日本 SF の到達点を集大成する ハヤカワ A 文庫 小松左京 半村良 平井和正 星新一 光瀬龍 眉村卓 豊田有 , 厘 0 筒井康隆 産業士官候補生 最新刊く 2 月発売■ 眉村卓 平井不ロ正予価 250 円 予価 270 円 * 既日」 23. 占 悪徳学園 鏡の中の世界 石の血脈 ベトナム観光公社 悪夢のカ、たち およね平吉時穴道行 重力地獄 宇・市のあいさつ 冬きたりなば 自殺コンサルタント 東海道戦争 メガロポリスの虎 EXPO ' 87 妖精配給会社 御先祖様万歳 悪魔のいる天国 時の顔 X ・電車て、彳予こう 百億の昼と千億の夜 モンコつレク ) 残 ) ヒ ある生物の記録 午後の恐竜 小松左京 半村良 筒井康隆 平井和正 小松左京 星新一 田有恒 光瀬龍 山野浩一 小松左京 星新一 小松左京 星新一 眉村卓 平井和正 筒井康隆 田有恒 星新一 星新一 眉村卓 半村良 Y 180 Y390 Y220 Y250 Y240 Y 2 7 0 Y 3 2 0 2 2 0 Y270 Y220 2 7 0 Y240 3 2 0 Y280 Y240 2 2 0 180 180 Y240
解釈を選ぶか、そ ベスト 5 ・ワースト 5 山野浩一選 ( 週刊行されたもので、本欄未紹介 ) ◆・◆・◆・△刊読書人 ) 。ベスト 5 " 〈日本〉①安部公房さらに話題としては、『日本沈没』が上下れとも超汚染によ る減亡の解釈を選 ケ ~ 『箱男』 ( 新潮社 ) ②半村良『黄金伝説』あわせて三百四十万部 ( 肥月日現在 ) とい - ・ ( 祥伝社 ) ③星新一『か・ほちゃの馬車』 ( 新う、日本のとしては空前絶後 ? の超ペぶか、という、た ・・・ - 潮社 ) ④半村良『産霊山秘録』 ( 早川書房 ) ストセラーになったこと、半村良が『黄金伝んなる各人の死に - ・・⑤小松左京『結品星団』 ( 早川書房 ) 。〈海外〉説』で第六十九回直木賞候補にノミネートさざまの好みの問題 ・・・ - ①・マイリンク『ゴーレム』 ( 河出書房新れたこと ( 作家としては五人目、そしてしか、もう残され ・・一社 ) ②・・ル・グイン『闇の左手』 ( 早九回目の落選ー、ー星新一一回、小松左京一回てはいないのであ 物 9 →川書房 ) ③・プリ = ーソフ『南十字星共和筒井康隆三回、広瀬正三回 ) 、『産霊山秘録』る」。五島勉『ノ ストラダムスの大 、◆→取国』 ( 白水社 ) ④・オールディス『爆発星で第一回泉鏡花賞を受賞したこと ( 十月 ) 、 大伴昌司の急死 ( 一月 ) 、『幻想と怪奇』『終予言』祥伝社・ 4 物蜘雲の伝説』 ( 早川書房 ) ⑤・シルヴ , ー・ ( ◆・◆・◆人ーグ『いまひとたびの生』 ( 早川書房 ) ワー末から』『ドラキ = ラ』『奇想天外』の各誌 30 円 ) から。 、六、十一、十二月 ) などが、あげ ◆・◆・◆・△スト 5 ( 「私と正反対の考えの人にはこちら創刊 ( 一 眉村卓『かれらの中の海』 ( 早川書房・ 7 ーしいだろう」とられよう。 ◆・◆・◆・△をベスト 5 と考えてもらえ・よ、 50 円 ) は、『海の世界』に連載した公害。 「〈 1 月 1 日〉 18 7 9 ダイアリー ハート『デューン の注釈つき ) = ①・ ( ー : 19 0 7 年自殺をはかったサラリ ーマンが銀河連邦の海 ・砂の惑星』②小松左京『日本沈没』③平井年、・・フォスター生。 - ・和正『ウルフガイ・シリ 1 ズ』④・クライ『冒険世界』創刊。 1910 年、埴谷雄高生。底基地に収容され、異星の美女とともに地球 : : : 年、福の神エル氏に乗り移る環境浄化の戦いに乗りだすが : : : という趣 ・・トン『ターミナル・マン』⑤・マキャフリ : 2017 年、ロ向。意欲作だが、侵略ものの。ハターンを安易 ( 『福の神』星新一 ) 。 ・・イ『ドラゴンの戦士』 回顧この機会に年界を総括しておケット出発 ( 『月世界到着 ! 』ツイオルコフに適用しすぎているところがものたりない。 ・ - くとーー。収穫としては、前出の諸作品のスキー ) 。 2114 年、反アンド。イド革命筒井康隆『農協月〈行く』 ( 角川書店・ 7 90 円 ) は、最新短篇集。八篇がおさめられ 、◆蜘◆ほか、半村良『英雄伝説』 ( 祥伝社 ) 、小松左成功 ( 『アンド。イド』 = ド「ンド・クー 、京『旅する女』 ( 新潮社 ) 、筒井康隆『農協ー ) 」。浅倉久志・石原藤夫編集『ダイているが、評者には、筒井ならではのフ , ー ー・ 1974 年版』 ( 東京都渋谷区神宮スト ◆・◆・◆月へ行く』 ( 角川書店 ) 、さらに境界作品とアリ 月 3 ・ 6 ・ 1 、資料研究会・ 8 5 0 円 ) ストセラーの。ハロディ『日本以外全部沈没』、 ◆・又して、大江健三郎『洪水はわが魂に及び』上蔔 ◆・◆・《下 ( 新潮社 ) 、中井英夫『悪夢の骨牌』・ ( 平から。この調子で毎日の年表をはじめ、本誌に掲載されたジャズ化小説『デ「』の三 名言、画などをおさめてある。マニ篇が、とくに面白かった。 :o.. :. 凡社 ) 、加藤周一『幻想薔薇都市』 ( 新潮社 ) 文庫本が四冊。平井和正『悪夢のかたち』 ぐ結城昌治『見知らぬ自分』 ( 朝日新聞社 ) なア向きの日記帳。 ・・どが、注目された。評論では、福島正美『大予言「一九九九の年、七の月空から ( ( ャカワ文庫・ 250 円 ) 、筒井康隆 『ベトナム観光公社』 ( 同・ 2 2 0 円 ) 。同 0 ・の眼』 ( 大陸書房 ) 、同『散歩』・ ( 文恐怖の大王が降「てくるだろうアンゴルモ 物・・・・泉 ) 、 = , セイでは、筒井康隆『狂気の沙汰ワの大王を復活させるためにその前後の期『筒井順慶』 ( 角川文庫・ 180 円 ) 、畑正憲 『海からきたチフス』 ( 同・ 18 0 円 ) 。最後 間、マルスは幸福の名のもとに支配するだろ ・ ) ・も金次第』 ( サンケイ新聞社 ) 、戯曲では、 のは『ゼロの怪物ヌル』を改題したもので、 ( ノストラダムスの ) 予言では、 物安部公房『愛の眼鏡は色ガラス』 ( 新潮社 ) 、う。 なかなか楽しいジュヴナイル ;-k である。 科学読みものでは、海外のライフ・サイエ 物・ = 筒井康隆『スタア』 ( 新潮社 ) ・文明論では、九九九年の破減は絶対に避けられないのであ 小松左京『歴史と文明の旅上下 ( 文芸春る。この解釈の幅が私たちに残されているとンスの最先端をルポした毎日新聞社会部編 , ◆・◆・◆ ! 秋 ) 、アンソロジーでは、渋沢龍彦『幻妖』すれば、それはすでに減亡か否かという甘っ『神への挑戦』 ( 草思社・ 800 円 ) が 【◆い◆い◆ ( 現代思潮社 ) などがあった。 ( 印は今月ちょろいことではなく、核戦争による滅亡のファン向ぎ。 日本セクション 担当 : 石川喬司
「絵本西遊記」插絵 を妓し鉄棒を打ち振り打ち振り、一一十万の天兵をはや半ない。こんな小説、ぼくででもなければ紹介する人も永 ばまで打ち殺せば、天兵色を失い四方へ逃れ崩れける。久にないにちがいないと思ってとりあげてみたが、読者 大聖はなおも鉄棒をひっさげ、退りそかんとする趙馬二諸兄姉の感想はいかがだろう。 将を目がけただ一打ちと撃ってかかるにぞ、二将逃がる る路もなければ、ぜひなく刀を抜きて防ぎ戦う。二将勇ところで「東遊記」という題名の小説は日本にもある なりといえども、いかで大聖の神勇 , 、を ( 「」ということをごそんじだろうか。 に敵すべき。 このめざましい悟空の活躍によっ 4 : = 、て、もう一冊同名の長篇小説があ て、天兵軍の二副将軍の命も風前の るのだ。しかも、これは一年法師 というお坊さんが、カエル、モグ 灯となった時、太上老君が如来と駈 ラ、トカゲの化身を連れて天竺な けつけ、八仙と竜王との仲裁に入第に黐 らぬ地竺へ経を求めて旅する話 る。さらに雲に乗 0 て疾走してきた ~ ~ 一第》。 ) 、【 ~ 物 。、た。明らかに「西遊記」のパロテ のが観音。三者は双方のいいぶんを イ版だ。作者は「富士に立っ影」 聞くが、どうしても是非の判定が下 いや「祖国は何処へ」などの大河小 せない。観音の提案により双方は玉 帝の前で正否を論ずることに決定。矗。 ' 説でおなじみの白井喬二。戦前の 玉帝は天兵を傷つけられ、大いに怒・、 ) 。を一 一少年少女雑誌「譚海」に連載され 一を . 。、たものだ。 0 い三 ~ 四年前、学芸 っていたものの、八仙の話によ「て、一、。、第 0 露、 書林から刊行された白井喬一一全集 竜王が悪いことも認め、観音のとり の最後のほうに収録される予定に なしによ 0 て双方の和解が成立す。 4 売第 【一なっていたので、未見の・ほくとし る。海上、地上、天上にわたって争 〔。ては大いに期待していたのだが、 われた戦いもようやく終結、斎天大 聖も鉄棒をおさめて、世界はふたた、 ' 」「白井喬一一全集」が途中で中止に び平和をとりもどす。めでたし、めでたしというわけなってしまったために、残念ながらいまだに現物にお 目にかかっていない。小松左京氏は「わりあいにおもし ごらんとおり、ただただ戦闘場面の連続で「東遊記」ろかった」といわれていたし、浅倉久志氏は「ストーリ イをぜん・せん憶えていないから、さほどおもしろくなか の題名にはいささか似つかわしくない内容の小説だが、 ったのではないか」といわれていた。こうなると、ます これもまた、ほとんどの人は知らなかった小説にちがい 、こ第 ~ 4 9
推理小説専門誌『宝石』より厳選した埋もれた名作集 / 遂に刊行 城昌幸 あの時代の、あの作者の、 ・二度と読めない懐かしい、 高木彬光三月中旬刊行予定 ↓めの作ロⅢ 中島河太郎限定出版八八八部 星新一 ・推理小説専門誌『宝石』から厳選された珠玉の編 ・その当時問題を提起した論争、対談、話題の評論、読物山村正夫全 3 巻ワンセット ・創刊以来の完全な作品目録が網羅された推理ファン 横溝正史予価一八、 000 円 ( アイウェオ順 ) 垂涎の画期的豪華本″ ※全巻おもな作品と作者 犯罪の場 ( 飛島高 ) 網膜物語 ( 独多甚九 ) 殺人演出 ( 島田一男 ) 鸚鵡裁判 ( 鬼怒川浩 ) サンタクロース殺人事件 ( 乾信一郎 ) 幽霊消 ・第 1 巻 / , 却法 ( 海野十 = l) 天狗 ( 大坪砂男 ) 小草の夢 ( 佐藤春夫 ) 猿神の贄 ( 本間多麻誉 ) 地虫 ( 鮎川哲也 ) 三つの樽 ( 宮原竜雄 ) 接吻物語 ( 藤村正太 ) メフィストの誕生 ( 水谷準 ) 私の探偵小説 ( 坂口安吾 ) 探偵小説の新領域 ( 埴谷雄高 ) はか・ : 青い帽子の物語 ( 土屋隆夫 ) リラの香のする手紙 ( 妹尾アキ夫 ) キキモラ ( 香山滋 ) 雁行くや ( 島久平 ) 畸形の天女① ( 江戸川乱歩 ) 崎形の天女② ( 大下宇陀児 ) 畸形の天女③ ( 角田喜久雄 ) 畸形の天女④ ( 木々高太郎 ) ロンドン塔の判官 ( 高木彬光 ) 首 ( 横溝正史 ) ・第 2 巻 流木 ( 山村正夫 ) 奇妙な隊商 ( 日影丈吉 ) 電話事件 ( 加田伶太郎 ) 師匠 ( 梅崎春生 ) 影なき男 ( 遠藤周作 ) 電話 ( 吉行淳之介 ) 詫証 文 ( 火野葦平 ) 怪異投込寺 ( 山田風太郎 ) 探偵小説新論争 ( 江戸川、木々、大下他 ) 推理小説と文学 ( 平野、松本、江戸川 ) ほか : ・ ある脅迫 ( 多岐川恭 ) 水中花 ( 石原慎太郎 ) かあちゃんは犯人しゃない ( 仁木悦子 ) おーいでてこーい ( 星新一 ) 団十郎切腹事件 ( 戸 板康一 l) 散歩する霊柩車 ( 樹下太郎 ) 青い火花 ( 黒岩重吾 ) 狂熟のデュエット ( 河野典生 ) 夜明けまで ( 大藪春彦 ) お助け ( 筒井康 ーマン ( 山川方夫 ) 年は長すぎる ( 笹沢左保 ) 狂生員 ( 陳舜臣 ) 年下の亭主 ( 新章文子 ) 闇の中 ・第 3 巻 /. 隆 ) 飢渇の果 ( 南條範夫 ) 0 ンリ から ( 戸川昌子 ) 女か怪物か ( 小松左京 ) 長い暗い夜 ( 曽野綾子 ) 化石の街 ( 広瀬正 ) 紳士ワトソン ( 椎名麟一一 l) ほか : ・ 申込先いんとり・つぶコ王石」係 0 = 宝八六 ) 一八 = 一 東京都港区麻布飯倉町一ー六 ただ今、予約受付中 / 株式虱流なあっふ
日本 s をノウェルズ 「どうも私には、あの子が貧乏くじを抽いたような気がしてなりま こに行くことを欲した。そういうわけでマイクも宇宙船上で、その かね ところを得ることでしよう。彼は金など目的にしていないし、危険せんな。なるほど政府は宇宙船の乗員を獲得する。だが乗員のほう この仕事に必要不可欠なものを彼はは何が得られるでしよう ? マイクはこれによって何が得られるで など彼にとって問題じゃない。 持ってるんです。ーーー這いつくばってでも行こうとする執念をです」しよう ? 」 ギルマンは、薄れ行く陽光のほうにちょっと顔を傾け、ラリイは 「どんなものですかなあ」とラリイは思慮深く言った。「宇宙への ギルマンの顔面上の、放射線や紫外線で火傷し、ただれた傷痕をか 魅力に惹かれて、密航を企てる少年たちがいつばいいるでしよう。 未知の世界をこの眼で見てやろうとかなんとか言ってね。とこくすためにほどこされた目立ちすぎる肉色のいれずみの一部分を一 ろがマイクが、宇宙にはなんの魅力もないこと、エキゾチックな異瞬はっきりと認めた。 郷などといったものは存在しないことがわかった時、どういうこと「彼はこれから何が得られるか ? と訊かれる」ゆっくりと、わび になるでしよう ? 」 しげにギルマン。その声は、わかってくれない相手、決して理解す ることのない相手に対する、気落ちした当惑の響きがいつばいにこ 「どんな事物の魅力も、それを見る人の心の中にあるんです」と、 ゆっくりとギルマン。 もっていた。「星の世界に行けるじゃないですか、カーターさん。 星の世界に : : : 」 陽は傾き始め冷やかな東風が吹きだした。ラリイは身震いした。 SF の新たな地平を拓くべく 登場する気鋭の作品群 / 既刊 12 点 かれらの中の海 眉村卓 結品星団 月淞左京 産霊山秘録 半村良 白き日方徹畆てば不死 荒巻義雄 48 億の妄想 筒井康隆 復活の日 り蚣左京 喪われた都市の記録 光瀬龍 継ぐのは誰か ? り蚣左京 牙の時代 4 左京 サイボーグ・プルース 平井和正 . 石の . 血脈 半村良 . 廰走と皀跡のサンノヾ 筒井康隆 750 Y680 \ 970 \ 670 Y550 \ 780 \ 980 \ 650 \ 600 \ 620 \ 9 圓 \ 570 ■続刊 幻覚の地平線 田中光ニ 街の博物誌 河野典生 ー 43
クラ、カル、コロ岩石 コマ、カンプ斧 クジウ 火・赤 アカ、アグ 火・煤 ミョウ 火 ラン、リ ュ 地震 と清書し直し、眺めていると、なるほど古代人が火山に深い関心 を持っていたことがわかる。日本に最初に渡来した南洋系民族は、 火山の多い土地を好んで求めたのであろうか。火山のもたらす火 は、古代人にとって生活の基本であったにちがいない。 あずま 老人の話では、浅間、吾妻、四阿などは、″アサ・マ″″アズ・ マ″であり、″マ″は母のことで、煙の母の意味であるというので ある。 「すいぶん、ご熱心に : と幻之進がのそきこむ。 あとらんていす 「うん、ちと面白いことに気がついたのじゃ。お前は、跡藍地州と は、蒼い人の住んでいた跡のことだ、と申しておったな」 かみむすび 「はい。私のみた神皇産霊文書では左様かかれておりました」 「しかし、違うな。 「すると、父上はこの表より、何か新しい発見でも ? 」 「まあーな。ちょっとお前もみてくれ」 源内は腕組を解き、筆をとった。そして、″アソ、アサマ′をト ロ、テル、テン″″ラン、リュ″にしるしをつけた。 「幻之進、どうじゃ。これでわからぬか」 「はい、とんとわかりませぬ」 源内は、新しい半紙をとりだすと、大きく、アト・ラン・ティ・ スと書いた。 「これでどうじゃな」 「あツ」 今度は、幻之進にも謎が解けたようであった。 源内は、 ( 煙 ) ( 地震 ) ( 沈没 ) ( 州 ) アトランティス と書きつけた文字をじっと見ている。 馬来語系古型日本語によって解けゑこの古代大陸の真相を知ろ うとしている。 アトランティスは、火山爆発と地震によって海に沈んだのであろ と、 「うふツ」 唖のタ霧が笑った。 ( 付記 ) この″白魔伝″構想の基礎資料となった山根キク著「光は東方より」及 びその他の文献については、本シリーズ最終回末尾に明記いたしますが、ここで あらかじめ謝意を表しておきます。 アトランティスの語源は、私の知る限りギリシャ語にはありません。井上赳夫 氏の著書を読むうちに偶然発見した解釈ですが、もし私のマレー語源説が正しけ れば、これまでのアトランティス研究は根本的にくつがえる可能性があります。 それは″ヘラクレスの柱の外側つまり大西洋にあったのではないリ なお、私の提起するアトランティスインド説については一部私の白亜シリー ズを改黐した「白い蓮華船」 ( 近く刊行予定 ) でも取扱っています。 ( 作者 ) 2
を席捲しちまうぜ、アンモニウムの装身具にアンモニウム鍍金したことをお忘れにならないで。先生がおっしやったでしよう。もしそ 食器類、そのほかにもごまんとある。それに、工業用用途に至ってんなにいらいらするのなら、ワシントンのニュースを読むのはおや はどのくらいあるか見当もっかない。あんたは金持になるぜ、ウォめなさいって。ねえ、あのコックのことなんですけど。あのひと : ーー大金持だよ ! 」 「われわれがさ」シルズは穏やかに言いなおして、電話に歩み寄っ 「あの医者はとんでもない馬鹿やろうだし、おまえもた」・スロ た。「新聞にこのことを知らせよう。早速名前をひろめなくちゃ」グモ 1 トン・ ハンクへッドはどなった。「わしがそうしたいと思え テイラーは眉をひそめた。「秘密にしといたほうがいいんじゃな ば、好きなだけニュースを読むし、真赤になって怒りもするんだ」 いのかいウォルト」 彼はコーヒ 1 茶碗を口もとへはこび、 ( 文句をつけたそうな頭でひ 「ああ。製法についてはこれつぼっちもしゃべりやしないよ、ただ大とロすすった。そうしながら、彼の視線はページのいちばん下の、 ざっぱなアイデアを教えてやるだけさ。それに、危いことはないんもっと目立たない見出しの上に落ちた。そこには″著名な学者、金 だ。特許の申請は今ごろもうワシントンに届いているころだからね」の代用品を発見″としてあった。コーヒー茶碗を宙にとめたまま、 しかし、シルズは間違っていた ! 新聞の記事は、彼ら二人を大彼は素早く記事を走り読みした。「発見者によれば、この新しい金 属は安価で美しい装飾品の原材料として、クロームやニッケル、銀 わらわにさせる、とんでもない二日間を招来させたのである。 などよりはるかにすぐれているということである。″週給二十五ド ・スログモートン ハンクへッドは、一般に″大もの実業家″ルの事務員が″とシルズ教授は言葉を続けて″インドの太守の黄金 の一人として知られていた。アクメ・クロームとシルグアー鍍金コの皿よりももっと立派に見えるアンモニウムの皿で食事をすること になるだろう。なんの : 1 ポレーションの社長たる彼が、この肩書に値することは間違いな かったが、長い間苦労してきた忍耐づよい彼の夫人にとっては、た しかし、・スログモ 1 トン・ ハンクへッドはそこで読むのをや だの消化不良に悩む気むずかしい夫にすぎなかった。それも朝食のめた。破産したアクメ・フロームや、シルグアー鍍金コーポレーシ テー・フルについた時がとくにそうだった : : : そしていま、彼は他な ョンの映像が目のまえにちらついたのだ。コーヒ 1 茶碗が彼の手か らぬ朝食のテー・フルについているところなのである。 ら落ちて、ズボンに熱い液をはねかした。 腹立たしげに朝刊をがさがさいわせながら、彼は・ハタつきトース夫人は驚きあわてて立ちあがった。「どうしたんです、ジョゼ トをかみかみぶつぶつ言った。「この男は国を破滅させるそ」彼はフ、なんなの ? 」 うろたえて大見出しを指さした。「前にも言ったが、この男は南京「なんでもない」・ハンクへッドはどなった。「なんでもない。後生 虫みたいに狂っとる。満足するようなやつじゃないんだ : : : 」 だからむこうへ行ってくれんかね ? 」 夫が憤然として大股に部屋を出て行ったあと、夫人は何がそれほ 「ジョゼフ、お願い」夫人は哀顳した。「顔が真赤よ。血圧が高い 5 5
にしろ : : : だけど産むとしても、青鹿に育児はむりね。赤ん坊が赤ないとわからないんだろうなゞ先生の乳暈の色が変わってきたのは ん坊を育てるようなもんだわ」 妊娠のためだったんだ」 虎 4 は淡々といった。同情の気配もなかった。 少年はいささかも取り乱していなかった。たいした自制力だ。 「おれは : 「わからん。はたして犬神明がなんというか : : : 」 : なんといっていいかわからん」 灰色狼は頭を左右に振りながら呻いた。 「病気でないとわかって安心した。ここでは充分な手当を受けられ 「それより、犬神明になんといって教えたらいいかわからないよ。 ないものな」 おれはつらい」 「青鹿先生が妊娠したとわかっても : : : なんとも思わないのか ? 」 「近いうちに、医者がこの村にくるわ。事実を確かめた上で決める少年は硬い唇をひき結んでいた。むしろ顔には明るさが戻ってい の・ね。それで産むとなったら、だれが赤ん坊を育てるか : : : 神明、 あんたが適任じゃないの ? 」 「先生は先生さ「・妊娠しようとしまいと。おれにとっては、ちっと 虎 4 は面白そうにいい、手にした梅の実を狼の鼻先に投げだした。も変りやしないさ」 まら 「しかし、胎の子どもは : : : 」 「青鹿にそれを食べさせてごらん。孕み女は酸つばいものが好きだ というじゃないの」 「青鹿先生の子だ。父親がだれであろうと構わない。おれも気にし それを捨て・せりふに、すばやく走り去って行った。狼はやりかえないよ、神さん」 す元気もなく、地上に転がった梅の実を嗅ぎ、苦い顔をした。苦渋「じゃあ、産ませる : : : ? 」 の念で胸が絞めつけられるようだった。 「青鹿先生が正気だったとしたら : : : 」 天色狼はすごすごと裏口から入って行った。少年と青鹿の姿が板と、犬神明はゆっくりと言葉を考えながらいった。 の間にない。障子のはまった奥の部屋で、少年が青鹿に着替えさせ「もちろん、悩むだろう。決心するまでに苦しい思いをするだろ ているのがわかった。吐物で着ているものが汚れたのだ。 う。だが、やつばり先生は産もうとする : : : おれはそう思うよ。先 どてら ひと 犬神明が障子を開けて出て来たとき、丹前姿で褞袍を羽織り、展生は宿った生命を殺すような女じゃない。だから、おれは産んでも べられた夜具の上に座っている青鹿の姿が見えた。汚れものをひとらいたい。赤ん坊はおれが育てるよ」 まとめに持った少年は、しばらく狼と目を合わせていた。 「しかし、それは並みたいていのことじゃない・せ、犬神明。育児の 「いいにくいことなんだが : : : 」 経験があるわけじゃなし : : : 」 狼がいいかけた。 狼は唖然としていった。 「わかってる。話は聴こえた : : : 」 「初産の母親だって、ちゃんとやってるじゃないか。男にだって不 少年は野生の狼の聴覚の持主であった。 可能のはずはない。大丈夫だよ、神さん。おれはタフだからね」 「そうか : : : 全部聴いたんだな ? 」 大神明は目を輝かせ、にやりと笑った。活力をふるいたたせた笑 狼は目を伏せた。 いだった。こんなに明るい犬神明を見るのはひさしぶりだと天色狼 「もっと早く気がつけばよかった。こういうことは、やつばり女では気づいた。心を押しひしがれるどころか、気力を燃えあがらせて 8 2
ほんの十分ほどなら、仮睡してもいいだろう。ラルフには、十分りと答えた。 後に起すように命じておく。幸に、付近には敵性生物の顕著な気配「が、ヂヒロ、あなたは深く眠りすぎていたのだ。私の責任ではな 2 も見られない。・ シートの背に頭をもたせかけ、目を瞑じるとほとんど同時に、チ 二時間前から、艦は漂流藻の多い海域に入った。私は艦速を カ次第に障害物は ヒロはこの上もない甘美な失墜感覚とともに、昏睡の深みにまっし最徴速にとどめ、障害を迂回しつつ前進した。 : 、 ぐらに墜ちて行った。その眠りは純一だった。真の闇が、すばらし顕著になり、停止さぜるを得なくなった。それ以上の危機回避行動 く柔かい触手でチヒロをねんごろに抱きすくめ、夢もよりつかぬそを起す権限を、私は与えられていない。・ の快美な暗黒のなかを、胎児のようにチヒロは漂っていた。 「そして海藻にからみつかれてしまったと言う訳か」チヒロは呻い その失神にも似た自失の底で、かすかな本能の警報ベルが鳴り響た。 いた。艦が、異常な動揺を示しているーー今や、チヒロと〃ノーチ 再びあの不条理な感覚ーーラルフへの、いわれのない疑惑と畏怖 ラス四世″は、文字通り一心同体の境地に達しており、艦のすべて が甦ろうとしていた。確かに、彼の釈明は筋がとおっている。唯一 の運動べクトルは、チヒロの神経にもろにはね返って来る状態になの問題は、ラルフがじっさいにチヒロを起そうと努力したかどう っていたのだ。 ラルフがサポター か、だ。それを証しだてるものはどこにもない。 のろのろと、糊付けになってしまったかのような瞼をこじあけジュしたと言うこともありうるのだ。 る。テレビ・スクリーンに映る光景が、チヒロの後頭部を蹴り飛ば チヒロはそこで思わず苦笑したーーー俺はどうやら、偏執的な疑心 した。巨大な褐色の帯のようなものが、スクリーンを覆ってうごめ暗鬼にとりつかれているようだそ。な・せ、ラルフがどんなサポター いている。とっさに全神経を研ぎ澄まし、艦の気配をうかがった。 ジュを犯す必要がある ? 故意に艦を窮地に追い込むような動機 異様に静かだ。エンジンが停っているのだ。何ものかに、巨大なが、どこにあると言うのだ ? 指でもてあそばれているかのように、″ ノーチラス〃はぎこちなく ともあれ、脱出のための試行錯誤と、熱い焦燥に充ちた漂流が、 左右に揺れている。まるで酔っているかのようだ。 その時から始まったのだった。 チヒロは反射的にクロ / メーターを見上げ、愕然とした。彼が眠 異変が起きて一時間後に、ジャンが姿を見せた。臉がまだ赤 り込んでから、すでに五時間近い時間が流れていた。 く腫れているが、目にはもう理性のいろが戻っていた。 「ラルフ ! 」ほとんど絶叫に近い声をチヒロは上げていた。 「ごめんなさい、チヒ尺子どもみたいに取り乱して。すっかり迷 「どうしたんだ ! なぜ、俺を起さなかった ? 艦は今どこにいる惑をかけてしまったわ。 でも、もう大丈夫」 んだ ? 」 スクリ 1 ンを見やって、はっと息を呑んだ。 「 : : : 私はそうと努力した。五度、呼びかけた」ラルフはうっそ「何なの、あれは ? 」 のり トツ・フ・スロ あか
周囲には他の船々が、針のように突き立ち、そしてーー・その向うには ラリイ・ドビイは首を左右に振った。「私は店で、あいつに思い トリームストリート 2 公園と、ゴッダード大通りの幅広い筋が見えた。夢の通りだっとどまるように充分説得したつもりでいたんですがねえ、ギルマン 4 た部分すら見えた。一瞬彼はラリイのレストランも見つかるのじやさん。私がお知らせするのがもう少し早かったら、引き止められた ないかと思った。しかしもう遠くに来すぎていることがわかった。 かもしれませんでしたねえ」 彼はもう一度 = ルマーを見おろし、一瞬ためらいを感じた。これ「私は引き止めるつもりはなかった」とギルマンは感情を表わさず は恐らく = ルマ 1 の過失ということになるのじゃないか。彼は港のに言 0 た。「この港からたっ船はすべて、密航者の一人や一一人を養 景色に背を向けた。 / 彼の心臓は高鳴り、耳の中が轟々と鳴って、 しってゆくだけの用意はしてあります。毎月、百人ほどの密航者がロ た。彼は湿った指で幸運の石をまさぐりながら気閘の中に入って行 ーズウエルを後にするんです。ーーー星々にあこがれる少年たちが っこ 0 ね。密航を企てる者たちを私たちは妨害する。ただスリルだけを求 めるような少年たちを、おどしつけてやめさせてしまいはする。で も私たちは彼らを引き止めようとはしていないんです」 「まあ聴いてください、ギルマンさん。あの少年が何者だなんて、 あたしゃあ知りませんでした ! ただ私の助手につけられただけの ラリイはいぶかしけな顔をした。「そりや、どういうことです こと。で、あたしゃあ何も説きませんでした。ーーーいたって一文 ? 」 の得になるでもない ! 荷積み人足たちがこの木わくを積み残して「こういうことなんです」とゆっくりとギルマン。「たとえばマイ 行っちまったんです。それを船にのつけないことにゃあ、あたしのクだが、彼は立派な航宙士になれます。彼の父親は月地球間航路で 責任になる。ところがあの子がそれを上に持って行くと申し出た。働いており九七年のアシ = ンデン号の反応炉爆発で死亡しました。 あの子が密航しようとしてたなんてこと、あたしが知ってますか ? それでマイクは宇宙児童収容施設にいたのです。彼は、すでに、宇 見てください、あたしゃあ年寄りだ。 あたしゃあ、梯子を五階宙での心得といったようなことにかなり詳しいのです。父親からい の高さまでなんて登れないよ ! 」 ろいろと教わっていたんですな。いわば彼は航宙士たるべく育てら ギルマンはげんなりした様子でうなずいた。「わかった、カータれたと言ってもいい」ちょっと言葉をとぎらしてから、「それに彼 ーさん。安心しなさい。私がアトラス会社にかけあって、あんたが は、ある非常に貴重な資質を持ってるんです。最も有能な航宙士の 首にならんようにはからって差し上げましよう」 一人になれる、なにかをねーーーそのなにかが私たちにとってどれほ カーターが立ち去り、ギルマンは宇宙港のほうへ目をもどした。 ど貴重なものなのかは、誰にもわからんのですが」 コンクリートの広大な拡がりのはるかかなたに、焼け焦げ跡の一点「なんですか、それは ? 」 があ「た。それはつい今しがたまでスタ 1 ・クエスト号が在った地「ずっと昔には、少年たちは海に憧れて家出をしたものでした。 点だった。彼は考え深げにそこを見つめた。 ーそう、少年たちの心に訴えるなにかがあったんですな。彼らはそ ェアロック