ミネルヴァ - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1975年8月号
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1. SFマガジン 1975年8月号

だがこれはほんの一時しのぎだ。猫を焼肉から遠ざけたというだ 「ラザルス、そのカード・ゲームで、 コンビューターはいった。 どんないかさまを使われたのですか ? お尋ねしてよろしければでけだ。子供というものはそうした解決策の裏をかくことに巧みで、 いったんそうと決心してしまえば、だれも彼女にやらせないように すが ? 」 「なんだって、ミネルヴァ、どうしてきみはそんなことを考えられすることはできない。あの子がいっ決心するか・ーー・それがこの問題 の鍵だ。そこでわれわれのさしせまった問題は、この子供たちを別 るんだい ? 」 別の・ヘッドに引き離しーーーそれから、リビイが悪い決心をしないよ 「質問は取り消します、ラザルス」 「もちろん、いかさまはやったさ ! あらゆる手を使った。あのふうに気をつけることだ。こうしてはどうだろう、パテイケイクに会 たりは一度もカ 1 ド遊びをしたことがないといったろう : : : ところうという名目で、・ほくがスカイへヴンへ連れてゆくというのは ? が・ほくのほうは、あらゆる種類のカードを、数えきれないほどのルそして・もだ。ジョウ、あの子なしでしばらくやっていけるか 場所は充分にあるー・ーリビイはパテイケイクと一緒の部屋で ールでやっていたんだ。ミネルヴァ、・ほくが最初の油井をある小僧 しいし、・はジョージとウッドロウの部屋で寝て、きっとあい っ子からせしめたのは、そいつが裏にしるしをつけたカードをゲー ムに使うという過ちを犯したからなんだ。・ほくはリータにカードをつらに行儀作法を教えてくれるだろう』 リータはロ 1 ラにをつくことについて何かいったよ、ミネルヴ ナまくは亠の 配らせたよ , ーーまったくいんちきはなしってわけだ。・こがに フォールス・カットホーハウス・カット ア。それに対して・ほくはあっさり答えたね。『ローラは子供が好き ごまかし切り、女郎屋切り、上と下のカード らゆる手を使った を取る方法と、ふたりの目の前でごまかしたんだ。ゲームに金が賭だ。あいつはきみよりひとり多く生んでいるが、結婚はきみより一 かっていたわけじゃない。同系交配は家畜のやることであって、かれ年遅いんだからね。家事を自分でやりはしない。召使たちの監督を らの愛する子供たちのやるべきことではないと説得しなければいけするだけだ。自分がしたい以上に働く必要はない。それにあいっ なかっただけだーー・そしてぼくは、それを見事にやりとげたんだ」は、きみたちがみんなで訪ねてきてくれないかといつもいってるし その気持は・ほくもまったく同じだが、この店の買い手が見つか ( 省略 ) 「『ーー・寝室はここだ、リータ。きみとジョウのね。リビイの部屋るまで、きみたちはここを離れられないだろう。だがリビイと・ そうすれば・ほくが、遺伝学についておお にはぜひ来てほしい はきみたちの部屋の隣りだ。そして・は廊下のむこうで寝る。 よその実際的知識を与えてやれる。いまいっていることを見せるた 以後どう改造するかは、これからさき生まれてくる子供の性別にか 、リビイめに・ほくが同系交配をつづけている家畜を見せてね』 かっているし、その人数と時期の選択は関係ない ミネルヴァ、・ほくが始めていたこの特別な繁殖計画は、自分の子 と一緒に赤ん坊のペッドをおくのは、あくまで一時的なものと考え なければいけない。赤ん坊から目を離さないためといった口実で、供たちに遺伝学についてのあからさまな真実を教えるためだったん だ。綿密に記録を取り、悪い結果の場合のそっとするような写真も いつまでもそんなことはしておけないだろう。 236

2. SFマガジン 1975年8月号

たりのどちらにも白髪はなかったし、そろって歯は完全だった ごとに写した一連の写真があった。最後の一枚は・ほくがかれを買い 取る直前に写したものらしかった。ふたりもそれを確認したーーー完そしてリータはまたもや妊娠していたー ューダント 「突然変異ハワ 1 ドというわけですか、ラザルス ? 」 全に成長した若者ふたりの写真だ。ひとりは貞操帯をつけている。 しところだな ! あ老人は肩をすくめた。「それは多くの質問を引き出す言葉だな ジョウはその写真を見ていった。『道化もい、 ・ : きみが充分な長さのタイム・スケールで見れば、一匹の動物が れから長い道をやってきたんだ、シスーーー船長のおかげだよ』 『そのとおりよ』彼女はうなずき、写真をじっと見つめた。『・フラ持っ何千という遺伝子のいずれもが突然変異た。だが評議会の規則 こより、ファミリ ザー、あなた気がついて ? 』 ーの家系から出たのでない人間は、四人の祖父母が それそれ少なくとも百歳まで生きたことを証明できれば、新たに発 『何を ? 』かれはそういって、もう一度写真を見た。 『アーロンならわかるわ。・フラザー、その腰布を取ってちょうだ見された ( ワードの一員として登録され得る。そしてその規則は、 の中に生きていなければ、・ほくを除外していたこ い』そういうと彼女は自分もサロンをぬぎはじめた。『そして、あ・ほくがファミリー の壁の前でわたしと一緒にポ 1 ズを取るのよ。客相手のではなくて、とだろう。それに加えて、ぼくが最初の若返り術を受けるまでに達 この記録写真のために格子の前に立ったときのポーズをね』彼女はした年齢があまりに高かった事実は、 ( ワードの繁殖実験では説明 ばくに最後の写真を手渡した。かれらはぼくの前にならんで立った。されなかった。今日では、十二番目の染色体のペアに、時計を巻く ように寿命を決定する遺伝子の複合体があることをつきとめたと主 ミネルヴァ、十四年たってもふたりは変っていなかったんだ。 リータにはすでに三人の子供があり、いまは四人目を妊娠していた張する者もいる。もしそうなら、だれが・ほくの時計を巻いたんだ ? し、ふたりはあきれるほどの労働をしてきていた : : : しかし、全裸ギルガメッシ = のは ? 突然変異は決して説明ではなく、観察され で、化粧もせす、髪をたらしている姿は、ぼくが初めてふたりを見た事実に対して与えられた名前にすぎないんだ。 おそらく、自然に生まれた長命人種のひとりが、必ずしもハワー たときとまったく変わっていなかった。ふたりは最後の記録写真と そっくりでーーー思春期の終り、地球の年齢でいえば十八から二十とドの人間とは限らずだよ、プレスドを訪れたのだろうーー・そうした 人間は名前を変え、髭を染め、永遠に放浪をつづける。かれらは歴 いった年頃だった。 それでも本来なら、ふたりは三十をとうに越しているはずだっ史の中を生きつづけてきたーーわれわれ以前からだ。だがミネルヴ た。そのブレスドの記録が信頼できるとすれば、地球の年齢で三十ア、きみは・フレスドで奴隷になっていた・ほくの生涯から、ひとつの 変な、かんばしからぬ出来事を思い出すはすだーー」 五になっていたはずだ。 ミネルヴァ、・ほくにはつけ加えるべきことが、もうひとつだけあ ( 省略 ) 「ーーーそこで、・ほくがもっとも真剣になって推測してみると、リー る。・ほくが最後に会ったとき、かれらは地球年で六十を過ぎてい グレイト・グレイト・グランドチルドレン た。・フレスドからの記録を受け入れるなら、だいたい六十三だ。ふタとジョウは・ほく自身の玄孫ということなんだ」 クラウト 239

3. SFマガジン 1975年8月号

列することを要求したプラスチック製の頭が、町内会の手で本物のとだ が、その同じ文化が、自分の兄弟の未亡人との結婚を禁じ かわりに立てられていた。しかし・ほくは、。フライヴァシーの話をしている。前者の結びつき以上の危険がないにもかかわらずだよ。ぼ ていたんだったな。 くが若かったころには、ひとつの州の法律が、目に見えない境界線 メゾン・ロングのためにその物件を選んだとき、ぼくが必須の条を越えるとたった五十フィート離れただけで、完全に正反対になっ 件としたのは、成長しつつある家族のためのスペースがあることだている、ということもあったんだ。また、時と所が変ると、その った。それだけだ。計画を立てたその夜の時点でさえ、かれらにはいずれの結合も義務とする文化があり、逆に禁止する文化もあっ すでに育ちざかりの子供が三人と、腹の中にもうひとりこれから生た。近親相姦に対する法律は無数にあり、定義もきりがなく、そし まれるのがいたからだ。時間割を再調整することで、リータとジョ て理論というものはまずあったためしがないんだ。ミネルヴァ、・ほ 、ハワ 1 ド・ファミリーこそ、法律的な考えに縛 ウは、それそれおたがいからのプライヴァシーをも得ることとなっくの思い出す限り た。ふたりで抱きあい愛をかわすことは幸福なことだが、それでもられることなく近親相姦を遺伝的危険の面からのみ定義した、歴史 やはり本当に疲れたとぎには、自分自身のべッドが欲しくなること的最初のグル 1 プなんだ」 があるーー新たな生活はそれを可能にしただけでなく、必要なこと ミネルヴァは同意した。「それはわたしのところにある記録とも としたんだ。毎日一定時間、忙しい労働時間のあいだにだ。 一致しています。ハワードの遺伝学者なら、共通の先祖を持たない そして・ほくは同時に、ふたりに子供たちからのプライヴァシーをことが明らかな者どうしの結婚には反対しても、兄妹どうしの結婚 も与えるつもりだった リータは正確な知識を持たず、ジョウは には異議をはさまないでしよう。どの場合にも、遺伝子チャートの 考えたこともないに違いない、もうひとつの問題に対処するため分析が判断の基準となりますわ」 だ。ミネルヴてきみは″近親相姦″を定義できるかい ? 」 「そう、そのとおりだ。いまは遺伝の話はやめて、タ・フーのことを コン。ヒューターは答えた。「近親相姦とは法律用語であり、生物話そう。近親相姦に対するタ・フーは、何であってもいいんだが、そ 学の用語ではありません。それは、法律によって結婚を禁じられてのほとんどが兄弟と姉妹、親と子供の場合だな。リータとジョウの いる人間どうしの性的結合を意味します。行為それ自体が禁じられ例は特別で、社会的な規範によれば姉弟だが、遺伝学的に見ればま ているのです。そのような結びつきが結果として子供を作るかどうったく無関係でーー少なくとも、ふたりの他人以上の関係はないん かは関係ありません。そうした禁制は多くの文化のあいだで大きく 異なっており、たいてい、常にではなく、血縁関係の濃さがどの程そこへ、第二世代の問題がおこったわけだ。ランドフォールに 度かということをもとにしています」 は、きようだいどうしの結びつきに対するタ・フーがあったから、・ほ 3 「きみは″常にではなく″というのを、やけに強調しているな。′ 従くはリータとジョウに強く念をおして、おたがいに姉や弟と考えて 2 とこ いることを、だれにも決して知られないようにさせた。 兄妹どうしの結婚を認めている文化があるーー遺伝的には危険なこ

4. SFマガジン 1975年8月号

なところなんだよ、ジョウ。・ほくはきみたちが生まれるよりずっと よく聞いてくれよーー店が動きだしたら、きみたちもあくせく 働くのはやめなければいけないんだそ。べッドですごす時間をもつ前に学んだんだ。無料の性交は常にもっとも高価につくもんだと と長くするんだ。べッドの外で楽しむ時間もふやすんた。昼食の時ね。それより悪いのは、われわれ三人はいまや事業の共同経営者だ 間に働いて稼いだりもしない。これでみんなの意見は一致としてい からねーーーもしぼくがきみたちの解決方法を受け入れたら、その結 果は六通りほど出てくるだろうーーーそしてそのどれもが、メゾン・ ロング会社を始められなくさせることになるんだ」 ジョウはうなずいた。「そう思います。シス ? 」 「ええ。ヴァルハラで見たあれほどすてきなお店ほどの高級料理店 ( 省略 ) を、ニュ そうなるだろうとわかっていたとおりだったよ、ミネルヴ ・カナヴェラルでやっていけるかどうか、すこし心配で すけれどーー・でも、わたしたちゃってみますわ ! まだわたしたちて非投機的投資でこれほど儲けたことはない。だれもがわれわれ だが、ジョウの料理も、リータの経営手腕 のお給料が初めから高すぎるって思います。でも、最初の四半期のを真似ようとした 収支決算を見てからその問題はご相談させていただくことにしまも、真似ることはできなかった。ぼくは一財産作ったんだ ! す。ただひとつだけ、船長・ーー」 ある主題にする変奏曲Ⅸ 「・ほくの名前はアーロンだ」 「船長ってお呼びするほうが、あの″汚ない言葉″より安全ですも 夜明け前の会話 の。わたし、何もかも賛成ですーー・必ずうまくやってみせますわ あなたのおっしやるとおりに。でもこれで、わたしがあなたの 「ラザルス、眠くありませんか ? 」 コン。ヒューターはいった。 ペッドから引きずり出されて堅い鋼鉄のデッキにお尻をぶつけた夜「いちいちうるさくいわんでくれ。ぼくはこれまで眠られない夜を のことを忘れたとお思いなら、それは大違いでしてよ ! わたしは何千回となく過してきたが、それでもこうやって生きているんだ。 忘れていないんですからね ! ひと晩じゅうつきあってくれる話相手がいれば、眠られないからと のど ・ほくは溜息をついたよ、ミネルヴァ。それから彼女の良人にいっ いって喉をかっ切ったりはしないさ。きみはいい話相手だよ、ミネ たんだ。「ジョウ、きみなら彼女をどう扱うね ? 」 ルヴァ」 かれは肩をすくめてにやりと笑った。「・ほくはどうもしません、 「ありがとうございます、ラザルス」 好きなようにさせるだけです。それに・ほくも、彼女のいうことは正「単純明快な真実さ、きみ。もしぼくが眠りこんだらーー・結構なこ しいと思いますね。もし・ほくがあなただったら、彼女をベッドへ連とだ。もし眠らなければ、イシュタルに報告する必要はないわけ ナいや、こんなことをいってみてもむだだな。彼女は・ほくについ れていって忘れさせますよ」 2 ・ほくは首をふった。「だが、ぼくはきみじゃあない。そこが大切てのグラフだの表だのを作っているんだろう、違うかい ? 」 ティル

5. SFマガジン 1975年8月号

コンビューターはくすくす笑った。「外交的手腕ですって ? 」彼せんが、あの子たちの幸福を邪魔するつもりはありません』」 「彼女は子供たちを愛していたのですね」と、ミネルヴァはい 0 女はそれをくりかえした。 「きみならどうやったね、ミネルヴァ ? かれらには質問の意味がた。 「そう、愛していたよ、きみ。愛という言葉の正確な定義において まるでわからないようだった。・ほくがはっきりいってやると、リー だ。リータは自分自身のことより、子供たちのためを、子供たちの タは憤然とした。子供たちを別々にするですって ? 赤ちゃんのと きから一緒に寝てるっていうのに ? それに、もう部屋はないんで幸せを、まず念頭においていた。そこで・ほくは説明しようと努力し なにゆえ、きようだいどうしの結びつきを禁ずるタ・フーが迷 す。それともわたしがリビイと寝て、・ << はジョウと寝ろとでも たとえ、かれらの場合に安全だ おっしゃいますの ? そういうことでしたら、どうそかまわないで信ではなく、本当に危険なのか ったとはいえ、・こ。 くださいな。 なぜというのが難しいところたった。あの複雑な遺伝学を始めた ミネルヴァ、ほとんどの人間は、どのような科学についても何ひ のが年老いてからで、しかも説明する相手が初歩の生物学さえ知ら とっ知ろうとせず、遺伝学となるとそのリストの中でも最下位だ。 ないというのはたな、十以上の数をかそえるためには靴をぬがなけ グレゴール・メンデルは、すでに十二世紀前に死んでいた。だが、 それでも老婆たちの伝えるあらゆる迷信が民衆に信じられていたんればいけない人間に、多次元行列式を説明しようとするのに等しい いまでもそれは変っていないよ。 ジョウなら素直に・ほくの意見を受け入れたろうだがリータは常 そこで・ほくは説明しようとした。リータとジョウは馬鹿なのでは に、理由を知らなければ気がすまないというところがあったーーーさ なく、ただ無知なだけだとわかっていたからだ。彼女は・ほくをさえ 『ええ、ええ、アーロン、よくわかります。わたしもなければ、愛らしくも強情な微笑を浮かべてぼくに同意し、それ ぎっていった。 は、リビイがジェイ・アーロンと結婚したがる可能性について考えから自分の思うとおりにことを運ぶだろう。リータはふつうに賢い ましたーーー・きっとそうなると思いますわーーーそしてそれがここでといわれる連中より頭がよかったが、民主主義の誤謬におちいって 、よずだ、と考え いた。自分の意見はだれの意見とも同じぐらいいし。 は、おかしな目で見られることも知っています。でも、迷信のせい いつぼう、ジョウは貴族主義の誤謬におちいってい であの子たちの幸福をこわすのは馬鹿げていませんこと ? ですかていたのだ ら、もしそういうことになったら、わたしはあの子たちがコロンポた。権威のある意見というものの存在を受け入れていたのだ。・ほく すれもつますきの はどちらの誤謬がより感傷的なのか知らない。い へ移るのがいちばんいいと思ってるんですーーーでなければ、少なく もととなり得るのだ。しかし、・ほくの性質はこの点でリ 1 タと同し ともキングストンまで。それから違った姓を使って結婚すればいし だったから、彼女を説得しなければいけないとわかった。 んです。だれにもこれ以上のやりかたは考えられないはずです。わ ミネルヴァ、きみなら、この世で二番目に複雑な問題に対する一 たしたち、ふたりに遠くへ行ってほしいと思ってるわけじゃありま

6. SFマガジン 1975年8月号

しる ? いや、・ほくは見にいくつもりなどないよ。きみたちは自分ルに住むそういう代物は、有難いことにこのセカンダスにはいな、 がね。な。せ 、。・ほくに頼ることはやめるんだ。それに で決心しなければいけなし とにかく・ほくは、レストラン経営のことなど何も知らないんだから ( 省略 ) へ七 臍の緒を断ち切ったんだ、ミネルヴァ。・ほくと取引きしてい 、。・まくはかれらを欺しも ふたっ嘘があったよ、ミネルヴァ。・ほくは五つの惑星でレストラることに、かれらが気づいたとは思わなしを ンを経営していたしーーそれに加えて、その場所を調べに行くつもせず、助けもしなかった。その割賦返済譲渡契約はたんに、・ほくがそ いや、三つ の・ほろ家に対して支払わなければいけなかった価格プラス、その価 りはないといった理由についての暗黙の嘘だ。二つ オ・フション の理由があったんだ。まず、選択売買権を取る前に、・ほくはそこへ格まで値切るのに費やした時間プラス、法律に基づいた手数料と条 行って隅々まで調べておいた。つぎに、あの若い料理人が・ほくを思件付発効証書の料金および代理人への謝礼プラス、銀行が・ほくに支 い出すに違いないこと。第三に、代理人を通じてとはいえぼくはか払責任をおわせるであろう利息の額だーー、少なくとも、かれらにと ・ほ ~ 、は損 っては二段階安かったわけだ。だが慈善などではない れらにそれを売りつけている最中なのたから、そこを保証したり、 買うのをうながしたりすることはできないわけだ。ミネルヴァ、・ほも得もしなかった。自分の時間からたった一日分を請求しただけ くが馬を売るときには、その馬の四隅に脚がついていることを保証だ。 リータは、蠅が多い季節の雄牛の尻より締まり屋だったことがわ したりはしない。買い手は自分でそれを数えなければいけないん かった。最初のひと月でさえ、彼女は収支をとんとんで上げたのし レストラン経営について何も知らないといっておきながら、・ほくやあないだろうか。掃除と改装のあいだ店を閉めていたにもかかわ らずだ。たしかに彼女は、抵当に入っている最初の月の支払いをきち リータはノートを取りかけ、つし はかれらにその講義をはじめた。 でレコーダーを使ってもいいかと尋ねた。そこで・ほくは詳しく話しんとしたし、その後もずっときちんとしたものだった。一度ぐらい はじめた。なぜ、材料費の百。 ( ーセントの総利益をあげても、総支は払わなかったことがあるじゃないかって ? いいかね、ふたりは 割五年のローンを三年で払い終えたんだよ。 出を引くととんとんというようなことになってはいけないか 賦返済、減価償却、税金、保険、かれらが使用人であるとしての賃それほど驚くことじゃあないさ。ああ、長患いでもしたら、かれ 金、その他だ。農夫の市場はどこにあり、かれらは毎朝どれほど早らは破減していたかもしれない。だがかれらは健康で若かったか 起きしなければいけないか。なぜジョウは肉を切ることを覚えなけら、すっかり自由できれいな身になるまで一週間に七日働いた。ジ ョウが料理を作り、リータはレジを預って客に愛想をふりまき、カ ればいけないか。切ってあるのを買うのではなくだーーそして、ど をし力にカウンターの手伝いをした。そして・は母親の腕にぶらさげた・ハ こへ行けばその方法を教えてもらえるか。長いメニューよ、、 スケットに入れられ、かれが成長してよちょち歩きを始めるまでそ れらを破減させ得るか。鼠や油虫の類をどうするか。ランドフォー 8 2

7. SFマガジン 1975年8月号

もだめだ。この制度は、教会だの国家だのに管理されるはるか以前 ある主題による変奏曲Ⅶ から存在していたんだ。それが役に立つから、それだけのことた。 それにまつわるすべての欠点にもかかわらず、唯一の普遍的テスト ヴァルハラからランドフォールへ 生存ということーーーに照らしてみた場合、結婚は、ここ千年以 上のあいだ馬鹿な連中がそれに換えようと努めてきた無数の発明品 が、かれらのために・ほくのできる最善の策だったんだよ、ミ ネルヴァ。ときどきよく、どこかの馬鹿が結婚というものをなくしより、はるかに役立つのだ。 ・ほくが話しているのは一夫一婦制だけのことではない。あらゆる てしまおうとする。そういう企ての結果は、重力の法則を廃止した り、円局率をきっちり三・〇にしたり、あるいは祈りの文句で山を形態の結婚ーー一夫一婦制、一妻多夫制、一夫多妻制、いろいろと 動かしたりするのと同じことだ。結婚は、坊主どもが考えだして人変化をつけているにしろ複数あるいは延長した結婚のことについて 類に与えたというものじゃあない。結婚は目と同じように人類の進いっているんだ。″結婚。には、無数の習慣、規則、取決めがあ 化にともなう道具のひとつであり、目がそれそれの個人に役立つのる。だが、その取決めがもし、このもししかないのだが、子供を養 、大人にはそれそれが必要とするものを与えあうということであ と同じように結婚は種族にとって有用なものなのだ。 たしかに結婚とは、子供たちを養うため、母親が子供たちを産れば、それだけでそれは″結婚″だ。人類にとって、結婚の数ある み、育てるあいだ、その面倒を見るための、経済的契約だーーーしか欠点に対する唯一の唯一の歓迎すべぎ代償は、男と女がたがいに与 えあえることの中にある。 し、はるかにそれ以上のものなんだ。結婚とは、この動物、ホモ・ ・ほくは″性愛″のことをいっているのじゃあないよ、ミネルヴ サビエンスが、そういったなくてはならぬ機能を果たし、そうして いるあいだが幸福であるようにとまったく無意識のうちにーー発達ア。セックスは罠に餌をつけるが、セックスは結婚じゃあないし、 結婚をつづける理由でさえないんだ。牛乳が安いときになぜ雌牛を させてきた手段なんだよ。 なぜ蜜蜂は、女王、雄、働き手と分かれていながら、なおかつひ買うんだい ? とつの大きな家族として生きているのだろう ? なぜなら、かれら伴侶であること、協力しあう仲間であること、たがいに励ましあ 、ともに笑いともに悲しみ、欠点をも受け入れる信頼、ふれあう にとってはそれがうまくいくからだ。ほとんどうなずきもしないぐ さかな らいのつきあいで、ママ魚とパパ魚はなぜうまくやれるんだろう相手、きみの手をしつかりと握っていてくれる者ーーーそういうもの ころも な ? なぜなら、進化が与えた盲目の力が、かれらにはそれでうまが″結婚″であり、セックスはお菓子をくるんでいる衣にすぎな 。ああ、その衣は実にロあたりのいいものかもしれないがーー・・・そ くゆくとしているからだ。なぜ″結婚″という制度がーーどうよう れはお菓子じゃない。結婚がそうしたロあたりのいい衣を失い な名前で呼ばれようともだーーー宇宙いたるところの人類にあまねく 普及しているのだろう ? 神学者に尋ねてもだめ、法律家に尋ねてたとえば、事故によってだ , ーーそれでも、いつまでもいつまでもっ はんりよ 円 6

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話しだした。 かってわたしたちに自由というものがなく : : : 誇りを持っていなか 「アーロン、わたしたちのいちばん古くて最愛のお友達、あの小切ったことをー 手はおかしくありません。お返しのできない借りというものがある ・ほくはいった。「リータ、おれを泣かせるつもりか」 ことを、あなたは何年も前、わたしに教えてくださいました。で彼女はいった。「いえ、 いえ ! 船長は決してお泣きになりませ も、借りのうちで金銭に換算できるぶんはお返しできます。それをんわ」 わたしたちはしているんです、できるだけ正確に計算して」 ・ほくはいった。「よく知っているくせに、悪い子だな。・ほくだっ ・ほくはいった。「馬鹿なことをいうもんじゃないそ、この脳たりて泣くさ。自分の船室でね ドアに鍵をかけてだ。これを受け取 んの小娘が。おれはおまえたち餓鬼どもに、一ペ = ーだ 0 て貸したらなければ、きみたちが自由な気持になれないというのなら、・ほく 覚えはあるものか ! 」 , ーーとまあ、そういうような意味のことをはそうしよう。だがもとの額だけで、利子はいらん。友達からは受 ね。 け取れんよ」 マスダ 彼女は答えたよ。「アーロン、わたしたちの愛するご主人さま「わたしたちはお友達以上です、船長。そして、それ以下のもので すわ。借金に利子はっきものだって , ーーあなたは教えてくださいま その " ご主人さま。という言葉に、ぼくは堪忍袋の緒を切らしたした。でもわたしは、無知な奴隷でしかなか「たとき、新しく解放 んだ、ミネルヴァ。ぼくは六匹の先頭にいる驢馬の皮をも焼き焦がされたばかりのときに、わたしはそのことを心の中で知 0 ていまし してしまいそうな言葉を使ったんだ。 た。ジョウもそのことを知っていました。わたしは利子を払おうと 彼女はぼくが罵るにまかせ、やがて静かな声でい 0 た。「わたししました、船長。でもあなたはわたしを抱こうとはなさいませんで たちのご主人さまですわ。このお金を支払わせてくださることで、 した」 キャプテン わたしたちを解放してくださるまでは : : : 船長」 ・ほくは話題を変えた。「もしぼくが断わったら、代りに金を受け ミネルヴァ、ぼくはしぶしぶ口をつぐんだよ。 取ることになっているこのけしからん団体は何だね ? 」 彼女はつづけてい 0 た。「でも、そうな 0 てからでも、わたしの彼女はロごも 0 た。「わたしたち、それは内緒にしておくつもり 胸の中では、あなたはわたしたちのご主人さまのままですわ、船だ 0 たんです、アーロン。でも、宇宙飛行士の遺児に贈ろうと思い 長。そして、ジョウの胸の中でもそうだって、わたしにはわかってました。たぶん、 ハリマン記念保護院に」 います。たとえ、あなたが教えてくださったとおり、わたしたちが 「きみたちはふたりとも頭がおかしいんじゃないのか。あの財団は 自由で、誇りを持って生きていてもです。たとえー・ー何もかもあな どんどんふくれあがっている、・ほくは知ってるんだ。なあ、・ほくが たのおかげですわーーわたしたちの子供が、これからも生まれてく明日、町〈行くとしたら、きみたちはあの食堂を一日だけし る子供たちが、わたしたちの過去を知ることは永久になくてもです。められるか ? それとも、半日か ? 」 2 に

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妊処置を受けていたのだから、遊び以外の何物でもなかったこと、上、そこのポスだったんだ。 もしロジャー ・スパ 1 リングがその土地を横領しようとなどしな 3 それこ、。、 冫 / テイケイクが上になっていたんたということを。 ミネルヴァ、たとえだれが上になっていようと、ばくが子供たちければ、ばくはかれとなんらかの妥協をしていたかもしれない。現 をなぐったりはしなかったろうよ。理性的にはローラのいうとおり実にはどうかというと、・ほくはパテイケイクに所有権の半分をゆず り、あと半分は義理の息子である・に抵当の形で売った。そし だとわかっていたし、父親に娘を独占したがる傾向のあることは認 めなければいけない。・ほくが嬉しかったのは、ローラがふたりの子てその手形を銀行に割引いて売り、その半分の所有権をロジャーと 供たちから完全な信頼を得ていたために、かれらは現場をおさえらローラにくれてやった場合に買ったであろうものよりずっといい宇 れないように注意することなどほとんどしなかったし、偶然見つけ宙船を買ったよ。リビイとジョージのふたりとも、・ほくは同じ取引き られたときにもあわてたりしなかったことだ。おそらく・はあをした。メゾン・ロングの持株を、半分は贈与し、半分は売ったんだ そしてリビイは名前をエステル・エリザベス・シェフィールド わてたろうが、パテイケイクはこういっただけだった。『マア、ノ ・ロングと変えた。そこには・ほくとのつながりを示すものがあった ックしてくれなきやこまるわ』とね」 それはぼくと彼女の両親を喜ばせた。それはうまくいったよ。 ( 省略 ) 「ーー。そこでわれわれは息子を交換したんだ。—・は農場の生活ローラはぼくが出発するとき来てくれさえし、別れのキスをした」 が気に入り、ずっと・ほくの家に留まった。ジョージのほうはこの変「ラザルス、わたしにはひとつわからないことがあります。あなた ハワードの人間と短命人種との結婚は好まないといわれまし な都会趣味とやらにとりつかれているとわかったんで、ジョウはか た。それなのに、ふたりのお子さんをファミリー以外の者と結婚さ れを傭い、コックに仕立てあげた。ジョージはエリザベスと寝てい いつごろからそんなことを考え、結婚しせたのですね」 リビイのことだ 「ああ、訂正た、ミネルヴァ。だれも子供たちを結婚させたりしな ようと決心したのか、ぼくは忘れてしまったな。合同結婚式がおこ いよ。かれらは勝手に結婚するんだ。時と方法と相手を自分で選ん なわれ、四人の若者は親密な交際をつづけたよ。 そして・の決心がぼくの問題を解決してくれたんだ。それかでね」 ら以後のスカイへヴンをどうするかをだ。ローラが・ほくと別れる決「訂正は記録されました、ラザルス」 心をしたときまでに、われわれのあいだに生まれた息子は、ひとり「。ほくがリビイと・のことにロ出しした夜のことに話をもどそ う。その夜・ほくはリータとジョウに、あの奴隷仲買人がかれらの血 残らず冒険を求めて宇宙へ飛び出してしまった。ジョ 1 ジが惑星に 残っていたただひとりの息子で、娘たちは結婚していたが相手はひ統の証明としてぼくによこしたものを、すべて与えたーー受取りま とりも農夫じゃなかった。ところが・は・ほくの下で監督をやつでもだ , ーー・そして、始末してしまうか、それとも鍵のかけられると ており、・ほくがスカイ〈ヴンにいた最後の十年間は、かれが事実ころへ隠しておくかだと指示した。その中に、かれらの成長を一年

10. SFマガジン 1975年8月号

必要とする。彼女は・ほくが何者であるかを知っていた、ーー最長老だけ、こちらもむこうに仕えなければいけないところなんだ ) 「なんとか時間を都合して会うことにするよ。少なくとも、きみの ということを。われわれの結婚と、のちにはわれわれの子供たちのこ AJ カファミリー の記録に登録されることによってだ。彼女の祖母とプレゼントをリビイに渡せるぐらいの時間はね」 結婚した場合と同じだ。だが彼女は・ほくを自分より千歳も年上の人「それにわたしからのキスをみんなにしてあげてね。ほかの子供た 間とは扱わず、過去の生活についてとやかく尋ねてぼくを悩ませるちにも何かことづけるわ。そのほうがいいでしよ。エステルに伝え ようなことは決してしなかった・・ー「・・ぼくが話したいときに耳を傾けるのを忘れないで、わたしがまた妊娠してることを。それにあの人 もそうなのかどうか聞いて。わたしに教えるのを忘れないで。何時 るたけだった。 ・スに出かけるの、あなた : : : あなたのシャツを調べなくちゃあ」 例の訴訟についても彼女を非難するつもりはない。 ハーリング、どこかの雌豚から生まれたようなあの欲張り野郎がで ローラは、・ほくが何世紀の経験をつもうとも、小旅行用のカ・ハン っちあげたことなんだ。 の荷造りができないことをよく知っていた。おのれの望むがままに ローラはいった。「あなたさえよければ、わたし、家にいるわ。世界を見る彼女の能力は、四十年にわたってぼくの気難しいやりか ドレスにお金を使うのは、もう一度やせてからにしたいの。食事のたに耐えることを可能とした。ぼくは真実、彼女に感謝している よ。愛かって ? そのとおりさ、ミネルヴァ。彼女は常に・ほくの幸 ことなら、うちのトーマスにかなうコックはニュ ・カナヴェラル にはいないわ。そりゃあ、エステルズ・キッチンならたぶん同じぐせに気をつけ、ぼくは彼女の幸せに気をつけた。そしてわれわれは らいおいしいものを食べられるでしようけど、でもあそこは軽食堂一緒にいることを楽しんだ。でも、腹が痛くなるほどの熱烈な愛で で、レストランじゃないわ。こんどもあの人たちにお会いになるはなかったんだよ。 あくる日、・ほくはジャンプ。ハギーでニュー・カナヴェラルにむか エステルとジョウのことよ」 「たぶんね」 ( 省略 ) 「その暇を作ってね、あなた。いい人たちですもの。それに、わた メゾン・ロングの計画をたてた。リータは・ほくを驚かすつも しの名づけ子にいろいろ玩具を持っていってほしいのよ。アーロ ン、町へ行ったときにすてきなレストランへ連れていきたいとお思りだったんだ。ぼくが感傷的な人間だということを彼女は知ってい いなら、あなた、ジョウにそういう店を開くように励ますべきだるんで、舞台装置を整えたんだな。・ほくが着いたとき、シャッター は早々と下りていてーー年上の子供たちふたりはひと晩よそに預け わ。ジョウならトーマスに負けない腕を持っているもの」 ( トーマスより上さ、と・ほくは胸の中でいった・ーー・それにジョウなられ、赤ん坊のローラは眠っていた。ジョウは・ほくを入れると、裏 ら、うるさい注文にも嫌な顔ひとっしないはすだ。ミネルヴァ、使へ行ってくれといった。夕食をレンジにかけてあるので、すぐ行く からと。そこで・ほくは裏にあるかれらの住まいへ行き、リータを見 用人の厄介なところは、むこうが仕えてくれるのとまったく同じだ 2 に