ったのである。本来は、それらの宇宙活劇オペラ全盛時代に、荒唐無稽で俗悪で低級マガジンには、しかし、何か強力 に、これだけは備わっていなければならな なポンチ絵まがいの娯楽小説という焼印な、。 ( ンチのある作品が必要だった。その い、的フィ ーリングと、原初的なロマを、ひとしなみに押されてしまう破目に陥意味でいえば、スペース・オペラは、たし ンチシズムが、意外に稀薄であることに気った。そして、その影響は今日にまで尾をかに、打ってつけのパンチカを持っていた づいたからである。 引き、を他に遜色ない小説形式と考えはずだった。それは・ほくも、よく知ってい た。つぎの引用はそれについて後年書いた 宇宙小説が、本来的に持っている問題性させることを妨害しているのである。 を、思想性を、文明論としての可能性を にもかかわらずぼくは、マガジン発文章の一節である。 そうした大切なすべてを、救い難く損行後二年め頃から、それらのスペース・オ「たしかに、スペース・オペラは、単純な ・なってしまうおそれを感じたからである。 。ヘラ的作品に頼らざるを得なくなっているだけに、の初心者にとって判りやす く、しかも若い読者むきのマンチシズム . いわゆるスペース・オペラが読まれること自分を発見したのであった。 ( 中略 ) によって、全体が受けるであろう誤解それは当時、・ほくにとって、一種の屈辱に満ちている。それは嘗て、アメリカの 読者の血を湧かせ、現在の読者の厚 でさえあった。 が恐ろしかったからである。 い層をつくらせるに至った同じマンチシ そして事実、歴史的に見てもスペース・ 誌は、人ぞ知る凝り性のガンコ ・ハウチャーのズムである。同時に、スペース・オペラの オペラは、その名前の由来に似つかわし いおやじ的批評家アンソニー マイナスを、全体に流している。編集になり、同誌には、それそれ一ひねり作家たちの、徹底したサービス精神とエン は、猖獗をきわめたアメリカのスペース・ も二ひねりもした、文学的持味のつよい作ターテナーぶりとは、そうしたものをあま 品が多く掲載されていた。それり知らない日本の若い読者たちを、興がら は、。ハウチャーが、アメリカ rn せるにちがいない。 さらに、より重大なのは、やはり、スペ , を、スペース・オペラの泥沼 ース・オペラの持っている、あの驚くべき から救いだし、新しいアメリカ 現代文学の一領域としようとすヴァイタリティである。その、初心に戻っ る意気ごみを、きわめて明瞭にた原初的な感情の新鮮さである。少年時代 に、はじめて天文学書を読んだときに抱く かつは独断的にあらわした あの感動ーーーわれわれを取り巻く空間と時 編集方針でもあった。 間の厖大さの、そのほんの一端を知りえた そうした、いわば高踏的な から、一時代以前の大衆的と知ったときの筆舌に尽しがたい感動。そ ・、、まくにとの先に果しなく拡がっているであろう神秘 へ後退することカ ~ な世界への憧憬。それらを、本来のスペー って決して楽な決断でなかった スをオペラは生のままに持っている。どん ことはもちろんである」 ~ 矢野徹氏
サヴェッジ ハウチ ッド・ジョンや野蛮人や、レンズマンたちについての考え方が、アンソニー かしこのときのことを思いだすたびに、・ほ ャーや・ハジル・ダヴェンポートなどのそれ くは、当時作家たることがいかに難しやジョン・カーターとその息子たちゃ、シ ートンやジェイムスン教授やキャンベル三「 , の影響を受けていたためもあった。彼らは かったか、にもかかわらず作家たろう ・とする彼らの決意がいかに強固だったかを人組や , ー・・・・その他数えきれないほどの新旧、スペース・オペラを、堕落したと考え の英雄や宇宙怪獣やが、同居していた時代ていた。そしてぼくも、その意見に、全面的 ・思うのである。 であった。この時代を素通りしては、アメに賛成だった。ロマンチックで、ドラマチ ックであることをーーー・そして、時としてグ リカは存在しなかったといってもいし 時代ーーーヴァイタリティと、渾沌とが身上ラン・ギニョ 1 ルであることを唯一の武器 として、科学の衣をかぶせ舞台を宇宙に移 だいぶ回り道をしたが、 t-o マガの時代でもあった。 マガジンは、三〇年出おくれて しただけの安価な大衆冒険小説であること ジンの迫られた転機にあたって、・ほくが、 具体的にどのような方向づけをしたかにった。そのため、この時代の良かれ悪しかれをてんとして恥じないその幼児性は、・ほく の洗礼を当然受けていなかった。・ほく自身にはとても戴けなかった。そんなものを、 いて、できるだけ正確に話を進めよう。 前にもいったように、・ほくが第一に考えの好みだけでいえば、・ほくはスペース・オ、日本の読者に送ることは、・ほくのプラ たことは、海外作品の主流を、従来の。ヘラが性に合わなかったし、ぼくの判断か、イドが許さなかった。 とはいっても、・ほくも、最初からスペー リらいえば、そうしたものを最初から日本の ;-v 誌の・ハックナイハー作品から、パプ ック・ドメインのーーー一九三〇 ~ 四〇年代読者に与えることは得策でなかった。そうス・オペラを毛嫌いしていたわけではな というより、読みはじめた最初の頃 のアメリカ・イギリスのに切りかえよすれば、たちまち世間から、ポンチ絵の、 は、火星シリーズといいキャプテン・フュ うということであった。この年代は、とく荒唐無稽の通俗小説のと軽蔑されること スカイラーク、レンズマ 1 チャーといし にアメリカにとっては、きわめて重要は、目に見えすぎていたからである。 ンなどの諸作といい、結構楽しめたものだ ここでまた、以前・ほくがスペース・オペ な年月であった。それは、一語にしていえ ば、アメリカの躍進を準備するためラに就いて書いた文章の一部を、少し長くった。それがな・せ途中から気が変ったのか といえば : : : 端的にいって飽きたのであ 引用することを許してもらいたい。 の、あらゆることの起こった時代であっ いいながら、その実はマン 「ーーとくに初期の頃、ぼくはスペース・ る。波瀾万丈と た。そこには、スペース・オペラから、ハ 、主人 ードにいたる , ーーヒロイック・ファンオペラとレッテルを貼られた作品を、殊更ネリでステロタイプな筋立てといし に避けた。を、荒唐無稽なポンチ絵ま公たちのあまりの超人的能力とそれに見合 タジーからリアリスチックなサイエンエイ フィック・フィクションにいたるあらゆるがいとーーー・知能指数のひくい幼児性精神がわないあまりに精薄的な知能と、単純素朴 ・ものがあった。キャプテン・フュ 1 チャー描きだす幼稚な妄想のたぐいと見られるので魅力のない非個性的な情緒と感受性と 要するに、あまりに安手な、粗雑な、 を、極度におそれていたからである。 や、シャン・フローや、クワールや、マイスリ それは一つには、ぼくの〈望ましい〉ご都合主義的な内容に、我慢がならなくな ングや、ロビーやビッグ・・フラザーや、オ ロ 4
数の弾子を収め、比較的短い航続距離と迎撃ミサイルを上回る 速度性能を持っている。効果的な・・システムによって進 路を啓開しつつ進入するミサイルに対する有効な阻止手段とし ては、、撃ミサイル自体に・・阻止用のアンチ・ミサイ ル・ミサイル・ミサイルを搭載し、自動管制システムによって 自由に第二次目標を選択しつつ主目標であるミサイルを捕捉す る方法が考えられる。 < ・・を阻止するのにも最も効果的 な方法はチャフの撒布、およびジャミングである。これらのウ ェイボン・システムは特定のセンターによって指令、操作され撃 破するものではなく、ミサイル自体が内蔵する電子頭脳によっ て直接、操作される。それによるセンター回路の削減と誤差範 囲の縮小はこのシステムの精度をさらに高いものにしている。 しかし物理的理由に基づく絶対的誤差は、攻撃側よりもむしろ 防禦側にとって深刻な障害となる。 一個の惑星間ミサイルを目標に到達せしめるために は、その進路前程における宇宙空間に無数に散在する長距離警 戒レーダー・サイトおよびアンチ・ミサイル・ランチャーであ るスペース・トーチカのひとつひとつを忍耐強く壊減してゆか ねばならない。目をおおうような消耗戦ののちにようやく攻撃 側のミサイルがスペース・トーチカを爆破する。一個のスペー ス・トーチカを破砕するためにどれだけの量のミサイルが費消 されることだろうか。アンチ・ミサイルのしつような阻害によ エレクトロニクス って、いたずらに原子の高熱ガスと化しさった電子装置、光子 エンジン、巨体を組立てているファイ・ハーグラス・ ハニカムな どの総量は想像するだに困難である。 アンチ アンチ スペース・トーチカ一個が破砕されると、そのトーチカが守 備を受持っていた広大な空間が解放される。攻撃側はただちに その空域へ進入してそこへつぎのスペース・トーチカを攻撃す るためのミサイル基地の建設にとりかかる。基地は何百隻もの ンツーノ 宇宙船を結合した浮桟橋であったり、また推進装置をとりつ . け た小惑星であったりする。もちろん、この空域に対する周囲の ス。ヘース・ト ーチカからの攻撃は間断なくつづけられる。何千 発、何万発のアンチ・ミサイルは湯水のように使いつくされ、 、ようとうほ その負担に耐えられなくなった側が局面を放棄する。橋頭堡が チカに 完成されると、攻撃はさらに一歩、奥のスペース・トー きようとうほ 向けられてゆく。同時に橋頭堡の周囲の空間に向っても攻撃は 拡大されてゆく。縦深陣地に対する攻撃は戦力のおびただしい 消耗を招く。その消耗を支えるものは強力な支援、補給組織で ある。当然、防禦側の攻撃はこの支援、補給組織の切断、破壊 に向けられる。それは直接、橋頭堡の拡大阻止を図るよりもは るかに効果的であり、少数兵力の集中的運用を可能にする。橋 うとうほ 頭堡に対する不断の戦力注入によって前線は推進され、敵の守 備空間に一歩一歩うがたれてゆくトンネルはやがて敵の戦略拠 点に到達する。 たった一発の惑星間ミサイルを辺境星域の首都、冥王星のオ ルドウ・ハリクに、また連合第一の開発都市、火星の東キャナル 市にあるいは金星のビーナス・クリークにうちこむためには、 これだけの気が遠くなるような作業が必要なのだった。 茫漠たる時の流れと、天文学的数字をもって消費されてゆく おそるべき戦費に対するうむことのない忍耐力だけが宇宙空間 を舞台として戦うものには必要だった。 幻 6
直径二千メートルの扁平な楕円形は暗黒の海に沈む巨大な一一枚貝だ ったその平滑なシェルターから突き出た数基のレーダーはその三 次元受信面をじっと遠い空間のある一点に向けつづけていた。その いま、新しく戦機は動いた。 触手は一瞬のあとに迫った確実な死の気配を正確にとらえていた。 木星近傍で待機していた輸送船団はその熱核反応炉につぎつぎと もとより、ここには死に対する不安も恐怖もなかった。すべて最後火を入れていった。、 システム の瞬間まで非情な正確さで作動しつづける機構しかない。一人の人三百隻の大型宇宙船はその船腹に宇宙基地設営器材を満載し、開 間もここには存在しなかった。 かれたばかりの啓開空域へ向って発進しようとしていた。その大船 フリゲイト やがて星々の海の中に幻のような光の尾があらわれた。 団をほぼ球状にとりまいて、三光分の距離には護衛艦群が長距離警 巨大な反射傘から放出されるすさまじい光の東は、星々の海を切戒レーダーの触手を遠くのばしてしのび寄る危険にそなえていた。 り裂き、吸いつけられるように扁平な楕円体に突き刺さっていった。敵にとって反撃の絶好の機会であり、またとない奇襲の一瞬がめぐ ランデブー・ポイント 永遠の静寂の中で青い大きな光球が生れた。ほんのしばらくの ってきていた。敵も当然、すでにこの船団の任務と集合位置は察 間、それはそのままの大きさをたもち、やがてしだいに鮮烈なオレしているはずであった。護衛艦群も船団も極度に緊張していた。 オールファイヤー ンヂ色に変ってふくれあがった。水素核融合反応の生み出した数万《全群、点火 ! 》 度の高熱のガスの雲はおそろしい勢いで膨脹していった。オレンヂ船団指揮官は高らかにサインを送った。 オーロラ レーグー・・ヒケット 色は暗い赤に変り、それがみるみる多彩な光の波を極光のようには 先ず、遠く五光分のかなたを先行する哨戒艇の編隊が動き出し ためかせ、やがて静かに消えていった。そのかがやきの消えたあと た。それは敵のレーダー・ネットワークに対してデモンストレーシ アノチ には、千億の星々がいよいよ悽愴な光を放っているのみだった。星 ョンをおこなってミサイル射線を吸収し、さらに迎撃ミサイルによ の海の奥から飛来した銀色の巨体も、この空間に浮かんでいた直径って進路を切り開いてゆくいわば掃海隊の役目を持った無人のドロ 二千メートルの楕円体ももはやどこにもなかった。 ンどっこ。 フリゲイト そして護衛艦群にすつぼりとつつまれた船団が、熱核反応炉から 迎撃の失敗を報する電波は、やがて遠い戦区管制所の通信機にほ 目のくらむ白光を噴き出してつぎつぎと発進していった。 のかな灯をともした。 ミサイル迎撃ニョリ機能フ ノ一スペース・トーチカハ 『ーー海王星近傍で作戦中の O 五機動部隊・任務部隊は地球時間「 喪失シタ。三八一スペース・トーチカハ 一六日二三時三九分、同空域における辺境側の防衛拠点である三八 通信の絶えたその瞬間が三八一スペース・トーチカが高熱のガス 一スペース・トーチカを粉砕した。これによって同空域の辺境側防 と化したときだった。 衛線に対し、近日点における海王星の北極を中心とする半径一・一 リフレクター 幻 0
以下強烈なニューウェーヴへのいやみに続くのだ ぎつかったようで、身にしみて反省するのです。ま が、ファイルという人はこんな考えの人。ほんの二 あ、いいや。どうせ、・ほくの狂うのは、メイン・ス 年前はこういう話が大っぴらに出てきたし、それだ トリームにはならない人ばかりだもんね。今回は、 けの価値もあったのです。いやになっかしい論旨だ ゼラズニーの「 Lord of Light 」とデニケン・タッ なあ。結局ヴァーテックスはダウンして、たとえば チのインチキ科学テーマでもやろうかいなと思って オービットなんてアンソロジ ー・シリーズは依然と いたけど、それはもうちょっと時間をもらったほう して残ったりしてね、わかんないものさ。もっとも が良さそうなので、何の脈絡もなく オービットあたりは、ペ ー・ハックとしては部数 「 Voyage to A Forgotten Sun 」 が普通の五分の一から四分の一位なんだってね、売 by Donald J. Pfeil れにくいのだ。ともに極端はいけない ( 商業的な意 というのから行ってみよう。凄絶 /. スペース・ 「 0 0 0 0 味でだよ ) ということなのでしよう。 オペラなんそというコ。ヒーに負けて、ついつい買っ てなわけで、「忘れられた太陽への旅」という作 てしまったのだ。・ほくは根っからのス。ヘース・オペ ラ・ファンなのでせう。ファイルと読むのかね、著ーのない作品を書くのがたくみな人だった ) にこう品、もしかしたらファイル氏の理論の実践か / と 者は、あの馬鹿高い「ヴァーテックス」の編集長な尋ねたのだ。どうしてあなたはハインラインの ( クいう興味が湧いてくる。 主人公はフリーの宇宙商人の一人、ジム。彼は閉 のです。あんな高くて薄っぺらな雑誌、良く出てるラークでも、アンダースンでも、ハリスンでもよい なあと思っていたら、この間、つぶれちゃったそうが ) スタイルやプロットを自分の作品に取り込まな鎖的な惑星「スタンドラ」を宇宙貿易にひきこむた で、やつばりというか、当然というか、とりあえずいのか、と。彼の答えは、それらの作家たちのスタイめに、宇宙商人ギルドから派遣されてきた。ところ 黙疇。しかし、スペース・オペラ /. なんて恥知らルはすでに過去のものであり、オールド・ファッシが、どうあがいても駄目、ついにジムは密貿易とい ずに売り出した現代作家の作品てのは、かなり珍しョンなのだということだった。なるほど、私はオーう最後の手段に訴えた。何事も悪いことは栄えない いのじゃないかな。中味が楽しみですな。この作ルド・ファッションなのかもしれない。だが、小説のです。ジムはあえなく警察に捕まって、二十年間 者、実にうれしい人で、毎回、ヴァーテックスの工を書く行為には二つの目的があると信じている。一の禁錮刑を宣告されてしまう。これが本当の禁錮刑 デイトリアルを書いていたのだけど、七三年の十月つは読者を楽しませること、もう一つは金をかせぐというやつで、一部屋に二十年間とじこめられつば ことだ。個人的にも、プロとしても、ヴァーテックなし、実質的に死ぬか狂うか、どちらかしかないと 号には、こんなことを書いてる。 ー・ラヴスには、或いは一般的なには、もっと多くのハくる。ギルドは助けにきてくれないし、ジムはさび スハインラインのタイム・イナフ・フォ を読んでいて ) のニューウェーヴ派の一人と話インラインのようなオールド・ファッションの作家しく刑に服すことになるのです。そして数カ月後 ( 当然、スペース・オ。ヘラだもの、こうなる ) 、ジム トーリが登場して欲しいと思う」 したことを思い出した。私はその人 ( 例のス - PRINT 」デ A R ( ) し、 G SPACE ()PERA ◎当 A ( じ ()O LL スキ。ャナー 3
「亜空間とは、一人一人のインナー・スペースを解放する場なの 「いやだよ、帰してくれ」 すると・は髭づらをほころばせて笑った。柔和で案外いい男さ。こっちへ来た連中はみんな幸福に過している。過去の人類の誰 に見えた。 よりも幸福なのだよ」 こらんのとおりだものな」 「だが俺はいられない。・ 「監獄へ入れてきたえ直してやる手もあるんだよ」 「うん」 「監獄・ : ・ : どこにある 「ホーナンの監獄さ。でも、その必要もなさそうだ。たしかにここ彼は同情をこめて頷いた。 は亜空間だが、こっちへ来て以来君がやっていたのは、君自身のイ「魔法に活劇に人情ばなし。 : : : 君は帰してあげる。でも気をつけ メージなんだ。・こ : ナしふ暴れまわったようだね」 てな。伝奇ロマンなんて、所詮本道じゃないよ。君は小説さえ書い 「今までのあれは、俺の内面 : : : 」 ていれば楽しいそうだけれど、小説を書くということは、本当はも 「亜空間では、自由に内面の旅をすることができる」 っと苦しいことなんだ。書いて苦しいような小説を書けるように努 「いんなあ・とりつぶ・ : ・ : 」 力して欲しい」 「君はそれをやっていた。じっくり拝見したよ。やつばり君はニュ私は彼が好意で言ってくれているのがよく判った。 : ・マガジンも、いずれは Z ・ ・ウェー・フ派じゃない」 「やってみる。でも、そうか : 「あ : : ・・ Z ・体制というのは : : : 」 一色になってしまうんだな」 「君は通俗の人だ。根っからの、生まれつきの、もうかたまってし「もっと深味のある、人間の本質を追求するための作品が主流とな るのは、はじめから判り切ったことじゃないか」 まってどうしようもないくらいの、大通俗人間なんだな」 「ああそうさ。悪いか」 私は肩をすくめ、彼から目をそらして振り返った。 「悪くはない」 「あれ、邦子たちはどうした」 「邦子・ : : ・」 「自分だって競馬に狂ってるくせに」 彼は軽く笑った。 「も競馬も同一の領域にある」 「勝手な理屈をつけやがって」 「あれは、君の言う嘘の中から出た人物だろう。会うたび雨に降ら 「競馬は最も具体的に明日を予測しようとする行為だ。俺は人間のれる美女なんて、君の人生に本当にいたのかい」 「消えてしまったか : : : 」 想像力と射倖心について専門に調査をしている」 「宇宙人にたのまれてか」 「ああ、架空の人物だったからね」 「淋しいな」 「俺と彼らはうまく行っている。インナー・スペースで結ばれてい るのだ」 「淋しいより、むなしいだろう」 私はちょっと淋しくなった。宇宙人がいるならそうやって結ばれ「ああむなしいよ」 てみたかった。私にとって宇宙人は神に似ていたからだ。、 「嘘はむなしいもんさ。もっと本当のことを書くべきだね」 「だが、俺には無理だな」 「俺にはできない。それより帰してくれ」 3
ないかと思うわけ。何で、そんな気に入らない作品 力、いかにもャング・カルチャー風というか、そんな を持ってきたのかと言われちまいそう。でも、これ あっけらかんとしたムードが色濃く出ている。そし でもましなのだ、驚くべきことさ。地獄のサイモン てまたこれが実にニューウェーヴ風。たとえば「私 ・ラック・シリーズなんてものまで読んでしまって たちは内世界と外世界の二つの世界に生きている。 るわけで、このあたりまで来ちまうと、それはもう 内世界は精神と魂、外世界は現実」なんて文章が出 スペース・オペラというよりも、例のマフィア・ア てきたりする。もうこんな言葉は消えちまったかと クション小説冫 こ近くなってしまう。その意味では面 思っていたけど、根強いものですな。もっともニュ 白いよ。でも、どっか違う。らしい ( あいまい ーウェーヴ調なのは、あくまでもテクニックなの な言葉だね ) スペース・オ。ヘラという意味で、この で、それによって内容が変質してはいないし、極言 ファイルの作品は、まあ最低のレベルにあると思う すれば、もっとストレートに書いてしまったほうが わけ。ただ、何もかもがあまりに理詰めにすぎる。 成功したじゃないかという感じさえする。個人的に 皮肉にも、それがいかにも現代的なのだ。イマジネ はかなり気に入っている作品なのだが、大好きとは ーションがふくらむ瞬間が、ついに無い。キャップりやヘルス・エンジ = ルの一人って感じ。この時代言えないのは、テク = ックがそれを邪魔しているか ・ケネデイもダウンしたそうだが、結局、同じようのアメリカは荒廃していて全土をセンター ・フォーらだ。下手に凝ると、かえって悪いという見本さ。 な問題点があったんじゃなかろうか。小説としてのスという警察権力みたいなものが支配している。べ数人の無名作家の作品を読んだだけで、わかった テクニックは上手くなっても、それを満たすだけのンはその重要人物を射殺し、スター・・チャイルドとようなことをいうのは危険だけどわりに絶望しちゃ イメージがないのだよ。リック・ウ = イクマンだな。呼ばれる反体制組織の人々の内に逃げ込もうと、全うんだよ。何が出てくるかわからない、それが楽し で、とっても面白いと思ったのだが、このファイ米をオー ト・ ( イで横断するというわけなんだ。そのみで、読んできただろ、それなのにこうして平均作 ル氏の最も毛嫌いするタイプの作品を読んで、同じ間、彼を目の敵にして追いかけ回すグローガンとい以外の何物でもない ( つまり何の興味も湧かない ) ことを考えたんだ。 うセンター ・フォース側の人間がいたり、ジルとい作品ばかりにぶつかっちまうってのは、っても 「 Center Force 」 う女の子と出会ったり、ちょっとした冒険旅行。そのが本当に大人になっちまってるってことじゃない by T. A. Waters ういった単純なストリーが、交錯した視点から様々かと思うからなんだ。からイマジネーションを ・・ウォーターズには、もう二冊ほど作品がな断片 ( 公式文書風、テレックス風、テレビ台本抜いちまえば、ただの小説じゃないか ! ああ、今 あった筈だが、見つからない。とにかく、この作品風、手紙風等々 ) で語られていく。なにしろ百六十度、話すときには、この予感が間違いでしたと話せ は、ファイル氏とは正反対の状況でして、舞台は近八頁に六十四章入ってるのだ。どうも易に影響を受一るようになっていたいね。 未来のアメリカ。主人公は・ヘン・リード、 いってみ一けているらしいが、何とはなしにヒッピー風という 、、 0 0 0 0 0 3 ⅲ 9 れ一 ma 「 0 WOrId oftyranny and unspeakable dep 「ⅵⅣ . he was ー信引 hOpe 20 い he 0 ! 7 a 30i0 れ 0 ・ liCtiOn novel by T. A. Waterg 1 気 U) LL スキ ~ 」ャナー 5
染めたような濃藍色の空に、銀の水脈を曳くように飛行雲が音もけた。 なく長く長くのびてゆく。その先端に空の色になかば溶けこんで時そのころになって吸塵車がフィンガーをのろのろと往復しはじめ 2 おり一点、光るものがある。そのあとを追うようにさらにひとすじる。コンプレッサーのどこかが故障しているのか、せきこむような のろし の飛行雲が、地平線近くただよう積雲のかげからのび出し、狼火の音が聞く者の耳に耐え難い焦燥感をあたえた。実際それが通った跡 ように高く高くつき上げてゆく。いったんゆるやかな円弧を描くとに、掃き残したような砂のすしがわざとそうしたように断続して描 おり紙ざいくのようなダイナ・ソアのシルエットがあらわれた。そかれていた。 れは陽光をはねかえしてはげしく明減するとま・ほろしのように消 え、飛行雲のみがさらに急角度に天の一方を指向した。頭上にひろ シンヤはわずかな身の回りの品を入れた・ハッグを肩に、砂あらし がる虚空のどこかに、衛星となって仮泊している宇宙船から乗客やの去った野外継留場をわたっていった。 イ・・ヘルト 貨物をはこびおろすのであろう。 そこから見るすぐ左方に、高速走路がなまり色の大河の一部分の ふたすじの飛行雲がしだいに形を崩して幅をひろげ、切れ切れにようにのびていたが、それは使われなくなってすでに久しいとみえ 薄れかかるころ、ようやく遠雷のようなロケットの噴射音が虚空をて、その平滑な上部には移動用のラッタルやトラクター、投光器、 横切っていった。 電源車など、おびただしい数の車輌や機材が、銹びとほこりにま スペース・ポート そのとどろきを吹き千切って、またはげしい北風が宇宙空港のフみれて雜然と置かれていた。高速走路のむこうに、広大なモーター インガーをどよもして通り過ぎていった。舞い上る砂塵は半地下式・。フールが開けていたが、そこには数えきれないほどの地上車が幾 コント材ール・タワ の管制塔も、地上に巨体を休めて尖塔のようにそびえている宇十もの列を作っていた。その形と色彩のさまざまが、荒涼とした火 宙船も捲きつつみ、おおいかくし地平線の果までひろがっていっ色の風景の中で非現実的なはげしいあざやかさでシンヤの目にとび た。人々はえりを立てて身をすくめ、顔をおおって砂塵の吹き過ぎこんできた。 るのをじっと待った。 シンヤは肩の・ハッグを足もとにおろすと、むかえに来ているはず 濃藍色の空の果から吹きわたってくるこの季節の風ははがねのよの地上車を目でさがした。むかえの車はなにかのつごうでおくれた うにつめたく乾いて、荒々しく人々の心や体をうちのめした。 のかもしれなかった。あるいはおくれたのではなくて、シンヤが今 かってはフィールドの全域を水けむりでおおった幾千のスプリン 日、このスペース・ポートに着くという連絡さえとどいていないの クラーのうち、まだ生き残っている幾つかがすさまじい砂塵の壁に かもしれなかった。むしろその方が当っているであろう。 向ってはかない虹を浮かべていた。しばらくたっと、その周囲だけ モーター・プールの果に巨大なガントリークレーンが複雜なトラ ひび割れたコンクリートの灰色の円環があらわれてくる。その水にスをひろげてそびえていた。そのガントリークレーンに踏みつけら 濡れたコンクリート の地肌が人々の眼にかえって荒廃の色を焼きつれて長大な物体が横たわっていた。クレーンにもその物体にも一面 ′ッテリー イ・・ヘル、ー ス・ヘリー
舶連営班は現地で解散、ただちに帰遠地別の輸送体形の編成を おこない、 一八四個の輸送船団に分乗、逐次海王星を離れて大 2 2 圏航路を火星、地球、金星へと向った。なお、第七、第八巡洋 派遣軍が遠ってくる。連邦は都市の大きさに比例して、連邦兵団艦戦隊は木星近傍に在り航路を警戒中である。 への兵員供出割当てを定めていた。そして都市はつねにその割当て 数を維持するように義務づけられていた。百五十年にわたる長く苦 どこのスペ】ス・ポートも混雑していた。収拾のつかなくなる一 しい戦いに、連邦兵団ははげしい損耗をつづけ、都市はその補充兵 歩手前でかろうじて業務を支えているような緊張と投げやりが浮わ 員を送るために悲惨な努力を重ねなければならなかった。 シティ 市に割当てられた兵員の数は六万。実際には五十年にわたってのついた酔いのようにすべてを支配していた。長かった戦争の間に、 べ八十五万。そのうち十五万六千が失われていた。恐るべき数字だ広大な太陽系の全域に送られ、使われ、たくわえられていた厖大な った。そして今、帰還しようとする者は約五万、戦いの始まった年量のあらゆる物資が、今、汐が寄せるようにあとからあとからすべ には八十万を数えた市の人口は、帰って来るはずの者をもふくめててのスペース・ポートに向って送りかえされていた。戦後の復興に も二十三万に減少していた。それでも還って来る人々は、市をよみ必要とするものだけを送りかえし、他はすべてそのまま宇宙空間に がえらせるに十分な数と力を持っていた。だが衰えきった今の市で投棄するはずになっていたのだが、その計画もどうやら実際にはお こなわれてはいないようだった。現地側にしてみれば無理もないか はさし当ってその五万人の急増人口をどうやって食べさせてゆくか ・、深刻な問題だった。しかしすべての生産機構がふたたびその能力もしれなかった。ようやく戦争が終った今、綿密な計画も充分な連 を拡大させてゆく間の期間、連邦が各都市に特別助成を計ると言明絡ももうどうでもよいのだろう。 していた。しかしそれが何の保障になるだろうか。生きる為の真の遠く辺境に設けられていた何千もの原子力発電所が解体されて送 りかえされてきた。宇宙空間で極めて重宝されて使われていた何万 苦しみは実はこれから始まるのだ。 基もの宇宙船ドックが幾つもに切断されて曳かれてきた。またおび 二九九九年三一九日惑星間経営機構発表 ただしい食料、医薬品、予備燃料、地上車、そしてときには小さな 辺境星域に展開中の辺境星域派遣軍は海王星『。フンクツーム 人工惑星までが送りかえされてきた。スペース・ポートの周囲一帯 氷大陸』に集結を完了し、逐次、撤収を開始した。すなわち の地域はそれらの器材や物質で幾つもの高大な山ができた。地球で は南極大陸の氷原やグリーンランド、アフリカの砂漠などがやがて ち、派遣軍第一、第二、第五、第七宇宙戦任務部隊と支援群。 第一一、第一七、第一九宇宙戦任務部隊と支援軍。および経それらの物資のなかば永久的な保管場所になった。月のクレーター の内部や、火星の東部地溝帯、木星の半泥状のメタンの海も同様た 営機構航路管制局作業グループ、通信ネットワーク定点群。船 こ 0 シテ ( 市は今や荒廃していた。そして地球連邦は崩壊しようとしてい シティ シティ
戦いは太陽系の各所ではげしくくりひろげられた。 そのほとんどがエレクトロニクスどうしの妻絶な破壊戦であ り、死の恐怖や破減への不安を知らぬメカニズムがたがいに 放っ際限のないたたき合いであったが、時に不幸にも生身の 人間がぶつかり合う場面もあった。それは悲惨な結果を招い 辺境星区の有する原子力兵団は極めて優秀であり、惑星間経 営機構の辺境星域派遣軍はしばしば危険な状態におちいった。 その甚大な損害は時に作戦を全面的に停滞せしめた。とくに火 星、木星間大圏航路第三ホフマン軌道周辺における遭遇戦は人 類戦史上にかってその比を見ない苛烈、凄惨を極めるものであ 辺境星域原子力兵団探察部隊と、経営機構・辺境派遣軍の補 給輸送船団が、強烈な磁気嵐という不測の事態がわざわいして 一ないし二光秒の至近距離で遭遇したのだった。三百隻の輸送 エスコート・クルーザー 船団を守る四十隻よりなる護衛巡洋艦戦隊は輪形陣をもってこ の緊急の事態に対処した。 << ・ O ・・・はよくミサイル の防禦網を突破し、果敢な突撃を反復した。その戦闘の詳細は 太陽系連合資料編纂局フィルム・ラボラトリー 「戦史」 セクション・フィルム・ナン 二四—< 九 より抜粋 今日にいたるもあきらかでない。それはおそらく永久に知られ ることはないであろう。 星々の光は戦場となった広大な空間につめたくかがやきわた 、破壊された宇宙船は針路を失っていたずらに狂奔し、誘導 装置の機能を喪ったミサイルのむれはま・ほろしのようにあても スペース・スーツ なく暗黒の奥へと消えていった。内容物の噴出した宇宙服や 溶融したヘルメットがただよい、マイナス二百度 O の冷たく暗 い空間は、そのまま死のおびただしく占めるところとなった。 一瞬の遭遇戦に両軍ともにその兵力の九〇 % をうしない、辺 境星域の探察部隊は残存兵力をまとめ、なお追尾する巡洋艦戦 隊のしつような攻撃を排しつつ海王星シャングリラ平原に撤収 した。 三千百年代の終り頃には、戦いはようやく冥王星の 上に移っていた。第五扇形大陸、イカルス平原における会戦は 攻防両軍にとってそれがさいごの組織的戦闘であろうと思われ た。惑星間経営機構も、辺境星域もすでに疲労ははなはだし く、その多年にわたる巨額な戦費の捻出は双方の広大な経済圏 を荒廃に帰し、人類の文化は急速に崩壊しつつあった。 ォルドウ・ハリク・メモリアルホール所蔵 ・ O ・・・記録 ファイル七一—ga 6 より 2