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検索対象: SFマガジン 1974年10月号
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1. SFマガジン 1974年10月号

あった。それは、テ イ 1 ンエイジャ 1 の眼にしか見えない偏光金属室にすわっていた。べつのひとつは、世界の平和を守る世界監視最 高評議会の一員であった。またひとつは、世界中の人間にほどよい 9 と偏光ガラスで作られていたのだ。 リッチズ・ア / リミテッ 「どうしてこの近所だけようすがちがうんだろう ? 」と人びとはき富を保証する例の私的公的国際的機関、富裕無限会社の社長であっ 、た。「なぜこの近所のテ ィーンエイジャーたちはおとなしく行儀たし、世界中の人間に健康と長寿を提供する健康長寿財団の指導的 がよく、ほかのとこでは、みんなたちが悪いんだろう ? まるでこ地位に立っている機械もあった。それほど嚇々たる名声と成功を手 中にしている機械たちなのだ、その作り手であるみすぼらしい叔父 のあたりの連中は、何かに化されたみたいじゃないか」 を見下げるようになるのも当然ではないか ? 「驚いたな、ああいう手合いが嫌いなのは、・ほくだけかと思ってい 1 ートよ、つこ 0 た」とアル・ハ 「わたしは運命の奇妙ないたずらによって金持になり、周囲の思い ートはひとりごち 「いや、そんな、とんでもない」と人びとはいった。「もしあんた違いによって栄誉を与えられた」ある日、アル・ハ た。「だが、わたしが真の友と呼ぶことのできる人間や機械は、こ にうまい考えがあったら : : : 」 ィーンエイジャー , ートよ、テ そこでアルバ ・マシーンを複製マシの世にいない。ここにある本には、友だちの作り方が出ているが、 ーンにかけ、必要なだけの複製を作って、あらゆる町にそなえつけわたしにはこういうことはできない。わたしなりの方法で、わたし た。その日から、ティーンエイジャーたちは見ちがえるようにおとは友だちを作ろう」 しくぶんおどおどしたようすまで見せるよう こうしてアルバ なしく行儀よくなり、、 ートは友だちを作る作業にとりかかった。 になった。しかし何が彼らをそのようにさせたかを究明する手がか彼はプア・チャールズを作った。それは、彼に負けないほど愚か りは、ときおり透明なギター ・ビックにやられて眼球がたれさがるで不器用で無能な機械だった。「これでようやく話し相手ができる ぞ」とアル・ハ ものが出る以外、皆無といってよかった。 ートはいったが、結果は失敗だった。ゼロ足すゼロ こうして二十世紀後半におけるもっとも深刻な問題のうち二つは、ゼロにしかならない。作り手とそっくりのプア・チャールズか ら得られるものは何もなかった。 は、だれが栄誉を手にすることもなく、まったく偶然に解決した。 哀れなチャールズ ! 考えることができないため、彼は自分のか ートは自分の作った機械がそばにあるとわりに考える ( ーーおいおい、ちょっと待ってくれ、そんなことし 年がたつにつれ、アル・ハ き、何にもましてひどい劣等感をお・ほえるようになった。機械が人たってうまく行くはずがないだろう ) ーー自分のかわりに考える機 ( しかし、それじゃおんなじことじゃないのか ? ) ーーー機械を 間のかたちをしているときには、特にそうだった。アル・ハ もうたくさんだ。要するに、ア 作り : は、彼らの都会性も才気も機知もなかった。彼らの前ではア化ハー レ・、 トが作った機械のなかで、そんなことをするほど・ハ力なのは トはうすのろであり、彼らはことあるごとにそれを思い知らせた。 無理もない。アル・ハートの作った機械のひとつは、大統領の執務。フア・チャールズだけだつだのだ。

2. SFマガジン 1974年10月号

「意識して、なにかを黙っているというのも、立派に嘘の一種よ」 「迷惑をかけたな」 「俺がそうした、と言うのか ? 」 と謝して、私は扉を開けてくれと手で合図した。早野は顔を上げ 2 「違う ? 」 て、扉を押した。私が彼の体をすり抜けて、廊下へ出ようとしたそ 頭蓋の奥まで見透かされてしまいそうな弥生の強い視線に、私はの時、 自分がたじろぐのを感じた。 「あんたがさがしている娘に心当りがある」 「図星だったようね」弥生は首を振った。「だから、男なんて信じ早野が囁きかけてきた。 られないのよ」 私は驚いて彼の顔を見つめた。 早野の押し殺したような笑い声が徴かに聞こえた。 彼の眸からは何も読みとれなかった。あい変わらず、脂が顔に浮 弥生は、しきりに凄んでいる二匹のドー ベルマンの背に軽く手をぎ出ている。 ふれて、 「明日の夜、こ、こで十時に : : : 」 「行きましよう」 それだけを言うと、彼は私の手を損んでなにか小さなものを握ら 私に背を向けた。 せた。まるで恋のかけひきだが、たとえ彼にその気があるにして 「そいつらだって男だろう ? 」 も、私を相手に選ぶとは思えなかった。私だってまっぴらだ 彼の真意を測りかねてあたふたしているうちに、私はていよく廊 腹だちまぎれに、私は、歩きかける弥生に言葉を投げた。 下へ押し出されてしまっていた。 彼女は振り返りもしないで応えた。 「女よ。リンダにヘレンという名前なの」 私の背後で音をたてて扉がしまった。 掌を開けてみた。 女性軍団は、一丸となって、白いドアの向こう側に消えていった。 私は首筋をなでた。ようやく、自分が白痴あっかいされていたの ーの紙マッチだった。店の名と住所が、印刷されている。 に気がついたのだった。 店の名は「」だった。 しかし、だからといって、弥生を追って白いドアを開けたところ私は、ことのなりゆきがどうなっているのか、自分なりに検討し で、せいぜいがドーベルマンの熟いキッスを受けるぐらいが関の山てみようとした。なにも分っていないのに、検討などできるはずも ・ころう。 なかった。私にできるのは、ただなりゆきに身をまかせることたけ 私はホッと息を吐いた。 のようだった。 どうやら帰った方がよさそうだった。これ以上ここにいても、な それならそれで、いっそ気が楽というものだ にか収穫があろうとは思えなかった。 私は玉 , タンを押して、・エレベ・ 1 ター - が降りてくるのを待った。 扉の脇に立って、なにか考えこんでいる早野に、 ( 以下次号 ) こけ め ェックス

3. SFマガジン 1974年10月号

から で見つけたメモに該当する電話番号をさがした。 べラドンナ 説明しようもない第六感に導かれて、私はそのメモ用紙を手に取「美しい女」の営業所は六本木にあった 電話は、 e 理科大の名義になっていた 電話番号らしい数字が書かれてあり、その下にダッシ = が引かれ私には、その取り合わせが、どうにもちぐはぐなものに思えた。 ていた。 その二つをどうはめ合わせれば、噛みがうまくいくのか、見当もっ よ、つこ 0 それだけで、後は何も書かれていない。 が、私の指は興奮で徴かに震えた。 いや、須藤に関係する一連の事件が、あの眠れる美女になにかっ 特徴のあるその文字を、私が見誤うはずがない。極端に右上がり ながりがある、と考えるのがそもそも間違いかもしれないのだ。経 のその筆跡は、確かに須藤が書いたものだーーー何本もダッシュを引験も組織も持たない私が、警察と張り合っているつもりで、まった かなければならないほど、彼にとって重要だった電話番号を、私は , く。ヒントの外れた筋道をたどっているのだとしたら、これほど滑稽 手に入れることができたのだった。 な話もないだろう。 メモ用紙を四つに折って内ポケットにしまうと、今度こそ、私は私は水割りを一気に空けた。 振り返りもしないで聡子の部屋から出ていった。 考えてもしかたがないことだった。 私は、私のやり方で、須藤の冤罪を晴らそうとするしか、方法を 私の住いは俗に言う下駄ばきアパートだった。聡子のマンション知らないのだ。 に比べれば、まるで犬小屋同然の代物だが、世の不公平を嘆するに頭のどこかで囁いている声があった。 ( 本当に、須藤の冤罪を晴らすためだけで、動いているのかね ? ) は、私はあまりに疲れすぎていた。 実際、いつに変わらぬそっけなさで迎え入れてくれる部屋に、私声は言った。 ( 実は、あの娘をさがしたいんじゃないのか ? ) はそれなりに満足しているのだ。 ガスストー・フに点火し、のスイッチを入れ、ウイスキーの水私は立ち上がって、二杯めの水割りのために、ビッケルで氷を砕 割りをつくる。後は、上衣を脱ぐのが勢いつばいだった。水割りをき始めた。必要以上に音をたてたのは、その声を聞きたくなかった からだった。 持ったまま、べッドに横になる。 しばらく眼をつぶってみたが、いつまで待っても、疲れはとれそ うになかった。 五 あきらめて、電話帳を手に取った。 べラドンナ 腹ばいになって、「美しい女」の営業所の所在地と、、聡子の部屋私の半ばガタのきた車は、六本木の華やかな街路には、とてもの 228

4. SFマガジン 1974年10月号

まじめな顔で人に相談を持ちかけても、人々は彼のハローを見て 一旦 ( tL ーを手に入れた人は、そのハローによって優れた人物で笑い出し、冗談だ . ろうと思ってとりあわなかった。 あると評価され尊敬される。そして、 ( ローを持たない人は、彼に東は、次第に喜劇役者の、人々をおかしくさせる ( ローをいまい 圧倒されて、ある場合は勝負に敗れ、ある場合はその人格に陶酔すましく思いはじめた。 ハロ 1 商会と、その後どんな交渉があり、いきさつがあったかは る。 指揮者の外山雄二、将棋の片桐五段、政界の斑目孝一。その他、知らない。しかし彼は結局、自らの身体から ( ローを追い出すこと 各界で急に目立った動きをした人たちは、秘かに巨大な ( ローを手が出来なかった。 そして彼はハローを呪いながら、自らの命を断った。 に入れたのだ。 相手を圧倒する ( ロー、人々を笑わせる ( ロー、人々を芸術的陶死とともに、彼の願いは達せられた。 何者かが彼の眉間から ( ーの根源である白毫を取り除いたので 酔に誘い込むハロー ハローの絶大な効果によって、彼等は自分の野望を達成しようとある。 それと同時に彼のハローは、消えた。 している。 只一人、ハローを手に入れて人生を狂わせた男がいる。アナウン私は高速道路にタクシーを走らせていた。 ハロー商会と対決するためだ。 サーの東俊也だ。 こ現れ ハー商会のものが商談冫 行先はテレビ局出演者ロビー 彼は、後任を噂される若手アナウンサーの父親の威光に負けまい として、ついつい ( ロー商会のロ車に乗ってしまったのに違いなる場所はそこ以外にない。 外山雄二は、ハローを身につける前日、その部屋にいた。しかも 深夜ただ一人、ぼうっとした不思議な光の中に照らされていたとい ひととき、彼は確かに成功した。 彼は ( ローによって人々を笑わせ、自分のレギ = ラー司会者としう。 片桐五段をロビーで見かけたこともある。 ての地位を守った。 しかし彼は、生来まじめな男だ。喜劇役者の、人々を笑わせ楽し東アナウンサーが自殺をしたのも出演者ロビーだった。 そして何よりも、さまざまな時代の、さまざまな衣裳を身につけ ませるハロ 1 は彼にはふさわしくなかった。 た人々が始終出入りするあの部屋は、どんな異形の人物が現れても きまじめな彼自身の性格と、彼の背にあるすっと・ほけた巨大なハ 決して怪しまれることがない。 ローとは、やがてはげしく衝突しはじめる。 たとえ異次元の空間から、あるいはタイムマシンの力を借りて、 ・彼は「、 ノローと自分の性格との食い違いに悩んだことだろう。 9

5. SFマガジン 1974年10月号

今号は「仮年偉業豊臣再興記」を紹介する。本当は 囹軍記「豊臣再興記」 前回で明治のの話はやめにして、今回から大正の を披露する予定でいたのだが、急遽変更とはあいなっ ついに「仮年偉業豊臣再興記」なる本を手に入れた。いろいろご不満もおありだろうが、残暑きびしき折が た。といっても、なにが「ついに」なのかわからない人ら、くれぐれも健康にご留意のうえ、お許しねがいたい。 があるかも知れない。 これがわからない人よ、、 冫しつもぼ第十六回「ナポレオン一世日本に死す」の項で、ぼく ひるね くの「日本こてん古典」をいい加減に読んでいる人が南柯亭夢筆という作者の「軍書狂夫午睡之夢」を紹 だ。毎回ちゃんと読んでいれば、「ついに」の謎はすぐ介したのを、まだ憶えている人もあるだろう。例のナポ に解ける。 ( : ・ ・ : なんてことを書いて、もし万が一、古レオンが諸葛孔明やジンギス汗、豊臣秀吉とチャン・ハラ い号を読み直す人がいると悪いから、読みかえさないでをやらかす一大珍書メチャメチャ軍記だ。その際 しいよ ) だが、よく考えてみると、こんなページを毎回「午睡之夢ーは「豊臣再興記」という小説を探している まじめに読んでいるほうがおかしい。まじめに読まない過程で、たまたま発見した小説だということを書いた。 人こそ頭が正常な人だ。なぜ、「ついに」なのかわからその「豊臣再興記」が、このほど手に入ったのだ。これ ないみなさんォメデトウ。ほんとうにヨカッタね。 が「ついに」の謎の秘密だったのだリ この謎を知られ 十九回秀吉、地獄を征服す 3 7

6. SFマガジン 1974年10月号

治ができるかしら。だから《彼女》は、全世界から選びぬかれなきるわ」 ゃならなかった。それにひきかえ、このあんたの女、彼女はいった 「その前に「すくなくとも、彼女なしでこの人生を生き抜かなぎや 2 ならんじゃないか」わたしは彼女から目をそらして、タ闇のなかに いなにもの ? だれでもないじゃありませんか ! 」 死の蛇のように光りながら、谷の端から端まで走っている街道を見 「おれにとっては、彼女はみんなたった」 「あんたはーー、」言いかけてトラキアは、歯でくちびるを噛む。片わたして言う。「おまけに、そのときにほんとうになんらかの復活 方の手がのびて、わたしのむきだしの腕をつかむ。かたく、熱い感が行なわれると、どうしてわかるんだ ? われわれはたんに口約東 触。汚ない爪が食いこんでくる。わたしがなんの反応も見せないでを聞かされているにすぎん。そんなもの、あいつの政策以上にあて いると、彼女は手をはなし、地面を見つめる。上空を、字型になになるものか」 彼女ははっと喘いで、うしろにさがると、まるでわたしを払いの った雁の列が渡ってゆく。その啼き声が、風にのって鋭く流れてく けようとするように、手をあげる。手首にはまった魂の腕輪が、き る。森のなかでは、それは一段とけたたましく聞こえるのだ。 「わかったわ」と、彼女は言う。「あんたは特別よ。いつもそうだらりと光をわたしの目に投げかける。わたしはそのしぐさのなかに ったわ。なにしろ、あの《偉大なる船長》といっしょに、宇宙に行悪魔祓いの萌芽を認める。それには儀式的なものが欠けている。あ って帰ってきた勇士ですものね。ひょっとすると、いま生きているらゆる″迷信は、われわれの金属とエネルギ 1 の世界から、とう 人間のなかで、むかしのことを理解できるただひとりのひとかもしのむかしに辛抱づよくこすり落とされてしまったのだ。けれども、 れない。それからあんたの歌ー。ーそうよ、あんたはほんとうはひとたとえそれにたいする言葉は持たなくとも、それをあらわす概念は を楽しませてはいない。あんたの歌は、人びとを悩ませ、その歌をなくとも、やはり彼女はその冒漬行為にたじろぐのだ。 だからわたしはうんざりしながら言う。ここでロ争いなど起こし 忘れられなくさせるわ。だから、ひょっとしたら彼女も、あんたに 耳を傾けてくれるかもしれない。でも、はだめよ。《かれ》たくないから、ただひたすら、だれにも煩わされずにここで待ちた いからだ。「気にするな。それまでになにか自然の異変が起こるこ 冫ーし力ないのよ 。いったんそれをした は特別の復活を認めるわけこよ、 ら、たった一度でもそれを許してしまったら、みんなにそれをしてとだってありうるんだ。巨大な小惑星がぶつかってくるとかなんと やらなきゃならなくなる道理しゃなくって ? そうしたら、死者がか、復活が始まるような条件がととのうまでに、現在の世界をすっ かり抹殺しちまうような異変がな」 生者を圧倒するようになるわ」 「必ずしもそうとは限らんさ」と、わたしは言う。「ともあれ、お「そんなこと、ありえないわ」ほとんど半狂乱に近い口調で、彼女 れはやるつもりだからな」 は言う。「恒常性維持機構たの、修復機能だのが働いてーーー」 ナ「よしわかった。じゃあそいつは、とうていありえない理論的偶発 「どうしてあんた、約束の時まで待てないの ? そのときなら、こ しかに、、はあんたたち二人をおなじ時代に生き返らせてくれ事たってことにするがいい。おれは、おれの《つばめの翅》を、

7. SFマガジン 1974年10月号

1 ド以内の空気を浄化し、二十四時間ごとに一トンあまりのかすを 集めた。このかすは長ったらしい名前のついた巨大分子を多量に含かって少年の非行化が問題視されたことを、諸君はご記憶だろう んでいたので、彼の作った化学合成マシ 1 ンのひとつに利用するこか ? ちんびらたちが手に負えない時代があったことをご存じだろ とができた。 、つ・カ ? ・アレく ートもこれには閉ロしていた。彼らのぶざまな姿を 「な・せ空気を全部きれいにしてしまわないんだね ? 」と人びとはき見ていると、どうしてもむかしの自分を思いだして気が減入ってく ィーンエイジャーを作った。それは るのだった。彼は自分なりのテ 「クラレンス・デオキシリポヌークリッコニ・ハスが一日に必要とすたいへんな暴れ者だった。見た目はその連中と変らない。左の耳た る量は、これだけで充分なんだ」とアルバ ートはいった。それが彼ぶにイヤリング、ふさふさしたもみあげ「真鍮のメリケンと長いナ の化学合成マシーンの名前だった。 イフ、相手の眼をずぶりとやるためのギター ビック。だが、それ は人間のテ イ 1 ンエイジャ 1 とは比較にならぬほどのあらくれだっ 「しかし、われわれはスモッグで死にそうなんだよーと人びとはい ィーンエイジャーたちは、ふるまい た。恐慌におちいった近所のテ った。「われわれをあわれと思って助けておくれ」 をあらため、真人間らしい服を着るようになった。アルバ 「そりや、もちろん」とアル・ハ ートの手 トはいい、その機械を複製マシー イ】ンエイジャー になるテ ・マシーンには、ひとつだけ特異な点が ンにかけて、必要なだけの複製を作りだした。 四六版上製 好評発売中 ! 日本ノヴェルズ 眉村卓定価一 0 〇〇円 情報社会の行方に鋭い不信を提起せすにはおかぬ プロバ ーの手法が可能とした思考実験ー

8. SFマガジン 1974年10月号

学生だった頃、渋谷のあたりばかりうろうろして過ごしていたも行こうと渋谷駅まで出てくると、もうぐったり疲れてしまってい のだ。学校への中継地点が渋谷の駅だったのと、家が近かったためて、田町行きの・ ( ス停にもしクラスメートでも見つけようものな ら、その日また学校をあきらめてしまわなくてはならない。そこで と、一の日会をやっていたためであろう。 比較的お金が潤沢だと、東京駅行きの ' ( スに四十五分位ゆられ映画館までもどるにも疲れすぎているように感じる日は、そのまま て、丸善へ行った。の洋書コーナーがあったのだ。そこから今御茶の水行きの・ ( スに乗ってしまうことになる。この・ ( スは三、四 十分かかって、僕を神保町の古本屋街まで連れて行ってくれるので 度はたらたら歩いて銀座へ出ると、イエナへ寄って近藤に寄って、 日比谷の紀伊國屋へ行ったり、旭屋へ顔を出したりしたけれど、決ある。 してロードショウ館へ入ったことはなかった。映画と言えば、渋谷 三茶書房からはじめて、一番端のなんとか言う古本屋まで、四半 パレスとか前線座、そのほかあの辺の二番館に限られていて、百円日も費やすことがあったのは、何といっても僕がとてつもなく若か ったからにちがいない。僕は人手を経た書物がどうしようもなく、 玉一杯にぎっては、見古されてしまった名画にありついていたの だ。日比谷の辺まで来るとさすがに疲れて、また長い長い家までの好きなのである。 ・ハス旅行を始めるのだが、・たまには山手線で御茶の水まで足をのば多分もっとも最近に手に入れた古本は河出から出た『表現主義の 小説』というアンソロジ 1 だと思う。昔、一八〇〇円という値段に してもよかった。 一番ありふれていたのは、ポケットに千円札が一、二枚、学校へ手がすくんで買いそこねたこの本を見つけたのは渋谷の古書センタ 新連載評論 ま夢の言葉・言葉の夢 幻想小説の方へーいい第ー 文千秋 ロ 8

9. SFマガジン 1974年10月号

日本 SF2 ヴェアレズ 既刊給点 ■最新刊 \ 9 6 0 四六判上製 ミューテーションをとげた怪魚の支配する海底を サイボーグのチと口に与えられた使命は そして 少数の人々のみが海底都市に生き残る・・ 人類は異星人の手により突如絶減 田中光二 わが赴くは蒼き大地 気鋭の新人力放っ異色の海底冒険 s F ! ハワイ島沖からカリブ海まで 一人の少女と巨大なシャチと共に 横断することだった ロ田中光ニの既刊 幻覚の地平線 55 \ 田 00

10. SFマガジン 1974年10月号

しました。 とです。 ″彼″はすでにこの世界から姿を消したはずです」 . 私は、斑目と別れた後、しばらくこのロビーで時間をすごしてい ました。 斑目は自らの野望を遂げるために、何ものかを売り渡した。 それは、彼自身のものなのだろうか。それともやがて彼が統括し ハロー商会が解散したとなっては、私も今後の身のふり方を考え ようとするこの国の運命にかかわるものなのだろうか。 なければなりません。 「あなたが先程から″彼″といっていた人物は一体何ものですか。 以前にやっていた生命保険の仕事でもはじめるか、などと考えて もしかしたら : ・ : ・」 コーヒーを飲んでいたのです。 男は私の質問を手で遮った。 ところが、その時変なことに気がっきました。 「しばらく待って下さい。私は疲れました。″彼″のことはまた改昔から顔なじみだった人たちが、私の顔を見てもそしらぬ顔をし めてお話しましよう」 て通りすぎてゆくのです。 私も最初はみんな忙がこいのだなと考えていました。 男は立上って帰ろうとした。 ところが、いつも仲良く話しこんでいくウ土イトレスの女の子に ふらふらとした危つかしい足取りだった。 声をかけても、彼女はうさん臭い顔をして向うへ行ってしまったの 「大丈夫ですか」 私は思わず声をかけた。 私は不思議に思って化粧室の鏡の前に立ちました。 男は何かを思い出したように立止った。 そして背筋が凍る思いがしたのです。 「一つお願いがあるのですが聞いていただけますかー男はふりかえ って云った。 そこに立っているのは、ついさっきまでの私ではありませんでし 「どんなことでしよう」 「保険に入っていただけませんか」 醜く貧弱な中年男の姿が写っていました。 だが良く見ると、やはりそれは確かに私に間違いありません。 「保険 ? 生命保険ですか」余りに突飛な申し出に一瞬私はとまど っこ 0 その時、私はかってマイナスハローという言葉を聞いたことがあ るのを思い出しました。 「そうです。お願いをするためには、もう一つだけ聞いていただか ねばならないお話があります」 私の身体からはマイナスハローが出はじめていたのです」 男は、改めて坐りなおした。 「マイナスハロー ? 「あなたは私のみかけがずい分変ったことに驚いておられました「そう、マイナス ( ローです。あなたがお気づきになったように斑 9 ね。実は私もそのことに気がついたのは、ほんの二時間ほど前のこ目孝一や外山雄二はハロー商会からハローを手に入れました。 こ 0