列することを要求したプラスチック製の頭が、町内会の手で本物のとだ が、その同じ文化が、自分の兄弟の未亡人との結婚を禁じ かわりに立てられていた。しかし・ほくは、。フライヴァシーの話をしている。前者の結びつき以上の危険がないにもかかわらずだよ。ぼ ていたんだったな。 くが若かったころには、ひとつの州の法律が、目に見えない境界線 メゾン・ロングのためにその物件を選んだとき、ぼくが必須の条を越えるとたった五十フィート離れただけで、完全に正反対になっ 件としたのは、成長しつつある家族のためのスペースがあることだている、ということもあったんだ。また、時と所が変ると、その った。それだけだ。計画を立てたその夜の時点でさえ、かれらにはいずれの結合も義務とする文化があり、逆に禁止する文化もあっ すでに育ちざかりの子供が三人と、腹の中にもうひとりこれから生た。近親相姦に対する法律は無数にあり、定義もきりがなく、そし まれるのがいたからだ。時間割を再調整することで、リータとジョ て理論というものはまずあったためしがないんだ。ミネルヴァ、・ほ 、ハワ 1 ド・ファミリーこそ、法律的な考えに縛 ウは、それそれおたがいからのプライヴァシーをも得ることとなっくの思い出す限り た。ふたりで抱きあい愛をかわすことは幸福なことだが、それでもられることなく近親相姦を遺伝的危険の面からのみ定義した、歴史 やはり本当に疲れたとぎには、自分自身のべッドが欲しくなること的最初のグル 1 プなんだ」 があるーー新たな生活はそれを可能にしただけでなく、必要なこと ミネルヴァは同意した。「それはわたしのところにある記録とも としたんだ。毎日一定時間、忙しい労働時間のあいだにだ。 一致しています。ハワードの遺伝学者なら、共通の先祖を持たない そして・ほくは同時に、ふたりに子供たちからのプライヴァシーをことが明らかな者どうしの結婚には反対しても、兄妹どうしの結婚 も与えるつもりだった リータは正確な知識を持たず、ジョウは には異議をはさまないでしよう。どの場合にも、遺伝子チャートの 考えたこともないに違いない、もうひとつの問題に対処するため分析が判断の基準となりますわ」 だ。ミネルヴてきみは″近親相姦″を定義できるかい ? 」 「そう、そのとおりだ。いまは遺伝の話はやめて、タ・フーのことを コン。ヒューターは答えた。「近親相姦とは法律用語であり、生物話そう。近親相姦に対するタ・フーは、何であってもいいんだが、そ 学の用語ではありません。それは、法律によって結婚を禁じられてのほとんどが兄弟と姉妹、親と子供の場合だな。リータとジョウの いる人間どうしの性的結合を意味します。行為それ自体が禁じられ例は特別で、社会的な規範によれば姉弟だが、遺伝学的に見ればま ているのです。そのような結びつきが結果として子供を作るかどうったく無関係でーー少なくとも、ふたりの他人以上の関係はないん かは関係ありません。そうした禁制は多くの文化のあいだで大きく 異なっており、たいてい、常にではなく、血縁関係の濃さがどの程そこへ、第二世代の問題がおこったわけだ。ランドフォールに 度かということをもとにしています」 は、きようだいどうしの結びつきに対するタ・フーがあったから、・ほ 3 「きみは″常にではなく″というのを、やけに強調しているな。′ 従くはリータとジョウに強く念をおして、おたがいに姉や弟と考えて 2 とこ いることを、だれにも決して知られないようにさせた。 兄妹どうしの結婚を認めている文化があるーー遺伝的には危険なこ
ことを確かめてから、彼女の腹を見つめた。 大きいそ ! それがビークに達すると、・ほくは重力を四分の リータは悲鳴をあ から二 ch へ、ほとんど一瞬のうちに上げた げ、赤ん坊が西瓜の種のように・ほくの両手へ飛び出してきた。 足を引いて重力をもとにもどすと同時に、・ほくはちび助をすばや く調べた。五体満足な男の子だ。赤くて、しわくちやで、醜くくて ・ほくはそいつの尻をびしやりとたたき、赤ん坊は産ぶ声を上け ある主題による変奏曲Ⅷ ランドフォール 三三〇七年まで、家系図はこの方式に改められなかったのだ。この人名誤 記は、この回想録の年代を決める手段を与えてくれたわけだ : : : これが なければ、他の記録の示すところにより、最長老がーー疑いもなく ーラ・フート " へドリックと結婚した日からほ・ほ一世紀半たたなけれ ば、惑星ヴァルハラにはトナカイが輸人されていなかったことになる。 だがさらに興味深いのは、出産を助けるためその年に疑似重力を使っ たという、最長老の主張だ。かれこそ、この ( 現在では標準のものとな っている ) 方法を使った最初の産科医なのだろうか ? かれはどこにも そう主張しておらず、この技術はふつう、セカンダス・ハワード病院の ヴァージニウス・プリッグス博士のものと考えられており、それもずつ とあとのことなのだ。 ・・四十五世 われわれは似合いの夫婦だったよ、ミネルヴァ。ローラは二十歳 だったが、・ほくは若返り処置を受けたばかりのところで、外見を三 ( 省略 ) ・ほくが結婚するつもりでいた娘は、再婚しており、子供がで十代初めに保っていた。われわれは数人の子供を作り・ーー九人だっ たと思うーーーそれから四十年ほどすると彼女は・ほくに飽きてきて、 きていた。驚くことはない。・ほくは標準暦で二年間ランドフォール ・スパーリングと結婚したい を留守にしたんだ。悲劇などじゃあない。なぜならぼくらは百年前ぼくの五番目 / 七番目の従弟ロジャー ・ほくはそのことを嘆いたりはしなかった。なぜな に一度結婚していたからだ。昔馴染みってわけさ。そこで・ほくは彼といいだした 女と、彼女の新しい良人と、三人で話しあったすえ、彼女の孫のひら・ほく自身、田舎紳士の暮らしをつづけていることにいらいらしは とりで、・ほくの血を引いていない娘と結婚した。どちらの娘も ( ワじめていたからだ。とにかく、女が別れたいといい出したら、好き にさせることだ。・ほくはかれらの結婚式に立ち会ってやった。 ト・ファミリー の者だったことはいうまでもないが、そのとき・ほ くが結婚したローラは、フート家の女性だった。 ーディ、二〇九九ー一三五 * 最長老の子孫ででもある ( エドマンド・ 九を経て ) が、最長老はそれに気づいていなかったかもしれない。 * 訂正【へドリック家である。このローラという女性 ( 終りに署名した ・・四十五世 者の先祖のひとりである ) は、古い父系制の伝統のもとで″フート 5 姓を名乗っていたーーこれは古い記録における混乱の原因になってい ロジャーは、ばくの農場が共有財産でなかったことを知って仰天 R ーの一員であることを示すための方法として、 る。われわれがファミリ いまではより論理的な母系制度が常に使われている。だがグレゴリオ暦した。おそらく、ローラの署名した婚姻財産設定のままの形に・ほく
もだめだ。この制度は、教会だの国家だのに管理されるはるか以前 ある主題による変奏曲Ⅶ から存在していたんだ。それが役に立つから、それだけのことた。 それにまつわるすべての欠点にもかかわらず、唯一の普遍的テスト ヴァルハラからランドフォールへ 生存ということーーーに照らしてみた場合、結婚は、ここ千年以 上のあいだ馬鹿な連中がそれに換えようと努めてきた無数の発明品 が、かれらのために・ほくのできる最善の策だったんだよ、ミ ネルヴァ。ときどきよく、どこかの馬鹿が結婚というものをなくしより、はるかに役立つのだ。 ・ほくが話しているのは一夫一婦制だけのことではない。あらゆる てしまおうとする。そういう企ての結果は、重力の法則を廃止した り、円局率をきっちり三・〇にしたり、あるいは祈りの文句で山を形態の結婚ーー一夫一婦制、一妻多夫制、一夫多妻制、いろいろと 動かしたりするのと同じことだ。結婚は、坊主どもが考えだして人変化をつけているにしろ複数あるいは延長した結婚のことについて 類に与えたというものじゃあない。結婚は目と同じように人類の進いっているんだ。″結婚。には、無数の習慣、規則、取決めがあ 化にともなう道具のひとつであり、目がそれそれの個人に役立つのる。だが、その取決めがもし、このもししかないのだが、子供を養 、大人にはそれそれが必要とするものを与えあうということであ と同じように結婚は種族にとって有用なものなのだ。 たしかに結婚とは、子供たちを養うため、母親が子供たちを産れば、それだけでそれは″結婚″だ。人類にとって、結婚の数ある み、育てるあいだ、その面倒を見るための、経済的契約だーーーしか欠点に対する唯一の唯一の歓迎すべぎ代償は、男と女がたがいに与 えあえることの中にある。 し、はるかにそれ以上のものなんだ。結婚とは、この動物、ホモ・ ・ほくは″性愛″のことをいっているのじゃあないよ、ミネルヴ サビエンスが、そういったなくてはならぬ機能を果たし、そうして いるあいだが幸福であるようにとまったく無意識のうちにーー発達ア。セックスは罠に餌をつけるが、セックスは結婚じゃあないし、 結婚をつづける理由でさえないんだ。牛乳が安いときになぜ雌牛を させてきた手段なんだよ。 なぜ蜜蜂は、女王、雄、働き手と分かれていながら、なおかつひ買うんだい ? とつの大きな家族として生きているのだろう ? なぜなら、かれら伴侶であること、協力しあう仲間であること、たがいに励ましあ 、ともに笑いともに悲しみ、欠点をも受け入れる信頼、ふれあう にとってはそれがうまくいくからだ。ほとんどうなずきもしないぐ さかな らいのつきあいで、ママ魚とパパ魚はなぜうまくやれるんだろう相手、きみの手をしつかりと握っていてくれる者ーーーそういうもの ころも な ? なぜなら、進化が与えた盲目の力が、かれらにはそれでうまが″結婚″であり、セックスはお菓子をくるんでいる衣にすぎな 。ああ、その衣は実にロあたりのいいものかもしれないがーー・・・そ くゆくとしているからだ。なぜ″結婚″という制度がーーどうよう れはお菓子じゃない。結婚がそうしたロあたりのいい衣を失い な名前で呼ばれようともだーーー宇宙いたるところの人類にあまねく 普及しているのだろう ? 神学者に尋ねてもだめ、法律家に尋ねてたとえば、事故によってだ , ーーそれでも、いつまでもいつまでもっ はんりよ 円 6
妊処置を受けていたのだから、遊び以外の何物でもなかったこと、上、そこのポスだったんだ。 もしロジャー ・スパ 1 リングがその土地を横領しようとなどしな 3 それこ、。、 冫 / テイケイクが上になっていたんたということを。 ミネルヴァ、たとえだれが上になっていようと、ばくが子供たちければ、ばくはかれとなんらかの妥協をしていたかもしれない。現 をなぐったりはしなかったろうよ。理性的にはローラのいうとおり実にはどうかというと、・ほくはパテイケイクに所有権の半分をゆず り、あと半分は義理の息子である・に抵当の形で売った。そし だとわかっていたし、父親に娘を独占したがる傾向のあることは認 めなければいけない。・ほくが嬉しかったのは、ローラがふたりの子てその手形を銀行に割引いて売り、その半分の所有権をロジャーと 供たちから完全な信頼を得ていたために、かれらは現場をおさえらローラにくれてやった場合に買ったであろうものよりずっといい宇 れないように注意することなどほとんどしなかったし、偶然見つけ宙船を買ったよ。リビイとジョージのふたりとも、・ほくは同じ取引き られたときにもあわてたりしなかったことだ。おそらく・はあをした。メゾン・ロングの持株を、半分は贈与し、半分は売ったんだ そしてリビイは名前をエステル・エリザベス・シェフィールド わてたろうが、パテイケイクはこういっただけだった。『マア、ノ ・ロングと変えた。そこには・ほくとのつながりを示すものがあった ックしてくれなきやこまるわ』とね」 それはぼくと彼女の両親を喜ばせた。それはうまくいったよ。 ( 省略 ) 「ーー。そこでわれわれは息子を交換したんだ。—・は農場の生活ローラはぼくが出発するとき来てくれさえし、別れのキスをした」 が気に入り、ずっと・ほくの家に留まった。ジョージのほうはこの変「ラザルス、わたしにはひとつわからないことがあります。あなた ハワードの人間と短命人種との結婚は好まないといわれまし な都会趣味とやらにとりつかれているとわかったんで、ジョウはか た。それなのに、ふたりのお子さんをファミリー以外の者と結婚さ れを傭い、コックに仕立てあげた。ジョージはエリザベスと寝てい いつごろからそんなことを考え、結婚しせたのですね」 リビイのことだ 「ああ、訂正た、ミネルヴァ。だれも子供たちを結婚させたりしな ようと決心したのか、ぼくは忘れてしまったな。合同結婚式がおこ いよ。かれらは勝手に結婚するんだ。時と方法と相手を自分で選ん なわれ、四人の若者は親密な交際をつづけたよ。 そして・の決心がぼくの問題を解決してくれたんだ。それかでね」 ら以後のスカイへヴンをどうするかをだ。ローラが・ほくと別れる決「訂正は記録されました、ラザルス」 心をしたときまでに、われわれのあいだに生まれた息子は、ひとり「。ほくがリビイと・のことにロ出しした夜のことに話をもどそ う。その夜・ほくはリータとジョウに、あの奴隷仲買人がかれらの血 残らず冒険を求めて宇宙へ飛び出してしまった。ジョ 1 ジが惑星に 残っていたただひとりの息子で、娘たちは結婚していたが相手はひ統の証明としてぼくによこしたものを、すべて与えたーー受取りま とりも農夫じゃなかった。ところが・は・ほくの下で監督をやつでもだ , ーー・そして、始末してしまうか、それとも鍵のかけられると ており、・ほくがスカイ〈ヴンにいた最後の十年間は、かれが事実ころへ隠しておくかだと指示した。その中に、かれらの成長を一年
ランドルフ・ロバン作原田義人訳「さかさまの世界」表紙 これは、戦時中のあの激しい空襲のおかげかも知れな用車をあふれさせる。すると今度は深刻な駐車難を起こ していく。こうした結果は、都心に近い部分の地価を高 日本では人口一〇万以上の都市は存在しないから、職騰させ、住民はさらに遠い郊外へと追払われていく。 これがアメリカや西欧の姿であり、最近に至り、人口 場と住居とは結びついており、歩いて通える範囲であっ を無の中小都市に分散させ、これを高速鉄道で結ぶ日 て通勤問題は起らない。 これに反し西欧やアメリカでは、人口の過度の都市集本の方式が、改めて世界から見なおされている。 また軍需工場輸送機関を地下に移した日本は、当初は 中で朝夕の通勤が大問題となり、時差通勤まで行なわれ 非常な無駄をしているように見えた。しかしこの結果 ているところがある。 まさにアメリカの自動車文明に対し、日本は鉄道文明が、トンネル技術を異常に発達させ、日本は世界一の土 木工事技術を築いたし、さらにこの技術は海底にまで及 を形成している。 自動車工業の発達した国では、その輸送力に頼る結び、その結果、本格的な海洋開発を開花させた。 こうして日本海の海底油田は開発され、最近に至り日 果、とかく大都市への人口過度集中を起こしやすい 大都市の中で工場と消費人口が同居し、これが自動車本の石油需要を充足することができるようになった。 こう考えると何が幸か不幸か分らない の輸送力で結ばれるのが、産業上最も合理的と考えられ ていた。 それにしても日本の異常な経済成長は、太平洋戦争を しかし、これは公害や住宅難を伴い、人口は郊外に戦い抜いた民族の誇りが、強い自信となり、戦後この大 【、第を ( を簽当、増え、事業を次々になしとげたものであろう。 この結その外の理由としては、戦後公益優先の立場から、 ・果当然ち早く土地の国有化政策がとられ、これが国土の総合開 通勤難発を可能にし、また空襲で失われた住宅を工場生産で大 が起こ量に供給することに役立った。 この日本に発達した近代的住宅産業が日本工業力の土 ってく 台を築きあげ、国際競争力を強化したといえる。 これ しかがだろう、この小説。な・せ、ばくがこの作品を新 を解決 第を天外 6 キ第〔するた刊であるにもかかわらず紹介する気になったか、もう、 め、道おわかりいただけるだろう。ぼくは、これまでにもたび 路を整たび「こてん古典」向き作品ということばを使ってきた 、 ~ 」義」、 ~ を一一い一 ( い」を第一一 ( ′第 ( 一一第 ( 。 ~ 一 ~ 、〈備し乗が、この小説もまた、ここで紹介するのにビ ' タリなの
が彼女をおいておいたとは考えなかったのだろうーーしかし、・ほく クローネによって計算させた。それに、ヴァルハラで料理屋の手伝 が金持だったのはそのときが初めてではなかったし、、 しろいろと学 いをしたときのジョウの賃金を加え、かれが使ったぶんを引かせ 2 んでもいたんだ。ローラの財産は彼女が離婚し再婚するときにぼくる。この合計は、ヴァル ( ラからランドフォールへの旅に積みこん かね が与えた金と感謝であり、ばくが彼女と結婚する前に所有していただ荷物の出資分としてふたりのものとされるーーー積荷の一。 数千ヘクタールかではないのだということをかれに納得させるに トの半分以下の額になるわけだ。・ほくはリ 1 タにその結果を出させ は、うんざりするほどの訴訟をつづけなければいけなかった。多く の点で、貧乏であるほうが簡単なものだ。 さらに加うるに、ジョウが船のコックとして働く賃金、ヴァルハ それから・ほくはまた宇宙へ飛び出した。 ラからランドフォールまでのぶんを、ランドフォールの賃金基準に だが、子供たちのことを話していたんだったな。本当は・ほくの子より、ランドフォール・ドルで支払うーーーただし、積荷の出資分と 供ではいんだが。ランドフォールへ到着する前に、ジョセフ・アしてではなく、ただの賃金としてだ。・ほくはリータに、なぜその航 1 ロン・ロングは猿から天使へと成長していたが、まだまだぼくの路におけるジョウの賃金が、ヴァルハラで荷揚げされた積荷にさか 赤ん坊で、うつかり抱きあげるとおしつこをひっかけられたものだの・ほって与えられないのかを説明しなければいけなかった。それを かれのおじいちゃんがそうで、一日に何回もそんな目にあって理解するとすぐ彼女は、投機・危険率・利益の概念を把握した 、こ。ぼくはかれが気に入っていた。かれは楽しい赤ん坊だったばしかしぼくは、この計算に対する質金を彼女に支払うことはしなか かりでなく、・ほくにとっては最も満足し得る勝利だったのだ。 った。彼女のすることをすべてチェックしなければいけないだけで われわれが着陸するころ、かれの父親は実に立派な料理人になつなく、経済学の知識さえ与えてやっているときに、事務長としての ていた。 彼女が自分の給料を計算することに対する賃金を支払ったりは絶対 ミネルヴァ、・ほくは子供たちに贅沢をさせることもできた。それにしないさ。 は、これまでおこなったうちでいちばん利益の多い三角旅行だった ・ほくはランドフォールへの航路におけるリータの賃金を認めなか んだ。だが、物を与えることで、もと奴隷だったふたりに自信と自った。彼女は乗客であり、赤ん坊を生むことで忙しかったし、その 由と自尊心を持たせることはできない。・ほくがしたのは、かれらが世話をおぼえることでもっと忙しかったからだ。だがその料金を彼 船から出たあと何とかやっていけるようにしたことだ。こんなふう女に支払わせるつもりはなかった。無賃乗客としたんだ。 にして きみには・ほくが何をしていたかわかるだろうね , ーー・収支計算をお ぼくはかれらが、。フレスドからヴァル ( ラまで、半日の見習生質こなうことで、積荷を売ったとき・ほくはふたりに対して幾かの支 金を受け取るものとした。あとの半日は勉強で取られたと考える。払義務を持ち、同時にふたりがそれを稼ぎ出したものであることを はっきりさせるってことだ。かれらこよ これをリータに、ヴァルハラの賃金レートに基づき、ヴァルハラ・ ~ 。いかなる賃金を支払う価値 こ 0
教科書ともおさらばよ いったとおり、その短いラテン語の文句はひょっこり頭の中に浮か んできただけなんだ だが、ラテン語は荘重に聞こえるものだ。 純粋主義者は、最長老のこの翻訳を貧弱なものと見ることだろう。だ 特に何をいっているのかわからないときにはね。 が不思議なのは、かれが最後の行にある Libros を l-iberos に変え、 われわれはとびきりの食事を取った。ぼくが料理をしたんだ。そ もとの歌にある陽気で猥褻な三重の洒落をな・せなくしてしまったかとい れは十分ほどで終ってしまったーーふたりのせいでだ。リータは食 うことだ。かれがうつかり見落していたなどということは、どうも考え べられなかったし、ジョウはぼくに、ジョニイの結婚式がおこなわ られない。われらが祖先の諧謔好きな性質はいたるところではっきりし れた夜、なぜかれの義母が気絶したのかを思い出させた。それから ている。かれはときどき禁欲主義者であるようなことをいうが、それは ・ほくは盆にうまい食べ物を山盛りにしてジョウに渡し、ふたりとも どう見てもいいかげんなものだ。 ・・四十五世 部屋にもどれといった。四日のあいだはぼくに髪の毛一本見せるん じゃないそ、とつけ加えて ( 省略 ) そして高らかに、「かくあらんことを ! 」といって終った。 ばくはふたりを立たせ、おたがいの手を取らせ、宇宙にある船舶の 積荷をできる限り急いで選ぶと、。ほくはランドフォールへ向 主人として・ほくに与えられている至高の権威により、かれらはいまかった。ふたりともヴァルハラへ残していくようなことはできなか った。ホセはまだ家族を養うことなどできないし、リ 1 タのほうも や永遠に夫婦であると宣言したーー彼女に接吻するんだ、ジョウ。 そのあいだじゅうずっと、べートーヴェンの第九が低く背景に流妊娠につづいて乳児をかかえてでは、やれることが限られてきてい たからだ。それにかれらが失敗したとき、そばにいてやらなければ れていた このざれ歌は、ヴァ 1 ジルの難解な文章が終ってしまい、もうすどうしようもない。ふたりはランドフォールへ行くしかなかったの こし印象的な響きが必要だったとき、ひょっこりと出てきたんだ。 ああ、 でもあとから考えてみると、学生の休暇と同様、かれらのハネムー リータならヴァルハラで生きていくことはできただろう。 ンにはびったりの内容だった。まったくすべてがよくーー・遺伝の面なぜならそこでは、だれよりも妊娠した女性が美しく、しかも月を サイネ・ボエナ で罰を受ける恐れがなく この姉弟の結びつきに罰はないと、ぼ重ねるにつれてその美しさは増してゆくという、きわめて健康な見 くにはわかっていたんだ。そして ludendi は、″賭博″とか″子供かたがあったからだーーーそれは・ほくも同じ意見だったし、特にリー の遊び″とか、遊びならどんなことでも意味するから、″愛のたわタの場合にはびったりあてはまった。・ほくが買ったときでもかなり むれ″とも″性愛″とも訳せるのだ。いまからすぐに四日間の休日のものだったが、ヴァルハラに着陸したときにはほ・ほ五カ月を越そ リプロス・デ飛ネンディ うとしており、輝くばかりの美しさだった。もしひとりで下りてい に入る、仕事もなし、勉強もなしーーー教科書とはおさらばよ そと、・ほくは申しわたした。まったくの偶然さ、ミネルヴァ。、 しまけば、最初に出会う六人の男が六人とも彼女と結婚したがったこと わいせつ
彼女はどうするだろう。わかりきったことさ、彼女はきみが″避妊″録する必要さえないーー溺れようと泳ごうと自由にというわけだ。 などといい出す前に上をむいて寝ころがっているよ。 着陸料金なし、人頭税なし、税金というものがほとんどなく、政府 それでは何の解決にもならない。 ・カナヴェ も大したものではなくて、三番目の大都市であるニュー 彼女がぼくの妥協案を拒んだので、われわれは出発点にもどってラルの人口がたった十万人ーーーそのころのランドフォールは実に住 いた。彼女はそれをぜんぶ支払うかーーーそれとも無意味な寄附をすみやすいところだったんだ。 るかーーーそのどちらかだと決心していたし、・ほくは彼女にそのどち だがぼくは、ジョウとリータにそれをやらせた。かれらふたりの らもさせるつもりはなかった。・ほくだって頑固になれるのた。 ために、かれらの子供のためにだ。ぼくは、かれらにかって奴隷だ どちらにも納得できる方法があるはすだった。 ったことを忘れてほしかった。それについて話をしてほしくなく、 かれらの子供にそのことを知られてほしくなかったーー・同時に、か その夜、食事のとき、召使たちがさがったあとで、・ほくはローラれらが奇妙な形の姉弟であるという事実も葬り去ってほしかった。 に仕事で町へ行くつもりだといったー・・ーきみも一緒に行かないか ? 奴隷として生まれたことに何も恥ずべきところはないし ( 奴隷にと ほくが仕事で忙しいあいだ、きみは買物でもしていればいし 。それってはた ! ) 、補足的二倍体が結婚するべきではないという理由も から、どこでもきみの好きなところで食事をしよう。あとはなんでない。だが忘れろーーーそして新しく出発するんだ。スチェルン・ス もやりたいことをやって楽しもうじゃないか、と。ローラはふたたヴェンスダッター ( 英語風にいうとエステルで、赤ん坊のころから び妊娠していた。・ほくは彼女が、洋服を買うことに一日を楽しくお愛称はリータ ) は、ジョセフ・ロングと結婚した。ふたりが結婚し くるだろうと思ったんだ。 たのはかれが料理人の見習を終ったときで、最初の子供が生まれ リータとの来たるべき口論に彼女を同席させようと思ったわけでてから移住した。話は単純で、つけ入るすきがなかったし、ビグマ 表向きはあくまで、ジョセフおよびエステル・ tL ングとか リオンの役を演じようとする・ほくの試みに磨きをかけた。ぼくが新 れらの長男は、ヴァルハラで生まれたことになっていたのだ。かれしい妻に、表向きの話以外のことを打ち明けなければいけない理由 はなかった。ローラはふたりが・ほくの友達であることを知ってい らが・ほくの船の乗客となったときに、われわれは友人となった。ぼ くはその話に肉付けし、ランドフォールへの航路で子供たちにそれた。そうだというので親切にしていたが、やがて彼女は自分からふ を教えこみ、 たりを好くようになった。 トールハイムで買った音声・画像テープを勉強させた それで、本当のヴァルハラ人に根はり葉ほり尋ねられないかぎ ローラはいい娘だったよ、ミネルヴァ。べッドの中でも外でもい り、かれらはまずヴァルハラ人でとおるようになったのだ。 い相手だったし、ハワード特有の美徳を持っていた。最初の結婚だ このごまかしがどうしても必要だったわけではない。 というのというのに、彼女は良人を窒息させようとしなかったのだ は、ランドフォールは門戸開放政策を取っていたからだ。移民は登ていの ( ワードの人間は、それを学ぶのに少なくとも一回の結婚を 幻 4
コンビューターはくすくす笑った。「外交的手腕ですって ? 」彼せんが、あの子たちの幸福を邪魔するつもりはありません』」 「彼女は子供たちを愛していたのですね」と、ミネルヴァはい 0 女はそれをくりかえした。 「きみならどうやったね、ミネルヴァ ? かれらには質問の意味がた。 「そう、愛していたよ、きみ。愛という言葉の正確な定義において まるでわからないようだった。・ほくがはっきりいってやると、リー だ。リータは自分自身のことより、子供たちのためを、子供たちの タは憤然とした。子供たちを別々にするですって ? 赤ちゃんのと きから一緒に寝てるっていうのに ? それに、もう部屋はないんで幸せを、まず念頭においていた。そこで・ほくは説明しようと努力し なにゆえ、きようだいどうしの結びつきを禁ずるタ・フーが迷 す。それともわたしがリビイと寝て、・ << はジョウと寝ろとでも たとえ、かれらの場合に安全だ おっしゃいますの ? そういうことでしたら、どうそかまわないで信ではなく、本当に危険なのか ったとはいえ、・こ。 くださいな。 なぜというのが難しいところたった。あの複雑な遺伝学を始めた ミネルヴァ、ほとんどの人間は、どのような科学についても何ひ のが年老いてからで、しかも説明する相手が初歩の生物学さえ知ら とっ知ろうとせず、遺伝学となるとそのリストの中でも最下位だ。 ないというのはたな、十以上の数をかそえるためには靴をぬがなけ グレゴール・メンデルは、すでに十二世紀前に死んでいた。だが、 それでも老婆たちの伝えるあらゆる迷信が民衆に信じられていたんればいけない人間に、多次元行列式を説明しようとするのに等しい いまでもそれは変っていないよ。 ジョウなら素直に・ほくの意見を受け入れたろうだがリータは常 そこで・ほくは説明しようとした。リータとジョウは馬鹿なのでは に、理由を知らなければ気がすまないというところがあったーーーさ なく、ただ無知なだけだとわかっていたからだ。彼女は・ほくをさえ 『ええ、ええ、アーロン、よくわかります。わたしもなければ、愛らしくも強情な微笑を浮かべてぼくに同意し、それ ぎっていった。 は、リビイがジェイ・アーロンと結婚したがる可能性について考えから自分の思うとおりにことを運ぶだろう。リータはふつうに賢い ましたーーー・きっとそうなると思いますわーーーそしてそれがここでといわれる連中より頭がよかったが、民主主義の誤謬におちいって 、よずだ、と考え いた。自分の意見はだれの意見とも同じぐらいいし。 は、おかしな目で見られることも知っています。でも、迷信のせい いつぼう、ジョウは貴族主義の誤謬におちいってい であの子たちの幸福をこわすのは馬鹿げていませんこと ? ですかていたのだ ら、もしそういうことになったら、わたしはあの子たちがコロンポた。権威のある意見というものの存在を受け入れていたのだ。・ほく すれもつますきの はどちらの誤謬がより感傷的なのか知らない。い へ移るのがいちばんいいと思ってるんですーーーでなければ、少なく もととなり得るのだ。しかし、・ほくの性質はこの点でリ 1 タと同し ともキングストンまで。それから違った姓を使って結婚すればいし だったから、彼女を説得しなければいけないとわかった。 んです。だれにもこれ以上のやりかたは考えられないはずです。わ ミネルヴァ、きみなら、この世で二番目に複雑な問題に対する一 たしたち、ふたりに遠くへ行ってほしいと思ってるわけじゃありま
だろう。もし彼女が子供をせおい、そのうえ妊娠していたら、着陸ぼくはそんなことがおこってほしくなかった。妻を寝取られた男が したその日のうちに結婚することもできたはずだ。その惑星は人口はやす角は、かならずしも頭痛をともなうものではない。しかしか が少なすぎるので、子供を生める能力が尊敬されていたのだ。 れには、成長し、成熟し、自信を身につけるための時間が必要だっ ぼくは彼女がそれほど早くジョウを捨てるとは思わなかったが、 た。そのあとなら、寛容と威厳をもって角をはやすこともできるの しかしあまり多くの男に注目されることでふらふらしたりしてほしだ・・・ーーーそしてリータは、すごく立派な枝角をかれに用意してやれる くなかった。彼女がジョウをおいて、どこかの金持の・フルジョワとほどの女だったのだ。 ホルグ ・ほくはかれに仕事を見つけてやった。真珠採りの潜水と小さな料 か自由所有権保持者と一緒になるかもしれないというような万に一 つの危険もおかしたくなかった。・ほくはそれまでに、ジョウの自我理屋の雑役で、ジョウがヴァルハラ料理の正しい作り方をひとつお を育てあげるためにずいぶん苦労をしていたが、それはまだまだ脆・ほえるたびに金を払うからと、コック長と秘密の取引きをしておい たのだ。いを っ・まう彼女のほうは船内に引きとめておいた。ちゃんと 弱で、そんな打撃のもとではひとたまりもないものだったのだ。か れはいまや背をのばし胸を張って誇らしげに立っていた だがそした衣服を手に入れてやれるまで、妊娠した女が好ましくない気候 いきは・ほ の自尊心は結婚した男であるということに基づいていたのだ。妻がのところへ出てゆくのは危険だというロ実を設けてだ リータ。積荷のことで手が一杯なんだ、 あり、子供がやがて生まれてくるということにだ。かれらの結婚証くの邪魔をしないでくれ、 明のために・ほくが自分の名前のひとつを与えたことは話したかい ? といってね。 われわれがヴァルハラに滞在しているあいだ、かれらはいまやフリ 彼女はほんのちょっと口をとんがらせただけで、それを承知し ヘル & フル・ラングであり、ジョセフとスチェルンであり、・ほく た。いずれにしろ、彼女はヴァルハラが嫌いだった。そこは七分の は少なくとも数年のあいだ、ふたりにミスター & ミセス・ロングの 一 ()5 だったが、・ほくはかれらを自由落下という贅沢に慣らしてあっ ままでいてほしかったんだ。 たーー彼女のふくらんでくる腹には楽だし、土ふまずにも、大きく ) 、、ネルヴァ、・ほくはふたりに一生の誓いをさせた。かれらがそれなりつつある乳房にも、まったく力がかからなかったんだ。それが を守るだろうとはすこしも信じていなかったがね。ああ、短命人種いま彼女はとっぜん、自分が前より重くなっていることに気づき、 の中には結婚を一生つづける連中もいる。だがそのほかの多くにつ体を動かすのは不自由で、足は悲鳴をあげていた、。船の入口から見 えるヴァルハラは、まるで凍りついた地獄だった。ふたりをランド いていえばーー羽根のはえた蛙などそうたびたび見つけられるもの フォールへ連れていこうという・ほくの申し出に、彼女は喜んだ。 じゃあない ( 非常に珍しいの意 ) 、そしてリータは無邪気で人なつつこ く、セクシーな小娘ときているから、そのつもりもなく尻軽に両足それでも、ヴァル ( ラは生まれてはじめて見るよその世界なの をひろげてお寝んねということになるだろうーーそうなることは目で、彼女はそこを見たがった。ぼくは積荷をおろすまで時間を稼い でから、彼女のサイズを測り、その惑星用の暖かい衣服一式を買い に見えていた。ジョウに基礎的なことを教えこむ機会がくる前に、 フリー つの