ポット - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1975年2月号
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1. SFマガジン 1975年2月号

「詳細データは記録しておきます」。 がいって、船室へ降りて行ったあとも彼はまだ考えていた。 自分はだめとしても : : : しかし、・はおしまい迄やりとげる だろう。自分の足で森に入るかも知れない。 ロポット官僚は司政官 についているのではない。・それそれの惑星に適した性能を与えら れ、その惑星で最後迄勤めるのだ。 一そう。 O?* にとっては、ここの二十年は決して長くはない。ここは CR* や他のゴポット官僚と、そして、テルセアの世界なのであ る。司政官の世界ではないのだ。 そのことを、彼は、しきりに考えつづけていた。 冫いつものように、本土の港へと入って行く。 あかるい、あまりにも眩しい風景。空と海とにはさまれた、白 、・輝く幾何模様のつらなりの丘の群。乱反射の大気。午前の陽を 照り返す港なのだ。 棧橋には、日テルセアが何人か出迎えに来ている。その銀色の 姿が、目に痛い 自分は結局、調査結果を待ちつづけるだけで任期を終わることに なるだろう、と、ソウマは思った。司政官とは「もともと、そんな ものなのかも知れなかった。ここで永住するロポット官僚の、ただ の帽子のようなものなのかも分らない。 彼は目を細めて、近づいて来る白い輝く景色をみつめていた。胸 の空しさが大きくなったのか、少しは気が軽くなったのか、自分で も分らない。ただ、以前の気負いが、二度と還って来ないであろう ことだけは、たしかだった。 LL クイズ 左記の五点のに 共通する作品はなんでしよう ? レイ・プラッドベリの 「太陽の黄金の林檎』 ・・ファーマーの 「恋人たち』 ジャック・ヴァンスの 「大いなる惑星 ノーラン & ジョンソンの 「ローガンの逃亡』 * ジョン・プアマンの 『未来惑星ザルドス』 答は一五一ページ 6 7

2. SFマガジン 1975年2月号

うだけで、示威効果があるかも知れない。その意味で、小規模の部 と、ロポット官僚のチーフであるでさえ、それ迄のロポット 隊には欠かせないものであろう。しかし : : : このテルセンで、あの : このテルセンは、 群の統括役のロポットで充当する例もあるが : ロポットたちがどんな作用をするというのだ ? あのロポットたち そうではない。テルセンにおいては、司政官とともに、新規に設計 されたロポット官僚一族が送り込まれたのだ。それも、それ迄の連は、一度、日テルセアとたたかい、かっ、完敗しているのだ。敗 邦軍の失敗をカバ 1 するために、は、極度におのれの義務にれた生き残りの戦闘ロポットを、どうしろというのだ ? そのとき 積極的な性向を与えられていたのである。もちろん、のところ、司の記録を、彼は見たことがあった。あのシーンは : 政庁が仮のものなので、そのロポット官僚の全部が動いているわけ いや、もう、駐留軍の置き土産のロポットのことなど、どうでも ではないが : : : 当面は、これで充分なのである。員数外のロポット 。員数外のかれらを、もしもソウマが必要とするときがあると など、いないほうがやりやすかった。予定にないロポットや設備が すでに存在しているおかげで、あたらしく組みあげる代りに、非能したら、それは、官僚ロポットにはできない役割ーー・消耗品として 率と分っていながら、その既存のものを活用することになるからだ。活用することだけであろう。消耗用ロポットの在庫を持っていると 考えれば、それでいいのではあるまいか ? お荷物はすくなければすくないほどいいのである。 をしろいろと役に立彼は、またいつの間にか、思いに耽ってしまっていた頭をあげ それでも、また、この船や、船員ロポットよ、、 つ。これがなければソウマは、別に船を作らせなければならなかって、海面へと、目の焦点を合わせた。 の計算によれば、あと一日で本土の、目的の港に到着する たろうし、それだけの時間が余分にかかることになっていたであろ う。こんな旧型の船でも、こうして乗っている以上、たしかに利用はずである。その港は、本土の東南端にある″エリア″のものであ った。そして、船が今確実にその港に向かっているのを証明するよ : ソウマ自身、こんなスクリュー推進の船 しているのだ。それに : うに、彼の視野には、本土の影が、大きく左右にひろがって、日光 に乗ったのは久しぶりで、。ほかりと穴のあいた時間の中に浮いてい を照り返しているのだ。 るような、奇妙なやすらぎを感じるのも、事実であった。 テルセン。 それにひきかえーーーと、ソウマは、やはり考えすにはいられない。 それは、本来、司政官としての訓練を受け、何千という惑星に関 あの戦闘ロポットたちは、何になるのだ ? この世界でたたかいを するデータを叩き込まれたソウマにとっては、比較的、平凡な世界 おこし、戦闘させようというのか ? 連邦軍の小艦船が載せてい ・それも、かなり古い型の戦闘ロボである。すくなくとも、そんなに変わった点のない惑星なのだ。も る、標準規格の戦闘ロポット : : ・ ットなのだ。なるほどあの戦闘ロポットたって、立ち遅れた文明をちろん、今迄に発見されている多くの星系の惑星の中にあって、人 間に呼吸可能な大気を有する地球型の惑星というのは、そんなにあ 持っ原住民になら、まだまだ有効かも知れない。戦闘をまじえれ こく低いのだ。低いのだが りふれた存在ではない。比率にすれば、・ ば、その性能をフルに発揮するだろうし、戦闘ロポットがあるとい 5

3. SFマガジン 1975年2月号

ットが、スクラップと化してしまった。 異様な、銀色の棒のようなものが、それも目にもとまらぬスビー その光景が、急に、縮まり、遠くなりはじめた。記録ロポット ドで、戦闘ロポットの隊列と、森とのあいだに、すべるように、割 が、逃走を開始したのである。逃走しながら、カメラだけは戦闘の り込んで来たのだ。一本 : : : そしてその前に二本目が : : : つづいて現場に向けているのだった。記録を残すことが至上命令である記録 ロポットにしてみれば、これは当然の行動であろう。 三本目 : : : 四本目と、たちまち、七、八本が正面に重なり合って : ・ ・ : 静止した。 いや : : : 逃げだしたのは、記録ロポットだけではなかった。戦闘 静止してみると、それは、テルセアたちであることが分っロポットたち迄が、向きを変え、退却にかかっている。いったん攻 た。ただ、ひとつひとつの個体ではなく、横に密着し、つながって撃命令を受ければ、全減する迄たたかう戦闘ロポットが、こんな退 いるのだ。どの " テルセアも、触手も脚も引込めていた。いわ却などということをするのは、ただひとつ、作戦本部が退却の指示 ノ歹戦を出したときに限られる。この作戦を実行しようとした駐留軍の連 ば、金属の横隊なのだ。その横隊が七、八本、いや、七、、リ、 闘ロ・ホットの真向にたちふさがったのである。しかも、それは、見中は、疑いもなく、戦闘ロポットの全減をおそれて、退却の指示を る間に、全列が、今度は縦にも側壁をくつつけ合って、銀色の凹凸電波で送ったのであった。 をきらめかす完全な密集方形陣を作りあげた。作りあげるのと一緒後退する戦闘ロポッ下たちを追って、日テルセアの密集方形陣 に、こちらへ、まっすぐに進んで来たのだ。その進みかたは、先程は、なおも進んで来ていたが、やがて、その速度が落ち、間もな く、一体一体が分離しはじめた。やがて、テルセアたちは、何 迄のゆるやかな速度ではなく、戦闘ロポットと森との間をふさい 事もなかったかのように、さっき迄の、ばらばらな動きに還元して だ、あのおそるべきス。ヒードでおこなわれた。 引底行った。 この金属集団の、身を挺しての攻撃には、戦闘ロポットは、」 太刀打ちできなかった。遅発弾や、さらにより強力な弾を射出して も、テルセアの陣形を乱すことはできなかったのだ。ひとつが あのときの、寄妙な衝撃を、ソウマはまだよく覚えている。立体 やられても、このスクラムは崩れず、全体としての破壊力は、少し写真を見たときにはコミカルでユーモラスだと感じた日テルセア の、あの、予測さえできなかった素早い動きと戦闘力 : : : そして、 も弱まらずに、こっちの隊列に突っ込んで来るのである。 戦闘ロポットの隊列が乱れた。乱れて、テルセアのスクラム戦闘が終ってしまったあとの、日常への復帰の、いかに自然だった ことかを : にぶつかったものは、そのスクラムの中へほうりあげられ、ほうり それからまた、彼は、 - 目テルセアについて、配下のロポット官 あげられてもがいているうちに、その近くの触手がいっせいに伸び て来て、戦闘ホットの部品をはずし、動けなくなるように、分解僚たちから、多くの情報を聞いてもいる。いうまでもなく、ロポッ 7 してしまう。ほんの十秒か二十秒のうちに、何十体という戦闘ロポト官僚たちが彼に知らせるデータというのは、宇宙開発省の上級情

4. SFマガジン 1975年2月号

ない何かと相対し、刻々とその異種生命体に接近して行くのは「おか航空機の機体さながらに輝くかれらのボディの頂部、四つの眠の そろしく孤独であった。それは、立体映画などを見ているときの、 中央から上へ突き出ている触手を、どの日テルセアも、指だけを いつでもスイッチを切ることによって、眼前の映像を消し、自分が残して、引込めてしまっているのに気がついた。 自分に戻れるという、あの甘えた状況とは、およそかけはなれたも「とまって下さい」 のである。ここに、 この異様な世界に、自分が、ただひとりの自分突然、がいって、自分も停止した。 「かれらは、われわれに、そこで停止しろと送信して来ています」 のすべてが来てしまっている、ここにしか自分はいないのだ、とい う、あらがいがたい認識なのであった。 ソウマは、即座に足をとめた。 そのときには、もう、他のロポット官僚たちも、停止していた。 船のスクリュー音が変わった。 もともと、お互いどうしで連絡し合うのに電波を使っているロポッ 船体が、桟橋に横付けになって行く。 ロポット船員たちが、桟橋に飛び降り、船から投げられた舫い綱ト官僚にしてみれば、Ⅱテルセアのこうした交信システムは、ご を受け取って、とめた。テルセアらは、全くこの作業を手伝おく当り前のやりかたなのだ。が、他の一桁級のロポット うとしなかった。 にも協力させて、 (f) Ⅱテルセアのパルスの組み合わせの。ハターンを 分析し、分ったぶんだけを次々と他のロポット官僚にも教えて行く 「上陸の用意がととのいました、司政官」 気がつくと、が、ステンレス・スチールの顔をこちらに向だけで、事足りるのである。もっとも、今の段階では、 ()n は、 けて、うながしている。 まだ完全に日テルセアの交信のコ 1 ドを体系化したとはいえず、 「ああ」 さらに分析が必要である・・ーー、と、ソウマに報告してはいたがーーーす でに、ある程度のテルセアとの会話の力は、どのロポット官僚も、 ソウマは応じ、甲板からタラツ。フへと、歩きはじめた。 もちろん、そのときには、すでに、彼の前後には、主だったロボマスターしているようであった。ただ、限られた役割しかっとめな ット官僚ー・ー次官ロポットのと随行チーフのが従っていタイ。フのロポットにあっては、送受信できる波長に限界があり、 来ており、その周囲を、にひきいられた護衛ロポットたちが相手によっては交信不能だが : : : 今のように、上級ロポットを含め たグル 1 プの中にいるときには、他のロポットから伝達して貰うこ 進む、という態勢が作りあげられていた。 とができるので、不自由しないはずである。 タラップを降り切り、桟橋を、眩しい陸のほうへ向かう。 テルセアたちは、ソウマがはじめてかれらを見掛けた地点か考えてみれば、こちら側のこの一行の中で、テルセアと会話 ら動かず、司政官一行が近づくのを待っていた。やはり、三十体かできないのは、もっとも重要な存在であるべき、司政官の自分だけ ソウマがそんなことを思った、ちょうどその瞬間、日 なのだ 三十五体ぐらいはいる。いずれも、お互いに離れて、四足獣のよう に、四本の脚を伸ばして突っ立っていた。ソウマは、その、宇宙船テルセアたちが、脚を動かして、こちらへ接近して来るのが見えた。 3 6

5. SFマガジン 1975年2月号

した。要求は拒絶された : 、、 カ連邦軍には惑星調査の義務があるのれ、かたちばかりの柵のむこうから、すぐにびっしりと樹々の領域 うわけである。作戦は、すべてになっているからであろう。 で、強行踏査に踏み切った、と、い 戦闘ロポットの行進速度は、かなり大きくなっていた。それも、 戦闘ロポットのみを使用し、この段階では人間は加わらなかった。 しだいに加速されている。攻撃命令が出て、突撃態勢に入ったのに 日テルセアたちには、これがあくまで戦闘ロポットがコントロー ル不能になったための事故であると説明する必要があったからであ違いない。 冫いくつかの日テルセアが飛び出して、行 る。もちろん、いったん森を制圧してしまえば、あとはどうにでもその隊列の行く手こ、 なる。森に戦闘ロポットを常駐させて、人間の調査班を送り込むこ進をさえぎるような構えを見せた。かれらの頭頂の触手は高く伸び とも可能になるはずだ。重要なのは、まず先方に、こちらの武力をて、長い四本の指がひらひらと振られている。とまれという合図な と、本気でそう考えたのかどのかも知れない。 示して、相手の戦意を挫くことだ うか分らないが、報告の中には、そんな文章もあった。 当然のように、戦闘ロポットたちは、その合図を無視した。無視 して、突進に移っていた。 それが終ると、ただちに、戦闘の記録映画になった。 なだらかな、しかし、稜線のはっきりした幾何学的な丘の起伏日テルセアのひとつの、下部の台の側板がはねあがった。中か が、一面につづいている。白いその起伏の中を、今写真で見た台つらレーザー発射装置の銃ロらしいのが見えたとたん、こちらの戦闘 ヒラミッド テルセアたちが、四本脚で行き来していた。 ロポットが、そのテルセアに瞬間遅発弾をぶち込んだ。そこは かれらは、おのおのの目的に従って、てんでばらばらに、思い思い やはり戦闘専門のロポットである。遅発弾は、側板のはねあげられ た、その内部に命中し、一瞬おいて、爆発した。日テルセアは、 の方向へと移動しているのだ。その動きは、決して速いものではな 。人間の歩行速度をやや上まわる程度であろう。銀色のかれらのだが、ソウマが予想したように木っ端微塵にはならなかった。よほ そんな生態は、ソウマこ、、 冫しつかどこかで見た蟻のいとなみを連想ど頑丈な隔壁構造を持っているのか、その日テルセアは、下部と 脚を吹き飛ばされただけで、上部の四角錐部分は何ともないまま、 きせた。 画面がかわると、今度は、見お・ほえのある連邦軍の戦闘ロポット舗装された地面に落ちて、擱座状態になったのである。むろん、も になった。列を組んで : : : だがいずれもその頭部のうしろがわを見う戦闘能力はなくなってしまっていたが : 行く手をさえぎった他の TJ 日テルセアたちも、そのときには同し せているのは、この映画が、戦闘ロポットの隊列に加わった記録ロ ットによって撮影されていることを示していた。 動作をし、同じように、遅発弾をくらって、動けなくなっていた。そ 正面、起伏の丘のかなたに、緑の山があらわれた。いや、山ではれらのテルセアたちも、しかし、たちまち視界から流れ去る。 ない。森である。茂って、盛りあがっているのだ。それがどことな戦闘ロポットは、突進を続けていた。もう、森迄、百五十メート く異様な感じなのは、舗装された丘の、その舗装部分が突然とぎルあをないかというところへ来ている。 6 5

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えていた。舷側から見下ろす、かき分けられた波の、泡となって流 れ去るさまが、彼に軽いめまいをおこさせる。いや、めまいは、そ 5 れだけから来るのではないことに、彼は気づきはじめていた。それ Ⅱテルセアの、数ある″エリア″のうちのひとつが、司政官のは、彼の内部でふくれあがっている自負心のなせるわざでもあるの 本土上陸を許可したーーー という報告を受けるや否や、ソウマ・ だ。船に乗って一、二日のうちに、彼はそのことを自覚した。そし ・ジョウは、ロポット官僚たちに、出航の準備を命じた。 て、それでいいのではあるまいか、と、考えてもいる。司政官とい これでまず一歩は前進したわけだ、と、ソウマは思った。この許うものは、それだけの自負心と使命感に支えられることで、はじめ 可は、かって、連邦駐留軍に対しても出されたものだが ( しかも、 て任務を遂行できるのた。そう彼は信じていた。司政官になるため そのときは、日テルセアのほとんど全部の″エリア〃が認めたのの訓練を終えたあと、同期生の中には、彼のその偏執的なまでの信 だ ) その後の、軍の暴走的行為によって、全面的に取り消されてい念に対して、そうではない、そうであってはならないのだ、といっ たのである。ロポット官僚たちは、そのテルセアと根気よく接た者もいるが : : : 彼自身は、、 しささかも自己の意識に疑いを抱いて 触を試み、ついに成功したというわけだった。もっとも、この成功はいなかった。連邦のための、巨大な地球連邦のための、軍政では は、ロポット官僚のみの力によるのではなく、連邦駐留軍がこの世到底期待できない司政を実現する専門家は、これでいいのだ。 ソウマは、視線を転じて、甲板を見やった。午後になったばかり 界ーーー惑星テルセンを去って行ったという情勢も大いに関係してい ると考えなければなるまい の、陽がむしろはけしすぎるくらい跳ね返る甲板では、船員ロポッ できることなら、彼は、仮司政庁のあるこの島から本土迄、司 トたちが、一見のろのろと、だが適正な速度で作業をつづけている。 政官機を使いたかったが、それは不可能である。海洋の上空を飛ぶ ソウマは、このロポットたちについて、そうくわしい知識は持っ のならともかく、本土を飛行するのは危険なのだ。テルセアはていなかった。と、 いうのも、かれらは、司政官下の、惑星司政機 空からの侵入に対しては極度に神経質というか、警戒する性向を持構をかたちづくるロポット官僚ではないからた。かれらは、連邦軍 っている。そんな真似をすれば、たちまち攻撃されてしまうのだ。 が残した、いわば員数外のロポットである。そして、これは、今、 従って、ここは、普通の、駐留軍が残して行った船 ( それも、スク以前に駐留軍のいた島で、活動を停止して待機している戦闘ロポ リュー推進型の、である ) に乗るほかはなかった。 ットについても、いえることなのだ。ソウマが固辞したにもかかわ をチーフとするロポット官僚たちは、迅速に命令を遂行しらず、駐留部隊長のトトャムが置いていったのだった。 ソウマにとっては、実のところ、これは有難迷惑な措置であっ た。惑星によっては、それ迄連邦軍が使用していたロポット群を、 たえまないうねりが、船をとらえ、かっ、ソウマの心身をもとら司政官がそのまま引き継ぐことも、めずらしくはない。場合による こ 0

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・ : 植民可能な惑星のみを対象として訓練を受け、その世界の司政はじめてこのテルセンに降り立った連邦軍の小部隊は、このロポ をおこなう司政官にとっては、逆に、人間が到底居住できない惑星ッ トを、原住民だと考えていた。しかし、調べて行くうちに、それが 5 は、意識の外へ押しやられがちである。司政官的感覚からすれば、 自然に進化したものだとはどうしても思えないところから、専門家 居住不能の惑星は直接的なかかわりがない。そんな観点からいえば、 が派遣され、研究した結果、どうやらかれらは、ここに住んでいた種 というだけに過ぎないのだけれども : : : とにかく、平凡な世界なの族の作りあげたロポットで、主人たちが減んでしまったあとも、依然 であった。そのデータをあげてみても、第四五七星系の第二惑星 : ・として定められた通りのいとなみをつづけ、自分たちの手でロポッ を補充しているらしい、ということになった。研究者たちがそう ・ : 母星は型太陽 : : : 母星との平均距離、約一億三千九百九十万キト : 公転面傾斜、八度 : : : 自転、二十一時間 : : : 公転周期、この結論をくだしたのもロポットたちが、本土にちらばる森の中へは、 星の一日をもとにして、二百五十日 : : : 衛星、なし : : : 半径、地球決して人間を入れようとせず、いわば一種の聖地扱いをしているご とほ・ほ同じ : : : 表面重力、一弱 : : : という、何ということもない、 とや、その森の中に、外からもよく見える背の高い塔があり、どう 地球型の惑星なのだ。海陸比は三対一で、陸地は、無数の内海を持も送信塔と思えること、しかも、ここのロポットたちが、互いに協 ち四方八方に手を伸ばしうねりながらひろがるような巨大な大陸がカはしあうものの、原則的にはそれぞれ一地域ごとにまとまってい ただひとつあるだけで、あとはいくつかの小島が散在している。 るところから、おそらく、ここのかっての主人たちは柵の内側に住 となれば、ますます、何のへんてつもない世界ということにみ、ロポットたちに電波で指令を出して、自分たちのためにサービ なりそうだが : : : 実は、たったひとつ、奇妙な状況があるのだった。 スさせていたのであろう、と考えられるに至ったからである。ロポ それは、この星の住人のことである。 ットたちが、外来者のみならず、自分たちの大半も森の中へ入ら この星の住人、というか支配種族は、もとからの支配者ではないず、限られた者だけが出入りしている、という観察からも、その確 のだった。この世界を横行しているのはロポット、それも、およそ信は強められた。 ( この、それぞれの地域を、研究者たちはいとも 人間離れした形状の金属製ロポットなのである。この世界の唯一の簡単な″エリア″という単語で表現することにした。電波のサービ 大陸 ( それは、ただ単に本土と呼ばれていた ) には、至るところに白ス・エリアが、そのままひとつの単位になっているというつもりだ い低い柵でかこまれた大きな森があり、その森の周囲、及び、そうったのだ。そして、この言葉は、人間や人間のつれて来たロポット した地域を結ぶ広い道は、ことごとく舗装されている。それも平坦の間では、すっかり定着してしまっている ) ここの、もとの主人たち になっているのではなく、幾何学的な、四角錐を基調にしたゆるやが、どういう姿をしていたのか、なぜこんなシステムを組みあげた かな起伏の連続という、妙な地形になっているのだった。そして、 しっさい分らなかっ のか、また、何が原因で減んで行ったのかは、、 その舗装部分を、ロポットたちが行き来し、工場でものを生産してた。ロポットたちも、決してその質問に答えようとはしなかった。 カ・・・・ : ともかく、ここに いるのである。 何かタ・フーになっているのかも知れない。・、

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あるいは、と、彼は思う。あるいは、自分は、司政官というもの 車だったのかも知れないが ) 連邦軍がまだ完全に支配を完了してい ないうちに、司政官にゆたねられた惑星の場合、まず、統治権を確を、一種の帝王、一世界に君臨する最高権力者という風に、心のど 7 立しなければならない。それをやってくれなかったからと連邦に泣こかで考えていたのだろうか ? そして、実際の司政官がそんなも きつくのは、司政官側がみすからおのれの非力を認めたことになるのではないと知ったために、幻減と脱力感を味わっているのであろ のだ。連邦軍に、それ見たことかと嘲笑されないためにも、独カうか ? で、それをやりとげなければならなかった。しかも、そのために彼はそれを、全面的に否定することはできなかった。ほんのわす は、その世界のあらゆるデータをそろえ、準備が完了してから、おかではあるがそれは胸中に存在していた。 しかし、それだけではない。それだけのせいではない。 だやかに納得づくで統治を引受けることが要求されているのであ る。テルセンの場合、その典型的な例で : : : おまけに、そこへ至る と、すると : ・ : これは、一種の疎外感から来た状態なのか ? 現 迄には、ロポット官僚たちだけで事足りる仕事のみの連続だとなれ在、ロポット官僚たちは、日テルセアらと、日ごとに親密になって : ソウマに出来るのは、の指揮のもと、必要な調査がす行っている。そうした、自分の部下であるはずの者が、ここの住人 べて出そろうのを待っことだけである。テルセンのは、なると結びつき、ロポットどうしであるということからコミュニケーシ ョンをおこない、自分がそこから疎外されているという、そのため ほどここの特殊事情で、通常よりずっと義務遂行性向の高いロポッ い。ロポット官僚たちは、仕事でそうし トであるが : : : それでも、ソウマの与えた、 r-0 日テルセアとの友好なのか ? そうではあるま 関係を崩さずに、森を調べるところ迄調査しろという、司政官の指ているのである。第一、自分はロポットたちから疎外されるという 示の範囲で計画し、行動しているだけのことなのだ。 ( そしてソウような感覚は、とうに卒業しているはずだ。 しささか固いしこりにぶつかったような気がし では : : : 彼は、、 マはその指示を撤回する気はなかった。自分がたまたま日テル セアに、ロポット官僚の仲間と見られることになってしまったが、 た。こういう風に、日テルセアの仲間となっていながら、実は、 テルセンや日テルセアのことを調べあげ、結局はテルセンに司政 それでもいい、やりとげなければならないと信じていた ) 官の統治権を樹立しようとしている、その、はっきりいえば汚ない では、待てばいいではないか。待って、それからあらためて、こ のテルセンをどう扱うのか判断し、指令を出すことにすればいいのやりかたをとっている司政官である自分が、うとましいのか ? ではないか ? それもあるだろう。それはたしかに作用しているようだ。司政官 として当然とらなければならない方策だとしても : : : 気にならない 分っていた。 カ : : : それだって、ソウマには、最終的には ・どうにも、以前の、あといえば嘘になる。 : それは分っていた。分っていながら : の、燃えるような司政官として使命感が、感じられないのである。 日テルセアの立場にまわった、日テルセア側の判断をおこない、 テルセンを人間の植民世界にせずにとどめる権限は有しているので なぜか、奇妙にむなしいのだった。

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地に踏査すればもっと判明してくるのだろうが、現在のところで では、とその配下が常駐するところ迄漕ぎつけ、継続的に、 エリア″の住人まがいのことをしているですら、到底 体系的に ( むろん、引テルセアのタブーを徹底的に調べあげ、タは、″ ・フーにひっかからないようにしてであるが ) 調査をつづけていた。森の中へ入るのは許されていない。森の中へ入るというのは、かっ おかげで、やはりテルセアは、この世界の先住支配種族の作りて、支配種族の居住地に入って、直接支配種族に奉仕したことを意 こく限られた者以外、いまだに立ち入りを禁止 あげたロ・ホットたちである、という証拠もいくつかっかむに至った味し、それゆえに、。 し、″エリア″そのものが、今は森になっているものの、かっては先されているのである。何とかして、その資格を備えるようになる 住支配種族の居住地を中心として、作られたものであるらしいこと迄、日テルセアたちとの仲間づきあいを続けて行くほかないのだ 分って来た。たちが調べ、が分析した推測によれった。 いう、こうした成果は、しかし、すべてが、ロポット官僚の ば、その居住地の住人は、各自思い思いにロポットのサービスを求と、 日テルセアとの接触・交信によって手に入れたデータを、が め、それが適切なサービスであるかどうかというチェックをどこか で受けたあと、現在森の中にある送信塔から指令を送り、その役にまとめあげたものなのであった。日テルセアとの交信のできない あたっているロ・ホットが、仕事をおこなうというシステムになって人間であるソウマは、何ひとつ、することがないのである。それは もちろん、 " テルセアと、音声による会話はできないわけではな いたようなのだ。居住地にいたかっての支配種族たちにとっては、 実は自分の世界とは、今の森の地域だったので、テルセアたち い。が : : : 音声でよりも電波による交信を好む日テルセアが、不 が行ぎ来している舗装部分は、世界の外だったのかも知れない。そ得手なやりかたで、しかも、ただの仲間、ロポット官僚たちの持っ うした、求められたサービスをおこなう一方、ロポットたちは、か能力を持たない仲間であるソウマとは、あまり接触したがらないの れら自身が原材料を入手し加工し操業する工場で、こわれたものはも事実であった。 廃棄処分にしたり補修したりして、当初に設計された定数をつねに端的にいえば、今の、このテルセンにおいては、あらゆる作業は そろえておくことをやっていたのだ。 ( そしてこれは今でもそのまロポット官僚によっておこなわれ、司政官の出る幕はないのであ まなのである ) テルセアでは、こうした自給自足の″エリア〃連邦る。 制度ともいうべき状況が長く続いたのちに、支配種族が減亡して行 そうしうしいかたは、不穏当かも知れない。司政官というもの ったということ力をを ・ : まま、断言できるところ迄来ていた。 もちろん、分らないことは、まだまだたくさんある。分らないこは、何も、ロポット官僚のやるような具体的作業をする必要はない とのほうが多いくらいなのだ。以前の支配種族がどんな形態をしてのである。司政官は、担当惑星を、連邦の指令に従う形式で統治す いたのか、何を食べていたのか、なぜ減んだのか、と、いうことる、そのことだけを考えればいいのだ。 は、まだ突きとめられていない。それらの事柄は、例の森の中を実けれども、テルセンのように、 ( これは連邦軍側の、意地悪い横 3

10. SFマガジン 1975年2月号

いっか、が、彼のすぐ横に来ていて、声量をおとして、伝 その疑問は、を介して戻って来た返事によって、氷解し えた。 「日テルセアたちは、不思議に思っているようです」 「かれらは、こういっています。ーーあなたがたと同種族の、別の 「この前の″エリア″の連中と違って、今 と、はいっこ。 ″エリア〃に属する者たちにも、われわれはこのことを伝えようと した。伝えるのが、われわれの、あたらしい仲間への義務だから度の " リア″のわれわれの、そのほとんどが、電波交信をしてい だ。しかし、かれらは正常な交信法をおこなわず、もつばら音波にるのに、なぜひとりだけは、依然として音波を使用しているのか : よる意思伝達をはかって来た。われわれは、音波による交信は得意 : ・それはどういう仲間なのだ、と、たすねています」 でない。従って、われわれの説明を、かれらがどの程度理解したの ソウマは、無意識に足を停めていた。 かは分らないが : : : 理解しようとしまいと、われわれは、タ・フーを そうだったのだ。 破った者は追放するのだ」 それで充分だった。つまり、ソウマやロポット官僚たちは ( タブ彼は、司政官として、当然ながら、ロポット官僚をしたがえ、ロ 1 に気をつけてさえいれば ) いつでも本土にやって来られるし、しポット官僚たちに仕事をやらせているつもりであった。テルセ かも、それを続けているうちに、この″エリア″の " テルセアとアとの会談も、彼がにやらせていた、そのはずのものであっ ・テルセアにしてみれば、そうではなかったのであ 仲間になり、他の″エリア″の連中とも仲間扱いをしてもらえるよ うになる : : : そのうちには、森を調べ、ここの文明史もあきらかにる。ソウマひとりだけが、別種の存在になっていたのである。 いうことな「で、どう答えたのだ ? 」 し、植民地としての適否に関する結論も出せる・ーーと、 冫Ⅲしカけずにはいられなかった。 のだ。 それさえ分れば : ・ : ・今度は、もっと準備をととのえて、本土に上「今の段階で、正確なことをいえば、われわれは、任務を遂行でき 陸することにすればいい。今の体調と、おとろえた気力で、あの遠なくなるおそれがあります」 は、淡々といった。「司政官がこのテルセンを、連邦の指 ″エリア″の中心部迄、歩いて行く気にはなれなかった。また、 示に従って調査し、その後保存し、あるいは人間の植民者と日テ その必要もないのである。この次なのだ。 ルセアとを融和させるため環境を変改しに来た人間であり、私たち ソウマは、帰途につくことを命じ、ロポット官僚たちは従った。 日テルセアたちの群も、一行についてくるのは、やはり、今のロポット官僚が、それを助けるための機構を作りあげているという ことをいうのは、日テルセアの秩序感覚に抵触する可能性があ 時点では、かれらが監視役だということなのであろう。 り、その結果当面の、日テルセアの″エリア″の仲間として友好 輝く大気にさからうような感じで、ソウマたちは黙々と、白い舗 関係を樹立し、テルセア及び″エリア″を調査するという行為 装された斜面を踏んで行った。 7