を収録している。 ペースだが、質的にはそれだけ向上している ・、最近は、本誌の「てれ。ほーと」襴に広告を 《オリハルコン》 ようだ。 ( あとの三誌はいずれも関東。なお 、、出すファンジンが多いので、ここでの紹介と 美 ( トリトン斤一藤 物 9 9 重複する部分がかなり出てきそうだが、一応《黎明》はこの 7 号で一時休刊となる由。 ) 万里子ほか ) 1 ~ , ◆、◆、◆ : 気にしないで、ここ一年間の動きを、順不同 ン篇拓 東京の老舗《宇宙気流》も、昨年一月、一 4 号、創刊は一昨 、◆、◆、◆ : でひろっていくことにしたい。 年ぶりに出た 83 号をもって終刊の予定だと 年、本誌「てれ。ほ , ◆・◆、◆、《まず第一のトビックは、福岡の《てんたく いうが、もう一冊正規の「終刊号」を出す予 ク。柴 ーと」欄を介して 、、るす》 ( 九州クラ・フ・代表 : ・松崎真治 ) - が、昨年八月、 100 号を出したこと。一九定がまだ立「ていない、などという取り沙汰結成されたもの。 《 TJ 論叢》 ( 新 、、 - 六五年一月の創刊以来 99 号まで、月刊の線もある。最古参の《宇宙塵》は、一昨年より 当 戸正明 ) 1 号、評 - 、を守りぬいてきた代表の努力に敬意を表した季刊の予定が年二回刊に落ち、現在 175 号 日一 で、山田正紀「ビッグコンビューター」シリ 論の翻訳が主体。 ・ - い。内容はファン各氏からの祝辞と創作数篇 ード」シリ 《北西航路》 ( 黒 ーズ、宮武一貴「スー ・・その他。松崎「百十三番目の人類」が、 田英之 ) 1 号、眉村卓を中心に集まった「チ などを軸に、 ードの本拠を守る態勢。 、、アスなテーマを駄洒落でくるんだファン向き ◆・◆、◆文の秀作だった。この 100 号は一年以上前に ャチャヤング」グルー。フによる創作同人誌。 これと対極的な《 Z Ⅱ》 ( 山野浩一 ) ◆、◆、◆、△出るはずだったが、大幅に遅れたため、今後 《宙》 ( 松山クラブ・山下英則 ) 1 ・ 2 も今のところ年二回のペースで、現在 9 号ま ◆、◆、◆、△の刊行予定はまたきまっていない。 号、地域グルー。フの性格が濃く、創作主体。 で。ニューウェーヴ系の評論、翻訳など、 《ファナティクス》 ( 岡山クラブ・日笠 ◆、◆、◆人昨年初頭に再発足した関西の《》 イプラウな連動を展開している。 ◆・◆、◆、《 ( ネオⅡスル ) は、年二回刊の。ヘースで現在 わが国唯一の情報誌《ファンダム・ニ貴司 ) 1 号、前から会合活動を始めていた。 《。ヘルシダー・グロッサリー》 ( 高井信 ) 単 ←← 3 号まで発行。レベルはさすがに高く、堀晃 = ース》 ( 加藤義行 ) は、今年で四年目には - 、「最後の接触」、かんべむさし「逃げる」、真 いった。隔月刊で年七冊を出し、読者の数で発、「ベルシダー」シリーズ用語集の試み。 セカ / ド - 、城昭「砂漠の幽霊船」などは、このままでも は、市販されている《 Z3=tnæ》を別格と 《イン・イド》 ( Ⅱ・水口久子 ) 1 ・ 2 号。 - 、商業誌に進出できそうに思われる。筒井康隆して、この《ファンダム・ニース》と《宇 《亜空間通信》 ( 亜空間通信社・山本昭造 ) 、・じきじきの批評がもらえるとあって、 2 号に 宙塵》《》がそれそれ五〇〇人前後 1 ・ 2 号。《トリプリ》を語る会・加 でトツ。フに肩を並べている現況。 物 9 、◆は五十六篇、 3 号には百四十編の投稿があっ 藤隆太郎 ) 1 号。《新人類》 ( 木崎正治 ) 1 異色のものとしては《べム》 ( 岡田正哉 ) ま 0 たという。なおこのグループは、今年の 号。《あしゆらおう》 ( 風の一族・山本聡 ) 1 号。ーー・最後は名前だけになってしまった 9 「第十四回日本大会「Æ—ZOCZ 」 ( 神《ヌ氏の内宇宙》 ( 林敏夫 ) , ー・・ともに名 古屋ーーーが目立つ。前者は純粋なクラシック ◆、◆、△戸 ) の中核でもある。 が、まあこういったところだろう。 路線で現在 11 号。後者の内容は「星新一フ 学内グループでは、京大《中間子》が昨年 , その大会の一週間前、八月十七日に、 アンクラブ」で、 3 号「星空間遊泳中」では 末、 7 号でふたたび休刊。この号は翻訳四編 、取京都で「星群祭」 ( 第二回 ) 開催を予定して 関係のある新聞記事などを網羅している。 をならべた豪華なものだった。 、、、 9 いる《星群》 ( 高橋正則 ) は現在 12 号で、 この他にも、いろいろ変った試みのものが 他はいずれも謄写またはコ。ヒーで、同志社 、 9 堅実に季刊の線を守「て続いており、その若 多く、御紹介したいのだが、ここらで新しい 大、関西大、関西学院大、神戸大学、大阪工 、・ 9 若しい気魄が期待できる。その他、若手グル 顔ぶれのほうに目をうっしてみると ◆・ : ◆、△ー。フでは、《プルードリーム》 ( 加藤義行 ) 大、お茶の水女子大、それに宝塚高校などか 《モ / リス》 ( 映画ともの会・門倉純一 ら会誌がとどいている。 ほか ) 1 号、この分野の決定版として登場。 ・、が現在 17 号、《科学魔界》 ( 巽孝之 ) 35 ( 右に関するお問合せは「でてくたあ」係あ 《半村良秘録》 ( 半村良のお客になる会・加 9 9 号、《黎明》 ( 相谷雅一 ) 7 号、あたりがお てに、必ず往復ハガキでお寄せください ) ・「・、・、 4 もなところで、いずれも比較的のんびりした戸利一 ) 1 ~ 4 号、出版目録や関係ニ = ース
「クソムシなんて、へんな名前」 じっさい虫が臭うわけでもないし、幸運の虫なら、持っててもい 「そう、動物のフンが好きだからね。エジプトならラクダ、そいっ のフンを、くるくるまるめて転がして集める。ああ、スフンコロガ ふたたび、父親が軽く笑う。 シっていうのも、そいつの仲間だ」 「それに、あの、おじいさん、催眠術師かも知れないぞ。なんだ 「ふーん ? なんだ糞虫かあ。でも、どうして、これが不思議なんか、じっと見つめられると、だんだん、虫が欲しくなったろ」 だろ」 「うん、そう言えば、そうだね。でも、ただなんだから、 しいと甲ル うな」 「灯りに向って飛ばないってのもフンを集めるには飛ぶ必要がな そういう理由かも知れないじゃないか ? 」 「うん」 子供はちょっと立ちどまって、掌の中の虫を眺める。やがて、ふ たたび、歩きはじめる。 %NW-SF 東京都杉並区堀ノ内 1 丁目 6 ー 6 柏倉マンション 3 0 4 NW—SF 社振替東京 114552 雑誌コード 7013 お待たせいたしました 、、 V—S F10- 号は 創刊五周年記念特大号なのです。 4 月 1 日一斉発売 / 10 万定価 450 円送料 100 円 ☆創作特集 黒井千次 真夜中のニュース 書評「加納信高」 半村良 猿と大日如来と蒸気機関車 中村宏 石川喬司 穴のなかの冒険 流れガラス S . R . ディレー ☆中篇ⅱ 0 枚一挙掲載 ラングドン . ジョーンズ レンス・の目良 虫 ☆ J. G . パラード第三特集 机をど 独占インタビュー パラード / 国領昭彦に放 国領昭彦いしが ・会見言己 たて不 評論 : ヴァギナを使え J G. パラード りお思 イ乍品 : 火山は踊る J G . ′くラード 壁たか 連載評論 透視あるいは物質界への射影幾何学く下〉い ら な 田中隆一た A. C. クラークと B. W. オーノレディス が く小説世界の . 小説ー 3 > 山野浩一 天 共産主義的 S F 論く 8 > 大久保そりや井子 連載長篇 は カ 時は乱れてく 4 > P . K . ディックレ 自 佐野美津男ン分 街の冒険者く 2 > の ☆′ヾックナンノく一は 4 号から残っております。 4 号 ( 250 円〒 100 円 ) 特集ーーー内宇宙の迷宮を さ 止な 5 号 ( 300 円〒 100 円 ) ノト説特集 6 号 ( 300 円〒 100 円 ) J. G ノヾラード再び / ロ 屋 7 号 ( 350 円〒 100 円 ) 英米ボーランド三人集た 画 8 号 ( 350 円〒 100 円 ) 特集ーーーいかに終るか 9 号 ( 400 円〒 100 円 ) 特集ーーー S F クリティク ☆ 4 号残部少。本社まで直接お申し込み下さい。 も ん 205
みんな彼をベビイと呼んだ。六尺ちかい体は痩せていて、眼には 祐号には、ときたま肉のあることがあったし、よしんば肉がないに 獲物を狙う飢えた野獣の獰猛な光がうかんでいる。それでもロポッ せよ、どうにか食べられるデザートにはたいていありつける。口に トたちは、彼をベビイと呼ぶ。 入るものなら、何でも、 しいくらいひもじかったのだ。 その昔、クリストファー 号メイドは、食卓を囲む無人の椅子の前に、それそれスープの . ンヨン・コリイという、むこめて選ば れた名前を、だれかが、一冊の分厚い戸籍簿と一片の白紙に書きと皿を並べると、台所のドアのそばに引きさがって待つ。だからベビ めたはすだったが、そこに記された固有名詞が、いまロポットたちイも待っていた。一定の時間がたっと、号は皿を片づける。次に にベビイと呼ばれる男の名前たと知る人間は、この地上に、ただのでる料理は肉た いや、肉だったのたが、何かが狂ってしまった 一人も残っていなかった。 らしく、運ばれてきたロースト・ビーフは、むざんに焦げて、真黒 二、三年前までは、この都市にも、一人の人間を満足に育てあな炭の塊りになっていた。 あのどうそは、・ほくをばかにしているんだとベビイは思った。あ げ、つややかで健康な肉体を維持できるだけの食糧があった。だが いま、ベビイの腰骨はヘこんだ腹の両側から無惨に突きだし、肋骨れは、ぼくを怒らせるつもりなんだ。 はアーチ型にうきあがって、動くたびに、皮膚のすぐ下の筋肉が とても食べられるしろものではないのに、号メイドは、真黒に 筋ばった凹凸を露出するのだった。 焦げた薄片が、・ほろ・ほろと床に落ちるのに目もくれず、ナイフ用の ベビイは裸で食堂に立っていた。濡れた素足が、滑らかな黒いタ指で、黒い塊りを切った。そして、めいめいの皿に黒い炭の塊りを イルの床を踏む。彼は眼をかたく閉じて、ひくく囁きかける。「ど配り、煮すぎたか、腐ったかした野菜、でなければ黴の生えたサラ うそ、どうそ、どうそ肉でてきて ! 」 ダか、一見えたいのしれないものをそえた。そしてまた引きさがる 食物のことを考えるだけでにじみだした唾液を、ベビイはごくりと待った。さらに一定の時間をおくと、手つかずの皿を取りかたづ とのみこむ。そのままじっと待ちかまえている。願いがかなえられけ、デザートには泡立てた生クリームをかけたチョコレート・ るように祈りながら、さすがに期待はしなかった。どうそっていつを運んできた。ミルク・ロポットが、いまたに ( ウス間号へ、ロポ たんだそ、と、ベビイはつぶやいた。 トカ乎牛を飼っている地下牧場から、ミルクを運んできている。 部屋にはだれもいなかった。狐のような眼で、台所のドアを見つ今度は、料理用ストープも、正確に働いたようだった。 ベビイはガラスの壁をふりかえり、外をちらりと眺めた。「監督 めていると、やがてそれが開いて、号ロポット・メイドが入って ロポット川号がどうそいませんように、。 とうそ、おねがい」彼は きた。頭の上に載せた盆のスープ皿には、茶色の干からびた粉末が の 0 ている。 ( ウス間号は、暖房装置が故障したために、昨冬の寒眼をつぶって祈った。それから、身をひるがえすと、 パイを切るメ 波で、水道管が破裂してしまったのだ。 イド号のナイフが振りおろされる寸前に、素早く。 ( イをひったく しかし、ベビイはスー。フがほしくて来たのではなかった。ハウス った。メイド号は、ナイフが空を切っているのに、気づきさえし
まっていたが、頭脳そのものはごく小さかった。蜘蛛の巣のように ベビイ〈新頁より続く〉 はりめぐらされたワイヤやパイ。フの迷路をも含めて、この家のあら ゆる部分を動かすものは、ほんの。ハン・ケースほどの小さなものた ・ほくは生れ変ったんだ。 った。ロポット 6 号はその前に立ち、三番目の脚で体を支えてい そうしてベビイは跳びおりたのだった。 た。この脚は、歩く際にはバランスをとり、立っているときには支 彼を捜しだすのに、ナーシイはまる一日かかってしまった。「な 柱の役目をするのだ。彼は機械の手を出し、長い柔軟な親指で、中 んていたずらっ子なんでしようね。お家から離れてこんなに遠くま 枢部の片側にからだを押しつけていた。 でやってくるなんて、お馬鹿さん、お馬鹿さん」ナーシイは彼をそ 「どこかに故障がある」とロポット 6 号がいった、「だが、ここで っと抱いて家へ戻ると、ロポット・ドクターを呼んだ。それからべ はない。頭脳中枢室は異常なしだ」 ビイは、長いことべッドに寝かされていた。彼がずっといい子なの 「ミルクがないって、ベビイがいうんですよーとナーシイがし で、ナーシイは幸せだったが、彼の方は毎夜、激しい痛みと、、、 しれぬ焦燥に駆られて泣きわめいた。そして、ロポット 6 号になれた。 「でも今朝たしかにミルク・ロポットが言ったのをこの耳で聞いた ないのなら、せめて人間ーーー・大人というものになれるのは、いナ いつの日だろうと思った。ナーシイにきいても、いっかはね、とんですもの。ベビイはまたナーシイを欺したんだわ。この子はいっ だって欺してばかりいるんだから。それにね、ロポット 6 号、ベビ いうだけなのだ。 あのとき、手に負った深い傷手のように、いままた、いいしれぬイはとても大きくなってしまったわ。こんなに大きな坊やになっち やって。もうナーシイの手には負えません。あたしの方を調整する 欲求に彼の奥深くが傷ついているように、ベビイは、ナーシイを、 必要があるのかしら ? 調べてくれない ? ロポット 6 号 ? 」 減茶減茶に傷つけてやりたかった。 ナーシイはドアの前で、数秒立ちどまり、またベビイの手をひき「きみはもう三十八歳だね。交代させなくてはいけなかったな」 「いままで、わたしたちのカでどうにかやってきたんです。ええ、 ながら、進んでいった。足がわりのキャタピラは、入念に刻まれた 巨大な石作りの煖炉の背後にある石階段をやすやすと登っていく。そうですわ」彼女はまるで子守歌を唄うように、「でも、ロポット ナーシイがおしだまって、金属タイルを張った廊下を渡っていくあ 6 号、牛乳箱にベビイのミルクはあるんでしようね」 とから、ベビイは、汚点ひとつない清潔な床の上に、泥だらけの足「さあね , 跡をつけながら、ばたばたと足音をたてて歩いた。家の中央を走る「わたしにはわからないわ。全然わからない。いつだって、七時二 コントロール・ルーム 十三分には牛乳箱にミルクはあったんですものー 斜道を通り、台所を横切ると、ハウス富号の頭脳中枢室につづく 「何かが狂っているんだ、それがだんだんひどくなる。ハウス号 9 アを入った。 部屋は広く、ワイヤやパイプやコンべア・ベルトがぎっしりと詰はどこかが狂っているんだが、頭脳に異常はない。図書部は、モー
「ミルクなんてありやしないんだ」やにわに彼は冷静にもどった。 弱くて、融通のきかない体があるだけだ。あいつらは話をしていて とうそっていってるんも・ほくにはさつばり聞えない。・ほくのナーシイは、あのロポット 6 「どうそ、ロポット 6 号にきいてよ。・ほく、。 号と声もなく話しているじゃないか。 だ。ねえ、 6 号にきいてよ、どうそね」 しわ、ベビイがそう 「まあ、なんてお行儀のよい子なんでしよ。い、 それを自覚したあの日、彼は石像が立っている高層ビル街へ出か いうのなら、ロポット 6 号にきいてみましようね。ベビイはどうそけていくと、ビルの三階の窓に届くかとも思われる高い石像によじ 、いいましたとも」 っていったわよねえ、ええ の・ほり、その白い頭部に、はじめて上った。のぼる途中で親指を怪 ずっと昔なら、ここで、「うん、ぼく、いったよ、ね」と一生懸我した。手の肉から鮮紅色の血が。ほっつりと滲みでると、滴が三本 命、誇らしげにナーシイに答えたものだった。しかしいまでは、彼の赤い線を描いて腕を伝っていった。 そのてつべんで、彼は大声で叫んだものた。「・ほくはロポット 6 はロをつぐみ、その顔は、ナーシイののつべら・ほうな顔面のように 号になりたい ! 」 無表情だっこ。 石像の両耳に足をかけると、大きな頭にどっかとまたがり、彼は ナーシイは、そこら中をよじの・ほるためにすっかり硬くなってし まったベビイの頑丈な手をひいて、家の方に続く手入れの届いた芝その高さに酔いしれていたのだった。「もうべビイでいたくないん だ。いまの・ほくより立派なものにならなくちゃならない。どうそ、 生を歩きだした。ふたりが家に近づくと、玄関の壁のパネルがあが どうそ、お願いです。ベビイはどうそといったよ って、ふたりを中へ入れた。 家へ入るとナーシイはすぐ立止った。ロポット 6 号を捜している彼は燃えさかる夏の太陽を仰いで叫んだ。「あの空に輝いている のが、ベビイにはすぐわかった。ベビイには聞えない方法で、ナー太陽に、二度、どうそといおう」それから今度はセントラルの方を シイは 6 号に話しかけているにちがいない。すっと以前のことだっ振りかえると、「そして四度、セントラルにどうそというんだ」彼 たが、自分だけに聞えないという恐ろしい焦燥を、はじめて感じたは太陽が一番好きだったが、セントラルの方が太陽よりカがあるこ とを知っていた。手から滴る血を白い石像の頭に塗りたくって、眠 ときがあった。じぶんだけに聞えないという、その重大な発見は、 徐々になされたものだったが、そのことの意味は、突然天啓のようをつぶった。・ほくは堅くなった、強くなったそと彼は思った。顔の にひらめいたのだ。それは、まるで、彼が、それを気づくすっと以真中に眼が一つついて、その眼は赤くちかちかと輝いているんだ。 前から、ナーシイたちがそうやって、彼には聞えない方法で話して両の眼が、鼻の真上で、ゆっくりと一つに重りあっていくような気 がした。・ほくの腕は、自由自在に、伸ばしたり曲げたりできるよう いたのを知っていたかのようだった。あの日、いま彼を襲ったよう になった。跳びおりれば、ゴム製の足が地面に触れて、膝のス。フリ な感情が、彼を燃えるような熱い流れの中に押し流したのだ。あい ングがとびあがり、関節が他の関節へはまりこむ。もう怪我なんか 、 : 、まくよ柔らカし つらは堅くて、どんな傷にもびくともしなしカ ( 一二九頁に続く ) あいつらは強くて、自由自在に動く長い腕がある、だけど、ぼくはするもんか。・ほくはロポット第 1026 号だ。
ター修理の資料テープを送ってよこさない。電話をしたんだが、誰 ーシイはぼくの表面を見るだけで、・ほくの心の中なんか、ちっとも もやってこないのだ。セントラルを呼んでみたが、これも応答なしわかってやしないんだ。・ほくは彼女にとって何でもありやしないけに ときている」 ど、彼女は、・ほくにとっては、それ以下なんだ。 「それはこまるわねえ、ほんとに」とナーシイは歌うようにいう「あのとき、ベビイはナーシイのからだの中に入っていたのよ」と ナーシイはいった。「すいぶん昔のことだわ、ベビイはほんとにオ 「でも、一度でうまくいかなくても、またやってみなくちゃね。明チビさんだったから」 日には、明日の風が吹くものよ」 「そんなら、きみは、ろくでなしだよ」 「やつばり人間がいなけりや駄目だ」 「なにをいうの、ベビイ、そんな口をきくもんじゃないわ 「いっかは戻ってきます。この子のママもパパもいまにきっと戻っママのおいいつけ通りに、あなたをナーシイのからだの中にまる一 てきますよ」 年間、ずっといれておいたのよ。だからベビイが外へ出たときに 「ナーシイ号、敵の奴らが病菌をばらまいていったあとで、あのは、かすり傷ひとつなかったわ。それからベビイは大きくなって、 0 、 0 、 方たちを埋めるのを、あんたも手伝ったはすだよ」 ′やママがお望みだったような、こんな小さい紳士になったのよ」 ベビイのいる前で : 「まあ、何てことをいうの、ロポット 6 号ー ベビイは荒々しく息を吐くと膝をだいてかがみこんだ。彼女はこ : この子はもう何でもわかるんですよ」 れからも変りはしない、絶対にわかっちゃくれないんだ。 ベビイは頭脳室の金属製の床に、べったりとうずくまった。ロポ 「お前たちは二人ともろくでなしさ」と彼はいった。「セントラル ット 6 号もナーシイも、決して椅子を使わなかったし、彼も子供用だって、″どうそみだって、もうだめなんだ」 「何てことをいうの」とナーシイが憤然といった。 椅子からはみだすほど大きくなって以後は、椅子にすわったことは なかった。「もう耳にたこのできるくらい聞いたよ」彼は不機嫌な 「じゃあきいてみろ、セントラルや図書部へきいてみろよ。どうし て、もうミルクがないのかってさ」 顔を、彼らの方に向けないように用心しながら、つぶやいた。 ロポット 6 号も、ナーシイも黙っていた。彼らは説いているん いまはじまったことではなかった。彼が何をいおうと、何をしょ だ、とベビイは、いたたまれぬ焦燥にかられながら思った。ロポッ うと、ナーシイは変りようがないのだ。ナ 1 シイは、現在知らない ト 6 号は、いま確かにセントラルを呼んでいる。だが応答はありつ ことは、これから先も永久に知ることはないのだ。彼女の眼は。ほく こない。ベビイには最初からわかっていた。 を見ているが、実際にはちっとも見てやしない。万一・ほくがだめに 「セントラルは応答しない」とロポット 6 号がいった。 なってしまうか、ロポットたちみたいに止っちゃったら、彼女はこ とっぜん、息が苦しくなった。膝をかかえてかがみこんでいたの ういうだろう。「あの子は、いまに戻ってきますわーと。ママやパ をしつもきまってこうなのだ。ナで、胸がきつく締めつけられていたのだ。彼は立ちあがった。「セ パやジャニーのことをいうときよ、、 と、 0 0 、 0 、 / や
昭和 35 年 4 ・月 12 日第 3 種郵便物認可昭和 34 年 12 月 1 日国鉄東局特別扱承認雑誌第 682 号昭和年 5 月 1 日印刷・発行 ( 毎月 1 回・ 1 日発行 ) 第 16 巻第 5 号 マガジン アメリカ・ファンタジイ & SF 誌特約 107 Sc 〃化 / Sp 砒わ〃 & 月 c 0 〃 / お 4 厩 4 &
ントラルはもう絶対に応答するもんかー低くはりつめた声は、彼の突然、腹の中のかたまりが大きく膨れあがる。膨れ上った熱い熱 耳にも、いつもとは違ったものに聞えた。「昨日の昨日の昨日の、 いかたまりが激しく爆発して、彼は狂ったように絶叫した。「もう そのまたずっと前から、セントラルは応答していないんだ、だのにおしまいなんだぞ。お前たちのいうことなんかもうきくもんか。お お前たちは呼び続けてるんだ」 前たちには何もわかりやしないんだ。お前たちの眼や耳は役にたた 「まずセントラルを呼ぶのは間違っていない」と 6 号はいった。 ないも同然なんだ」 「そうですともーとナーシイがいった、「ベビイも知っているわ、 「駄々をこねるのはやめましようねーと、ナーシイがさえぎった。 ええ、知っていますとも。いつでも、まず第一にセントラルを呼ぶ「ベビイはおねむらしいわ。まあまあ、きっとそうなのよ。おねん んです。そうすると、つぎになにをしたらいいか、セントラルが命ねの時間がとっくに過ぎているんですもの」ナーシイは彼を抱きあ げた。 令してくれるのよ」 彼のからだが小刻みに震えはじめ、腹のなかで火のように熱いか抵抗してみても仕方がなかった。ナーシイのからだも心も、彼に たまりが膨れあがった。彼の一部が、からだから離れて、「いった は、傷つけることはおろか、へこますこともできないのだ。だが今 いこのごろどうしたんだ」と説いているように思われた。ロポット抵抗してみても所詮はむだだとわかっていながら、彼は必死で抵抗 6 号もナーシイも、いままでとたいして違っているわけではないのしていた。ナーシイの柔らかな腕に噛みつき、足を蹴とばし、逆に こ ?. 自分の足にあざをこしらえた。そして、いっか彼は、むせびなくよ 6 号やナーシイが、すること、なすこと、みんな立派で、慎重でうな異様な笑い声をあげはじめていた。抵抗は愚かしい行為だっ 物知りで、愛情深く思われたこともあったのだ。だが、それは遠い た。その上、こみあげてくる笑いが彼のからだをゆさぶって、それ 昔のこと、とにかくいまは、こっちが変ってしまったのだし、これすら弱々しいものになった。「お前には・ほくが見えもしないんじゃ からもっと変っていくにちがいない。いま彼の心は衝動的な、抑えないか。一度だって見えたことがないんじゃないか。一ペんだっ て」 ・、こい怒りの感情でいつ。よ、・こっこ。 彼は用心深くナーシイから視線をそらしていた。彼女の大きな空 ナーシイは低い、広い階段を、かるがると彼を運び上げながら、 虚な眼をみると、怒りが爆発するような気がしたのだった。「ロポゆっくりと進んだ。そして、優しく、あやすように、「いい子にな ット 6 号ーと彼はゆっくりと喋った。「セントラルはもう二度と応らなくちゃいけませんよ。駄々をこねちゃだめ。恐しい敵がいるん ですからね、遠くの方に。だからわたしたちロポットは、世界中の 答はしないよ。いったいお前たちはどうするつもりなんだ ? 」 ロポット 6 号は黙っていた。またセントラルを呼んでいるのだろ平和を愛する人間たちのために、この市を守っているのです。都会 うか ? セントラルが駄目になってしまったんで、どうしましようは人間が食べたり、寝たり、仕事をしたりするだけの場所ではない のですよ。都会は人間の生き方を代表しているんです。文明人の安 かと、セントラルにいているのか ?
なかった。これは軌道つきのいやしい自動機械で、眼がなかった。 ベビイは家の裏手の人工の丘を、脱兎のように這いあがり、伸び 料理用ストー・フがこれを操縦し、食堂の仕事をするように調整してすぎた生垣をかきわけ、昨年来、監督ロポットが故障でいなくなっ いるのだ。だがしかし、監督ロポットにしたところで、いやしい自動た ( ウス号の、荒れ果てた庭へ飛びこんだ。若木の繁みのかげ 機械という点では、このメイドと変りはない。顔の眼中に眼が一 に、彼は腹ばいになった。生垣のいばらでこしらえた掻き傷も何の つ、赤くちかちかと油断なく明減し、膝ではめこみになった脚で、 その、パイの、盛りあがったクリ】ムに唇をつつこんで、ベビイは ベビイより早く走るというだけなのた。 夢中ですすった。 パイを両手でささげながら、ベビイは一一目散にホールを横切っ こんなにわが家に近くては、ゆっくりと味っているひまはない。 た。自動壁はまだ支障なく動いていて、するするとあがり、裏庭に彼はたた、息もっかすのみこむだけだった。とにかくそれは、葉を 出ようとする彼を通した。ハ ウス祐号の壁はもはや人間を識別する満してくれる。いまは、肉でもミルクでも、何でもいいくらいにか 能力を失っていた。もう何年ものあいだ闖入者のベビイのために、 っえていた。 開いたり、閉じたりしているのだ。彼はまた祈った。 彼は「どうぞ」に不信を抱きはじめていた。それが、いままでの 「監督ロポット川号、どうぞ、いませんように、どうそ」 ような神通力をあらわさないからだ。乳母のナーシイに対する信頼 さいわい監督はいなかった。 もなくなりかけていたが、 / 彼女はまだ、こんなふうに家のそばにう へウス
新企画リヴァイバル・コーナー 連我 ( 3 思考の憶え描き 真鍋博 4 氷計画 LL スキャナー宀 ファンタジイ & サイエンス・フィクション言志牛寺約 達春進侃游 」連作続・街の博物誌パ 森井野島上 河野典生 金石山中村 星空 ス銀ドミトリイ・ビレンキン・ンヨート・ンヨート ラ井淵農村内 イ新岩畑中宮 べヒイ ( 六〇年七月号 ) S F マガジン 1975 年 5 月号 ( 第 16 巻 5 号 ) 昭和 50 年 5 月 1 日印刷発行発行所東京都 千代田区神田多町 2 の 2 郵 1 0 1 早川書房 TEL 東京 ( 254 ) 1551 ~ 8 発行人早川清 編集人長島良三印刷所誠友印刷株式会社 表紙絵角田純男 目次・扉中島立靑侃 図解版ハル・ワレメントの世界 でてくたあ 世界みすてり・とびつく・ すべーす・たいむ・あんてな・ 十 ン′ ん て み 左 の 密 ト 1 てれほーと : 世界情報・ キャロル 横田順彌 Ⅱ又千秋 スタジオぬえ 〈日本〉柴野拓美〈海外〉福島正実 ・エムシュウイラー 225 110 113 1 8 0 202 120