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1. SFマガジン 1975年12月号

て、というかたちをとったのです。 シュクさせるような、勝手気ままな、手ち寄らなければならない。そのことに 私が、本格、変格の区分けー に負えない非科学的、ゲテモノ的宇宙物は、これつぼっちの異存もありません。 2 2 そのためにも、もしなし得れば、私 いやむしろ、その価値序列的な差別を 語でした。しかしそれは紛れもなくアメ リカ r-n の主流であり、そしてやがてそ と、ファンとのために、この書簡へ 嫌うのは、そのためです。常識的な意味 での「科学的、なテーマと結構とを持っ の中から、数多くの現代の収穫が現のご返事がいただければ幸いです。 ( 六 たものを本格として、それを主流におき、 われたのです。は、どの国でも、多か それ以外のものを変格として、傍流ときれ少なかれ、そうした変格的な育ち方を たぶん、ぼくは、、 力なり構えてこれを書 めつけてしまっては、が本来的に持している。あるいはそれが、の本質と っているはずのーーーそれこそがレゾン・ 結びついた育ち方かもしれないのです。きはじめたのだろう。途中で、ロジックが キングズレイ・エ スは、 co に本メロメロになりかけたり、また立ち直った デートルであるはずの形式の自由さ、テ りというところが、よく見える。その頃と 1 マの自由さ、アプローチの自由さを窒格的に取り組んだ、数少ない文学者の一 息させてしまう惧れがあります。 人ですが、彼はその論『地獄の新地しては、精一杯の他流試合をしている気持 図』の中で、とジャズの相似性につだったのだろう。そして、何とかこの議論 は、それが的にすぐれた作品 いて語っています。彼によれば、ジャズに実のある拡がりを持たせられればと思っ であるかぎり、どんな形式をとろうと も、同じ価値判断を要求する資格と権利 は、一人のべ ートーベンも持たずに、大たのだろう。 があるのです。 衆の熱烈な愛好によって盛りあげられて ・ほくは、荒さんからの返事を、心待ちに トしていた。もし返事が来なければ、出むい 先生の主張を読むと、海外のに 今日の隆盛を生んだ。も、一人の は、あたかも、中核に「科学的」本格 ルストイも持たずに、大衆のヴァイタリ て、荒さんを説得しようとも思っていた。 があり、その周辺に変格がいなら ティそのものをエネルギーとして、根強だが、それは、意外な方向へ発展していっ ぶといった、すっかり整理されたかたち い力を持っ文学ジャンルとなろうとしてた。 があるかのように思っていらっしやる印 いる、といいます。洞察力に富んだ卓見その当時は、まだ宝石社の出していた旧 象を受けるのですが、そうでしようか ? ではないかと思います。 宝石が、荒さんと・ほくと、それに石川喬司 もしそうお考えだとすれば、それこそ 私は、そうした意味での、日本流のの三人で、それまでの議論を受けたかたち はっきりと間違いです。いま、 g..4 のも の座談会をやってほしい、といってきたの の育ち方を、期待したいのです。強い っとも盛んなのはアメリカですが、アメ である。担当は、その後も光文社の新・宝 ヴァイタリティを持ち、自由で濶達な、 石に移って活躍する大坪直行であった。 リカのは、・・ウエルズの亜流新しい小説としてのを。 である荒唐無稽なスペース・オペラとし 先生もいわれました を日本人座談会は、この年の二月に行なわれ、 て、三〇年代に開花したのです。それ の文学的風土に定着させるためには、み『日本の c-k はこれでいいのか』と題され は、まったく、科学的主義者をヒン んなの情熱と精力とを、もっともっと持て、〈別冊宝石 3 ・特集世界の〉号

2. SFマガジン 1975年12月号

に掲載された。 荒サイエンティフィック・フィクショ 荒さんは、大きな風呂敷包みを秘書の女ンの略だと、だれがいっているのですか。 石川「空想科学小説」とか「科学小 の子に持たせて、現われた。風呂敷包みの福島最近の例でいうと、内村直也さん説」といった訳語からの連想で、と科 中味は、数十冊のマガジンだった。 がお使いになっていましたよ。ロッド・サ学とをストレートに結びつけるような傾向 という言葉の定義をめぐって、話の ーリングが来日したとき、サイエンティフ が、日本では一般的なんじゃないですか。 ロ火が切られた。 ィック・フィクションっまりもやる人福島そうなんです。サイエンティフィ ししいかたは、一て だというふうに。それから、数学者の矢野ック・フィクションと、う、 福島さいきん・ほくの感じていることで健太郎さん。 の小説が、非常に科学的でなければならな 、という印象を与える。それが困るわけ すが、という言葉が、一般化してきた荒それで、サイエンス・フィクション のはいいんですが、これがサイエンティフというのと、サイエンティフィック・フィ . し . しーし、カ / 十 / ック・フィクションの略だと誤解されてクションというのとは、そんなに違うわ荒その空想科学小説と、う、 いるきらいがある。これが困るんですね。 ですか。 んですが、大正から昭和のはじめにかけて こここよ、、 力なり本質的な問題が含まれま福島違います。はサイエンス・フの頃も、漠然とではあるが、使われていた すからね。 イクションの略です。 ように思うんですよ。そして今度、マ 荒サイエンス・フィクションと規定な荒どう違いますか。 ガジンにも「空想科学小説」というサプタ さるわけですか。 イトルをお使いになっている。これは、空 福島すくなくともサイエンティフィッ こんな調子で、座談会の空気は、最初明想科学小説という言葉に、特別な意味を持 ク・フィクションの略ではないというとこらかにぎごちなかった。さらに話は、つぎたせているわけなのですね ? ろから出発したいのです。 のように展開していった。 福島つまり、科学小説という言葉を意 日本ノヴェルズ 書 クロノスの骨 早 五代各価八七〇円〔四六判上製〕 脱出におのがすべてを蟠ける若者の知的冒険への旅 ! 新人の書下し処女長篇 207

3. SFマガジン 1975年12月号

・供するにやぶさかではないのだという意味 先生は、あたかも私が同人誌『宇宙 のことを喋った。荒さんは、・ほくが宇宙塵 塵』の功績をいっさい認めず、継子あっ 8 2 ~ の功績を認めず、世界を切り啓き、わ かいにするばかりか、「お山の大将おれ ~ が国の文学界にいちおうの地歩を獲得した ひとりという態度ーでいる、と書いてお られます。 ~ のを、マガジンあるいは・ほく個人の功 ハ績と主張しようとしている、ととられたら 質問します。 しいが。それはとんでもない間違いであ いったいな・せ、そんなことをお考えに る。ぼくには、少くとも、その意味での私 なったのですか ? 先生への反論の中 で、私はそう取れるようなことを、何か “心はない。のための地歩を切り啓いて いくというプライドと、そのために自分が 書いたでしようか ? 先生の言いかナに とっている方法が正しいという自負はあっ 従えば「私心」をもって故意に彼らを誹 ・ても、断じて「お山の大将ー的意識はもっ なしたわけではない。しかし、ここは、も謗するようなことを ? う一度説得的に出るべきだ、と考えたので ていない : 事実の正確を期するために私の反論を ・ほくは、時の移るのも忘れて、荒さんとある。 読みかえしてみてください。私が彼らに かくて、一九六四年二月号に掲載された 話しつづけた。 言及したのは、荒先生が「ごく限られた その電話の会話はおそらく、一時間の余ばくの〈公開書簡〉『をめぐって』 マニアの動きにも詳しい」のだから、他 は、つぎのようなものになった。 つづいたはずである。 の ()n 活動についてもご存知ないはずは 電話を終った頃、ぼくの心中に、微妙な ない、という件りだけのはずです。 前略 ムード的変化が生じていたことを、・ほくは つまり、私は、な・せ先生が、現実にマ 荒先生。 ) 認めるに吝かでない。そのとき・ほくは、す スコミに受け入れられている作家た この公開書簡は、一九六三年十一月二 でに〈公開状〉を書く準備をととのえつつ ちの作家活動には目をつぶりながら、先 ・あったから、もし荒さんとそうして直接わ十七日付読売新聞紙上に掲載された先生生自身が「貧困」と批判されている同人 ) たりあわなかったならば、より戦闘的な言 の「お山の大将はつつしめ」と題する文誌の動きだけを、問題にしなければなら 葉やいいまわしを、それ以前の気分のまま章にお答えする意味で書いたものです。 なかったのか。私は、それをうかがした まず先生の私に対する誤解をとき《私 に使っていたにちがいない。そして、その かっただけなのです。 への ()n 読者の誤解を予防することか ハ結果、より違った影響を、生みだしていた ある文学活動を判断し、理解しようと ら、書きはじめたいと思います。ほかでも ハだろう。だが、話しあった結果は・ほくを、 するとき、現実の文学活動よりも、アマ ありません。「お山の大将はつつしめ」と 〔よりクールにするのに役立った。念のため チュアのそれに重点をおいてみるという いう先生のお言葉の内容についてです。 ・敢えていうが、じかに言葉を交して恐れを ような批判のしかたが、いったいどこの 福島正実氏

4. SFマガジン 1975年12月号

はポーまで遡って求められなければなら ロンポリの噴火口から主人公たちを救出 ぶりに、常識的な一般論で割り切って、 したとき、それを科学的と信ずるには、 。は、本来的に、科学的である 的はずれな発言をするのは、評論家とし よりも、ロマンチックで、空想的で、思 あまりにも博学だったはずである。これ てとくに避けなければならないことだろ は、当時と現代の、科学水準の差などと索的であるべきはずなのである。 いう問題ではない。彼らは自分たちが壮 その意味からいって、には、もと もちろん、荒氏のいわんとすること もと変格も本格もないのである。の 大なウソをついていることを、よく知っ ~ も、わからないではない。が日本に ていたのである。 まだ根をおろしあぐんでいて、海外作品 領域は、幻想文学と哲学とに境を接す の始祖として必ずひつばりだされ る、大きな広いスペースにわたっている の翻訳時代だということも、その通りだ るこの偉大な二人の作家についての評価はずなのだ。 ~ と思う。その翻訳ものにしても、気がき は、そろそろ再検討されなければならな いている、洒落ているからというので、 荒氏のいわゆる〈 ;-v まがい〉だけが シェクリイとかプラウンばかりがもては 日本界を牛耳る姿はもちろん好まし いときに来ているのだ。過大評価だった といっているのでは、むろんない。ベル くないが、しかし、もごく平凡な文 やされる、そんな風潮も、決して感心で ヌとしし きないとは思う。 、、、ウエルズというと、必ず潜水学の一つの分野であって、他の文学の分 しかし、だからといって荒氏のいうよ艦を予想したの、ロケットや宇宙旅行を野と同じように、時代に適応して生き方 育ち方をするものである。 うな、科学的なだけを本格としてあ空想したのと、予言者扱いにするのは、 いいかげんにやめなければならないとい アメリカには、宇宙冒険小説式の がめまつり〈変型〉や〈まが っているのだ。 大流行に端を発する育ち方が、イギリス い〉がはびこることをけしからぬときめ つけるのは、タンカとしての切れ味はい 荒氏も認めているように、の本質には文明批評小説的な発達のしかたが、 ソ連に啓蒙主義的な書かれ方読まれ方が いしが、意味はあまりないのではないか。 そんなことはない、ベルヌを見ろ、ウ あったのだ。日本に、日本的なの育 , 「物 0 一姦の第嚇い」 3 ち方があるのは当然だ。そして、いまそ エルズをと、荒氏は反論されるかもしれ 第、騒一電挙 ~ 氏れが、徐々に成長しつつあるのだ。 ( 念 しかし、それならばあえて聞こう。ペ 人のため一言しておくが、決して・ ( ラ色の ルヌはそれほど科学的だったか。ウエル 未来だと思っているわけではない。その 正 ズのは科学的に正しかったのか。 意味では日本は、が育つのに、必ず もちろん、そうではなかったはずなの ) 〉、荒しも適した土壌ではない ) しかも荒氏は、現実に日本のに芽 だ。ウエルズは物語の面白さを強調する 3 ためにはしばしば科学を犠牲にしてはば 生えつつある新しい波に、目をつぶる ことによって黙殺しようとしているよう からなかったし、ベルヌにしても、スト

5. SFマガジン 1975年12月号

していた宇宙に一〇の七九乗番目の粒子がくわえられた瞬間、そのがよろめいているのは彼一人ではなかった。尊敬すべき会議場の全 宇宙にふくまれているすべての銀河宇宙は消えうせるでありましょ体が、とっ・せんむかっくようなめまいにふるえた。そしてその時点 で、英国科学アカデミーは公式な決定もなしに休会にはいり、 しかしながら、一つの宇宙空間が閉じられたからといって、それック状態におちいった。会員たちは逃げまどった。なぜなら、とっ はその宇宙が崩壊してしまうことを意味しはしません。ただ単に、 ぜんその会場には演壇もなければ壁もなくなっていたからである。 その閉鎖空間が、もとの空間から完全に隔離されるということであ講演者が立っていたところは、何もない空間になっていた。その空 り、それ自体重力場に由来する空間の湾曲によって、空間的時間的間の中央は火が燃えていた。その焚火の回りにはいくつかの野蛮な にそれが孤立してしまうということなのです。そしてもし閉鎖空間人影があったが、その人影は、それから逃げだそうとする頬髯の学 が一つ以上の場所に存在することを仮定するならば、ある意味で者たちと、おどろくほどよく似ていた。逃げまどう尊敬すべき学者 。閉鎖空間どうしをへだてる超空間の存在を仮定することになり たちにむかってその人影はほえた。歯をむきだし、粗野なこん棒を ます。超空間的座標系が超空間どうしの位置関係を決めるわけでふるって彼らは、英国科学アカデミーの会場にとびこんできた。学 す。超空間のーー」 者が一人彼らにつかまったことが知られている。とくに異様な容貌 講演をつづけている学者より長くて白い頬髯の紳士が大声で断言の生物学者であった。その学者は彼らに食われてしまったと、信し した。「くだらん ! 意味も何もない、くだらんたわごとだ ! 」 られている。 発言者は身がまえ、弥次のとんできた方向をにらみつけた。「あ だが、人類のうち、すくなくともある種においては、食人の習慣 なた ! あなたがいいたいのはー・ーー」 が当り前なことであることが知られている。たとえばピルトダウン 「そうだ ! 」長くて白い頬髯の紳士が言った。「くだらんたわごと人やネアンデルタール人がそうである。もしどこかの時の道筋で彼 だ ! 」っぎに言いだすのはどうせ、あんたの超空間においては、閉らがたまたまより知性のあるライバル種を絶減させていたとしたら 鎖空間は超法則にしたがっており、それそれ超重力によっておたが つまり、もしビテカントロプス・エレクトウスが生きのこり、 いの超軌道をめぐり、うたがいもなくときには超潮汐作用や超衝突ホモ・サ。ヒエンスが減亡した時の道筋があったとしたらーーーそう、 をおこし、けつきよく超破局をおこすというのだろう」 そのような時の支道においては、食肉は社会の習慣であるだろう。 「そのとおりのことが」演壇の頬髯の紳士が、怒りに身をふるわせ て言った。「そのとおりのことが、事実なのです ! 」 「ではその事実とやらは」より長い頬髯の学者が言いかえした。 「わたしを病気にしてしまう」 息をのみ、メイダ・ヘインズがプレークの前にとびだした。だ そして、まるでそれを証明するかのように、彼はよろめいた。だ が、ハリスのほうがすばやかった。彼はいま、例のいいわけがまし

6. SFマガジン 1975年12月号

「ぼくは、海岸に向かって科学者のスラといっしょに泳いだんだ。 らぬ美しさである。 嬉しさをあらわにした彼は進み出て彼女を抱きしめた。彼女を引彼は、ぼくら食糧収穫者には知らされないたくさんのことを知 0 て 、るんだ。そびえたつ者の意図していることをー・・ー・」 き寄せると彼女の唇がひげづらの彼の顔を愛撫した。優しく彼女の 彼は唇をかんだ。 髪に指をからめ、ゆっくりと向き合うとわずかに顔をくもらせた。 その恍惚とした瞬間彼らの頬は重なった。やがて、ゆっくりと不承「そうね、クルラン」 「彼女らは、われわれを縮めようとしているんだ」 不承、彼は彼女をはなした。 彼女は彼を見て目を見は 0 た。「つかれているようね」彼女はさ女の目に恐怖のかげりが浮かんだ。それが何を意味するかを悟 0 た彼女はすっくと立ち上がった。「あなたは、彼女がわたしたちの さやいた。「わたしの大切な小さなあなた」 その言葉は、一一人の生活のなかで彼女が何千回となく用いた愛の体を縮めようとしていると言うのね、クルラン ? 」 「ミュ 1 タル、彼女らはきみの体を縮めようとは考えていない」ク せりふだった。しかし、いまではその形容詞はこの穴ぐらにことさ ルランが答えた。「・ほくの体を縮めようというのさ。彼女らは、自 ら空しく響くのだった。彼は身を震わし、真っ青になった。 彼女の目は驚きに大きく見開かれた。「なぜ。なにかあ 0 たの ? 分たちを消耗させる巨大な = ネルギーのはけ口が見つからないの だ。彼女らが蜜蜂の群や地中生物に対して闘いの先端を開くには、 小さなあなたーー」 彼は大きなうめき声を発すると彼女のロを押さえた。それからき体がやわすぎるので、われわれを苦しめて気晴しをしようという寸 なん つばりと彼女をひきよせると壁ぎわの平石の上にいっしょに坐っ法さ。われわれは彼女らの男類が小型であることから学んですべて の男類をあなどるようになったのだ。女帝たちから見るとわれわれ 彼女の目にはとまどった様子が表われている。「何なの、クルラ は、不自然に見えるので、われわれ男を縮めようと考えているのだ」 ン ? 」彼女は抗弁した。「わたしはなんにも恐がらなくてよ。だれ女の唇は震えていた。「でも、そんなことを女帝たちはできるの かにあったのねーー」 かしら、クルラン ? その方法を発明したのかしら」 「女帝たちが、われわれの肉体を変異させることは簡単だよ、ミ クルランは首を振り、その手をやさしく彼女の頬と額にあてた。 「まさにそうなのさ」彼は言った。「ミュータル、きみはわかって ータル」小人の食糧収穫者は言った。「百万年前には、足の指の間 5 いるね。ぼくたち二人が、いつまでも一心同体だということが」 に水かきはついていなかった。彗星のしつぼに襲われた歴史の薄明 5 「ええ、それで ? 」 期に地球の大気が変化してしまい、女帝たちの進化を大きくうなが こ 0 なん ュ

7. SFマガジン 1975年12月号

は、過去にもどったわけでもなければ、未来に来たわけでもない。 で武装したほうがいいだろう。元の世界にかえれるあては、もう確 どこであのセコイアの森からぬけだしたかに気がっかなかっただろ実ではなくなったのだから、いま一番信頼できるのがその銃という うか。あの線の前後に、断層とでもいうべきものがあるのだ。おぼわけだ」 えておいてほしい」一息ついた。「・フレーク、わたしたちはいま過プレークはミノットの顔をみつめたが、それからだまって自分の 去にいるのでもないし、未来にいるのでもない。時の脇道にそれたサドル・ハッグの中味の点検にかかった。回転拳銃が二梃に、不釣合 のだ。ある時間の道筋からべつの時間の道筋へと移動する、振動の いなほどに大量の弾薬がはいった。紙がどっさり出てきたが、背表 ようなものを体験したのだ。いまの時点でわたしたちがいるのはー紙がこわれてしまった書籍たとわかった。ものなれた手つきで拳銃 ー何というか、フレドリクスパーグの町が建設されなかった時の道をしらべ、ポケットに落としこんだ。本はもとにもどした。 筋のなかであって、中国人がアメリカ大陸を領土とした時の道筋と「フレーク、きみを副官に任命する」また平静な声で、ミノットが は隣り合わせのところなのだ。さあ、昼食にしたほうがいいだろ言った。「きみはまだ状況を理解していないが、理解しようという う」 努力はかえる。つれてきたくないわけがあったにもかかわらす、メ 、 / ーにきみをえらんだのはまちがっていなかった。さあ、すわり 教授は馬を降りた。女子学生たちは身をよせあおうとした。ルー シー・プレアの歯がかたかたと鳴った。 たまえ。何がおこったのかを、これから説明してあげよう」 ・フレークが、みんなの前のほうに出た。「ふるえることはない」 うなり声を発して鼻息もあらく、小さな黒クマが突如姿をあらわ せつばつまった調子がこめられていた。「どこであるにせよ、とにして、その朝にはガソリン・スタンドの建っていたはずのあたりを かくばくたちはいまここにいるんた。ミ / ット先か、それについ駆けぬけた。一行はとびあがったが、すぐに息をぬいた。女子学生 てすぐに説明してくれる。何がどうなっているかを先生はわかって たちは、意味もなくくすくすわらいはじめたが、ヒステリー気味と ミノットは泰然としてサンドウィッ いるんだから、・ほくたちに危険はないわけだよ。馬からおりて食事も言えるような笑い声だった。 にしよう。さあ、・ほくは腹ペこだ。メイダ ! 」 チにかぶりつき、楽しげに言った。 メイダ・ヘインズも馬を降りた。ふるえながらも、笑顔を見せよ「数学の話をしなければならないのだが、いつもの授業よりは、わ うとした。「わたしーーーあの人がーーこわいのよーささやき声だっ かりやすくしゃべろう。今回の出来事について説明しようとする た。「ほかのーー何よりもなの。おねがい、わたしのそばからはなと、数学用語をつかわなければならないし、それもとくに、数理物 れないでいてね」 理学の特殊な概念をもちたす必要が出てくるのだ。ここにいる紳士 ・フレ 1 クは眉をしかめた。 淑女諸君は大学生だから、十歳のこどもにもわかるていどにかみく ミ / ットは、平然と言った。「めいめいのサドル・ハッグに、サンだいて説明しなければならないわけだ。ハンター、きみの目に何か 9 ドウィッチがはいっている。銃もあるはずだ。男子の諸君は、それ見えているのか。本当に何かが見えるのなら、たとえばインディア

8. SFマガジン 1975年12月号

ン・アライド・フォース ) 、略称の名前でそれが通告され を要望し、現在折衝中。また、国連を通しての打開交渉、米中 てきたとき、一般国民にはその意味するところが何なのか、すぐに ソのいずれかによる仲介も要請中です。なお、今後の事態推移 2 は見当がっかなかった。テレビやラジオの臨時ニュースは、断交通 に関しては、逐一政府の公式発表を行ないますので、不確実な 告があったということだけを繰り返し、具体的な内容については、 情報や推測による軽挙妄動をひかえられるよう、国民各位に要 望します 一切報道しなかったからである。新聞もそうだった。夕刊の一面に デカデカと見出しが踊っていたが、記事自体はお粗末なものだっ戦争だ、と誰もが思った。爆撃や上陸作戦などの直接行動がない た。どこかで止められているーー現代日本のマスコミ構造を少しでだけで、実質は戦争以外の何物でもない。しかし、なぜ突然にアジ も考えたことがある者なら、すぐそう直感できた。そして、その止ア諸国が日本に対して宣戦を布告してきたのか。原因は何だ。最 められているという事実自体から、この通告が日本にとって重大な近、こうなるような兆しが何かあったのか。 意味をもつものであろうことが予感できた。それは当っていた。翌人びとは情報を求め、解説を望んで、テレビのチャンネルをまわ 日午前十時、全マスメディアを使って、政府の公式発表があったのし、新聞をめくった。 である。 しかし、確実なことは何も分らなかった。 〔断交に関する日本国政府公式発表〕 の断交通告には、当然その処置をとるに至った経過や原 ェイジャプ 一昨日正午、反日連合軍 ( 略称の名前により、対日因が含まれていただろうに、政府発表からはそれらは完全に除外さ 断交が政府宛通告されてきました。を構成する国家は、れていたからである。各国との国際電話は通信不能になっ インドネシア・マレーシア・タイ・カンポジア・ベトナム・フており、通信社や新聞社、それに商社のテレックスも、カチリとも ィリッビン・ラオス・ビルマの 8 カ国。断交の内容は、現地日鳴らなかった 7 分らない、なぜだか分らない。人びとは、会社で、 本資産の凍結及び接収、日本国籍を有する者の国外退去または喫茶店で、電車のなかで、お互いがその職業や立場から知りえた断 強制収容、大使の引揚げ、対日禁輸、日本籍船舶・航空機の国片的な知識を交換しあった。商社マン、新聞記者、大学教授、そし 境内通過禁止。以上の各項目に関する実施方法・程度・日時等て以前にを構成している国のどれかに旅行したことのある は、構成各国の主権により各々決定されるとのことで人間 7 そんな人達が、原因を推測するに足る材料を他の人びとより す。ただし、対日禁輸及び船舶航空機の通過禁止は、全構成国多く持っていた。 の意見一致により即刻共同実施され、領海空侵犯に対しては武「日本人は、むこうで永年にわたって大分悪いことをしてきた。そ 力行使も辞さずとの発表です。なお、米国、ソ連、中国は、現の報復処置だろう」 在までのところ何ら見解発表を行なっておりません。この断交「経済進出が度を越し過ぎて、相手国の社会情勢を左右するほどに 通告に対し、政府としては構成各国との親密なる会談なってしまった。それに対する防衛措置しゃないのか」 ェイジャフ

9. SFマガジン 1975年12月号

巴 , 、ヤカワ・ブックス 新シリーズ登場 刑事コジャック・シリーズ V ・ B ・ミラー ①戦慄の包囲作戦 小鷹信光訳① Y540 逃亡中の銀行強盗一味が銃砲火薬店 六人の人質を無 に立て寵った一 救出するコジャックの決死の活躍 ②警官のレクイエム 小鷹信光訳子 Y540 大金を懐ろに殺された警官にかかっ た汚職の容疑。謎を追うコジャック の前で真相は意外な方向へ展開する 病める大都会に巣喰う 悪ーーマンハッタン十 三分署のタフ・コッフ コジャッワのユ二一ワ てスビーティな捜百の 前に立ちふさガるもの は ? 正統派警察小説 にハードホイルドの魅 力を加え、全米てコロ ンホを凌ぐ人気を店ヴ テレヒ・シリース登場 ③絞殺魔の紋章 笹村光史訳① Y540 次々に殺された女達の体に残された 謎の紋章。二年前に姿を消し再び現 れた絞殺魔を追いつめるコジャック T B s テレビ放映中 !

10. SFマガジン 1975年12月号

アッカーマン宅についたのが午後五時ごろ。エドガー 一台しかないから、なんら不都合はないということらし いのだけど : ・ 。日本の役所とくらべて考えてみると、 ・アラン・ポーの「黒猫ーを映画化した時に使ったとい 国民性のちがいがよくわかる。鬼畜米英め、なかなか味 ( 玄氏う家のすぐそばにある立派な家だ。 車を降りた伊藤さんが「アッ」と、すっとん狂な声をなことをやる。 " ンカあげた。 アッカーマン宅は、大きな家だ。あんまり新しくはな いけど、東京駅を設計したなんとかって建築家が建てた 「オ、オイ、あれを見てみろ ! 」 指さすほうを見ると、アッカーマンおじさんの車のナのだそうで、部屋が十七もある。それで、中流の上程度 ン・ ( ープレートには数字がなくて「 no—」と書の家だというから、これは、やはり日本が戦争に負けて 《かれているだけもしかたがない。 だ。 ( 編集部註・十七のうち十部屋が関係の部屋。雑誌、単行 スキャナーの写 ホスター、映画のスチール写真、 ) これがなにを本はいうにおよばず、 : 一原画「怪獣映画に使用したヌイグルミ、おもちゃ、 意味しているか は、ちょっとアメ怪物人形、。に関係あるありとあらゆるものが 、を、 ~ 一学 ~ ( リカの界に詳ぎ 0 しりとつま 0 ている。 3 ( ~ 3 をを第しい人ならごそんアッカーマン「これが、アメージング・ストーリーズの ・・じだろう。サイ・全巻揃いだよ」 ファイというの伊藤「ふひょー」 は、の新しい鏡「うえ 1 」 呼び名にしようと荒俣「うーん」 アッカーマンおじ横田「うー 、わんわん」 、 1 さんが提唱していア「それから、こ 0 ちにあるのが、ウ→アード・テール ズの全巻揃いだ」 る新造語なのだ。 荒「うえーん。おいおい」 ーそれをナン・ ( ・ ( 、を ( 一プレートの番号に伊「へエー」 する人もする人だ鏡「ムムー」 、わんわん」 が、認める役所も横「うー 役所だ。結局、こア「次のこっちにあるのがね。これがアン / ウンの全巻 んな記号をつけた 車はアメリカ中に伊「ハギャ」 ファイ け 3 ・・