アイスナー - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1973年4月号
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1. SFマガジン 1973年4月号

「スピリット」の一場面 、 : ま PO 山 ON 3 にい HAH HAAHRHHAAAH は、さびしかった。なぜ、みんな、自分のことを騒ぐのだ た : : : スビリットには、ユーモアの感覚があった。コミ ろうか。こんなに愛されたいと思っているのに。 ック・・フックのキャラクターで、これがあるのは、ほとん 6 人目についてはいけない。スープ皿は、高く高く、どこどない。スー マンは、四角ばっているし、・ハットマン までも高く、空をとび、ついに、暗黒の宇宙へと向う。だ はわけ知りだが、基本的には固い。キャプテン・マー・ヘル が、火星の上空にさしかかったときである。「おい、見ろ、 ロディであっ には、リル・ア・フナーのタッチがあるが、パ あれは、地球人の新兵器だそ。地球からの攻撃にちがいなて、ユーモアではない。ひとり、ス。ヒリットのみが、コミ い。射て ! 」あわれ、ビンク色のスープ皿のサムは、火星ック・ブックのなかにあって、比較的成熟した世界をきり からの砲撃をうけ、破片となって、宇宙に散った。 まわしているそこには、誰が誰をなぐった、なんてことよ これが、孤独な「空飛ぶ円盤」の真相なのである。 りも、いささか複雑なことが、くりひろげられているので ある」・ : ・ : まさしく、多くのマンガ家が、アイスナーの影 ちょっと想像がっかないが、いまをときめくマンガ家・響を受けた。彼こそ、真のスタイルを持ったアーティスト 劇作家・文明批評家のジュールズ・ファイファーは、かつであり、たとえば、ジム・ステランコは、アイスナーから、 て、アイスナ 1 のアシスタントをしていたことがある。実に多くを吸収していることがわかる。ステランコは、彼 「コミック・・フックの偉大なヒーローたち」のなかで、フの書いている「コミックスの歴史」第二巻のなかで、とく に、「ス。ヒリット」にはページをさいて、敬意を表してい は、こう述る。マーベルのスタン・リーも、アイスナーに敬服してい べている。 る。アイスナーは、「ス。ヒリット」に、全力を注げなくな 「アイスナったとき、他人に描かせるのをいさぎよしとせず、「スビ リット」に終止符をうった。だが、いま、アメリカでは、 ーの許で働 いていたと「スビリット」の復刻版が、準備されている。 き、私がし 私は、二年ほど前、神田の古本屋で、という小冊子 た最初の仕を買った。それは、アメリカ陸軍が、兵士の教育用に発行 、 ( ( 認】第 , 、ま事は、『している。、 = 雑誌で、全。〈ージのイラトを、ウ→ ~ ・ア 。ヒリット』イスナ 1 が担当し、機器の整備保全の方法を、マンガで説 のとびらペ明しているのだった。相変らずの画風で、私は、アイスナ ジに、彼 1 健在なり、と思った。彼は、コミック・・フック史上、最 の名前を真も官能的な女性を描いたマンガ家でもあった。ほお骨の張 った、アイシャドウの濃い、男を喰いそうな美女たちは、 似てサイン することだやはり、ぞくぞくするような、都会の女なのだった。

2. SFマガジン 1973年4月号

「スピリット」の女 4 タイトルの工夫にも見られるように、アイスナーは、映 る。アイスナーの世界では、現実の人工化はここまで進め られ、すべてを、タイトル文字という、非現実の〈虚無〉画から多くのことを学んでいる。 へとささげてしまう。 「私は、映画と共に育ち、生きてきた。映画は、い タイトル用空間を残し、いわば、〈本文〉のなかにタイ私に影響を与えてくれた。ひところは、舞台劇に、とても トルを組み込む、いや、〈本文〉を、タイトルに奉仕させ関心があったから、ステージ・デザイナーになろうと思っ るーーアイスナ 1 は、この独自のスタイルのなかに、世界たこともある」 このことばは、彼が、コミックスを、自分の思いのまま を閉じこめてしまった。彼ほど、タイトルに凝ったコミッ コミックス界のスタイリストであつの舞台装置によって描きだすことのできる世界としてとら クスの作者はいない。 ( たとえば、郵便切手の図柄に、ス。ヒリットの姿がうえていて、「ス。ヒリット」のために、とくに、凝りに凝っ たステ 1 ジ・デザインを考えだしたのだということを説明 かび、それが、タイトルになる、という場合もあった ) している。それにしても、ずいぶんしゃれた都会のセッ 2 フリツツ・ラング を、マンガの世界に築きあげたものではないか。さらに、 映画について、彼は、語り続ける 「初期のマン・レイの映画には、とても興味があった。彼 の実験映画は、もう、何度見たかしれない。そのうち、映 画というものは、 . 要するに、一片のセルロイドの上のフレ イムにすぎないと思うようになった。。つまり、紙の上のフ レイムと、なんら異ることはないのだから、すぐに、コミ フィルム ックスは、紙による映画ということになる。ス。ヒリットを 描くのは、映画を創っているようなものだった。そのとき 私は、【役者であり、プ戸デュ 1 サーであり、脚本家、カメ ラマンなど、すべてを同時に行う機会を与えられたことに なる」 映画とアイスナーは、切っても切れない関係にあるが、 とりわけ映画におけるドイツ表現主義 ( 一九二〇年代 ) の 方法を、コミックスに応用した男として認められている。 いわば、彼は、コミックスにおける、フリツツ・ラング派 なのだ。暗い影と、不吉なアングル・ショッ下、暴力と恐 怖を示すグラフィックなクロ 1 ズ・アップ ( 「スビリット」 こ 0

3. SFマガジン 1973年4月号

「スピリット」の女 イズによって、変えている。ロング・ショットは、ゆった短篇小説のシリーズなのさ。視覚的な、パルプ小説なんだ よ」と、作者はいう。 りとした時間の流れ、アップの積み重ねで、急テンポを。 「自分を作家だと思っていた。視覚的なライターだとね。 緩急自在であり、だから、このマンガには、たった七ペー しわば、ア 1 テ もっとも、普通の意味での作家じゃない。、 ジにもかかわらず、じゅうぶんの〈遊び〉がある イストとライターを合わせたやった」 しかし、そのためには、物語自体が、練りに練ったもの 。、ツサンや、オー・ヘンリーなどの、いまから見れ わま、短篇小説の名手である必要モ 1 / でなくてはならない。い ~ ば古いタイプの短篇小説の、 がある。そして、こ あの、どんでんがえしの結末 の点に関しては、作 し力にも乍・り というやつは、、、 者は、映画の場合と ごとめいていて、しらじらし 同様、徹底してもと く感じられてしまうのだが、 でをかけていた。ウ その技巧走ったス イル・アイスナ が、アイスナーの人工セット は、たいへんな読者 で展開されると、その古めか 家で、とくに、モ 1 しさが消えてしまう、という ・ハッサン、モーム、 より、も、 い力にもコミックス ポ 1 、ペン・ヘクト らしい安つぼい、真剣な馬鹿 ( 作家、シナリオ・ 「ガン ライタ 馬鹿しさとして、輝いてくる のである。 ガ・ディン」の脚本 それにしても、まあ、なん を書いた。私は、先 0 当 と、摩訶不思議なストーリー 日、古書店で、昭和 のはじめに出版され が、抜け抜けと展開されてい たとえば : た「シカゴ千夜一夜物語」を手にいれた。イラスト入りのくことかー 都会小説集で、なんと「ジャズ小説全集」の一冊として翻 訳刊行されたもの ) などの短篇小説に熱中した。 ▽アドルフ・ヒトラーが、ニューヨークを歩いている。地 「オー・ヘンリー、アン・フローズ・ビアースなど、夢中で下鉄が、ごう音をひびかせ、プロンクスの女の子が、おし 読み、とても役にたった。あれには、ひねった終り、どんやべりをしている。人混みのなかを、ヒトラーは、けとば されながら、進む。なぜ、ヒトラ 1 が、アメリカにいるの 5 でんがえしがあるからね。だから、〈ス。ヒリット〉は、 / し↓ / . し コミック・・フックとは、そうなんたけれども ) か ? その理由、みんなに憎まれ者の自分の立場を説明す

4. SFマガジン 1973年4月号

タイトル・べージ をには、恐怖にお ミックスに、真実味を与える不可欠の要素であることを 、ののく血走 0 た ( 表現主義の映画監督たちのように ) 心得ているのだっ 目のアップだけた。濡れた舗道に足音がひびく。枯葉が舞う墓地に立っ ~ 第のコマが、しば男。歩く彼を、ななめ上から見下ろしたショットに、スポ そう しば插入されットライトが当る。そんな照明は、現実には存在しない る ) これらが、それが、この舞台には必要な効果となれば、 ( それこ なが、「スビリッそマンガの自由なところで ) いくらでも描き加えた。 ト」の世界を、 こうした舞台装置のなかでは、人間の傷つきかたも、そ 、をッ他のコミックスして、死にかたも、効果が計算され、リアルになる。ダイ ちから、、、、 に比べて、ずつナミックな力のまっ正直なぶつかり合いを描くジャック・ とリアルにしてカービイの、熱気を帯び、火花がとび、画面が破裂するよ かな しる。ス。ヒリッ うな、・嬉しい単純さ ( それゆえに、大破壊のあとの哀しさ トが浮遊する舞を無意識に漂わせる ) を示すアクション画面と比べ、アイ 〕。台として、彼がスナーの暴力は、冷たく突 0 放して、ロング・シ = ットのな 作りあげた街と かで行われることが多い。それは、抒情的な、しかし、シ スカイライン、 ニカルな、暴力シーンである。甘美ですらあって、死に行 都会のセットは、彼独自の照明や擬音の使用によって、ネく者たちは、しばしば、自分の胸からしたたる赤い血を、 オ・リアリズムの効果をあげていく。 じっと見つめながら、息をひきとる。血が流れて、血だま アイスナーが、霧を描くと、そのページは、どんよりと りを作る。赤い血だまり。まあ、それは、ちょっと強引に にじんでくる。そして、雨。アイスナーは、雨が好きだ。結びつければ、鈴木清順の映画における血に似かよってい いつも、雨。〈スピリット〉というタイトル文字からも、 るといえようか。血ですら、なにか、スタイルを持ってい 水滴が、したたり落ちる・スビリットの青い帽子も、ぐっ ないといけないのだ。 ( 忘れないうちに言っておくと、 しよりと濡れている。コートのえりを立て、うそ寒い外灯「スビリット」はコミックス・コード制定以前の作品であ の、にぶい光のなかを、スビリットは、雨に打たれてひとって、現在のコミックスには考えられないほど、血が流さ り行く。 れる場面がある ) すえた匂いがしてきそうな安ホテルの部屋、雨に濡れた スビリットは、主人公ではあるけれども、案外、あっさ 舗道の冷たい感触ーーアイスナーは、そうした何気ない背りと、のされてしまう。ナイフで、ぐさりとやられる。ト 景、小道具を、さりげなく、実は、力をこめて描写する。 ラックにひかれる。レンガで頭を割られる。射たれる。も それらが、このとてつもなく荒唐無稽なミステリー活劇コちろん、しばらく後には、包帯姿で、また、登場するけれ 72 ~

5. SFマガジン 1973年4月号

1 % 6 年復刊版 ( 2 号 ) の表紙 ( 上 ) スビリット ( 下 ) ワ日、 ONY こ 0 工いつ / にペ′Ⅵ ( ミ 2 ミ ま •HO' 第、冖 ~ 00 どという文字が、白抜きのゆらゆらと、ゆらめく字体で現 からではないかしら、という気がしてきた。 ほんとに声をはりあげる、というところが、なんともなわれたとしたら、これは、もう、まちがいなく、オモチャ 冫冫し力なくなる。 まなましいんだな。どうしても、紙芝居のおじさんの生活だと考えないわけこよ、 というものが、見物している者に迫ってくる。その、ま稲垣足穂は、どこかで、「これからの映画は、タイトル だけになってしまうだろう」と書いていたような気がする あ、いじましさみたいなものが、紙芝居のよさだけれど、 けれど、そもそも、タルホは、活動写真のオモチャ性を、 それだけ、哀れでもあり、野暮になる。 ( 考えてみると、 した いつまでも、いわば、慕いつづけていることで、その青春 生きている人間がやっていることは、なんだって、哀しい があるのではないか。 のだが ) 映画は、そんな生活の匂いをとった、動くセルロイドの オモチャで、それだけに、生活を離れ、いわば、無責任に ウイル・アイスナーのコミックス「スビリット」に於て 見ることができる。その、映画のオモチャ性を、最も端的は、風景全体が、タイトル文字のために奉仕している。た に示しているのが、タイトルの部分だろう。たとえば、大とえば、うずまく水流が、うそ寒い夜の街灯が、ダマスカ まじめな表情の主人公の胸のあたりに、「世界の終り」なスの市場の建物全体が、新聞の見出しが、電報文字が、タ イトル・文 字を構成 する。「ス ッ ト」を読 む楽しみ のひとっ は、こん ど んな形 で、タイ 登場する のか、と いう占に 9 、をある。 を気

6. SFマガジン 1973年4月号

「スピリット」予告篇 ( 上 ) 「スビリット」の女 ( 下 ) PREViEW 0 おドすお 5 い ー S 当 R いぎを = ミ , クスが、載 0 て一 いるけれども、それ 7 冫いかにも単純なス , ト・ 1 ーリ . 1 ー で、しかも、 どれも変りばえばしな 。それと比べると、 「スビリット」の七ペ ージ読切りは、なんと 内容があることか。 ( 正直のところ、私の 記憶の底では、「スピ リット」は、もっと長 い作品たとばかり意識 していたので、今回、 調べるに当って、すべ て七ページと知り、改めて感嘆したものである ) さん目を通した。そこから、私は、多くのことを学んだ。 アイスナーは、この七ページを、いかにも内容豊かに仕 毎年毎年、とっかえひっかえ、そんなにも多くの人たち が、コミック・ストリップを読んでいるのなら、そこに上げるために、骨身をけずっていたようにみえる。映画的 は、なにかとても面白い点があるにちがいないと思った。手法も、単に、画面の構図という、小さい次元のなかで応 用したのではなく、物語進行上の、時間のテンボのとりか で、私は、それが、とても面白いってことがわかったよ。 私は、コミックスを通じて、アメリカ人のキャラクター たにその手法を生かし、つまり、七ページのなかで、時間 アメリカ人のユ 1 モアに、理解をもったし、いまももっての進行速度を、自由自在に変えて、単調さを避けると同時 に、七ページを、七ページ以上に用いたのであった。 いる。特に、スラングを学んだものだよ」 たとえば、ストーリー を、ずっとひとつのテンボで運ん 3 ヒットラー、 できて、最後の大詰めの結果を、新聞記事や警察のファイ ニューヨークを行く ルなどのドキュメントを並べてみせることで、あっさり 「スビリット」について、いちばん驚くのは、エビソ 1 ドと、しかし、意味ありげにしめくくってみせる手ぎわの良 が、すべて、たった七ペ 1 ジで完結しているという点だろさをみせる。そして、自分の思いのままに、物語のなかの う。現在のコミック・ブックにも、七ページほどの〈短篇〉時間を伸ばしたり縮めたりするその時間感覚を、画面のサ

7. SFマガジン 1973年4月号

= ! 雰物 ! こすツ第 3 を : 陸軍教育雑誌「 P ・ S 」の表紙 ( アイスナー画 ) ( 上 ) ・査を気ゞ 糴物、参をい PREVENTIV を M 館町 AN , MO 町 H げ。 . ダメなやつだ。なんの才能もない。もし、・ほくに、なに、 ルトに叩きつけられて死ぬ。「大都会の群衆のなかで、こ デカいことが出来たらなあ : : : 」ションポリ歩く彼の横の日、ゲルハ 1 ド・シュノッ・フルが、空を飛んだことに気 を、銀行ギャングを捕えるべくスビリットをのせたパトカづいたものは、ひとりもいなかった : : : 」 ーが走っていく。「そうだ、・ほくは、空を飛べるんだっ ここに至って、この物語が、冒頭の断りがきのとおり、 け」ゲルハ ードは、たった、一度だけ、空を飛んだ少年時喜劇でなく、悲劇であったことがわかる。そして、明らか 代のことを思い出す。「よし、・ほくが、空を飛・ヘることを、に、この、生涯に、二度だけ空を飛んでみせた不幸な男の 今こそ世界に知らせてやろう。・ほくは、今度こそ、有名に物語は、「スー・ハ 1 マン」に対する、実にシニックなパロ なるそ」彼は、エレベーターで、ビルの屋上にあがる。ギディなのだ。 ャングを追うス。ヒリットも、いっしょだ。 月へ高とびした男の話。 ビルの屋上から、ゲルハ ードは、ついに、生涯二度目の セントラル・シティの警察署。スビリットと署長が話し 飛行を慣行する。だが、ピルの上では、ス。ヒリットたちているところへ、葉巻をくゆらしたチョビヒゲの男がはい : 、ギャングと射ち合いのまっ最中で、だれも、空飛ぶ男ってくる。 に、気がっかない。い や、それどころか、ギャングの射つ「私の名は、アーティマス・ピープ、過去十年、組織をつ た弾丸に当って、彼は、まっさかさまに落下し、アスファ くるために、あらゆる犯罪者を、集めてきた。これから、 活動を開 始する。 この街 を、まず、 のっとる のさ」 「こいっ 気ちがい か ! 」相 手にしな ドーラ ン署長。 だが、お かしな男 が帰った をな第受、

8. SFマガジン 1973年4月号

スピリットと女 ( 上 ) 「スピリット」の女 ( 下 ) 00 、物当を一 WH 0 0 リ、了 E しし . 引をリルし 0 第 NE 兮、 を V 第 2 当 MO 、モ′ いて、 = ン棒 ~ で、考古学者 7 をうちのめす と、海にけ落 して、唄を口 ずさみなが ら、立ち去っ ていく。後に は、風化した 「スビリット」 のパンフレッ トが、ちぎれ て、風に舞っ るため、、、 ししひとだと思われ、みんなに好かれたいためなている。 ファニイ・ストーリー のだ。 まったくばかばかしいとしか、いいようのない 「はじめにお断りしておくが、これは、おかしな物語で 設定だが、七ページを読んでいるあいだは、なんだか、もはない ! 」こういう書きだしではじまるエ・ヒソードがあ ード・ンユ / っともらしく思える。それが、アイスナーの苦心したとこる。「笑いごとじゃないんだよ」 ろなのだ。彼は、実際にはあり得ない物語を、いかにも、 ップルは、ごくありきたりの両親のもとに、大都会に生ま もったいをつけて、ドキュメンタリー風に、かざりをつけれたが、八歳になったとき、屋根から足を踏み外してしま て、語ってみせる。 った。そのとき、彼は、自分が空を飛べることを発見した マ年齢百万歳の男のはなし。二人の考古学者が、山の上ののである ! 「ママ、見て、ぼく、空をとべるよ ! 」だが、 古代遺跡を調べているうちに、太古のス。ヒリットのコミッ 両親は、少年を、きつく叱った。「もう、二度と、空なん クスを載せた。ハンフレットを見つけて、読む。そのなか か飛ぶんじゃないよ ! 」父親は、息子が、一生、片輪もの で、ス。ヒリットは、世界最年長の男、永遠に生きるようにの化物として、ひとさまから、うしろ指をさされるように 呪われた悪人と、山の上で戦って、ついに、相手を、海になるのを恐れたのだった。少年は、正常な、まじめで健全 落す。 「馬鹿げたはなしだ」・ほろ・ほろになった、そのな人間として育てられ、やがて、銀行の夜警となった。 スピリット物語の古代パンフレットの最終べージを読み終 だが、銀行ギャングにあっさり襲われて、彼は、銀行を って、未来の考古学者はつぶやく。だが、ふたりの背後にク・ヒになる。ひとり、と・ほと・ほとビルの谷間を歩くゲル ( ードの目から、涙がこ・ほれている。「チクショウ、・ほくは、 は、まさに、その不老不死の老人が、いつのまにか立って 1 Y00

9. SFマガジン 1973年4月号

「スピリット」の女 了朝 4 しはを応 : 、、管みま。 、ツヤ 0 洋ぎ第協は黛 0 : ' ら 00 立ゞ石 ど、いつも、痛い思いをしている。楽な稼業ではない。だ犠牲者なんだ。スピリットは、ただひとり、本当のミドル が、こうしたスビリットのあっけない弱さが、逆に、この ・クラスのクライム・ファイタ 1 なのさ。だから、その動 キャラクターの強さになっている。チャールトン・ヘスト機もミドル・クラスのものだ。おれは、これをしなくちゃ ならん、とにかく。で、彼は、結果として、それをやる。 ン型の肉体で、空をとぶスー ーヒーローたちの、単純な どうして、クライム・ファイターが、マスクをつけて、犯 空虚さのかわりに、都会のゴミといっしょに浮遊しなが ら、傷ついた肩を、手で押えて、また静かに立ちあがる。罪と戦うのか、私にも、さつばりわからんよ。だが、人間 てやつよ、、 冫しつだって、やらなきゃならんことは、やるん これは、真実味のある男の物語だ。 だろう。直面してしまったことは、とにかく、やってい しかし、 いったい、彼は、なんのために戦っているのだ く。壁をつくり、その前に男を立たせると、男は壁をよじ ろうか ・スビリットよ、ハンフ 登ろうとする。アリと同じさ。 「スビリット スチュアー リー・ポカートと、ちょっと少年ぽいジミ 1 ・ は、もし、実 トとを合わせたようなキャラクターさ」 存主義という 私の目からみると、スピリットは、 いつも自然にみえ ことばにつ ての私の理解る。ノンシャランとしている。肩ひじ怒らしていない。そ が正しいとすういえば、彼は、犯罪と戦いはするけれども、肉体的なカ るならば、純で、状況は変えられないことを、知っているようだ。彼 は、ほうりこまれた状況のなかで、不平をいわず、あたり 粋の実存主義 者だ」と、作まえに、やらなければならない ( といつのまにかなってい る ) ことを、やっているだけのことである。だから、彼 者自身は、、 は、物語のなかで、きいたふうなタンカをきったりしな う。「彼は、 ごらんのとおい。まあ、考えてみると、コミックスの主人公としては、 りの世の中にずいぶんひかえ目なキャラクターだと気づくのだが、それ にもかかわらず、ス。ヒリットの存在は、私のなかに、ずつ 1 生きていて、 何の理由もなと大きかった。私は、彼を、実在のキャラクターとして、 、犯罪解決確実に、感じることができる。 に、つくして ところで、アイスナーに大きな影響を及・ほした、ドイツ いる。彼は、表現派のフリツツ・ラング監督も、実は、アメリカのコミ 他のみんなとックスが好きなのである。彼は、こう語っている。 同様、状況の「私は、多くの新聞を読み、コミック・ストリップも、たく ~ 73

10. SFマガジン 1973年4月号

スピリット と女 を第い 0 凵ツ第リー 味の仲間である浮浪児がひろう。ラッタッタは、そのガキ といっしょに、ゴミ箱のなかで寝泊りするようになる。 4 空飛ぶ円盤の正体 やがて、ギャングどもは、スビリットと対決する。危う 「スビリット」には、ときしス。ヒリット。そのとき、ラッタッタが顔をまっかにして ふんばると、なんと、オモチャの銃口から、火花がとびだ どき、「スビリット・リー ダー」という番外篇があっしたではないか。その火花が、そばにあったドラム罐のガ ソリンに引火し、ギャングどもは、ほのおにつつまれて、 ま、た。その場合、スビリット はほんの脇役だが、物語捕ってしまう。そして、ラッタッタは、自分が役にたった こと、本物の人殺しをする機関銃でなかったことを、少年 は、すべて、アイスナ 1 ) を ~ 第 3 。タ ' チで、まず第一に、主とい 0 しょに、喜ぶのだ 0 た。めでたし、めでたし。 ▽だが、ハッピイ・エンドで終らない物語もあるー・ーー警察 洋オモチャの機関銃ラッタ署長の娘は、ス。ヒリットといっしょに、。ヒク = ックにでか ッタの夢よ、、 冫しつもし をしつか、本物ける。だれよりも喜んだのは、娘の家の戸棚こ、、 の銃弾のとびだす機関銃にまわれていた一枚の平凡なお皿だった。そのスープ皿は、 なることだった。子ども いつも、家の中にいて、外に出るのは、これが、始めてだ が、ラッタッタを手にしてった。森のなかで、昼食が、はじまる。スープ皿にとって 引き金をひくと、みんな倒は、見るものが、すべて驚異の連続だった。「あ、鳥が空 れてくれるが、それは、死をとんでいる。ぼくも、いっか、空をとびたいな」 んだふりをして、子どもの そこへ、木の陰から悪漢どもがあらわれ、スビリットを 相手をしてやっているにすおそう。スビリットは、思わず、そのスープ皿を、悪漢に ぎない。「ぼくは、安っ・ほ投げつける : 。その瞬間から、その。ヒンク色のスープ皿 いイミテーションなんだ」 は、空を飛びはじめたのであった。あちこちで、その皿を ラッタッタは、ひとり泣目撃した者は、びつくりして、たちまち、〈空とぶ皿〉の 鰌・く。ある日、銃器店に、泥ニ = ースが、全国にひろがっていく。「都会上空にも、ビ 棒がはいる。ギャングのひンク円盤出現 ! 」新聞が騒ぐ。円盤は、国連安全保障理事 とりは、オモチャのラッタ会の議題にもなった。「スー ー円盤」というコミック ッタを本物と思ってとって・フックにもなる始末。だが、当のスー。フ皿は、孤独だっ いき、親分に叱られる。すた。大空を飛んでいると、空軍機に射たれるし、海の上を 8 てられたラッタッタを、一飛んでいると、旅客船の乗客が、悲鳴をあげる。スープ皿