バとの間の共同声明が出され、ヤ的事実ではないか。 一九六一一年九月、ソ連とキュー = 1 。 ( が要求する武器と軍事使節団の派遣にソ連が同意したことが隅から隅までルーべを動かして、記事を調べてみたが、そこには これといって特別なことは書かれていなかった。となると残る可能 明らかにされた。その約一カ月後の十月十四日、アメリカ政府は、 性は新聞写真というわけだが、抗議の拳を振り上げたデモが大きく キ、】バに攻撃用ミサイルが設置されているのを確認した。 その後一一週間、世界は第三次世界大戦の恐怖におののくことにな写されているだけで、別になにも : ・ 私の手からルーべが落ちた。 る。 あまりの驚きに、脳髄が麻痺したようになり、しこりのような異 十月一三日、ケネディ大統領は、ソ連が攻撃用ミサイルをキー ・ ( に設置していることを発表して、これ以上のミサイル搬入を防ぐ物感が咽喉に拡が 0 ていった。その異物をどうしても嚥下すること ためにキー・ ( を海上封鎖する用意があることを明らかにした。翌ができず、私は金魚のようにパクパクと口を喘がせた。 一一 = 一日、ただちにミサイルを撤去されたいというアメリカの要求ようやく気持ちを静めて机の下からルー。〈を拾い上げた私は、 今、自分が眼にしたものをもう一度確かめてみた。 を、ソ連が拒否した。 その写真は、デモを写した報道写真の多くがそうであるような、 二四日、アメリカによるキューバ封鎖が開始された。 高い位置から撮ったものではなかった。沿道の群集に混じって撮影 まさに、一触即発の状態だったわけだ。 一一四日から一一八日まで、ケネディとフルシチ = フとの間に書簡がしたものらしく、対象物であるデモ隊とカメラとの間に何人かの人 交され、フルシチ = フから提案された、アメリカがキ、ーバを侵略間が入 0 ていた。いかにも素人 0 ぽいアングルだ 0 たが、それがか ( ミサイル基地を解体えってデモの生々しい臨場感をかもしだしていた。 しないと約東すれば国際管理のもとでキュー 問題は、その群集の方にあった。 すゑという条件をアメリカが受け入れ、あやういところで米ソ衝 のミサイ見物人のなかに一人の娘が立っている。どうやらカメラマンと知 突は回避された。二八日には、フルシチョフは、キュー・ ( り合いらしく、こちらを振り返って優しく微笑している。ドキッと ル引揚げを命じたことを、アメリカに知らせている。 の意志はまったく無視されたわけするほど美しい笑顔である。 この解決に際して、キュー・ハ で、東都新聞の記事は、つまりそれに抗議してくりひろげられたデ眠れる美女なのだ。 私はルーべを手にしたまま、しばらく呆然としていた。 モを取材したものだった。 ありえないことだった。一九六一一年といえば、もう十年以上も前 私が記憶している限りでは、以上が「ミサイル危機」の経過だ イのことになる。あの娘はその頃六つか七つ、どう考えても小学生以 が、分らないのは、どうして早野がこのデモの記事をマイクロフ ルムに収めて、紙「ツチに隠さねばならなか「たか、ということ上であるはずがない。ところが、写真に写 0 ているのは、どう見て だ。確かに大事件には違いないが、「ミサイル危機」は周知の歴史もあの雨降り日に私が車に運びこんだ少女に間違いないのだ。 ー 42
ト七回目の航海』や、『アルゴ探検隊の大公開がアメリカで始まっている。今年の始 冒険』、またロ ・ハート・ワイズ監督の『地めに、この映画の製作会社であるが、 球が静止する日』、ヴェルヌ原作の『地底配給業務から撤退しているので、今回のリ 探検』、レイ・プラッドベリ原作・フラン ハイ・ハルは、作品のアメリカ興行権 ソワーズ ・トリフォー監督の『華氏 4 5 をもっているユナイトが行っているが、七 1 度』などの作曲をした人だ。 リウッドのパシフィック 月第三週に、ハ このハ ーマンは、最近特に人気が高くな シネラマ・ドームで始まったテスト興行 ってきており、アメリカやイギリスで続々では、昨年末に公開された「スティング」 とアンソロジーが発売されたり、『シに次ぐ、 ( ウス・レコードを記録、幸先の ン・ハット』のサウンド・トラックが再良いスタートとなった。・もちろんリ・ハイハ プレスされたりしている。 ル作品としては最高新記録だ。 このパシフィック・シネラマ・ドーム なお、『悪魔の赤ちゃん』のスチールでは、年の封切り公開のときも先陣をうけ は、かんじんの《悪魔の赤ちゃん》が報道たまわった映画館で、このときは封切りで 管制にあっていて、紹介することができな四週間 ( 1 年 6 カ月 ) の大口ングランを記 い。これは、『エクソシスト』のときにリ録した。ハ リウッドのサンセット大通りに ング・・フレアに悪魔が乗り移ってからの写面し、月面基地を思わせる真白なドーム 真が発表されなかったのと同じで、話題をに、シネラマカラーの赤いじゅうたんがよ 盛り上げるための常套手段だが、おかげでく似合う素敵な映画館だが、今度の上映で 恐怖映画なのに、恐しいシーンが一枚もなも、九一五席のこの映画館を連日満席に ついに警官隊は″赤ちゃん″を射殺する くなってしまった。まあ、この号がでる頃し、毎週 5 万ドル以上の興行収益を上げて 讐』とでも呼べそうな、この映画『悪魔のには、すでに劇場で公開されているわけだ いる。このテスト上映は次回作との関係も し、《悪魔の赤ちゃん》の恐しい姿は、劇あって、 5 週間で一応打ち切られた模様だ 赤ちゃん』の、もう一つの話題は音楽だ。 場の方でゆっくりとご覧になって下さい。 この映画の音楽を作曲した・ハーナード・ が、この大ヒットに気を良くしたユナイト ーマンは、ヒッチコックの『北北西に針 では、ただちに今秋に全米に向けてリ・ハイ 路を取れ』や、『サイコ』「『鳥』の作曲者『 2 0 01 年・宇宙の旅』といえば、これ ・ハル公開を決定、準備に入った。 で、ヒッチコックの良き理解者である、と はもう、映画にとって永遠のベスト・ とはいえ、このリ・ハイ・ハル、あくまでも いうよりは、やはり映画ファンにとっ ワン作品みたいになってしまっているが、 アメリカ国内だけのことで、わが国では ては、レイ・ハリーハウゼンの『シン・ハッ この名作のれ年に次ぐ 2 度目のリ・ハイ。 ( ル作品のアメリカ大陸を除く全世界興行 ワーナー映画「悪魔の赤ちゃん」 4
・ほくの好みであることがわかり、おかげで『火星を器用に仕上げるので、一時は「キャンベルの御に行き、赤んぼうと書きおきを残して一目散。下 年代記』も楽しく読めるようになったのだが、ひと用作家」と悪口をいわれたほどだが、長篇の場合宿に帰った彼は、そこではたと失策に気がつく。 つだけ腹だたしいのは、遠いむかしに矢野氏が紹はまったく逆で、問題意識にあふれた大胆な作品赤んぼうの複製を作ったはいいが、ヘソをつける 介したような、めちゃくちゃなが意外に見つを書く。最新作『鉄の夢』 The lron Dream のを忘れていたのだ。孤児院の人びとはどう思う からないことだった。ベスターの『虎よ、虎よ ! 』 ( 1972 ) は、アドルフ・ヒトラーが戦前アメリカにだろう ? ヴォネガットの『タイタンの妖女』、その他二、 移住し、失意のうちに作家を志していたとい これは「クリスマス・。フレゼント」のなかの小 三の長篇と、ときたま見つかる短篇だけで満足しう仮説のもとに、ヒトラーの狂気をヒロイック・ さなエ。ヒソードで、物語はまだ終らない。しかし ていなければならない時期が、どれくらい続いた ファンタジイの形式で書いた小説。フランスでは紹介はこの程度でいいだろう。ウエンズディの子 こ A 」か。 おそろしく評判がよく、ロ・フⅱグリエ、ビュトー どもは、孤児院にあずけられたへソのない赤ん・ほ そのうち時代が要求したのだろう、ぼくが求めルなどが選者として名を連ねた、年間の最優秀 うが、その後どうなったかというお話だからだ。 ていたような小説を書く作家がしだいに増えてき長篇に与えられる賞、アポロ賞を獲得してい ただし、前作の ハードな味わいとはおよそ縁の遠 た。日本では筒井康隆、アメリカでは・・ラる。 い内容なので、その点はご注意いただきたい。 フアティ、イタリーにはイターロ・カルヴィーノ ( 翻訳された『柔かい日』もいいけれど、その前「火星をめぐる穴・穴・穴」 ( ギャラクシイ誌五「せまい谷」 ( & 誌六六年九月号 ) 作たる『宇宙喜劇』 Le Cosmicomiche は最高四年一月号 ) 残りの枚数もすくなくなってきた。・・ラ だ ) 、そしてポーランドにはスタニスワフ・レム ジェローム・ビクスビイは、五〇 / 年代はじめか フアティについては、本誌七二年八月号の「ラフ ( 『宇宙創世紀ロポットの旅』の作者とあれば、当ら誌に軽妙な短篇をぼつぼっ発表しているマ アティ特集」にある浅倉久志氏の解説をお読みく 然いれなければなるまい ) 。もうすこし範囲をひイナーな作家。わが国にも二、三翻訳されているださい。 ろげれば南アメリカの何人かの作家や、アメリカ が、なかでも「愉しきかな人生」 ( 本誌六五年一 のジョゼフ・ヘラー ( もしあなたが筒井康隆のフ月号 ) はご記憶のかたも多いだろう。 「ザ・ビッグ・スペース・ファック」 ( ハーラン アンなら、ヘラーの『キャッチー』はきっと気 ・エリスン編『危険なヴィジョンふたたび』七二 にいるだろう ) ほか数人がはいってくるのだが、 「ウエンズディの子供」 ( ファンタスティック・年 ) まあ、これは別の話。 ュニヴァース誌五六年一月号 ) もしかすると、これはカート・ヴォネガットの というわけで、ぼくがわが家の春を謳歌すると ウィリアム・テンに「クリスマス・プレゼント」最後の短篇小説となるかもしれない。一時中断し 同時に、ラフアティ、ヴォネガットを中心にささという中篇がある。ダニエル・キイスの「アルジていた長篇『チャンピオンたちの朝食』 Break ・ やかながら、この特集。 ャーノンに花東を」には一歩ゆずるかもしれない fast of Champions ( 1 3 ) は、出版社との契 が、アメリカで発表された作品ちゅうアンン約にしばられてなんとか完成したものの、ヴォネ ついでに作者と作品について、すこし事実を補ロジイへの収録回数がもっとも多いといわれる、 ガットは、この世界にも、自分の小説にもまった 足しておこう。 テンの傑作のひとつである。 く絶望してしまっているからだ ( 皮肉なことに、 「主観性」 ( アナログ誌六四年一月号 ) 独身の若い弁護士のアパートに、荷物が配これは大ベストセラーになった ) 。この「ザ・ビッ ノーマン・ス。ヒンラッドは、わが国にはまだ馴達される。あけてみると、「模型人間組立セット」グ・スペース・ファック」にも、そんな絶望が色 染みのうすい作家である。作品の翻訳は、本誌七という奇妙なしろもの。じつは配達の手ちがいで濃くあらわれており、じつに投げやりな作品にな 四年三月号の「発明の時代」 ( これも相当におか未来からとどいた人間複製装置なのだが、本人につている ( そこがまたいいのだが ) 。たとえば、こ しな小説だった ) につづいて、これが一一度目。一 は知るよしもない。彼はおもしろ半分に、下宿のの題名。ハーラン・エリスンによれば、「ファッ 九四〇年、一一ユーヨーク生まれ。二十二歳のとき、女主人の赤んぼうを借り、その複製を作る。できク」というスラングが小説の題名に使われたの ジョン・・キャンベルに見出され、アナログ誌ばえは上々。しかし、その赤ん・ほうをどうするか は、これが最初だということだ。 を中心に活動を始めた。編集者の好みにあう短篇という段になって、こまってしまう。彼は孤児院 9
昭和 35 年 4 月 12 日第 3 種郵便物認可昭和 34 年 12 月 1 日国鉄東局特別扱承認雑誌第 682 号昭和 49 年 11 月 1 日印刷・発行 ( 毎月 1 回・ 1 日発行 ) 第 15 巻第 12 号 マガジン 19 フ ◎◎ アメリカ・ファンタジイ & S F 言 . 特糸 Sc た〃化 / S 〃 4 / 砒わ〃 & 月 c 行 0 〃 / Fa 厩
000 であげていた。ジョン・・ニューカムとい ところで、「ジザム」という語にはおもし うその男は、けつきよくほかの女と結婚したろい歴史がある。それは「ファック」や「シ 9 という。 彼は今たいへんいい職についていッ ト」等々と同じくらい古いことばだが、ほ る。サウス・ダコタの兵器庫を警備する保安かの語が辞書に採録されたのちも、それだけ 部隊の指揮官なのである。そこには、コレラは長いあいだ除外されていた。というのは、 菌と腺ベスト菌が貯蔵されている。 きわめて多くの人びとが、これを真に魔術的 保安官はもうひとっ不幸なニュースをたずなことばとしてーー・ーひとつだけーー残してお さえており、それを伝える機会がまもなく訪くように望んだからだった。 れることを知っていた。「どうしてあの子がしかし合衆国政府が、真に魔術的なことを こんなことを ? 」哀れなドウェインとグレイ計画している、アンドロメダ銀河系にむけて スがそうたずねるときが必ずやってくる。そ精液を射出すると発表したとき、大衆は政府 の問いに対する答えは、二人をさらにうちのの用語法に異議をとなえた。今こそ最後の魔 めすにちがいない。 ワンダ・ジューンは、万術的ことばが明るみに出るときたと、集団的 引団の首領であった罪を問われ、留置されて無意識が教えたのである。べつの銀河系めが いるのである。刑務所行きをまぬがれる唯一けて発射するにはスパームはふさわしくな の方法は、すべてを両親のせいにしてしまう 、発射できるのはジザムだけだ、大衆はそ ことだけなのだ。 う主張した。こうして政府はジザム (Jizzum) その間スクリーンには、 ミシシッ。ヒー州選という語を使いはじめたわけだが、これは今 出の上院議員で、上院宇宙委員会の議長であまで見られなかった現象をひきおこした るフレム・ス / ープスが登場していた。スノこの語の綴りが統一されたのである。 ープス議員は〈大宇宙おまんこ〉にご満悦の ようすで、これこそアメリカの宇宙計画が最インタビ = ーワーの要請に応じて、スノー 初からめざしていたものだったのだ、と語っプス上院議員はこころよく立ちあがり、自分 ジザム ていた。アメリカ最大の精液冷凍工場を、彼の「〉ドビース ( + 六世紀に男性がはいた半 ) ど の生まれ故郷の町メイヒ = ーにおいた政府のカメラに向けた。コッド。ヒースはいま大流行 決断を誇りに思っている、と彼はいっこ。 で、多くの男性が〈大宇宙おまんこ〉を記念
一週間位前だろうか、六本木のミスティで、なんとか言う知らな だぜ、死んたんだ、わかるか ! 死んだんだ ! 真似してるんじ ハンドを聞いていたら、突然、ジャズってのがひどくいとおしく ゃない、遊んでるんじゃない、ふざけてるんでもない、おっ死ん で冷たい死体になっちまったんたよ ! 」彼はこぶしをかためてジなってしまって、ガクゼンとしたものだ。よくわからないけれど、 ジャズの文脈には、納得を強要するみたいな所があるようだ。これ ニーをどなりつけた。どなり声は、暖かな昼下がりを寒い冬に は、どう考えてもビートニクの音楽だぜ、とその時思った。理由も 変えた。 なにもない、ただ、うんうんと聞いていれば、それたけで終ってし 「死んたんだ ! 」 スミスのうちに冷たいものが走った。ジョ = ー、奴のいうことまうのが何とも不気味だ。ああオレもついに、こんな年かと一杯の 世界はすばらしい場ウイスキ 1 が急にまずくなってしまったものである。僕等が聞いて を聞くなー・傷つけられるな、ジョニー 所なんだと信じ続けるんだ。純真なまま、怖れも知らず生き続け育った音楽は、なんといっても・フルース・ロックであろう。応答形 るんた ! 恐怖につけいられるな、ジョ = ー。おまえもいっしょ式だけで成立ってるみたいなこの音楽は、自問と爆発的なケーレン 音によって、見事に全ての正解を突き崩していったものだ。自壊す にこわれちまうそー この短篇はいろいろな意味で示唆的である。第一にジョニ 1 は、あるためだけの音楽たった。だから音楽だった。 「おれはどうも音楽が本当は大嫌いなんじゃないかと思いだした の若すぎる位若かったアメリカの国民とその産物サイエンス・フィ クションの見事な寓意のようだし、そして現実よりは精薄のジョニ とわたしはに言ったものだ。 】をこそ選びとるプラッドベリの質もまた明瞭た。 昔、飛行機が好きだった。だからあの『ジョナサン・リビングス ハヤカワ T2 シリーズ 3 2 8 5 トン・シーガル』というのがあらわれた時に、ああこりやパイロッ プラッドベリの「黒いカーニバル トの本だなあ、と納得したものだ。どういう訳か空の上へあがれ ば、なにもかもがひどく素直になってしまう。まるでジョニーのよ うな人々は、空でくらすのが一番なのだ。人間は空を飛んでいる間 だけ、人間ではなくなるみたいだ。だが、われわれは幸か不幸か、 カモメではなしに、翼のない生物なのであろう。アメリカ人ならカ モメに似ているかもしれないけれど。われわれは本当に自分達の主 人になるべきだ、と思う、カモメの親分にではなしに。 おいらの恋した女は / 港町のあばずれいつも / ドアをあけた ままで着替えして / 男たちの気をひく浮気な女 : : : かもめというと まずこんな歌、そして僕が大好きなほんものの海のかもめの眼、『ジ ョナサン・リビングストン・シーガル』なんて本は悪魔に食われて しまえ。 黒し、カーニノレ ー 03
サ・ビッグ・スペース・ファック カート・ヴォネガット訳 = 伊藤典夫画 == 霜月象一 一九七七年、アメリカ合衆国では、若い男なっていたからだ。堕胎は自由化されてい 女が自分の受けた養育に対して、両親を訴えた。事実、堕胎を申し出た女性は、報賞とし ることができるようになった。当人ががん・せて浴室用ハカリか電気スタンドのいずれかが ない子供であったころ両親が犯した重大な養もらえるのである。 ビッグ・ス・ヘース・ファック 育上の過失に対して、両親を法廷にひきだ一九七九年、アメリカは〈大宇宙おまんこ〉 し、賠償金をとりたてられるばかりか、懲役を計画した。これは、人類を宇宙のどこかで に服させることもできるのである。この法律・せがひでも存続させようとする真剣な試みで には、正義をつらぬくというおもてむきの理あった。もはや地球上には、先行き生きてい 3 由のほかに、出産をおさえるという意図もあく望みはなかった。あらゆるものが、くそ 9 った。無理もない、食料もろくにない時代にと、ビールの空きカンと、ポンコッ自動車
ハヤカワ・ノヴェルズ / 最新刊 別れの朝 クリスチーヌ・ド・リヴォワール / 三輪秀彦訳¥ 1000 朝靄の中で馬を駆る野生の少女ニナの愛は、 ナチス・ドイツの手で無残に引き裂かれた ! フランス、ランド地方の自然の中で美しく成 長する少女の心、を、独特の文体とみすみすし い感・性で才苗きあけ、る、サガンと比較されるフ ランス女流作家の代表作。 フランス映画 富ま映画提供 週末人間 リチャード・ B ・ライト / 古沢安二郎訳¥ 1000 ウェーカム氏は教科書会社のセーノレスマン。 いささか被害妄想的で空想癖のあることを除 けば、依固地ながらも大過なく会社勤めをし ていた。ところ力、勤めている会社カゞ大会社に 買収されることになって・・ 平凡なサラリ ーマンの哀歓を才苗いて感動と共感を呼」ゞ ! 田月中旬発売予定 戦争の嵐 ( 全 = 巻 ) ハーマン・ウォーク / 邦高忠二訳⑦各¥ 1200 第二次世界大戦直前、べノレリンのアメリカ大 使館に着任した海軍士官とその一家を軸に 世界中に吹きあれる、、戦争の嵐〃と歴史の流 れに翻弄される幾多の人問像を描き、読む者 に深い感動を与える戦争文学の傑作 ! ぐ み
「ひとり ? 」 正面の入口を入ってすぐのところに、半円形のカウンターがあっ て、女が一人、そのなかに坐って本を読んでいた。カウンターに近「ええ、研究室長のお部屋につながる直通ナン・ ( ーなんです。です づき、しばらく待ってみたが、女は本から眼を上げようとしなかっから、西村教授がお使いになる電話です」 「その西村さんという方に、会わせていただけるでしようか ? 」 と私が勢い込んで尋ねるのに、 やむをえず、私は咳ばらいをした。 「それが駄目なんです」 女は顔を上げて、 女は首を振った。 「あら」 掌でロを押さえた。慌てて、本をカウンターに伏せる。翻訳もの「今、西村教授は、アフリカにいらっしやるんですの。来月の始め には、お帰りになる予定ですけど : : : 」 のミステリーだった。 「ーーアフリカ」 「すみません 9 私、つい本に夢中になっちゃって : : : 」 膨らみかけていた期待が、一瞬のうちに、し・ほんでしまった。に 若くはない。私と同い年ぐらいだろうが、知的な、気持ちのいい わか探偵の仕事にしては、どうもことがうまく運びすぎる、とは思 表情をした女だった。 ってはいたのだが : ・ 「お説きしたいことがあるんですが : : : 」 「西村さんは、いっ頃、アフリカへ発たれたんですか ? 」 私は言った。 気力をふりし・ほって、私は説いた。 「ハイ、なんでしよう ? 」 女は応えた。 私は、もう憶えてしまっている電話番号を言って、 「十日ほど前ですわ」 「この電話を使っていられる方に、お会いしたいんですが : : : 」 私は、頭のなかで、逆にカレンダーをめくってみた。須藤が聡子 「どんなご用件でしよう ? 」 「いや、それが、直接ご本人にお訊きしないと分らないことなんでの部屋にあの少女を運び込んだのが、ちょうどそれぐらいだった。 偶然の一致なのだろうか ? 「それでは、西村さんが帰国される頃をみはからって、もう一度伺 「困りましたわねえ : : : 」 います」 女は首をかしげた。 私は礼を言って、カウンターを離れかけ、 「なにかまずいことでも ? 誰でも、この電話を使うことができる 「こちらでは、どんな研究をなさっているんですか ? 」 んですか ? 」 ほんの思いっきで、訊いてみた。 「いえ、そんなことはありません。その電話を使われる方は、おひ 女は黙ってうなずくと、カウンターの下に手をやり、薄い・ ( ンフ とりだけのはずです。もちろん、原則的にはの話ですけど : : : 」 こ 0
5 ド MAGAZINE SP ー ( リ A 〃 02 & ドに W02 FANTASY VOL. ー 5 NO. ー 2 NOVEMBER 19 7 4 ー暑い夏もやっと終り、秋がきましたね。で も、秋ってどうしてこう感傷的な気分になる のかな。木の葉が色づき、風に舞ってひらひ ら落ちてくるところを見てると、恥すかしな がらつい、はろはろとおセンチになってしま ■おセンチついでに書くと、ジャック・フィ ニイの「ゲイルズバ r- グの春を愛す』ぐあれ 感傷的な小説ですね。イリノイ州ゲイルズバ ーグは 1920 年、 30 年代にアメリカでもっとも この町の森や農場、公園や 散歩道がご多分にもれす新エ場や高層アパー トや駐車場に変っていく。美しい自然が失わ れていくのは、なにも微風の町ゲイルズバー グのことだけではありませんが、ゲイルズバ ーグは一つの象徴なんですね。すでに地球の 大半は、近代化と地域開発の名のもとに美し しい町をプルドーザーの犠牲にしてしまい、 いわば地球自体が晩秋を迎えているかたち。 ですから、滅びいく地球にたいする葬送曲、 それがこの『ゲイルズバーグの春を愛す」な んです。感傷的にならざるをえませんね。 樹々は緑、物事はゆっくりと動いていた 遠い昔の歌をうたおう 陽は物憂げ、一日が静かに流れていた遠 い昔の歌をうたおう そして人々は挨拶をするために立ち止ま 私の家へお茶を飲みにいらっしゃいませ ニルソンという歌手がうた った曲ですが、どこの美しかった町をしのん だものなのでしようか ? かってのゲイルズ ーグでしようか、それともそれ以上に美し かった町がこの地球にあったのでしようか ? ・やつばり、秋は感傷的になっていけません ・今月号は《なんせんす SF 特集》。または 《クレイジー特集》、または《マッド特集》 です。おもしろいですよ。大いに笑って秋の 感傷を吹きとばしてください。