ほかにも、上級情報官は写真を見せた。それらには、下部の四方きたわけだ」 に面した部分が、蓋のように跳ね上げられているのもあれば、ま「そしてその結果、駐留部隊の任でない、 " テルセアの過去の た、脚も触手も引込め、さながらこちんまりした、だが、眼のある主人たちのことを調べようという好奇心のとりこになり、暴走的行 小屋になり切っているのもある。 為をやってしまったというわけか ? 」 総して、どこか憎めない、ユーモラスな印象があるーーーと、ソウ ソウマがいうと、上級情報官は、微笑を浮かべた。 マは思った。 「まあ、そこ迄いうこともなかろうよ。駐留部隊の連中は、かれら 「かれらは、お互いの間では、電波交信をおこなっているー なりに、連邦のためになると信じて、あんなことをしたんだ。すく ソウマのそんな感情に気づいているのかいないのか、上級情報官なくとも、連邦軍にとっては、やらないほうがおかしい日常茶飯事 は淡々とつづける。「いろんなかたちのパルスを、暗号のように組だからね」 み合わせたものを送り合って、意思を伝えているんだ。それも、 ″ニリア″や個体ごとに組み合わせや波長がことなっているから、 ソウマは沈黙した。 手軽には解明できない。まあ、きみと一緒に行くテルセア用 いっても、せんのないことなのは、はじめから分っていたのであ が分析すれば、体系的にくわしく分るだろうが」 る。カづくで諸惑星を征服し、反抗する原住民を強引に制圧しつづ 「もちろん、そうさせるつもりだ」 ける連邦軍の、そんな行きかただけでは、今後の植民がうまく進む 「この電波交信とは別に、かれらは、音波を聴取し、合成音を発しわけがないということで、あたらしく養成されたのが、司政官なの てー・・ - ー音による会話の能力も持っている」 だ。その司政官にどれ程の実力があり、どれだけの成果をおさめる 「ほう」 ことができるのか : : : まだ誰にもたしかなことはいえないのであ 「むろんこれは、はっきり断言できるわけではないが、かれらが、 る。司政官なるものが本当に有用なのかどうかについて、司政官制 かって、主人たちと会話をおこなう必要があったことを暗示してい度を提唱し確立して、その効力を論じ、絶対的な信頼を司政官に寄 るのかも知れない。ただ、この能力は、あく迄もサービス用のものせている一部の人々を除けば、疑問視する者のほうが圧倒的に多い らしく、そんなにこまかい表現力は持っていないようだ。複雑な話のだ。たしかに司政官というものは、選抜され、行政専門家として、 になると、非常にまわりくどく、たどたどしいものになってしまう。長い年月きたえられたエリートには違いない。第二期生として、ま かれらにとっては、本当の意思伝達は、やはり電波交信によらなけだ制度そのものが整わないうちに選抜され、どうやら任官されると ればならないということだろう。 ころ迄漕ぎつけたソウマにしても、十年近い歳月を、訓練で送って しかし、おかげで、駐留部隊の連中は、かれらの厄介な電波交信いるのである。 ( さらに、年下の現に訓練所にいる連中や、これから の体系をつかまなくても、一 = ロ語変換機を使って、話し合うことがで訓練に入る者は、それがよりきびしくなっているという話だった。 4 5
入観のおかげで、こんな中途半端なことになったんですよ」 とはなさらないでしようがね」 トトャムは、ひとり頷きながら、しきりにいうのだった。「この それから、トトャムは、低い笑い声をたてた。その言辞が、真面 方面に連邦軍の大部隊が常駐していないことは、司政官、あなただ目なのか皮肉なのか、ソウマには、ついに分らずじまいだった。 0 てご存じでしよう。と、いうのも、このあたりの星域には、地球ともあれ、その駐留部隊も、司政官の着任と交代のかたちで、三 型の惑星が多くないし、たまにあっても、このテルセンのように、 日前に、テルセンを去って行った。かれらがどこへ配属されたの 一見、何の調査の必要もない、平和きわまる世界ばかりなんです。か、ソウマは知ることができなかった。別れぎわに、トトャムは、 平和に、連邦に逆らわないで暮らしている連中相手では、戦功の樹軍規を最大限に活用して、船員。ポットや戦闘ロポットを置いて行 てようがありませんからね。だから、こういう小部隊を置いて、適ったのである。 当に連邦の権威を見せておけば、 しいとーーーそう判断したんでしよう トトャムがこんなことをしたのは : : : 彼は司政官に好意を抱いて な。ところが、そのテルセンにしても、調べはじめると、いろいろいたからだろうか ? それとも、こんな置き土産そのものも、やは 興味あることが分って来た。だが、そんなものに精力をそそぐ暇はり皮肉でありいやがらせだったのだろうか ? 連邦軍にはない。そこで、駐留隊長ふぜいが、大軍団のおこなう組しかし。 織的調査の真似ごとをしようと考えたりするわけです。それも : ・ ソウマは、吹きつけてくる海風を感じながら、いよいよ近づいて これは事実ですが軍の上層部は、われわれが調査希望を出したときくるテルセンの本土へと、眸をこらした。 に、簡単に否決すればいいのに、かたちばかりの人員を送って来た トトャムのことなど、もう、彼の念頭から消え失せている。 んですからね。中途半端じゃありませんか。おかげで前の隊長は欲自分は司政官なのだ : : : と、彼は、またもや、おのれにいい聞か 求不満におちいり : : : 」 せた。自分に背負わされている目標 : : : ここの、テルセアたち トトャムは、そこで、ひょいと、肩をすくめた。「これは : : : っと融合し、じっくりと腰を据えて、まず、与えられた課題である、 まらないことを、いろいろ申しあげましたな。私がこんなことをい テルセアについての解明、および、例の森と、森と日テルセ 0 たということは、どうか、大っぴらに喋りまわらないで下さいアとの関係、さらに、できることなら、本来の支配種族に関するデ よ。どうせ私など、これからそんなに昇進するわけでもなし、無事ータを集めた上で、この惑星が、ただ単に生存可能かどうかという に地球居住権を得て退役し、あと、のんびりと暮らすだけですが : だけでなしに、本当に人間にとって植民が適当な世界かどうかの、 : ・おえらがたの逆鱗に触れると、それさえも危くなりますんでね。 その結論を報告しなければならないのだ。考えてみれば、これは、 ま : : : いずれにせよ、これからは司政官の時代です。出番が来たと連邦軍の駐留部隊がやろうとしたことと、本質的には同じ目標であ いうところですな。そういう日の出の勢いにあるあなたが、私ごとる。目標は同じだが : : : 自分はそれを、司政官として、司政技術を きを、いささか連邦軍の悪口をい「たぐらいでおとしめるようなこ駆使するととで : : : 武力によ「て強行するのではなく、ポット官
えていた。舷側から見下ろす、かき分けられた波の、泡となって流 れ去るさまが、彼に軽いめまいをおこさせる。いや、めまいは、そ 5 れだけから来るのではないことに、彼は気づきはじめていた。それ Ⅱテルセアの、数ある″エリア″のうちのひとつが、司政官のは、彼の内部でふくれあがっている自負心のなせるわざでもあるの 本土上陸を許可したーーー という報告を受けるや否や、ソウマ・ だ。船に乗って一、二日のうちに、彼はそのことを自覚した。そし ・ジョウは、ロポット官僚たちに、出航の準備を命じた。 て、それでいいのではあるまいか、と、考えてもいる。司政官とい これでまず一歩は前進したわけだ、と、ソウマは思った。この許うものは、それだけの自負心と使命感に支えられることで、はじめ 可は、かって、連邦駐留軍に対しても出されたものだが ( しかも、 て任務を遂行できるのた。そう彼は信じていた。司政官になるため そのときは、日テルセアのほとんど全部の″エリア〃が認めたのの訓練を終えたあと、同期生の中には、彼のその偏執的なまでの信 だ ) その後の、軍の暴走的行為によって、全面的に取り消されてい念に対して、そうではない、そうであってはならないのだ、といっ たのである。ロポット官僚たちは、そのテルセアと根気よく接た者もいるが : : : 彼自身は、、 しささかも自己の意識に疑いを抱いて 触を試み、ついに成功したというわけだった。もっとも、この成功はいなかった。連邦のための、巨大な地球連邦のための、軍政では は、ロポット官僚のみの力によるのではなく、連邦駐留軍がこの世到底期待できない司政を実現する専門家は、これでいいのだ。 ソウマは、視線を転じて、甲板を見やった。午後になったばかり 界ーーー惑星テルセンを去って行ったという情勢も大いに関係してい ると考えなければなるまい の、陽がむしろはけしすぎるくらい跳ね返る甲板では、船員ロポッ できることなら、彼は、仮司政庁のあるこの島から本土迄、司 トたちが、一見のろのろと、だが適正な速度で作業をつづけている。 政官機を使いたかったが、それは不可能である。海洋の上空を飛ぶ ソウマは、このロポットたちについて、そうくわしい知識は持っ のならともかく、本土を飛行するのは危険なのだ。テルセアはていなかった。と、 いうのも、かれらは、司政官下の、惑星司政機 空からの侵入に対しては極度に神経質というか、警戒する性向を持構をかたちづくるロポット官僚ではないからた。かれらは、連邦軍 っている。そんな真似をすれば、たちまち攻撃されてしまうのだ。 が残した、いわば員数外のロポットである。そして、これは、今、 従って、ここは、普通の、駐留軍が残して行った船 ( それも、スク以前に駐留軍のいた島で、活動を停止して待機している戦闘ロポ リュー推進型の、である ) に乗るほかはなかった。 ットについても、いえることなのだ。ソウマが固辞したにもかかわ をチーフとするロポット官僚たちは、迅速に命令を遂行しらず、駐留部隊長のトトャムが置いていったのだった。 ソウマにとっては、実のところ、これは有難迷惑な措置であっ た。惑星によっては、それ迄連邦軍が使用していたロポット群を、 たえまないうねりが、船をとらえ、かっ、ソウマの心身をもとら司政官がそのまま引き継ぐことも、めずらしくはない。場合による こ 0
を示し、大軍団をふり向けて、日テルセアを本気で圧倒し、森のく 、軍紀もゆるんでいるようであった。とても、精鋭などといえた 秘密やその他すべてをおのれの手中におさめようとすることであろ代物ではないのだ。これは、前任の部隊長がそれでも何とかして部 う。そうなる迄に、司政官である自分が、連邦軍がもはや介入でき下をきたえあげようと努め、あげくに、暴走して責を問われたこと ず文句もいえないように、司政技術を駆使して、司政効果をあげ、 で、反動的におちいった状態であるらしかった。そして、今の部隊 さまざまな、自分が赴任前に与えられている諸調査を、平和裡に仕長のトトャムも、隊長というタイ。フではなく、むしろ民間人的なー 遂げていなければならないのだ、と、ソウマは考えている ) そんなー経験哲学にとらわれた男なのであった。 現下の情勢を反映してか、テルセンに駐留している部隊の士気は低「だいたいが、このテルセンに対する連邦軍の方針そのものが、先
は何百というそんな単位地域、人間のいう″エリア″が並立共存し物そのものと違う印象を与えるものになっているおそれがある。そ ていたことに、間違いはなさそうである。 れに、その研究自体、連邦軍の、調査強行という行為によって、本 そんな経緯があって、連邦では、ここのロポットたちは本物の、土上陸を全面的に禁止されてから、ストップしてしまったんだか ここで発生し進化した支配種族ではなく、その文明のある意味でのらね。ま、参考意見程度に聞いておいて、自分の手で調べ直すのが いいだろうな」 後継者であるということから、ロポットたちを、テルセンの主要住 人であるテルセアと呼ぶ代りに、その前に後継者を示すという文「 : 字をくつつけ、日テルセアと命名したのだった。 ソウマは、その言葉を耳にしながら、目では、ⅱテルセアの立 ソウマは、まだ、実際にテルセアを見たことがない。テルセ体写真を眺めていた。 ンに到着してからここの十日間が経過しているものの、その間、彼そこにあるのは、一見、小さな家のような格好をした四足機械だ は、仮司政庁を急造した島と、連邦駐留部隊が居を構えていた << 島った。いいかえれば、一辺一メートル半ぐらい、高さ一メートルた の土を踏んだだけで、本土へは行っていなかったのだテルセアらすの四角柱の上に、びっちりとピラミッド状の四角錐をとりつけ は本土にしかいない。そして、本土へ人間やその配下のロポットたちた、そんな形状なのである。そのビラミッドの三角面の、それそれ が上陸することは、テルセアによって禁止されていたのである。の頂点に、電子眼らしいものがくつついていた。都合、四つの眼 だ。さらにこの四つの眼の中央、つまり最頂部からは、しなやかな しかしながら、彼は、 ()n テルセアを知った気分になってしまっ ている。 (-•0 テルセアたちと電波で交信して接触を試みたロポット 触手が突き出ており、その先には、四本の指があるのだった。一 官僚たちの報告と、それから、ここに赴任する前に宇宙開発省で見方、底部の四角柱からは四本の脚が伸びている。この脚を四足獣の せられたテルセアの立体写真や戦闘記録が、頭の中に焼きつい ように動かして移動するようだが、写真によっては、脚がちちまっ ているためだ。 てほとんど内部に引き込まれてしまい、かわりに、底の中央にある そう。あのとき見せて貰ったⅱテルセアの像は 車に似たもので動いているらしいのもあった。 「上部に集まった四つの眼 : : : か。これで視野に死角ができないの 「たしかに、ⅱテルセアについては、ある程度の研究報告が出てか ? 」 はいるさ」 ソウマがいうと、上級情報官は、また別の写真を出した。 何枚かの立体写真を手渡しながら、上級情報官は頷いてみせた。 その写真の日テルセアは、目玉のひとつが飛び出していた。そ 「だが、その報告にしたって、連邦軍の機構の中を経由して、われれも、言葉の意味通りにである。目玉は、頂部の触手と同じような 、われにもたらされたものだから、そこで何らかの変改ーーーという蛇を思わせるコード ( ? ) が伸びることで、どこでも見ることがで 5 と、いい過ぎだろうが、無意識にある種の修正がおこなわれて、実きるらしかった。
あるいは、と、彼は思う。あるいは、自分は、司政官というもの 車だったのかも知れないが ) 連邦軍がまだ完全に支配を完了してい ないうちに、司政官にゆたねられた惑星の場合、まず、統治権を確を、一種の帝王、一世界に君臨する最高権力者という風に、心のど 7 立しなければならない。それをやってくれなかったからと連邦に泣こかで考えていたのだろうか ? そして、実際の司政官がそんなも きつくのは、司政官側がみすからおのれの非力を認めたことになるのではないと知ったために、幻減と脱力感を味わっているのであろ のだ。連邦軍に、それ見たことかと嘲笑されないためにも、独カうか ? で、それをやりとげなければならなかった。しかも、そのために彼はそれを、全面的に否定することはできなかった。ほんのわす は、その世界のあらゆるデータをそろえ、準備が完了してから、おかではあるがそれは胸中に存在していた。 しかし、それだけではない。それだけのせいではない。 だやかに納得づくで統治を引受けることが要求されているのであ る。テルセンの場合、その典型的な例で : : : おまけに、そこへ至る と、すると : ・ : これは、一種の疎外感から来た状態なのか ? 現 迄には、ロポット官僚たちだけで事足りる仕事のみの連続だとなれ在、ロポット官僚たちは、日テルセアらと、日ごとに親密になって : ソウマに出来るのは、の指揮のもと、必要な調査がす行っている。そうした、自分の部下であるはずの者が、ここの住人 べて出そろうのを待っことだけである。テルセンのは、なると結びつき、ロポットどうしであるということからコミュニケーシ ョンをおこない、自分がそこから疎外されているという、そのため ほどここの特殊事情で、通常よりずっと義務遂行性向の高いロポッ い。ロポット官僚たちは、仕事でそうし トであるが : : : それでも、ソウマの与えた、 r-0 日テルセアとの友好なのか ? そうではあるま 関係を崩さずに、森を調べるところ迄調査しろという、司政官の指ているのである。第一、自分はロポットたちから疎外されるという 示の範囲で計画し、行動しているだけのことなのだ。 ( そしてソウような感覚は、とうに卒業しているはずだ。 しささか固いしこりにぶつかったような気がし では : : : 彼は、、 マはその指示を撤回する気はなかった。自分がたまたま日テル セアに、ロポット官僚の仲間と見られることになってしまったが、 た。こういう風に、日テルセアの仲間となっていながら、実は、 テルセンや日テルセアのことを調べあげ、結局はテルセンに司政 それでもいい、やりとげなければならないと信じていた ) 官の統治権を樹立しようとしている、その、はっきりいえば汚ない では、待てばいいではないか。待って、それからあらためて、こ のテルセンをどう扱うのか判断し、指令を出すことにすればいいのやりかたをとっている司政官である自分が、うとましいのか ? ではないか ? それもあるだろう。それはたしかに作用しているようだ。司政官 として当然とらなければならない方策だとしても : : : 気にならない 分っていた。 カ : : : それだって、ソウマには、最終的には ・どうにも、以前の、あといえば嘘になる。 : それは分っていた。分っていながら : の、燃えるような司政官として使命感が、感じられないのである。 日テルセアの立場にまわった、日テルセア側の判断をおこない、 テルセンを人間の植民世界にせずにとどめる権限は有しているので なぜか、奇妙にむなしいのだった。
「何事によらず、先入観を抱くというのは、良くありませんなあ」 官によって見せられた、映像というような印象的なものではない。 それらは、ソウマがときに要求しない限り、数値に置き換えられと、トトャムは、はじめて顔を合わせたさいに言ったのである。 ・ヒラミッド た、無味乾燥なものなのである。が、司政官であるソウマは、その「ことに、あの日テルセア、ですか : データから、自分なりの ()n テルセア像を作りあげることができ私はいろいろ聞かされてから、やって来た。来てみると、自分の先 いや、まるきり違うんですな。前の部隊長があ た。たしかにロポット官僚たち自身も、司政官とともに今度はじめ入観とはどこか : て本土上陸の許可を得たところなので、日テルセアたちと直接会んなことをしたのも、。ヒラミッド怪物の文明なるものが、はじめに ったわけではないが、それ迄の、上陸許可をとりつけるために、考えていたよりも、もっと奥深く、謎たらけなので、つい、功名心 日テルセアの電波交信システムをつかんで体系化しようと試み ( そをおこしてしまった、そのせいなんです。本来、連邦としては、こ して、その試みは現在でも続けられているのだが ) どうやら判明しこの駐留部隊長にそれほどのことを期待してはいなかった。われわ た部分をもとにして、かれらと同じシステムで、不完全なかたちでれはただの駐留部隊なので、駐留部隊としての役割をはたしていれ ばいいのです。それを、大軍団をひきいて駐屯しているような行為 はあるが、交信に成功したのであった。この、電波による接触とい うのが、ⅱテルセアたちには、 ( ロポットのテルセアがそんな感をやってしまったというのは : : : 一にかかって、先入観とその食い 情を抱くのかどうか不明だが ) こころよい驚きだったようである。違いのショックのなせるわざというべきですよ」 トトャムは、よく喋った。ソウマの見るところ、トトャムは、連 ( ロポット官僚のデータを総合すれば、そういうことになるのだ ) そのことが、意外に早く、今度の本土上陸の再許可につながったと邦軍の筋金入りの将校というよりは、たたかいに僊み果て、胸中で 市民生活への復帰をねがっている傍流の軍人のようであった。そし 考えていいのだった。 と、そういった経験の集積によって、ソウマは、日テルセて、その観測は当たっていた。トトャムは、テルセンの駐留部隊長 アに関する予備知識を得、自分なりの、テルセアのイメージをとしては二代目になる。最初の隊長は、例の侵入事件と、そのあか らさまな失敗の責任を問われて更迭され、後任者が送り込まれる代 形成してきた。それは、それぞれお互いになかなか溶け合わない、 ことなる印象の、かなり強引な混合物であり、一言で説明しきれるりに、副官だったトトャムが、部隊長の職責をになうことになった ような単純なイメージではないが : : : ともかく、彼なりに、テルのである。これは、連邦が、このあたりの星系群よりも、もっと辺 セアの像を心中に築きあげ、これからの・ーーあと二十時間そこそこ境の、未知の星域へと主力を傾注していることを如実に示してい た。ことにこのテルセンのような、ひと波乱を覚悟しなければ何も で出会うはずの日テルセアへの心構えを作ろうとしていたのだ。 けれども、そういうやりかたが、はたしていいのかどうか : : : 彼得られない、しかも当面は平穏無事な世界などには、たいして構っ いっか : : : 辺境征服が一段 ていられないのだ。 ( とはいうものの、 は、ふっと、駐留部隊長のいったことを思い出した。 落したどきには、連邦軍は再び、このテルセンのような世界に興味 駐留部隊長の : : : トトャムだ。 の怪物について、 6 5
いっか、が、彼のすぐ横に来ていて、声量をおとして、伝 その疑問は、を介して戻って来た返事によって、氷解し えた。 「日テルセアたちは、不思議に思っているようです」 「かれらは、こういっています。ーーあなたがたと同種族の、別の 「この前の″エリア″の連中と違って、今 と、はいっこ。 ″エリア〃に属する者たちにも、われわれはこのことを伝えようと した。伝えるのが、われわれの、あたらしい仲間への義務だから度の " リア″のわれわれの、そのほとんどが、電波交信をしてい だ。しかし、かれらは正常な交信法をおこなわず、もつばら音波にるのに、なぜひとりだけは、依然として音波を使用しているのか : よる意思伝達をはかって来た。われわれは、音波による交信は得意 : ・それはどういう仲間なのだ、と、たすねています」 でない。従って、われわれの説明を、かれらがどの程度理解したの ソウマは、無意識に足を停めていた。 かは分らないが : : : 理解しようとしまいと、われわれは、タ・フーを そうだったのだ。 破った者は追放するのだ」 それで充分だった。つまり、ソウマやロポット官僚たちは ( タブ彼は、司政官として、当然ながら、ロポット官僚をしたがえ、ロ 1 に気をつけてさえいれば ) いつでも本土にやって来られるし、しポット官僚たちに仕事をやらせているつもりであった。テルセ かも、それを続けているうちに、この″エリア″の " テルセアとアとの会談も、彼がにやらせていた、そのはずのものであっ ・テルセアにしてみれば、そうではなかったのであ 仲間になり、他の″エリア″の連中とも仲間扱いをしてもらえるよ うになる : : : そのうちには、森を調べ、ここの文明史もあきらかにる。ソウマひとりだけが、別種の存在になっていたのである。 いうことな「で、どう答えたのだ ? 」 し、植民地としての適否に関する結論も出せる・ーーと、 冫Ⅲしカけずにはいられなかった。 のだ。 それさえ分れば : ・ : ・今度は、もっと準備をととのえて、本土に上「今の段階で、正確なことをいえば、われわれは、任務を遂行でき 陸することにすればいい。今の体調と、おとろえた気力で、あの遠なくなるおそれがあります」 は、淡々といった。「司政官がこのテルセンを、連邦の指 ″エリア″の中心部迄、歩いて行く気にはなれなかった。また、 示に従って調査し、その後保存し、あるいは人間の植民者と日テ その必要もないのである。この次なのだ。 ルセアとを融和させるため環境を変改しに来た人間であり、私たち ソウマは、帰途につくことを命じ、ロポット官僚たちは従った。 日テルセアたちの群も、一行についてくるのは、やはり、今のロポット官僚が、それを助けるための機構を作りあげているという ことをいうのは、日テルセアの秩序感覚に抵触する可能性があ 時点では、かれらが監視役だということなのであろう。 り、その結果当面の、日テルセアの″エリア″の仲間として友好 輝く大気にさからうような感じで、ソウマたちは黙々と、白い舗 関係を樹立し、テルセア及び″エリア″を調査するという行為 装された斜面を踏んで行った。 7
正直なところ、あと十年、いや、あと五年遅く生れて来ていたら、植民者を受け入れるという態勢づくりを進めるという方法のほうが 自分はとても司政官どころか、行政専門家候補生にすら、なれなか優っていると認識させるには : ・ : ・あちこちの、すでに諸惑星へ送り ったのではあるまいか、と、彼は考えることがあった。ひとつの制出され、また、これから送り出される司政官自身が、実績を示すほ 度がみタートした混乱期には、先行きへの不安と試行錯誤が必ずあかにないのである。こんな立場にあるソウマが、 ( ことに、その司 るものだし、その = ースを進むのも、比較的容易なのである。自分政官に、どうにかなることができたという自己認識を抱いているソ はその混乱期特有の状況にうまく合っていた、それだけなのではなウマが ) おのれの使命に、あふれるばかりの自負を抱くのは、むしろ かろうか、という気がして仕方がないのだ。思いすごしかも知れな当然だ 0 たろう。そしてその気分が、従来の軍政下の状況〈の批判 いが、本音をいえばそうなるのであ 0 た ) ーー・けれども、いかにきと短絡しがちなのも、また、当り前であったろう。当り前ではある たえられ、司政官を訓練した側が能力を保証し、 = リートと位置づが : : : しかし、それを言葉に出してはいけなか 0 たのだ。 けられたところで、長いあいだ連邦軍にいたり植民業務をやって来が : ・ : ・上級情報官は、それ以上、ソウマを刺激するような発言は た者の目には、現在の司政官は、まだまだ未知数で、信頼するに足るせず、ゆっくりと立ちあがりながら、こちらへ声を投げた。 者であるかどうか、分らないのだ。そんな司政官に、今この瞬間の「とにかく、・ほくはもうひとつ、きみに見せなければならない。 ーその、駐留部隊と、日テルセアの戦闘の記録だ」 手の打ちかたですべてが変わり、結果もどうなるか分らないという 上級情報官が壁に内蔵されたマイクに指示をくだすと、自動的に ような、真に危機的状況にある惑星をまかせるわけには行かない、 というのが、実務畑の感覚なのである。とりあえすは、司政に失敗部屋は暗くなり、立体映画のスクリーンが、ふたりの正面にさがっ て来た。 してもあとで収拾可能な世界か、でなければ、どう手をつけてい いか分らない状態の世界やらをせてみて、実際に使いものになるか投写がはじまった。 どうかを見て行こう、という段階なのだった。この上級情報官にし立体映画は、報告書をもかねていた。はじめに年月日、星系と惑 ても、役目柄ソウマにテルセンの情報を伝えているものの、司政官星名、駐留部隊とその指揮者の名が浮かびあがったあと、そのとき がしんじっ有用なのかどうか、怪しんでいるのかも分らない。ましの情勢が、文章になって流れだした。その文章というのも、軍規の て、司政官たちの、惑星の司政に関しては自分たちこそ最適任者で引用や、以前に提出された報告書の番号などが頻出するしろもの で、ソウマには、すべてを把握することは不可能だったが、大体の あるという自負など、青つばい子供じみた想念としか見ていない、 その可能性だってあるのだった。要するに、司政官というものが信ところは理解できる。 つまり、連邦の駐留部隊は、テルセアの本土に上陸の許可を得た 頼をかちとるためには・ , : : 連邦軍の勝手放題な惑星征服と軍政とい 5 うやりかたより、司政官のやろうとしている公正な原住民対策、同あと、各″リア″の中央に位置する、白い低い棚にかこまれた森 5 時に原住民の生活なり文化なりがおびやかされないように、人間のの、そのひとつでいいから踏査したいと、日テルセアたちに要求
地に踏査すればもっと判明してくるのだろうが、現在のところで では、とその配下が常駐するところ迄漕ぎつけ、継続的に、 エリア″の住人まがいのことをしているですら、到底 体系的に ( むろん、引テルセアのタブーを徹底的に調べあげ、タは、″ ・フーにひっかからないようにしてであるが ) 調査をつづけていた。森の中へ入るのは許されていない。森の中へ入るというのは、かっ おかげで、やはりテルセアは、この世界の先住支配種族の作りて、支配種族の居住地に入って、直接支配種族に奉仕したことを意 こく限られた者以外、いまだに立ち入りを禁止 あげたロ・ホットたちである、という証拠もいくつかっかむに至った味し、それゆえに、。 し、″エリア″そのものが、今は森になっているものの、かっては先されているのである。何とかして、その資格を備えるようになる 住支配種族の居住地を中心として、作られたものであるらしいこと迄、日テルセアたちとの仲間づきあいを続けて行くほかないのだ 分って来た。たちが調べ、が分析した推測によれった。 いう、こうした成果は、しかし、すべてが、ロポット官僚の ば、その居住地の住人は、各自思い思いにロポットのサービスを求と、 日テルセアとの接触・交信によって手に入れたデータを、が め、それが適切なサービスであるかどうかというチェックをどこか で受けたあと、現在森の中にある送信塔から指令を送り、その役にまとめあげたものなのであった。日テルセアとの交信のできない あたっているロ・ホットが、仕事をおこなうというシステムになって人間であるソウマは、何ひとつ、することがないのである。それは もちろん、 " テルセアと、音声による会話はできないわけではな いたようなのだ。居住地にいたかっての支配種族たちにとっては、 実は自分の世界とは、今の森の地域だったので、テルセアたち い。が : : : 音声でよりも電波による交信を好む日テルセアが、不 が行ぎ来している舗装部分は、世界の外だったのかも知れない。そ得手なやりかたで、しかも、ただの仲間、ロポット官僚たちの持っ うした、求められたサービスをおこなう一方、ロポットたちは、か能力を持たない仲間であるソウマとは、あまり接触したがらないの れら自身が原材料を入手し加工し操業する工場で、こわれたものはも事実であった。 廃棄処分にしたり補修したりして、当初に設計された定数をつねに端的にいえば、今の、このテルセンにおいては、あらゆる作業は そろえておくことをやっていたのだ。 ( そしてこれは今でもそのまロポット官僚によっておこなわれ、司政官の出る幕はないのであ まなのである ) テルセアでは、こうした自給自足の″エリア〃連邦る。 制度ともいうべき状況が長く続いたのちに、支配種族が減亡して行 そうしうしいかたは、不穏当かも知れない。司政官というもの ったということ力をを ・ : まま、断言できるところ迄来ていた。 もちろん、分らないことは、まだまだたくさんある。分らないこは、何も、ロポット官僚のやるような具体的作業をする必要はない とのほうが多いくらいなのだ。以前の支配種族がどんな形態をしてのである。司政官は、担当惑星を、連邦の指令に従う形式で統治す いたのか、何を食べていたのか、なぜ減んだのか、と、いうことる、そのことだけを考えればいいのだ。 は、まだ突きとめられていない。それらの事柄は、例の森の中を実けれども、テルセンのように、 ( これは連邦軍側の、意地悪い横 3