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検索対象: SFマガジン 1975年3月号
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1. SFマガジン 1975年3月号

、したスの 0 科学史の裏の真相を暴露したという書きかたをして ヒート いる。ヘルムホルツの弟子の丸山研三と、エミル・フィ ッシャーの弟子のヘルツが、光学ガラスの研究を競い ( 第 . 、 = 、選考で ( 物ある。丸山の優勢に〈ルツは悶死、やがて丸山も心臓に異常を ヘルツ 第結果は発見し「心臓に憑かれた」と叫んで発狂してしまう。 、あまり「恐ろしき齟齬」この作品が、三篇中最もらしい感 ' よくなじである。ある女に復讐しようとする男が、自分の脳波 く、一一を女に同調させて、強烈な恋情を女に送り、女が夢中に なったところで突き放してやろうと企てるが、同調は逆 ~ 一人、三方向にも作用するので男のほうも女から離れられなくな 等二人 り、悩んだ末に無理心中してしまうという話。 ( 日本 に終っ史おち。ほひろい杉山祐次郎 ) 二等当選灰色に・ほかされた結婚木津登良 日本揺籃期の作品見本として、できれば全篇紹介 三等当選呪われた心臓島秋之助 してみたいがページの都合上、そうもいかない。杉山氏 北井慎爾 三等当選恐ろしき齟齬 の要約でがまんしていただくことにしよう。ただしゞ二 ムす べと 「灰色にぼかされた結婚」は、いたって要約しにくい作等入選作品の「灰色にぼかされた結婚」木津登良は、前 品である。未来の物語で、科学の発達により、人体が一述「日本の ( 短篇集 ) 古典篇」 , に収録されている。 - - 編消 ( ( 氏に種の内燃機関と考えられ、「栄養気」「鎮静気」「興奮余談としてつけ加えておくと、後に″日本の父″と " 也中 = 正宮気」「生存気」等の爆発性ガスの供給をうけて生活し、呼ばれる海野十三がこのコンテストに応募しており、・選 岡太勦食料などは嗜好品と見なされるようになっている。内臓外佳作評で「海野十三君の『謎の短波無線局』は着想が れ誌も人工のものと取りかえられる。こうした機械文明を享幼稚であり」と書かれているのがおもしろい その後、「科学画報」は昭和五年の七月号でも「懸賞 = ん包生受する人々に対し、都市を捨てて山間で穴居生活をしょ せに 中うという思想の一派もある。が、結局その原始生活も、科学小説募集科学中心の新文芸運動」 「科学画報 む火「 = に猛 ( 科学による人体改造なしには考えられない ~ 「俺は義手社』の画期的新計画ーーー奮って御応募あらんことを望む - - 涙ス をつけてお前をしつかり抱くんだ。それから義足をつけ としてふたたび科学小説コンテストの募集をする。 が紙ソ 帥表一て新婚旅行に出様よーと科学派の男はヒロインを口説その主旨説明文に、当時のに対する考えかたなどが - - 元のヤ 偲ばれる。 = 大ジき、恋敵の原始生活者は失恋してしまうという次第。 野る「呪われた心臓」は科学者の研究競走の悲劇といったも こ 0 ・円 2

2. SFマガジン 1975年3月号

「彼は更に教育をうけたいと望みはじめるまで、決して自分のこと ませんが、巨大な一一重星です」 船長は深く考えこんだ。たぶん別の似たような銀河系だったのだに気づかないでしよう。しかしそうなっても、事態はまちがった方 6 向へと進む可能性があります。でもわれわれとしては、彼に航宙法 ろう。これもまたおなじみのやつなんだ。 会話の際と同じ口調で命令が下された。異星人には自分が虚空をと天文学を学びたいと思わせることによって、たまたま彼の故郷で ある星を見つけることができるよう願って待っしか手はないでしょ 横ぎる巨大な宇宙船の舵手になろうとは、知るすべもなかった。 精神感応者はめまぐるしく変化するフィルムにみとれる異星人のう」会合は、このあとすぐに休会となった。 心に密着した。時としてその思考を、外部に伝えたりもしたが、重 要なことは何も得られなかった。以前と同様に、この男の離別は急アランは再び仕事にもどった。事故の記億は全て過去にうち捨て られた。人生はよく整えられ充実しており、勉強に向う時間はな 激たった。 い。彼はこの事を自分に何度もくり返していたが、無駄だった。実 「彼がまた離れた」精神感応者の報告とともに、フィルムがきれ、 際、大学に登録しようとして、空欄に自分の名を書きこむ際まで、 船内は日常の業務にと移された。 しばらくして、船長は、心理学者、精神感応者、主任航宙士、民そうつぶやいていたくらいだ。 「彼がまた戻ってきたそ ! 」精神感者異星人が再び現われる 族学者と会合をもった。 「われわれは、宇宙における最高の精神を代表している。しかし、望みを、ほとんど放棄しようとしていたところだった。彼は、まる この劣悪な知性体に対処しても、どうしようもないと思われる。彼で書物を暗誦するように、異星人の心の中にみずからを閉じこめ た。「完全に傷をなおして、再び職につき、町の大学の夜間クラス は、意のままに内に外にと動きまわるだけで、決して何ももたらさな 。われわれはもう、無益であると思われるような踏査に何光年もに登録している。彼はいま、原子力工学を学んでいるところだ。卒 進むことは不可能である。だいたい君がーー」彼はあわれみなどか業論文と呼ばれているもののために、データを集めようとしていま フォーメーションズ けらもない視線を精神感応者にすえた。「あの異星人がある形態をわれわれのエンジン室にいるぞ」 ののし 認識したと伝えるからだ」船長の怒りにはとても触れられそうもな 船長は静かに一連の罵りを巻舌で発音した。それは、ようやく、 、残りのものたちは窮屈そうに身じろぎした。しかし、彼の次のこの宇宙へのりだした新米船員に投げつけるには、ふさわしい内容 質問はいつもと同じ単調な声だった。「で、君は、この前の会合でだった。やがて、静かに、ゆっくりと、そして多分ストイックに、 示唆されたように、彼の心に何とかタネを植えつけられないの彼は赤いボタンをおさえた。一連の連鎖反応によって、一マイルの 船を完全に蒸発させてしまう装置のボタンだった。彼は最後のため カ ? 」 「難しいことです。うまくいくかどうかわかりません」精神感応者息とともに、願わくば異星人がひどい頭痛でめざめてくれるように 祈った。結果はそのとおりになった。 は同意を求めるように、心理学者をふりかえった。

3. SFマガジン 1975年3月号

異星人だって ひとにぎりの灰を火事場ですくいあけるような気持見ればわかると信じてきたなせだ ? で、そのエナメルを扱ったそれは分折に必要だったロポットじゃない 故郷からはるか離れたこの休息地 そして、すべきことを全部やり終え、葬式めいたしで、連中だっておれたちと同じ思、 , しにとらわれたって めっぽい調査の儀式をやってしまうと、プレオプラジ不思議じゃないそこで、通りすがりに欠けていたも エンスキーは他の者から離れて平らな石に腰をおろし、の、つまり故郷の自然の映像を創ったんだ。なあ、諸 手で顔をおおった 君、あれは絵だったんだよ」 「あれはきっと異星人のテレビみたいなもんだったん プレオプラジェンスキーは立ちあがり、彼等が来る だと思いますよ・ : 」ロマノフか確信なさそうに = = 「つ 前からここに来ていた、不思議な謎の生物のぬくもり た「そうだとわかってる者かいれは・ かまだ残っていそうに思える石を眺めていた「さあ プレオプラジェンスキーの肩がびくっと震えた でかける用意だ ! 」機敏な動作で振りかえっていう クレーマーは空をあおいだその墨のような黒い空それから、クレーマーの肩に手をおいて言った に銀河の永遠のアーチがばんやりと白く光る「そう 「その仮説はなかなか重味があるだがな、論理的に じゃない」彼は、うつろな、しかし、なせかひどく確弱点かあるそ」 クレーマーはうなすいた 信のあるロぶりで言った。「違う、あれは基地じゃな かったもちろんテレヒなんかじゃないあの世界は 「ああ、そうだともだがね、この先何百万年もたて 美しすぎた技術じゃあれだけのものを創りだせやしば、他の惑星や他の銀河系や、どんな超技術がはばを : 」彼はロごもった : あれだけ人間味のきかせているかわからない世界では、どんなところへ あるものを・ 行こうと、ありあわせの道具で、ありあわせの物の上 クレーマーはロを閉じた眼は空に向けていたが に、つかの間の時間に左右されて絵を画く者が画家と なにも見てはいなかった して残れるのささもなきや、画家なんて存在しつこ 「おれたちは、どんな文明でも、その偉大さは技術をないし、それが理屈というもんさ」

4. SFマガジン 1975年3月号

「そりや」サミュエル・ウエルズはおだやかにいった、「簡単なこ 「そういう按配だな」 「ひどい按配だ。それで、サミ = ル、あんたはおれを拉致しにきとさ、 ( リイ。ここの気候はわるい。今までず 0 とそうだ 0 た。い いだすものがなかったのは、どうしようもなかったからだ。だが、 たというわけか ? 」 もうイギリスは終った。未来はー・ー」 「説得といってほしいね」 二人の眠はともに〈南〉にむかった。 「説得 ? ご苦労なこった、サム、五十年つきあっていてまだわか らんのか ? 見当がっかなかったか ? おれはプリテン全土で最後「くそいまいましいカナリー諸島にあるというわけか ? 」 の、いや、しつくりしないな、グレート・・フリテンの最後のひとり「それから、サモア」 「フラジルの海岸か ? 」 になりたいんだ」 ′リイ」 グレート・・フリテンの最後のひとり、とハリイは思った、そう「カリフォルニアを忘れるなよ、、 二人はひっそりと笑った。 だ、聞け。そのひびき。時の流れにたえ、すべての霧雨をついて聞 「カリフォルニアか。むかしはジョークの種にしかならなかった。 えていたロンドンの大いなる鐘の音、それがこの奇妙な日、奇妙な 時をかぎりに静まり、最後、ひとりを除く最後の一団が、この民族妙なところさ。ところが、きようの昼には、ロサンジェルスとサク の塚、冷たい光の海を彩るみどりの墓所から去ってゆくのだ。最ラメントのあいだに、百万がとこのイギリス人がいるわけだな ? 」 「フロリダにも百万いる」 後。最後の一団が。 「たったこの四年で、オーストラリアに二百万が移住した」 「サミュエル、聞いてくれ。おれの墓は掘ってある。それをあとに 彼らはその数字にうなずいた。 残していきたくないんだ」 「とにかく、サミュエル、人間はこういう。太陽はああいう。そこ 「だれに入れてもらう ? 」 で人間は、皮膚が血に語りかける言葉にしたがうようになる。血は 「自分ではいるよ、時が来ればな」 最後にはいう、〈南〉へ行けとな。二千年も前からいってたんだ。 「だれが土を盛る ? 」 「塵をおおうには塵でいいさ、サム。風がやってくれるだろう。ちだが、おれたちは聞えないふりをしていた。はじめて日焼けを経験 くしよう、なんてこった ! 」口に出すつもりはないのに、罵声がほした男は、新しい情事にお・ほれた男みたいなものさ、自分で気づい とばしった。まばたきした眼から涙がとびちるのを見て、彼は驚いていようがいまいが。そのうち、だだっぴろい異国の空の下にねそ べって、目もくらむ光にむかっていいはじめるーー・教えてくださ た。「おれたちはここで何をしてるんだ ? なぜ、さよならする ? ああ、神さま、この秘密を教えてください、やさしく」 なぜ最後の船がイギリス海峡を通りぬけ、最後のジェット機が飛んい、 サミュエル・ウエルズは、相手の剣幕にのまれたように首をふつ でいってしまうんだ ? みんなはどこへ行った ? どういうこと た。「そのままつづけろ、そうすれば、むりやり連れていくような だ、どういうことなんだ ? 」

5. SFマガジン 1975年3月号

ていた。「私には、なぜみんなが飛ばないで、つまらない遊びばかテイだとか、水泳たとか、服を取り替えっこしてみることだとか。 りしているのかわかりませんでした。私は思いました。もう、なわでも、そんなことはどうでもよかったんです。私は飛べたんですか とびなんてやっていられないって。それで、服を脱いで飛びはじめら ! 」 「しかし、そのうちとうとう人に見つかってしまった。そうだろ たんです」彼女は医師のほうを、一贅して、彼の唇がニッとゆがむの を見てとった。彼女はうなずいた。「確かに大騒ぎになりました」う ? 」と彼は優しく促した。 彼女はキッと彼を見すえた。どうして彼にそれがわかったんだろ 彼女は思い出し笑いをした。 、つかと。 「ぎみはどうしたんだね」医師は真顔でたずねた。 「そりゃあ、目に見えてるよ。きみのからだに腕をまわした男の子 「家に飛んで帰ったんです、もちろん」彼女はあっさりと答えた。 がびつくりするっていうことはね」と彼は言った。「それから、男 「私たちはその日のうちに引っ越しました」 ジ = ニーと彼の目が会って、ふたりして笑った。「私、その出来の子がきみに腕をまわしたがるってこともね」 事をおかしいって思わないようにしてるんです」やがて彼女はそう「私は男の子について知りました」と彼女は悲しそうに認めた。 言った。「おかしかったはずはないんです。でも、みんなの顔つき「私が十二歳で、もうすぐ十三になろうとしていたころ、はじめて や、金切り声をあげる様子ったら : : : 」 少年少女。 ( ーティに行きました」ため息をつきながらそのパーティ 「でも、そのときおかしいって思ったのかい ? 怯えたり、ひとりのことを思いかえした。「だれかがあかりを消したとき、その男の ・ローランドがいたんです。彼のことは決して忘れませ ・ほっちで淋しかったりしたことはなかったの ? 」 子ジョニ 「先生にはおわかりになりません」彼女はそう言うと、両翼をびんん。彼は十四でした。私のとなりに腰をおろすと、すぐさま手で探 とひろげてそれを見た。「もし飛べたら、ほかにだれもいりませりはじめたんです。私びつくりしました。でも : : : 」彼女はちょっ ん ) それに、私には。 ( プがいました。私たちはもちろん、あちらこと間を置いた。顔がほてるのがわかった。「とにかく」とあわてて ちらに移り住みましたけど、パプは気にしませんでしたし、私だっ続けた。「まわした彼の手が羽にとどくと、びたっと止まりまし た。私が片方の羽をびくっと動かすと、彼は叫び声をあげました。 てそうです。私がひどい風邪をひかないようにつて、私たち、いっ も南部で暮らしました。私は一日で何百マイルも旅することができそれでポーチからその家の子の両親がやって来てしまいました。そ ました。そして、空高く舞いあがったり、宙返りしたり、思いきりのあとあかりはつけつばなしにされ、私たちは卓球をやりました。 飛んだり、さもなかったら、ただ貿易風にのって滑空したりできたときどき彼のほうを見ましたが、ずっと彼の目は見ひらかれて、お んです。私にはほかの女の子のことはわかりませんでしたし、ほかびえていました」ジェニーはロをつぐみ、床を見つめた。 の女の子には私のことはわかりませんでした。あの子たちがするこ医師は席を立って、診察室のむこう側にあるあかりのスイッチを いれたそれからガラス戸棚のところでせわしそうにしながら言っ とで、私にはできないことがたくさんありました。泊まりこみ。′

6. SFマガジン 1975年3月号

第ニ十四回「新青年」と「科学画報」 それは皇紀一一六三四年の十二月八日ー ! 大東亜戦争のカで書き表わすと、ばちーん ! と音がして、なぜか電 とあいてしまったのだ。そ 大詔奉戴日 ( 開戦記念日 ) の朝のことだ。戦争を知らな気力ミソリのふたがパッー い子供たちの一人である・ほくは、いつものようにメイド れこそ、あっというまもない一瞬のできごとだった。 ・イン・の電気力ミソリを使ってヒゲをそりはじ 当然の結果として、・ほくはもろに″ヒゲの粉″になっ めた。ヒゲそり作業は順調に進み、ほほからあごにかけたやつを両方の鼻の穴から吸いこむはめになった。その ては、なにごとも起こらなかった。そして、いよいよフ日はたまたま三日分の″ヒゲの粉″がたまっていた。電 イニッシュの鼻の下のヒゲにさしかかった。その時だー 気力ミソリでヒゲをそる人ならおわかりだろうが、三日 ジャジャジャジャーンのダダダダーン ! あなたは・ほく分といえばかなりの量だ。さて、読者諸君ー の鼻の下で、いったいなにが起こったか想像できるだろ ここで思いだしていただきたいことがある。それは、 うか ? たぶん、できまい。世にもおそろしい戦慄の異このページでこれまでにもさいさん書いてきたように、 常事が発生したのだ。この世のものとは思えない地獄図・ほくがアレルギー性鼻炎の持ち主であるということだ。 絵がそこに展開された。それはもう、ぼくがまったく予この病気は鼻孔の粘膜が刺激されると発作が起こり、ク 想していなかったおそろしいできごとで、とうてい筆舌シャミを連発、目と鼻からポロポロととめどもなく涙を には尽しがたいのだが、あえてそこを・ほくの天才的表現流して一時間以上も止まらなくなるやっかいなものだ。

7. SFマガジン 1975年3月号

まず、なにはともあれ、「お詫びと訂正」を。 Art MindfuI 0 ( Him ・・と、エッセイ "ls There から、さっさとストーリイを語り始めればいいはず その一 前回 ( 七四年十一月号 ) 、萩尾望都さ Hope For The Future をとりあげると書きまだ。作品についてのメモも、そのほか今回のスキャ んの『ポーの一族』をとりあげましたが、その中でしたが、この最新中篇のほうは、来たるべき〈ナーに必要となるだろうというメモや日記のたぐい 主人公エドガーをエディと誤記してしまいました。マガジン〉二百号記念号に掲載されることとなりまも、『オョョ城の秘密』の横に重ねてある。一番上 エドガーと、もう一人の主人公アランと、ポーとしたので、今回、タネアカシをすることは避けるこのメモは電話のメモ帳を破いたもので、日付は十二 で、エドガー・アラン・ポーという、あの偉大な作とにします。あとでふれますが、アシモフのロポッ日になっている。「お詑びと訂正」を書きかけた時、 家の名がうかびあがってくるしくみになっているわトものはミステリと密接な関係を持っているので、萩尾望都さんについて何か = 、ースはないかと、大 けですから、エディではまずいわけです。前々回、今、ストーリイとアイデアをバラしてしまったら、阪のマンガ・ファンさんに電話をかけた時のもの お便りをください、と書いた時に数倍するおしかり半年後の楽しみがなくなってしまいますから。 そうだ、今回は、これらのメモで構成して の手紙をいただきました。萩尾望都さん、読者のみさて、後日談。『ポーの一族』の新作が、別冊みようか。この十日間、僕が何をし、何を考えたか、 なさんにお詑びすると共に、訂正させていただきま〈少女コミック〉に掲載されました。題してヴ書いていってみることにしよう ( なぜか、植草甚一 す。 アンスの遺書』。また、半年強にわたって連載され ) 調になってきたそ ) 。 その二・ー・・・・やはり、前回、小松左京さんの講演をていた『トーマの心臓』が単行本になるそうです。 紹介したくだりで、〈土人〉という言葉を不用意に梅原猛さんは『隠された十字架』によって、第一 十二月十三日 ランドル・ギャレットの "A 使用いたしました。〈原住民〉と訂正させていただ回大仏次郎賞を受賞なさいました。古田武彦さんの Stretch of ()。 . e lmagination" を読み始めるが、 きます。申すまでもございませんが、これは当方の『「邪馬台国」はなかった』は、高木彬光さんの『邪同じ作家の同じシリーズの第二作の〆切がすぎ 、、スであり、小松さんには、なんら責任はございま馬台国の秘密』の原典か、ということで話題になり ているため、おちおち読めない。百二十枚と思 せん。 ました。〈読書界の話題を先取りするスキャナ って始めたら、百六十枚を超えてしまったのだ また、『ポーの一族』の紹介の際、〈吸血鬼〉とー〉なんてキャッチフレーズができないかな。 から、あせらざるを得ない。 いう言葉を使用いたしましたが、これについて、ル と、ここまで書いたのが、十二月十二日で、今日 ( これが日記で、このあと、ノートに記された ーマニアはビストリツアのオョョ伯爵より抗議の電は、十二月二十二日。〆切を二日すぎている。そし "A Stretch of the lmagination" のス トーリイを 報がまいこみました。豊田有恒さんの『用語コンサて、机の前にもう一時間も坐っているのだけれど、紹介するべきなのだが、その前に、ランドル・ギャレ ルタント』に従い、〈血に不自由すると生命が不自何も書けない。アシモフの中篇の・かわりとなる作品ットとその〈ダーシー卿シリーズ〉について一言 ) 由になる人〉と訂正させていたたきます。 はちゃんと見つけてあって、むろん読みおわってい ランドル・ギャレットについては、もう十年近く 冗談はさておき、お詑び、その三ーー次回予告で、る。なるべく新しい中短篇を一、二篇紹介する、と ~ 昔に、伊藤典夫さんが本欄で紹介していらっしやる。 アイナック・アシモフの最新中篇 "That Thou いうのが僕の担当するスキャナーのたてまえなのだ彼は一九二十年代後半に、ミズーリ州レキシントン スきャ。 0 0 0 0 0 おげる論理性 : 」 0 ー 22

8. SFマガジン 1975年3月号

私はかねがね、作品の一部に、前代未聞の奇現象にまき込ま結局私は左手に五つあるツメの生えた部分のひとつを失うかわ れて、ひとことそれを世間に報らせれば災難をまぬがれるのに、まさり、 亜空間を得たのであった。ただ問題は、亜空間がそのままおと 3 か、まさか、そんなばかな、の一点ばりで、結局誰にも判らずじまなしくしていてくれるかどうかであった。単にそれが一白浜地区の いでおわってしまう物語があるのが気になっていた。あたかもそれ空間における珍奇な現象にすぎないのならば、私はやがて森優こと はターザン映画に出て来る善良な白人たちのようなものである。猛南山宏や平井和正や、その他作家クラ・フの面々を呼び集めて、 獣がウロウロしているのに夜、キャンプ・ファイヤーのそばを離れそのまわりで夜っぴて酒を飲んだりするに違いなかった。 るし、ワニのいる川へ入って泳ぐし、ライオンの巣へ行ってライオ だが、飯田たち三人組の申したてによれば、どうもそれはもっと ンの赤ん坊をかわいがるし、敵の土人がすぐそばへ来るまで気がつ大きな空間に通じているらしい。そこにはさまざまな世界が設定さ いたためしがないし : れていて、人類をテストしているらしい。三人はそこへ招き寄せら あれとおんなじことだ。だから、人喰いサポテンが歩きまわってれ、異常な体験をして命からがら脱出して来たのだという。しかも いるというのに、 これは、彼らが体験する前に私によって書かれてしまっているらし 「こんなことを誰が信じてくれるというのだ」 い。だとすれば、今後のんきに亜空間を見物しながら一杯というわ とかなんとか、ストーリーに都合のいいことを言ってすましてい けには行かないかも知れない。 るのが気になって仕方なかったのである。 危険だ。何かが起るそ・ : だが実際にそういう立場になったとき、私はそうしたいわゆる白 お前は呪われている : 痴ストーリー の主人公と同じように、自分一人でかかえこんでしま そんな文句が私の脳裡を去来した。しかし私は依然としてこの奇 うよりなかったのである。 異な現象を他人に報らせる気にはならないでいた。 いみじくも私ははじめに大野と飯田の二人に言っている。二人が 「君らはどうやって亜空間へ入ったんだい」 亜空間があったと言い、私がそこへ近寄って行ったときである。 私は居間へ腰を据えて三人に尋ねた。 「静かすぎる : : : 」 「やはり俺が書いたとおり、あの小さな空間の爆発で呑みこまれた そう、まさに静かすぎる場面は、一転して展開部へさしかかったのかね」 のである。インデアンが待ち伏せしているかわりに、小さな亜空間 「ええ、突然夜中に円盤がやって来て、緑色の光を放ったんです」 が出現し、私は左手の十四分の一を失った。ちなみに、十四という「俺が書いたとおりだな」 のは五本の指の関節で区切られた部分の合計である。嘘だと思った「そうなんですよ」 らかそえてみるがいい。十五あったらお化けだ。十四以下だったら「で、ロスボとかワイナンとかいう世界へ入ったのか」 「名前まで同じじゃありませんがね」 差別語を使わねばならなくなる。

9. SFマガジン 1975年3月号

にたずね、ククッと笑った。 「からかっちゃいけない。あんたはぼげたその夢の世界へのめりこんでしまうだろう」 くの昔からの相棒のガー・キャッスルじゃないか ? あんたのとこ セドリックの眉は、ひたいの生えぎわ近くまで吊り上がった。 ろへ連れてこられた ? どうしてぼくがあんたから離れられるんだ「妙だね」彼はほほえみながら答えた。「わたしもそれとまったく よ ? おたがい、このせまっくるしい・フリキカンの中にいるのに」おなじことを、きみに言おうとしていたんだよ」 「せまっくるしいプリキカン ? 」セドリックはききかえした。 「宇宙船さ」ジ = リ 1 はいった。「ねえ、たのむよ、ガー。この繩セ ドリックは微笑しつづけた。ジェリーの熱っぽい真剣さはゆっ をほどいてくれ。 いくらなんでも冗談がすぎるぜ」 くりと薄れていった。ついに、相手のそれに答えるような微笑が彼 「わたしは医師のセドリック・エルトンだ」セドリックは一語一語 のロもとに漂いはじめた。白い歯が見えるまでにそれが広がるのを かんで含めるように言いきかせた。「きみのいるここは宇宙船の中待って、セ ドリックが声を上げて笑うと、ジェリーもつられたよう じゃない。きみは四人の警官に連れられて、わたしの診療所へやつに笑いだした。四人の警官は、おちつかなげに顔を見合わせた。 てぎた。その警官たちはいまもきみの後ろに立っていてーーー」 「さてと ! 」セドリックが苦しそうに声を出した。「これでわれわ ・ノエリー・ ポセックは首をうしろにめぐらし、四人の警官を率直れは平等な立場に立ったようだ ! きみはわたしから見るとキじる な好奇の目で眺めた。 しだし、わたしはきみから見るとキじるしだってわけさ ! 」 「警官 ? どこに ? 」と彼はききかえした。「そこに四つならんで「平等な立場か、まったくだ ! 」ジェリーは大喜びでそうさけん る備品ロッカーのことかい ? 」頭を正面にもどすと、あわれむよう だ。それから急に真顔に返って、「ただし」と、低い声でつけたし にエルトン博士を見つめて、「ほんとにしつかりしてくれなくちゃ た。「ぼくは縛られている」 困るな。ガー、あんたは幻覚を見てるんだよ」 「拘束服だよ」セドリックは誤りを正した。 「わたしは医師のセ ドリック・エルトンだ」 「ロープだ」ジェリーは断定した。 ジ = ラルド・ポセックは体を前に乗りださせ、セドリックに負け「きみは危険人物なんだ」セドリックはいった。「きみはすでに六 ない確信のこもった口調でいった。 人も人を殺している。その中の一人は警官で、おまけにきみはもう 「あんたはガー・キャッスルさ。・ほくは絶対にあんたをセドリック二人の警官にも傷を負わせたんだよ」 ・エルトン先生なんて呼ばないぜ。なぜって、それはあんたはガー 「ぼくは、この船を乗取にきた金星トカゲ人の宙賊五人を、光線銃 ・キャッスルだからさ。・ほくはこれからもずっとあんたをガー・キで焼きはらったんだ。そのとばっちりで、食料ロッカーが一つ、 ャッスルと呼ぶのには、もう一つの理由がある。それは、この狂気アが溶けてしまい、ほかの二つの塗料が剥げたのさ。あんたもよく の中で、理性の止めくぎをたとえ一本だけでも残しておきたいから知ってるはずじゃないか、ガー、そこらにあるものを擬人化したくー だ。でないと、あんたは完全にともづなを切られて、自分の作り上なるのが宇宙錯乱症の徴候だってことは。だから、いつも厳重に言

10. SFマガジン 1975年3月号

「私は、自分の製作者に放射することはできません」ウィリアム・ 「それで」 「ちつぼけなもんなんですがね、このボタンは、ちょっとした爆薬スミスが、平板な声でしゃべった。 と接続しているんです。これが爆発すると、彼の内部は蒸発してし「なぜだね」 まうし、残った部分は、半径四百メートルの範囲に飛散るんです。 「彼の機能がそうなっているからです」 敵に分るのは、せいぜい、奴はプリキでできていたな、といったと「禁止回路を内蔵しているんです」シュ・ハイデルは説明した。クル ころです」 ーゲだって、このくらいは理解できるだろう、といった調子だっ 「奴は、そうするように条件づけられているんだな」クルーゲが念た。「彼には、ウルムザーと私に脳出血をひき起すことができない を押した。 んです。彼が命令を受取るのは、ウルムザーと私とだけからなんで 「もちろんですとも、せざるをえないんです。ロポットには、自己してね」シュバイデルは、クルーゲに向ってにやりとした。「そこ でですね、ウルムザーが、私のことを殺せ、と命令したとします。 保存の本能などありませんからね」 「では、これはどうかね。こいつには、どこかフランケンシュタイその時は、われわれ全員が死ぬことになるんです」 ン然としたところがあるな。奴に、ひずみが生じたら、どうなるん「なぜだね」クルーゲが聞いた。ちょっとびつくりしたようだっ こ 0 だね」 「とおっしゃいますと」 「この命令は、解決不能の課題を持出したことになります。その結 「奴は、殺せと命令された連中を、超短波ビームでぐさりとやるん果は、ものすごい爆発、というわけです」 だったな。だが、諸君が前に寄越した報告書ではだ、ある限られた シュバイデルは、クルーゲの一覧表をウィリアム・スミスに手渡 範囲内ではあるが、奴はものを考えることができる、と書いてあっした。「お前は、この連中をにらみ殺して、できるだけ早くここに た。ひょっとして、殺人相手を、自分で決めるということは、あり戻って来るんだ」 得んかね。例えば、君をだ」 「分りました」ウィリアム・スミスは従った。彼は、人間そっくり シュバイデルは、それには答えず、まず、ウィリアム・スミスな、しなやかな指で一覧表を折りたたむと、ポケットに入れた。帽 の、はだけていた胸を元に戻し、妙な形のカギを背中にさして、ひ子掛の帽子を、気取ってかぶり、出て行った。クルーゲは、好奇心 ねった。ロポットは身動きした。シュバイデルは、その真ん前、ちをむき出しにして、見つめていた。 ようど二メートルの位置に立って、ウィリアム・スミスの目をのそ ドアが締ってから、クルーゲはロを開いた。「行動を続けられる き込んだ。 期間は」 コ一一百日です」 「彼に命令して下さい」シュバイデルは、クルーゲにいった。 「殺せ」クルーゲは、何のためらいもみせず、ずばりといった。 「仕事がどうしても遅れて、よけいに手間がかかった時はどうする