たくのペテンであることを、なこうの連中にしゃべるためにほかな ないがーーー押し上げる結果になった、きみたちのささやかな行為に らない。とすれば、この事件はすっかりおれの手を離れたわけだ。対してだ。だから、大声でどなるのはよしておく。ただ、きみたち 5 歴史はいまおれを裁くだろう。サイは投げられた。ル・ヒコソの渡河とはもう話もしたくないというのが本音だ。はかのみんなにしゃべ ってもらおう。 は終わづた。 文学趣味過剰だぞ、と彼は自分をとがめた。実をいうと、当面重 大なのは歴史の裁きではなく、いま現在生きていて、おそらく険悪 ドット、レッキに交代。これは大切よ。みんなに伝えて。いまか な反応を示すだろう、ある実在の人びとの裁きなのだ。しかも、彼ら、あなたがたに忘れてもらいたくないことを、一二づ知らせます。 らは、もし成功していれば存在したかもしれないものや、存在するそのほとんどの問題には文法的な解法がある。地球からほかの はずだったものでなく、現に存在するもので・おれを裁こうとするだ感星へ人びとを運ぶ間題は、スチールの切れはしを一づすづプトラ ろう。ネッハヴゼンはその裁きの冷たい予感に身ぶるいし、もう一 ンダムに組合わせても、そして、なにかの偶然でそこに当ンスティ 度大統領を呼び出そうと電話に手をのばした。しかし、大統領が、 テ三ーショソ号ができあがづたのを見出しても、解くことはできま いまもこれから先も、決して電話に出ないだろうことは、わかってせんそれを解くには、輸送の現象が発生するのに必要な状況を述 いったん文 べたキデル 7 方程式 7 方法 ) ) を作り上げること。 法的モデルができれば、そのまわりを金属で包んでやるだけで、あ コンスティテューション号 5 とはひとりでに飛び出していきます。 これが理解できたら、つぎに移りましよう。そのニ、因果性なる こちらは律儀だが頭にきてるシ土プ。そちらのメッセージはたし 原因を〃出来事〃のせいにしようとして、 かに受けとったよ。だが、その話はしたくないね。まったく、よくものは存在しない。〃 わたしたちはこれまでどれはどの時間をむだにしてきたことか ! も言えたもんだ・せ。えらくトンガラがってるじゃないか、ええ ? 優しい口がきけないんなら、いづそなにもいうなよ。ぼくたちばべたとえば、あなたば「マッチをすることによって火がづく」とい いいえ、偽です。はたしてマッチを″する かりに、ばくたちがそう。この命題は真か ? ストをつくしてるんだ、そのどこが悪い ~ ことツが〃必要〃かっ ( あるいは ) 〃十分″であるかどうかをつき っちの言いつけを後生大事に守らなかづたとしたら、それはばくた づめていくと、なにがなんだかわからなくなり、言葉の中に自分を ちがいまでははるかに多くのことを知づたからなんだ。アルフナ アレフとやらいう空々しい幻に向かって打上げられた時のばくたち見失ってしまう。実際に有用な文法には、時制がないのです。いま の命題をもっと適当な文法で言いかえてみると ( 英語の文法はもち とは、ちがうんだぜ。まったく、・ハ力にしやがづてよ 「ある物 だが、ちょっぴり礼を言いたいこともある。それは、すくなくとろん不適当だけれど、できるだけがんばってみるわ ) もばくたちをいまのところまでー・ーといっても、空間的な意味じゃ質の結合物 ( 明細記人 ) は、ある温度 ( 明細記入 ) ( それは摩擦熟
も、法人登録台帳にも記載されてはいなかった。 東の立ちまわりそうな喫茶店や酒場にも足を伸ばしてみた。 ハロー商会〈炻頁より続く〉 一体何を扱っている会社なのかさえわからない雲をつかむような 話だった。 少しも心配しなかった。 私の苦労は徒労に終ろうとしていた。 新しいギャグでも産み出そうと苦労しているのだろうぐらいに思 っていた。 私が「 ( ロー商会」を探しまわっている間、世間では、不思議な 彼女自身、東の顔を見ていると、幸せで楽しい気分になれたとい 現象がさらに進行していた。 政界、財界、法曹界、そして学界、さまざまな分野でこれまで余 とても自殺を考えている人間の顔ではなかった。 り目立たなかった人物が突然脚光を浴び、第一線に踊り出た。 「ただ一つ、ちょっと気になることがあるんです」 特に斑目孝一代議士の場合、その舞台が権力の中枢である国会だ 彼女は私の顔をじっと見つめていった。 っただけに、その鮮かな登場ぶりは大きな衝撃を人々に与えた。 「夫は死ぬ二、三日前、変なことを口走りはじめたんです」 斑目孝一は保守党の議員で、もう十年余りも代議士をつとめてい 「何と云ったんですか」 私は身を乗り出した。 彼は、財界の強力な・ ( ックアップを受け、一時は総理候補とさわ 「夫は、『「ハー会」に復讐する』と云ったのです」 がれたこともある。 「ハロー商会卩」 しかし、若くて精悍な現総理が現れると、斑目の地味な人柄はあ 私は、「ハロー商会」という名前をこれまでに聞いたことがな まり目立たなくなり、いつの間にか忘れられた存在になってしまっ とうして ( ロー商会に復讐しようとしたのだろていた。 そしてまた東は、・ 一時、彼の周囲に集まっていた議員たちも一人減り、二人減りし て、斑目派は党内でも最も小さい派閥の一つになっていた。 とこ・ろがその斑目が、突然火を噴くような演説を行ったのであ 4 る。 次の日から、私は「 ( ロー商会」の所在を確かめるためにかけず場所は衆議院予算委員会。 彼の現体制を糾弾する代表質問は、与党質問と多寡をくくってい りまわった。 しかし、「 ( ロー商会」という奇妙な名前の会社は、電話帳にた総理大臣を抑天させた。 る。 9
星虹の果ての黄金 ーフレデリック ? - ヨミーレ 訳 = 浅倉久志画三中島靖イ完こ、 存在しない星めざして自殺飛行を続げも ! を 世界中から選抜された 8 人の若者だぢは その計画の当初のねらいどおりし 驚ぐべき才能を発揮させ始めたえ・ ヒューゴー中島 : 第 = 」齶 A GO 0 AT THE STARBOW'S を 0 9
ありげなのだ。 だ。それによっておまえが祖国へ奉仕できるものなら、なんでもい 。その約東をすれば、きようにもここから出してや必。それと「おねがいします、大統領閣下。教えてください」 も、ポンプを止められたいか ? 」 大統領は唇に指をあて、それからドアに耳をあてた。だれも立聞 ネフハウゼンはかぶりを振った。否定の身ぶりではなく、絶望のきしていないのを確かめてから、彼はネフハウゼンのそばに歩みよ それだった。 って、低い声でいった。 この時代「おれが全国に通商使節を駐在させていることは知ってるだろう、 「あなたは自分の要求しているものがわかっていない。 に、ひとりの科学者になにができるというんです ? 十年前ならよネフハウゼン。連中はヒューストンにもいるし、ソールトレークに かった。いや、五年前でもよかった。まだ、われわれはなにかをエもいるし、モントリオールにさえいる。だが、そこにいるのは通商 夫できたかもしれない。わたしひとりでも、なにかができたかもしのためだけじゃない。ときにはなにかの情報を手に入れて、知らせ れない。しかし、いまではもう必要条件が存在していません。すべてくることもある。ついさっき、アナハイムから帰った男がおれに ての原子力発電所が消え去ったいまではーーーその電力に依存してい知られてくれたことを、聞きたくないか ? 」 ネフハウゼンは答えなかったが、老いでうるんだ両の眼には哀願 たすべての工場が運転を停止したいまではーー・・肥料工場が窒素を固 がこもっていた。 定できなくなり、農薬工場が製品を出荷できなくなったいまではー 「メッセージだ」大統領はささやいた。 ー飢饉で人びとが死にはじめ、疫病が流行しはじめたいまではーー」 「そんなことは知ってる。どうなんだ、ネフハウゼン ? イエスか「コンスティステューション号からの ? 」ネフハウゼンはさけん だ。「しかし、いや、そんなことは不可能です ! 月面基地もなく ノーか ? 」 なり、ゴールドストーン基地も破壊され、人工衛星もつぎつぎに墜 科学者はロごもり、彼の敵を考えぶかげに見つめた。その瞳に、 昔の鋭い眼光がもどってきた。 「大統領閣下」彼はゆっくりと口を切った。「あなたはなにかを知「無線通信じゃない」大統領はいった。「パロマー山からの報告 こいつはご多分にもれずひきちぎら っておられる。なにかが起こったんですね」 だ。それも大望遠鏡じゃない。 れていて、シュミットとかいうのを使ったらしい。どんなものか知 「そうだ」大統領は勝ち誇った声を上げた。「おまえは頭がいい。 らんが、とにかくそいつはまだ動いてる。それと、昔の思い出にと さあ言ってみろ、おれはなにを知ってる ? 」 ネフハウゼンはかぶりを振った。七十年間の精力的な人生と、十きどきそいつをのそくような、物好きな爺さんどもがまだ生きてる 年間の緩慢な死のあとでは、希望をよみがえらせることはむずかしらしい。というわけで、連中はレーザー光線のメッセージを受けと った。単純なモールス信号だ。信号の出どころは、連中によるとア 7 かった。この恐ろしい小男、この成り上がり者、この太っちょ 彼には一種の動物的な狡智がなくはないし、それにおそろしく自信ルフア・ケンタウリだそうだ。きみの若い友人たちからだよ、ネフ
ら、うきうきと青年を振り返った。ようやく、彼の相手をするゆと さずに姿を消すというのは、やはり不自然ではないだろうか ? りができたのだ。 不機嫌な表情で、タ・ハコを唇にはさむ私に、 顔が強張った。 「娘はいない」 青年がいない 青年が言った。 私はゆっくりと首をめぐらして、青年の顔を真正面から見据え彼はこそとも音をたてないで、部屋から姿を消していたのだ。 た。ドア脇の壁に背をもたせている青年は、まじろぎもしないで私私は、僅かに開いているドアを、唖然として見つめた。ついさっ きまで、その場に一人の男が存在していた、というのが嘘のように を見返した。 思えた。 私は応えた。 存在していたのだ 「どの娘のことだね ? 」 青年は唇の端を微かに曲げて、なにごとか言いかけたが、そのま油断ができないといえば、あれほど油断ができない男もいないだ ろう。なにしろ、気づかないうちに脇までやって来て、いつの間に まニャリと笑うと、うつむいた。 彼が何者であるかは見当もっかないが、今のところスコアーは同かまた姿を消しているのだから。 あるじ たが、いつまでも驚いてはいられなかった。この部屋の主は殺さ 点のようだった。お互いに牽制球を投げ、お互いに・ハットを振ろう れたばかりなのだ。無断で部屋に侵入したのを、誰かに見咎られで としなかったのだ。 彼から眼を離して、私はグルリと部屋を見廻した。とにかく、少もしたら、それこそ申し開きがたたなくなる。 いずれ、あの青年には再会する時がくる、という確信じみたもの 女がどこへ行ったのか、その手がかりだけでも掴まなければならな かった。得体の知れない青二才を絞めあげるのは、それからだってがあった。それも、そんなに先のことではなく、だ。 今はひたすら退散すべきだろう。 遅くはない。 私は後ずさりにドアに近づきながら、もう一度部屋を見廻した。 ふいに、ある記憶がきらめいた。 この部屋で生活し、そして今はもう死んでしまった女に、かって 手がかりを見つけるのに、部屋を見廻す必要などなかったのだ。 ( 日本であの香水を使える女性といったら、二千人もいないんじや情熱を傾けたことがあった、ということが私をいくらか感傷的にし ていたようだ。 ないかしら : : : ) 感傷は事実を見る眼を曇らせる、と言う。 その香りは、今、この瞬間にも、部屋に漂っているー「美しい しかし結果として、その時、私が感傷的になっていたのが幸いし 女」の顧客のなかから、あの少女を見つけだすのが、それほどむず たのだった。後も見ないでさっさと部屋を出ていったなら、まず、 かしいとは思えなかった。 私は、頬の筋肉がゆるみそうになるのをどうにか引きしめなが電話卓に置かれたメモ用紙なそに眼を止めることはなかっただろう べラン
六マイルの望遠鏡に匹敵する性能が得られました。では、つぎのス ル以上の惑星も、また主星から五億マイル以内の距離にある惑星も、 ともに存在しえない。 ライドを ここにタス通信の公電の写しを持ってきてあ カチッ。巨大な電波望遠鏡の写真は横へ流れて、それに似た る。むこうは、自分たちの望遠鏡の性能がわれわれのそれに劣るこ しかし、見るからに小さくみす・ほらしいーー・建造物の写真がとってとを認めた上で、なおかっ二十二名の専門学者が署名した声明書を 代った。 引用しているんだ。それを読んだかぎりでは、ソ連の望遠鏡がいま 「みなさん、これがソ連の望遠鏡です。直径は、われわれの望遠鏡 いったような惑星を見逃すことはおろか、わが方の宇宙飛行士が着 の約四分の一、素子の数においては、十分の一たらずしかありませ陸できるだけの大きさをもった天体を見逃すことも、まったく考え ん。報告によりますとーーこれは極秘情報ですが、わたしの聞いたられない。あなたはこの声明書のことをご存じか ? 」 ところでは、この会議で発表してさしつかえない、そうでしたね ? 「もちろんです。熟読しました」 報告によりますと、その性能はきわめて不完全であります。 「では、あなたが″アルファ日アレフ″と名づけた惑星はどこにも や、お粗末とさえいえるでしよう。 存在しない、と彼らが自信をもって断言していることも、知ってい るんだね ? 」 この二つの望遠鏡の情報収集能力を比較しますと、約百対一で、 冫し、知っています」 われわれに軍配が上がります。明りをつけてください」 「それだけじゃない。パ リ天文台とトリエステのユネスコ天体物理 ネフ ( ウゼンは、テー・フルを囲んだ一同へ順々にほほえみかけな 学センター、それにイギリス王立天文学会の公式声明、どれも、ソ がら、よどみなく説明をつづけた。 「つまり、こういうことです。もし、ソ連が『ノー』と言い、われ連の出した数字を承認し、支持している」 ネフハウゼンは快活にうなずいた。 われが『イエス』と言った場合は、『イエス』に賭けるべきです。 「おっしやるとおりです、ベルデン議員。彼らはまさしく承認しま わが電波望遠鏡は信頼できます。ソ連のそれは信頼できません」 一同はおちつかなげに椅子の上で体をずらした。ネフハウゼンがした。もし、観測結果がソ連の公表どおりであれば、当然その結論 は、月裏面のべレジネフグラードにあるソ連施設が出したものに一 彼らを説得したがっているのとおなじぐらい、彼らも彼を信じたが っているのだが、まだ自信がもてないのだ。 致する、とね。わたしは、その計算の正しさに疑いを持ってはいま せん。たた、申し上げておきたいのは、その観測が不適当な器具で 下院歳入委員会委員長のベルデン議員が、一同を代表していった。 「だれもあなたの機械の性能を疑ってはおらん。それに」と彼はつなされたものであり、そのために、ソ連の天文学者たちはまちがっ けくわえた。「われわれがいまなおその支払いによる打撃をこうむた結論に達したのだ、ということです。しかし、わたしは裏づけの っている以上、なおさらだ。しかし、ソ連はきわめて断定的な発表ない言葉でみなさんのお耳をけがしたくはありませんー議員がまた をした。それによれば、アルフア・ケンタウリには、直径一千マイもやロを開こうとするのを見て、彼は急いでつけたした。「そこ
るんですから。それを突き抜けてこそ、われわれはわれわれ自身を勝手な願いをかなえてやる気はないのを知ったんです」と、《黄泉 越え、地球や星々を越え、時間と空間を越えて、《神秘》に到達すの国の女王》は叫ぶ。その声のなかに、悲鳴に似たものを聞きつけ ることができるんです」 たと思ったのは、錯覚だろうか ? 「それを根に持って、が無 「ではおまえはあくまでも主張するのですね、この測りうる宇宙の慈悲だとこの男は主張しているのです」 背後に、ある不明確な、究極的な、漠然としたものが存在すると「・ほくは愛する女の死んだ姿を見た」わたしは一同に言う。「彼女 ? 」《彼女》はコウモリの目にむかって笑いかける。このようなあは二度とめざめないだろう。きみたちの愛するものもそうだし、き てこすりを聞いたときは、笑うものだということを、われわれはそみたち自身もまたそうだ。二度とけっして。はわれわれを蘇 れそれ子供のときから教えられている。「簡単にで結構ですから、 らせない。蘇らせることができない。 《かれ》の家のなかを支配し 証拠を見せてください」 ているのは、死そのものだ。われわれはどこかほかのところで、こ 「いや」わたしは言う。「それよりもあなたが証明してください、 の世の神秘のなかで、生命と再生を求めなくてはならないんだ」 いかなる疑問の余地もないほどにーーわれわれが言葉や方程式で理彼女は高らかに笑って、濃くなりまさりゆく灰青色の薄暮のなか 解しえないなにものかが、ぜったいに存在しないということを。同で、かすかにきらめいているわたしの魂の腕輪をゆびさす。ゅびさ 様に、・ほくにそれを求める権利がないということも証明してくださしただけでなにも言わないが、それ以上なにか言う必要があるだろ それを証明する責任は、あなたがた《二人》にあります。これま「だれか、・ほくにナイフと斧を貸してくれないか」わたしは言う。 群衆はざわざわして、たがいに私語をかわす。わたしは彼らの恐 で何度もあなたがたは、われわれに嘘をついてきたのですからね。 純理性の名において、あなたがたは神話を復活させた。よりよくわ怖を嗅ぎとる。そのときいっせいに街灯がつく。さながら、わたし れわれを支配できるようにです ! また、解放の名において、われたちの上をおおいつつあるこの夜の一角よりも、さらに広範囲に拡 われの内なる命を縛りつけ、われわれの魂を去勢した。奉仕の名に散することができるかのように。わたしは腕組みをして、待つ。 おいて、われわれを束縛し、目隠しした。成就の名において、どん《黄泉の国の女王》が、なにかわたしに言いかける。わたしはそれ な豚小屋の豚よりも、もっと狭い行動範囲にわれわれをとじこめを聞き流す。 た。恩恵の名において、あなたがたは苦痛を、恐怖をつくりだし、 二つの道具が手から手へ渡されてくる。階段をのぼって、それを 暗黒の彼方にさらに暗黒を生みだした」わたしは聴衆のほうに向き運んできた男は、まるで炎のようにわたしたちに近づく。彼はわた なおった。「ぼくはあそこに行ったんだ。あの地下の穴倉に降りてしの前にひざまずき、わたしの望んだ道具を棒げる。道具はどちら いったんだ。だから知っている ! 」 も上等の品だ。幅のひろい刃のついた狩猟ナイフと、長い両刃の 3 「この男は、がほかのみんなを犠牲にして、この男ひとりの斧。
わたし自身の恐怖は ? なにかにたいして突っかからなければいられう具体的な計画を、実行に移そうとしているんだからな」 ず、たまたま彼女がここに立っていたというわけた。」「もう″静穏「《彼女》の帰り道を邪魔することによって ? 」 でない″とか、″平衡を失った″とかいう言葉では、満足できない 「《彼女》が地上の見回りに出かけてるあいだは ' だれにだって っていうわけか ? 」 《黄泉 . の国の女王》に嘆願する権利があるんた」 「あんたからそれを習ったのよ」と、彼女は挑戦的に言う。「あん「でも、いまは妥当な時間を過ぎてるのよーーー」 たと、あんたの罰当力な、古めかしい歌からね。そう、もうひとつ「法律でそう定まっているわけじゃない、たんなる習慣さ。みんな 〃罰当り″って言葉もあるわ。なんとそれはあんたに似合っているは恐れているんた、単独で、たれもいない町の外で、明るい外光の こ、とでしようー いったいいつになったらあんた , は、この病的なふもと以外で、《彼女》に会うことを。だれもそれを認めやしまい : 、だがそうなんた。だからおれはここにきた、嘆願の行列に加わ るまいをやめるつもりなの ? 」 「そしてクリニ一ックに出頭して、頭をきれいに . 、正気になるようにらない、まさにそのことのために。録音器にむかって喋って、あと 洗い清めてもらう ? ふん、 - まだ当分はそんな気はないね、ダーリでコン。ヒ = ーターにおれの言葉を分析させるなんて、おれはまっぴ らだ . ねをどうして《彼女》が聞いていると断言できる ? おれはお ン」この最後の言葉を ) わたしは故意に用いたのだが、彼女には、 それがわたしにとってーーかってはそれもまた、わたしの愛する女れ自身として《彼女》に会いたいんだ、唯一無二の存在であるおれ 性の名でありえたことを知っているわたしにとって , - ーーどんな蔑み自身として 9 そうしておれが祈っているあいだ、《彼女》の目を見 と悲しみを秘めているか、知るべくもあるまい。言語の公式の文法ていたい」 と発育は、われわれの文明の他のすべての側面同様に、凍結されて トラキアはわずかに喉を詰まらせた。「《彼女》、怒るわ」 しまっている。電子による記録と、神経細胞への教育のおかげだ。 「《彼女》に怒ることが可能なのかい、し 、までも ? 」 . けれども、言葉の意味は、とらえどころのない蛇のように ( おお、 「わたし : ・ : , 知らないわ。で・も、あんたの嘆願しようとしてること わたしの《フキタ . ンポポ》を噛んだ毒蛇め ! ) 、転変し、変動するは不可能よ。あまりに突拍子もない願いだわ。にあんたのむ のた。 かしの女を返させるなんて。《 . かれ》・がけっして例外を認めないっ わたしは肩をゆすって、わたしのもっとも冷やかな ) もっとも都てことは、あんただって知ってるでしよ」 「《彼女》自身が、《彼女》 - の存在自体が、例外じヤないのかい ? 」 市科学文明的な声音で言う。「じつのところ ' おれほど実際的な、 病的でない人間はいないんだぜ 9 たとえば . 、ドラッグによって、神「それは話がちがうわ。あんたって、・わざとばかなふりをしてるの いいこと、ね、なんていうか、直接的な人間の仲立ち 経調節によって、あるいはその限りでは、おまえみたいに野蛮人ごね。 っこをすることによって、自分の感情から逃げようとするかわりを必要としてるのよ。統計学的な、・たけでなく、情緒的、文化的な 3 フィード・ハックを。それがなくてどうして、《かれ》に合理的な統 ' おれは、かっておれを幸福にしてくれた人間をとりかえすとい
「はあ、なるほど。わかりました」ロではそう言ったものの、ネフ飛行士たちを自殺飛行に送り出し、最初から存在しないとわかって ハウゼンはさつばりわからなかった。まさか大統領も、いまの言葉いる惑星への着陸を命じたかを ! 」 を本気でいったのではあるまい。とすると、まず相手の本心を探っ コンスティテューション号 3 てかかる必要がある。「では、そういたしましよう。まずこれをご らんくたさい、一大統領閣下。コンスティテューション号からの新し シェフ・ジャックマンの日誌。第百三十日。 い報告です ! 一時間前にゴールドストーン基地が、ルナー・オー 長らくごぶさたいたしました。筆不精で申しわけない。実はイヴ ビターからの ' ハ 1 スト状通信を受けとり、いま解読室から出てきた ・・ハーストウとチェスの十三回戦をたたかわしている最中ーー・・彼女 ・フィッシャーの戦法をとり、・ほくがレシェフスキー流で ばかりです。どれ、わたしが読み上げましよう。わが勇敢な宇宙飛がボ・ヒー イヴのいった言葉で、ふとネフィーを連 行士たちは、当初の計画どおり、順調に飛行をつつづけておりま指しているときだった す。彼らのいうところによればーーー」 想し、当然そこから、報告をサポっていたのを思い出した、という 「それはまだ読まなくていい」大統領はきつい口調でいった。「あしだい。 とで聞かせてもらうが、その前に別のたのみがある。このグルー。フ 自己弁解になるが、これはなにやかやで忙しかったせいだけじゃ に、アルファ日アレフ計画の全貌を話してやってほしい」 。こんなダラダラした手紙を送信するのは、すごく電力を食 「全貌ですか、大統領閣下 ? 」ネフハウゼンは最後の抵抗を試み う。はたしてそれだけの価値があるかと、疑いを持っ声もあるん た。「承知しました。では、そもそもの始まりからお話しすればい だ。地球から遠ざかるにつれて、ますます多くの電力を、伝送のた いわけですね。あれは、電波天文台のわれわれが、ある惑星の存在 めに蓄積しなくちゃならない。いまはまだそこまで悪化してないが にはじめて気づいたときでしたーー」 ィーに約東をとりつけられてることだし、ここら そうだ、ネフ 「いや、ネフハウゼン。きれいごとじゃない。真相をだ」 いわく、つねに真実を語 で内幕を白状しちゃおうか ? ネフィ 「大統領閣下 ! 」ネフ ( ウゼンはとっぜんの怒りにかられていつれ、なぜならば諸君は実験の一部であり、諸君の行動をわれわれは た。「申上げておきますが、わたしはこの早まった重大事実の公開逐一知りたいからであるーー・・よし、真実をぶちまけると、ジム・ には断固抗議をーー」 ーストウが研究目的でかなり大量の電力を使うので、ここ当分はち 「真相を話すんだ、ネフハウゼン ! 」大統領はさけんだ。ネフハウよいと不足ぎみなんだ。きっとそっちでは、なんの研究か気になる ゼンが、大統領の声を荒らげるところを聞いたのは、これがはじめ だろうね。だが、・ほくたちは、むこうがいしというまで、ひとのや てだった。「この部屋の中だけの話だが、一部始終を打ち明けてもることにロ出しはおろか、その噂もしない主義だし、ジムはまだい いといっていないんだ。この件については、・ほくが全責任をもっー 3 らわねばならん。この連中に話してやれ、なぜソ連の声明が正し 、 - われわれの声明がであったかを。なぜ、われわれがあの宇宙ー電力の消費だけでなく、船体の損傷にも。ジムには、遠慮せずに
ネフハウゼンが入室を許されて着席したとき、大統領とほかの二せん。わたしが意味しているのはそういう戦いではなく、無知に対 人は部屋の奥でひそひそと密談をかわしており、それ以外の何ダーする戦いであります。ご存じのとおり、われわれは科学と進歩のた スかの男女は、首をのばしてネ・フ ( ウゼンをじろじろと見つめた。 めに、いくつかの事柄を知らなくてはなりません。アルファ日アレ まもなく、大統領が顔を上げた。「よし、では始めよう」そういフ計画は、それらを発見するために案出されたものなのです。 うと、大統領はガラスのゴ・フレットから水を一口飲んだ。なんとな では、最悪の部分からお話しいたします。その一、アルファ“ア く萎びて惓み疲れ、そして少年時代の夢の結実に失望しているようレフなどという惑星は実在しません。ソ連が正しかったのです ~ そ すだったーー大統領という職務は、むかし、インディアナ州マンシの二、われわれは最初からそれを知っていました。われわれの作成 ーにいた彼の日に映じたものと、まるきり違っていたのだ。「諸君した写真がそもそもニセモノでした。いずれは全世界がそれに気づ に集ってもらったのはほかでもない。今回、合衆国政府は偽りの情き、そしてわれわれの″戦いの計略を知ることでしよう。わたし 報を発表した。政府はそれを十分に承知の上で故意に行ない、われとしては、彼らがあまりに早くそれに気づかないことを祈るばかり われはその責任を問われている。そこで、諸君にその間の事情を知です。なぜなら、もしわれわれが幸連に恵まれ、そしてこの秘密を っておいてもらいたいと思 . い、いまからネフ ( ウゼン博士にアルフしばらく守ることができれば、この行為を正当化するだけのりつば ア日アレフ計画を説明してもらうことにした。はじめてくれたまな結果が生まれるであろうからです。その三、コンスティテ = ーシ え、ネフハウゼン」 ョン号がアルフア・ケンタウリに到達しても、そこには彼らの着陸 ネフ ( ウゼンは席を立って、大統領のすぐ横、彼のために設けらできるような場所はなく、宇宙船から離れる方法もなく、帰還用の れた小卓のそばへ、ゆっくりと歩いた。書類を小卓の上にひろげる燃料として使えるような資源もありません。そこには恒星と無の空 と、しばらく口をへの字に曲げて考え深げに目を通したあと、やお間があるだけです。この事実は必然的な結果をもたらします。コン らロをひらいた。 スティ ーテューション号は、片道飛行用の水素燃料と操舵用の若干 「大統領がおっしやったとおり、アルファアレフ計画は一種のカの予備を積載できるようにしか設計されていません。彼らが帰還で ムフラージ = であります。この中の一部の方は、この事実を数カ月きるだけの燃料はなく、そして彼らが利用する予定でいた燃料源、 前に知らされたとき、別の言葉でそれを表現されました。″ イカサすなわち惑星アルファ日アレフが存在しない以上、彼らは帰ってく 。″。〈テン % そういうたぐいの言葉です。しかし、もしお許しることはできません。したがって、彼らはむこうで死ぬことになり 願えれば、わたしはむしろフランス語でそれを呼びたい。そうすれます。これらが、わたしの認めなくてはならない、悪しきことがら リューズ・ド・ゲール ば、これはきわめて正当な″戦いの計略となるわけです。この戦です」 いとは、われわれの政敵に対するものではなく、また火炎ビンやレ聴衆からは吐息にも似たざわめきが洩れた。大統領は放心したよ ンガを持った、あの愚かな都市の若者たちに対するものでもありまうに眉をしかめていた。ネフ ( ウゼンは、彼らが苦いクスリを飲み