昭和 35 年 4 月 12 日第 3 種郵便物認可昭和 34 年 12 月 1 日国鉄東局特別扱承認雑誌第 682 号昭和 48 年 4 月 1 日印刷・発行 ( 毎月 1 回・ 1 日発行 ) 第 14 巻・第 4 号 ァンタジイ & SF 誌 SF コンテスト応募夫 - 発表 Sc 〃 / S ア 4 / 砒 / 0 〃 & 月 c 〃 0 〃 / Fa 厩の
てこないのである。 急速に近づいた人 小野耕世 大伴昌司さんにはじめて会ったのは、世界シンポジウムがひ らかれたとき、赤坂のホテル・ニュージャパンの事務局においてだ った。そのとき私は、アーサー・クラーク " 小松左京対談のテレビ 番組の担当ディレクターだったので、打合わせのためしばしば事務 局を訪れ、大伴さんに紹介されたのである。 その次は、おととし、半村良氏の「石の血脈」の出版記念会のと きだったが、そのあたりまでは、特に深いおっきあいではなかっ た。ところが、昨年のなかば頃から、つまり、私が、映画関係の文 章を書くようになってから、急速に親しくなっていった。映画会 で、試写室で、なにやかやで、とにかくやたらといっしょになるよ うになったのである。 なんとまあタフな人だろう、というのが私の印象だった。そし て、繊細な神経の持ち主で、人にはよく気をつかい、仕事には、決 して手を抜かない人だな、ということが、すぐにわかった。亡くな る九日前に、映画雑誌の編集部で会ったが、そのときは、胃のぐあ いが悪くて、朝から、何も食べていない、と青い顔をしながら、写 真のレイアウトをしていた。そんな大伴さんを見るのははじめてだ ったので、・ほくらは心配したが、そのとき、やっとこれが出来た よ、といって見せてくれたのが「円谷英二の生涯」である。よほど 力を注いだらしく、ひどい健康状態にもかかわらず、嬉しさは、隠 せないようだった。 その二日後の日曜の映画会には、また、元気な姿を見ていたの で、ほっと安心したのだが、その日に会ったのが最後になってしま った。霊前に置かれたあの「円谷英二」の本を見ると、涙が出てし まう。シネマテークの手伝いをたのむよ、いっしょに映画 のコラムをやろう、といっていた大伴さんの声が、耳に残ってい る。一度だけ、仕事場の二階に泊ったのも、思い出となった。いま 矢野徹 ひとり去りふたり去り、そしていっか、だれもいなくなる日がや ってくるとはわかっていても、こんなに早く、トモさんのいなくな る日がやってくるとは思いもかけないことだった。 アッカーマンに送る本がほとんどそろったので月末までに持って ゆくと、元気な長電話がかかってきてから五日目の死。そして、お おぜいが集まったお通夜、お葬式。まことに人生のはかなさを感じ させられる数日間だったよ。 旅行代理店みたいなトモさんのおかげで、出不精な・ほくもずいぶ んあちこちと連れていってもらった。その旅行のあとをみんなでた どりなおしてみようという話もおこっている。 想い出の旅をやるとなったら、奥秩父か須磨の宿で心霊実験をや ってみよう。コックリさんか、霊媒を使っての魂の呼出しを。出て きてくれたら尊敬もいやましだぜ、トモさん。 同じ日に・ほくの従妹の子供も亡った。三途の川の渡し舟でいっし よだったかもしれないな。極楽怪獣との遊びかたを教えてやってく れ。 いつも丁寧な口をきいてくれたトモさん。あと五十年もすれば、 ぼくもあとを追うだろう。そのときまで忘れないでいてほしいな。 丁寧な話しかたで、天国と極楽の道案内をしてくれるのを楽しみに しているよ。 それとも、もうどこかに生まれ変わっているのかな ? もしそう ならいっか近い将来、電話をかけてほしいな。トモさんの長電話 を。 いずれにしろ、いまのところはーーーさようなら、トモさん。 は、ただ、冥福を祈るばかりである。 トモさん ロ 0
ファンタジイ & サイエンス・フィクション誌特約 表紙絵角田純男 目次・扉中島靖侃 イラスト 金森達中島靖侃 斎物れ明い喜八 岩淵造第農男 宮崎茂月象当 9 F マガジン 4 月号第 ( 第 14 巻 4 号 ) 300 昭和 48 年 4 月 1 日印刷発行発行所東京都 千代田区神田多田 T2 の 2 郵 1 0 1 早川書房 TEL 東京 ( 254 ) 1551 ~ 8 発行人早川清 編集人森優印引所東洋印刷式会社 新連載 3 みもの ( , 特別企画日長期連載 。大河漫画「 - 鳥入大系第 + 二章ミタて 大伴日日司氏の死を悼む t-n でてくたあ サイエンス・ジャーナル . 大陽系に生命を探る 世界みすてり・とびつ 世界 LL 情報 一 1- つみ 人気力ウンター 早川書房刊行満十五年記念企画ーーー ^ 小説〉 ^ 漫画・劇画》 ^ アート〉各部門 三大コンテスト応募規定発表 / 第三回おとぎ歌舞伎と詩 ch コミックスの世界ー第回続・スピリット 統・絵筆の幻視者フィンレイ 現代宇宙詩シリーズ⑧不知 0 岸辺に / 使命 / 膨張する宇宙トーマス・ / ノリス / / ニコルソン ワーレド ファーマーの " ー 浅倉久志 特別掲載、論壇こ一、ユーヨーカーより版権取得 前進と上昇た ' ( 後篇 ) 日本こてん古典 cn LL スキャナー ^ 日本〉石川夭同司《海外〉福島正実 加藤喬 4 てれぼーと すへいす・たいむ・あんてなま : ・ : ・ : : : ・ : 2 ジェラルド・ジョナス 手塚治、虫 横田順弥 0 W ー 122 1 12 1 1 3
て夜もそうだった。 二日たち、三日たった。 ・ : 不思議なり、もはや地上には住まず、 わたしは気が狂いそうだった。どんなに二人が離れがたい存在と 翌い覚えたるばかりのならわしも行なわず、 なっており、どんなに彼女が重要なものとなっていたか、それまで 薔薇の花も説き明かすことなく : : : わたしは気がついていなかったのだ。黙っていつまでもそばにいて そんなことくれるのに甘えて、薔薇の花の心をさぐることから目を背けてきた そうだ ! 薔薇のことなんか説明するんじゃないー はよすんだ。ただ匂いをかぎ ( 鼻をクスンといわせるんだ、ケーンのだ。 わたしは説かなければならなかった。そうしたくはなかったが、 ! ) 、それを摘み、それを味わうんだ。その瞬間瞬間を生ぎるんだ。 それにしつかりとしがみつくんだ。だが神々に説明など求めるんじほかに方法はなかった。 「マックワイ様、彼女は、ブラクサはどこにいるのでしようか ? 」 ゃない。葉はすぐ枯れ、吹き散らされてゆく : そしてだれもわたしたちのことなど気づかなか 0 た。あるいは気「行 0 てしま 0 たのです」彼女は答えた。 「どこにですか ? 」 にかけなかった。 ローラ。ローラとプラクサ。二つの名前はちょっとした不調和を「存じませぬ」 わたしはそのフクロウのような眼を見つめた。呪いの言葉が危く 残しながらも韻が合っている。ローラは背が高く、クールで、プロ 口から出そうになった。 ンドだった ( わたしはプロンドが嫌いだ ! ) 。父はポケットを引っ くり返すようにわたしを空っぽにしてしま 0 ていた。ーラならま「わたしはぜひとも知らねばなりません」 たわたしを満たしてくれる、とわたしは思 0 た。だが、 = ダのよう彼女はわたしをじろ 0 と見た。 なひげを生やし、犬のような信頼を眼に浮かべた。大きなビート族「ここを去 0 たのです。行 0 てしまいました。丘にの・ほ 0 てい 0 た のお喋り野郎が現われたのだ。全く、奴は 0 ーラの。 ( 1 ティのすばのでしよう。あるいは砂漠かも知れません。どちらでもかまいませ ん。何か差し障りがありますか ? 舞いはもう終わりのときを迎え らしい節りたった。そしてすべては終わりだった。 寺院の中でどれだけ機械がわたしのことを呪 0 たことか ! それているのです。この寺院もやがて人 ' 子ひとりいなくなるでしょ はマラーンとガリンジャーを冒液した。そして激しい西風が吹きすう」 「なぜです ? どうして・フラクサはいってしまったんです ? 」 ぎて行き、何かがもうすぐそこにきていた 「存じませぬ」 最後の日々は、わたしたちのうえに訪れていたのだ。 「わたしはもう一度会わなければならないんです。わたしたちは、 ある日、一日が過ぎた。だがプラクサの姿が見えなかった。そしもうじきここを離れてしまうのです」 幻 9
←応募規定の詳細は次真をごらん下さい 五物 : 年房 第己 、豸第を、に 、三一大。コ、ンテスト募集ー ト説日漫画・劇画日アート 新しい芽よ、萠え出でよ ! わが国において、ということばが今日ほど人びとに理解され、今日ほど 数量ともに普及したことは史上かってありません。はいまや日本の土壌に しつかりと根をおろしたといっても過言ではないでしよう。そしてそこからす いくつもの芽がふき、茎が育ち、花が咲きつつあります。 しかし、私たちはさらに新しい芽を求めます。さらに多くの新しい芽、新し い花を待望します。伝統の枠の中で新らしいものを求めるもよし、その枠を破 って飛び出すもよし。読者に喜ばれもまれる、大胆清新な内容であるな らば、どんな作品でも歓迎です。われと思わんものはふるってご応募くださる ことを、編集部一同、心から期待しております。 総合規定 〔応募要領〕と〔賞金〕部門別に参照のこと。 〔応募方法〕原稿に住所・氏名・年令・職業を明記、包みの表に「 00 コンテスト応募」 と朱書の上郵送のこと。ペンネームの場合も、本名を併記して下さい。なお、原稿 はいっさい返却しませんので、必要な場合はコピーをとっておくこと。 〔応募資格〕いっさい制限なし。ただし作品は商業誌に未発表の創作に限ります。 〔宛先〕〒皿東京都千代田区神田多町ニーニ早川書房内三大コンテスト募集係 〔〆切〕昭和四十八年四月三 0 日 ( 当日消印有効 ) 〔発表〕本誌昭和四十八年十月号の予定。ただし作品の誌上発表はその後半年以内。 〔著作権及び隊接権〕発表後五年間に限り早川書房に帰属する。 〔選考方法〕各部門別の選考委員会が選定。 ゞ 3- 9 9
プ日 E 、 OF SF ARTIST 続・絵筆の幻視者フィンレイ 読者の好評に応え , 再度贈る ヴ , ージ ~. ーイ珠玉のイラスト集
ビフテキ、トースト、サラダといった食物だけでなをうけて殺され、気がつくと、見お・ほえのないこの種族に属する異分子が、何パーセントか混入してい く、タバコ、ウイスキー、ガムなどの嗜好品から、ロ士地に生きかえっていた、と語る。手首に新しい容ること。これらのパターンが明らかになるにつれ 紅、ライターまではいっているという親切さ。櫛が器が結びつけられていることも、最初の復活のときて、なにか人間を超えた存在が、彼らをこの世界へ その中に含まれているところを見ると、いずれ髪のとおなじ。ただ生き返る場所は、その都度ちがうら移し変えて巨大な実験を試みているのではないかと 毛も生えてくるのだろう。ただ、その容器の蓋は、しい。だが、その理由はわからない。 いう疑いが、ますます強まってくる。 持ちぬしの手でなければ絶対に開かないことがわかさて、一つ所にじっとしていられないのが探険家出発後四百日あまり、すでに船は約四万キロ、赤 る。つまり、他人の容器を奪っても役に立たない というもの。この川の流域をさぐってみたくなった道を一周する距離を遡ったというのに、大河はどこ し、自分の容器をなくすのは自殺に等しいのだ。 ートンは、仲間に協力を求めて帆船の建造にとりまでも果てしなくつづいている。そして、陸のほう 人びとがこの世界の生活に慣れていくにつれて、かかる。そして二カ月後、めでたく帆船ハジ号は完では新しい社会形態が生まれたのが、彼らの目を引 女の奪いあいや縄張り争いが始まる 。バートンたち成、一行を乗せ、上流さして出発する。 強者が弱者を働かせ、そしてそれそれの容器に の仮小屋にも、それを奪いとろうとする一団がおそときどき船を岸づけして、食糧を補給するほか与えられる毎日の食糧の中から、嗜好品だけを供出 ってくるが、なにしろこちらは猛者揃い、たちまちは、平穏な航行がつづく。約二キロお のうちに撃退されてしまう。ここで、それまで腕カ ~ きに並んだキノコ形の岩は、食糧源で とはあまり縁のなかったビ 1 ター・フリゲートが、 ) あると同時に、里程標としても役立っ 襲撃者の中に昔の仇敵がいるのを見つけ、その鼻づ一てくれるありがたい存在だ。こうして ーいくつかの事 らに鉄挙をたたきこむ、という一幕も挿入される。一日が経っていくうちこ、 その男シャーコこそ、かって作家としてデビュー当実がわかってくる。 時の彼から四千ドルを騙りとった憎い相手だった。陸上には一びきの動物もいないが、 ファーマーとしては、二十年ぶりに小説の中で当時川の中には百種類もの魚が棲んでいる の鬱憤を晴らしたわけ。 こと。人口密度はかなり高いが、新し こうした小ぜりあいで時には死人も出る。死後のく生まれてくる子供がないので飢え、 世界の死人はどこへ行くのか ? その疑問は、二十一の心配はないこと。そして川の両岸に 日目に解ける。朝食をとりに行ったバートンがキノは、時代と種族別に分類された人びと コ岩のそばに、生きかえったばかりらしい、つるつが、上流から年代順に配置されている る頭の男を発見したのだ。男は十四世紀生まれのイらしいこと。ただし、それぞれの種族 ギリス人、復活十九日目に対岸のモンゴル人の襲撃一の中には、つねにほかの時代、ほかの 。 00 を PlliIiD JOS8 冊。 鬮 NI 旧 圄Ⅲ 、ン m 聞贈 cosmos 、
べ群 ロ ヾ拓作 をの 平鋭 レ なる たす 新場 の登 ヴ LL ■近刊 ・既刊 8 点〈好評発売中〉ー ■最新刊 白き日旅立てば不死荒巻義雄 不思議な力に引かれて日本を脱出し、次々と現われる謎の女 達に導かれるままに、失われた過去を求めてヨーロッパを彷 徨する青年が狂気の底で恒間みたのは、この世界と交叉する 異次兀世界だった。期待の新鋭が書きおろした長篇第一作 , 半村良 産霊山秘録 第四六判上製本 未来↑ドボ 0 平井和正 サイボーグ・プルース ト松左京 牙の寺弋小松左京の新 六〇〇円 人類を継ぐも 小松左京 0 継ぐのは誰か ? のは ? 六五〇円 人類に棒げる光頼立月 滅亡の詩 九八〇円 《人類破滅テ ト松左京 ~ 俣活の日 ーマ》決定版 七八〇円 「筒井康隆 億の妄想曁。処 喪われた都市の記録
「そうです」彼女は答えた。「あの雨のあと生まれた子どもたち「そうです。少し肺のなかまで吸いこんで、留め・ておき、それから は、もう自分の子どもを持っことができなくなったのです。そして吐き出してご覧なさい」 ちょっとすると、「おお」と彼女はいった・ 「そして何ですか ? 」わたしは身を乗り出していた。わたしの記億 ~ 少し黙 0 たあとで、「神聖なものなのですか ? 」とたずねた。 「いや、ニコチンというものです」わたしは答えた。「神の″代用 装置は″記録のところにセットされていた・ 品″といったしろものですねー 「ーーーそして、男たちはもう欲望をもたなくなったのです」 またちょっと沈黙があった。 わたしはグッタリしてペッドの柱にもたれかかった。種族全体の 「″代用品という言葉を訳すのはかんべんしてくださいよ」 不妊だったのだ。天候の異変のあとに男性が不能に陥ったというの だ。ある日のこと、どこからきたとも知れぬ、放射性物質をた 0 ぶ「ええ。わたし、踊 0 ているときにときどきこういう感じになるこ り含んだ気まぐれ雲が、火星の薄い大気を貫いて雨を降らせた、、ととがあります」 いうことなのか。ある日、シアパレリがわたしの竜と同じくらい架、「すぐやみますよ」 空の″運河。を発見するよりずっと前に、そうした″運河がさま「さあ、あなたの詩を聞かせてください」 ある考えが浮かんだ。 ざまの間違った理由から逆に正しい推測を導き出すこととなったよ 「ちょっと待ってください」わたしはいった・「もっとよいものが りずっと前に「すでにプラクサはここに生き、踊っていたというの かーーめくらのミルトンが、同じく失われた別の楽園のことを書いあるはずですから」 なんとい わたしは立ち上がると / ート類をひ . つかぎ回した。それから戻っ たそのときから、すでに子宮のなかにいたというのか て彼女のそばに坐った。 うことだ。 「ここに伝道の書という書物のはじめの主章があります」わたしは わたしは煙草を探し出した。忘れずに灰皿をもってきてよかっ 目に説明した。「これはあなたがたの聖なる書物とたいへんよく似てい た。火星には煙草産業なんか全くなかった。それに酒も : るんですよ」 会ったインドの禁欲主義者も、これに比べたらパッカスの徒といっ わたしは読みはじめた 3 たところだ。 十一節終わったところ・で彼女は叫び声をあげた。「もうやめてく 「その火の管はなんですか ? 」 あなたの詩を読んでください ! 」 ・こ MJ い 「煙草というものです。ひとつどうですか ? 」 わたしはやめると、ノートを近くのテー・フルの上・に放り出した。 「ええ、ください」 彼女は震えていた。それはあの日の踊りのときの風のそよぎのよう 彼女はすぐそばに坐った。わたしは火を点けてやった。 な震えではなく、内に涙をたたえて神経質にうち震える戦慄だっ 「鼻を刺激するものですね」 幻 6
られてばかりいるので、その反発がーディにむけられているのか もしれない。無視して仕事をしおえたポーディは、裏手へまわっ た廚房があって、下婢たちが、いそがしそうにたち働いていた。 てきばきと指図をしているのは、この館の女主人である。背がす らっと高くて、髪をいつも高くゆいあげていた。気品があって美貌 である。今夜は、客でもまねいているのであろうか。厨房はごった がえしていた。 「ああ、そう。御苦労様、 : 、 : 」 といづたきり、長者の夫人は、ーディをみむきもしない。いっ もだと、やさしくて食物などをわけてくれるのだった。 「お湯がたぎっているよ。そらそら、粉をねるの。ああ、だめよ、 この大地の世界は、何もかも単調だから、ポーディは何も考えな 肉はあとで、 : ・ : ・薬味をきざんで、気がきかない人ね : : : 」 。緩やかな斜面を、村がつくられている窪地へむかって降ってい く。西の丘へおちる落日だけが、刻々とその空を美しく変化させて女主人はいらだっていた。ま、こまごしていると用事をいいづけら れそうな気配だづたので、ポーディは早々に退散して、中庭へで る。この長者の屋敷の中央には、回廊でかこまれた庭園があづて、 ーディが、村の橋をわたる頃は、タ餉の煙がたちこめていた。 紫色のいがらつばい匂いと、食物のやけるこうばしい匂いがいりま泉水と植込が見事だった。 色タイルが敷きつめられたその庭をそっと横切って、ポーディは じづていた。 村に入ると、彼は、羊を導いて、村一番の長者の屋敷へいく。物向側の回廊へ足を運んだ。いったん立ちどまって、あたりをうかが う。誰もいないことをたしかめてから、飛 1 ディは回廊に入りこん 持ちにふさわしく、大きかった。 日千煉瓦の土塀。ったいにめぐっていき、ポ 1 ディは、羊とともナ に、その門をくぐった。広い前庭の片側に、納屋と羊の小屋があと、「そこにいるのはだあーれ」 どきっとして振りむくと、 る。そこへ一頭ずつ追いこみながら、ポーディは羊の数をかそえ る。それから犬どもを呼びよせて、庭隅の鎖につなぐ 6 これで、「お前、何をしているの ? 」 この家のひとり娘である。ポーディは、どぎまぎして、薄闇の中 ーディの一日の主な仕事はおわりだった。 その一部始終を、この屋敷の下僕が見守っていた。無能なくせにで顔をあからめていた。 いばづていた。ことさら、 1 ディには傲慢だづた。主人から、叱「そこで、何をしているのさ」 にもどってきているポーディは、さづばりわからないのであった。 いずれにしても、″世界樹″のみえる大地は、その一日を、また おえようとしていた。 ポーディは、角笛を吹きならす。 大どもは、ほえながら羊たちをあつめる。 ポーディは、群の先頭にたって、村の方へあるきばじめる 6 2