れる者が、必死に岸辺に泳ぎ着こうとするかのように、懸命にこち「ああ。ばんつか ? こいつつあがいであるだども、 ~ おら、めね。 あねちゃ、よんでくなえや」 らへ向って移動してきた。 老婆は手にした紙片をさし出した。 「ちょっと、おうかげえしやすけんどもなあへ」 老婆は、かもめにとりすがるようにうったえた。 「にれ ? 中央区銀座四の五の十。へえ、四の五の十か。でもね え、お婆ちゃん。四の五といえばこのへんだけれども、四の五の十 「はあ ? 」 「ちょっと、おうかげえしやすけんどもなあへ、ばあさんこつうみのその十の中に、どれだけ店や事務所があるかわからないわよ。そ れに、ばあさんこ、なんて、何の店だろう ? 聞いたこともないわ せはどごだべなむすー ねー かもめは、老婆の聞き馴れない言葉の抑揚にのみ気を取られて、 老婆の顔に、濃い落胆と悲しみの色が浮かんだ。 その意味するところは全く理解できなかった。 「そんたなこってねがとおもつでたってば ! まんつ、まんつ」 「な、なんでしよう ? 」 「お婆ちゃん。どこから来たの ? 宿はどこなの ? 」 「おらだのむらのきざえもんえのむすめでまきえつうものだがよ、 そのみせさづどめでえるから、なじよなあんべえでだがみてきてけ「かんだのようじようかんつうやどやだけんともよ。なあに、ける れづうだでよ。んだども、はつばわからね。どごだべな ? あねちのはなんだてこともねえが、ここまできてよお、きざえもんにたの まれだことはだせねのはきばくせな」 や、しゃねべが ? 」 どこか、店の所在をたずねているらしい。かもめにも、その程度老婆はいかにも残念そうだった。 のことはわかった。 「しがだね。もうすこしさがしてみんべ。あねちゃ、ありがど」 老婆は、かもめの手の紙片をふたたび手中におさめると、人波の 「なんという店でしよう ? 」 中に老いの体を運んでいった。 老婆は、落ち窪んだ目をしょ・ほしょ・ほさせた。 「ばあさんこだと」 かもめははげしく動揺した。 「ばあさんこ ? 」 老婆の後姿は縮んで小さく、かもめの半分程にもならぬかと思わ 「きざえもんがそういっていただ」 れた。 聞いたこともない名前だった。 どうするのかしら ? 「さあ。そんな名前の店、この銀座にあったかしら ? 所番地はわ探しても、探し出せるはずもないのに。 やめた方がいいわよ。お婆ちゃんー かっているんですか ? 」 せつかくの東京見物がだいなしになっちゃうじゃないのー 「はえ ? 」 かもめは胸の中でさけんだ。 「所番地よ」 209
だった身じろきもせす立ちすくんでいるクレーマー 彼等が肩と肩を寄せあって入口のところに立っと、 は、敷しく震動しているドリルの刃から、切れぎれに 他の者の騒々しい呼吸音が聞こえたこの発見が今と なって細い糸がけすれてくるのを見ていた なっては重荷になっていた誰もか、さっきまでの安 「ストップ ! 」フレオフラジェンスキーが他人のよう むしきった、うれしそうな眼でこの胡を眺めることは な声をうわすらせて叫んだ できない これは、みじめな避けられない現実だっ たかロマノフはすでにトリルを殳けだしていた た ドリルが過熱して持っていられなかったのだ 彼等は入口の面積を計算し、崖と障害物の放射能を 手遅れだったこわれたのは障害物のほうではなか 測定し、胡に反射する光の強さをたしかめたりして、 った湖や崖や空がこわれて、ひひ割れ、小片に砕け 習慣どおり、やらねばならないことは全部やり終えた / ンマーで一撃を加え だが、その作業中もどこかに抵抗があっただから、よ散ってしまったその世界は、、 たダイヤモンドみナ こいに無惨に壊れてしまった けいに緊張し、意地になって働いた そして、完全に消成してしまった別離をつげるか そうしている間も、障害物の向う側では何の変化も 起らなかった水はあい変らすきらきら輝き、さっきのごとく一瞬明るさをとりもどしてから、最後の雲の 一片か消えていった までと同じように光かおだやかにふりそそぎ、岸辺は 眼の前には闇しかなかった 、つつとりと、じ地よさそ、つなままたった 唖然として、何「 ) とが起ったのかさつはり理解でき 彼等は撮影機を持ちだしてきた ないでいる彼等は、ふるえる手でライトを点けたが、 「障害物の強度を知る必要がある」プレオプラジェン スキーが言ったロマノフはいそいて万能車から、ポたった今湖があったところには、むきだしの石の平面 が見えるばかり彼等は狼狽しながらも、なんとかな ング用のドリルを引っはってくると、ハンドルを らないものかとその場を空しく探ってみた石はどれ 胸でしつかりと支え、モーターのスイッチを入れた も磨きあげたようになめらかであった崖をおおい隠 きらきら光るドリルの先が、回転し震えながら何も していた黒いエナメルが、ひからひた花弁のように手 ないところへめりこんでいった の中でくすれ落ちた くもの巣がトリルの先端にひっかかっているみたい
いし第いゞ 度そのとき、いやがらせをしているみたいる今になって、なにも考える必要がなくなっ に、くぐもった聞きとりにくい声がとび込んた瞬間に、ふいに、あの割り込み通信の文句 できた、しかもそれは《エリンダ》の周波数の断片が記憶の底から意識に浮び上ってき で無関係な通信が割り込んできたのだった ! た。タン・ロストフはロまでタ・ハコを持って 完全に世界が狂ってしまったに違いない。 いきかかった手をはっと止めた。彼は、眠を 「お、、八一一九の周波数で喋ってる野郎、 むきだして、体をこわばらせた。 冫消えうせろ ! 畜生、引っこむんだ、今す ぐおい、《エリンダ》そっちのことをい ったんじゃない、お前のことじゃない : 一偵察船の分析プロックは、三度状況分析を 七ー一五、《エリンダ》、聞えるか、予備の > セした。手に入ったデータを三度点検しなおし クター いち・なな・いち・ごを使え ! 確た。間違いはなかった。遙か遠い彼方の惑星 認しろ、聞えないそ ! 」 からの友好的なメッセージに対する返事とし またか ! 図々しい野郎だ、《エリンダ》て、うせろ、という強い ( はっきりした命令 の周波数を明けわたす気はないらしい。なにが送られてきた。二度も繰り返えして、しか か早ロでまくしたてていて、《エリンダ》のもほとんど梅辱に近い命令だった。 声が水牛の鳴き声で掻き消された蚊の鳴くか無人船に自尊心はなかったが、それを創っ 細い声みたいに、邪魔されて聞きとれなかった者達にはそれがあった。彼等は敵意のある 拒絶にあう可能性も予期していた。したがっ た。タンは憤怒のあまり声もでなかった。 「宇宙から消えうせやがれⅢ」怒りのあまりて、ためらうことなく待避プログラムにスイ ッチが入った。 こ眼の前が赤くなるほどの大声で怒鳴った。 電波探知器はたちまち格納庫に納まり、防 「八一一九、どくんだ ! 」 どうやら効き目があったらしい。混線しな御板が音をたててたたまれると、装置は方向 くなった。や , っと《エリンダ》が、何を要求を変え船尾から炎を噴射させ、それがしだい 一・み」噫 3 されているか理解し、計算センターが破損箇に強くな 0 た。一時間後にはすでに、銀河系 所を探り当て、処理し終った。やれやれ : ・ の非常に古い文明の友情を拒絶した、客嫌い :f 一一一一一一一一一ニニ一そして、椅子に体を伸ばしい 0 ぶくできな星系は視界から消えていた。 オートマトン 6
異星人だって ひとにぎりの灰を火事場ですくいあけるような気持見ればわかると信じてきたなせだ ? で、そのエナメルを扱ったそれは分折に必要だったロポットじゃない 故郷からはるか離れたこの休息地 そして、すべきことを全部やり終え、葬式めいたしで、連中だっておれたちと同じ思、 , しにとらわれたって めっぽい調査の儀式をやってしまうと、プレオプラジ不思議じゃないそこで、通りすがりに欠けていたも エンスキーは他の者から離れて平らな石に腰をおろし、の、つまり故郷の自然の映像を創ったんだ。なあ、諸 手で顔をおおった 君、あれは絵だったんだよ」 「あれはきっと異星人のテレビみたいなもんだったん プレオプラジェンスキーは立ちあがり、彼等が来る だと思いますよ・ : 」ロマノフか確信なさそうに = = 「つ 前からここに来ていた、不思議な謎の生物のぬくもり た「そうだとわかってる者かいれは・ かまだ残っていそうに思える石を眺めていた「さあ プレオプラジェンスキーの肩がびくっと震えた でかける用意だ ! 」機敏な動作で振りかえっていう クレーマーは空をあおいだその墨のような黒い空それから、クレーマーの肩に手をおいて言った に銀河の永遠のアーチがばんやりと白く光る「そう 「その仮説はなかなか重味があるだがな、論理的に じゃない」彼は、うつろな、しかし、なせかひどく確弱点かあるそ」 クレーマーはうなすいた 信のあるロぶりで言った。「違う、あれは基地じゃな かったもちろんテレヒなんかじゃないあの世界は 「ああ、そうだともだがね、この先何百万年もたて 美しすぎた技術じゃあれだけのものを創りだせやしば、他の惑星や他の銀河系や、どんな超技術がはばを : 」彼はロごもった : あれだけ人間味のきかせているかわからない世界では、どんなところへ あるものを・ 行こうと、ありあわせの道具で、ありあわせの物の上 クレーマーはロを閉じた眼は空に向けていたが に、つかの間の時間に左右されて絵を画く者が画家と なにも見てはいなかった して残れるのささもなきや、画家なんて存在しつこ 「おれたちは、どんな文明でも、その偉大さは技術をないし、それが理屈というもんさ」
「このまま帰して大丈夫 ? 」と女が不満げに言いかけるのを、援ね「それで ? 」ぼくの声はいやらしいほど平静だった。 のけるように腕組みした男が遮った。 「こいつには、やっとの思いで見つけることができたユーカラが吹 「下手に警察を介入させて、梶山の死を探られるほうが、よほど面き込まれている。君もアイヌに興味があるんだろう ? 君にもらっ 倒だ」 てもらうのが、彼女の意に最もかなっているようだ」 彼の声に込められていた不自然に強い口調に、女は驚いたように 「いやたね」 ' ほくは首を振った。「甘ったれるのも、たいがいにす 顔をあげた。 るんだな」 その言葉は、・ ほく自身に痛く返ってきて、レクイエムのように響 「梶山の遺体はどうなる ? 」自分の声が、ひどく遠い感じで、ばく の耳に響く。 いた。その時、ひとりの女が、確実に・ほくのうちで死んだ ドアが二つに割れて、左右にスライドしていった。ぼくは廊下へ 「送り届けるよ。安田守の事務所でいいだろう ? 縫い合わせてね」 一歩踏みだした。 ーダー格の男は、・ほくから眼を外らして応えた。 もう、なにも話すことは残っていないようだった。・ほくは、その突然、なにかもっと言うべきことがある筈だ、という思いが、激 まま長椅子を立って、ドアに向かった。 しくぼくの胸にうねった。それは、渇きにも似た、ひどく切実な欲 「待てよ」リーダー格の男がぼくを呼びとめた。 望たった。振り返ったぼくと、彼等の視線が、一瞬、宙に絡んだ。 無言で振り返る・ほくに、「こいつをもらってくれないか ? 」と彼そしてーーそれだけだった。 ドアが溜息のような音をたてて閉まった。 は一本の リールテープを差し出した。 ・ほくは彼の顔を見つめた。彼は恐しく生真面目な表情でぼくを見 夜はとつぶりと更けていた。 返した。他の連中が、なにか悪いものでも見た、というように顔を チュー・フタワーから伸びている二車線道路につらなるマグネシウ そむけるのが分った。 ムライトが、地に散乱するアジビラや折れ木をあかあかと照らして 「なにが入ってるんだ ? 」・ほくはいた。 フィアンセ エレクトロニクス いた。それは、非現実的な、なにかしらやりきれない眺めだった。 「俺の婚約者はーーこ彼はロごもった。電子装置を背に彼の姿がひ シポレーが一台、置き忘れられたようにポツンと停車していた。 どくちっぽけなものに見えた。 ぼくは、あちこちに飛びはねている黒ずんだ血痕を踏みながら、 「俺の婚約者はユーカラが好きだった」 シポレーに向かって歩いていった。 どった ? シポレーのなかで待っている筈の女が、待つのをあきらめるまで ・ほくの頭のなかで、ひとつのドラ「が組みたてられてい 0 た。あには、長い時間が要ることたうう。 る娘が、『人間って、誰かを本当に裏切りきれるものかしら ? 』と 訊かなければならない、そんなドラマだった。 襲撃の、次の頁が開かれる。 アダック 〔完〕
「なにを、この雌狐 ! 」 「やれ、やれえ ! 」 ひろ子が歯をむき出した。その顔に、じゅん子の平手打がいい音 テー・フルの上にのって、人垣の後から声をふりしぼっているの 2 2 をたてて炸裂した。 は、さる電鉄会社の社長だった。 けっ キイ】ッとひろ子が金切声を上げて、じゅん子に飛びついた。そ「もっと尻を上げさせろ ! 見えねえぞ」 の手の下をくぐりぬけて、じゅん子はクローク脇の絨毯の壁の前に大学教授の浜崎が、つばきを飛ばしてさけんだ。さけんだ拍子に 走った。 細い金縁眼鏡が、細い顔から離れてどこかへ見えなくなった。肝心 「さあ ! この中にある物を全部かつぎ出して持ってゆけ ! 」 な時に視力を失って、浜崎は人の足の間を犬のように這い回った。 じゅん子は髪をふり乱して、両手でカまかせに壁をおおっている「いいそ ! そいつを突込んじまえ ! 」 絨毯を引張った。絨毯はずるずると垂れ下り、やがてどさりと床に 現場監督のような声を張り上げているのは某大銀行の頭取だっ 落ちた。 その下から、銀白色にかがやくスチールの巨大なドアがあらわれ 主役がヒイヒイと泣きさけぶ。 「あった、あったー これだ ! 」 みなの目が、そのドアに集中した。 じゅん子は、のたうち回るひろ子の腰にまつわる、金色の細い鎖 「開けるんだよ ! ひろ子 ! 」 に目を止めた。小さな鍵が光っている。 じゅん子は身をひるがえして、びろ子に襲いかかった。 じゅん子はカまかせにそれを引き千切った。鎖がひろ子の腰に喰 「若ちゃん ! ぼやぼやしていないで、探すんだ。鍵、鍵 ! 」 いこみ、ひろ子が白目をむいた。 はっと気がついた若杉が、じゅん子とともにひろ子につかみかか じゅん子は、金色の細い鎖のついた鍵を手に、ドアへ走った。 った。わけがわからぬながら、ポーイたちがじゅん子に加勢してば らばらととりついた。ひろ子のスーツの・ほたんが飛び、・フラウスが そのとき、平賀が動いた。 引き裂かれた。 三宅が腰を浮かせ 「身につけているにちがいねえんだ。裸に引ン剥いて探せ ! 」 笙子が、ふ、と笑った。 若杉が本性をあらわして吠えた。スカ】トがほうり出され、パン ティストッキングが引きおろされ、パンティを巻きこんだまま足先平賀のほおが苦渋にゆがんだ。かれには、事の成りゆきが信じら から引き抜かれた。その頃には、全部の客がそこへ集って来てい れないようだった。 た。胸と下腹部を押えて、必死に体を丸めようとするひろ子を、あ どうして、このようなことになってしまったのか ? お向けにしようと奮闘しているのは作曲家の川辺だった。 かれの顔は、はっきりそう語っていた。平賀はたまりかねたよう こ 0
ていた。「私には、なぜみんなが飛ばないで、つまらない遊びばかテイだとか、水泳たとか、服を取り替えっこしてみることだとか。 りしているのかわかりませんでした。私は思いました。もう、なわでも、そんなことはどうでもよかったんです。私は飛べたんですか とびなんてやっていられないって。それで、服を脱いで飛びはじめら ! 」 「しかし、そのうちとうとう人に見つかってしまった。そうだろ たんです」彼女は医師のほうを、一贅して、彼の唇がニッとゆがむの を見てとった。彼女はうなずいた。「確かに大騒ぎになりました」う ? 」と彼は優しく促した。 彼女はキッと彼を見すえた。どうして彼にそれがわかったんだろ 彼女は思い出し笑いをした。 、つかと。 「ぎみはどうしたんだね」医師は真顔でたずねた。 「そりゃあ、目に見えてるよ。きみのからだに腕をまわした男の子 「家に飛んで帰ったんです、もちろん」彼女はあっさりと答えた。 がびつくりするっていうことはね」と彼は言った。「それから、男 「私たちはその日のうちに引っ越しました」 ジ = ニーと彼の目が会って、ふたりして笑った。「私、その出来の子がきみに腕をまわしたがるってこともね」 事をおかしいって思わないようにしてるんです」やがて彼女はそう「私は男の子について知りました」と彼女は悲しそうに認めた。 言った。「おかしかったはずはないんです。でも、みんなの顔つき「私が十二歳で、もうすぐ十三になろうとしていたころ、はじめて や、金切り声をあげる様子ったら : : : 」 少年少女。 ( ーティに行きました」ため息をつきながらそのパーティ 「でも、そのときおかしいって思ったのかい ? 怯えたり、ひとりのことを思いかえした。「だれかがあかりを消したとき、その男の ・ローランドがいたんです。彼のことは決して忘れませ ・ほっちで淋しかったりしたことはなかったの ? 」 子ジョニ 「先生にはおわかりになりません」彼女はそう言うと、両翼をびんん。彼は十四でした。私のとなりに腰をおろすと、すぐさま手で探 とひろげてそれを見た。「もし飛べたら、ほかにだれもいりませりはじめたんです。私びつくりしました。でも : : : 」彼女はちょっ ん ) それに、私には。 ( プがいました。私たちはもちろん、あちらこと間を置いた。顔がほてるのがわかった。「とにかく」とあわてて ちらに移り住みましたけど、パプは気にしませんでしたし、私だっ続けた。「まわした彼の手が羽にとどくと、びたっと止まりまし た。私が片方の羽をびくっと動かすと、彼は叫び声をあげました。 てそうです。私がひどい風邪をひかないようにつて、私たち、いっ も南部で暮らしました。私は一日で何百マイルも旅することができそれでポーチからその家の子の両親がやって来てしまいました。そ ました。そして、空高く舞いあがったり、宙返りしたり、思いきりのあとあかりはつけつばなしにされ、私たちは卓球をやりました。 飛んだり、さもなかったら、ただ貿易風にのって滑空したりできたときどき彼のほうを見ましたが、ずっと彼の目は見ひらかれて、お んです。私にはほかの女の子のことはわかりませんでしたし、ほかびえていました」ジェニーはロをつぐみ、床を見つめた。 の女の子には私のことはわかりませんでした。あの子たちがするこ医師は席を立って、診察室のむこう側にあるあかりのスイッチを いれたそれからガラス戸棚のところでせわしそうにしながら言っ とで、私にはできないことがたくさんありました。泊まりこみ。′
で付 全な が 女 でば な 影 い い か お彼 つがき 彼 だ身 と でそ と の靴 も あ が・黄たも つね く タ の いも が 、で女 し 女 れ ぼ 色 。気達 が う る て ん で に し の 頼 、で自 ぼは 、は む先 づ く そ う れし、 っ し、 の た声み顎 き も分そ て 色 ん く 、か か足 る は で な ヤ を髪 み 努 。なを命 カ : か と いを な跡 ら ら で は の だカ も駄駄 、あ が ぞ 眼 も見令・ か ま ぐ カ ; る し い 目 し っ乱 だ分 目 女・ あ を 。た お っ つ な 才し ク ) だ お る伏 水 てす て ん れ つだ は く い いよ め っ 、つ の ら粘 て . 知 せ 底 き ぐ にき いた は て 、そ い て か と し 前し 。れた 土 っ し は て に り し ぃ いを る に て て ら る か 突 。をわ と タ視 模 い猫 の る は印 。ら み ん ほ ら 様 る 彼 っ撫 き を 手 だ 無 は さ オよ ぬ す 出頭 の 視 て声 女け と . ろ の をれ を ャ落 いぼ だ す だ が あ 取 1 ノ 晉 を に れ る て く ば あ 、そ う く なす る よ り 達気 自 え な る る そ ら ら て し、 の分身る し 駄 藻 泳 な ら っ分 し 湖 だ彼 気 て 目 て達 ま眼 い な ぐ に の て は引 り 替 し住 と も り彼 や女 0 ナ さ 白 い は で だ ち し、 ろだ充そ え 彼 の彼 弓長 は き 阿 て 底な いも れ ま 女・ い な て め んけ分れ 呆 穴素女 を 女 る う る も は 米占 り リ あ カ ; し ら い は 、分 の 承を だ ュす み ら水 に 足 て な 土 は 承 . は し し いな る い 知見 たそ 、と の用知こ ッ る し く っ 中 の な し、 に い い 、つ ク 間 いれ し と て と れ返 ぼ へち輝 り 踵 心 ま ん そ し だ だ 力、 は て 笑 な 事 、が にを ょ き て を だれ り 当 ノ、 し ろ サ い に見瞬 ッぼ 日 押 し 、す し 、・そ に火達然 ま き を う 1 ノ の し、 っ し、 、て 中焼型 、れ やす 、星 た て て と る る る ク く し の に笑 ぼ 飛 行 触 は 話 ば 未 でけ は結報 をし でか の る い つ沫 つ水 く 環 ナこ れ黒 と だ ポ 知 、局酬 る く ら を し す が 。て た け冫 ン と て く にを た は の は で ぼ い噴そ み 足 た 近 つ る で た 眼 ペ み 力、 も し、 し、 づ き く る水 が を く 繊をな れ う え だを ポあ て て 支し ぼ 女 、た にだ る維 、外 る 幻 か る で は し、 ッ る し、 対 ぼ ぼ ら 。雪 充 く し いて の ら 0 よ の の ト し 達顔 、爪 と て彼 く く し た 分 し も と タ ロ の に じ し、 が 底先 。は ち く を い女 用 よ て て う の や お 彼ニ し 今 ぼ盲見 存ろな祭 プて が を で う 、にち彼 も た 女・ て 探 ヤをや着 に 在 日 く だ に 冫よ い り 53 ~ 1 ャ 込し 1
彼は、そこで言葉を切って、・ほくの顔を見つめた。その扁平な顔はーー」 「欲望」・ほくは、彼の言葉を遮った。 が、今、情熱で輝いていた。 「どうして分った ? 」男がびつくりしたように言う。 「聞いてるよー・ほくは言った。 「新しい目標のセットから成るシステムが、実現可能なシステムで ( 全人類の欲望総和のマキシマックスポイントが存在しうる社会の ーの中で聞いた巨大電子頭脳の言葉が、エコーを あることを示すには、そのシステム内部において、人間の普遍的価実現 ) マーキュリ 値に基いた社会が実現することが、証明されなければならない。っ伴って繰り返しぼくの頭に響いていた。 まりいつの日か宇宙開発が軌道に乗るだろうとか、効率の高い非 「先を続けろよ」一番端で、腕を組んでいた男が、面白そうに促し 常に安価なエネルギーが開発されるたろうといったファクターを外た。「彼は馬鹿しゃないー 挿することは、一切許されない。 「そうだ。欲望だった」リーダー格の男は、探るように・ほくの顔を 今の手持ちだけで、システムを構成して、充分に実現可能であるうかがいながら、話を続けた。 ことーー人類利益を頂点とするシステムの総てのファクターが、す「人間に、とにもかくにも共通していて、しかも計量可能なのは欲 でに配られていて、我々のカードに入っていることが絶対条件であ望ぐらいのものだろう。動物には、人間が通常使うような意味での 欲望はまったくない、 ということも、欲望が人間の普遍的価値の基 る訳だ。 人間の普遍的価値がすでにここに在る、と立証されていなければ礎に置かれた理由だった。しかし トライアルアンド ならない いずれ見つけることができるだろう、という試行錯君は『侯爵夫人の法則』という言葉を知ってるか ? 」 エラー 誤が許されるほど情況は甘くない。 「いや」・ほくは首を振った。 三年前、ロサンゼルスで開かれた世界科学者会議で、最も問題に「数学者が好んで使う言葉なんだがね。不思議な国のアリスのなか なったのがそこだった。人間の普遍的価値とはなんだろう ? で、侯爵夫人が言うんだ。はっきりとは覚えていないが、『私のも モラル かね。彼等は、倫理のことを話し合っている訳でも、神学問題を話のが少なければ少ないほど、あの人のものは多くなる』大体そんな し合っている訳でもなかった。軍事力や Z と同じような確とし内容のことだったな。たかだか経済分野での利害さえ、こんな状態 た目安を、人間の普遍的価値というファクターに、どう与えるかをなんた。それが欲望それ自体ということになると、若い女の腹を裂 問題にしていたんだ。それができずに、どうやって人間の普遍的価きたがる奴もいれば、死ぬことを最高の快楽だと考える奴もいる」 値の実現を目標にしたシステムを、つくることができる ? 人間自「誇大妄想狂もいることだしな」と・ほく。 体に価値がある、などというたわ言には、まったく関係のない話さすがに、リー ダー格の男の顔色が変わった。 「話すことなんかないんじゃないかしら ? 」女が、中性的な、固い 「このまま、警察に引き渡したら ? 」 彼等がたどりついた結論は、人間の普遍的価値の処り所になるの声で言った。 ー 08
中させた。餌はない・ を、決定することになる。 自動制御室が、送風タービンから作動パルスを受ける。ところ啼き声 " ・ かれは、ヒステリックに伽藍に円を描き、ジグザグに床めがけて とうしても、送風タービンが作動しなければ が、自動制御室には、。 降下していった。怯えているのだ。 ならない理由を見つけることができない。かれは、当然、送風ター ・ほくもまた怯えていた。 ビンに作動停止の指令を出すだろう。不可解なことに、送風タービ どうかね ? 自動制御室本当にこれで、こんな子供だましで、送風タービンが作動するも ンはいっかな作動を停めようとしない が、自身に欠陥があると判断する可能性は、多いにあるとは思わんのだろうか ? コウモリと巨大電子頭脳ーーその奇妙な取り合わせ かね ? もし、そうだとしたらーーかれはシャッターを開けるだろをいざ眼の前にすると、計画全体がまるで悪趣味な冗談だったよう に思えた。 う ) コウモリが身を翻して、耳ざわりな鳴き声をあげた。 床面にまっすぐ据えつけられた六基の円錐体の先端で、巨大なプ ( コウモリが出す超音波は、五万サイクルから十万サイクル、毎 ロペラがゆっくり回転しているーーーその暗褐色に塗られた送風ター ビンが描く円は、なにかモダンアートのオ・フジ = を思わせた。そ秒、数回から数十回にわたって、だよーーーもし、送風タービン本体 まで潜り込めたら、充分タービンを作動し得る。考えてもみろよ。 う、ぼくなら、瀕死の航空機とでも名づけるだろう。 こいつが、超音波発信ラジオかなんかだったら、巨大電子頭脳は必 半ば感覚の失せていた・ほくの指が、檻の止め金を探りあてた。・ほ ずそのパターンを掴むだろう。だが、コウモリを使えば、いずれは くは指先に力を入れた。外れた蓋が床に落ちていった。 正体を掴むにしても、かなり戸惑う筈だ。六【四の割り合いでかれ 獣ーー禿げた二十日鼠が、かれの巨大な飛膜をバサッと拡げて、 はシャッターを開けると思うね。勿論、ほんの短い時間だろうが、 鉤爪を檻から外した。 かれは身をし・ほるようにして檻を飛び出た。その拡げると一・五プラスチック爆弾を投げこむには、ものの一秒もあれば充分だろう メートルはあろうかという飛膜が、・ほくを激しくたたき、・ほくの体じゃないか ) そうなのか ? 梶山 が大きく揺れた。 本当にそうなのか ? ジャワオオコウモリ コウモリが、きりもみ飛びで送風タービンすれすれに降りてい かれの小さな滑らかな大脳は、果実か昆虫を見つけ出すという一 事のために、その全機能を集中させた。かれは空腹だった。ガラスき、サッと舞い上がった。その時だった。送風タービンの動きに、 板をこするような鳴き声を上げて、急スビ 1 ドで宙を滑走してい微妙な、ほとんど眼に見えない変化があったように思えた。そして かれは、鼻葉にしわを寄せて、自ら上げた超音波を一定方向に集ぼくは叫び声をあげた。 ークル ー 05