天文学史上初の壮挙だ〕ったのだ。もちろんそれ 不可能である。その意味でいえば恒星と考えることもできな ′す第第第第第を琵多 は、三カ月足らずで終り、生命の存在は判らず じまいではあったのだが・ : ド・カムプ博士は、つぎのようにいっている。 か ヴァン・ド・カムプは、オズマ計画の当事者 の 「したがって、この天体は、普通の意味での恒星とはいえ よりは幸運だ「た。一九六七年までに彼はイプ疂の ( 。 ,. るず、また、従来の音集での惑星ともいえない。われわれとし 〉 0 〉・ = リダ = が、単独 0 恒星が辿る・〈き直一′ ~ を ~ 一ま第」一 ( 「 ては、恒ー惑星 ( スタープラネット ) とでも名づけるしかない 線 0 ーに従 0 ていないことを 0 きとめたのでい ~ 一 ~ ~ 第 ( 一第県 ( 星だろう」 ある。しかもその動揺はきわめて徹細なもの〈 ~ 黛、 の最近、天文観測の技術の発達につれて、さまざまの新天体 どがつづけざまに発見されているが、この新発見の恒ー惑星な で、大きな暗黒の伴星の重力場の影響を受けた第 ( 第 るものも、今後、天文学者たちのあいだの重要な研究課題と 結果とは思えず、それより小さな巨大惑星が存 ~ 芝〔 . どして、興味ある論争を呼ぶことになるだろうーーと、このニ 在するのではないかと推測されるようになった。一の際第をを ) " そこで、ド・カムプとそのチームは、イプシ = ースを報じたタイム誌の記者は結んでいる。 ロン・エリダニの天文写真を八〇〇枚以上と っ結局、この新天体は、生物を育んでいる惑星ではないよう で、宇宙空間に、他の生物ーーなしうべくんば知的生物 り、これを慎重に計測した結果、その動揺がど , んな原因によって起こされているかを検討した。物 の生存を確かめたいとねがっている天文ファンたちのロマン 宙 宇チシズムはまた冷水をかけられたことになってしまったが、 その結果、チームの天文学者たちは、この天物み - 大 しかし、こうした発見は、この宇宙が予期以上ーーーいや想像 体が、地球と太陽の間の距離 ( 約一億五〇〇〇装第を ~ ~ こ 万キロメート こ以上に複雑で多角的な構造を持っていることを、ますます強 ル ) の八倍離れたところを回 0 て第蠱 ~ 純 いること、したがって、受ける熱量は非常にす くわれわれに印象づけた。そして、やがては、こうした発見 くなく、生命を芽生えさせることはできないと の中から、われわれの想像をはるかに超えたかたちで、生命 推定されること、この惑星の、太陽を一回公転するに要する時間は、地球時体の存在の確認が行なわれるかもしれないのだ。そう考えること自体は、な 間で二五年であることがわかった。この惑星のデータでもっとも不思議なのんらのセンチメンタリズムでも、あるいはオー・ハーなロマンチシズムでもあ は、その質量で、少なくとも木星の六倍はあると推定されることで、これほるまい。それは、これほどの内容豊富な宇宙に対するわれわれの畏敬の念な のである。 ど大きな惑星は、惑星としての常識をはるかに越え、従来はとうてい予測さ れなかった。 だが、この質量は、親星の質量の一。、 ーセントに満たない つまり、そ の天体の内部で、核融合反応を起こすこと、それを持続することはとうてい 3
・、史ま訒の感一星 , 見 ? 先月号のサイエンス・ジャーナル欄では、太陽系内に再燃した生命存在説ると、肉眼では見えないこの天体は非常に変った天体で、従来の天文学の常 つまり、ふつうの惑星としては大き についてリポートしたが、最近アメリカで、天文学史上初めて他の太陽系の識的分類のどれにもあてはまらない 惑星らしいものを発見した、というニュースがったわり、新らしい宇宙トビすぎ、恒星とみるには小さすぎるのである。 ックとして、大いに話題を賑わせている。 では、光学望遠鏡ではもちろん、電波望遠鏡でも発見できないほど遠くか この大宇宙に、われわれの太陽系以外にもかなりの数の惑星系をもっ恒星すかな惑星の存在が、なぜ推測されるのか。カムプ博士の使った方法は、 が存在するということは、この十年の太陽系誕生理論の必然的な帰結とし 〈天体測定〉 ( アストリメトリー ) 法であった。つまり、その恒星が、背景を て、すでに天文学界の常識となり、一般でもそれを信ずるものが多いことは なすさらに遠い恒星に対してほとんどわからないぐらい移動する際に起る就 いまさらいうまでもないだろう。そしておそらく、それらのーーーたぶん数億道のごく僅かな乱れ、あるいは動揺を測定するのである。 にも達するであろう惑星の何・ハーセントかは、地球型であると否とを問わ 銀河系に属する恒星は、すべて、銀河系の中心に対して、大きな、スムー ず、何らかの生命を芽生えさせる条件をそなえ、じっさいにも何らかの生命ズな旋回連動を行なっている。この運動が、乱される理由はたった一つしか 体が存在するであろうということも、すでにわれわれの常識に近くなってい ないーーそれがつまり、惑星あるいは伴星の存在である。それらの惑星、あ る。 るいは主星の周囲をめぐる伴星の重力が、主星のスムーズな運動をみだし、 にも拘らず、われわれは、いまだに、ただの一つも、そうした実際の惑星わずかな動揺を起こさせるのである。 の存在を確認していない。もちろん、世界最大の天体望遠鏡をもってして ド・カムプ博士の天体測定は一九三七年から始められた。彼はス。フロール も、われわれにもっとも近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリ ( 四・二五観測所の二四インチの反射望遠鏡を用いて一定期間を置いて、太陽に比較的 光年日四〇兆三八〇〇億キロメートル ) のまわりをまわっているかもしれな近い数百におよぶ恒星の写真をとり、観測用のデータをとった。こうしたデ い惑星の姿を発見することができないからである。 ータの中から、まず彼の興味をそそったのが・ハ 1 ナ 1 ド星だったわけだが、 ところが、最近、アメリカのべンシルヴァニア州スワスモア大学のス・フロその後とくに彼の注意を惹いたのがエリダスス座イプシロンであった。 ール観測所の天文学者ビーター・ド・カムプ博士は、太陽系に二つの間違い イプシロンは、その近辺の恒星が、ほとんど小型で光も弱い赤色婚星であ のない惑星の証拠を発見した、と発表した。 るのに対し、太陽にやや似た黄色がかったオレンジ色の恒星で、質量は太陽 ド・カムプ博士は、すでに一九六〇年代後半に、三十年におよぶ辛抱強い の七〇パーセント、光度は太陽の三〇・ハーセントの恒星である。このタイプ 観測の結果、惑星を持っ太陽として、わが太陽系から約五・九光年の距離に の恒星ならば、もしも惑星系を持っていればーーそしてその惑星のうちのど ある・ハーナード星ーーー別名・ハーナード逃走星とい れかが、太陽から適当な距離にあり、適当な熱と光とを供給してくれれば、 ン ( 固有運動 ) の大きいことで有名ーーをあげていた。 その惑星には、いつの日か生命が芽生えてくる可能性がある。 一九六〇年、ケネディ大統領の時代に、アメリカのグリーン・ハンク天文台 博士が今度ニューメキシコ州、ラス・クルーセスで開かれたアメリカ天文 が行なったオズマ計画は、まさに、この惑星に、進化した生物が存在し、宇 学協会の大会で発表したのは、わが太陽系からの距離およそ一〇・七光年イ プシロン・エリダニーエリダヌス座のイプシンである。博士の発表によ宙空間にむかって、信号電波を送っていないかどうかを確かめようとする、 【サイエ、 茄喬 2
ア医療センターの褐色の塔がずっと向こうに望見された。下町のべ レヴーにはコーネル医院があったーー「希望か」と、アレックはい 新説の受難時代 った。「生命あれば、希望もある」アレックはいって、このしゃれ 意義あるところに方法あ ) に苦笑いした。いまや彼には、なにをせねばな 太陽系のもっとも外の軌道をまわ その旗頭は、リッグ天文台の天文 るのは冥王星だが ( といっても、そ学者、・・クレモナと・・ らぬかわか 0 ていた。彼は、窓から離れると、職業別の電話帳を取 ~ の軌道は一九六九年から二〇〇九年 ハーランの二人。コンビュータによ りあげ、「病院」の項を開いた。 まで海王星の軌道の内側へは入りこ ってハレー彗星軌道変化を計算する と当然その幻の惑星の大体の位置が んでいるが ) さらに外側をまわると しわれるプラネット・い わわかってくるのだが、そのあたりの 夜だった。その住み込みの精神科医は、彼に付き添い愛想よく話 ( ゆる「トランス・プル ートニック空を二十四時間毎に一回ずつ写真に しながら廊下を進んでいった。 ・プラネット」が予測されてから久撮って較べ合せてみたが、その惑星 しい。だが、この太陽系第十番目の予想される光度にあたる十三等級 「彼女は名前をいおうとしないのですよ。コンプレックスのあらわ の惑星は、果して実在するのだろう を四度も下まわる十七等級の限度ま れです。われわれ向きの症候ですが、あなたにとってはさそおつら ~ で検討してみたが、どこにもそれら か ? いことでしよう。彼女がだれなのか見わけられるなにか目印のよう さまざまな論議がたたかわされて しいものは見つからなかった、とい きたにもかかわらず、この問題は未う。 なもの , ーーーたとえば外傷のあとですがーーでもあれば、彼女があな に解決がついていない。 一方、理論的な面からこの新説に たのお目あての人なのかどうか知る助けになっていたのでしようが つい最近では、この長い間探し求反対するのは、カリフォルニア工科 められて米た天体について、ある天大学の二人の天文学者、ビーター ね。なかなかないことなんですよ、どんな人でもまったくといって 文学者は木星と同じくらいの質量をゴールドライヒとウィリアム・ワー よいほど目印のようなものがない 2 持ち、太陽から五 0 億マイルの距離 ドで、その惑星が木星と同じ位の質 のところを黄道面に対して六〇度の量を持っているという主張から考え 「彼女の悩みはなんなのです ? 」と、アレックはきいた。「心配な 角度を持った軌道を描いて運行して てゆくと、それほど大きい未知の惑 いる、と主張してセンセーションを星が、黄道面から六〇度も離れた軌 んですか ? 恐れているんですか、例えば幽霊たとか。 ( イ菌、ある一 いは滝 まきおこした。 道を運行しているとすれば、当然黄 賑 この新説を打ち出したのは、米国道面が一千万年に一度位の割合で旋 「たしかに恐れていますね。わたしを恐れてすらいるんですよー カリフォル = ア大学のジョセフ・プ回運動を行うはずだし、またその他 わたしが。ハイ菌を持っているとおっしやる。わたしが無能だとおっ ラディ教授で、彼がデータの根拠と の各惑星もその影響をかなり受けて 9 しているのは、、 ノレー彗星の軌道研 いなければならないというのであ しやる。これはむろん、なにか他にある恐れの症候なんですよ。あ 究からで、軌道上に現れる変動をこ なたがいまおっしやったようなことは、彼女が実際に恐れているも の未知の惑星の影響によるものと仮 ところが、そういう傾向はどちら 定し、このような新説を導き出した も全く見られないから、この臆説は のではありませんね。いったんわれわれがその唯一の抑圧された恐 ものだ、という。 真実である可能性がない と反論 れを探り出し、それを彼女に解明してさしあげれば , ーー・」と、ここ している。 だが、この新説には早くも強力な で彼は、アレックが反対するのを抑えて、「ささいなことを恐れる 反論が現れ始めた。 しかし、何年か前、本欄にもご紹 8 9
にも実在していないのだ ! 幽霊はおまえたちの心が生んだ幻想に 過ぎない。分るか ? , 幽霊なんていやしないんだ ! 先住種族はも ペリコフスキーは正しかったか ? う減んだ。減んだものに、何の力もない ! 」 トマスは身をかがめて何かを拾いあげ、それをふりまわした。 本号のもう一つのこの欄で、天文あったが、結論はこういった当時の 神経破壊銃だった。 学上の比較的新らしい二つの説に対 ( いや、現在でも ) 天文学の常識を する学界の風当りの強さをご紹介し無視したものであった。しかも、そ 「ここを出ろ ! 」 た、ところで、今から二十年ばかり ういう議論からひき出した、太陽系 ~ 「ここを出て、家に帰り、考え直すんだ , トマスはわめいた。 前、世界の科学界の激しい批判と攻の各天体の物理的状況などに対する さあ出ハ撃の的となったべリコフスキーの異理論がまた常軌を逸したものだっ ! ここへ来ても何にもならない ! 幽霊などは存在しない た。たとえば、金星は、ほんの何千 ) 端の著「衝突する字宙」 ( 鈴木敬信 るんだ ! 出ない者は殺してしまうそ ! 」 ~ 訳。恒星社刊 ) に対する科学界の現年か前に木星から割れてとび出して 来たばかりの天体で、それ以後地球 カゼタは了解した。 在の立場はどうであろうか ? この著は、世界の古い記録やら文や他の天体と接触したりしているの トマスは、演説と銃のカで、タュネインの人々を動かそうとして 献にくわしいべリコフスキーが、世で、いまだに白熱状態にある : : : で いるのだ。自説にこだわるあまり、それを実行し実証しようとして 界各地の神話や伝説、地質学的や考あるとか、その上の大気は主に炭酸 古学的なデータなどを集めさらに古ガスから出来ている。また太陽系の いるのだ。 各天体の間には電気的な力が大きな 代文明に関する記録を克明に検討、 そんなことで、恐怖におびえ亡霊にすがろうとしている人々の心 役割を果している : : : など、当時の それらを綜合して解釈した結論とい うことである。それは、火星や金星天文学的な考え方とは真向から矛盾 が変わるはずがない。 のような大きな天体が地球に衝突せするものであった。その本は、一九 それどころか、へたをするとトマスは殺人をやるだろう。そうな んばかりに近づき、それほど遠くな五 0 年の発行前から、早くも科学界 ) の非難攻撃が開始され、発行後ほん い過去の地球に大激突が起ったとい ったら、人々の憎しみはトマスに集中する。 うのである。 の数週間でその本の発行権はダブル 危険だ。 ディ社に譲渡された。その本を出版 その最近の例は、紀元前八世紀の 終りから七世紀の初めにかけて火星したマグミラン社に二十五年間も勤 すでにカゼタたちの車は、ト = の立「台石の下、たち一 めていた担当者は、このことで即座 門が地球に衝突しかけて起ったもの の車のそばに着陸していた。 に首になってしまった。 で、その前は紀元前十五世紀ごろに 「やめろ ! 」 その後も、この本と学説に対する ~ ~ 起り、これは当時まだ彗星だった ( ! ) 金星が地球に衝突しかけたも圧迫はつづき、べリコフスキーの学 どなりながら、カゼタは車を飛び出した。 のだ、という。それ以前にも、そう説になかば好意的であった、当時へ イデン・プラネタリウムの所長で、 「あっちへ行け ! 」 ⅲした出来事は何度も起っており、そ の中には木星が地球に衝突しかけた米国自然科学博物館の天文部の部長 ~ トマスは銃をこちらに向けた。「堕落司政官は引っ込んでろ ! 」 ードン・アトウオターなど当 だったゴ こともある、というのだ ! 「やめろ、トマス ! 」 その立論の方法は、ちみつを極めは、好意的な書評を書こうとし、ま た彼のプラネタリウムでその説に基 たもので、非常に興味深いものでは 「うるさいそ ! 」
惑星を担当するためによ、、 をしくつかの惑星をめぐり、そこの司政官界には、そのくらいの刺激があるほうが望ましいと判断しているの の下で実習をして、適性を認められなければならないのだ。そのさか、タ = ネイン在住者であれ他惑星からであれ、幽霊の、ことを究明 思わしくない評価をくだされると、司政官の地位は与えられしようとする者があ 0 ても、奨励もせず妨げもしないという態度に ず、単なる行政専門家として、連邦内での別の仕事を与えられるこ終始しているのだ。さらにこの幽霊騒ぎ以外にも、他の惑星でしだ とになる。それゆえに、司政官は司政官でも、やはりあくまでも候いに強くな 0 て来ている現象ーーその星に生れ育「て他の世界を知 補生に過ぎないのであった。 らぬ世代が、司政官制度というものに対して、反撥を示しだしてい カゼタは、すでに、他の惑星で、何度か候補生を引き受けて、 しるということがあるが : ・ : ・それとて、ここではまだ問題となるほど る。だから、今度もそのつもりでやれば、何ということもない。その段階まで行っていなかった。 のはずなのだが : : : それが、妙に気になるのだった。 要するに、カゼタは、ここでは大した努力もせず、司政官の座に なぜだ ? ついていられるのである。いや、努力どころか、生活をエンジョイ 答は、自分でも認めたくはないが、簡単だった。今の自分に、はしながら、年月を送って来たといっても過言ではない。そして、そ たして候補生に評点を与えるというような行為ができるだろうかー のうちに、彼もまた、・、 ノートや他の前任司政官と同じように、、 ーというおそれがあったからだ。 ての自己励起や闘志といったものを、失ってしまったのだ。言をか このタュネインに来てから、七年になる。 えれば、もはや、気力、習慣ともに、他の惑星の司政官がっとまる 七年間、彼は、たしかに司政官としては役目を全うして来た。推ような状態ではなくなっていた。かりに新しい任地へ赴く気になっ 定数千年前に先住種族が減びて、高等生物がはじめからいなかった たとしても、そのためには相当な苦労を覚悟しなければならないで この惑星では、原住民に関するトラブルはおこりようがなかったあろう。 し、植民者は植民者で、他とは比較にならぬほどおとなしいのだ。 そんな自分が、候補生に評点を与えてもいいものか ? いや、評 それはむろん、幽霊騒ぎ ( ここには、実体のない影のようなもの点どころか、候補生を本当に実習させることができるのか ? 実習 が、ちよくちよくあらわれて、人々を驚かすのだ。それがこの星のが実習にならず、逆に、若い司政官にはあるまじき安逸の心を作り 先住種族の亡霊なのだと、ここに住む人々は固く信じていたし、力あけてしまうのであるまいか ? もしも、候補生がそうならないと ゼタ自身もそうに違いないと思 0 ているものの、誰もまだそうだとしたら、それはすなわち、この惑星の司政官カゼタへの軽蔑を前提 立証した者はいなかった ) というものがあるが、最初の植民時代以としてしか考えられないのではないか ? 来から出現している〃幽霊气は、現実には人々をおびえさす以上の 出来るものなら、カゼタは、この実習を拒否したかった。植民惑 実害を与えるわけではなく、まして、司政官には何の責任もないこ星は数多いのに、何もわざわざタ = ネインに来させることはないで 6 とである。むしろ連邦としては、タュネインのようなおだやかな世まよ、 、、いたかったのだ。しかし、連邦の実習惑星割当て
断片をよみがえらせ、イメ 1 ジを描く。ここでは、鋭い嗅覚と分析が、ひどく面倒に思えてくる。私が次の任地へ行くのを辞退して、 力を持っ数十人の香料技師たちゃ、さらに少数のを芸術家をにはよ第一線をしりそくことにしたのは、そのためさ」 し及ばなくとも、大気の香りを感じ、表現することが、日常と固く / ートのみならず、タュネイ たしかに、そうかも知れなかった。・、 結びついているのであゑ 二の例外を除いて、みな現役司政 ンの司政を担当した人間は、一、 官の座を降りているのである。連邦にもそのことは分っているらし ここに七年間とどまっているカゼタも、むろん例外ではない。 今は風に、子供のころの玩具のイメージがあるーーと、彼は思っく、ここへ派遣されて来るのは、相応の実績をあげた年配の人物に た。それはすぐに金属を連想させるツュイタダキの香と溶け合って限られていた。このへんで、少し休ませてやろうという配慮なのだ 行政専門家候補生時代に乗った宇宙船の記憶となり、やがて、圧倒ろうが、同時に、引退したければそれでもいいという含みも持たせ 的なハナシ・ハソウの香へと還元した。 ているのに違いない。もちろん、そうするか否かは、あくまで個人 ハナシ・ハソウの匂いにあうと、彼はいつも前任司政官の・ハート をの自由意志によるのだけれども、ともあれ、終着駅ムードがあるこ 思い出す。それは多分・ハートが、ハナシ・ハソウを愛していたからでとは、否定できないのだ。 あろう。 しかし、ここを最後として司政官をやめた人たちが、それではタ だが正確にいえま、・、 ートはハナシ・ハソウだけを愛していたのでユネインに永住したのかといえば、そうではない。かれらは今まで はないのだ、と、彼は考えた。・ハ ートはこの惑星ーー・タュネイン全の功労に対して与えられる連邦直属市民の特権を活かすため、でな 体を愛していたのであり、そのタュネインの象徴として、ハナシ・ハ ければ連邦機構内の名誉はあるが権限も重要度もすくない閑職を得 ソウに執着していたのである。 て、地球かその近傍の発達した惑星へと引揚げて行くのがつねであ 「ここは、司政官の任地としては、終着駅といってもいいんだろうった。それは、一度司政官をつとめた惑星の住人として、他人がロ な」 ポット官僚をあやつり統治するのに服するということに耐えられな 白髪の目立っ・′ 、ートは、引き継ぎのとぎ、静かにいったものだ・ かったのか : : : また、他の雑然とした活気にみちた世界を知ってい るがゆえに、一見ュートビアのようなこの惑星で生涯を終えるのが 「ここでは、何もかもが平和すぎる。先住種族の遺跡のたたずまい を含めてね。最初はこちらも、他の惑星で司政官稼業をつとめて来退屈に思えたのか : : : さらに、あまりにもおだやかで美しいタュネ た余勢を駆って、ここでも業績をあげようという気だったが : : : そインにとどまることで何かの幻減をおぼえるよりは、記憶を記憶の んなものは、いつの間にか失せてしまった。とにかく、ここでの 1 ままとして残しておこうとしたのか : : : いずれにせよ、一市民とし 題といえば、ときたまおこる幽霊騒ぎぐらいのもので、司政官としての残留は選ばなかったのである。・ハートにしても、永住を考えな ては、こんなに楽なところはない。その安楽のうちに、いっしか同かったわけではないようだが、結局は、夫人 ( ・ハ ートは無期限契約 化してしまうんだな。その結果、またもや新しい惑星へと赴くの異性を持つ「数すくない司政官のひとりなのだ ) とともに去って行
徐に降下してくるのを知った。まばゆい光は背後に尾をひいている・植物の区別がなく、それらがまじりあって一体となっていた。球 のではなく、垂直に下へむかって吐き出されているのだった。その状の生命単位が、いまだ意志伝達の手段はもたないながらも本能に ことはそれが人工的に制御されていることをーーそして、それ以みちびかれ、すでに群をなして集団生活をおこなっていた。けれど 外には考えられないことをーー意味していた。あれはロケットなも、こういった既知の惑星のうちで、もし知的な生物が存在しうる のだ ! としたら、この第四の惑星にもっともその可能性があった。だがか リンはその衝撃にすっかり動転し、その間隙をついて、自分の祖りに、なんらかの奇跡があって、あのロケットが第三の星からやっ 先たちが舞いもどってきたのではないかとか、どこかの未知の亡命てきたものだとしたらどうであろうか。そのときはかれは希望をす 者か、〈大いなる守護者たち〉かが直接自分をたずねてきたのではてることにした。その惑星の、小山のような生物の同胞相食む残虐 ないかといった気ちがいじみた考えがその心にしのび込んだ。だ性は、どの巻物の線刻の絵を見てもあまりにあきらかだったからだ が、本質的には厳密に論理的にできていたかれは、そうした考えをつた。かれはなかば恐れ、なかば期待で胸をいつばいにしながら宇 ひとつひとっ否定していった。あのロケットが不毛な月世界のもの宙船が近くのどこかに着陸するのを聞き、尾をしつかと背中にまる であるはずがない。とすればあれは、、 しま自分の住む世界の奥ふかめこみながら、そちらにむかって進みはじめた。 くにあるという伝説の星からやってきたのか、あるいは、太陽のま 宇宙船のひらかれた気閘の外側に立っているふたつの生きものを わりをべつの軌道をえがいてまわる他の惑星からやってきたのにち見たとき、リンは自分の予想がまちがっていたことを知った。かれ がいない。では、そういった星には知的な生物が存在していたといらはかれよりも大柄でがっしりした体つきをしていたけれども、か うのだろうか ? れのように二本脚で立ち、つまりはかれらが第三の惑星からやって かれの心はかってかれが読んだいろいろな記録の記億をよびもどきたことを示していた。リンはかれらが周囲を見まわし、あきらか そうとしていた。それらはこの隠れ家が建設されるずっと以前、かにうれしそうに空気を吸いこむのを見まもり、ためらった。すると れの先祖たちが宇宙を横切ってそうした星々へ旅行したときに書かそのとき、そのうちのひとりがもうひとりに話しかけ、新たな衝撃 れたものだった。引力差が大きすぎたため、かれらはそれらを植民でリンの心を動揺させた。 地化することはできなかったが、その観察は詳細にわたっていた。 発声と抑揚はいかにも知的だったが、音はまるで無意味な雑音に 二番目の惑星には水棲の全身をウロコでおおわれた生物と、わずかすぎなかった。あれが会話だというのだろうか ! かもしれない、こ ばかりの乾いた陸地にはえる奇妙な針葉植物しか存在しなかった。 とばはそれぞれなんの意味ももっていないけれども。が、待てよー かれの住む星の主星には巨大な生物が地上を支配し、うっそうたるー古い記録にある。瞋想家のスルハがそんな考えかたもあるといっ 植物が大地をおおっていた。しかし、四番目の星にはより身近かなていたではないか。月世界人がまだなんの意志伝達の手段ももたな 9 感じの生物が住んでいて、かれ自身の種族の原始形態のように、動かったころ、必要にせまられて音声を発明し、それらに適当な意味
いた天体の変を実際にやってみせそのまま本人に送り返したという・ トマスは叫び立てた。「ここの連中を指導するのは、あんたのよ ド ようと計画しただけで、その両方の その後、べリコフスキーの予測の うなろくでなしではない ! あんたには、連邦よりも、ここのぬく 職から追われ、その後一度も天文学当っていることがわかったものとし ぬくとした生活のほうがだいじなんだ ! 」 者としての職に返り咲くことが出来ては、太陽の電荷、金星の変則自転、 なかった、という , ・しかし、べリ 火星上の多くのクレーター、などが 遺跡に集まっていた人々は、茫然として事の成りゆきを見守って コフスキーの学説はそれほど見当違るという。また月の岩にも弱い磁気 いで悪質なものだったのだろうか ? がみとめられること、それに月にも とグラスゴウ大学のハンタリアン博地震ーーーいわゆる「月震」があるこ 「降りたまえ、トマス。私は巡察官だ ! 」 物館の副饉長ューアン・マッキー博とが、米国のアポロ宇宙船の月着陸 サミエルが呼ばわった、そのときである。 によってたしかめられたという。 士が疑問を投げかけている。 ヘリコフスキー 最近彼によれば、・ 凹 マッキー博士は、これら予測の当 人々が、どよめいたのだ。 の学説は、当時としては全く常識は っていたものばかりを指摘するだけ その声にまじって、トマスの悲鳴が聞こえた。 ずれで当時の見解とは全く真っ向か でなく、当っていないように思われ 「何だ ! これは : : こんなはずはない。こんなことは、あるはず ら対立するものであったが、それ以るものもかなりあると述べている。 後の天文学や物理学上の発見や研究 例えば、べリコフスキーの説で によって、彼の説の正しさが証明さ は、シ・ヘリアのマンモスは、紀元前 同時にカゼタは、いつもの、あのあたたかい安息感をお・ほえたの 八世紀と十五世紀の大激変の時死滅 れたものがかなりある、と言う。 たとえば、物理学者の・ ーグしたことになっているが現在残って である。 マンと天文学者の・モッツは「サ いる遺物の炭素を用いての時代決 影だ。 イエンス」誌に寄せた手紙の中で、そ定では、その説を支持する証拠は何 の本の発行後に発見された太陽系に 一つなく、マンモスの死滅は、もっ あのうす緑色の影が、遺跡のそこかしこ、何百となくあらわれて一 とずっと以前に起ったことを示して 関する三つの新事実ーー地球のずつ いるのだ。カゼタにとっては奇妙に懐しいその影は、だが、人々に いるという。しかし、当っているこ と外側まで拡がっている磁気層、木 とのわかった事柄の方が遙かに多い 星から放出されている電気的騒音、 はぞっとするほどおそろしいものらしく、集まっていた老若男女 金星の表面の予想外な高温・ーー・がべ のは事実だ。べリコフスキーの学説 は、地に突っ伏したり泣きながら走りだしたりしているのだった。 リコフスキョのすでに予測したもの は、たとえそれが今日の科学者たち にとって「どんなに味がよくなさそ であったことを述べ、彼の説が客観 そして、トマス。 うに見えようとも」それをもう一度 冖的に再検討される必要のあることを トマスにもそれは、恐怖そのものに映るらしい。トマスはスピー 慎重に再検討するべきだ。 指摘している。これに対して、べリ コフスキーは直ちに、その後自分の 火星や金星や木星などが、紀元前 カーも銃も捨て、両腕をだらりと垂らして、絶叫していた。 予測のあたった事柄はそれだけでは何千年というごく近い過去に、地球 「違う ! 違う ! 私にこんなものが見えるわけは : : : やめてく 叫 なく、他にも沢山あることを書いた に大接近して、今も各地に、伝説や れ ! こっちへ来ないでくれ ! 」 。手紙を同誌編集長に送ったが、当時神話として残る大激変を起したとい の編集者のフィリップ・アベルソン うことが、本当なのだろうか ? : けれども、 , カゼタは、その影の大群がゆっくりただよいながら、 は、この手紙を一度も目を通さずに ( 近代宇宙旅行協会提供 ) 石の上のトマスへと集まって行くのを認めた。 世界みすてり・とびつく ( -- = = ・ = - 、を 「助けてくれ ! 来るな ! 来るな ! 」 229
新企画 日本 S F 集大成 三月刊行′ト松左京 星新一 ハヤカワ JA 文庫 / 果しなき流れの果に 夢魔の標的 光瀬龍 / たそがれに還る 豊田有恒 / モンゴルの残光 眉村卓 / 幻影の構成 新刊予定光瀬龍山野浩一 \ 320 \ 240 Y 280 270 Y270 平井和正 毎月一点刊行 A6 版 ( 文庫サイズ ) 大好評発売中 冒険とロマンの S F が続々登場 ! 只旡干リ 86 点 ハヤカ S F 文庫 最新刊 放浪惑星骸骨の洞窟 シ・・ヨ - ーンス、 Y240 ・愉快な仲間のゾル人達と宇宙探険の旅に出た、機械人間ジェイムスン教授の活躍 ! ウノレフ 狼よ、故郷を見よ 平井和正 Y 230 CIA からの絶望的な逃避行をつつける御存知大神明。待望のウノレフガ、イ別巻 2 ! 輝く星々のかなたへ ! ノ、ミノレトン Y 240 く物質生成の場 > はどこに ? フューチャーメンは銀河の中心、めざし飛び立った ! 石少の惑星 2 Y250 敵の総攻撃から辛くも砂漠に逃れたボウルとジェシカの運命は ! ? 傑作巨篇第二巻 〔 4 月刊行作品〕 幽霊宇宙船 ( 版題 ) ノーートン 銀河の時空を抜けて ( 仮題 ) 砂の惑星 3 タ・一 - ノレトン & - マ・一一ノレ ト A 6 判 ( 文庫サイズ ) カラーロ絵・挿絵つき
ら、おそらくは過去の栄光の回復も夢ではない。そして、かっては座席におさえつけられて、ちょっと苦しそうな息をついた。やがて 0 6 かれはゆっくりと体をもとにもどすとまっすぐ前方を見、ついに肩 月世界人の高度な科学技術にもかかわらず長いこと見すてられてい た、けれどもいまでは単なる原始林の代りにさまざまな生命や知性をすくめてスリムをふり返った。 を宿しているにちがいない他の惑星への航路も再開されることだろ「よかろう、あんたの勝だ。あのおサルさんは永久に自由の身、お う。たぶん、時間をかけ、過去の知識を総動員してその惑星から採れのロは永遠に糊づけされたままさ。満足したかい ? 」 掘してきた資源をもってするなら、リンの子孫をしてかれらの世「ああ」スリムは満足した以上だった。かれにとってもそれは未来 への前兆であり、理想主義かならずしも愚劣ならざるべき保証であ 界を、かってかれらの祖先が絶望と夜の黒い翼にとらわれる以前に るかのようだった。いまファッツの心からそれらが消減しようとし 夢見ていた古代の栄光へとみちびかせることも可能だろう。 ロケットは、リンの見まもるなかを、そのむかし、翼竜たちが月ているように、偏見の暗黒の翼と他者への傲慢がいつの日か地球帝 の空をみたしていたころ、太古の濃霧のなかから無気味な羽音だけ国の全土から消えてなくなるときがくるかもしれない。おそらくそ をはばたかせていた影のように、黒くシルエットだけを見せて青いれは、かれが生きているあいだにはやってこないだろう。けれど 標識灯を明減させながら、まっすぐ頭上を上昇していた。あの翼竜も、いっかはやってこなければならない。そして、知性が、種族で の黒い翼は、リンが天蓋をあけてやるとなんの苦もなくそこをすりはなく知性が、世界を支配するのだ。 ぬけ、さっそうとして飛びすさっていったあの漆里の翼は、たぶ「満足したよ、じゅうぶんにな、ファッツ」かれはいった。「しか ん、なにかの前兆なのだ。それがはたして吉兆なのカ、それとも凶し、自分が後退しすぎたんじゃないかなんてことはあんまり心配す 兆なのか、それはリンにもようとして見きわめがたかったけれどるなよ。おれたちはリンから教わった新しい原理で使いきれないほ どの金を儲けられるかもしれないんだからな。おれはもう一ダース かれは銅をはこんで苗床のところへもどった。 船上ではファッツがしきりとモジモジしながら首をひねっているほどの利用法を考え出しているんだ。わけ前が手に入ったらなにを のを見つめて、スリムがいかにも愉快そうな表情をうかべていた。するつもりだい ? 」 ファッツはニャリとした。「大・ハ力者になろう。あんたが例の活 「どうだい、なかなかいいやつだったじゃないかね ? もしかした 動を再開し、火星野郎やエテ公にキスして歩くのを手伝うよ。われ ら地球人なみに ? 」 「ああ。わかったよ、やつのほうが優秀だ。今後あんたのいうことらが貧相なおサルさん、いまごろなに考えてるか知らんけれどね」 リンはそのときはもうなにも考えていなかった。ファッツは思考 はなんでもみとめることにするよ。あいつはおれみたいにいいやっ だったーーひょっとしたらやつのほうがいいやつだったかもしれにふくまれていた不可解な謎を解くのに成功し、結果がどう出るか はわかっていたからだった。いまかれは硫化銅をつくりながら、夜 ん。これで満足したかい ? 」 のあったあたりから黎明のうかびあがってくるのをながめていた。 「いいや」鉄は熱いうちに打てだ。スリムは追い打ちをかけた。 夜明けには、どんな夜明けにもどこかしら美しいところがあるもの 「例の放射性物質についてはどうする ? 」 ファッツはロケットの出力を増し、急激に上昇した加速度に体をだけれども、とりわけ今日のはリンの目に美しかった。