至る連続した戦闘を伝えていた。東南アジアでの最初の紛争から三 はその手をスパナで払いのけた。若い少尉の意識的な敬礼を無視し十年経った現在では、地球全体が巨大な反逆の烽火であり、世界ヴ エトナムなのである。 て、テューロックは呶鳴る。「じきに使えるようになるさ、少佐。 それともあんたは今撤退したいのかい ? 」 「べンソン ! 」伍長はびつこを引いていて、その細腕には分捕品の 少尉の視線を避けながらビアソンは言う。「我々は命令に従う、重いカービン銃があった。ビアソンは苛立たしげな身振りで、砂袋 軍曹。いっか知らんがこの装置が直ればな」 に躰を投げ出している部下たちを指し示した。「伍長、半時間後に 「直しますよ、少佐。あんたが心配する必要はない」 攻撃開始だ ! 少なくともみんなを起こしておけ ! 」 ビアソンはヘ . ルメットの顎紐を解いた。三カ月間行動を共にし疲労した敬礼で答えると、伍長は陣内を歩きまわり、気乗りしな て、軍曹はビアソンが戦意を喪失したと決めつけていた。むろんテい様子で男たちを長靴でこづいていった。ビアソンは河流の樹林を ューロックは正しいのだ。ビアソンは、葉の繁った柳によって空中凝視した。北方のウインザーの荒廃した城の近くに煙の柱が何本か 攻撃から保護されている要塞堅固な陣地を見渡し、野生ストしフに立ち昇り、その上空でヘリコ。フターの群が突進し急降下しながら、 やっ 群らがっている部下たちの婁れた顔を数えていった。アメリカ製の空虚な郊外道路の間に成長した深い森林に向けてロケット弾を射ち 帯紐で結んだポの制服を着て地下の穴ぐらで何カ月も暮らし、食込んでいる。この広大な暴虐の平原にあっては、ただ下方の草地だ 物も武器も不足状況にある彼らを支え続けているものはいったい何けが流出した河と共に静寂を守っているようだ。水は兵員輸送車の か ? アメリカ人に対する憎悪ではない。死人を別にすれば、アメ周囲から退却して死体の脚を揺り動かしていた。。ヒアソンは再び無 リカ人の姿を見ることはほとんどないのだ。安全な基地内で、無限意識に部下の数を数えはじめていた。全員が開けた大地を走り抜け て河を渡り、対岸に並ふ樹林に突入しなければならないのである。 の戦闘技術によって保護されているアメリカ遠征軍は、アーマゲド そこにはアメリカ軍がガトリング速射銃を手にして潜み、藪から飛 ンの日の天使軍団か何かのように遠い存在でしかなかった。 僅かでも幸運だと言えるのは、アメリカ軍が地球上に非集中的にび出してくる餌物を待ち構えているかもしれない。 : ビアソン少佐」少尉が彼の肘を突っいた。「捕虜に会ってお 5 散開していたことで、そうでなければ全解放戦線は遙か昔に壊減し「 : ・ ていたはずである。二千万の兵力を有しているアメリカ軍が英国諸いた方がいい」

4. SFマガジン 1973年12月号

かれは、そのグラスの最後の一滴まで飲みほした。彼女のワイン大祭司は、手にしている革袋をさかさまにして、きらきら光る中 は芳醇だ 0 た。中庭に散らば 0 ているじゃがいもをみとめた彼女味をテ 1 ・フルの上に出した。「かそえてみてください」と、かれは っこ 0 は、かれを手伝うために笑いながらっかっか出てきた。かれは彼女 かれは、ぶるぶる震える指でその数をかそえた。一枚ずつ袋の中 「いいよ、いまはよそう」とささやき、彼女をか の腕にさわった。 へ入れるたびにチャリンという音をたてた。チャリン : : : チャリン たく抱きしめて、接吻したーーーアメリカ滝でしたときのようにそっ : チャリン。最後の音がしおわると、かれは袋のロを閉じて、長 とではなく、夫が妻をどんなに必要としているか、急に気づいたと 衣のふところへつつこんだ。 きにするようにはげしく、むさ・ほるようにしたのだった。 ややあって、彼女はあおむくと、かれの目の中をじっとのそきこ 「三十枚ですね ? 」と大祭司龕「照のこと んだ。そして、ニッコリした。思いやりのこもった、やさしい微笑「ええ、三十枚です」 だった。「そうね、じゃがいもはあのままでじっとしていられるわ「では、承知してくださるんですね ? 」 百回め、千回め、百万回め、同じようにかれはうなずいた。「そ ね」といった。 うです」かれはいった。「手をうちましよう。さあ、かれのところ やせた男は、はてしない時の広がりをさかの・ほり、黙して語らぬ〈案内してあげますよ。わたしがかれのほおにロづけをする。そう 冷たい星々のもと、永遠の放浪を再開した。クリスのことはうまくすれば、あなたにかれがわかるでしよう。かれは、都市のついはず と い 0 た。かれに勇気がわいてきた。もう一度ためしてみたら、たぶれにある園・・・ー・ゲ , セ「ネ ( るキリ , トが苦難にあい、裏切られた地 いう園にいるんですよ」 んかれ自身もその決定的瞬間を変えることができるかもしれない。 その時間を、その場面を、かれの感じかた、を考えるのだ。それか ら、扉を開くこと : : : それは春のことだった。わたしはいま、せま 、うねうねした通りを歩いている。わたしの頭上で星々がまたた き、闇を照らし夜の神秘的な牧草地にかすかな光を投げかけてい る。それは春のことだった。あたたかい風が畑のほうから吹いて き、作物のにおいを運んでくる。粘土のかまどの中でやけているマ 。ハン種を入れないバン。ユダヤ ) のこんがりしたかおりを嗅ぐこ ( 人が過ぎ越しの祝いに食べる いま、わたしの前方に寺院が見えてきた。わたし とができる : は、その中へはいっていき、一枚石のテープルのかたわらで待っ : いま、あの大祭司が近づいてくるところだ :

5. SFマガジン 1973年12月号

産の時は数週後に迫っていたからだ。幾世紀も以前から空間に鳴りきに合せて、頭部をゆさゆさとゆすっていた。そして、ああ何んと いうことかーーー怪獣のあぎとにくわえこまれているのは、サルマで 続ける甘美な曲の調べを子守り唄に、彼らはただちに眠りに落ち た。いったいどれくらい眠ったのかォメガにはわからなかったが、 この世にも恐しい光景を目撃したオメガは電撃を受けたように行 彼は突然、眼が醒めてしまった。彼は面喰らいながら半身を起し、 暗闇の中をじっと見据えた。何かの理由で灯火はすべて消えていた動を開始した。しやがれた叫び声を上げると、彼は怪獣に向って脱 からだ。するとやがて、奇妙な音が遠くから聞こえて来るのに気が兎のように突進し始めた。怪獣の上空の空気を急速に切り裂いて、 ついた。それは、岩の海岸に打ち寄せ砕ける波のざわめきと、林を妻を求めて突き進んだ。彼が肉薄して行く時、血を吐くような叫び 吹き抜ける夜風の溜息と、雷鳴の轟きとを一緒にしたような妙な音 声が絶えず彼の口からにとばしって静寂な空気をつんざいた。怪獣 だった。突然、大地と小屋がぶるぶると震動し、部屋の壁が、強風は餌物をくわえて、湖にたどりつかんものとあせりにあせってよろ に打たれているかのように、揺れ動き、ひん曲ったように彼には感めき進んだ。しかしいまや、オメガはその愛する者のそば近くに達 し、さらにもう一声、もろに敵の耳の中に絶叫を投げこむと手をぐ じられた。 狂ったように彼は目をこすって、すべては夢だったのだと確信しっと彼女のほうにのばした。その時、恐らく人間のあまりの向う見 た。ところが音はなおも近づいてき、彼の耳を圧した。恐怖に襲わずに全く恐れをなしたのだろう、ばけものの巨大なあぎとは力を失 れて彼は立ち上り、大声で叫・ほうとした。だが言葉は彼の唇に凍り サルマはぐったりと意識を失って大地に転落した。 ついた。ちょうどその瞬間に、彼の面前の壁が、雪崩に打たれたか ばけものが地響きをたてながら逃け去る間に、オメガは愛人のそ のように、内側に倒れ込んで来たからだ。次いで、押し砕き、引きばに跪いた。 裂く音響が減茶苦茶に入り乱れて交錯し、固い地面が、何かとほう 「ああ有難い」と彼は安堵の息をついた。「生きている ! 」 もない力に踏みしだかれて打ち震え、その度合いが一瞬強まったと それから彼女をかいなの中に抱き締めて、破壊された家へと帰り 思った直後、刺し通すような悲鳴が聞えた。 かけた。ちょうどその時、大きな飛沫が飛び散って、またもや怪獣 恐怖に凍りつき、オメガは、ぐらぐらする壁がいまにも彼のほう がおのが領分の水中に帰り、その所有権を彼らに誇示したことをつ に倒れかかって来そうに見える、破壊された部屋の中を見まわした。げたのだった。 サルマは何処にいるのか ? 逆上して彼は闊の中をのそきこんだ。 サルマはすぐに息を吹き返した。 : 、 カ彼女はオメガにしがみつい 寝床の上を手さぐりした。彼女はいなくなっていたー どこを通ってか、彼は戸外に出た。そしてそこで、湖の方角に彼たまま、あたりをこわごわと打ち眺めるばかり。彼女が戸外にさま いきさっ は怪獣を見たのだ。そのとてつもない図体が地上から高々と聳え立よいでて、怪獣にばっくりとくわえられた経緯については彼女は何 っているのが暗い中に見てとれ、どすんどすんと歩く、その足の動もわからなかった。だがオメガは、彼女が夢遊状態で外に出たに違 218

6. SFマガジン 1973年12月号

・・グラスの繊維 る狩人蜂に刺されるとどんなことになるだろうか ? 小学生の頃かな痛さというか、極細の銀の針の先端かファイ・ハー ら採集だの観察だのと、静かで平和なハチの世界を天魔の所業の如の先端が刺さったような痛さで、アシナガ・ハチやミツ・ハチのあの灼 く踏み荒してきた私は、針によるかれらのたしなめをどれだけ受け熱感をともなった疼痛とはあきらかに異っている。そして腫れ上る てきたかわからないが、逆に私の方から刺させてみたことが何度かということがない。これは一回の刺突に発射される毒液の量そのも ある。毒のききめや痛さの程度を知るためにはわが身で試みるのがのが非常に少ないのか、それとも毒液の成分が異なっているのか、 いちばん手取り早いという極めて単純素朴な発想だが、そのつど私どちらかであろう。私は前者ではないかと思う。それはかれらが狩 は痛度計のようなものがあったらどんなに便利だろうか、と思っるえもののアオムシやヨトウムシの体力、戦闘力からくるものであ た。りくつで言えばその瞬間の血圧なり刺された部分のひふ電流のろう。クモを狩って育房へ運ぶべッコウ・ハチという種類があるが、 変化なり、あるいは筋肉組織の収縮の度合なりを電気的に測定してこれはとび上るほど痛い。そして刺されたあとが腫れ上ってなかな 処理をほどこせばできないものでもないのだろうが、それでも痛みかなおらない。これはクモというハチにとってはおそるべき生き物 という感覚はかなり個人差もあるし、覚悟している時とそうでない を襲う関係で一回に発射される毒液の量がはなはだ多いせいであろ 時とではまたたいへん違ってくる。実際、言葉どおりかなり感覚的 。体長二センチ五ミリもある大形のキオビペッコウという勇猛な ハチに刺させてみた時にはほんとうになみだが出た。大きなオニグ なものだから始末は悪い。、、 ・ノガ・ハチに刺された時の痛さだが、針が 刺さった瞬間、チクッと痛い。その感じは繊細な痛さというか澄明モやジョロウグモが一撃でノックアウトされるのが実感された。し 翁今 0 ⅱⅢい 協 9

7. SFマガジン 1973年12月号

っていた。 なドームにおしこまれ、死亡も出産も、レジャーも教育も、コン。ヒ 管理者は、常に管理を目的としたシステムを編成する。禁止され ューターの言いなりにコントロ 1 ルされて来たのです。今の我々 は、ドームの外へ出・る・こどなど、考えもしなぐな ' っている自然のた芝生への立入りを犯す者が現われれば、芝生の補修強化よりは、 空気を吸えば、細菌に侵されて死ぬと思い込んでいます・天然の土何人も芝生へ侵入することのできぬような制度を作りあげてしま を踏んだ靴は、焼却してもまだ不安の種です。土には無数の微生物う。芝生は踏むものから見るものにかわり、やがて芝生を踏むこと が住み、我々はそれをひどく不潔なものに感じているのです」・ は権力の威示儀式となってしまうのだ。 山本は頷いた。 シティのコン。ヒューターは、人々は外域を無制限に移動すること を嫌い、よい管理のしやすいクローズド・サーキット方式を採用し 「僕らの時代、すでにそういう傾向が始まりかけていましたよ」 「懐古主義者とは不本意な言われようです。、私らは、人間は本米どはじめた。 ドームが建設され、完全な空気調節と浄化システムが登場した。 のようなものであったかということを探究しているのです。懐古し ているのではなく、未来を人類のあるべき姿に戻そうとしているの住民は清潔無比な環境にとじこめられ、やがて外域を忘れた。 です。幸いこの部屋は、ビッグ・ジョンの監視回路をとり外してあ「こんな莫迦なことってあるか」 ります。従って、このような会話も自由にできるのです。しかし、 三波が息まいている。 普通の場所だったら、もうとうに拘東されてしっているでしよう」 「どこにでも自由に住めるようにするのが科学しゃねえか。ここに 「けしからん。まるで警察国家だ。恐柿政治じゃないか」 だけ住めってのはファシズムそのものじゃないか」 三波が言った。 三波は完全に停止した、十二の帯を持っ走路を眺めて言った。伊 東は総監が用噫してくれた磁気発生機を背中につけ、ガスマスクを ぶらさげて笑った。 3 「ロポット野郎が人間を殺せないってのは愉快だね。さあ、これか らいよいよビッグ・ジョンにご対面だ。あの野郎を動けなくしてや 四人はビッグ・ジョンが支配するシテ一イの中で、ビッグ・ジョン るそ」 の支配体制をくつがえすために、思うさ」ま暴れはじめた。 走路を破壊し、通信システムを混乱させた。エンダービイ総監を総監たちは独自の通信システムを作りあげ、市民の心に潜在して はじめとする懐古主義者の秘密組織はい四人の陽動のかけで、巧妙いる反 ;< 感情を煽りたてている。 到るところでが破壊されはじめていた。 に偽せのデータをビッグ・ジョンに送りこんだ。 ・システムが ( シ 「靴を買いに来たのよ。なぜちゃんとした店員が相手をしてくれな 社会を運営するために発生したコン。ヒューター の。わたしの身なりがみつともないとでもいうの」 ティの段階ではそれがコントロールするための社会に逆転してしまい

8. SFマガジン 1973年12月号

あなたは〈おろか者の通り〉を歩いているのよと、ローラはかれなかった。かれの胸中には、さすがのかれもかって一度だって経験 が酒を飲んでいるときのロぐせのようにいったものだ。彼女のいうしたことがないような、まだ飲みたりないという不満がはげしくう とおりだった。彼女のいうとおりだということは、あのころにだつずまいていた。それまでに飲んだワインはその不満をいっそうつの ーテンが注いでかれの てわかっていた。だが、わかっていたからとて、どんなちがいがあらせるのに役だっただけだった。かれは、・、 0 たというのだ。彼女が心配するのをただ鼻の先で笑い、かれは前においたグラスをむさぼるように飲みほすと、うしろ髪をひかれ 〈おろか者の通り〉を歩きつづけた。しまいにはぐでんぐでんになる思いで立ち去ろうとしてからだのむきをかえた。そのとき、かれ ってけつまずき、倒れるまで。それから、しばらく〈おろか者の通はその男に気づいたのだった。 り〉から通ざかっていた。それをもう少しがまんしていたら、なん男はやせほそりーーあまりにもやせているので、実際よりも上背 があるように見えた目鼻だちのほそいやつれた顏は蒼白く、その でもなかったのだろう。が、ある夜、かれはまたそろ〈おろか者の 通り〉を歩きはじめーーーそして、その女に会った。〈おろか者の通黒い目は想像を絶する苦悩をやどしているふうだった。褐色の髪は のびほうだいだった。かれにはふしぎに威厳めいたところーー妙な り〉にワインのあることはもちろん、女のいることだって当然だ。 以来かれは、あちこちの町で何回となく〈おろか者の通り〉を歩ことに、どっしりとしてゆるぎない落ち着きを感じさせるところが いてきた。いまかれは、またべつの町でまたまた〈おろか者の通あった。灰色のトレンチコ 1 トに浮かんだ雨の水滴が小粒の宝石の り〉を歩いているところだ 0 た。どこ〈いこうが、〈おろか者の通ように虹色に光ってい、黒い帽子からしずくがボタリ、ボタリとし り〉には少しも変わったところはない。ここだって、他のところとたたり落ちている。「こんばんは」と、かれはいった。「一杯おご まるでちがいはなかった。そっけないウインドのおくで骸骨を思わらせてもらえませんか ? 」 クリスは苦しそうにしばらくのあいだ、相手の眼にうつるおのれ せる人体看板が血のように赤い文字でビールの銘柄を流しているの も同じであれば、入口をはいったところに常連がみこしをすえて白の姿に見入っていたーー・裂けた毛細血管が網の目のようにいりくん で走っている、やせた、神経質そうなおのれの顔、雨にびったりは ぶどう酒をいつくしむようにちびちびやっているのも同じだし、 よいよ酔いつぶれて足がたたなくな 0 たときに待 0 ているのが警察りついた灰色の髪、雨にぐ 0 しよりぬれたぼろぼろのオー 雨水のしみこんだ、形のくずれた靴に見入っていた・ーーそん の酔払い留置場であるのも同じである。そしてもし、空がふだんよ りもくらいとすれば、それはその朝早くから降りはじめ、そのままな、情ない姿があまりにもあざやかにうつっていたので、かれはシ ョックのあまり口がきけないでいた。だが、それもわずかの間のこ 小やみなく降りつづけていた雨のせいにすぎない。 クリスよ、・ へつの・ ( ーにはいって最後の二十五セント銀貨をカウとだった。やがて、例の飲みたりないという不満がわりこんでき た。「いいでしよう、いただきましよう」といって、かれはグラス ンターの上におくと、ワインを注文した。すぐあとにつづいてはい ってきて、かれのかたわらに立った男に、最初のうちは気づいていでカウンタ 1 の上をたたいた。

9. SFマガジン 1973年12月号

( ~ を、唐土くんだりに写しとられては日本の恥になるとい王の使いがやってきて、全員城へ連れていって自分のも の うので、全国の神々に使いをやった。急報を聞いた八百のにしてしまった。 どこかの商社じゃないけれど、この男性独占に大衆は 婪万神々は、続々と不二山頂に到着。評定の結果、むかし の蒙古来襲の例にならい、風の神、雨の神が九州沖まで怒った。 「男どもを返したまえ。さなくばこの城をうち破りて目 絵でおもむき唐土の船を吹きくだくことになった。この時、 ロ着 にもの見せもうさん。女の念カ岩をも通す」 黜 , 金風神がいうには、 - - 編黄 「自分たち一族残らず九州の沖へ出張すれば、そのあと女護が島に男性のうばいあいに端を発したクーデター で風邪をひく者がなくなり、医者が生活に困まることにの危機が迫る。さすがの女王も、これには考えこんでし 語も まった。そこで浅之進は、唐人たちを遊女ならぬ遊男に なりかねない。少しは残りましよう」 -- 蝶灯 胡に これを聞いて、諸神はことのほか腹をたて、そのへんしたて、男郎屋を開いて女性たちを満足させてはと進 にゴロゴロしているヤ・フ医者が、困まろうがどうしよう一日。さっそく採用されて男郎屋が作られた。初めのうち がかまうことはない。それより、不二山を異国にまねらは唐人たちも喜んでいたが、わずか百人の男では、とて れては日本の末代までの恥と、霰の神、雹の神を加えてもじゃないが大量に押し寄せる女たちの相手はできな 。極楽は一転して地獄となった。半年もたっと、男た 全減作戦を計画。実行に移すと三十万艘の船は、あっとい ちは、ついに過労で・ハタ・ハタと倒れはじめた。浅之進だ いう間に海底の藻屑と消えてしまった。 ところが、ここに一つ不思議なことがあった。それはけは根がタフなのか、それとも仙人の霊力がかかってい 一日のう 浅之進の乗った船で、ひっくりかえりもせず、風のまにるのか、ただ一人残っても病気にもならない。 まにいずこともなく吹き流されていった。日数がたち食ちに四十度も五十度もお動めをするありさまだ。 ( わか 糧も水もなくなり、もうだめだと思った時、島が現われるね ! ) た。喜んで上陸し正常な男なら、もともと嫌いなことじゃないから、浅 田器刄てみると、なんと之進先生も頑張ってはいたが、あまり日常のことになっ これがウワサに名てしまったので、いささかわずらわしくなってきた。あ 高い女護が島。島る日、コクリコクリと居眠りをしていると風来仙人が忽 の女たちは、思わ然と姿を現わし、「この大馬鹿者めがい」と杖でひどく ーぬ男の来訪に狂気打ちすえた。浅之進は仙人に合わす顔もなく平あやまり せんばかりの喜びにあやまる。 ようだ。やっと、 「わしはお前に諸国の人情を学ばせようと思って旅にだ 夫がきたと思ってしてやったのに、なんという様だ。もう、このへんで旅 ・お前は自分が若いと思っているだ いると、そこへ女はやめにするがいし んえ ー - ミこ 一名ん長鳴

10. SFマガジン 1973年12月号

おれたちの頭が ・も A 」・もレ J 、て、つい、つ ことに飢えてるん だな 人問てのは ものをならい出すと 亠のレ」から・あとか、り もっといろいろ 知りたくなる : なにを ) え こんでる ? ・ サプ ずっと昔 人問はどんな くらしをして いたかという こレ」 : おれはそうは 思いたくねえな サプ これだけの べんりなもんを つくり出したやつらだ けっこ、つ - な ~ 、らし だったろ、つよ それで鳥に ほろほされたのかよ ? ・ フン、ばか たぶん先祖たちは こういうべんりな道具を つくりすぎてかえって ど、つしよ、つもな′、なったん だ : 00 朝 0 わかんねえ けどよ・ これ見ろ 鳥より早く 空を飛ぶのり ものだせー 0000 7