日本 S F の祖・押川春浪 ファンの男は、ふだんから、ぜんぜん正体をかくさず年、愛媛県は松山市に生まれた押川方存という少年だ。 に、マージャンばっかりやってるけど : 彼は生来、不屈勇猛な性格で、幼少のころからすでにし さて、先月号では、的政治小説のリストが長すぎて愛国精神にあふれたナショナリストであったから、こ た、というウワサもちらほら聞かれたようなので、今月の明治版大東亜共栄圏思想の「浮城物語」にいたく心酔 はなるべくリストがでてこないように話をすすめよう。 し、ひたすら続篇の登場を待ちわびていた。だが、龍渓 ぼくとしては、「こんなに、政治小説の中には、的作はその後、各種の事情が重なって続篇の執筆を断念せざ 品がたくさんあるんだそ」というつもりで書いたんだけるを得ず、方存少年の期待は満たされなかった。 ど、読み返してみると確かに多すぎたような気もする。 そうこうするうちに、方存は明治学院に入学したが、 世の中、思ったようこま、 冫をしかないものだ。 ( 反省 ) その蛮勇とさえいえる性格は、日本キリスト教界の元老 的存在である父、方義の厳格な教育を受けつけず、学業 明治二十三年、矢野龍渓が南進論をテーマにした、冒をなまけたために東北学院に転校。だが、ここでも彼の 険的政治小説の傑作「報知異聞浮城物語」を発表乱暴はやまず暴行事件を起こして放校され、今度は札幌 したことはすでに紹介したとおりだ。 ( 第五回「日本か農学校に移ったものの、校風になじめず退学。次に入っ く戦えり ! 」参照 ) この海外雄飛小説は、巷間に非常にた水産講習所も組暴なふるまいで放校された。しかし、 好評をもって迎えられ、続篇を待ち望む声は少なくなか人間誰しも水の向き、不向きはあるもので、最後に入っ った。そんな中に、この作品を一読するや、たちまちそた東京専門学校 ( 現・早稲田大学 ) では、蛮勇をふるつ の思想にたことには変わりなかったが、ぶじに英文科を卒業、さ 共鳴し、 らに政治学科に再入学した。 、以後これしかし、彼は十年以前に感激にうち震えて読んだ「浮 を座右の城物語」のおもしろさを決して忘れていたわけではな 書としてかった。十年間待ち続け、ついにその続篇が登場する 幾度とな気配のないことを察知すると、自らその続きを書いてみ く読み返ようと思いたったのだ。そして、政治学科在学中、二十 しては、 二歳の時に「浮城物語」のスケールを数倍拡大し、冒険 熱涙にむ小説的要素をさらに強くした一篇の軍事冒険的小説 せぶ一人を一気に書きあけ、さっそく知人を通じて出版社に売り の少年がこんだ。作品のできは非常によかった。ちょうど明治初 《《・あった。期に流行したヴ = ルヌの科学小説と「モンテ・クリスト 明治九伯」「水滸伝」がミックスしたような作風の小説で、出 : ロ 03 :
てすぐれたその種のノン・フィクションが続 ペンシルヴァニア州スクラントン市が、突円。『ハンス・プファール』『アッシャ , ー家』 続と書かれているがペーター・カイザーの『凍 0 『モルグ街』『メエルシュトレエム』『ゴー ◆・◆・◆・△如すさまじい砂塵をまきあげながら、ゆるや ドン・。ヒム』など約五〇篇の小説が収録される地球ーー・北極の大移動が迫っている第 D 一 e ◆・◆・△かな回転運動をはじめ、やがて地面と切断さ Rückkehr der Gletscher"'71 ( 金森誠也訳 人れて、空中に浮かび上り、一つの〈宇宙都ている。 ・八五〇円・双葉社 ) もその一冊である。旧 ハヤカワ文庫からは二冊。 ・・市〉とな 0 たと思うと、たちまち宇宙の闇の ー・ノリ 約聖書や伝説に描かれた天変地異を、極移動 ンの〈キャプテン・フューチャ 、ぐ一中〈消え去 0 た , ー・と書けば、熱心な読 というよりも飛躍ーーーによって実際に起 ズ〉の『恐怖の宇宙帝王』 "The Space Em ・ 蜘 2 ' 9 者ならば、このがジ = ームズ・・フリ , シ った歴史的事実ではないかという想定のもと ヌ r こ 40 ( 野田昌宏訳・三〇〇円 ) は木星 物・・、のその名も高い〈宇宙都市シリーズ〉の一 に、石炭、石油の成因、氷河期の繰返しなどを 環をなす小説であることがわかるはず。実に流行しつつあった原因不明の疫病が実は宇 物取際、今度 ( ャカワ・・シリーズから出宙帝王なる姿なき魔人の仕業と知 0 たキプ厖大なデータの「ン。ヒ、ーターによる解析か ら解釈しなおし、やがて再び来る極移動によ テン・フューチャーの活躍。・ タ 1 ルトン & シ ・を・一た本書『星屑のかなたへ』 "A Life ま「 the って地殻の大変動がおき、氷河期が急襲し地 エールの〈宇宙英雄ローダン・シリーズ〉の 」 . ・ s ( 「。こ 6 ~ ( 岡部宏之訳・四二〇円 ) は、こ 『ヒュ。フノの呪縛』 "lm Banne Des H マ球が大破滅を迎える ・・のシリーズの、年代的にいえば『宇宙零年』 な迫力に満ちたノン・フィクションである。 no Der Kosmiche Lockvogel"'62 ( 松谷 蜘・蜘・と『地球人よ、故郷へ帰れ』のあいだに入る 食料危機を扱ったノン・フィクションが増 蜘・・第二部にあたり、これに第四部にあたる『時健二訳・二九〇円 ) は太陽系最悪の兇悪犯罪 えている中でコリン・ターンプルの『プリン ・・の凱歌』を併わせて、四部作の完結となった者オ 1 ヴァ〈ッドが、その比類なき催眠術に ジ・ヌガグーー食うものをくれ』 "The Mo ・ よって、ローダンに挑戦してくる 蜘・わけである。 untain Pe 。三 e こ 73 ( 幾野宏訳・一一〇〇 ノン・フィクションではまず、嘗て出版さ ・・ストーリーは、スクラントンの離陸を見物 ・に来ていた近郊の少年クリスが、思わぬことれたが絶版状態だ 0 た・リンドナーの精神円・筑摩書房 ) は異色の一冊である。野生動 ・・からこの宇宙都市に強制的に乗せられ、のち分析書の傑作『宇宙を駆ける男』 ( 以前は『心物保護のため猟場を追われた東アフリカの山 の住民イク族が飢えとの戦いのうちに完全に の秘密』という題名で出版された ) "Fif- ・・に大宇宙都市 = = ーヨークへトレードに出さ ( 川口正吉訳・九六〇人間性を失ってしまった有様は、たんなる ・・れて、さまざまの試練や冒険を体験した結果 ty-Minutes' Hou 「 ' アフリカ残酷物語 円 ) が新装再刊された。精神分析医リンドナ ・ 9 永遠の生命を持っ宇宙市民の資格をとるまで ーの扱った五つの精神病者のドラマチックな ではない。人口問 ・・・の物語で、他の三作とちがいジ、ヴナイル的 題と食料危機とを ・・な話の展開になっているが、それだけに、宇臨床例を、巧みな語り口で語ったものだが、 とくに表題となった例では、自らを宇宙人と真剣に考える者を ・・宙都市における若者の問題、教育問題などを ・・踏まえたエキストラボレーションともな考えた電子技術者の狂った心を、その描くフ慄然とさせずには アンタスチックで同時に精緻な幻想を否定せ おかないばかり っている。 か、同種のテーマ ・・ポオの小説が、文庫で手軽に読めるようにず理解することによって癒した過程がみごと , ◆・◆・◆ : ・・・なった。創元推理文庫が出した『ポオ小説全に描かれていてなまなかな小説以上の面白さを扱った観念的な 未来を読むに 鬱集 1 、 2 、 3 』がそれである。訳者はそれぞがある。 耐えないものにさ 最近の気象学や地球物理学のデッドヒート , ◆・◆・◆・・れ阿部知二他、大西尹明他、田中西一一郎他と え感じさせる。 【◆“◆い◆収なっていて、 1 、 2 が三四〇円、 3 が三二〇ぶりは凄まじいものがあり、これを反映し 海外セクション 担当 : 福島正実
宝石雀当 推理小説専門誌『宝石』より厳選した埋もれた名作集 / 遂に刊行 城昌幸 あの時代の、あの作者の、 ・二度と読めない懐かしい 高木彬光五月下旬刊行 事めの作ロⅢ 中島河太郎限宀疋出版八八八部 ・推理小説専門誌『宝石』から厳選された珠玉の間編 星新一 その当時問題を提起した硎争、対談、話題の評論、読物山村正夫全 3 巻ワンセット ・創刊以来の完全な作品目録が網羅された推理ファン 横溝正史定価ニ七、 08 円 ( アイウェオ順 ) 垂涎の画期的豪華本″ ※全巻おもな作品と作者 犯罪の場 ( 飛島高 ) 網膜物語 ( 独多甚九 ) 殺人演出 ( 島田一男 ) 鸚鵡裁判 ( 鬼怒川浩 ) サンタクロース殺人事件 ( 乾信一郎 ) 幽霊消 ・第 1 巻 /. 却法 ( 海野十 = l) 天狗 ( 大坪砂男 ) 小草の夢 ( 佐藤春夫 ) 猿神の贄 ( 本間多麻誉 ) 地虫 ( 鮎川哲也 ) 三つの樽 ( 宮原竜雄 ) 接吻物語 ( 藤村正太 ) メフィストの誕生 ( 水谷準 ) 私の探偵小説 ( 坂口安吾 ) 探偵小説の新領域 ( 埴谷雄高 ) ほか : 青い帽子の物語 ( 土屋降夫 ) リラの香のする手紙 ( 妺尾アキ夫 ) キキモラ ( 香山滋 ) 雁行くや ( 島久平 ) 崎形の天女① ( 江戸川乱歩 ) 畸形の天女 ( 大下宇陀児 ) 畸形の天女③ ( 角田喜久雄 ) 崎形の天女④ ( 木々高太郎 ) ロンドン塔の判官 ( 高木彬光 ) 首 ( 横溝正史 ) ・第 2 巻 流木 ( 山村正夫 ) 奇妙な隊商 ( 日影丈吉 ) 電話事件 ( 加田伶太郎 ) 師匠 ( 梅崎春生 ) 影なき男 ( 遠藤周作 ) 電話 ( 吉行淳之介 ) 詫証 文 ( 火野葦平 ) 怪異投込寺 ( 山田風太郎 ) 探偵小説新論争 ( 江戸川、木々、大下他 ) 推理小説と文学 ( 平野、松本、江戸川 ) ほか・ : ある脅迫 ( 多岐川恭 ) 水中花 ( 石原慎太郎 ) かあちゃんは犯人しゃない ( 仁木悦子 ) おーいでてこーい ( 星新一 ) 団十郎切腹事件 ( 戸 板康一 l) 散歩する霊柩車 ( 樹下太郎 ) 青い火花 ( 黒岩重吾 ) 狂熱のデュエット ( 河野典生 ) 夜明けまで ( 大藪春彦 ) お助け ( 筒井康 ーマン ( 山川方夫 ) 年は長すぎる ( 笹沢左保 ) 狂生員 ( 陳舜臣 ) 年下の亭主 ( 新章文子 ) 闇の中 ・第 3 巻 / 一隆 ) 飢渇の果 ( 南條範夫 ) 0 ンリ から ( 戸川昌子 ) 女か怪物か ( 小松左京 ) 長い暗い夜 ( 曽野綾子 ) 化石の街 ( 広瀬正 ) 紳士ワトソン ( 椎名麟三 ) ほか : —l 〇三 ( 五八六 ) 一八ニ一 申込先いんとりつぶ「宝石」係 振替東京一三五〇ニ四 東京都港区麻布飯倉町一ー六 ただ今、予約受付中′・
熱風 3 山田正紀 画Ⅱ山野辺進 人殺しで麻薬中毒のこの俺が こともあろうにその中毒のおかげで 名誉ある火星一番乗りの候補者とは・ 新企画巻頭小説第一弾登場″ イ / 7 0
春浪独得のナショナリ 行動が、いささかも主体的でないということである。 ズムがみごとに合体たとえば「海底軍艦」以下の連作に必ず登場する「日 し、きわめて日本的な出雄少年」。中勘助の「銀の匙」や国木田独歩の「春の 冒険として完成し島ー「鹿狩り」などが、本来おとなの小説としても書か ている。 れながら少年少女を主 k 公としていたために児童文学へ もちろん、長所ばかの傾斜をたどったことからもわかるとおり、この少年が りではない。中島河太出てくることも、春浪の小説を児童文学たらしめている 良氏がいうように、 ひとつの重要な要素である。しかし、この日出雄少年 ″彼は終生、武侠精神は、武供団体の英雄たちの愛玩物となって、巻きおこる の鼓吹につとめたが、事件の周囲をうろついているだけだ。自分の主体的な責 、 ' 「第作家としてもその域を任において行動をするということは、ただの一回もない 出られなかった。「海のである。 を物底軍艦」を処女作とし この欠陥は、児童文学として致命的な欠陥である。こ て、六部作の如きは洛の欠陥ゆえに、春浪はナショナリズム児童文学の思想の 、、、霍 ~ 陽 0 紙 00 高 000 完 0 「「 0 0 = 、、一〉 ' 一。一《児「 = 0 、 0 待望の機運に乗じ、国 威宣揚に資したもので しかし、それでも春浪の作品群は、それまでに現われ あった。「海底軍艦ーた日本の的作品には見られなかった独創性を充分に の新兵器なども、海軍備えている。明らかにそれ以前の作品と一線を画してい の権威者から知識を求ることは事実だ。問題は、それを高く評価するか低く評 めるなど苦心が存したが、その後は自己の作風に定着し価するかなのだが、ぼくは押川春浪を日本界の祖と て、マンネリズムに陥り、新らしい展開を見せなかっ呼ぶことに、なんの異議ももっていない。欠点を指摘し た。豪快ではあったが粗奔で、少年読物の域を出ないよた二氏も、これには異論はないだろう。春浪の史上 鉄うに見られても、一面やむを得ない点が存していた″ における功績は、自らの傑作を書いたというにはと - 一絵険 という欠点も指摘できる。また、上笙一郎氏は「日本どまらない。それは彼が意図したものではなく、あくま と ' 怪児童文学におけるナシ = ナリズムの系譜」で、春浪を厳でも副次的な現象であ「たが、「海底軍艦」の爆発的人 軍の - 底夜しく批評する。 気により、明治三十年代から四十年代にかけて、潜在的 ″春浪小説の児童文学としての欠陥は、そこに描かれた な冒険作家たちが次々とデビューしたことだ。 ー 08
のか ) を、ばくはこれまで一度も読んだこ送りとなった。願わくば十篇全部を活字に とがない。問題は第二作以降だが、この路してほしいものだ。 線を守って、つぎつぎに現実を変貌させて 小松左京 いってもらいたい。 『奇妙な民間療法』を、くは第二位に推最終銓衡に残された十篇はいずれもよか った。読んでいて大変たのしく、既成作家 した。この作品と『クロマキー・・フルー』 一つ一つが個性的 は、語り口の巧みさで票を集めたわけだの亜流がないのがいい 石川喬司 が、欲をいえば両作ともいささか新鮮味にで、構成力も高かったが、残念なことに腰 最終予選に残った十篇は、、・ しすれも非常欠ける。冒険が足りないのである。前者はくだけのものが割と多かった。 に読みごたえがあった。実はこの銓衡と並結末にもうひとひねり欲しかったし、後者第一席には今回、川田武氏の『クロマキ ・・フルー』と松崎保美氏の『そして : 、 行して、中間小説誌の新人賞など六つの審はナゾ解きの部分にムリ ( パネルに書かれ ・ : 』の二作品が選ばれたが、銓衡委員の意 査をやらされていたのだが、これだけ粒そた手紙が長すぎる ) があった。しかしこの ろいというケースは他のところにはなかっ二篇の作者は今後プロとして十分やってい見が真二つに分れてしまったのだから、こ の二作品受賞というのは妥当というべきだ た。ひとつのジャンルが興隆するとき、俊ける才能の持主であることは間違いない。 秀おのずから群れつどうという。界の『夏の旅人』『仮面舞踏会』『わが名は″フろう。 『そして : : : 』は、わたしは三回読んだ。 ために大いに喜びたい。 ビト″』の三篇は、・ほくの好きな良質のファ なかでもンタジーだった。あざやかなイメージを定大変むずかしくて普通の人には判定できな 『そして : ・着させた場面がいくつもあり、いまでも強いような専門語をたくさん使っているが、 表現方法はなかなか目新しい。全体として : 』が、・ほ い印象が残っている。 くにはとく『封印された書』と『天職』も楽しめたやや整理不足だがカット・ハックの手法もあ ざやかであ に面白かっ が、長篇の題材を圧縮しすぎたきらいがあ る。 た。ストー って、肉づけ不足が惜しまれた。 リーは要するにシェクリイの『千日手』だ『未来記憶』の淡いペーソス、『決戦・日 としては途 が、スタイルの目新しさに惹かれた。こう本シリーズ』のドタスタ調ューモアも、捨 9 中でシェク 4 いう語彙と手法を一貫させた小説 ( エンジてがたいものがあり、審査会の論議をにぎ ニ・ア・ - フィクションとでも名づけたらいい リイの″千 わわせたが、いま一息パンチが足りず、見 三大コンテスト 小説部門記送後評 ( 五十音順 )
冷酷なスパイ戦に捲きこまれた 人語を解する二匹のイルカ 絶賛発売中 思わすゾッとさせられる S F 的 スリラーてあリ、イアン・フレ ミングを文学的にした作品 ! ニューヨーク・タイムズ この小説の根底にあるものは、 人間はひょっとするとイルカよ リも劣る生物てはないかという 疑惑てある。 週刊朝日 ー映画化 フアフ・コ工 . ンノヾシ へ一 . 輪・。 8 早川書房 229
気眄ー、 三大 SF コンテスト小説部門第一位人選作品 そして・。 松崎保美画 = 中島靖侃 宇宙的規模での陣取りゲーム必争の好点ービヴォ あらゆる先鋭科学を駆使しての戦いは ついにこの準地球型惑星に焦点を結んだ 地球系人類の未来をかけて工作員は飛ぶ . ク いいり
版社はすぐ学校の試験に、禍いが転じて福となった例を書け、とい に単行本とう問題がでたら、ためらわずに、押川春浪のデビューと して刊行すだけ書いてみよう。「こてん古典」を読んでいる先生な ることを決ら満点をつけてくれることまちがいなしだ。 ( もし、ぼ 定。方存は くのこの「こてん古典」が中途挫折したら、それが引き ペンネーム金になってなにが生まれるだろうか ? せいぜい、ネコ を″押川春の子が生まれるぐらいのものだろうねえ ) 浪″とし、 「海底軍艦」は発売と同時に爆発的な売れ行きを示し 「海島冒険た。無名の新人の小説など、そうかんたんには刊行して 奇譚海底くれない大手出版社がその出来の良さを認めた作品だけ 軍艦」のタあって、たちまちのうちに初刷は売り切れた。その当時 イトルで、 の「海底軍艦ーの広告文を読んでみよう。 博文館ほか 全世界を舞台とせる奇々怪々なる大冒険譚は現われた 二社から共同発売された。時に明治三十三年十一月。こ り、本編の主人公は雄風凛々たる日本海軍士官 ! 共部 こに、日本界の祖、押川春浪が誕生し、日本史 上古典の最高傑作として名高い「海底軍艦」が、は下には慓悍決死の水兵あり、鰐魚は印度洋に眠り、獅子 は大陸の巌を噛み、海賊剣を舞はす処美人跳梁する処神 じめて人々の前にその姿を現わしたのだリ 州男子の鉄拳飛ぶ、紅顔の勇少年あり、変幻の軽艇に乗 わざと、まわりくどい書きかたをしてみたが、日本じて千尋の海底を般り、洒落の壮士あり、寄異の鉄車を の祖、押川春浪はこんないきさつを背景に誕生したの進めて万峰の頂を踰ゅ、寂寞たる孤島に不思議の響あ だった。これはたとえば、アメリカのスペ・ース・オペラり、人外の異境に大日帝国軍艦旗翻る、寄絶 ! 怪絶 ! 又 の祖、・・スミスの誕生などと比較すると、まさに雲壮絶ー ーだった。それにしても、 泥の差といった幸運なデビュ もし矢野龍渓が「浮城物語」を発端のみで中止せす、続「海底軍艦」は、日清戦争に勝利したにもかかわらず、 西欧列強から弱小国視され、事実予想した以上に国力の 誌軍篇を書き続けていたとしたら、押川春浪はどうなってい : 海 たのだろう ? 果して冒険作家としての彼は誕生し増大しない日本国民の気持をそのまま代弁してくれた小 たのであろうか ? 一つの作品の中途挫折が、日本説として、次々と版を重ねていった。推理小説研究の第 史上さん然と輝く一人の偉大な作家を生みだす引金とな一人者、中島河太郎氏は、この作品の爆発的人気の理由 ったのだから、ほんとうに世の中はわからない。今度、を「日本推理小説史」で、次のように述べている。 8
小説部門第三位入選作品 三大コンテスト 奇妙な民間療法 石川知日嗣画Ⅱ畑農照雄 ・彎言 ' をを っ畴当 俺のはす向いに坐った黒眼鏡の中年男は ちょっと言葉をかわしたのをきっかけに 「画像応用萬病治療」という変な名の 民間療法のことを熱心に話し始めた : 新をゾ「号《鶩を噎