ナチ陣営のキャップ みならず、近ル = ンは、黒人を逃がし、キャプテン・アメリカと、戦一 年の、アメリ う。その最中に、キャップのマスクが外れる。あらわれた掲 力のコミックのは、やはり、間違いなく、スティープの顔ではないか ・・フ、ツク界にでは、キャプは、発狂したのか : : : そのとき、ファルコン おける、最もは、後頭部にショックを覚え、意識を失う。そして、再び 、興味のある大息をふきかえしたとき、目の前に見たのは、立っているふ 事件だと、私たりの男ーーーキャプテン・アメリカと、死んだはずの・ハッ は、思ってい キーの姿ではないか。 る。 楯を手に、仁王立ちのキャップは、信じられないという 4 もうひ表情で、倒れているファルコンに向って叫ぶ。「ほんもの とりのキの、キャプテン・アメリカと、・ ( ッキーが、帰ってきたの ャ。フテン だ。だれも、われわれを、とめることは、できないぞ ! 」 ・アメリ これが、コミック・ブック「キャプテン・アメリカ」一 カ 五三号の、最終ページの画面である。そして、次のよう な、ただし書きが、つけ加えられているーー「読者諸君、 ある日、キャップの黒人のパートナー、ファルコンが、 わが家のある = = ーヨークの ( ーレムに戻ってみると、様われわれは、諸君に次のことを誓う。⑧これは、夢ではな 仮定の空想物語でもない、⑥ふこ い、⑤幻覚でもない、④ 子がおかしい。ガール・フレンドは、彼をにらみつける。 これは、すべ どうしたのか。「あんたたち英雄って、いったいなんなのりは、アンドロイドでもロポットでもない。 プラザー て、ほんとうのことなのだ ! 読者諸君、これこそ、マー さ。きのうは、ここにやってきて、仲間を、いきなりなぐ ベルの最高傑作、おどろくべき物語の、ほんのはじまりな りつけるし : : : 」「英雄 ? だれのことかな ? 」「あんた、 なにとばけてるのさ。あたしや、キャプテン・アメリカののである ! 以下次号 ! 」 こういわれれば、いやでも、次号を読みたくなる。私 ことを、言ってるんだよ ! 」「なんだって ? 」 キャツ。フが理由もなく黒人を、なぐる ? まさか。このは、待った。そして、驚くべき真相を、知ったのだった・ 女は、どうかしているー、ーとまどいながら、 ( ーレムの上第一五五号において、私の知っているキャプテン・アメリ を、スウイングして渡っていくファルコンは、だが、街の力は、もうひとりのキャプテン・アメリカと・ハッキー少年 すみで、意外な光景を見てしまう。キャプテン・アメリカのコンビによって、捕ってしまう。ファルコンもいっしょ が、黒人の男を、うちのめしているのだ。「まちがいなだ。「諸君、気がついたかね」縛られているキャップとフ く、あれは、キャップだ。だが、へんだな。スティ】ブ・ アルコンたちを前にして、もうひとりのキャップが言う・ ロジャースま、、 、ま、外国に出ているはずだが : : : 」フア「諸君に死んで貰うまえに、私がいったい何者なのか、ど
っては、かなり自然なものにみえるようになっている。そ そうかと思うと、「世界ボルノ論争」という映画では、 のつけに、マイア、、 れは、考えてみれば、かなり白痴的なイメージなのたが、 ・ビーチの青空を背にひるがえる星条 それは、たいていの、軽い、気のおけないものには、マッ旗がうつるので、、つこ しオい、なにごとがはじまるのかと、 チしてしまう。星条旗は、ハン・ ハーガー販売会社のマーク身がまえる気に、ちょっとだけなるのだが、これが、まっ うつ に転化されていて似つかわしいし、ジーンズの腰に、ビー たく意味がなく、たた、なんとなく絵になるので撮しただ スマークといっしょにあしらってもかまわない。 けだということが、すぐわかる。まあ、しいていえば、星 映画を見ていると、星条旗は、 いかにも気楽に登場す条旗がひらひらしていれば、ああ、あの旗をいたたいてい る。ノーマン・ジェイスン監督の、「アメリカ上陸作戦」る国では、若者が、ジーンズ姿で、なんだか知らんが、走 と、一種の混 のタイトルには、星条旗模様が、うまくアニメ化されてい りまわって、おかしく騒いでいるらしい たし、アニメーション映画となれば、「スヌービーとチャ 乱の象徴の意味を、持つのかもしれない。 ー」のなかで、スヌービーがかける「星条旗よ永遠そんな気で、星条旗をみていると、たとえば、サム・ペ ーの「ゲッタウェイ」のなかで、出獄したスティ に」のレコードにあわせて、星条旗の星と縞が、花火のなキンハ マックグロウがむかえに かを、自由に踊っていた。アメリカの国旗デザインは、お・フ・マッキーンが、女房のアリ・ 祭り騒ぎの演出にも、もってこいなのだ。 くるのを待ちながら、もたれかかっているポールの上でひ らめいているの も、星条旗だっ だが、最近の 映画で、いちば ん気にいったの は、マンガ映画 「フリツツ・ザ キャット 」の なかの星条旗だ った。最初、フ リツツの放火に みよって燃えるニ ューヨーク大学に の屋上にも、星一 これが「キャプテン・アメリカ」第 1 号だ ( ヒトラーをなぐるキャップ ) ( い アシュラの如き大活躍 ( 下 ) *&APTrAlN E 用 こ 0
ヒドラへ突進 ! 0 第を ・ヒーロー ) によって、再び海中に投げこまれ、それ 〈再生作戦〉を敢行したの であり、そのなかには、キを、英雄集団アベンジャーズの潜航艇に発見されたのだっ ャプテン・アメリカも、含た。 まれていたのだった。 かくして、キャプテン・アメリカは、一九六四年「アベ その作戦は、実に見事なンジャーズ」第四号のなかで、復活した。第二次大戦当時 ものだった。はじめに書いそのままの若い肉体と能力を持って。 ( 従って、戦後の、 たように、スティー・フ・ロ学校教師としての、また、コミュニストに対する闘士とし ジャースは一九一七年生まてのキャプテン・アメリカについては、スタン・リーは、 れだから、彼が、一九六〇それは、なかったことにしてしまったわけだ ) 年代に登場すれば、四〇代では、この場合のキャップにおける、マーベル的な悩み のなかばということになを付与された性格とは、なにか。それは、彼が齢をとらな る。中年のヒーローだ。こ いで、二〇年の仮死状態の後に復活した事実そのものに、 いつは、ぐあいがわるい 存在している。彼は、第二次大戦当時の人間兵器、アメリ そこで、キャプテン・アメ 力を肩に背負った超愛国者として、一九六四年に、目ざめ リカま、・、ツ キーと共に、 たのだ。だが、二〇年のあいだに、アメリカの状況は、変 一九四五年、第二次大戦のっている。あれほど彼に生気を与えた戦争も、あるにはあ さなかに、号の発射をつた。しかし、ヴ = トナム戦争は、彼が、アメリカを単純 くいとめようとして、ロケ に正義と信じて戦った二〇年前の戦争とは、すっかり様相 ット機にとびのったまま、 違 0 ていた。「二〇年の空白の後、おれは、自分を、 大西洋に落下し、そのまままの世の中に、適合させていけるだろうか ? 」ーー・生きて 行方不明になっていた、と いる過去の亡霊、浦島太郎となったキャップにとって、こ いうことにしてしまった。 の不安は、いつも、彼の頭から去らない。 ( 実は、もうひ それからどうなったのか。 キーの生死 。くッキー少年のことだ 2 ・ハッ とっ悩みがある / キャップは、仮死状態となは不明だが、彼のことについては、キャップは責任を感 って氷山のなかにとじこじ、いつも、自責の念にかられている。「あの子を死なせ められ、いわば冷凍人間と たのは、おれのせいなんだ」 ) キャップは、その後、再会したナチ時代以来の宿敵レッ して、齢をとらずに漂流していたのだ。一時は、氷づめの ド・スカルと何度も戦ってぎたし、ヴェトナムにも飛んで 神としてエスキモーにあがめられたこともあるが、通りか かったサプ・マリナー ( アトランティスの王子、海のスー いる。身柄については、超スパイ組織シールドのニック・ 田 2-
戦時中は , キャップの女性版「ミス・アメリカ」 まで登場 ! ( 上 ) キャプテン・アメリカの訓練 ( 下 ) のだ。戦争あってのキャプテン・アメリカなのだった。戦で、力強いものにしていたのであった ) 時中の、アメリカ国民のマス・ヒステリーに支えられ、彼戦争が終ると、当然、キャプテン・アメリカは、生彩を は、ドイツ軍の、日本のス。 ( イたち、当時のことばでいえ失うことになる。人気は、急激に下り坂となる。一九四一 さくれつ ば〈ジャパⅡナチ〉を相手に戦った。ストーリーは、メチ年の創刊第一号の表紙で、ヒトラーの顔にパンチを炸裂さ せていたキャップ ( これが彼の愛称 ヤクチャであった。要するに、少しで も多く、敵をやつつければよかったの だ ) は、一九四九年に、敵を失っ て、消えていった。 ど。 ( あるストーリー のなかでは、実 一九五〇年代、朝鮮戦争ととも に、一撃で、百万人の日本兵を殺して に、キャップは、再び登場する。ス いかにデタラ いるくらいなのだから、 ティープ・ロジャ 1 スは、なんと、 メなマンガであるか、わかるだろう。 ・、・、ツキーは、その生 学校の教師て / しかし、ジャック・カービイは、この 】 ( ~ 参 - ~ 徒になっている。マッカーシー旋風 見事な俗悪きわまるコミックスを、な と赤狩りの時代であり、今度の敵 りふりかまわぬアクション描写と、な は、共産主義者だ。彼は、インディ によりも、テンボの早いス・ヒード感 アンを狩るように、〈赤〉のやつら コミー・スマッシャ を打ちのめす Commie ・ Smasher と なったが、ほんの短期間の復活にす ぎなかった。 そして、一九六〇年代にはいる。 マーベル・コミックスのスタン リーは、「ファンタスティック・フ オー」と「スパイダーマン」を中心 に、コミック・ブック界のス 1 パ ・ヒーロー地図を、すっかり塗りか えてしまう。彼は、現代的な悩み、 ハンディキャップをもった、傷だら , けのヒーローとして、超能力者を再 8 生させはじめる。スタン・リーは、 いわば、コミックスにおける英雄の
現在のキャップ ( 上 ) 新生キャプテン・アメリカ ( ジム・ステラン コ画 ) ( 下 ) うして、こんなことになったのか、話しておこう。いや、年、「キャプテン・アメリカと ' ( ッキーが、ロケット機と 是非、知っておいてもらわなくてはならぬ」こうして彼共に、行方不明 ! 」というニュースをきいたときは、目の まえが、まっくらになった。それからも私は、彼のことが は、以下の話を、はじめたのだった。 忘れられず、びたすら、彼の 生涯について、研究をつづ もうおわかりと思うが、私は、一九五〇年 け、ついに、一九五二年、大 代のキャプテン・アメリカ、もうひとりの、 学を卒業したとき、その卒業 キャプテン・アメリカなのだ。いや、驚くの 論文のテーマは「キャプテン は無理もないが、まあ聞け、キャプテン・ア ・アメリカ」だった。 メリカが、一九四一年に、はじめて出現した だが、それでもなお、私は とき、私は、十一歳の少年だった。私は、彼、第 4 にすっかりあこがれて、キャップのファン・ 丁。 ) 〔 ( 調不満だ 0 た。も 0 と、彼のこ とを知りたい。そして、とう クラブにもはいり、彼についての新聞記事は一 とう、当時の敵国であったナ 、残らず読んだも 0 だ。だから、一九四五ぞ " 一、、、 ) 一《 チス側の資料を調べようとし て、私は、一九五三年、ドイ ツへ飛んだ。そこで、私は、 《、 ) 大発見をした。一九四一年当 時のナチス秘密情報部の書類 一つ、・ 00 ( を創るた 00 化学薬品 0 合成 法が、記されていたではない か。これこそ、キャプテン・ アアメリカを生んだ化学式であ り、ナチのスパイは、この秘 密を盗み、報告するまえに、 殺され、この書類は、すっか り忘れ去られていたのだ。 この薬品を、化学式に従っ て再合成すれば、私でも、キ 0
ヒドラと戦うキャプテン・アメリカ フューリイがひきうけていて、キャップは、シールドと共ってい に、世界征服をめざす陰謀団ヒドラ党と対決する。相棒た。 は、少年ではなく、アフリカの王子、ファルコンだ。あの ( 実際、 キャ。フテン・アメリカが、いまでは、黒人のヒーローと、 マンガ チームを組んでいるのである ! のキャ ップも、 スタン・リーによる英雄再生作戦の成果のなかでも、こ のキャ。フテン・アメリカは、特にすばらしいと思う。あれあんな ほど、自信にあふれて、ジャパナチと戦った彼が、いま では、なにがいったい、アメリカのためになることなのでとば か、迷いつづけているのだ。赤と青と白の、星条旗のコスてい チ = ームは、もはや、皮肉な効果しかない。彼は、二〇年たの 前の、自分自身のパロディを、演じていることになる。 だ ) そ 〈第二次世界大戦の生きた伝説〉として再生した彼は、そして、 の存在自体が、いまとなっては、矛盾となってしまった。映画の 一九六九年の「キャプテン・アメリカ」一一三号のなか なかの で、彼は、ひとりニ、ーヨークの街を歩きながら、つぶや〈キャ くーーー「おれは、クロマニョン人が登場した時代に生き残・フテン った恐竜みたいなものだ。自分の時代をはみだして生きす・アメ ぎちまった時代錯誤の標本さ。いまは、アンチ・ヒーロー リカ〉 の時代だ。反抗はカッコよく、体制をまもるのは、はやらは、銃 なくなっちまった。だが、おれはまだ、この現代というや弾を受 つの新しいルールには、なじめていないんだ。長いこと、けて、 星条旗と、法と秩序のために戦ってきたのだからな。 爆死す いかん、どうもおれは、近頃、戦わないで、考えてばかりるのだ。 いる」 マ 1 ベルの、新生キャプテン・アメリカも、自分にとっ 新しいアメリカを求めて旅する若者を描いた映画「イー てのアメリカを求める、いわば、イージ ー・ライダー的性 ジーライダー」は、この頃に、公開されたのであった。そ格が、与えられている。そして、彼は、ついに、昨年、 して、ビーター ・フォンダの演ずる主人公は、キャプテン ( おそらく ) その生涯における最大の敵と、対決すること ・アメリカと呼ばれ、星条旗をあしらったオート・ ( イに乗になったのだった。それは、ひとり、キャップにとっての ー掲 3 ~
日本電と戦うキャップ ( 上 ) 戦時のキャップとバッキー ( 下 ) D\tADTAl N 0 ことである。 われわれは、きみに、新しい肉体を、いや、きみのからだ だが、この愛国的な青年のことは、軍から忘れられたわを、生まれかわったように、してあげよう」そして、将軍 が見守るなかで、博士は、スティー・フに、薬品を、注射し けではなかった。欧州状勢は悪化し、ルーズベルトはチャ ーチルと秘密会談をもち、マンハッタン計画を指令し、さたのだった。四週間にわたる特殊医療をうけ、彼の肉体 らに、対ナチス用の、極秘計画をたてた。そのひとつ「再は、変貌していく。手足の骨格には、ステンレス鋼がうめ 生作戦」は、戦争で消耗した兵士の肉体を、化学的に再生こまれ、強化食品を与えられ、筋肉をきたえる訓練が続け させる研究で、生化学のラインシュタイン博士が担当しられた。スティ 1 ・フ・ロジャースの肉体構造は、生化学的 た。そして、博士は、化学薬品の合成に成功したが、実験に、変えられたのである。 してみなくては、ならない。は、そのとき、貧弱な再生作戦は、成功した。「わが国の兵士に、みな、この 肉体をもったスティー・フ・ロジャースを、リストのなかに 、 ~ 化学的改造をほどこし、』トラーに、目にものみせてや ろう。ところで博士、その新薬品の合成法は、書類にして 選んでいた。 「きみは、生まれ変ってみたくはないか ? 」によっおいていただけますか ? 」アンダースン将軍がいうと、博 士は答えた「いや、私の頭のなかだけの秘密にしておいた て、秘密研究所に連れてこられたスティー・フに、将軍がい った。「もちろん、ぼくのこのお粗末なからだが、もっとほうが、安全だ。だが、もっと一度に大量の人体改造が出 大きく、強く、たくましく、お国のために役だてるように来るよう、この研究設備を拡大して、早く、全兵士の改造 なるのでしたら、どんなにうれしいことか」「よろしい が進むようにしたい」 とたんに銃声がひびき、 博士が、血に染って倒れ る。研究所に、ナチのス。ハ イが潜入していたのだ。改 造人間スティープのはたら きで、スパイも倒されるけ 第第れども、薬品合成の秘密 は、ついに、だれにもわか らなくなってしまう。つま り、〈再生作戦〉によって 生まれた改造兵士は、ステ イ 1 プ・ロジャースただひ 7 とりとなってしまったの 0
キャプテン・アメリカの戦い ャプテン え、コネチカットで学校教師となった。学校で、私は、キ ・アメリ . ャプテン・アメリカの昔の物語を夢中になって読みふけっ 8 力になれている少年を見つけた。なにしろ、自分のことを、・ハッ る ! 私ーと呼んでいるほどの〈キャップ狂〉で、すぐ親しくな は、そのり、私は、自分のしてきたことを、すっかり彼に、うちあ 書類を持けた。政府の計画は、中止になったけれど、もう、ふたり って、ワ は、がまんが出来ず、キャプテン・アメリカと・ハッキーの シントン コスチュ 1 ムを作り、薬品を合成して注射した。こうし に向い て、新しい、しかし、外見は、まったくむかし通りの、愛 政府高官国の英雄チームがよみがえったのさ。 に面会し われわれは、自由アメリカをおびやかす共産主義者撲減 た。「きのため、中国やロシアのスパイどもと戦い続けた。だが、 みは、お次第にわれわれには、純粋なアメリカ人以外は、すべてア 国のため力だということがわかってきて 、ハーレムの黒人どもも一 に、たいへんな貢献をすることになるそ」と彼は言った。掃しなければならんと感じはじめたのだ。この考えは、世 「朝鮮戦争が続いている現在、この薬品によって、スーパ 間一般より、ちょっと進んでいたのだが、政府はそうは思 1 兵士を創れば : : : 」「その、新しいキャプテン・アメリ わなかった。「あのふたりの行動は、過激すぎる。かって 力には、私を、ならせてください。その条件で、この薬品は祖国を護る英雄だが、いまでは、気違いだ」ワシントン の秘密をお渡しします」結局、私の要求は通り、計画は進の連中は、われわれふたりを捕え、べータ光線をあて、仮 められた。私は、少年時代のあこがれであったキャップそ死状態にしたわれわれを、世間の目から隠してしまった。 のものの再来と思われるようにしようと考え、まず、整形もちろん、こうしたことは、すべて後になって知ったの 手術を受け、顔つきも、体形も、そして声の質も、スティ だが、われわれは、ずっと仮死状態のまま、一九七二年に 1 ・フ・ロジャースと同じになった。アメリカ国民に、キャ なった。この年は、アメリカ人にとってショッキングな事 プテン・アメリカは、不死身なのだと示したかったのだ。件が続いたが、最大の異変はニクソンの中国訪問だった。 そう、彼は、決して死んではならない。さて、いよいよ薬ある政府筋の男は、「これじゃ、アメリカじゅうがアカに 品を注射するばかりとなった一九五三年七月二七日、新聞支配されちまう。なんとかしなくちゃならん」とびつくり は、朝鮮戦争の終結を告げていたではないかー し、われわれのことを思い出した。「そうだ、祖国の危機 〈ス 1 1 兵士作戦〉は、中止となり、私は失意のまま、 を救うため、あのふたりを目覚めさせよう」彼は秘密の医 それでも、記念のためスティ 1 プ・ロジャースと名を変療室に忍びこみ、仮死状態のわれわれを復活させたのだ。
1tHE 9WORLD , 。 OF S)@ 、 00M ・ 10S 、 あの男が、あのようになったのは、彼が、私を崇拝 いまこそ、アメリカを、アカや黒人どもの謀略から護ら ねばならぬ。私は、使命の重大さにふるえながらも、歓喜し、私にあこがれていたからだ。彼は、私の内なる悪なの だ。だから、なんとしても、これは、私が始末をつけなく して 、・ハッキーと共にたちあがった。だが、私は知った。 すでに、キャプテン・アメリカと名乗る男がいて、しかてはならん」公園は、警官隊にとりまかれているが、彼 、う。「みんな、手を出すな。こいつは私の戦いだ。 も、恥知らずにも、黒人をパートナーとして、英雄かぜをは、し ふかしていることを ! つまり、きさまたちふたりのこと私と同じ夢を持ち、別の道へ、ずれてしまった男、もうひ ・こ ! きさまは、たしかにキャプテン・アメリカのコスチとりの私自身との戦いなのだ。彼は、私を真似ようとし ュ 1 ムはつけているが、売国奴の裏切り者だ。許せぬ ! た。私がいなければ、彼は、あり得なかったのだ。私は それで、われわれは、諸君を捕えたのだ。きさまのいまや彼について、責任がある。しかも、この戦いは、私のこれ っていることを知ったら、あの、第二次大戦中のヒーロまでの生涯で、最もきびしい戦いとなるだろう」 いまは亡きキャプテン・アメリカは、地下で、泣くに かくて、キャプテン・アメリカは、もうひとりの自分、 ちがいない。これで、私の正しい立場が、分ったろう。 血走った狂気の自分との死闘の後、ついに、そいつを倒 「なるほど、そういうわけだったのか ! 」もうひとりのキ す。キャプテン・アメリカは、足もとの敵を見下ろしなが ャプテン・アメリカの説明をきいて、縛られているスティ ら、動かない。ひとり、思いに沈んでいる。このファナテ ープ・ロジャースよ、つこ。 をナ「だがな、世のなかは、すっ ィックな超愛国者の姿は、まかりまちがえば、自分自身 かり変った。おまえが考えているより、はるかに複雑にな だったかもしれないのだ。往年の私が、そのまま進めば、 っているのだそ」 ( 私は、ここまで読んできて、うむ、と うなってしまった。実に見事に考えたものではないか。私こうなったに違いないのだ : は、はじめに、スタン・リーが、一九六四年に、キャップ警官が、ファルコンが、そして恋人のシャロンが、勝利 を再生させたとき、一九五〇年代のキャップについては、者キャプテン・アメリカのまわりにかけよってくる。だ が、彼は、さびしく言う。「すまないが、ちょっとのあい なかったことにした、と書いた。だが、この新しいストー だ、私をひとりにさせてくれ」 リーによって、五〇年代のキャプテン・アメリカの存在 キャプテン・アメリカは、人びとの歓声に背を向ける ・ : なんと巧みに正当化されたことか。いや、単につじっ と、木立ちのなかに消えていった。 まを合わせたというだけではない。それ以上にキャ。フテン 私はグアム島から来たライターをカチカチ鳴らし、マー ・アメリカというキャラクターの持っている矛盾を、最大 ベル・コミックスひさびさの快作である「ふたりのキャプ 限に生かしたすばらしい物語を提供してみせたのである ) テン・アメリカ」の真相を読み終って、ほっと息をつく。 もちろん、このあと、縛られたキャ。フテン・アメリカは アメリカは変りつつある。コミックスも、マンガのヒー ファルコンと共に脱出し、もうひとりのキャ。フテン・アメ ローたちも、変りつつある。しかし、なお、私は考える。 リカ ( これを、単なるニセモノというわけには、どうして もうひとりのキャプテン・アメリカは、アメリカのなか もいかないではないか ! ) と、マイアミにある森林公園ので、なお根深いのではないかと。 なかで対決する。昔ながらの、キャツ。フは、つぶやく 世の中というものは、安もののライターから、夢想を楽掲 つめた 「私は、いまほど、背筋が冷くなる思いをしたことはなしんでいられるほど、単純ではないのですよ。
化、、町 終第ー を。 : ぐ , y 石で、そこにはたくさんの浮彫りがついていました・ この浮彫りのことはとうてい口では言いあらわせません ! どん な人間にも表現が不可能ですーーー人間の眼ではキャッチできないも のなんです、ちょうど四次元に棲むものの形を人間の眼がキャッチ できないようなものです。ただ、頭脳のうしろに局在する微妙な第 六感というようなもので、おぼろげながら、こうではないかと把握 するだけです。この浮彫りがまさにそれミ意識に映るイメージは 与えない無形態の何かなんです。ですが、心のなかへ、小さな焼き ごてのように印象づけるものはあります。憎しみの諸観念というの でしようか ? 想像もできない怪物的なもの同士のあいだの闘争と いったふうな観念です。もろもろと熱気の立った、ぞっとするよう な厭わしいジャングルの地獄というか、その烟霧のるつぼのなかの 勝利、凱歌、測りしれないほど嫌悪感をさそう野望と理想追求 ートの高 ぼくはそこに立っているうちに、ばくの眼の前五十フィ みにある祭壇のふちのうしろに、何かが潜んでいるという感じが強 くなってきました。・それが潜んでいることを、ぼくは知っていまし た。ばく・の髪の毛一本一本で、ぼくの皮膚の一インチ一インチで、 ばくはひしひしとそれを感じました。何か、かぎりなく邪悪な、か ぎりなく恐ろしい、かぎりなく古いものです。それは、じっと隠 れ、考えにふけりながら、ばくを見ている 9 それは脅かしているー ーそれは、しかもそれは眼には見えないものであるー ・ほくのうしろに、青い光輪がでていました。何かがばくに、引返 せと命じている。階段をの・ほって、逃げろとしきりに奨めているん です。ですが逃げることは不可能でした。祭壇のかげにひそんだ、 不可視の、凝視するものへの恐柿が、まるで竜巻きのように、ばく をしめつけかかっていました。ですが、とにかくばくは光輪をとお