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1. SFマガジン 1975年12月号

ばなかった道の上にも、たどってきた道路とおなじように、道しる″現在″というべきものも、数かぎりなく存在しうるということに ・ヘはたしかに存在している。わたしたちがその道しるべを見ることなる」 ミノットは、ほおばったサンドウィッチの最後の一片をのみおろ はけっしてないが、その存在だけは確信をもって言うことができる し、そしてうなずいた。「そのとおりだ。そして今日、大自然がけ のだ」 いれんし、それら多くの現在が混ぜあわされ、まだときどきは、そ またも、反論したのはプレークだった。「ひじようにおもしろい お話だとは思います。けれど、ぼくたちのいまの状況と、それがどの震動がゆりかえしているのだ。かって北欧人はアメリカ大陸に植 民した。いくつかの出来事が連鎖的におこり、時の経過とともに北 うむすびつくのかが、まだわかりません」 ミ / ットはいらだってつづけた。「未来について理解できたのな欧人の植民地は敗退して、わたしたちの祖先のとおった道筋が歴史 ら、おなじことが過去においてもありえたのだと考えっかないのに記録されてのこった。だが、べつの時の道筋をたどったなら、そ の北欧人による植民地は成功し、繁栄したかもしれない。中国人は か。三つの次元と一つの現在と一つの未来のことを、いましゃべっ てきた。一つ以上の未来をみとめる理論的必然性ーー・数学的必然性カリフォル = アの沿岸に到達した。わたしたちの祖先の時の道筋で が存在する。ありうる未来の数は無限大だし、時間における″分れは、アメリカに来た中国人は何ものこさず、発展しなかった。だが 道″のとり方しだいで、わたしたちはそのうちのどの未来に向かう今朝わたしたちは、中国人がアメリカ大陸を征服し植民した時の道 筋と接触した。さっきの農夫のあの恐怖の表情を見れば、彼らはま こともできる。 だインディアンを絶減させてはいないようだが。 東のほうに行こうと思えば、方向はいくつでもある。未来のほう に行こうと思ったばあいも同様だ。ここより百マイル西のほうから ローマ帝国がいまだに存在しつづける現在もありうるし、彼らが 出発し、時間の道の分れ道でやっているのと同様に、まったく無作かってイギリスを支配していたのとおなじようにいまアメリカを支 為に地上の道をえらんで東のほうへあるいてきてみたまえ。きみは配していることだって考えられなくはない。氷河期の原因となった ちょうどこの場所に到着するかもしれない。あるいはこの地点の南気象の状態が消えることなくまだつづいていて、ヴァージニア州が 側、北側に出るかもしれないが、いずれにしても、出発点から見れ雪の底にうもれているという現在だってありうる。石炭期のままの ば東に来ている。そこで、百マイル西からではなく、百年昔から出現在もありうる。あるいは、わたしたちの知っている現在にもうす こし近いところでいえば、ゲティス・ハ 1 グにおけるビケットの攻撃 発することを考えてみるんだ」 プレークが、お・ほっかなげに言った。「つまり、その・・・ーー未来のに徹底的に敗北して、アメリカ南部諸州連合がいまや独立国として 数はいくらでもありうるのだから、過去についても、・ほくたちが歴存在し、国境線を武装してすきあらばと合衆国をつけねらっている 史でならって知っている以外のものが、いくらでもあったはずだと現在だってあるかもしれないのだ」 いうわけですね。そしてーー・そしてその考えをおしすすめれば、 7

2. SFマガジン 1975年12月号

第 短絡〈このところ、かっての少数派は、多文化論』 ( 河出書房新社・ 780 円 ) から。転移現象があると ・・・数派に変わろうとしている感がある。いまや■伝説〈大口のヴァギナに出会った、あわいう。私もかって れな男を描いたエスキモーの伝説がある。あラジオで二回、子 司 蜘・蜘・の飛来を。ーー超古代文明の存在を , ー、 どもにきかれ、一 蜘 9 ( 先史時代における宇宙人の来訪を , ー、・超能力る美しい娘を訪ね、その娘と交わ 0 た男がい ◆・◆・◆・△の実在を信じないものは、すべて偏狭な精神たが、彼は自分の望みをとげられて、天にも回は大人に大まじ ョ ← ~ 的盲者として蔑まれそうな気配がある。・ほく上るここちだ 0 た。しかし彼は、自分の体がめで説明され、ノ ンフィクション ・・・にはこれが、何とも奇妙な風景に見えた。どう徐々に彼女のヴァギナに吸い込まれているこ うさん臭い雰囲気に感じらとを知って、恐怖で全身をひきつらせた。ヴライターの書いた ・にも奇天烈な ◆れてならないのである。・ = = ・すこし異常に見 , ギナは、リズミカルに彼の体を吸い込んで本で読みもし、そ本 いった。翌朝、彼はもはやこの世に存在しなのつどあきれ返っ ◆・◆・◆人える事件が起きたからというので、それをた 日一 かった。彼ののってきた小舟は川に置き去りた。仕立て ◆・◆・・ ~ だちに宇宙人や異次元のせいにするのは、し にされたままだった。娘は家から出て放尿しで、ありそうに書 - ・ - - ささか子供っぽすぎはしないか ? : : : 少しく いてあるが、私は たが、そのとき尿といっしょに彼女はすでに : そうい ・・ - 短絡的にすぎはしないだろうか ? : ・・う態度こそが、それこそ、無限の可能性を秘めなき愛人の骨も流し出したのである〉・そんな現象は見た ◆・◆・◆人ているはずの、自由な発想や、大胆な仮説・サイモンズ『性の世界記録』 ( 光文社・つて信じない。すぐその現象を調べにかか り、真相を求めるだろう〉 ( 実吉達郎 ) 日『動 ートルを失わせる結果を 5 0 0 円 ) から。 ◆・◆・◆・△の、真のレゾン・デ 青春 〈「自分の心はたとえ、どんなに陰物故事物語』 ( 河出書房新社・ 980 円 ) か ・・導きだしてしまうのではないか ? 〉 ( 福島正■ ら。 ・・実 ) == ・・クシュ『魔の三角海域』 ( 角惨でねじくれまがっても、この世の中には、 本当に『美しいもの』『すばらしいもの』が・ 基礎作業〈以前私は『大いなる失墜』を ◆川文庫・ 340 円 ) の訳者あとがきから。 ◆・◆・◆・△■ 欺瞞〈にとって問題になってくるのあり、それは自分の心の中に長年たまったど書くにあたって、木星の核表面に沿って回る ◆・◆・◆人は、が前衛的になるにつれて、こういったす黒い『毒』でもって汚したり、否定したり人工衛星を想定して、その天体計算をやった ・・純文学における前衛的な作品の単なるにせもすることはできないのだ」という思いが、つことを覚えています。結果的にはこれが不可 いに彼の結論であったことを、すばらしいと能とわかり筋を変更しましたが、案外こうし ・・のに陥る危険性を持っているということでし ・・よう。つまりシ = ール・リアリズムやアンチも観じた。それは小松の人間としての基本的た作品の表面には表われない基礎作業はやっ ・ロマン系統の前衛的な小説が存在する部分なまともさとやさしさが導き出した結論であているのです。 : : : 作家には意外にもそ うした律義さがあって、自分を納得させなく ◆・◆・◆人は、超虚構性を持っの立場からはさらにり、彼のその後の行動は一貫してその思いが ・・その裏側へまわり込まなくてはならない。相心からのものであることを示している〉 ( 国ては嘘もつけない馬鹿正直なところがあって - 手が二重の虚構性を持つならは三重の虚弘正雄 ) 日小松左京『ゃぶれかぶれ青春記』面白いと思います〉 ( 荒巻義雄 ) 日同人誌 】構性を持たねばならない筈なのです。これが ( 旺文社文庫・ 200 円 ) の解説から。この『星群』 ( 第二回星群祭。フログラムプック ) 作品は『螢雪時代』に連載された自伝で、若から。 ・いかに多難な作業であるかは、 = = ー・ウ = ー い読者に心から一読をすすめたい。 ◆・◆又ヴと称して発表された作品の多くが、従来か 今月の創作ベスト 5 半村良『妖星伝』第 ~ ・ら存在した前衛的な小説 0 、緊密な文体がな・大仮説〈それはおそる〈き結論ある。■ - ・い故の貧弱な亜流にとどまってしまっている現在の人類、私たち、少なくとも私たちの一二部・外道の巻 ( 講談社・ 750 円 ) 、光瀬 、てことでもわかります。これは前衛的な作品は部は、第五惑星人と太古女性の ( ー「 - の血を龍『征東都督府』 ( 早川書房・ 1200 円 ) 、 物・◆でしか読んだことがないという若いひいている。あなたがたのうちのだれかは、山田正紀『神狩り』 ( 同・ 870 円 ) 、豊田有 , ・・◆ : の読者への欺瞞でもあります。 : : : あらゆるあるいはあなた自身のいくらかの部分は、第恒『夢の川分間』 ( 徳間書店・ 750 円 ) 、同 ◆・◆ : ジャンルのの面白さを充分理解し : : : 約五惑星人の遠い子孫である。第五惑星人の最『西遊記プラス伐』 ( 番町書房・ 880 円 ) 。 . 、・東事の楽しさは楽しさとして古い技法で書か大の遺産は、私たち人類そのものではなかっ他に深沢七郎『無妙記』 ( 河出書房新社・ - れたのよさも充分味わえる広い感受性をたのか〉 ( 五島勉 ) ⅱ『宇宙人・謎の遺産』 880 円 ) 、都筑道夫『怪奇小説という名の 怪奇小説』 ( 桃源社・ 10 00 円 ) を面白く - ・身につけてこそ前衛に進むことができるので ( 祥伝社・ 600 円 ) から。 , ◆・◆・◆ ! はないかと、・ほくは自戒を含めてそう思い■ 軽信 〈ナメクジが川のこっちからむこう読んだ。科学読物では広瀬秀雄『望遠鏡』 ◆い◆い◆卩・ます〉 ( 筒井康隆 ) 日ェッセイ集『やつあたり わへ、霧のような波と分解して移動する空間 ( 中央公論社・ 980 円 ) を推す。

3. SFマガジン 1975年12月号

ハリスがいいわけするような口調で言った。「穴のなかにもぐり かすかに、メイダ・ヘインズは彼のほうにつめよった。「説明し ていただけますか、先生。わたしたちができるのはただここで待っこみ、その穴を引っぱり出すようなものですね。新聞の科学解説欄 ことだけです。地形を見たかぎりでは、わたしたちの元の世界ではで読んだことがあるのですが」 ミノットはうなずいた。教室にいるような態度でなおもつづけ この小川の向うに村があるはずです。わたしたちの元の時の支道が た。「さて、そのような宇宙が二つ形成されたと考えてみたまえ。 あらわれさえすれば、その村がここにあらわれるはすでしよう」 自ら形成したそれそれの宇宙のなかからは、もう一方の宇宙を見る ミノットは無意識に、以前の権威ある態度をややとりもどしてい た。とらえられ奴隷の地位に落としめられて、彼の自己過信的な気ことはできない。わたしたちの宇宙と同様、その二つの宇宙はそれ 持ちはかなりうしなわれていたのだった。以前には、自分が優秀なぞれ自らの時間と空間においてしか存在しない。だが両方の宇宙 人種の一員であるばかりでなく、その人種のなかでもすぐれた部類は、ある場所ーーーたとえば、超空間とでもいうところに同時に存在 にいると思っていた。それが奴隷におとしめられ、あざけられたのしているはずだ。なぜなら、もし二つの閉鎖宇宙がべつべつに存在 である。彼の虚栄心はいまだにその記憶になやまされ、自己過信のしているのなら、その二つの宇宙をふくんだものがなんらかのかた 心はあの野獣のような奴隷をたった二人しか殺すことができず、そちで存在しているはずだからだ」 れも自分の自由をまもる役にはたたなかったという事実によってつ 「たしかに」と・フレークが言った。「先生のおっしやることはもっ きくずされた。いま、ひさしぶりに昔の土俵にあがることができ、 ともですが、一般的に言って、観察することのできないものについ 彼の声には張りが出てきた。 て何もまなぶことができないはずでしよう」 「重力が、空間をゆがめるという事実は周知のことだ」厳密なこと「たしかにそうだ」ミノット教授はうなずいた。「だが、わたした ばで説明しはじめた。「観察によって、あたえられた質量により空ちの宇宙が閉ざされたものであるなら、ほかにも閉鎖宇宙が存在す 間がゆがむ量が算出できる。計算すれば、空間を完全に閉鎖するに ることをみとめなければならないだろう。そしてそれらの閉鎖宇宙 必要な質量の大きさを決定できる。つまり、わたしたちの知るどんすべてが、わたしたちの閉鎖宇宙と同様に存在しうるということ な次元によっても到達できず観察することもできない閉鎖宇宙をつを、存在しているということをわすれてはならないだろう」 くりだすというわけだ。たとえば、両方あわせてある一定の質量と「しかし、それにどんな意味があるのですか」・フレークが聞いた。 なる巨大な二個の星が衝突するばあい、大異変などおこらないとい 「もしわたしたちの宇宙に似た閉鎖宇宙が、超宇宙という共通の媒 うことが知られている。二つの星は、ただ消失してしまうのだ。だ体のなかに、たがいに隔離されたままの状態で存在しているとすれ が二個の星は存在しなくなったわけではない。わたしたちの時間空ば、それらは、宇宙のなかにおける、恒星や惑星のあいだの関係に 間系に存在することをやめただけなのだ。二つの星は、自らの時間 たとえることができる。恒星や惑星は、空間によってへだてられて 9 と空間とをつくりあげたのだ」 いるにもかかわらず、たがいに影響をおよ・ほしあっているのだ。そ

4. SFマガジン 1975年12月号

ノット先生は、南部諸州連合が国家として存在する時の道筋も存在で、わが帝国の形成をはじめるのだ。そして、きみたちのうち命令 にしたがわない者は裸足でおいてゆき、残りの者だけで、わたしの すると言う。たとえそんな世界でも、おなじ人種が住みおなじこと ばをしゃべることのできる世界のほうが、インディアンや中国人や運命をきずきあげるのだ」 ・フレークはとても静かに言った。「先生、ぼくたちはみな先生が 北欧人のなかに永久に島流しにされているよりはずっといいとぼく 自分の運命をたっするための道具になるよりは、自分たち自身の運 はおもう」 ミノットが声を荒らげた。「・フレーク、馬鹿なことを言うのはす命にしたがいたいとおもいます」 ミノットはしばらく彼をみつめた。唇をきっとむすんだ。「かわ ぐやめるんだ。この隊で命令をくだすのはわたし一人だ。あの飛行 , リスとわたしとに命令した。ゆるいそうなことだ」っめたく言った。「きみの頭を利用したかった 機が堕落したときにおまえは、、 ~ をしかない。きみ よ、プレーク。だが反抗をほうってはおくわけこま、 せないことだ。指導者は二人はいらない。指導者はわたしだけだ。 それをおぼえておくのだ」 を射殺しなければならない」 プレークはぐるっと身をまわした。ミノットが・フレークに拳銃を拳銃がかまえられた。 つきつけた。 「おまえは、元の時代にかえそうなどとくわだてている」だんだん Ⅶ 野蛮になってきた。「それはゆるせない ! 賭けはまだ、総ての世 界がほろんでしまう可能性のほうが大きいのだ。もし生きのこれる人類の知識をこえたさまざまな出来事の原因をつかもうと、英国 ものなら、わたしはそのチャンスに賭ける。その計画のなかには、科学アカデミーは、異常な会議をひらいていた。会員たちはつかれ もちろん元の世界にもどってロビンソン大学で数学をおしえること はてていた。目はすでにかすんできてはいたがなお自分の威厳を意 などは、はいっていないのだ」 識し、自分たちがおこなっている作業の重要性を意識していた。尊 「そうなのですか」・フレ 1 クが冷静にたずねた。「では、このあと敬すべき頬髯の物理宀工須が、その顔にふさわしい尊厳さをもち、断 言的に発言していた。 どうしようというのですか」 「こういうことだ ! きみたちの拳銃を取りあげる。以後、わたし「でナから、諸君、これ以上かたるべきことはもうありません。過 が一人で計画をたて、きみたちは命令を受けるだけだ。ヴァイキン去数時間の異常な事件は、われわれ自身の閉鎖空間の外に存在する グ文明がアメリカにさかえている時の道筋をさがしに行く。みつけなんらかの因子によってもたらされたようにおもわれます。一〇の ることができるだろう。時のこの振動は、まだ数週間はつづくはず七九乗の質点粒子をもつ重力場は、その大きさの集合として空間を なのだから。そして一たびそれを発見したら、わたしたちは北欧人閉じます。つまり、それより大きな宇宙は存在しえません。そして のあいだに住みつき、そして時間と空間が安定にもどったところそのような宇宙が創造されたことを仮定するばあい、それまで存在 0 8

5. SFマガジン 1975年12月号

0 0 0 of the Future" (University of Nortre l)ame ゴラの擬人化たるアルラウネなど闇の存在を生みだ的、ドグマ的な偏向作家」と酷評されていた人物か press; 1975 ) というタイトルで、著者はロード・アす力になった。しかし人造人間に関するもっと決定もしれない。そういえば、現にオールディスなど英 イランドにある・フラウン大学の英文学教授 Robert 的な転回点は、十九世紀以降にあらわれた「人間の米の研究家は、的思考の最初の作家として Scholes0 この著者には構造主義の立場から文学を形を取らない人造人間」の出現だろう。そしてこのオラフ・ステー。フルドンに再接近しようとしはじめ 分析した論文が三つほどある。そしてこの小さな講転回点に沿って文学史を眺めていくのだ。そのときている 義録に・ほくが着目したのは、を単に歴史的流れ・ほくたちの前に浮かび上がってくるのは、十八世紀ずいぶん回り道になったが、とにかく口バー ークリー僧正など宇宙旅行の先達スコールズの講義内容を覗いてみよう。かれはそこ の中で捉えるのではなく、いろいろな要素を同時に以前にあっては・ハ てちょうど・ほくが考えていたような的思考の 併せ持った構造体として捉える見方だった。実はアよりも、世界言語の発明に熱中したジョン・ウイル : グ。ーツ メリカに出掛ける前に、・ほくはの仲間と「キンズや、自らの演劇を「地球座」という宇宙の、、、歴史を、まず展開している 的思考の歴史」という観点から眺めた論が書けニチュアのなかで演じさせた怪人・シェイクスビ「人間の自分自身に対する観念の変革は、ダーウィ るかどうかという問題を話しあったことがあったアや、・・ウエルズが描いたのテーマをすンの進化論から始まった。その系譜は今アインシュ ・ほくたちが仮りに「的思考」と名づけるのでに先取りしていたイギリス・ルネサンス期の謎めタインの相対性理論に受けつがれている。そしてこ は、人間の思想史のなかに生まれたある革新的な考いた総合科学のエ者キルヒャー師といった、いわばの新しい人間観は、人間の感覚や組織や言語コミ えかた、あるいはその時代を超越して文明史に影響「思考の」作家たちのはずだ。ただ間題になるニケーションについてのシステム研究ーーーたとえば をおよ・ほしたある思考のことだ。手つとり早い例とのは、そうした人造人間の新らしいパターンが文ヴィトゲンシュタインの言語哲学やレヴ・イⅡストロ ノラケルススからースの構造主義人類学やウィーナーのサイ、、ハネティ して、人造人間という概念を取りあげてみよう。古者たちの手に渡ってくるのは、。、 によって、さらに拡大した。今世紀に 代から現代にいたる人造人間の形態的な変遷を調べ「フランケンシュタイン」、中世の機械人形製作熱クス論など てみると、二つの転回点が見つかる。ヘレニズム以来からホフマンの人造人間譚「砂男」へと、すくなくおこった宇宙論の再構成は、人間的な時間と空間的 アンドロギュスス の「完全人」あるいは両性具有者に代表される天使とも三 ~ 五世紀遅れていた点だが、しかし十九世紀な時間を理解する新らしい道をひらき、人間のシス のイメ 1 ジを、人形愛の形でとらえていた時代から、以来のはこのタイム・ラグをある程度縮めたとテムと宇宙のシステムとの間に存在する関係を新ら 、、。・ほくが現在もっとも興味を持っているしし捉えかたで捉えることを可能にした。この改革 純粋化学における先駆者パラケルススが物質同士のいってしし ホムノクルス 化合によって人造人間を作る方法を提唱した中世紀のは、「人間の形を取らない人造人間」を最初に文は、歴史的な人間を構造的な人間に置き換えたのだ。 以降への動きが、まず第一の転回点となる。化学的学に持ちこんた作家を突きとめることた。その作家要約すれば、われわれは今、われわれの生命が、 結合による人間創造は、人造人間にめざされていたをもし発見できたとき、・ほくはウエルズ以上に以前とは較べものにならないほど自山に思弁できる 「完璧な美をもっ存在」という意図を消し、矮人と的な作家を突きとめることになるだろう。そしてもひとつの。 ( ターン化された宇宙の、その一部である してのホムンクルスや泥人形のゴーレム、マンドラしかしたら、その作家というのは、当時「・ 非科学ことに気づいた、ということになるだろう。そして ュ 4

6. SFマガジン 1975年12月号

「連中は原子力を知らない。これまでも知らなかったんだろう。宇つの社会形態がある。それそれのタイプのメン・ハーがここにいるわ けだ。ブツツは独裁下にある。リロイはフランスの第六コミューン 宙船は別の原理で動くのにちがいない」 「じゃあ」ハリスンはびしやりと言った。「なぜきみは彼らの知能だ。ハリスンとぼくはアメリカ人、民主主義に属している。ね、独 が人間より高いと思ったんだ ? われわれは原子を分割することが裁、共産、民主主義ーー三つのタイプがある。トウィールの種族の できるんだぞ ! 」 政治形態は、これらとはまったく違うのだ」 「たしかにできる。でも、われわれには手がかりがあったんじゃな「違う ? じゃあ何だね」 いだろうか ? ラジウムとウラニウム。これらの元素がなかった「地球の政府はこれを試みたこともないーーー無政府主義だ ! 」 いや、、原子力など「無政府主義 ! 」隊長とブツツが異ロ同音に叫んだ。 ら、われわれは原子力を発見できただろうか ? 「そうさ」 というものが存在することすら知らずにいるにちがいない」 ハリスンはつばをとばしながら、「どういうつもり 「でもーー」 「で、彼らは知らないのかーー」 ーセントだと、あだ、彼らのほうが進歩しているとは ? 無政府主義だと ! ふん 「ああ、知らない。火星の密度は地球の七十三パ んたから聞いたことがある。そのため重元素が存在しないってこと 「べつにばくは無政府主義が人類にとっていいシステムとだいって ぐらい化学者にだってわかるさーーーオスミウムもラジウムもウラニ るわけじゃない。だが彼らにはいいんだ」 ウムもないんだ。彼らには手がかりは与えられなかったのさ」 「たとえそうだとしても、それで連中がわれわれより進歩している「しかし、無政府主義とは ! 」隊長は頑固だった。 ことの証明にはならん。彼らが本当に進歩しているのなら、なんと「なに、いざとなれば、無政府主義は理想的な政治形態だってこと がわかるよ。エマースンはなるべく統治せぬ政府が最良の政府だと かして原子力を発見しているはずだ」 「かもしれん」ジャーヴィスが言 0 た。「あらゆる点で、・ほくらが言っている。ウ = ンデル・フィリップスもそうだし、ジョージ・ワ 彼らに比べて劣 0 ていると主張するわけじゃない。でも、ある点でシントンも同意見だ。で、無政府主義も統治せぬ政治形態が他にあ るかい ? なにしろ無政府主義は政府がまったく存在しないんだか は、彼らはずっと進歩している」 ら」 「たとえば ? 」 隊長はつばをとばしながら、 「そう、たとえば、社会」 「しかしーー不自然だ ! 野蛮人ですら長がいる。狼だってリー 「ほう ? ・どういうことだ ? ・」 ダーがいる ! 」 ジャーヴィスは自分をじっと見つめる三人の顔を、順番に見てい 「でも」と、ジャ 1 ヴィスは反抗的に言った。「その事実は、政府 4 った。彼はためらいながら、つぶやいた。 「どういえばわかってもらえるかな ? いいかねーー地球には、三というのは原始的な産物であるということを証明しているにすぎな

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そこにはもうなかった。そのあと、わたしたちは東に向ってすすん一瞬だけその声はつづき、そして途絶えた。立ち木の折れる音が近 だ。きみたちが気づいたかどうかは知らないが、キング・ジョージくにひびき、怪奇な野獣が、焚火のほうへと用心深くすすんでき こ。大ジカだった。だがなんという大ジカか。とてつもない大きさ 郡につくまえに、あたりの植生がとっぜん変化した。松林だったのナ だった。女子学生の一人が恐怖に悲鳴をあげると、シカは向きをか が、カシ・モミ林にかわったが、カシやモミの林は、わたしたちの 元の世界におけるこの地域には、存在しないはずなのだ。文明が存え下生えのなかに消えた。 在する徴候も見あたらなかった。それから騎首を南にむけ、濃い霧「ヴァ 1 ジニア州には、大ジカはいないはずだ」ミノットが平然と と雪のなかをすすんだ。ヴァージニア州がまだ氷河時代にあるよう言った。 ・フレークがまた。するどく声をかけた。「静かに ! 」 な気候条件をもった時の道筋が存在することも確かだ」 ・フレ 1 クはうなずいた。また耳をすませ、そしてたずねた。 北のほうからまたもやにぶい唸り声が聞こえた。徐々に、その音 「それそれの歴史をもった時の道筋が、三種類あるというわけです は大きくなってきた。飛行機のエンジン音だった。にぶい唸り声は ね」 「そういうわけだ」ミノットがうなずいた。「そのとおりた。時の雷鳴となり、そして絶叫へとかわった。頭上をその飛行機が通りす 道筋どうしが混ざりあうとき、電動がおこるさいに、大地の表面にぎたが、その翼には航行灯があかあかとひかっていた。急に機体を 存在する『断層』に似たことがおきるようだ。あるていど面積の大かしげ、そしてひきかえしてきた。八人の頭上に円をかいていた きな地域が、一つの時の道筋からべつの時の道筋へと、いったりきが、それは奇妙にも無力さをあらわしているように見えた。その飛 行機がとっぜん機首をさげた。 たりしているように見える。数階建ての建物のなかのエレベーター にそれをなそらえるとわかりやすいだろう。われわれはフレドリク 「ぼくたちの元の世界からきた飛行機だ」音の聞こえてくる方角を ス・ハ 1 グという名のエレベータ 1 に乗り、その地域全体がべつの時みつめながら、・フレークが言った。ぼくたちの焚火の火が見えたの の道筋へと上下したのだ。はじめわたしたちは、中国人の大陸でそにちがいない。この暗闇で不時着するつもりなのだろう」 のエレベーターを降りた。まだそこにいたときに、われわれの出発エンジン音が消えた。一瞬、夜のそこにはただ火のはぜる音と風 したフレドリクス・ハーグという地域がまた上下し、べつの時の道筋のそよぎだけが地表をながれた。それから枝の折れる音がおそろし のほうへ行ってしまった。そのエレベーターがあった場所にわたしくひびいた。衝突 たちがもどったときにはーーーそう、フレドリクス・ハーグの町はもう炎があがり、大音響がとどろき、そしてガソリンの黄色に燃える すでにべつの時の道筋に行ってしまっていたのだ」 火柱が、空にむかってふきあがった。 7 「ここにいてくれ ! 」・フレークが言った。そのときにはもう彼は立 プレークが、するどく叫び声をあげた。「何か聞こえるそ ! 」 7 ミノット先生 ! 誰か女の子たちをま ちあがっていた。「ハ 遠く北のほうから、もぐもぐ言うようなにぶい声音が聞こえた。

8. SFマガジン 1975年12月号

だ。小松左京や光瀬龍の作品を、まさか余裕はなかった。荒さんは、ぼくの反論を んでいただきたい。 ご存知ないわけではあるまい。なぜなら読んですぐに再反論を書き、それは三、四 第一、日本のは、まだ翻訳時代を ば荒氏は、ごく限られたマニアの動日めには早くも読売新聞に掲載された。 脱していない。 きにも詳しくて、彼らのひらく年に一度 第二、星新一の義務と責任は、大正時 のフェステ イバルの批判までしていられ お山の大将はつつしめ 代の中ごろ、探偵小説を定着させること るからである。 福島氏の論に答えて に成功した江戸川乱歩に似ている。 これでは、正確な現状分析も、まして 第三、星新一のショ 1 ト・ショートは 警告ができるわけはない。 星新一がについて「私のが唯一の変格 TJ である。本格という主流の それとも、やはり、あまりご存知ない 本格派で、他はみんな変格である」と言 かたわらに、変格が傍流として存在 ことを、常識だけで割り切って、知った っているので、それを本格と変格するのならよいけれども、本格なしで変 かぶりをしているのだろうか ? との分類に利用したところ、福島正実格だけが栄えるのでは、は定着しな いであろう。 さんからおしかりを受けた。 ( 十一月二 十二年前のこの文章の、青つぼく舌足ら十三日付け本欄 ) 私の本格の理想型は、・・ポ ずな気負いは、いまさらながら、ぼくに冷 ジュ 1 ル・ベルヌ、・・ウエルズ 「荒氏はこれを〈放言〉ととって星氏を “汗三斗の想いをさせる。その憎さげないい 大いにしかっているのだが、これがどう という伝統を受けとめたものである。批 まわしは、若気の至りとはいえ思い上りだ にもおかしいのだ」 判的継承であることは、改めて言う必要 ったかもしれない。とはいえ、いまだから なるほどおかしい。ただし、おかしく もない。以上三人は、自分の夢を、 ・といって、ぼくの主張の趣旨を、改めなけ仕立てたのは福島正実さんであって、私に託して書きつづったのである。なぜ、 宀ればならないとは思わない。 に託したかが知りたい。別の言葉で ではない。私は、星新一の発言を放言だ ともあれ、ぼくと荒さんとのこの論争が、 といったりしない。むろん、大いにしか い、は、の本質はいったい何であろ 人々を多少とも興がらせたことは確かだ。 うか。ー・ー本格というのは、私の理 ったりなどしていない。何か錯覚を起こ それから暫く、・ほくはあちこちでこの一 想をこめた呼び名である。 しているのではないか。また、私には、 ・件について訊かれたり、からかわれたりし 星新一のパラドックスが全くわかってい 福島正実さんは「新しい波」をあげ、 た。作家・評論家などの集まる酒場で、 日本には、日本的なの育ちかたがあ ないと非難しているが、これも苦笑もの ラドック 「頑張れ、負けるな」と〈激励〉されもし である。あの会話の基調は、パ って当然だという。私は、そういう言い ~ た。新米編集者の頃から知っていた丸谷才 スなどではなくて、ダンディふうと受け方のかげに、変格を条件なしに肯定 一氏などは、面白がって、もっと露骨にば しようという態度をみとめる。は、 取ったが、これも勘ちがいですかね。 〈くをけしかけさえした。 私の文章は、断わってある通りの 科学的であるよりも、ロマンチックでな だが、本人の・ほくには、面白がっている 現状への率直な警告である。正面から読ければならぬという前提に立って、変格

9. SFマガジン 1975年12月号

していた宇宙に一〇の七九乗番目の粒子がくわえられた瞬間、そのがよろめいているのは彼一人ではなかった。尊敬すべき会議場の全 宇宙にふくまれているすべての銀河宇宙は消えうせるでありましょ体が、とっ・せんむかっくようなめまいにふるえた。そしてその時点 で、英国科学アカデミーは公式な決定もなしに休会にはいり、 しかしながら、一つの宇宙空間が閉じられたからといって、それック状態におちいった。会員たちは逃げまどった。なぜなら、とっ はその宇宙が崩壊してしまうことを意味しはしません。ただ単に、 ぜんその会場には演壇もなければ壁もなくなっていたからである。 その閉鎖空間が、もとの空間から完全に隔離されるということであ講演者が立っていたところは、何もない空間になっていた。その空 り、それ自体重力場に由来する空間の湾曲によって、空間的時間的間の中央は火が燃えていた。その焚火の回りにはいくつかの野蛮な にそれが孤立してしまうということなのです。そしてもし閉鎖空間人影があったが、その人影は、それから逃げだそうとする頬髯の学 が一つ以上の場所に存在することを仮定するならば、ある意味で者たちと、おどろくほどよく似ていた。逃げまどう尊敬すべき学者 。閉鎖空間どうしをへだてる超空間の存在を仮定することになり たちにむかってその人影はほえた。歯をむきだし、粗野なこん棒を ます。超空間的座標系が超空間どうしの位置関係を決めるわけでふるって彼らは、英国科学アカデミーの会場にとびこんできた。学 す。超空間のーー」 者が一人彼らにつかまったことが知られている。とくに異様な容貌 講演をつづけている学者より長くて白い頬髯の紳士が大声で断言の生物学者であった。その学者は彼らに食われてしまったと、信し した。「くだらん ! 意味も何もない、くだらんたわごとだ ! 」 られている。 発言者は身がまえ、弥次のとんできた方向をにらみつけた。「あ だが、人類のうち、すくなくともある種においては、食人の習慣 なた ! あなたがいいたいのはー・ーー」 が当り前なことであることが知られている。たとえばピルトダウン 「そうだ ! 」長くて白い頬髯の紳士が言った。「くだらんたわごと人やネアンデルタール人がそうである。もしどこかの時の道筋で彼 だ ! 」っぎに言いだすのはどうせ、あんたの超空間においては、閉らがたまたまより知性のあるライバル種を絶減させていたとしたら 鎖空間は超法則にしたがっており、それそれ超重力によっておたが つまり、もしビテカントロプス・エレクトウスが生きのこり、 いの超軌道をめぐり、うたがいもなくときには超潮汐作用や超衝突ホモ・サ。ヒエンスが減亡した時の道筋があったとしたらーーーそう、 をおこし、けつきよく超破局をおこすというのだろう」 そのような時の支道においては、食肉は社会の習慣であるだろう。 「そのとおりのことが」演壇の頬髯の紳士が、怒りに身をふるわせ て言った。「そのとおりのことが、事実なのです ! 」 「ではその事実とやらは」より長い頬髯の学者が言いかえした。 「わたしを病気にしてしまう」 息をのみ、メイダ・ヘインズがプレークの前にとびだした。だ そして、まるでそれを証明するかのように、彼はよろめいた。だ が、ハリスのほうがすばやかった。彼はいま、例のいいわけがまし

10. SFマガジン 1975年12月号

だろう。全然おもしろくもなかったけどね。きっと、海岸のむこう そして六月五日の朝十時半、ミノット教授は回転拳銃を両手に一 の金持ちの道楽じゃないかな。へへ。オールが言うには、やつらの 梃ずつかまえ、学生たちを脅迫していた。もっとも恐ろしい行為で しゃべってたことばは首風の北欧語だそうだ。やつらはライフショ もせいぜいが数学の成績に不可をつけることぐらいだという、ふだ ルムとかいう土地の者で、そこはこの海岸をあがったところにある んの教師の顔はいまや消えうせていた。チョークや鉛筆を持つはず というのだそうだ。このおれたちの町がなぜここにあるのかわから の両手にいま拳銃を持ち、笑みをうかべてはいても、その目は冷酷 ないっていうらしい。一度も見たことがないっていうんだ。そんな に光っているのだった。四人の女子学生は息をのんでいた。教授を のって考えられるかい。オールがいうには、やつらはワイキンだっ 教室でしか見たことのない男子学生たちにはいま、教授がたしかに て、そしてここの土地をウインランドと呼んでいるのだそうだ その拳銃をつかえるということだけでなく、本気でつかおうとして おや、どうしたんだ」 いることもわかった。学生たちの心に突如として教授にたいする尊 闇をつらぬいて、喧噪がったわってきた。絶叫。泣き声。ショッ 敬の念が芽ばえたがそれは、盗賊や誘拐犯やギャングのポスを見る トガンのにぶい銃声がひびいた。雑貨屋で無駄話をしていた人びと ときのような尊敬の念であった。数学教授どころではない、それよ ポーチに出てそこにむらがった。海上の数カ所に灯がうごくの りすっと偉大な存在となったのである。教授はあっけなく一行の指 が見えた。その明りに、オールをこぎ、岸にむか「て殺到する十隻導者となり、また武器の威力によ 0 てその支配者ともなった。 以上の長い舟が照りはえた。そのうちの四隻はすでに岸にたっして 「もうわかっただろうが」とミ / ット教授は平静な声音で言った。 おり、暗い人影がなかからあふれ出てきた。炎に剣がきらめき、盾 「現在の状況を、わたしは予知していた。そのための準備も、一応 がかがやいた。女が一人、金髪をふりみだした大男にとらえられ、 ととのえてある。いまこの瞬間にも、わたしたち八人だけではなく 悲鳴をあげた。真鍮のヘルメットと盾がきらめいた。大男は笑い顔 人類全体が完全に消減してしまうかもしれない。だが、逆に生きの を見せていた。こちら側から男が一人、その大男にむかってとびだ こるチャンスもあるのだ。もし生きのこれるものならば、わたしは したが、大男は威嚇するように、手に持った斧をかまえた。 まず第一に自分の生存をはかるつもりだ」 巨人は切りおろし、刃から血をしたたらせて、吠えるような喊声 フレドリクスパーグ北方の異常なセコイア森林を探検するつもり をあげた。仲間が彼につづき、放火と略奪がはじまった。後続の舟 でついてきた学生たちの顔を、教授は、一人ひとりゆっくりと見わ もつぎつぎと接岸し、またも鎧を着た男たちが上陸してきた・また たした。 一軒、家が音をたて、空にむけて火炎をふきあげた。 「わたしには、何がおこったのかがわかっている」ミノット教授は つづけた。「それに、これからどうなるのかも、おおむねはわかっ ているのだ。そして自分がどうしたいかもわかっている。わたしに 3 ついてくる用意のある者は、申し出たまえ。異議のある者はーーー反