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検索対象: SFマガジン 1975年10月号
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1. SFマガジン 1975年10月号

今月も、ノン・フィクションから紹介を始球科学者である。もちろんこの種の仮説は、必は、謎の宇宙船が葬られていた : : : そして、 めなければならないが、最も面白く読んだもずしも一一人の独創ではなく、すでにクラークそこに人類の起源にまつわる秘密も埋もれて 0 いたのだ。いかにもハミルトンらしい架空世 のの一冊はコリン・ウイルソンの『三人の超やアシモフなどの的科学評論では可能性 として何度も触れられている話題だが、それ界アドヴェンチュア。 ・能力者の話』 "Strange Powe : 74 ( 中村 を、学問的に集中考察した本としては、これ ハヤカワ文庫からは五冊。〈宇宙英雄ロー , 保男訳・新潮社・一〇〇〇円 ) である。コリ がわれわれの目にするはじめての本だろう。 ダン・シリーズ幻〉の『宇宙船タイタン 0 ン・ウイルソンが彼のいわゆる機能の顕わ一般読者には少し退屈かもしれないが、注意 ! 』 "Der Partner des Giganten; Raum ・ - れとして超能力の問題を追求しつづけている深く読めば、その辺で流行している凡百のパ schff TITAN funkt SOS ・ : 61 ( 松谷健二訳 ことはすでによく知られているし前著『オカニック小説よりも面白いはずである。 ハートラム・チャンドラー ジェラルド・ cn ・ホーキンズの『巨石文明・二八〇円 ) ・ ◆・翁・◆人ルト』は必ずしも平易とはいえない大著だっ ◆・・◇表たにも拘らず、たまたまオカルティズム流行の謎』 "Beyond Stoneherge" ・ 73 ( 小泉源の〈銀河辺境シリーズ 2 〉の『エル・ドラド の波に乗ってよく売れたようだが、その続編太郎訳・大陸書房・一一七〇〇円 ) は、全世界の生贄』 "TO Prime the Pump" ・ 7 一 ( 野 ともいうべき本書も、彼のこのテーマへの没に散在するさまざまの巨石文明ーーイギリ 田昌宏訳・二九〇円 ) 〈猿の惑星〉の新シリ 入ぶりを如実に示す本として非常に興味深ス、ス。ヘイン、フランス、北欧、北アフリカ、 ーズ、ジョージ・・エフィンガーの『猿の 。本書の主眼は、超能力者として定評のあ中東、中国、朝鮮、日本、シベリア、ポリネ 惑星 / 逃亡者人間』 "Man the Fugitive" ダウジング シア、さらには南米などに見られる巨石構築 74 ( 小倉多加志訳・二八〇円 ) 〈ターザン・ ( ・・ - る三人の人物・ーー水脈探査にすぐれたレフト 物を、綜合的に観察し研究し、天文考古学と シリーズ〉の新刊『ターザンとライオン・マ ウィッチ、霊筆記のビーティ夫人、 いう新分野からする大胆な仮説を立てて、失 自ら生まれ替わりを主張するギールダム博士われた文明そのものの正体に迫ろうとする大ン』 "Ta 「 zan and the Lion Man" ・ 34 ( 矢 にインタビ = ーして、その印象を通じ著の翻訳である。アトランティス、ムーなど野徹訳・三九〇円 ) それに、オズ・プ , クスの ◆・◆・◆人 て、彼らの超能力と、ウイルソンのいう X 機の存否をめぐる論争に興味のある読者にと 0 二冊め『オズの虹の国』 "The Ma 「 velous 能とが、どうつながりを持つのかを論ずると Land of OZ ・ : 04 ( 佐藤高子訳・一一八〇円 ) ◆・◆・◆・△ ては、全く新らしいアプローチを与えられる ころにある。それにしても、どうしても、超 である。 能力願望を感じてしまうのは、筆者の偏見だ好著であろう。 このほか、創土社からダンセイニの『ベガ ◆・◆・◆人 地球空洞説とユーフォロジストにとって楽 同じテーマで、マシュー ・ = ングの『霊しいのは・ >-a ・トレンチの『地球内部からーナの神々』 ( 荒保宏訳・一五〇〇円 ) と『 ・・ジェームズ全集・下』 ( 紀田純一郎訳 の呼ぶ声』 "The Link ・ :74 ( 小島和郎訳・の円盤』 "Secret of the Ages"'74 ( 村社伸 ・一八〇〇円 ) 晶文社からはリチャード・プ 佑学社・九八〇円 ) も一読の価値がある。こ訳・角川文庫・二六〇円 ) は、太古に れは十九歳のイギリス青年が自分の周辺に起沈んだアトランティスの末裔が地底の空洞世ローティガンのゴ シック・ノヴェル こるポルターガイスト現象、自動筆記現象を界から発進させているもので、ひそかに地球 実 描写したものでケン・プリッジ大学の学者グル 減亡をたくらんでいるのだというのが著者のの傑作ともいわれ ープが観察し、裏づけをとり、事実であるこ る『ホークライン 説。 とを立証したものだという : ・ ◆・◆・◇・△ ハミルト家の怪物』 "The フィクションでは、エドモンド・ ・グリビンと・プレージマンの『惑星 ク一 0 田 ンの『最後の惑星船の秘密』 "The Valley Hawk line MO- 直列』 ( 平野正浩訳・金沢文庫・七五〇円 ) は、一九八二年に、太陽系の諸惑星がすべて。 ( Creation"'73 ( 田沢幸男訳・久保書店・ ns ( 讐 : 74 ( 藤本 同一方向に並び、その配列からくる重力異常六〇〇円 ) が出た。共産軍の勝利で中国を追和子訳・・一一一〇 ◆・◆・◆・△ 当 が、地球に大地震を起こすかもしれないといわれたアメリカ人のプロの戦争屋たちが、チ〇円 ) などが出て 日一 う、うつかりするとリ・ハイ・ハルの占星術ともべットの奥地で、野獣を自由に操る不思議な 間違われかねないショッキングな本だが、二種族に捕われ、その種族同士の戦いにまきこ 人の著者はそれぞれ有数の天文学者であり地まれるが、実はこの秘境の中にある洞窟に

2. SFマガジン 1975年10月号

「市民でもないのにデモ隊に加わっていたやつだ」 血を吹いて倒れ、女がほのおと化した髪をなびかせて逃げまどっ こ 0- そんなさけびが切れ切れにシンヤの耳にとどいてきた。かれは夢 シンヤをめざして走り寄ってくる保安部員がいた。かれはわれに中で逃げた。ここでつかまったら百年目だ。どのように釈明して かえって必死に逃げ走「た。一度、ものすごいカで肩のあたりをつも、調査局がかれに好意的に事を処理するはずがなか 0 た。かれの かまれたが、かれは全身の力をうでにこめてふり払った。かれの耳身柄は見棄てられるにきま 0 ている。それだけではない。調査局の もとをするどい口笛のような音が走った。最初、それが何なのか気工作員がデモ隊に加わっていたとなると、事実を伏せるためには何 をやらかすかわからない。 がっかなかったが、二度目にそれを耳にしてかれはぎよっとした。 グスタ シンヤは途中で放射能防護服を脱ぎ、靴を棄て、わずかばかりの 。至近 長さ三ミリ 短針銃でねらわれているのだ。直径〇・一、、 距離で厚さ三十ミリの鋼板をも貫通するといわれるチタ = ウムの針身の回りの品物をおさめた・ ( ッグまで投げ棄ててねずみのように逃 の東は、まともに受けたらさいご、神経も筋肉もずたずたにされてげ走った。 しまう。かれは生れてはじめて、血も凍るような恐怖にかられて体 積み重ねられたコンテナーのかげで、かれは二時間も息を殺して を丸めて走った。 いた。その間に何回となく、保安部の一隊がかれの前を通り過ぎて 「殺すな ! つかまえろ ! 」 世界 LL 情報 と・ , すド 月レ一ル作アり 」とに名い躍 , あッし 宇出ら , ギこで行 と尸か企的 2 しの氏ザカ イ版とのて活。がトと。賓ラ間催ン定コフカイス売 「訳なにイ , ”かた体間出インイ助 デ国こ公れが、きスつう主 = 週開口予シ , プテあ口ま O 篇翻け月 , は につ具年をレスアが 長でだ 5 来の。予 8 みい。応ククン氏ネ英る人ら偵しゆでとよのシ 1 をものりキてルルを名のい 一つど在よメしアポ氏著くれ ⅲ試うる一ツ一べに両ケのす主え探れでひも カ賞トう年以るい ・ての 冠工いてす白るるこあ , 変のが売まのる ' 。ア立 ) も滞、信一後州らンの近ぞ山 ン庫一はに名こ , 巻中な 8 る先室とに私 = 前同かス人おれる 5 ビと四し版面あ O すのでが一やドいア いに族このニと , 前ム 3 なそい 版国とい。ノ テ文タで」うナはのに 、ドルっヴ プス訳トい ではズとて会家そ氏どれも以ア 4 氏 , は加てか例る に出両こな一ツナに一 題の , 一 , 盟出らで ャら語ッと力行一こ < れ大 , 間イほこ氏 , リもたは家 ・たを米のいペミド考ポ ク年。つにつうのれ ス は年ニの。ンでイ州つに作 キワかッコ 一明たじ会買いてわ店の新英ててとラた選・ 会招に。フ後 1 ズこ転ゲのウのなキ 「カ春イスイでメのシい ラ , っ , 協をとめい ス , めれ一ビい品ンる ュ のヤ明ド・デすアでて大に史ッ了そラ , 移一た・境に一 クがなが版権だじとリてにでじさ。 ( 前て作ペ , てス ( , しンネ , の刊しン女ョ終よゼはにヘしク辺とカ流 ・」とだ出版スは部のギし時界は表カ以め 際 o 一び話のら一が万・イカ同世 , 発ド , とりフっク訳がだテケが家月 Q 出ルンシ会お・氏市一移ツのこプ女 国 ・ヴこの圏かケれ 5 の , 協国のはだ一でったモなツ邦版たプ「ズ本 , はツ界ボイク大 , * 一イ = ・ハをャ部るル進 一デはえ欧家のこ約力とが両のま ( 定をあシにプ ( 訳 ( ヤは一 , ず降ポ世ルグ一 , りャニフィ居ジ南えア新 サンるま西作初ん 社でたはの予任にアとズ語。キ由リうび以ツのメ・ワおたジズタセにののかとの幻 一ラれりがの最ろメ 2 称。出画冊く主集・こ一ッた「理シぼ伸 , ポ年 , ルでなわロラン・内住こかス中 2 ゼサド市在 , をモし アのさた連スがむ数アう名たが計 3 い編クるリイつが。るつりし , 今て・地。へ のツキにて家ラ出 * 宙版あソリれは部 * いのつ画な ~ て ()n がツす * シドな前るすいまプて * し同るン

3. SFマガジン 1975年10月号

^ 版新波五人男 ( 当時のイラストより ) さしえ / 真鍋博 〈五人男稲勢川勢揃いの場〉 知らざあ読んでおくんなせえ 浜の真砂とウエルズが このほか、スペース・オペラ研究家とし文に残せしの ・ての野田宏一郎も、この頃、 co マガジン種は尽きねえ c-v マガジン ハへ、効果的なデビューを果している。彼の そのライタ 1 の若ざかり ^ 本業は多忙なテレビ・ディレクターだった 五人男の勢揃い ( が、生来のエネルギッシュな気質と、スペ まずはパッチリごらん下せえ 0 0 レ、 4 ・ 1 ス・オ。ヘラに対する飽くなき情熱はその 『英雄群像』の中で見事に開花し、若 「問われて名乗るもおこがましいが い読者のみならず作家たちにも、非常生まれは遠州浜松在 に喜ばれたのである。 十四の時から親にかくれ さらに、この時期もう一人の異能の持主勘当承知の通い がマガジンに登場する。この年中つづ好きこそものの何とやら いた連載インタービュ 1 『を創る人々』原書集めも五千冊 のインタービューアー大伴昌司である。大七つの海に知らぬはねえ 伴はもともとはミステリー畑で活動をして 日本一の色男伊藤典夫 ゆいて、ぼくが知った頃は旧宝石などでイン タービューアーをしたり映画トリックの研さてその次は横須賀で 究をしたりしていたが、この年のはじめ頃優等生の稚児上り から、急速にに接近してきた。・ほくは ふだん見なれたヤンキーから 彼のインタービューアーとしての腕を買い 横文字習った甲斐あってか 『を創る人々』を担当してもらった。 コンテストにも二度三度 その頃の彼の傑作の一つで、たまたま当 ェイトマンでゴッポリ稼ぎ 時のの〈新らしい波〉の五人を扱った 無宿と肩書きの 戯詩がある。最近の読者にとって興味深い 自称独身その名声平井和正 だろうから、ここでそれを紹介してみよ つづいてあとに控えしは 餓鬼の頃からマンガ好き 〈火の玉小僧〉でぐれだして 世間ナナメに狂 首尾も本格派と 大クラークも顔負けの豊田有恒 またその次につらなるは 以前はバーの大親分で 今日そトップ・マネージメント

4. SFマガジン 1975年10月号

われる以前から人類を支配してきたのだ。だからスタックは、自分していたからではないか。しかしいまわたしの愛するのは神であ る。人間たちをわたしは愛さない。人間はいまわたしから見れば、 の力がそれに勝ることを知っていた。 彼は、大文字で始まる呼び名を持っ狂った存在をさがしに出かけあまりにも不完全なものである。人間への愛はわたしを減ぼすであ ろう」 「そして超俗の人は森で何をしているのであろうか」とツアラトウ ストラはたずねた。 超俗の人は答えた。「わたしは歌をつくって、それをうたう。そ ツアラトウストラは単身山をくだった。そして何びとにも行き会して歌をつくるとき、わたしは笑い、泣き、そしてうめく。こうし わなかった。しかし森林地帯にはいったとき、不意にひとりの老翁てわたしは神をたたえるのだ。うたい、泣き、笑い、うめいて、わ がかれの前に現われた。それは森に木皮と根をたずね求めて、世俗たしはわたしの神である神をたたえる。だが君はわたしたちに何を 贈り物としてもってきたか」 を離れたおのれの庵から出て来たのである。その老翁はツアラトウ このことばを聞いたとき、ツアラトウストラは超俗の人に一礼し ストラにこう語った。 この人はて、言った。「あなたがたに与えるようなものをどうしてわたしが 「わたしにはこのさすらいびとは未知でない。幾年か前、 ここを通って行った。ツアラトウストラという名であった。しかし持っていよう。いや、速やかにわたしをここから去らしてくれ。わ こうし いま、それは以前と変わった人になっている。あのとき君は君の火たしがあなたがたのものを何も取らずにすむように」 て、二人、老者と壮者は別れた、さながら二人の少年が笑いあうよ を山上に運んだ。きようは君に君の火を谷々へ運ぼうとするのか。 うに笑いあって。 君は放火者の受ける罰を恐れないのか。 おさなご しかし独りになったとき、ツアラトウストラはこう自分のむにむ ツアラトウストラは変わった、ツアラトウストラは幼子になっ かって言った。「いったいこれはありうべきことだろうか。この老 た、ツアラトウストラはいま目ざめた。さてその君はいま眠ってい いた超俗の人が森にいて、まだあのことを何も聞いていないとは。 る者たちのところへ行って、何をしようとするのか。君は海に住む ように孤独のうちに生きてきた。そして海は静かに君を浮かべてい神は死んだ、ということを」 ( 手塚富雄訳『ツアラトウストラ』中央公論社刊より ) た。ああ、君はいま陸にあがろうとするのか。ああ、君は君の身体 をふたたび引きずって歩くつもりか」 4 ツアラトウストラは答えた。「わたしは人間たちを愛する」 「なぜ」と超俗の人は言った。「いったいな・せ、わたしは、山林には こうぶ いり荒蕪の地にはいったか。それはわたしが人間たちをあまりに愛スタックは、終焉の森をさまよう狂える者を見つけた。疲れきっ 3 2

5. SFマガジン 1975年10月号

例えば、わしらは星雲の渦巻きのカープについて予想ことはないと考えていたからではなく、ただ単に、アッ し合っているところだったが、わしは不意に、 こう一一 = ロい シリア人だとかメソボタミアだとか地球だとか人類たと だしたのだ。「ところで、 - ちょっと聞いてくれよ、 (k) かいったものが存在するようになることを、てんから受 yK : : : 君は、アッシリアはメソボタミアに侵入するとけつけなかっただけなのだ。 思うかい ? 」 これは、もちろん、ほかの場合に較べれば、ずっと息 彼はすっかりとまどっていた。「メソ : : : 何 ? いつの長い賭けだった。すぐにも結果がわかるような、とき 「あの だい ? 」 どきあるケースとは、わけが違った。例えば 急いでわしは計算して、日付けを言ってのけてやった太陽が見えるかい、まわりに長円体ができているのが ? が、もちろん、年とか世紀とかなんかじゃない。 つまはやく ! 遊星群ができあがらないうちに、軌道間のそ り、当時はまだそんな大きさで時間の単位を考えることれそれの距離がどれだけあるか言ってごらんー そう言いも終らないうちに、たちまちーーー八ないし九 はできなかったからで、正確な日付けを示すには、実に 複雑な公式に頼らなければならず、それを書くとした億、いや何を言っている、六、七億年のあいだにーーそ の遊星群がそれそれの軌道を守って、近寄りすぎも遠ざ ら、恐らく黒板いつばいを埋めるほどなのだった。 かりすぎもせずにまわり始めていたのだった。 「そんなことがどうしてわかるものかね ? 「はやく、 (k)yK-•侵入するかどうか ? ぼくは侵しかし、それ以上にわしを大いに満足させてくれるの は、何百億年、何千億年ものあいだ心にとめておいて、 入すると思う。君は、しないほうだな ? OX かい 2 さあ、いつまでもぐずぐずしているなよー 何にいくら賭けておいたか忘れないようにしなければな わしらはまだ無限の虚空のなかにいて、そのところどらない勝負のほうだったけれども、わしとしては同時 ころには、生まれたばかりのわずかな星座の渦をめぐっ に、もっと短期の勝負のことも、双方の勝ち負けの回数 て、髭のような水素が幾つかすじを引いているだけだつのことも ( すでに整数の時代が始まっていて、事情はも た。当然、メソボタミアの平原を真っ黒に覆いつくす人う少し複雑になっていた ) 、また賭け金の総額まで ( 、わ 馬やラッパや飛箭を予見するには : すいぶんと複雑な推しの儲けはますます増えて、学部長は借金で首がまわら 理が必要だったが、それでも、ほかには何もすることがな ないくらいになっていた ) 、何から何まで憶えていなけ ればならなかった。しかも、その上になお、わしは推理 かったのだから、成功できないものではなかったのだ。 ところが、こういう場合、学部長はいつでも反対のほの連鎖をますます先きへ進んで、絶えす新しい賭けを言 うに賭けていたし、それも、アッシリア人が侵略をするいだしていないではいられなかったのだ。

6. SFマガジン 1975年10月号

そうだろう ? それにはどうすれま、 をしいか ? きみがその製品を使ニターするはずだ ) うところをみんなに見せれま、、。 をししつまり、きみはその気のどくな「さて、これでおたがいの立場ははっきりした、そうだろう ? こ のかわいいデルフィは」ーーー彼は隣の部屋にいる見えない生き物に 男に、チャンスを与えてやることになるんだよ」 デルフィのかわいい頭は、うれしそうに安堵のうなずきをくりか語りかけるーー・「かわいいデルフィは、これから胸もときめくすば らしい人生を送ることになる。彼女は大衆の注目を浴びる娘にな えす。 「はい、よくわかりますーーでも、それならとても立派なことみたる。そして、大衆が知ってよかったと思うようなすぐれた製品を使 い、それを作っているりつばな人たちを助けるだろう。きみの仕事 いな気がしますけど、どうしてそれがいけないのかしらーー」 は、まさしく社会的な貢献なんだよ」彼は言葉の調子を高める。隣 キャントルは悲しげにほほえむ。 「過度の反動だよ、デルフィ。歴史は振り子のようなもんだ。大衆の部屋にいる生き物は、この娘よりも年上なはずだ。 はオー ーに反応するあまり、社会にとって絶対に必要な進展を踏デルフィはみんなが見惚れるような真剣さで、その言葉をかみし みつぶすような、厳格で非現実的な法律をこさえてしまう。そんなめる。 ことが起こったときには、良識ある人間は、振り子がもどってくる「でも、そんなことがどうしてあたしに まで、できるだけの努力をしなくてはならない」キャントルは嘆息「なにも心配はいらない。きみの後ろには、きみが使うのにいちば する。「〈ひろめ屋取締法〉は、非人間的な、いけない法律なんだんふさわしい製品を選ぶのを仕事にしている人間が、大ぜい控えて いる。きみの仕事は、彼らのいうとおりにするだけでいいのだ。パ よ、デルフィ、たとえ意図がよくてもね。もし、あの法律が忠実に サン・カ 守られたら、それこそ大混乱だ。経済も社会もめちゃくちゃに破壊 1 ティにはどんなドレスを着ていくか、どんな太陽電池車やビ = ー される。そして洞窟時代へ逆もどりだ ! 」キャントルは心の中の火アーを買えばいいか、そういったことは。せんぶその連中が教えてく をのそかせる。もし〈ひろめ屋取締法〉が厳重に施行されたら、彼れる。きみはそのとおりに動けばいい」 デルフィの。ヒンクの唇が ーティ ドレスーーーサン・カー ! もデータ・・ハンクのキー。ハンチャーに逆もどりなのだ。 ークの飢えた十七歳の頭の中から、製品スポンサー 「これはわれわれの義務だよ、デルフィ。厳粛な社会的義務た。そひらく。・・ハ れに、これは法律違反でもない。きみはけんにその製品を使うのだの倫理がどこか遠くへ消え去っていく。 から。しかし、世間の人たちがもしそれを知ったら、理解してはく「さあ、きみの仕事がどんなものかを、きみなりの言葉で説明して れないだろう。きみが最初そうだったように、ひどく動揺するだろくれないかね、デルフィ」 ーティにでかけ 「はい。あたしはーーあたしはいわれたとおり、 う。だから、このことは一切だれにもしゃべらないように、慎重の たり、品物を買ったり、それを使ったりします。工場で働いてる人 9 上にも慎重であってほしい」 ( 同時に、だれかが慎重の上にも慎重に、デルフィの発声回路をモたちを助けるために」

7. SFマガジン 1975年10月号

あやうくサントス・デュモンの凧型飛行機にぶつかりかけた。アラト特価品のあくどい紅色の福神漬。そして、ポッポッと明りが消え ・フとイスラエルの国境線では、音もなく現われた飛行船を互いに相て、どこかでヒタヒタと野良犬の走る音がする広大な住宅団地。こ 手方の偵察用だと誤解して、対空砲火を浴びせるという騒ぎがあつれが、変ることのない暮しの主流であり、皆が身をまかす時間の流 こ入る前の世間話と 、・、ツキンガム宮殿の頭上にも、飛行れだった。事件は、その時どきの彼らに、商談冫 た。ェッフェル塔の真上にも / 船や気球や奇天烈な航空機が姿を見せた。一番深刻だったのはプラして、酒をうまくする馬鹿話として、利用されているに過ぎなかっ ジリアで、ただでさえ国内のどこかに円盤基地があるというの高 い土地、出現したフランク・リード二世の電気空中船の異様に上を「気球と子宮と、どう違うねやろ」 下への大騒ぎ。パニック状態が起きて、暴行、掠奪、門付け、軒付「そらお前、気球の中には気体が入ってるけど、子宮の中には液体 け。この世の終りと暴れる市民。忘れろ忘れろ、恐怖は忘れろ、せが入るがな」 めて陽気に踊ろじゃないかと、季節はずれのカーニバル。飛び出す「それがヘタしたら、子体に変りよる」 市民は数知れす、雨が降ろうとよし風吹こと、胸の炎は消えやせ「子供の身体ですか」 ぬ。泣いて笑って、笑って泣いて、明日はお立ちか死出の旅。一ヶ 「そうそう」 月もこれが続いて、首都の機能は完全に停止してしまった。 あるいは、 しかし、こういった騒動は、はっきり言って世の中のごく一部で「飛行するのに、何でヒコーセンや」 「ほな、戦争に使われた船でも、何で帆船や」 起こり、消えたことに過ぎなかった。いっか、あの若い O ライタ ーが言ったように、大部分の人達は以前と変りのない毎日をすごし「それもこれも、みんな月給が安いからや。もう一本飲みたいけ ていた。朝、ギリギリの時刻に起きて駅まで走り、踏切をくぐりぬど、金がないわ」 「よっしや、ほなら、次は俺のツケきく店へ行こ。ええがな、構へ けて電車に乗るサラリーマン。子供を幼稚園に送り出してから、ス タジオ番組のスターの過去に見入る母親。ォルゴールを鳴らしてやんさかいついといでっちゅうねや」 ってくるゴミ回収車。オフィス街の、まるで養鶏場のように能率的「よっしや、行きます。すまんけど借りということで」 に食事が出て、また引かれるカウンター食堂。あくびを噛み殺しな「水臭いこと言いな。同期で入った仲ゃないかー 「ああ、嬉しいなあその言葉。そしたら今夜はトコトン飲も。おか がら、メモ用紙にいたすら書きをして過ごす、午後のダラダラ会 議。退社時間にごったがえす女子更衣室。デートの約束、お花のおあちゃん、遅なるけど勘忍やでえ・ : 三ヶ月もたった頃には、マスコミでさえもこの事件に関して、あ けいこ。麻雀の定期戦、一杯飲み屋の赤い提燈、パチンコ屋の喧 噪、 バーのネオン、アルサロの特攻サービス。疲れきった顔がずらまり興味を示さなくなってきた。攻撃してくる訳でもなく、世の中 の邪魔になる様子もなく、ただあちこちでふわふわと浮き、のたの りと並ぶ終電車。寝る前に軽くかき込むお茶漬とスーパーマーケッ ・ヘに こたい

8. SFマガジン 1975年10月号

わる奇怪事の数々も単なる作り噺ではないと考えるのです。という「そこで事件の性質をこの見地からもういちど考えてみましよう " のは伝説は一つで充分なのに、今世紀のいろんな報道がそれそれ古「第一に、太古クフの第一次探険隊は神馬のひく神殿に圧潰された 冊とおなじような事を伝えているからです。するとこれは、何かの 理由とカで、いかにも奇怪に見えはするが、少くとも云伝えに近い 第二は、ついでアメシュの派した取壊し工作班は火の雨で亡・ほさ 様相で現実に引起された事件に違いない ではどんなカかと云えれた ば、それは判りません。なにか現在のわれわれの科学以上の機械装第三。紀元前千年アッシリアの軍団はアヌビスの一ト矢で 置ということも考えられますが、この件におけるようにいろいろな 八世紀、第四次の西人侵入には岩が口をきき、大鳥が舞下りたー 場合に・気紛れなほど不統一かついろいろに働く万能な仕掛という ものはわれわれの機械工学では承認し難い。一つ一つの場合がまる現代では、第一次に現地の探険隊が完全に行方不明になり、第二 きり違った方法で処理されているのをみると、どうしても之は誰かにアメリカ隊が廟前で全員発狂した。そして第三 " 第一次国際調査 の意志で・人間が対応的に動いている色合いが濃い。一たいこの墓団は外廟内で忽然と雲散霧消した ト斯うですネ」 の主ムムシュという王は、私はかれの事蹟をできるだけ調べてみた かみ のですが、彼は前期上エジプトの濫觴期に君臨して並びない勢威と「思うに、近代装備を持った一学術団を『忽然と』消減したり、そ おぼっ 栄華をほこり、最初の神格に生前から餌した王です " ということはの全員を同時に発狂させたりするような芸当は我らには覚付かない つまり、それまでの原始的素朴な王朝から、民をして王が生人でかとしても、一つの銃器で一中隊を殲減することや、空から雨のよう ロケット に火箭ないし焼夷・ガス弾をふらすことは、現代人ならふつうにで っ神であると見做さしめる神権政体を確立した最初の王でもあるこ とで、君主としてより同時にむしろ権力者として非凡な器だったこきることではないでしようか。私は第二のアッシリア軍のばあい とは確実です。事実またあの農を伝えた神農伏羲ほどの神話的怪人異教徒の侵入から埃及を守ったアヌビスの一ト矢というのは、むし ではなかったにしても、数多くの人巧利器を発明して民に教えた肇ろ一ト弓というべき・扮装した兵士の機関銃にすぎず、貪欲なロド わき 国的首長だったらしいのです。しかしそれだけならただ英邁の王とリックにたいして岩が口をきいたというのは旁から拡声機をつかっ たか大型テレビを応用した手品ではなかったかと思うのです」 いうにとどまる。なぜ神格化されたのか、どこが・或はどれほど非 「貴方は何を言出すのだ ! 」 凡だったのかという事になると、もう記録が不充分で分りません。 とアルラフィーク博士が呆れた様子で叫んだ。「それらは今から ただ、したがってその墳墓も前代未聞の豪奢をきわめ、彼自身ある いはその崇拝者がその神聖を後世にたもとうとして、墓盗人どものそれそれ千年、二千年、三千年前の事なのですゾ ! どうしてその 土足や外異の好奇の目から守るために、我らの理解を越えた非凡な時代に、そんな : : : 」 「しかし、純粋な方法論としては可能なわけでしよう ? 」と阿兎の 方法を講じたということはごく自然に想像できます。

9. SFマガジン 1975年10月号

前後にも四枚羽根の。フロペラがついて小るが、これは停止してい 「放せはなせ。乙女の恥は死でそそぐ」 る。甲板上に何人かの人影が見えた。 " ・この暑いのにフロックコート を着て、手に持った山高帽をふっている。そのなかの一人が、高ら叫んでいるオバちゃんとはまったく無関係に、空中軍艦は市庁舎 かにトランペットを吹いているのだった。警官の一人が「顔を上に上空で停止した。。フロペラの風圧で塔の鐘が揺れて、カランカラン とのどかに鳴った。。 ( タンパタンと音がしたかと思うと、入道雲を むけたまま、手だけは機械的に動かしたため、ドンと腹に響く音が 背景に、今度は日銀上空に羽ばたき飛行機が出現した。背中に羽根 して、ライト・ハンがタクシーの横腹に突っ込んだ。 をくくりつけて飛んでいるのだ。明治三十六年に建てられた荘重な 「何さらすねや」 ろくしよう 建築物。正面中央のルネッサンス式の円屋根は、緑青で淡い緑色に 「じやかまっしゃい。文句があんねやったら、ポリ公に言え」 なっている。上空をぐるりと廻って、男はその円屋根の上に降りた 我にかえって、警官があわてて信号灯横の警察電話に飛びつい こ 0 った。真紅のハンカチを出して、見物人にむかってふっている。 「すんまへん、事故発生。すんまへん」 守衛の爺さんがあわてて詰所へかけ込んだ。全館にベルが鳴り響 半袖シャツの背中が、ぐっしよりと汗で濡れていた。。フルン。フルき、窓という窓に・ ( タ・ ( タとシャッターが降ろされた。金塊泥棒と でも思ったのだろう。羽ばたき男はひとしきりハンカチをふると、 ンと上で音がして、船体の前後についているプロペラが廻りだし、 空中軍艦がゆっくりと大阪市庁舎に近づいていく。大正十五年に竣またパタバタと飛びあがり、堂島川の上を斜めに横切って毎日会館 工して以来、およそ半世紀を経た大阪市庁舎。中央に尖頭をもち、 ビルの方へ飛んでいった。ワッと誰かが叫んで、美津濃ビルを指さ 左右対称にどっしりとそびえる鉄筋五階建てのこのビルディングした。そこに巨大なラグビー・ホール型の飛行船が出現していた。ラ は、ど ' ことなく古いドイツの官庁を思わせる。歳月が、この建物をグビーポールいつばいにネットをかけ、そのネットの下端にゴンド いかにも権威ありげな、重厚なセ。ヒア色に変色させている。その窓ラを吊り下げて、ゆらゆらとそれはやってきた。シューシューと音 がいっせいに開いて、無数の顔がっき出された。のしかかるようにがするのは、プロペラを廻しているのが蒸気機関なのだろう。ビル して、空中軍艦は進んでいく。 の屋上に立っている円筒形の大きな広告塔、その頂上には馬鹿でか 「・ハケモンやー い黄金の優勝カップが設置されている。飛行船はその上空で停止し 「お母ちゃん」 た。ゴンドラから下がっていた錨が、優勝カップにあたって、カー 四階の窓から身を乗り出しすぎたオールドミスの職員が、バラン ンと間の抜けた音をたてた。蒸気がかかって、カツ。フの表面がさあ スを崩して落ちかけた。男子職員が二人、あわてて彼女の両足をつ っと曇った。窓から身を乗り出して、男が一人、商売用のアーチェリ かみ、オバちゃんは窓から逆さ吊りになった。スカートがまくれて ーで飛行船を射とうとし、それを店員が必死で止めている。ゴンド 彼女の顔を隠し、かわりに夏には珍らしい毛糸のズロースが現われラからそれを見おろして、外国人が一人手をふっている。交又点は こ 0 に 6

10. SFマガジン 1975年10月号

~ ャーナリズムの不明を、つとに指摘してい 長編に手を出すのは無理かもしれない、とければならないし、新人作家に対しては、 た。そして自ら、サンデー毎日に数度にわ思っていたのだ。時期が早すぎると思ったある程度の援助も、考えておくのが出版界 たって特集企画を提案し実現させて、 からではない。その意味でならば「東都にの常識だった。しかし正直いって、それほ ・強い刺激を与えてきたのである。その最初は先を越されたし、ほかにも二、三社が ど長編シリーズのためにリスクを冒す ) は、早くも一九六一年に行なわれたが、こ長編を企画中というも流れていたか気持は、当時の早川書房にあったとはいえ の年は、五月 ( 『これがだ十人集』佐ら、遅すぎるくらいだと思っていた。 なかった。そして・ほく自身も、作家た 野、光瀬、小松、福島、都筑、豊田、星、 だが、早川書房がこれ以前に刊行してい ちの成長ぶりを、過小評価していたかもし 眉村、半村、結城 ) と十一月 ( 福島、矢た〈日本ミステリ・シリーズ〉の難行ぶり れなかった。 野、斎藤 ( 守弘 ) 、星、小松ほか作家を見るにつけ、世間にミステリ・ブームの けれども、もう愚図っいてはいられなか クラプ全員 ) の二回にわたって企画を声が高かったにもかかわらず実際の売行きった。手を出せば潰れるという通説を敢え は伸び悩んでいるその情況を見るにつけー て無視してを強行出版し、を創 一同誌別冊で実現させたのである。 ーそして、その担当者だった当時のミステ刊したぼくらにとって、日本作家の手にな 一また石川喬司は、文芸年鑑のミステリー リ・マガジン編集長小泉太郎 ( 生島治郎 ) る最初の長編シリーズを、他社に攫わ ( 部門の執筆を以前から担当しその欄でしば ) しばに言及して、の普及に努めての苦労ぶりを目の当りするにつけ、二のれることだけはどうしてもできなかった。 ) いたが、この年からは、彼の強力なサジェ足、三の足を踏んでいたのだ。もっと強力ぼくは星新一に、そして小松左京に相談を ~ ストによって、新たに〈界展望〉の項な宣伝と販売努力をと、二人で話しあった持ちかけた。小松左京は快諾したが、長編を ~ が設けられるようになった。それが、いまこともあった。長編シリーズを手がけると危ぶむ星新一は説得しなければならなかっ の〈推理小説・〉の項になったのは、 いうことになれば、当然、金もかかる。流た。安部さんの遅筆ぶりも、佐野さんの殺 それから間もなくのことである。 行作家には、それ相応の部数を約東もしな人的多忙ぶりも有名だった。そして都筑道 この年の夏、早川書房は、〈日本シ 夫から長編の原稿をとることは至難のわざ とされていた。〈日本シリーズ〉の前 ~ リーズ〉の刊行を決定し、第一期六冊のラ 途は、考えたたけで多難であった。マ インナップを発表した。小松左京、光瀬物き、、 宀 ガジンにだけかまけているわけこよ、 ) 龍、星新一、都筑道夫、安部公房、佐野洋 一の六人であ 0 た。 夫かった。それに、〈 ( ャカワ・・シリ 杜 ) ぼくがこの時点で日本作家の長編シリー ーズ〉の方も、この年から、急に。ヒッチを 〉ズ刊行の企画に踏み切った、直接の動機は、 あげて、出版点数は月二点になっていた。 やはり東都書房の〈東都〉に刺激され 〈異色作家短編集〉第二期も、ぼくの企画 たことだったかもしれない。実をいうと・ほ であり、ぼくの担当領域であった。ぼくの 0 くは、まだこの時点では、早川書房が 忙しさはこの頃、頂点に達しつつあった。 1