節、第六環節の下面近くにある。この神経球の主な役目は第一一環節の ロン先生の虫眼鏡〈頁より続く〉 ものは胸部の六本の肢を制禦し、第六環節のものは腹部の肢の運動 をつかさどる。チョウやガの幼虫をはじめ、体形の極めて長いこれ ずオニャンマにはできない芸当だ。釣師の方はまあ庭に池でも掘っら幼虫では合計すると十本以上にもなる肢をたくみにさばいて運動 コントロール て釣ってきたハゼをほうりこんでおけばできないことはない。できするために、それらの肢群を制禦する神経をそれそれの場所に配 コントロール ないことはないのだが、おおむね技術的に困難としるべし。さらに置している。アオムシの小さな頭の中にそれら複雑な運動制禦中 要求が《生きたままの獲物が全く不動で、一週間も二週間も、いやをぜんぶ収めてしまうことは不可能だ。これに似た構造は古代に そのつもりにさえなれば天与の寿命を全うさせるこ・とができるよう栄えた巨大な爬虫類にも見られる。かれらは頭部の脳のにかに、 な状態で保存するにはどうしたらよいか ? 》というようにエスカレの部分にも大きな神経球を持ち、それには後肢や長大な尾を中心と 1 トしてくると、これはもう人間さまでもお手上げになってしまう。した下半身の運動神経を統禦させていた。それでも総身に知恵がま つまり完璧な眠り姫をつくるにはどうしたらよいか、というこどだ。わりかねてかれらはとうとう地球上から消えてしまった。アオムシ よとうむし それに対してわがジガ・ハチは比類のない回答を示してくれた。こや夜盗虫、その他もろもろの毛虫たちは二個の神経球に前後の運動 こであのダイコン畑でのかの女とアオムシとの組打ちのシ 1 ンを思を分割統禦させている。ジガ・ ( チが比類ない手練のわざで一撃を加 い出してください。かの女はあわれなアオムシにまたがって電光石えたのはまさしくこの二つの神経球だったのだ。ねらわれたぎせい 火、針をふるってアオムシの第二環節の下面を刺し、つづいて第六環者はするどい針による物理的衝撃と、麻酔薬・の微小な点滴によって 節の下面に深く針を突き立てた。この瞬間からアオムシは全く不動完全に不動の状態になってしまったのだ。その体にうみ・つけられた 金縛りに落入ってしまったのだ。むろん死んだのでないことは、しジガ・ハチの卵は一日か二日たっとかえり、弱々しい白い小さなうじ きりにロ器を動かすことと、しさいに見れば腹部の環節がかすかに は自分のロのあたっている所からこの巨大な、生ている食物にいど 規則正しく伸縮していることに気がつく。呼吸しているのだ。眠りみかかる。生きながら食われるアオムシ・にとってはまさに悪夢のご というのがこうした生物ではどのような状態であるのかよくわからとき現実である。このアオムシの生命力もたいしたもので、ジガ・ハ ないが、活発にロ器を動かしているところをみれば前後不覚に眠りチの幼虫に体内の三分の一ぐらいを食いつくされてもまだ生きてい ほうけているというのではなさそうだ。あわれなアオムシは全く動る。アオムシの薄いひふを通して、アオムシの体内でうごめいてい るジガバチの幼虫の前半身がよく見える。ジガ・ハチの幼虫は自分の くことができずに体を横たえているだけなのだ。その原因はジガ・ハ チの巧妙な針の一撃を受けたその場所にある。アオムシを解剖して周囲に巨大なトンネルをうがち、夜も昼も休みなしにそのトンネル みると、かれらの神経系は三つの大きな集合点を持っていることがを拡大してゆく。この時、よく見るとジガ、・ハチの幼虫はアオムシの わかる。二つは大きく二つは小さい。ト / さい一つは体の先端、第一内臓や神経組織には決して口をつけていない。もつばらひふの下の 環節の前部から頭部にかけて存在しているもので、将来、成虫にな厚い脂肪層や筋肉層を食べている。それは内臓や神経組織を傷つけ 5 ったときの頭部神経節 ( つまワ脳だ ) を構成する部分だ ~ あとの二たがさいご「このアオムシにたちまち死がおとすれ、美味で栄養に協 つのやや大きな神経の塊 ( ふつうの神経球という ) はそれそれ第二環富んだごちそうがどろどろの腐肉と化してしまうことを知っている
ます。これはいったい何を意味しているのでしょ このまえ新聞にロードショーの特集があるら、退院して来たばかりのような、顔をしている うか。私が推測しますには、この傾向はいわゆる Z って書いてあったから買おうと思った。しかし ! し、光瀬龍氏は、同じ所の写真で拝見したとこ 4 の作品が・フーム的に増加したことを物語っていさいふをかいまみてみると、何とたったの三七円ろ、まるで落語家のようで、作品と、まったくち るのではないでしようか。さらに統計の最新年にしかないではないか。しかしまごまごしてるとなぐはぐな顔をしている。小松左京氏は、もう、顔 は宇宙ものの割合が増加していますが、これは Z くなってしまうかもしれない。そこで姉ちゃんにも体つきも良く知っているから作品と定着してし まっていて、けなすことも出来ない。 プームが一段落して、その成果を消化した作品土下座して貸してもらったのでした。喜んでロ 1 ドショーみてみると最後の方にチョロッとそれら があらわれてきているためではないでしようか。 こう、悪口ばかり書いて、てれぼーとに載せて とにかく統計をとってみますとなかなかおもしろしきものがあるだけではありませんか。そして今もらえなかったり、これらの人のファンからの、 いことがわかるものだと思いました。しかし、宇涙をこらえてこれを書いているのです。しかし、抗議の手紙が、山のように舞い込んだりしたら困 今少年は雄々しく立ち上がったのです。きっと借るので、ちょっと弁解。筒井氏のは、かなりいい 宙ものって意外に少いですね。 ( 岐阜県岐阜市荒川町 1 塩谷隆雄 ) 金返して立ち直ろうとかたく心に決めているのでのがたまにあって、そういうのはすごく好きだ あります。〔幕〕 し、平井氏のウルフガイその他色々は、愛読して いるし、山野氏とはとでしか接していない 初めてお便り出します。僕ファンの中二な ( 東京都小金井市緑町 2 の 8 の 3 根本春夫 ) けど、印象に残ったいいのもあったし、光瀬氏の のです。なぜ「てれほーと」に手紙を書くかとい 作品は感激して読んでるし、小松氏のは、面白い うと、書かなければいけないような気がしたから今晩よ。、 : ー、しお天気で どうしてこう、 です。これまでだってそうでした。 しいから、次々と買って読んでるし、その他の人の いいお天気なの、と思う程、 まだのエも知らない時分、何かの本でお天気で、半分気が狂いかけてす。この間も、で、楽しく読ませてもらっているし、 マガジンの宣伝がしてあるのを見たのです。そしは、私が、この五年間に必死に集めたの半分 フェスティバル第のおしらせ たら、を買うのが使命のように思われてき を売り払い、茫然としたまま、シュークリー 来年度大会はä—>*<OOZ ( 京都 ) て、それで買ったのです。 ()n のてれぼーとのムなんか買って来て・ハクついてみたり、ニヤ 1 と決まりましたが、東京でも大会は開かれる ーアオ、ミニアオ、ワーアオと泣き ・欄をみていると、いつもは、てれぽーとかオ、ミ = ャー ら読むという人のことが書いてあって、やつばりわめていてみたり、大事にしてる、水彩画の筆をのです。そう、「フ = ス第」が : ・ 〈開催要領・予定〉 は、てればーとから読むものだと思い込ん・ハキ・ハキ折り捨てたり、我家の子猫と、かみ合い 日程五月五日・六日 ( 連休 ) でしまったのです。べリー・ ローダン・かいししし して鼻にかみつかれたり。 会場豊島区民センター ( 池袋 ) って言うから、やつばり、ローダン・シリーズを話はまったく変わるけど、作家の筒井康隆 合宿場騎河台ホテル ( お茶の水 ) 今までの分全部そろえてしまいました。すとっくさんと言うのは、ケッタイな顔した人ですね。写 費用・登録費・千円。参加費・千円。 すわっぷを見るとやつばりいてもたってもいられ真で見た限りは、ですが。書くもケッタイだ 合宿費・千円。 ずに古本屋にかけこんでしまいます。図書解し、人間不信に陥るし、かと思うと、変なものヘ 定員二百三十名。 説 : : : なんて持っていなけりやファンじゃなの憧憬を持っている。まったくわけのわからん人 主催東京ファン有志。 いなんて書いてあったらやつばり買ってしまいまだ。いや本当は顔はそんな、ケッタイではないの 申込期間十一月一日 ~ 一一一月三十一日 た。スキャナーに洋書のことが書いてあるとだけれど、筒井康隆と言うイメージが、だんだ やつばりファンたるもの洋書の一冊も持っていん、写真の記憶を、デフォルメして行ってしま 参加御希望の方、御興味をおもちの方は、 なけりやいけないんじゃないかと思って読めもしう。 一一十円切手同封の上、左記までどうぞ。案内 ないのに STAR TREK 5 とかいう本を書い込筒井氏だけけなすのは悪いから、他の作家もけ 状を無料送付致します。 んでしまいました。序文のところまできて全・せんなすと、平井和正氏は、なあんか、かなり単純な 〒東京都田無市南町二ノ八ノ五 わかんなくなって今じや本ばこの中でほこりをか顔と作品だし、山野浩一氏は、の一七七号の 崎原文彦 ぶっているのです。 一九九ページの写真では、なんだか、精神病院か
連載Ⅱサイ土、ン手ジしナル・、 ( 姦 " ツンー捜索 ) をめぐって , 加藤 となどである。かりにネッシーなるものが発見されたとしても、それは生物 九月末のタイム誌サイエンス・コラムに、つぎのような記事が載った。 『スコットランドのネス湖の暗黒の水中に棲む怪物についてのリポート 進化と環境の関係のごくごく特殊なケースを示すだけのことで、進化の道筋 は、これまでしばしばヨーロッパの科学陣を手玉にとってきたが、今度そのものの研究につけ足すものがあるかどうか疑わしいし、それだけに、そ は日本が舞台に登場してきた。ヨーロツ・ハ諸国がいままで失敗してきた うした際物的な話題の与える〈夢〉が、つくりものの空しい夢でない保証は ないからである。 ことに成功せんがため、日本の作家兼政治家石原慎太郎を長とする探険 隊が、この伝説的怪獣を追いつめ、写真にとり、あわよくば捕獲しよう ではな・せ反対しないかといえば、特に反対する根拠はどこにもないから だ。アホらしかろうが、意義が疑わしかろうが、それは積極的反対の理由には として発足したのである。日本人はこの計画に費用を惜しまず、五〇万 ドルにおよぶ探険計画の前衛隊はすでに現場に到着している。やがて、 ならない。実際的な目的をもたないすべての計画を頭から軽蔑してかかるの は偏狭というものだし、まして最近新聞などによく見かける「一億五千万も ハンターたちは、ソーナーを装備したミニ潜水艇や麻酔銃などの恐るべ き武器を用いて本格的捜索に乗りだす予定である』 の金をかけて」愚かしいなどという意見には絶対に組したくない「一億五千 ただこれだけの短い記事だが、これでもはっきりわかることは、日本探険万の金は、そこにあったものを使ったのではなく、その計画のために集めら 隊の事前のにもかかわらず、海外では依然として日本隊が、ネッシーのれたものである。何億だろうと、極言すれば余計なお世話であり、当事者以 所在をつきとめるだけでは満足せず、怪物退治をするか、それとも生け捕り外関係のないことである。関係ない金の使途についてーーとくにそれだけ集 にして日本へ持って帰ってしまうかするだろう、という考え方が一般的らしめる能力も積極性もない側がごちやごちや文句をつけるのは、愚かしい以上 、ということである。もちろんタイム誌のこの記事には、あからさまな抗に穢ない根性といわれるべきだろう。万博以来こうした傾向が目立つが、悪 議ムードはないが、それだけにいっそう、「また日本人が金にものいわせて い癖である ) 馬鹿なことを」という底意地の悪い揶揄調が読みとれることも事実だ。 このタイムの記事にかぎらず、海外のーーとくにイギリス系の新聞社、通 正直にいって、ネッシーなるものがいようがいまいが、その正体が何だろ信社系の、この問題についてのコメントを見ると、そこには、白人のひとり うが、筆者にはそれほどの関心もないがー - ーもちろん、もしネッシーが嘗っ よがりで御都合主義的な考え方が、覆いがたく現われている。いやタイムの て一億年前の地球に跋扈していた恐竜たちの生き残りであるとしたら、それ記事が揶揄的なのも、けつきよくは、白人同士ならば多くをいう必要はな はそれなりのーーシーラカンスの発見ほどではないがーーー学術的意味を持っ 、ということを前提にした態度であって、それは他のもっと露骨なーーー自 ではあろうーーーしかしこの問題は、それと切り離しても、若干考えさせられ分たちの大切にしているものを、こともあろうに黄色人種に荒らされてたま るものを持っている。 るか、といいたげな口調と、本質的には違いがないのだ。そして中には、ま ( 繰り返していうが、筆者はこの探険に、特に賛成でも反対でもない。賛成たそろ例の大殺し騒動を持ちだして、動物愛護精神のない日本人なら、ネッ シ 1 に対して何をするかわからない、というていの場ちがいな議論をふつか でない理由としては、何よりもまずこの探険が、当事者たちがしている ほどの重大な学術的意義を持っているとは考えられないこと、また、これけるものさえある。一一一口語道断のいいがかりである。イギリス流偽善の最たる が、さほどの〈夢〉を世界に提供するとは思えないこと、むしろそうした尤ものというべきで、それならばイギリス人が、大猫でなく人間に、特にアジ もらしい理由をあげながら実のところは世界的に有名な伝説の怪獣を探しに ア人に対して、今まで何をやってきたかを、改めて問題にせざるを得ないの 行くということで世間的な大当りを狙ったとお・ほしき態度が露骨に見えるこ 8
に長々とのび出ていた。その短い手と足はあひるのような水掻きが し土のだった。 ついていた。それにはそれと認められる耳が無く、その鼻孔は、広 にたにた笑ったような薄い唇のロの上方に開いた、単なる二つ その日、一日中ォメガがこのばけものを驚き眺めながら過した。 の穴でしかなかった。ロは、いつでも、にたにた笑いによって拡げら この不気味な怪物はしきりに飲用噴水のところに行き、噴出する水 れていた。その大きな丸い赤い眼は、知性の輝きをまったく欠いてを舌で巻くようにつつむのを彼は観察した。その夜、彼が夜半に眼 いた。その無毛の皮膚は、徴細な吸盤状の鱗におおわれており、そのを醍すと、グリンナーがいなかった。捜しに行くのも面倒なのでう 大きな胸部を横切って、たるんだ、醜いひだになっていた。その動っちゃっておくと昼になってもどって来た。そのでぶでぶの体はさ 作の大半は、緩慢で不確実であり、床の上を巨大なひきがえるのよらにいっそう大きさをましたように見えた。そして四つん這いにな うに跳びはねて廻り、胸の底深くから響いて来るような喉音を発しってぶらぶら歩き廻るにつれて、汗が、その吐気を催させるような ゆか た。ォメガは猿人を創造するつもりで仕事にかかったのだったが、皮膚からしたたって、床にぬらぬらと痕をひいた。とにかく奇妙な こやつは人でも、獣類でも、鳥類でも、爬虫類でもなかった。それしろもので、オメガはそいつを、どのような眼で見るべきなのかとほ らをすべてひっくるめたもののカリカチアだった。過去の、死のうにくれたが、そのあやしみの念よりも、グリンナーという相手がで 子宮から生じた筆舌につくし難い、恐るべき生物たった。 きたという有難味のほうが先に立った。グリンナーは度々、数時間 しかし、この生物がそういうぞっとするしろものだったにもかか も続けて姿をくらましたが、いつもその自由意志で舞いもどって来 わらずォメガはそれをある程度のありがたい気持をもって眺めた。 た。ォメガはしばしばそいつが岩山の間をぶらぶらほっつき歩いた それは少くとも彼の友だちであり、彼に甘えてじゃれかかったり、 岸辺で大の字になって日なたぼっこをしたりしているのを目撃 彼の手をベろペろ舐めたりすることによって自分の創造者への尊敬した。彼はそいつを勝手気ままに行動ーーそれは極端なぐうたらだ を表わしている様子だった。その赤い舌は、よだれたれ流しの口かったがーー、させておく習慣がついてしまった。しかしその間を通じ ら、いつもだらりと、あえぐ大の舌のようにたれさがっていた。そてずっと、そいつば異常な発育ぶりを示していたのだ。三カ月後に れが常に、身の毛もよだつような笑顔を浮べているところから、オは、それは優に半トンを越える住物になっていたが、それでも可愛 メガはこやつに「笑い男」と名をつけた。彼は長い孤独の時間、そげのある性質と、その主人に対する愛情はあい変らず保ち続けてい れを自分のそば近くにはべらせておこうとして、小屋につれ帰っ た。その夜、そやつは彼のわきで満足しきって、身動きもせずに眠 ォメガは減多に小屋を離れることがなかった。できる限り長生き りこんだ。しかしこの不釣合いな仲間同士の初夜の翌朝、オメガ は、そやつのすさまじい高いびきと、その毛穴からしみ出して、床するという決心を固めたのでーーー生命の根源的本能はまだ失われて いなかったーーーその最期を早めるような行動は一切しなかったのだ へ・ほた・ほたとたれ落ちている、じっとりと冷たい汗の感触で目を醒 グリンナー ゆか - 」 0 228
すがわ る。栗駒山はしばしば須川岳とも呼ばれているが、この名前はあき らかに酸い川から転化したものた。焼石岳という名前は全国いたる ところにある。焼石を飛ばして爆裂する凄絶な光景がその名前には てえらじんつあま 私はふたたび平の吉兵衛氏のダイコン畑へ出かけていった。あのこめられてある。わが準高原は遠い遠いむかし、それら奥羽連山が 日、地表に位置を示すしるしを書いて放置しておいたジガバチの巣噴き上け、押し流した多量な岩石や火山灰によって造られた . もの 穴をほろうというわけだ。その日も暑い陽射しが北上台地と呼ばれだ。その土の色は関東ロームよりもすっと灰色をおび、くすんだサ る準高原を灼いていた。台地が西へつきるところ、波のように起伏ンド・イ = ローの典形的な火山灰土た。だから日照りが何十日もっ する奥羽山脈が遠く北へのび、その果は影画のように夏雲の下に消づくと稠密な土質はたちまち水分を失ってばさばさに乾き、ほとん えていた。そのつらなる峯の中でことに雄大であり、すそを長く曳ど重さを持たないような軽い徴細な粒子となってわすかな風にもけ く二つの高まりは南が標高一六二八メートルの栗駒山。北、つまりむりのように飛ぶ。空中に舞い上った火山火土は野菜の葉や農家の 右手が一五四八メートルの焼石岳だ 0 た。奥羽山脈には火山が多わら屋根や雑木林や草原にう 0 すらと積って、どんなに晴れた日で 。栗駒山も幾つかの火口を持ち、その山すそを源流として一関市もそれらの風景を光沢のない、 りんかくの薄れたあいまいなものに いわいがわ 内を流れて北上川にそそぐ磐井川はリに酸性度が高く、 生物相がしてしまっていた。しかしそれは私の大好きな風景でもあった。 貧弱であり、ことに上流ではほとんど魚影を見ないともいわれてい 私はダイコン畑につづく元落花生畑へ入っていった。地面に描い 連載ロン先生の虫眼鏡 第四回・」の聖なる 餓鬼道は 0 0 ◇ 一スト☆石川球太 : 第 2 0 お S の儷◎
ル 1 スも、タニア自身も、どこからかそれを運んできて、自分自身 の不可解さを生み出しているのだ。むろんそれはフリーランドその ものの不可解でもある。 峠をすぎて下り坂にかかると、間もなく下方に僅かな緑地がみ え、そこに家屋の青い屋根も姿をみせた。キトの村であった。村の 中央には灰色の池があり、池の周囲は弱々しい草にとりまかれてい た。家屋は僅かで、一軒だけが雑貨屋とレストランと酒場をかねて いる店だった。小さな店の半分は様々な商品が床から天井までを埋 め、残る半分はテー・フルが一つと、カウンターがある。 タニアはジープを降りて店に入ると、静かにテー・フルの汚れた木 製椅子に腰を降ろした。丁度店の奥からジープの音を聞きつけた若 い女が現われて、タニアの乗馬服を眺めていたところであった。 「ローラさん ? 」 タニアは小声でいった。 セニョリータ」 女は用心深く彼女をうかがいながら答えた。 「 O ー 4 号のタニアと申します。よろしく」 タニアがいうと、ローラは急に眼を大きく見開いた。 「セニョーラ・タニア ! あなたが」 「ええ、 O ー 2 号のイッフェからあなたのことをうかがってきまし たの。フリーランドへ行きたいのですが」 ローラはゆっくりと頷いた。 セニョ】ラ。喜んで御案内しますわ」 「すぐに、でもいいかしら ? 」 「ええ、もちろん。ここには長居はできません」 そういって口 1 ラは一度奥へ入り、すぐにジーンズと白いネッカ ホープウ . エル族の土墳からローマの人の一人から手紙が来て、その構図 コインが出て来たことになってしまは、彼 ( ィリノイ州モートン・グロ ープに住むロ バート・・レオナー い、当時すでにローマから海を渡っ ド・ジュニア ) がかって時計製造会 て来た人がこの土地まで達していた ということになる。そうなるとこれ社のエルジン・ウォッチ・カンパニ イから記念にもらったメタルの構図 まで米大陸と新大陸の文化の交流に ついて考えられていたことは、大幅と同一だ、と伝えて来た。そこで、 両者をくらべてみると、何と全く同 に改訂されなければならない。 だが、そんな時代にローマの貨幣じで、 TAE ELOIN と読まれた文 を持った旧大陸人がここまでや 0 て字は実は THEELGIN で、日 OL ; 来ていたということが、考えられる IUS という文字も「 THEELGIN だろうか ? しかし、証拠が発見さ WATCH COMPANY OF ELG IN ILLS INCORPORATED れたのも事実だ。この発掘物をケリ 1 5 」という周辺の刻銘の中の「 E ー氏から見せられたクライド・キー ラーという人は、何とかしてこの謎 LGINIL 」の部分だけの判読間違い を解こうと、古代の貨幣に関する本とわかった。また、勝利者の花輪を を片つばしからあさると同時に、そ持 0 たローマの神の姿と思われたも の貨幣状のものを入念に手入れをのも、実は柄の長い大鎌を持った 「時の父」 ( 濃を生やし、長いあごひ し、周辺部をグルリと一巡して刻ま れているように見られる文字を出来げをたくわえている ) で、足もとに るだけ判読しようと努めた。またなは、打ちすてられた砂時計がころが るべく蘚明な写真を各国のコイン研り、地球の縮図と見られたものも、 究家に送り、その協力を得ようとし大きなエルジンの懐中時計をその右 たが、結局それについての情報は得手にぶらさげているものとわかっ た。 られずじまいで、その正体は明らか かくて、この解決困難と思われた に出来なかった。 結局判読出来たのは TOLINUS 稀代の謎も、あ 0 けなく解決してし という文字と、 TAEELOIN ( 但まったのであるが、どうしてそんな メタルが土墳の中から発見されたの し、の右上角が欠けている ) の文字、 か、そのニ人の発見者か、宝石商か ハそれにあと三つばかりの文字のかた まりで、その他もう三十二字がきざのどちらかがくわせものだったの ; まれているように思われたが、それか、どうか、それはとうとう解けず じまいに終ってしまった。 襾らは判読出来なかった。 ( 近代宇宙旅行協会提供 ) ところが、解決は思わぬ形でやっ て来た。ついに、その写真を送った 世界みすてり・とびつく -- : 言三 - : 三 - 姦 3 7
こんなものを つくった先祖が なせ島に負け たんだい ? ・ 、つろついてた 鳥をふんづか まえたぞ ちょっと 待ちな もう用がねえ 殺そう 殺し屋ってのは どんなやろうだ 有名なやつなの ペグラー ? い土 6 土 6 一、に ニ百人殺してる 公定抹殺人 これを持ってけ そのべグラーとか いう殺し屋に わたすんた それまで せったいにあける んじゃねえぞ あれは 仕掛もんた あ - けると 爆発する 行けっ
を上げて水面を打ち、視界から姿を消した。二、三分間、水面上の体が、生存のための最後の戦いを戦っている。どうやら自然は彼に 泡の跡が、怪物が湖の中央部へ向う、急速な針路を印していたが、薄気味の悪い悪智恵をあたえたように思われた。生命をあたえる水 の所有権をめぐって、いかなる人間もこの二人に挑戦しなかった・ やがてもとどおり、すべては不動で無音の状態へとたちもどった。 「お怪我はなくて ? ォメガ」彼の横に跪いてサルマは気づかわししかしこの敵はかって地球上に生きた、野蛮人文明人とを問わず、 如何なる人間にもまさって恐るべきものだった。 げに叫ぶ。 「少しばかりショックを受けただけさ」彼は辛くも起きなおって、 オしか、私たちは」と笑いな そう答えた。「たいしたハンターじゃよ、 この気のもめる、見張りに明け暮れる日々の間に、オメガとサル がら続ける。「もうちょっとのところで獲物に ( ンターが狩られるマはしばしば鏡面のところに行き、水蒸気を含んだ雲を見つけよう ところだった ! さて船にもどるとするか。この次には奴をやつつとしてのそきこんだ。そして一度ならず、あの蜘蛛の糸のような生 けてやる」 成物が世界の様々な場所に現われているのを見て、二人は心から喜 んだことがあったが、それはいつも二人の眼前から消えてしまうの しかし危うく命を落しかかったことで、彼らの神経は参ってい だった。こういった雲の萌芽が鏡に映じることは、日数がたつに た。終日、安全な船内にひきこもったまま、銃を湖面に向けて据え つれて次第に頻度が減じて来た。ォメガとサルマは、水蒸気が地球 つばなしにし、怪獣が姿を現わすのを待ち望んでいた。あの時いっ にもどって来ることを希望するのは無理な相談であることを悟っ どうやって怪獣が湖を出たのか彼らは推測することができなかっ た。彼らの、極めて精妙にセットされているため、知性を持ってい た。しかし怪獣は彼らが考えていたよりずっと恐しい動物であると いうことは今や確かなように思われた。そしてオメガは科学の助けるかにすら思える計器と、過去の記録と、彼ら自身の常識とが、そ を借りるべきだという結論をくだした。そうすることにより怪獣のう判断したのだ。実際、上空の自然界、生命界は二人の希望と同じ 息の根を止めることができることは確実だと彼は思った。 程度に死にかけていた。彼らが見た、上空に現われた現象は、単に それで翌日、彼は高圧電流を通したケープルを潮の周囲全体には 断末魔の苦闘を表わす兆候だったと彼らは悟った。ところが、湿気 りめぐらし、それを水中と陸上の両方に設置した様々な形状の罠をはらんで、黒ずんだ本物の雲が突然、鏡面に出現したのである。 に接続した。日が暮れた後、戸外で怪獣をしとめようとするような地図を調べて、彼らはそれが、かってのアメリカ合衆国の一部だっ 命知らすなことは、もうするまいと彼らは誓った。 た、平野と山脈の広大な地域の上空をただよっていることを知っ こ 0 それからの暑い、沈黙の日々は、この生命の最後の子らにとっ て、まことに気のもめる日々ではあった。罠はただの一つもはねな 「この天からの贈り物を調べに行こうじゃないか」とオメガ。「か かった。怪物は、高圧電流の通じたケー・フルを、そのぬらぬらしたっては美しかったあの国の上空をただよっている。歴史の声の語る 胴体と尾とを引ずって横ぎったりはしなかった。この種の最後の個ところによると、それは幾百万年の昔、自由の民たちが住んでいた たみ 幻 2
亡命者も多かったので、イッフェの素性は暴露されることもなかっ 「お前はこれから毎日できるんだ。最後に俺に接吻させろ」 たのだろう。ィッフェはそのまま連邦政府の行政庁に入ったのであ ソホラープは笑いながらいう。会場の緊張が解かれ笑い声と拍手 6 る。 が起きた。サーデイも笑いながらソホラープに手を差し出した。二 またっタキア自身不思議に思ったことは、アルビラ連邦側がフリ 人は握手して肩をたたき合い ソホラープはタ一一アのほほに接吻し 1 ランドのスパイに対して、さほど神経を使っていない点である。 た。フラッシュライトが三人を包み、ウェディングマーチが鳴り響 それはのんびりしたこの国のお国柄とも思えるし、この国で事実上 いた。タニアはそれでも笑うことはなく、時折カメラが彼女に向け 戦争相手であるはずのフリーランドに関する話題が殆んど出ない点られると僅かに唇をゆるめた。そして窓際ではシャンパンを持った とも何らかの関連を持っているように思えた。 ままィッフェがそんなタニアをじっと見つめていた。 果してフリーランドは本当に戦っているのだろうか ? タニアにはそんな疑問まで生まれるのだった。 タニアの結婚生活はバルセロナやミラノでの生活と似ていた。殆 んど物質的な苦労はなく、様々な贅沢が認められ、他人行儀な付き タニアとサーディの結婚式は華やかに大統領の来席のもとで開か合いと孤独だけが永遠に続いていた。タニアは ( ープシコードの演 れた。白いウ = ディングドレスはおそらくタ = アに最も似合う服装奏と乗馬で虚ろな時間をどうにか充たし、可能な限りの社交性を発 だっただろう。パ ーティ会場にタニアが入場すると人々は思わず息揮し、週に一度はイッフや他の連絡員に暗号を送った。 を飲んだ。そして盛大な拍手が起った。サーディはタニアと腕を組サ 1 ディのチカノの家は首都エリアの端にあって後方は丘に接し ている。タニアは馬で丘を昇り、記念碑の近くから積雲の下のフリ んで得意気に頷いた。だがタニアの表情には何の変化もみられなか ーランド方向を眺めた。時には馬を走らせてハイランドに向かうこ った。白い手袋をさし上げて最少限の返礼をしただけで、遠いフリ ともあったが、いつも二キロも行くと馬を返した。チカノの街はい ーランドを見つめるようにシャンデリアのキラメキを眺めていた。 褐色の髪を白いヴ = ールに包んで僅かにゆらめかせ、長いすそを床つも白く輝き、全ての影を拒絶するかのように太陽光線を反射し続 すれすれに滑らせて、彼女はウェディングケーキに近付いていつけていた。この鏡のような街が何かを隠している。白いウェディン グドレスの中の私のように、ロを閉ざして作り笑いをして装ってい サーディがタニアに接吻をしようとすると最前列の席にいたソホる。だが、何を ? チカ / の街は何を隠しているのだろう ? ラ 1 プが急に立ち上がり、「まった ! 」と叫んだ。一瞬会場がどよ めき、サーディは当惑して身構えた。二人に歩み寄ったソホラープ タニアの中のフリーランドのように、 このチカノの中にフリーラ はタニアの手をとった。タニアは無関心に為されるままになって いンドの革命の炎が燃えているのだろうか ? ィッフェの空虚な瞳 や、ホードの敵意の眼孔のようにー こ 0
隔を置く余かなかったやアルフアの配偶者はただちにつくられなて、下の岩にたたきつけた。それからしわがれた声で一吼えする と、オメガに向って来た。そしてその最初の一動作の突進で、怪獣 ければならなかった。 「アルラアは家に入る、即に、しばらく遊びたがってますわ」と、やと、その攻撃目標との間にいたサルマは踏みつぶされてしまいそう に見えた、しか . し、ずたずた . に . された我が子の姿と、夫の危険とを ゃあってサルマ。「私、そばにいてやります」 見てとると、彼女の魂にひそんでいたすべての激怒と勇気とが呼び 「よかろう」 , とオメガ。「私は帰って、晩飯の支度をするよ」 そう言いながら彼は顔を小屋の方にむけた。しかし彼がものの十起され、彼女を闘志満々の悪魔変えたのだった。ォメガにならっ て、彼女は最も手近の武器ーーー大人の握り拳ほどの大きさの石 歩も歩んだの歩まないうちに、彼はサルマの絹を裂くような悲鳴に、 を手にとって、怪獣の熱い息を顔に浴びながら、赤い、ばっくりと ぎよっとなった。彼はさ、つと振り返り、たちまち恐怖と驚愕とで、 麻痺したよらに立ちすくんだ。湖をかこ、んでいる雲幕の中から、彼開いたロの中めがけて全力をこめて投げつけた。 が死んだとばかり思いこんでいた怪獣の、醜い、鱗におおわれた頭血も凍るような絶叫を上げながら怪獣は立ち止り、よろよろと後 じさった。それから頭部を岩を越えて前後に大きく動かした。その 部と頸部とが、に . よっきりと突き出ているではないか ! そして、 すーいすーいと揺れるあのすさまじい頭部が、遊んでいる少年を目嫌悪すべき胴体は湖の中でばたばたと水をたたき、飛沫をはるかな がけてさっと降りて来たのだ ! はけもののあぎとはかっと拡げら岸辺へと打ちつけた 9 それから全身をひきゅがめて、湖の外からこ れており、その、黒い舌は電光のように出たりひ、つこんだりを繰り返ろげ出、そのものすごい頭部を苦悶に振り廻しつつ、その間じゅう し、胸をむかっか . せるような唾液がポトリポトリと砂上落ち、そずっと挑戦的なしゅうしゅうという声を発していた。 恐怖に打たれ、身動きもできず、オメガとサルマはそのさまを見 の恐しい両眼は、石炭のように燃えていた。そしてほんの一瞬の間 とうしてそのようにのたうち廻るの》か理解できなかっ 巨大な顎が子供をとらえ、頭部は後退し、子供 . の、悲鳴を押し殺まもったが、・ して顎は閉、そいつは雲の中へと逆もどりし始め、たの . である。 た。しかし、それ , がさらにのたうちうめぎ続けるに . つれて彼らは . や っとわか . った . の、だ。ー、ーー石は怪獣の喉にしつかりとはまりこんで窒 それでも、恐怖の最初り衝撃が過ぎ去ると、オメ一ガの麻痺した感 - 息さ、せ、ようとしていたの、たつを 覚に「再び力がもどって来た。彼は狂人のような叫びをあげて、だ、、それから二人はアルフアのそば、に跳び寄った。ォメガは子供を腕 っとばかり走り寄った。走るというより空を裂くように奐進しなに抱き寄せた、が、胸もはり裂ける一贅によって、子供は死ん , でいる がら石をつかむと鬼畜生の頭部めがけてほうりつけた。狙いは誤まことを悟った 9 その頭蓋骨は砕かれ「その体の骨は一つ残らず哲れ・ たず、石住巨大な鬼畜生の右眼の上の骨質のひだにぶち当っをそているように思われた。 3 2 れば傷こそ負わせなかったが、奴を逆上させた「シューツといら物ォメガの心は号泣 . し、ていた。しかし彼は泣き声を上げなかった。 すごい音を発しながら「アルフアを空中高く持ちあげ「ナ振りし自分の息子の、打ち砕かれた体を抱いた、まま、彼は岩を上げて、あ