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検索対象: SFマガジン 1974年11月号
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1. SFマガジン 1974年11月号

ようやく決心がついた。 日本人禁止進去 「あのう、これください」 なけなしのかねを払い、デパートのマークの入った紙袋をかかえ 大清国征東都督府 て売場の前を離れた。 げん 「元さん、どうしたろ ? 」 「なんでしよう ? これ」 エスカレーターで上の階へ向った。上の階は雑貨、金物類の売場 どうやら、日本人は入ってはいけないという意味らしい だった。 「たいしんこく、せいとうととくふ。というのかしらー 笙子は、首をかしげた。 ャカンや鍋のならんでいる棚の間を通りぬけると、『日曜大工用 具』と書かれた案内板が目に入った。 貞造はその木札から目をそらし、笙子をうながした。 「どこにいるのかな ? 」 「さ、行こう」 その目に、一瞬、けわしいものが動き、消えた。 売場をひと回りすると、勘定場の前に立っている元の背の高い後 夜風がわたり、樹木の影がゆれ動いて木札を明暗に隈どった。 姿が見えた。 「いたいた」 2 近寄ってゆくと、一「三人の女店員がしぶい顔をして元の手元を 見つめている。 買おうか。どうしようか ? 「どうしたの ? 元さん」 寒くなれば安くなるだろうが、それでは着る機会はほとんどなくわきへ回ってのそきこむと、元は女店員以上に難かしい顔をして なる。来年になればまた新しい柄が出てくるだろうし、流行も変るいた。 にわ、つ 0 「見ろ ! これ」 買おうか ? でも高いし : 元は自分の札入れをかもめの前に突き出した。 かもめは気に入った・フラウスを、体に当てては考え、考えてはま「なあに ? 」 た体に当ててみた。黒と深黄色とわずかな火色と赤。もともと派手「札入れの中身をすりかえられた」 な顔立ちのかもめにはよく似合った。ウインドケースに置かれた鏡「中身を ? 」 に映っている自分の上半身を、ためっすがめつ思案しているかもめ なに言ってんだろ ? の背後を、青年たちの一団が、熱つぼい関心を示しながら通り過ぎ かもめは元の札入れの中をのそきこんだ。 ていった。かもめはそんなことには気がっかない。 十数枚の紙幣が入っている。ぬき出して見ると、見たこともない カウ / ダー 幻 2

2. SFマガジン 1974年11月号

を受けるのを怖れたマッドサイエンティストの手にかかって、殺さ和感があったーー紙マッチの重ねのところに、なにか小さな黒いも のがテー。フで固定されていた。 れてしまう : マイクロフィルムのようだった。 私は首を振った。 それが早野が手渡した紙マッチだった、と気がつくのには少し時 よしんば狂っているにしろ、たかがスキャンダルを侑れたぐらい で、科学者ともあろう者が須藤と聡子の二人を殺そうと考えたりす間がかかった。慌てて、私は紙マッチを背広の内ポケットにしまっ るだろうか ? あえて、彼等が人体実験に踏み切ったとしたら、そた。 こには、被験者が不治の病いにとりつかれていた、という類いの事こうなってみると、もう私の頭には店を離れることしかなかっ た。早野はまずやって来ないだろう、という気がした 情がからんでいたと考えるべきだろうーー確かに、私が組みたてた ドラマはそれなりに筋は通っているかもしれないが、つじつまが合私がスツールから降りた時、店の電話が鳴って、女が受話器を取 った。二言、三言、言葉を交わし、 いすぎてかえって不自然だった。 「鹿島さん ? 」 「どうも想像力過剰のようだ」 女が私に訓いた。 ロのなかでつぶやいて、私は苦笑した。 そうだ、と私は応え、女から受話器を受け取った。 そうではなかった。実際には、想像力が不足していたのだ。後に 「もしもし、鹿島です」 なって思い当ったことだが : ひどく切迫した声が、私の鼓膜に響いてきた。 時計を見る。 「早野です。遅くなってすまなかった。実は、ちょっとした手違い 十時一一十分・ーー があって : : : 」 後十分だけ待とう、と私は考えた。それでも早野が来なかった 「よかったよ。ちょうど今帰ろうとしていたんだ。どうする ? 今 ら、あきらめて帰るしかない。 から、こっちへ来るかね」 カウンターの向こう側の正面の壁にはめこまれている鏡に、私は 「いや、それが『 >< 』じや少しまずいことができたんだ。申し訳な 自分の顔を映してみた。約束をすつばかされて、酒を飲み足りなく いが、別の場所で会うことにしないか ? 」 て、その上いくらか寂しそうな中年男だった。試しにタ・ ( コを喰わ えてみた。なんとか間が持てる一人前の顔つきにな 0 た。こんなと「それはい 0 こうにかまわないけど : : : どこなら都合がいいのかね ころで手を打つよりしかたあるまい 早野は、「 >< 」から少し離れたところにあるホテルの名を告げて、 ポケットから、紙マッチを取り出す。 男がタ・ ( コに火を点ける時の、あの一連の動作が没我のうちに続「そこの六〇二号室で待っているよ。勝手な言い草かもしれない き、そして、軸木を発火させた時点で。ヒッタリ止まった。なにか異が、できるだけ急いでやって来てくれ」 に 4

3. SFマガジン 1974年11月号

「どうしても、稲垣に会う必要があるわ。彼が外に出てこなかった弥生が私に囁いた。 ら、こちらから屋敷に忍びこんででも会うのよ」 「まん中が稲垣よ」 私は慌ててタ・ハコに注意を集中させた。 二人の男に両腕をとられ、引きたてられるような格好で歩いてい もしそんな事態になったとしても、忍びこむことになるのは弥生るゴマ塩頭の老人ーーー彼が私たちが会おうとして果たせなかった稲 ではなく、私なのだ。下手に返事をしない方が利ロというものだろ垣大造なのだ。三人に傘をさしかけている初老の和服姿の女は、ど うやら稲垣の妻らしかった。 追い討ちをかけるように、 男たちが乗りこむのとほとんど同時に、セダンは発進した。私た 「私の言ったことが分ったの」 ちの車の脇を通り過ぎると、セダンは加速した。その黒い車体は、 昻ぶった声で弥生は言った。・ハックミラーに映っている彼女の表昏れた雨にまぎれてすぐに見えなくなった。 総てが終るのに、三十秒とかからなかった。 情は、ひどく焦燥感に満ちたものだった。ことが思うように運ばな 車をターンさせて、セダンの後を追うのもできない相談ではな いのを、なにか自分に対する侮辱のように感じているらしかった。 うなずくしかなかった。 かった。だが、私たちの車は彼等に見られているのだ。尾行を彼等 に気づかせないで後を追うのは、まず不可能だったろう 「ああ、分っている」 ハンド・トーキーを取り上げて、 急にタバコがまずくなった。 「黒塗りのセダンだ」 サイドを開け、タバコを捨てようとする私の注意を、 私は言った。 「車よ」 陽気な峰の声が返ってきた。 弥生が低く促した。 「了解ーー」 私は顔を上げた。 黒塗りのセダンが徐行しながら稲垣の屋敷に近づいてくる。はけ せかせるような口調で、弥生が言った。 が悪くて水が渦を巻いて流れている狭い道を、まるで葬儀車のよう「早くしないと、奥さん、うちに入っちゃうわよ」 にひっそりと進んでくるのだ。 キーをまだ手に持ったまま、私は慌てて車を発進さ 稲垣の屋敷の前まで来て、セダンは。ヒタリと停まり、ホーンを二せた。弥生という女は、実に人使いが荒いのだった。 度鳴らしこ。 門の中に入りかけていた初老の女は、私たちの車がスルスルと滑 門の鉄柵が内側に開いた。 り寄っていくのに、怯えたように立ちすくんだ。 サイドから顔を出して、弥生が声をかけた。 三人の男と一人の女が屋敷から出てきて、セダンに向かって歩い ていく。 「稲垣さんの奥さまでらっしゃいますね」 5

4. SFマガジン 1974年11月号

た : : : 年をとらない人間が存在する、というがね。始めは、駐留 昻然と頭をもたげて、 「私は女にだってなれる。東南アジアの小国の大統領と結婚した米軍の高級将校のかみさん連中の間で囁かれていたらしいけど : ・ 成りあがりなんかじゃなく、本物の女王になれるんだわ」 多分、弥生の幻想のなかでは、彼女はもうすでに女王なのであろ表情を読みとられまいと、私は顔を杯の上に伏せた。酒に映った う。その夢のなかで、私は彼女にかしずいているのか、それともあ私の顔が、そうけだっていた。 「そのうちに、今度は男たちの間で、年をとらない人間のことが話 っさりと断頭台送りになっているのか、それが是非とも知りたかっ 題にの・ほりだしたの。政界財界のトップクラスのお爺ちゃんたち が、禿げた頭を寄せ合って大真面目に年をとらない人間のことを囁 が、弥生は赤の他人の私に自分の夢を語ることの愚を覚って、た き合っているのよ : : : もしかしたらこの奪は本当かもしれないと、 ちまちのうちに、、 しつものミステリアスな女に戻っていった。 私が思ったのはね。そんな—連中でさえ、本当のところどうな よく切れる女だった。 のか知らなかったからよ。彼等にしても、時おり耳に入ってくる墫 ぎれいな女とは恋人になれる。頭のいい女とは友達になれるかも の断片を不細工につなぎ合わせて、ただ推測することができるだけ しれない。だが、きれいで、頭のいい女に出合ったら、すぐに逃げ なのよ : : : こういう噂は根が深いわ。そして、おうおうにして真実 た方がいし であることが多いものなのよ : ・ : こ、 脇目もふらず、ひたすら逃げるのだ。 「年をとらない人間が存在するとして、それがなんだというのかね 冫をいかなかった。まだ弥生の話は残っている 私は逃げだすわけこよ のだった。 「エルゼべエト ハトリーという名前を聞いたことがあって ? 」 「確かに面白い話だが、俺に得になる話とは思えないがね」 「慌てるんじゃないの。話はこれからよ」 「十六世紀ハンガリアの『血まみれの伯爵夫人』よ : : : 若い娘たち 「手短かにやってくれ : : : 今夜は洗濯しなければならない」 を、内部に無数の棘の生えた格子づくりの鳥籠に押し込め、彼女た べラドンナ 「 : : : とにかく私は『美しい女』の販売権を手に入れたわ。そしちが流す血を、床に横たわってシャワ 1 のように浴びた美しい女ー て、長い間、待った。女たちの話はとりとめがないわ。そのなかか ー一度に三人四人の娘たちの血を搾って、その血をたたえた浴槽に ら役にたつ情報を拾い上げるのは、それこそ至難のわざなのよ」 体をひたした伯爵夫人よ。彼女が殺した娘の数は、六百人を越える 「だが、君は拾い上げた」 と言われているわ」 弥生はうなずいた。 「怖しい話だな。淫血症の、サディストだったわけだ」 「それに、同性愛で、たぶん冷感症でもあったわ : : : でも彼女は本 「ここ一「三年のことだけど、彼女たちの間に奇妙な導が流れてい 7

5. SFマガジン 1974年11月号

「あら、私の有能な秘書よ , ーー秘書だったわ。ただあの人の父親私はうなずいた。 ・ : だが君の話が先だ」 : こっこらしいの。それで父親が亡くなって「ないこともない : が、昔、稲垣と知り合しナナ からは、色々生活の面倒をみてもらったのね。学費なんかも援助し弥生は小首をかしげたが、 てもらったみたいよ : ・ : ・早野が殺された時、私がまっ先に稲垣の身「いいわ。鹿島さんの話は後で聞くわ」 辺を調べさせる気になったのも、そんな事情をよく知っていたから話を続けた。 「早野が短期の契約で借りたマンションがあるのをつきとめて、私 「どうして、早野の事件を調査する気になったんだ ? 君は彼に惚はその部屋に行ってみたわ : : : でも誰もいなかった。私が鹿島さん のことを思いだしたのは、その時だったの。確か、行方不明の娘が れていたのか ? 」 ・ヘラドンナ 『美しい女』を使っていたとか言ってたけどーー・そう気がついて、 「まさかーーー」 ・ヘラドンナ なにを思いだしたのか、弥生は鼻にしわを寄せて、しかめつ面を『美しい女』のリストを調べてみたら、その娘に該当するような名 前はなかった。そうなると考えられることは一つ、早野が私に無断 つくった。 ・ヘラドンナ 「私はね。自分の勘を信じているの。その勘が、私をここまでにしで『美しい女』をストックから持ちだして、その娘にプレゼントし てくれたんですからね : ・ : ・早野が殺されたのにはなにか尋常でないた : : : つまり、その娘こそ、稲垣が早野に預けた年をとらない人間 に間違いない。それつ、今度は鹿島という男を探せーー・・鹿島さんが 理由が隠されているーーーそんな気がしきりにしたのよ」 「なるほどね : ・ : ・それで稲垣を調べてみて、今、君がしゃべったよ早野に渡した名刺が残っていたから、これはわりに簡単でしたけど ね : : : これで私の話は終りよ。今度は鹿島さんが話す番だわ」 うなことを探りだしたわけか。たいした腕だな」 と私をねめつけて、弥生は話を終った。 「探りだしたのは、それだけじゃないわ」 私はうつむいて、しばらく弥生から聞いたことを咀嚼していた。 「稲垣が早野に依頼したのはね、誘拐した年をとらない人間を、ど確かに、すじは通っているようだった。だが弥生の話から推測して ・ハン・ハイヤ いけば、あの眠れる美女は実は吸血鬼だったということになる。そ こかにかくまって欲しいということだったのよ : : : その誘拐された れは信じ難いことであるように思えたし、なにか冒濱でさえあるよ 年をとらない人間は、どうやら若い女性だったらしい 誘拐された若い女性ーーある少女の裸身が、私の酒に濁った頭うに感じた。 に、白くきらめいて消えていった。須藤の姿を、その裸身にオーヴ電撃に打たれたように、私は体を。ヒクリと痙攣させた。 やはり、私はあの少女に愛情を感じていたのか ? 須藤の冤罪を ア・ラップさせようとしてみたが、なぜかうまくい力なカった 晴らしたいというのは、自分をごまかすためのきれいごとでしかな 「どうやら、む当たりがあるようね ? 」 かったのか ? 私は眼を細めた。だが私の視界に映っているのは、 ・弥生がまっすぐに私の顔を見据えで、低い声で言った。

6. SFマガジン 1974年11月号

こそ小説にした、とその昔なにかに書いたことがあるような気がす 「まあ、こんな側面は絶対にあるのよ、ただ僕は、こういうのも る。それは言うまでもなく、模型モーター自動車を、積み木のレベ 好きだけど、『みずうみ』なんかのものすごくおさえこまれた感 ルへと原型化したことに他ならない。そうやって、・フラッドベリ じの方が、これはちょっとサイエンス・フィクションの問題とは は、自分の名前さえも、その作品総体をからめとってひとつの自由 ちがって憧れちゃうとこなくはないなあ」 なシンポルにしてしまったのである。 だが、最良の三冊はいつだって『刺青の男』、『太陽の黄金の林擒』、 『ロケット』は『刺青の男』のおしまいの一篇である。宇宙旅行をそして『火星年代記』なのだ。 夢見るフィオレルロ・ポドーニは、ひとり分の切符代を苦心して手萩尾望都がついに単行本になった。コミックに連載されていた にいれる。しかし子供たちに妻、そして自分、いったい誰がひとり『ポーの一族』三分冊は、だけどほとんど ( 僕等にとっての ) 彼女 だけこの夢をはたすべきなのだろう。そんな時、彼は有り金をはたの魅力を伝えていない。時おり、あのはっとっかれるような美しい いて、実物大のロケットの模型を買いいれてしまう。 線を見せはするけれど、ふわりとどこかへ連れてってくれそうだっ ロケットには、時間と空間の匂いがしみついていた。それはた、初期短篇の魔法はなくなってしまっていた。プラッドベリより まるで時計の内側へ入っていくような感じだった。・ ・ : そして運もプラッドベリらしくて、どこか妙に生々しいみたいなあの短篇群 転席に腰をおろした。操縦桿にふれた。目をとじて、ロのなかでは ( 伊藤典夫の押入れを除いて ) どこへ行ってしまったのだろう。 ・フーンと言った。その声が次第に高くなった。ビッチがあがつもう今は、題名もお・ほえていないけれど。読みたいな、と思う。少 た。熱がこもった。狂暴になった。その声がポドーニの内部で震女漫画では極めてまれなことだけれど、彼女の作品は手ざわりが優 動し、ドーニを引きずり、ポドーニを揺り動かした。ロケットしかった。 「・ : ・ : なんてことにやつばりなっちゃうんだよ」 の沈黙がとどろきわたり、被覆の金属が金切声をあげた。・ : ・ : 音 響は高まり、火になり、カになり、浮力になり、ポドーニを弓きと僕が言った。 「結局なんだったんだろう」 裂くほどの推進力になった。 ・ : もう止まらない。止めるわけに とが最後のビールを飲み干した。 : ポドーニは叫んだ。「出発 ! 」 「基本的には言葉のレベルのことみたいだな」 彼はこのひとつの玩具に生命を与えたのだ。彼は、自らの頭のなか と僕もグラスを明けた。 へと突きすすむ。そして、一瞬の高揚が去って行く。 ・フラツー・トべリ - 十、・こ・、、 。ナカこんな風にして読む人毎に姿を変えてい 荒い息を吐きながら、ポドーニは永いあいだ運転席に坐って いた。ゆっくり、ゆっくり、目をあけた。そこはしずかな金屑置るのかもしれない、と僕は思った。とてもつらいことだけれど、と も思ったに違いない。プラッドベリが居なくなってしまった。 場だった。 少年の想像力の息づかいを、・フラッドベリは知っている。わかる 「なんだか変な話になってきたなあ」 とが顔をしかめた。 ジャンク

7. SFマガジン 1974年11月号

ート・ラン。、ートよ 「いや、ホームステッド法はまだ有効だ」ロ・、 「いや、ほんとうさ。ただ、その土地には、まだだれもはいりこめ そうつつばねた。「この郡には、持ち主のない土地が一区画残ってたものがない。いまじゃ、一種の冗談みたいになってるぐらいだ」 「よーし、おれはその冗談をとことんまで調べあげてやる」ランパ る。そいつを申込みたいー セシリア・ランパ ートは、遠くのデスクにいるかっぷくのいい男 ートは言いきった。「その土地に住んでみせる。もし、住めなかっ がよこした、わけ知り顔のウインクに、「ハーイ」と答えた。彼女たら、そのわけをつきとめてやる」 ししをしナ「この前の入 はしゃなりしゃなりと歩みよって、甘い声でささやきかけた。「あ「そううまくいくかな」かつぶくの、、男よ、つこ。 たしはセシリア・ラン。、 / ート。でも、芸名はセシリア・サン・ファ植者がこの土地を申込んだのは十二年前だったが、その男もやつば ンっていいますの。あのう、七つというとしは、お・ほこ娘の役にはり住めなかったようだぜ。おまけに、なぜ住めないかの説明もでき ないしまつだ。おもしろいんだよ、申込んだ連中が一日二日がんば まだ若すぎるかしら ? 」 ったあと、しようことなしに諦める、その顔つきたるや見もので 「きみならだいじようぶだよ」男はいった。「おうちの人たちを、 ね」 みんなこっちへ呼んでおいで」 ラン。ハ 1 ト 一家は郡役所を出てキャンパ 1 に乗りこみ、自分たち 「おじさんは、公有地管理課がどこにあるか知ってますの ? 」 「ああ、知ってるとも。この机の左袖の、上から四番目の引出しがの土地へとでかけた。一家が車をとめたのは、牛飼いと小麦作りを そうさ。この役所のなかでもいちばん小さい課だな。なにしろ、近半々にやっている、チャーリー・ダ・フリンという農家の前だった。 頃はさつばりお呼びがなくってね」 どうやらすでに連絡があったらしく、ダブリンはニャニヤしながら ラン。、 ト一家はそこに集った。かつぶくのいい男は、書類の作かれらを迎えた。 「よかったら、みんなこっちへこないかね」ダ・フリンはいった。 成にとりかかった。 ート・ラノ。、ートよ、つこ。 をしナ「なんだ、土地「おれの牧場の中を抜けていくのが、いちばん近道だよ。あんたら 「これが謄本か」ロ・、 の土地は、うちのすぐ西隣にあるんでな」 の内容もちゃんと書いてある。どうしてわかるんだね ? 」 かれらは境界線までの短い道のりを歩きだした。 「わたしはこのへんには長いんだよ」男は答えた。 書類の記入はおわり、 ハート・ラン。 ( ートはくだんの土地の持「ダ・フリンさん、・ほくはトム・ラン。 ( ートです」六つのトムが、歩 きながら話しかけた。「でも、本名はトムじゃなくって、ラミレス ち主となった。 「しかし、その土地へはいるのは、まあむりだよ」と、男はいつなの。・ほくは、うちのおかあさんが七年前にメキシコで犯したあや まちから生まれた子どもなんだって」 7 ・ハートは詰問した。「この謄本に書いてあ「この子はおふざけ屋なんですの、ダブリンさん」母親のニーナ・ 「どうしてむりだ ? 」ロ 3 ランパートが弁明した。「メキシコなんて、わたしは行ったことも ることは嘘なのか ? 」

8. SFマガジン 1974年11月号

も見破られているらしい。アメリカの権威あるカメ 録されるようにしていた。しかも、彼ら ・フォトグラフィー』にはキャ ラ雑誌「ポ。ヒュラー が、レヴィに隠して、わからないように ' ′・「ま、「、 レップをしたままのカメラに念力で写真雑誌に出てい 取りつけた別のレコーダーの方には、予 = 《お第当い一」・ たワシの写真を念写するはずだったユリ・ゲラーが、 期された通り、五〇パーセントの快感時、】ニを ~ 、 間が記録されていたのである。 」第第、主・ち = 0 とした際にキ , プをはずして〉 , ターを の一押したのを見破られた、という記事が写真入りでの かくて、疑惑が正しかったことを確信、 ルタ した三人の研究員が、ライン博士にこの、》 ダル「たし、西ドイツの有力週刊誌『ツアイト』には、 ンオスタンフォード研究所がゲラーの超能力を〈保証〉 事実を報告し、博士は自らレヴィを詰問、 ャウしたというのはとんでもないデマだという話を、同 することになる , ーー・その結果、レヴィ・籌「、 ス誌記者が同研究所の幹部から聞いたという記事が堂 は、データに操作を加えたことを告白し 堂とのっている。 て研究所を辞職するというスキャンダル一録、 その上、『ツアイト』は、厳格なテストで超能力をはっきり示してくれた に発展したわけだが、ライン博士はその後、レヴィのそれまでの発見や報告 のチェックを他の所員に命じた上、チ = ックが済んで、それが正しいと判定者に一〇万マルク ( 邦貨約一一〇〇万円 ) の賞金を出す、という企画を発 表、実施したが、金儲けにかけてはかなり目のないはずの ( 彼の育ての親であ が下るまでは、レヴィのデータを信用しないようにも警告した。 レヴィ自身は、辞職後、ある友人に、インチキをしたのはその時ただ一回り演出者であるプ ( ーリック博士のゲラー伝『ュリ・ゲラー』にはっきりそ だけで、その時も、周囲の人々の期待があまり大きかったため心身ともに疲う書いてある ) ゲラーが、遂に何度もの呼びかけにもかかわらず回答さえし 労しきっていて、つい魔がさしただけだ、自分の期待したデータが出ないのてこなかったという。 ( ちなみに、この実験に挑んだ少年少女〔十一歳から で、それを〈強化〉する必要を感じたのだ、と語っているが、いかに弁じよ十二歳〕三人と、十八歳の青年、六十四歳の小学校教頭の五人は、超能力の 片りんすら示すことができなかった。その後同誌編集部には、同誌の超能力 うとも、それがたんなる弁解としてしか聞かれないのは当然だろう。 に対する〈不信行為〉をなじる投書が山積したというあたりまで、どこかの これと全く同じようなケースが、最近の日本でのス・フーン曲げショーでも あり、全く同じような弁解を、超能力擁護側がしていたのを思いだすが、そ国と同じだったーー ) 超能力があるか、ないか、それは今のところ、さして重要な問題ではな の弁解が本当にしろ苦しまぎれのにしろ、ただ一回でもインチキがあった 。もしあるものなら、それほど性急に騒ぎたてなくても、芽をつぶすのな のでは、それまでの〈事実〉なるものが、疑惑の目で見られるようになるの んのとそれほどヒステリックに心配しなくても、もっと長時間かけて成果を は、やむを得ない成り行きだろう。 それにしても、レヴィは・ーーそして、この種の研究者あるいは能力者と称見ていれば必ず顕在化してくるだろう。むしろ問題なのは、こうした傾向 が、理性や合理的精神への盲目的な反援に輪をかけるにちがいない、という する人たちの中にはーーどうして、こうした幼稚な詐術の誘惑に負ける人間 が多いのか。日本に超能力騒ぎを巻き起して行ったユリ・ゲラーも、その後ことである。 の海外からの報道によれば、どうもこの種の詐術をあちこちでやっては何度 205