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検索対象: SFマガジン 1973年3月号
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1. SFマガジン 1973年3月号

手術を考慮した。前額部の脳葉の切除、もしくは前頭葉白質切截をられた皮紐が、・彼をぐいと引きもどした。「そんなことはさせん 行なおうというのである。ペイリーは、この手術を受けて、その結ぞ ! おれにだって権利はあるんだ ! 」彼は怒鳴った。 果、脚のある植物になってしまった人間をすくなからず見ていたか「さあ、さあ、落ち着いて。聞きわけをよくしなさい。精神衛生法 ら、悲鳴をあけて抵抗しようとした。フォ 1 ゲルザンク博士がこのは、州間通商条項のもとで合憲である、と最高裁判所が声明したこ 提案をしりぞけて、かわりにべつの、いくらか実験的な刺激療法をとは知っておるだろう。まあ心配せんでもいい。手術はちっとも痛 命じたときには、彼は感謝のあまりすすり泣いたほどだった。けれ くないからな。わしが自分で執刀するよ。それにむろん、前もって どもこの新式の療法のために、彼は皮紐でべッドにくくりつけら多少の精子を冷凍しておく。治ったあとで、子供がほしくなるだろ れ、神経に低周波の電流を流された。これは極度の苦痛を伴った。 うからな。正常な男性ならみんなそうなんだ」 フォーゲルザンク博士は、冷酷に一部始終を見まもっていた。 だがそれもやはり効果はなかった。 一週間かそこら経ったころ、彼はちつ、ちっと舌を鳴らして、首「このままこれらの線を追求するのはよくないと思う」と、やさし を振りふり言った。「どうもうまくないな、え ? このままこれを いフォーゲルザンク博士は言った。「それそれに悲しむべき側面を つづけるわけにはいかんようだ。しかし、なんとかしてその不良な持っておることは確かだからな。それにあんたの場合は、な・せかそ 思考・ ( タ 1 ンを解消させにゃならん、そうだろう ? あんたの不調れらはあんたの持っ根本的な敵意を助長するだけらしい。こうなづ の原因は、腺の化学作用にあるのではないらしい。けっしてそんなたらいっそ、あんたを改造してしまったほうがよさそうだ」 単純なものじゃないんだ。このうえは、・ ( ヴロフの方法を一「三試「改造する ? 」ペイリーの心は、近ごろその周囲をつつんでいるも みて、最善を願う以外にあるまいな」 やのなかを、必死で模索した。「すると殺すってのか ? おれを殺 夢の剥奪。眠りの剥奪。冷たさ。熱さ、飢え。渇き。・〈ルを鳴らすつもりなのか ? 」 す作業。正しい思考をしたときにもらえるご褒美。正しくないとき「とんでもないー ちがう、ちがう、ちがう ! が歪曲されすぎ の罰。だが、結果は依然として失望すべきものだった。すくなくとておるんだよ、大衆を啓蒙しようとするわれわれの懸命の努力にも も、それらの掘りさげた分析に関するかぎりは、そうだった。もは かかわらずな。いかにも、改造がかっての死刑にとってかわったこ ゃなにを信じたらいいのか、ペイリーにはわからなかった。「おやとは事実だ。しかしそれは、あんたが犯罪者ということを意味する おや、困ったな」フォーゲルザンク博士は言った。「こうなると、 ものじゃない。むしろ、犯罪者もまたあんたのような病人だという もう一段階進んだ処置をとらねばならんようだ。。 ( ヴロフ方式は、 ことを意味するものなんだ。われわれは、合法的な殺人という野蛮 去勢手術をしてはじめて決定的な効果が得られることがしばしばあな浪費に逆戻りすることなど、夢にも考えておらんよ」フォ 1 ゲル るものだからな」 ザンク博士は、喋っているうちにしだいに憤激してきたようだっ 、 ( ペイーはとびあがってつかみかかろうとした。がい首輪につけた「とくにあんたの場合はそちだ。あんたはすばらしい可能性を 6

2. SFマガジン 1973年3月号

し、法律ではいうまでもなく非常に多くの品物が許可されている。待ってるぜ」 それはすなわち、熟練した目には、それらを所持していること自体べィリーは、二人のあいだにはさまれて引きたてられてい 0 た。 がすべてを語 0 ているからにほかならない。それらがなにとなに彼らはドアに鍵をかけ、貼り紙をした。すでにがひろま 0 ている の廊下にも階段にも、住人の影ひとつ見えなかっ か、べィリーには見当もっかなかったーー級カード所持者以外にのか、アパート は、ごく基本的なものを除き、精神医学関係の情報はい 0 さい知らた。足音だけがうつろに反響した。 戸外の陽光は無情なほど明かるく、晴れわたった夏空に、数羽の されない仕組みになっている・ーーそれに刑事たちは、ごく低い声で かもめが軽快なつばさをひろげて旋回していた。そのような光景を 話しあっていて、内容を漏れ聞くことはむずかしかった。 しまや真っ黒な滔見ると、通りに並んだかたくるしい実用一点張りの建物の前面や、 だがそれはどうでもよい。彼の無感覚状態は、、 陰気な表情でゆきかう通行人の、かたくるしい実用一点張りの衣服 滔たる潮流にまでなっていた。 「オーケイ、じゃあやつを連行して、かわりに分遣隊をここ〈よこさえ、こころなし輝いているように思われるのだ「た。電気自動車 が音もなく走りすぎた。あれらはいまだにある程度のはなやかさを させ、徹底的に調べさせるとしようか」ジョー・、言った。 「すると、おれたちの調べたのじや不十分だというのか ? 」サムは保持している、とペイリーは考えた。警察車は特微のない一九八九 この仕事には新米であるのにちがいなか 0 た。おそらくは、よその年型のシヴォレーで、したが 0 て透明な流線型の屋根がついてい 課から転属させられたばかりなのだろう。 「なぜ 一瞬、むらむらと反抗心が起こって、べィリーは叫んだ・ いったいなんのために、見つけたもの 「あたりまえじゃないかー はす・ヘてもとどおりの状態にもどしてくるよう命令されたんだと思だ ? 」 ジョーはちらりとけわしい目を向けた。「なにがなぜなのかね ほんとうの専門家になるとな、たとえば、そう、下着の畳み かたかなにかからだけでわかるんたそうだ、そいつが親父を殺した 「なぜ民間車なんだ。民間車は、外から内部が完全に見とおせるこ あるいはおふくろをやっちまいたいと心の奥底で願っていない とが必要とされている。ここに、滑稽な苦境にたいするわれわれの かどうかがな」 反プライヴァシー信仰があらわれてはいないかね ? 」 「あるいはその両方をな」サムがにやりとした。 リディキュラス サムが手帳をとりだして書きはじめた。「″滑稽なとは、どう 「そう、この場合は、それもありうるかもしれん。やつにたいする 緊急逮捕状を渡されたことは覚えてるだろう。急いでやつを連行し綴るのかね ? 」 はふたたび黙りこ たほうがいいというのには、そういう理由もあるんだ」ジョーは肱「いいよ、ほっとけ」ジョー : 言った。べィリー んだ。ジョーは車の鍵をあけ、運転席に坐った。他の二人は後部座 かけ椅子に歩みよるとーー体重で床がかすかに震動したーーベイリ ーの腕をつかんだ。「立ちな、キャ・〈ッ頭。お偉い先生がおまえを席に乗りこんだ。べィリーは同伴者のどちらの顔も見たくなか 0 た こ 0

3. SFマガジン 1973年3月号

いけない。質的に低下する。アレキシス・カレル。こりゃあ、いっ 「でも、あたし、この感じわかる気するわ ! 」 たい何者だい ? ギリシャの哲学者か何かか ? 」 「おツ、それでは脱いで下さるのかな ? 」 「さあね。とにかくそいつが、・ヘゾアール・ゴート導入の主たる理「馬鹿。だから中年はキライよ。みなさんのような、酒飲み頭でつ 由さ。導入したやつをカケ合わせたり、繁殖させたりして、改良しかちのたるんだお姿、連日拝見していると、野性の山羊の美しさが ミよくわかるってことツ」 て来たやつを今度は野性種にもどしてゆこう。そうして、良質の ルクを手に入れよう。そういう考えなんだ」 「ふえツ、何とも遠大な計画だな」 「全くだ」 走る男は笑いはじめた。 「おツ、こいつあ、すごいぜ。何とも驚いた描写じゃない、。 残暑の頃、もう上半身はすっかり裸だ。何時か筋骨隆々として来 霊峰富士を背に、すっくと立った・ヘゾアール・ゴートの高貴な姿、た褐色の腕を大きく振り、白髪まじりの鬚を風になびかせ、ときお キラキラ陽に映えるつややかな毛並み、やさしさをたたえた深遠なり大声で笑う , 0 、ツ、ツ、ツ、ア、こんに↓つ、わツ、、ツハッ、ツ、 て世界不戦ツ、、ツ、ツ、ツ、ア、恒久平和ツ。 目、精悍そのものの四本の脚、優美さと鋭どさをたたえた弓なり の角、それらを目にしたときのわたしたち太陽牧場の関係者の喜こ びはどんなたったか、もう、それは筆舌につくしがたいと云ったと「あの笑い声にはまいっちまうぜ。こっちが二日酔で頭かかえてた ころでした。牧童たちはいうに及ばず、各地から続々集って来た普りするときはさ」 及員たちは、一様に目を輝やかし、やがて、べゾアール・ゴー トた「そんなに飲まなきや、 しいんじゃないのツ」 ちが走りはじめると、思わず幼児のように歓声をあげ、ともに走り「馬鹿モンツ、仕事をする男に酒はっきもんた。酒は百薬の長、ス はじめました。何時しかわたしたちは、次々と衣服を脱ぎすててい トレス解消には必要欠くべからざるものだ。なんだい。あんただっ ます。ペゾアール・ゴートの裸体はこんなに美しい。わたしたちて、それで食ってるんじゃないかツ」 も、なんとか、こんな美しい裸体を、いつの日か、ああ、いつの日「ははツ、かなり、まいってるな。しかし、走る男も、そんなに自 か取りもどしたい。そうして、争いも戦さもない世界恒久平和を確信満々なら、かなり、運動は普及してるんじゃないのかい ? 」 立したい。そう、言葉にならない声でともに叫びながら、走り続け「どうやら、そんな感じなんだな。ひたひた押し寄せて来る波の音 たのです ! 」 を聞くような気がするよ」 「ついに裸体運動かね」 「農村が都市を包囲する、か ? 」 「こうなると、もう宗教的恍惚だね」 「またまた大げさな」 いきなり、女の子が口をはさんだ。 「いや、大げさでなく、そんな感じさえしてくるぜ。だってやっ

4. SFマガジン 1973年3月号

最終的な通告がきたんだ。それでいまおれは、こうして酔っぱらう い。いくらだって賭けてやるそ、あいつがわざとあんな本を書き、 のに忙しいってわけさ」 演説をしてまわったってことに」 「なぜ資金がない ? 」べィリーは問いかえした。「そういった計画 「いったいだれのことを言ってるんだ」ペイリーはたずねた。 のためなら、 Zcg«が窒息するほど金をつぎこんでくれると思って「知ってるだろうが。あの大学教授だよ。フランス野郎だ。こむず たがねー かしい名前で、発音もできやしない。キじるしを保護しなけりゃな 「なんだって ? いったいおまえさん、どこに行ってたんだ。 Z らんって考えを持ったやっさ」 がそういう金をばらまいてた時代はとうに過ぎたんだよ。「ちょっと待てよ」べィリ 1 は椅子の上で身をこわばらせた。膚が だっておんなじさ。われわれはどっちにも申請を出してみた。い ぶつぶっと粟立つのがわかった。「まさかミシェル・シャンソン・ や、目につくかぎりのあらゆる団体にさ。だめ。精神衛生法があまドワゾーのことじゃないだろうな ? 」 りに高くつぎすぎてるんだ。それ以外は、政府といえども、残った「それだよ。その男だ。シャンソン・ドワーゾー。あいつ、ほんと わずかな計画を維持するのにせいいつばい。たとえば国防省・ーー・・国うは中国の秘密機関員かなにかじゃないのか ? あんなおかしな名 防省ならこれに興味を持つはずだと思うだろう、え ? ーー そのとお前しやがって。あいつは知ってたんだ、このばかでかい、涙もろ いかにも彼らは興味を持ってる。だが、彼らの財政状態がどん 、、心のやさしい、脳足りんの国が、やつの考えにいかれちまうだ なだかは知るひとそ知るさ。空軍は有料の旅客を運んでるし、軍艦ろうってことをーーー・すっかりやつに夢中になって、汚穢の海に落っ 《。フェルトリコ》は、浮かぶカジノとして世の荒波を乗りきってるこちるだろうってことを。あいつなんだ、われわれをだめにした張 ・ : それもこれも、一セントでも多く防衛費を稼ぎだそうとする涙本人は。おれの計画をためにし、おれの祖国をだめにした張本人 ぐましい努力だよ。去年、ガイアナ紛争から手を引いたのもそのた は。おかげでいまやわれわれは、山ほどの役立たすの気のふれたの めさ。そりや、大統領は面子を救おうとして懸命だった、軍事力にらくら者を養う以外、なんにもできないときている」ワイマンはグ ラスをあげた。「乾杯だ、シャンソン・ドワーゾーの破減のために よらない名誉ある解決とかなんとか、たわごとを並べたててね : だけど、実際はどうかってんだ、軍事強圧が加えられたことは世界 ! 」 中が知ってるーーーーわれわれにたいしてーーーこともあろうに・ヘネズエ 「よせ」ペイリーは立ちあがった。椅子ががたんと音をたててひっ ラからだよ、まったく ! 」 くりかえった。 一滴の涙がワイマンのグラスに落ちた。「あんちくしようめ」彼「どうした ? 」ワイマンは目をばちくりさせて彼をながめた。 はつぶやいた。「あんな野郎、地獄の穴の底に落ちゃがれ。この世怒っちゃいけない、べィリーは自分に言い聞かせた。おれはまだ の終りまで呪われやがれ。あいつだ、おれたちをこんな目にあわせ治りきっていないんだ。、だからじゅうぶん注意して、興奮しないよ たのは。きっとフランス政府があいつの尻押しをしてるにちがいな うに。もうちょっと神経が安定するまで、いつも感情を平静に保た 207

5. SFマガジン 1973年3月号

そうして彼がその遺伝形質によってなしたところのもの、またそ 持っておる。ただ、不幸にして、あんたの人格に不可欠の要素とな れにたいしてなされたところのものは、最後の一片にいたるまでき っておる不良な態度によって、その可能性がおさえられておるとい 「また最初れいに彼から洗い落とされ、そして彼は死んだ。 うだけだ。したがってー・ー」彼はしかめつらをした 死はあらしに似ていた。それは彼を吹き飛ばし、もみくちゃに からやり直しだ。なあ ? 最新式の方法、だが完全に安全な、完全 に確実な方法だ。この電気化学療法によ 0 て、記憶の物理的基礎でし、怒声と、汽笛と、おそろしい奔馬のひずめの響きのなかで、彼 あるリポ核酸の構造を逆転させることができる。すべての記憶、すを投げあげ、投げおろし、また投げあげるかに思われた。その風が べての習慣、すべての悪い、古い、持続的な記憶の痕跡が消え失せ自分を冷気で焼き焦がしているのか、熱で焼き焦がしているのか、 る。あんたはまったく白紙に返って、新鮮な、生きいきした状態で彼には判然としなかったし、また考えてもみなかった。稲妻が彼の 再出発できる。この白紙状態の上に、専門家が別種の健全な、外向目をくらませ、雷鳴が歯をがちがち鳴らしていたからだ 0 た。 目 ? 一瞬の驚愕がひらめいた。歯 ? しかしおれは死んだん 性の、親しみぶかい、周囲に適応した、優秀な個性を植えつけるん だ。やつらはおれの身体を使って、だれかべつの人間をつくろうと だ ! すてきだと思わんかね ? 」 「ああ」ペイリーは言った。この連中が自分をひとりにしてくれするだろう。いや、待てよ、それは正しくない。やつらはおれの身 体を火葬にするはずだ。おれは自分のみじめさに堪えられなくなっ て、眠らせてくれたらどんなにいいだろう、と彼は思った。 だがやがて、ヘルメットをかぶせられ、ペッドに固定されて、静たとき、自発的に安楽死を選んだのだ。いや、それもちがう、おれ 脈への薬の点滴が始まると、そして、ぶーんという音がしだいしだは安楽死したんじゃない。やつらの手で、もはやみじめかどうかな いに高まってゆくと、彼は、指のあいだからこ・ほれるように失われんてことを気にする余裕もないほど、みじめな状態に落とされたう え、記憶を抹殺されてしまったのだ。 てゆくものを感じた 、「ゼロ」《神》が教えだした。「一、十、十一、百、百一、百十」 湾の東側の丘の上の、深紅色の日没。はじめてキスした女の ・ヘイリーは暗黒の奔流のなかで、現実を、なんらかの現実をつか 子、そして最後にキスした女の子。学生時代のある夏、イギリスを 徒歩旅行したときに見つけた風変わりな古い居酒屋。シ = ラ・ネヴもうとあせった。めまいが無限の螺旋を通じて彼を吸いこんだ。だ が唯一の現実は彼自身だった。それを彼は自分のほうへ引き寄せ アダ山中の白い雪に描かれたシュ。フール。シェイクスビア、ペート た。貪欲に自分を食いつくそうとするたこに抵抗して、彼は考え ーヴェン、ヴァン・ゴッホ。仕事、友達、父、 - 母 : : : 母 残ったのは動物的本能だけだった。そして彼は、恐怖と苦悶た。おれはダグラス・べィリ 1 。おれは : : : おれは : : : 社会学者 だ。狂人だ。ほかになにがある ? そう、おれは二度死んだ。二度 にわれ知らず声をあげて絶叫した。「もしこれが死でなかったら、 の異なるみじめな生のあと、二度おれは死んだ。 なにが死た ? 」 まだあるだろうか ? 思いだせん。風があまりに強く吹きまくり

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◆こっこ 0 とはいえ、ときには幻減も味わねばならなかった。その一例が、 髪を腰のあたりまでのばし、長い寛衣をまとった若い男が近づいて きて、・ヘイリーがある大学の元経済学教授とかわしていた会話を妨 害したときだ のことを聞いたか ? 」 「お、、フィル、あんた、トミー 「いや、なんだい ? 」教授は答えた。彼は物静かな、穏やかな喋り かたをする初老の男で、自分自身の無精な身なりを楽しんでいると いうより、むしろ諦めてそれに従っている感じだった。 「・ ( クられたんだ」若い男は言った。「お巡りがきて、ワイフとい っしょにしよっぴいていったんだとさ [ 「おやおや」教授は首を振った。「しかしわたしとしてはあまり同 情は湧かないな。わたしがあれに不賛成だったことは知っているだ ろう」 「ちえつ、そういうテシーがかった正義感は早く忘れることだな」 若い男は言った。「われわれはポリ公にそんな勝手な真似をさせと くわけにはいかん。なんとか手を打つべきなんだ」 「なんでつかまったりしたんです ? 」べィリーはたずねた。いまで は、手のなかにワインのグラスがあり、もう一杯が胃の腑におさま っているところから、彼はよほど大胆になっていた。 「新入りか ? 」若い男は言った。「らしいな。つまりこういうわけ ーは去年認定を受けた。頑固な性的不能と申し立ててね」 「じゃあなかったというんですか ? 」 「なかったもなにも。トミーは西海岸随一という逸物の持ち主さ。 まるで塔みたいな、ね。ところがあいにくがお巡りの耳にはいっ たんだろうな。まあ考えてもみろよ ! 個人の生活がそうやってこ ソ連の新らしい能力者 ソ連には現在優れた能力者が 彼女は、そういう実験の時は、二 の腕の上の分までしかないような短 二人いる・一人は、「指の先で物を 見ることができる女性」として世界袖のプラウスを着ているから、何か の注目を集めたニーナ・クラジナさ トリックをする道具などをしもっ ているはずはない んで、彼女はその後、物に触らずに それを動かす能力 ( テレキネシス ) 彼女の能力はこのように非常に驚 を発捧してすでに十年、世界中の科くべきものであるが、その後現われ たアラ・ビノグラドバさんの能力も 学者が続々としてモスクワへ乗りこ んで、その震技に目を見はっている決してそれに優るとも劣らないもの という。 である・「 最近、英国の優れた科学的心霊研 彼女のこの不思議な霊技を撮った フィルムはかって日本でもテレビで究者ペンソン・ハ ト氏がソ連 紹介されたことがあるが、明るい光を訪れた時、彼女の能力を実験して きたが、その能力は、前記のク の下で ( この二人の能力者と ラジナさん同様素晴しいものである も、従来の物品移動霊媒が必要とし という。 たような、暗闇の実験室を必要とし ない。普通の照明の実験室、或いは 彼女がよくやる実験は、アルミで 白昼の庭園などで堂々とその実験を こしらえた煙草大の筒をテープルで 転がすことである・まず、そういう 披露する・ ) 机の上へおかれたマッ チ棒やマッチ箱などを、その上で手筒を一つテープルの上におき、その を動かすことによって、そのまます上の少し横のあたりに手をかざし、 べり動かしたり、ころがしたり、クその手を少し揺り動かしていると、 その筒が次第に動くけはいを見せは ルクル回転させたりする・といっ て、無論、手と物品との間には糸なじめ、やがてコロコロと転がり始め ど用いられてはいない・これらの物る。 ここで面白いことは、その手から 品を透明なプラスチックのカバーの 発依される力が、手の方へ惹きつけ 中へ封じこんで実験しても、ちゃん る力ではなくて、それから遠ざけよ と動く・ うとする反撥力だということであ また、その手を方向探知昂のコン る・ バス ( 石 ) の上へもってきても、 筒は手から反対の方向へ向かって その針は次第に動き出す・ 幻 6

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の ) 一一六日「墓場から呪いの手」 ( 満田務。日 して地球が哀れな状態になったかという原因を義行サンに一冊十万円で売りつけてやろう ! 本では珍らしい動く手テーマ ) 四月二日最終回博物館のディスプレイや実演 ( 一一 0 世紀の生活発行は小学館。では海外情報を井口君に・ ( トン 「蜘蛛の女」 ( 井田探 ) 製作・熊谷健、新藤善を再現するコーナーがあり、このシーンをしば タッチ。 ( 大伴 ) 之。音楽・富田勲。特殊効果・佐川和夫。監修しばドラマに挿入して効果をあげている ) を使 ・円谷英二。ィーストマンカラー使用の天然色って説明しているのもよく、出産したため死刑 往年の「タイム・マシン』 (ä“年 ) シャシンなんよ。 の判決をうけた若い二人 ( 博物館員 ) が都市をや『月世界征服』 ( パラマウントⅱ団年 ) 『宇 脱出し、立入禁止の海を渡って核実験で汚染さ宙戦争』 ( 同“年 ) など、五十年代の映 既報、二月公開予定の『 Z. P. G 』 ( 赤ちゃれつくした孤島に上陸するラストシーンも画の名作を数多く製作した監督・製作者のジョ んよ永遠に ) は意外にナウな、本格的映画 fPlanet of the Apes 』 ( 猿の惑星 ) のムード ・・ハルが久しぶりに活動を始めたようだ。 でトリフォ大先生の『 Fahrenheit 451 』 ( 華氏があってい というのも、一頃はやった一 : ーシネマへの反 451 ) よりもよくできてるんじゃないかとい ということは、もしこの作品が当れば続いて発からか、最近古い映画作家の再評価運動が盛 う声もあるほど。地球はすでにスモッグに包ま 「赤ちゃんよ永遠にの息子」「赤ちゃんよ永遠んで、昨秋十一月に開かれたロチ = スター映画 れてしまったという設定でポロの出そうなセッ にの逆襲」「赤ちゃんよ永遠にからの脱出」 祭に・ハルがゲストとして招かれたことから明ら トはすべて黒い霧でかくしてしまったところが 「赤ちゃんよ永遠に・望郷篇」「赤ちゃんよ永かになったのだが、その折・ ( ルは彼が進めてい 頭いい。さらに出産禁止令の代償として売り出遠に・夢枕篇」などなど次々と続篇が作れると るニュープランの一端を披露したという次第 された赤ちゃん人形も「 C ハ いうわけでさすが新興のサジタリアスプロ、第 リ J 、つ レラ ) の食肉人形のように不気味でいし 二のセプンアーツといわれるだけあって頭のい その一部をここに紹介すると 「赤ちゃんよ永遠に」のラストシーン。 いのが揃っているのであります。 CLast RevoIutiorü ( ロード・ダンセイニの 続篇はここより生れる。 (f) 小説で、ロッド・サーリングがシナリオを ちょうど三年前の一月二五日亡くなった特撮執筆中 ) 映画の父円谷英二監督の伝記的な写真集が発売 tThe ( フィリップ・ワイリ されました。円谷一編著による『円谷英二・日 ー原作、フランクリン・コーエン脚色、。ハルが 本映画界に残した遺産』でいままでまったく外ワイリーの原作を映画化するのは礙年の『地球 部に公開されなかった特撮のスナップ写真が大最後の日』以来 2 度目 ) 量にのっていて、特に『ゴジラ』第一作がどう tWhen the Sleeper Wakes 』 (X ・・ウ やって生れたのかくわしく紹介されている。 エルズ原作、・コーエン脚色、同じくウエル 『妖星ゴラス』『世界大戦争』『地球防衛軍』 ズの映画化は年の『宇宙戦争』年の『タイ など未公開の特撮セットの写真が初めて陽の目 ム・マシン』以来 3 度目 ) をみたわけで、海外のファンに送れば狂喜感激 といったところ、この他にもケネス・ロプス してアメージングの全揃いと交換してくれるか ンの一八 0 巻に及ぶ超大シリーズ TDoc Sava ・ 5 もね。限定本で増刷しないというから買いだめ 』も全作品の映画化権を買い取って、劇場用協 して値が上 0 たころオークシ , 一の元締め加藤にシリーズ製作を企画するなど、ち = 0 と異常一

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域が広くなると少し規制しないといけませんね、 ろ」全巻、「百物語」「魔 〔お譲りします〕 次 今にがどういうものだかわからなくなり、 ・創刊号、「火人ガロン」以上手塚作品を 可目 の存在さえあぶなくなってくるのではないでし星の砂」 ( 室町書店 ) 、『メ適価で ( 福岡県筑紫野市 ようか、みなさん。 トロポリス」 ( 改造社 ) な二日市六反一組島崎顕 ) で係 ■「超能力エージェント」 ( 北海道斜里郡小清水町泉三西部直樹 ) ど剏冊を適価で。返信 れと 用切手同封の方にリスト送「渇きの海」「地球人よ故 ります ( 神奈川県平塚市郷に帰れ」「永遠の終り」 やわらかな窮地 ( 正月号 ) における Z-B 考 菫平 7 の 5 柏谷雅一 ) 適価で ( Ⅷ東京都豊島区池 書れ この短篇は、要に白黒問題であり、我々中間色 ■「年刊傑作選」 2 、袋本町 4 の恥国鉄アパート 迎葉て 3 、「宇宙嵐のかなた」「精 1 の期号大西博夫 ) 歓・は種族には直接のかかわりあいの余りない話なので 神寄生体」『世界の四次元■宇宙をデーマにした詩集 稿書先照それ程感銘は受けなかったが、欧米フプンに 投封宛参とってはいかなるものであっただろうか ? 私個現象Ⅱ」」世界の謎」「 0 ( なるべく新しいもの ) と 人には、親が子に対し過ちを素直に認めるといっ 09 ノ 1 』 1 、 2 、「火の画ポスターを適価で たありきたりの人間的結末にしか具体的には捕え鳥」 ( 復活篇 ) を二千七百 (ä福岡県甘木市新河町 円で。「江戸川乱歩名作ぶ上野京子 ) られなかった。短篇であるためかの みなさんの嘆きいつも読んでいて、ぼくもっく 集」 4 、 5 、 6 、「怪奇小、号と宇宙麈 づくそう思いますよ。・ほくの学校も、本格的に正確なイマージ、は引き出し得なかったが、直訳 説傑作集」 2 、「頭のトレっ ( 何号でも可 ) を。価格は を読んでいる人なんてほとんどいません。しかすると″集合潜在意識生活″といったところ。そ ーニング」 1 、 2 を千円で・相談で ( 覗山口県宇部市 両方では三千六百円、分売厚南区里の尾国鉄アパート も、学校の図書館にしても、公立の図書館してもれとなんとなくあたかもコンビ = ータがロポット は、ほんのわずかなのであります。しかもまを扱うようにが人間を制御するような作も可 ( 跚神奈川県川崎市川す盟岡本啓子 ) たまた、悲しいことにわが町にある二けんの本屋品からの曖昧なイマージ = とから、人間の本来的崎区観 = 日 2 の蜷のⅡ佐藤第「金星応答なし」「泰平 くョンの航星日記」「星から にしてものの字がはたして見えるかどうか視野を取り戻そうというプロジ = クトなのであろ啓三 ) ■ ~ 号まで半額の帰還」を適価で ( 剛埼玉 なのですそ。これではが読まれないのが当然うと自己満足的解答を出して見た。もし、それが 県大宮市大字染谷鈴木 でしょ ! も 0 と大々的にの読書推進連動を可能であるなら、人類は考えられる窮屈で退屈で程度で。但し四、峺Ⅲ、 、川、は欠号。往復葉孝雄 ) 変屈な未来より遙かに広大な夢ある未来を与えら やらなくてはいけませんね。そのためか、どうか 書で連絡ください・手渡し■ 「 OO> 」創刊号 ~ 終刊 は知りませんが、・ほくの本だなにも、はほんれることになる美味な計画のようである。 希望、分売可 ( 奈良県す号と「空想天文学入門」を この作品における Z3 的趣向は、汎生命といっ の少ししかありません。 生駒市小明森田暁子 ) 適価で ( 保谷市泉町 6 の ■「少年僕楽部」昭和年 5 の 6 目良千佳子 ) 話は変わりますが、最近のはむずかしくなた平凡な発想を現実社会にリアルに結びつけてい 号を適価で ったこと、ニュ ・ウ = ープなんて、さつばりわる点と誤った科学至上主義に対する警鐘として人七月、八月号を一冊五百円■ 、らよ、 、カ子ー、ぐ まくは、・プラウンやドイル、星新種問題を取り上げ象徴的に描いた点、及び科学をで。往復葉書で連絡を ( 川覗広島県安佐郡佐東町 川内中調子西田弘 ) 一等のわかりやすい方が好きだ。月号では、誤用する人間そのものの潜在意識を科学して進化大阪市東淀川区加島町盟 大野一郎 ) 「水星に太陽が」や「白い環」が気に入った。の袋小路打開のひとつの希望を模索している点と 全集四巻を適価で ( 繝 〔譲ってください〕 のはフィクションでしよう、でも近ごろいったところであろうか。ここで面白いのは、人■『竜神沼』「あかんべえ岐阜県本巣郡北方町新町石 は、のは、ファンタジイのじゃあないかド 司の本来性への帰着による再出発という発想は、 天使」を適価で ( 神奈川 川方斎藤秀美 ) と思ってきているんです。サイアンス・アンド・ そっくりそのままにおける Z3 の立場である県横浜市中区山田町 5 の 1 ■「青いトリトン」「バン ファンタジーじゃあないでしようか。・プラウことだ。 , オールディスは、人間今の人間である山田住宅 4024 富田羚バイヤ」他手塚作品をなん でも。またⅧ号以前 ンなどには、この手のものがよく出てくる、肥年ことに飽いているといっているのだ。人類マンネ子 ) 4 月号の、エリスンの「聞いていますか ? 」なんリ化の泥沼の中でもがいている人間はにおけ■「きりひと賛歌」上下、を適価で ( 剏東京都新宿区 4 『空気の底」上下、「どろ信濃町秋山直子 ) てのもそうじゃあないだろうか、こうまでのる ZB のような何かを見い出さねばなるまい。 。てと