やがて、暗闇のなかで、息子はわたしの腕をさぐった。「これか「金星ロケットだよー ロケット・ハロルドだ ! 」 ら、どうするつもり、 家内が、ロをはさんだ。「いまも、ガイに話してたところなの。 6 おそろしいまでの森の静けさのなかで、わたしはそくっと身をふこの何週間か、新聞が入らないもんだから、なにも知らずにいたっ るわせた。「警察と新聞社に知らせて、警告を出してもらうようにて。新聞屋へは、文句をいったんだけど : : : 」 しよう」 わたしは、家内を手で制した。「つづけたまえ」と、ガイをうな したい、どこへ行ったのかな ? 」 がす。 わたしは、東の空を眺めた。山あいから昇ってきた星ぼしが、ガ 「ちょうど、発射ボタンを押して、 ハッチが閉まりかかったとき ラス鉢いつばいのホタルのように輝いている。 に、ひと群れのフクロウが、ロケットのぐるりを飛びまわりはじめ 「最後に見た三びきは、あの方角に行ったんだ」 た。そのうちに、やつらはハッチをくぐって、どんなはすみでだ か、そいつをこじあけちまったんだ」 家を出てから、数時間がたっていた。明りのついたテラスに足を エムが、家内にいった。「きっと、百羽はいたにちがいないわ。 踏み入れたとき、発着場のほうに、〈リコプターの黒い影が見えあとからあとから飛んできては、 ( ッチのなかへ入ってゆくの。そ た。つづいて、テラスの椅子にすわっているガイも、見つかった。 れから、こんどは記録用の機械を、外へほうりだしはじめたわ。警 手で頭をかかえているのだ。 備員が、はしご車で、ロケットへ入ろうとするんだけど、そのフク ロウたちときたら、運転手の頭をなにかの道具でなぐって、とうと エムが、家内にしゃべっている。「彼、すっかり気が転倒してい るのよ。彼にできることはなにもないらしいの。こうしてはおけなう気絶させてしまったわ」 いと思って、むりやりひつばってきたわ。お邪魔でなかったら、あ ガイは、げつそりと面やつれした顔を、わたしに向けた。「その の人たちが対策を立てるまで、ここにいさせてくれない ? 」 うちに、 ハッチが閉まって、われわれは、そばに近づけなくなっ わたしは歩みよって、声をかけた。「こんばんは、ガイ。いった た。五分後には発射が起こるんだからね。ところが、その発射がお いどうしたんだ ? 」 こらない。あのいまいましいフクロウめが : : : 」 彼は首をもたげると、立ちあがって、しきりに頭を振った。「ひ東の空が、パッと輝いた。わたしたちは、い っせいにふりかえっ どいもんだ。計画は、すっかりだいなしだし、そばへも寄れないと た。山なみの向うの黒いビロードの上を、つかのま、金いろの鉛筆 きてる」 の線が走った。 「なにがあったんだい ? 」 いってから、 「あれだ ! 」ガイがさけんだ。「あれがそうだ ! 」 「ちょうど、発射の寸前というときに : : : 」 彼はホーツと息をついた。「ロケット一台、まる損か」 「なんの発射 ? 」 わたしは、彼の肩をつかんだ。「というと、金星には着かないっ 「ロケットさ」 てことか ? 」 「ロケット ? ガイは、うわの空で、わたしの手をふりもぎった。「もちろん、 ガイは、うめき声をあげた・ 着くには着くさ。自動操縦装置は、、 しじれないようにできてるから
いや、どうして大したものじゃないか ? さっきの自分が そのあいだにお客のマーティニをこさえた。用意がすむと、わたしつは たち四人はカクテルを、子供たちはフルーツ・ジ、ースを、それそ少々恥ずかしくな 0 たわたしは、手を伸ばして、ガイの背中をどや してやった。一瞬、こいつにヴォル。フラのことを話してみようか、 れに飲みながら、ガイの放送を見物にかかった 工大教授のなんとかいう男が、多段式ロケットの設計図の解説をという気持がわいた。だが、ほんの一瞬だけである。 ロケットの基部に、炎の球が現われた。まるで奇蹟のように、巨 はじめた。 しばらくがまんしてから、わたしはみこしを上げた。「研究室大な円塔がぐ 0 と持ちあがり、しばらく火柱の上でたたずんでか ら、飛び去っていった。 に、ちょっとチ = ックしときたいことがあるので」 画面はスタジオにもどり、アナウンサーが、いまのフィルムがお 「おうい、ちょっと待てよ」ガイは不服そうにいった。「じきに、 ととい撮影されたものであることを、説明した。その後、ロケット 発射の瞬間をやるから」 の第三段目は、つつがなく、晴れの海の南岸に着陸したらしい。ア 家内がわたしをにらんだ。そう、あの目つきである。わたしは、 上げた腰をおろした。それから立ち上 0 て、もう一杯「ーティ = をナウンサ 1 は、うしろの大きな月面図で、その位置を示した。 こしらえ、ついでに、 = ムのもかえてやった。あらためて、わたし「この地点から、ロケット・チャーリ 1 と呼ばれる遠隔計測機が、 数カ月にわたって、科学的データ 1 を電送してくるのです。だが、 は腰をおろした。 テレビの画面は、砂漠の発射台に切りかわ 0 ていた。ガイの顔がみなさん、そのまえに、 0 ケ ' ト・チャーリーからの最初の公開放 ど、つ 出てきて、このボタンを押すと、うしろに見える大 0 ケ ' トの三段送を、見ることにしましよう。では、ケ ' ト・チャーリー、 目の ( ッチが閉まり、五分後、自動的に発射が行なわれる、というぞ」 スクリーンにクロノメーターが現われ、いっとき沈黙がおりた。 ようなことをしゃべった。 息子の囁きが、わたしの耳にとびこんでくる。「ガイ叔父さん、 画面のガイがボタンを押し、わたしの横にいるガイが、小さなた めいきをついた。ハッチがゆっくりと閉まるのを、わたしたちは見これ、最高だなあ ! 」 家内の声。「エム、わたし、気が遠くなりそうだわ」 まもった。 突然、スクリーンに月面の風景が映った。これまで、さんざん絵 「颯爽たるもんじゃないか」わたしはいった。「キャプテン・フュ に書かれたのとそっくりだ。機械的な声が、割ってはいった。 1 チャーそこのけだぜ。目標はどっちだい ? 」 「 ( ロー、地球。こちらは晴れの海のロケット・チャーリーです 「あなた、お願いだから、だまって下さらない ? 」 いまから十五秒間、メネレアス山脈のパン撮影をおこないます。そ 。みつともないや。いつだって、ふざけてんだか 「そうだよ、パパ のあと五秒間、地球にカメラを向けてみましよう」 ら」 カメラがまわりだして、荒々しくそそり立った山峰が、つぎつぎ スクリーンでは、ガイのおそろしくきまじめな顔が、この計画に ついての説明を進めていた。そこまできて、わたしは ( ッと思いあにスクリーンを横ぎっていった。終りがけに、直立した第三段ロケ たったのである。これは、月面軟着陸を目ざした観測ロケットなのツトの影が、前景に現われた。 ふいにカメラがはげしく・フレた。一瞬後ビントが合い、わたした だ。おそらく、着陸の実況も放送してよこすのだろう。ふむ、こい 脚 5
な。だが、あのロケットは、なんの記録装置も、テレビ・カメラ 息子は、ひじでわたしをつついた。「利ロなフクロウだね。旅は も、積んじゃいないんだ。いまいましいフクロウどものほかには」長いから」 息子が笑った。「フクロウかアー パ。ハにきけば、なにか知って わたしは、息子のロを、手の平でふさいだ。ふと見ると、ガイが るかもしれないよ」 受話器をだらんと耳からはなしている。 わたしは、こわい顔で息子をにらんだ。彼はロをつぐむと、踊る早ロで、ガイはいった。「ロケットから、ラジオでメッセージが ようにテラスからかけだしていった。「すごい、すごいー こいっ届いたんだ。ラジオがほうりだされずにすんだのは、わかってい は最高だよ ! こいつはゴキゲンだよ ! 」 た。だが、こんなテープは、吹きこんでおいた覚えがないんだ」 ガイは、通話ロへどなった。「テープを反復してくれ」そういう 電話が鳴った。テラスのポックスに急いだわたしは、息子の腕をと、受話器をわたしによこした。 つかんだ。「ひと言ももらすんじゃないそ」 しばらく受話器からは、・ サーザーいう雑音たけが聞こえてきた。 それから、軟らかな高い声が、話しはじめた。「こちら、ロケット 彼はクックッと笑った。「いたずらがはねかえったね、おやじ。 ハロルド、まったく異常なし。こちら、ロケット・ ハロル・ト、ー〈 ・ほくが、なにもいうはずないよ。ときたま、ニヤつくだけのこと さ」 間たちょ、さようなら」間をおいて、明瞭なヴォル。フラ語で、べ 「こら、 しいかげんにしろ」 の声がいった。「われわれを創った人間よ、あなたを許そう。自分 息子は、身をよじりながら、わたしの腕につかまって、電話口またちが星から来たのでないことを、われわれは知っているが、やは で歩いた。「おもしろいなあ。金星へ着いた人間は、そこで出会っりそこへ行く。族長であるわたしは、あなたの訪問を待っている た金星人から、カリフォルニアの白い神さまの伝説を聞くんだろうよ。さようなら」 ね。そしたら、ぼく、みんなに話してやる」 わたしたちは、ロをきく元気もないほど、興奮で疲れはてて、ぼ 電話は、ガイを出せとわめいている気ちがいからだった。わたし んやりと突っ立っていた。わたしの胸のなかは、ぼっかりと穴のあ はガイのそばで、受話器からもれてくる、うわずった声を聞いた。 いたような淋しさだった。 やがて、ガイがいった。「いや、発射の遅れは、自動操縦装置が じっと立ちつくしたわたしは、東の空を仰いだ。うねうねと連な 修正するよ。問題は、それじゃないんだ。記集装置を全然積んでな った尾根が、その黒い乳房のなかに、踊りまわる鉢いつばいのホタ ってことなんだ : : : え ? なにがおこったって ? おちつけ。な ルを抱えていた。 んのことか、さつばりわからんそ」 ややあって、わたしはガイにいった。「金星行きの人間乗り口ケ エムが家内に話しているのが、聞こえた。「それがねえ、とって ットができるのま、、 。しつごろのことなんだい ? 」 も妙な話なのよ。そのフクロウたち、背中になにかをかついでいる らしかった。中の一羽が包みをおっことして、それを警備員があけ るのを、わたし見たわ。葉っぱの中にーーーあなた信じられて ? ーーー こんがりキツネ色に焼けた小鳥が、三羽も入ってたの ? 」 ー 57
ミ一三一 1 ワッチバード ①メタル・ファイバー翼 ②脳・コンビュータ・コア ③探知システム ④ ID ユニット 、⑤核融合炉 、、⑥翼運動制御部 - ッ / ク ′くイロットフィッシュ ①フォノン・メーサー ⑤核融合ロケットエンジン 。・⑥方向制御ロケクト ェル・ドラド市 ェアリーズ号 レーク・プルー・ウォーター ダイノソア進入経路 ストルツバーグ城
⑩艦橋 ⑤動力伝達パイプ⑨艦尾探知器 ①緩衝座席 ⑥反動推進駆動機関⑩マンシェン駆動機関⑩中央昇降機 ②緊急用空気ポンべ ⑩ジャイロ支持場発生器⑩艦橋甲板 ③慣性駆動機関 ⑦着陸脚 ④ D ( 慣性駆動 ) ユニット⑧最下部ェアロック⑩ジャイロ制御場発生器⑩コンピュータ・コア 0 匸」。盟い 0 ール⑩ 宇宙船内基本配置 艦橋 艦長執務室 客室 食堂 艦首探知器 コンピュ もやいロケット 士官室 水耕農場 星間駆動系 慣性駆動系 方位ジャイロ ー核融合炉 中央昇降路 燃料タンク 船倉 れは船の大きさを示している。最大のクラ スがアルフア。以下ペータ、ガンマ、デル 夕、イプシロンと続いている。データを次 に列記するが、それよりも、上の写真を見 系 ていただいた方が感じがっかめると思う。 甲 アルファ級・全長三五〇メートル、船幅 気七 0 メートル、乗員三五名、乗客三五 0 名 推板部ペータ級・全長ニ七五メートル、船幅六 動定下〇メートル、乗員ニ八名、乗客ニ 0 〇名。 反安最ガンマ級・全長ニ五〇メートル、船幅四 五メートル、乗員ニ四名、乗客一五〇名。 デルタ級・全長一五 0 メートル、船幅三 0 メートル、乗員ニ四名、乗客一 00 名。 イプシロン級・全長一〇〇メートル、船 幅一五メートル、乗員一五名、乗客一ニ名。 データにでてくる乗員とは、船長、一等 航海士、ニ等航海士、三等航海士、四等航 海士、機関長、下級機関士、それにドクタ 事務長ほかもろもろのことである。肩 章、袖章を描いておいたのでその姿を想像 されたい ( 無理かなあ ) いよいよ内部である。基本構造は図のと おり。尚、反動推進駆動系 ( 日 a ) のノズ ルを「銀河辺境への道」のロ絵では中央部 につけたが、問題がある上、チャンドラー につけたが、問題がある上、チャンドラー 氏が手紙で位置を指示してきたので今回、 下部に変更した。 は要するに現在のロケット駆動のこ とである。もっとも水素核融合炉なんての がついてるから、現在のと全く同じではな 慣性駆動系 ( ー ) は一種の反重力駆動 である。ュニットになっていて、他の乗物 に簡・にとりつけることがで - る。原理は、 円筒形コイルとはずみ車を使った昔からあ る反重力理論を一工夫したものである。 マンシェン駆動系は、有体にいえはワー プの一種なんだが、あんなにたやすく目的 地一」に着・き - はーしよい 0 ーを併用して時空間 を疾駆するといった感じである。第一巻の 描写で理解していただきたい。 上の絵は静 止状態で、機関が作動すると、何も見えな くなる。きわめて危険なしろものである。 もやいロケット 監尾探知器 着陸脚
キッチンのなかを踊りまわったわたしは、トウモロコシのかごやってきたのか ? 』と質問するだろう。政府は、しぶしぶながら、 を、けとばしてしま 0 た。メイドは、さ 0 そくキ ' チンから逃げだ事実を認める。言語学者たちは、彼らの中に入 0 て観察をつづけ、 していった。 単純なヴォルプラ語を習得する。そして、彼らの伝説も。 家内は、まじまじとわたしをみつめた。「実験用のアルコールで ヴォルプラ文化は、やがて全国的な熱病になるだろうーーーあらゆ も、飲んだのじゃない ? 」 る喜劇のなかで、これほど滑稽なことが、またとあるだろうか ? ネクダー 「神々の美酒を味わったのさ。わがヘラよ、きみのゼウスは、イカ すえ ロスの裔なる小さきギリシャびとたちを、ついに作り出したそ」 「あなた、聞いてくれているの ? 」家内が、しびれをきらしたよう 家内は、匙を投げたように、かわいい肩をすくめてみせた。「俗にいった。 つぼいマーティニで、しんぼうしていただけないかしら ? 」 「ん ? まあ、もちろん」 「まけておくとしよう。 : 、 カそのまえに、 この世のものならぬキス 「ひとことも、聞いてやしないくせに。よそ向いて、ニャニヤして を」 るばっかりで」彼女は立ち上って、マーティニのお代りをついでく れた。「よ、、 しこれで目をさましてちょうだい」 わたしはマーティニをすすりながら、テラスの椅子に寝そべり、 金いろのタ陽に照らされた牧場の美しい丘を眺めた。わたしは夢を わたしは、外を指さした。「あの音は、ガイとエムらしいぞ」 描いた。まず、べイシック・イングリッシ、の語彙に見あった、ひ 一台のヘリコプターが、尾根を斜めに越えると、かしわの森の真 びきの美しい言葉を考え出して、それをヴォル。フラたちに教えこむ上をかすめて、こっちに向ってきた。やがて、静かに着陸をおわっ のだ。そして、彼ら自身の手で作った樹上の家に、住まわせること たガイを、わたしたちは出迎えにいった。 にする。 とび下りたガイは、エムを助けおろして抱きしめているわたし ついでに、伝説も提供しておく。彼らは星の世界からやってきたに、こうき、こ。 しオ「テレビ、つけてあるか ? 」 住人で、このあたりの丘へ、最初の赤い人間たち、最初の白い人間 「いや」わたしは答えた。「なぜ ? 」 たちが出現したのを、すべて見てきたのだ、と。 「じきに放送が始まるんだ。間にあわないかと心配した」 「なんの放送だい ? 」 ひとり立ちできるようになったところで、わたしは彼らを手ばな 「ロケットからのさ」 してやる。大平洋一帯に、それこそ突如として、ヴォルプラのコロ 「ロケット ? ニ 1 が出現するのだ。ある日、だれかが、その一びきを見つける。 どんな新聞だって、そんなものを本気にしやしないだろう。 「しつかりしてよ、あなた」家内が口をはさんだ。「ガイのロケッ そのうちに、もう少し権威のある人間が、彼らを発見し、観察すトのこと、話してあげたでしよう ? 新聞なんか、もう大騒ぎよ」 る。そして、こう結論するだろう。『たしかに、彼らはある言語を テラスを上りながら、家内はガイとエムをふりかえった。「か 持ち、かっ、それを理性的に話している』と。 れ、今日はコンタクト不能なの。なにしろ、ゼウスになったつもり なんだから」 政府は、もちろん否定的な声明を発表するにちがいない。新聞記 者たちは、さっそく『真相を暴露』し、『かれら異星人はどこから わたしは息子こ 冫いいつけて、テラスまでテレビを運んでこさせ、
しかし、いまや事情は全くちがってき わゆる文学青年並みのやわな精神では、で一人は、光瀬龍であった。 きることではありませんでした。的な 二人は、ほとんど同時にマガジン誌た。従来、ただ空想の中だけで、かなり恣 冫しま現実の 仮説の立てかた、裏の取りかた、その展開上に顔を出しはじめるが、時期的にいう意的に使われつけてきた月よ、、 と、光瀬龍が数カ月早い。その最初は、コ世界ーーー人類の新しいフロンティアになり の結果としてのものの見かた、感じかた つつあった。そこで、人類が現実に何を発 ント風の小品『二十一世紀ガン・カタロ を、どうでも世にひろめたい、知らせたい という、エネルギッシュな気持があってこグ』であったが、本格的な作品による登場見し、そこで人間がどう行動し、どんな思 は、一九六二年五月号の『晴の海一九九七索をするか。それは、従来の冒険小説的 そはじめて可能だったはずです」 、スペース・オペラ風とは、自ずか そして、このことは、やがて、まず二人年』であった。 この号は、〈月特集〉として編集されてら異なった題材を、現代に提供するは の新人作家によって、積極的に実証されは ずであった。 じめる。その一人は小松左京であり、他の 一ちょうど、米ソの月をめざす宇宙竸争ぼくの〈月特集〉の企画の狙いもそこに A 」 あった。・ほくはそこで、月を舞台に が、猛烈な押せ押せムードの中でスタート いうより、新しい状況下にある月そのもの を切った頃である。ソ連は一九五九年から 三度にわたってルーニク・ロケットを月面をテーマにした、新しいが・せひほしか に送りこみ月の裏側の写真撮影にも成功しった。 て勝利ムードだったし、それまで数度にわ第もちろん、宇宙への関心のうすい既成作 たって失敗をくりかえしていたアメリカ家たちにそれを期待することは所詮むりだ も、この年ーー一九六一一年四月には、ようった。」いやでも新人のファン・ライターた ・ロケットを打ちちの中から、候補者の目星をつけなければ やく最初のレインジャー こんでいた。ジャーナリズムは、そろそろならなかった。・ほくは、〈宇宙塵〉の作品 月征服の時期やその方法について予測したを読み、第一 . 回コンテストで最終審査 り、月についての記事を特集しはじめたりまで残った人々や、ちょうどその頃締切間 近かだった第二回コンテストの応募作品の していた。 の世界では、月は、すでにかなり以中からも人材を渉猟した。その結果、選び 前から、〈月並み〉な舞台として敬遠されだしたのが、光瀬龍だった。 がちだった。あまりに頻繁に使われてきた光瀬龍は、第一回コンテストに応募 結果、デ 1 タも使いつくされて、新味がなして、審査に最後まで残り、奨励賞一金三 3 くなり、新しもの好きのファンから飽千円也を受けた何人かの一人だった。 ( そ の『シローエ二九一九』はのち書き直され きられてしまったためでもあった。 、第第を、を . を華犇毳第第を 第きまを 3 第 筆者 ( 右 ) と光瀬龍氏
工ア・カー ①制御コンソール ②ルーフ・ドア ③テレビ・アイ ④探知システム ⑤着陸脚 ⑥制御コンピュータ ⑦フレキシプル・ウイング ⑧核融合炉 ⑨ D ユニット ( D バランサー マ′物 3 ② 4 ⑥ ④ 宇宙港 ^ エル・ドラドの生贄》 この巻のグライムズは大尉である銀可連邦監察宇宙軍の砲術将 校として巡航宇宙艦 ^ ェアリーズ〉に乗組んでいるのだ。 よ一いよドン「ハチ : : : と思 巡航宇宙ーーーそう軍艦だ。しかし ことでエ・ド一フ」「〉 ったら、大まちがい。一医学上の救援と なる惑星に行ってしまうのだ。 い惑星である税金や、、 - ^ エル・ドラド〉は大金持ちしか住んで ら社会主義やらに音をあげた大富豪が不毛の惑星を買一、とつ大改 造し地球型の惑星にしたのだ。 とにかく金にあかせて造りあげた星なの・、何でかんでも完全 自動。なまいきなロポットが面倒をみてくれる ~ ようにできてる。 メシニ伯爵とかマ匕ル 従って住んでいる連中も只者ではない。 ーネ王女とか、タカダ男爵とか、アフリカの酋長とか : : : 怪しげた 人物はかりである。 そんな ^ エル・ドラド〉にやってきたグライムズ、ひど目にあ わないはずがない。大気圏突入用ロケット ^ ダイノソア〉は水没さ せられるし、海水浴場の兄ちゃんみたいな恰好はさられるしで散 散である。 ^ ダイノソア〉の水没進路が そこで地図を見ていただきたい。 かっていただけるだろう。湖の脇にあるのが宇宙港。全長六 00 の ^ ェアリーズ〉の大きさがみてとれるはずだ。地平右よのにある のが ^ エル・ドラド〉市で、あとは手入れのゆき届いた大庭園 ってみれば、海、山を配した人工の公園惑星である。金が余っ る連中だから、惑星道楽してるのだ。 ( ヒガミっぽい文章だ ) そんな ^ エル・ドラド〉で使われているメカも金に糸目をつけて ないからケッタイなのばかりだ。螺線階段状のエスカレーターなん てのは、本編で図解したが、まことに無駄な代物である。ま、無駄 が富の象徴なんだから構わないやーーーてなことでエア・カーから。 本編描写を引用しよう。「ひどくきやしやに見えるがすばらしくス マートで、役に立たぬ飾りにいろどられた機械式のトンボかなにか これを絵にしたのが上の図解ーで推進するか を思わせる」 ら、せつかくの可変翼は飾りである。エル・ドラドの発想ー ェア・カーよりも更に面妖なのが、ワッチバードとパイロットフ ィッシュ。共にエル・ドラド人の護衛を務めるサイボーグである ワッチバードは、鳥の脳をメカに組みこんだもので鳥の姿そのま まに造ってある。羽毛一本にいたるまで金属でできているのだ ( 見 この贅沢 ) ふだんは羽ばたいて飛ぶのだが、必要とあれば慣 性駆動を使って空中に静止することもできる。 ( いつもーを使わ 本編中に ^ 炎雉 ないところが賢沢なのだ ) 特に火器は持ってない 子〉の脳を内臓した新型のワッチバードがでてくるが、これはロケ ットやレーサーまで備えた険呑なしろもの。 シュの方は、あまり魚的ではない は、 ^ アルゴルⅢ〉に棲むすばらしく知能の高いクジラ類の生物を 金属のケ一スへおさめたもの」で小型魚雷といった恰好をしている。 特に描写がなく、わりと自由に描いてみた。頭部にフォノン・メー サーを備え、ロケット推進で水中を駆けめぐる。こ奴がロック・オ ーガを倒すのは見ものだが、そこは第ニ巻を読んでちょうだい。
ど興味深いところなのである。 いったいどうすれば、増大する騒音から身を守るうちに下がったという。 ることができるか。同研究室では広大な音響試験この研究室では都市騒音だけでなく、工場とか極地の空に出現するオーロラの大部分は、地上 場を設け、そこに一〇分の一の規模の模型市街をビルなどの騒音についても研究を続けている。騒九〇キロから一一〇キロの空間に現われる。短波 組み立て、駁音のない街作りを考えることにし音の状況を調べ、それをどのようにして押えるか無線通信に重要な役割を果す電離層の層も、一 を教える。これによって工場やビルでは、環境が〇〇キロ前後に出現する。電波障害の原因を究明 住宅地や商店街、交通路をどのように配置すれ改善されるばかりでなく、労働生産性も向上するし、対策を立てるためには、どうしてもこのあた りの仕組みをよく知っておく必要がある。 。しいか、緑地帯でどのように騒音を遮蔽するかそうだ。 を、モデル都市によって考えようというわけであ 公害といえば大気とか海洋などの汚染ばかりが このほか流星の分光分析により、地上一〇〇キ る。 クローズアツ。フされているが、騷音についてももロほどの空間には、ナトリウムとかマグネシウ っと考えてみる必要がありそうだ。 同大学の近くにあるポルジスキー市では、ここ ム、カルシウム、鉄などのイオンが浮遊している 数年交通量が増え、カルビシェフ将軍通りを中心 ものとみられている。なぜこうしたものがあるの に騒音レベルが上がってきた。研究室ではさっそ か、どうしても知りたいところだ。 新顔「ジャンプ」衛星 くここを研究材料としてとり上げ、交通の流れを さらに地球の上層にはジェット電流というもの 変えることにより、騒音を押えるアイデアを提案これまでに人工衛星がどれだけ打ち上げられたが流れている。不思議な現象だが、これも地上一 した。 かご存じだろうか。その数はざっと二〇〇〇個。〇〇キロほどのところで起きているのである。 このアイデアは同市ソビエト執行委員会によっ通信衛星、測地衛星、太陽観測衛星、偵察衛星、 こうみてくると、科学者たちが地上一〇〇キロ て受け入れられ、さっそく実行に移された。効果気象衛星 : : : 。数え上げればキリがないほどであ付近を調べたいと思う理由がおわかりいただける はてき面、ポルジスキー市の騒音レベルはみるみる。 だろう。地上一〇〇キロ付近は、人工衛星も気球 だが、大気圏外のことなら何でものこの人工衛も近づけない秘境。そうなればますますもって、 星にも、できないことがただひとつある。それは知りたいというのが、人間のさがというものだ。 地上一〇〇キロ前後を飛んで観測することだ。事何かいい方法はないものか、各国の宇宙科学者 実、二〇〇〇個もの人工衛星のうち、それができたちは知恵を絞っていたが、そこにわが日本の科 るのは、ただの一個もないのだ。 学者たちが実に巧妙なアイデアを考えた。人工衛 どうして低空飛行が人工衛星にはできないの 星とロケッ か。それは大気の抵抗が大きすぎて、速度が急激 トの合いの ににぶり、地上に落下してしまうか、大気の摩擦 子を打ち上 熱で燃えっきてしまうからである。 のげ、それそ れの欠点を これまで科学者は、この問題に頭を痛めてき カ・ハーして た。地上一〇〇キロほどの大気圏外を調べたくと 星観測しよう も、人工衛星は使えない。そうかといって気球は 衛 というの 地上三〇キロほどまでしか上昇しない。止むなく る 観測ロケットを使っていたのだが、ロケットの滞 す図ナ 空時間はごく短かく、思うように観測できない。 プ像考案した ン想のは航空宇 地上一〇〇キロ前後は、科学者たちのアンタッチ ャ成宙研究所の ャプル・ゾーンだったのだ。 7 ジ完 五代富文主 ところが皮肉なことに、この地上一〇〇キロの 任研究員ら あたりは、科学者たちにとって、よだれが出るほ こ 0 模型都市に騒音源を配置し実験する 大学の研究室 ) 0
わった。 空飛ぶヴォルプラ〈頁より続く〉 その夕方の四時には、もうわたしは彼らに固形食を与えていた。 翼指をつ・ほめた彼らは、小さなコップを手で支えながら、いとも人 間らしいようすで、水を飲むのだった。彼らは、敏捷で、詮索好き まわっており、オスなどは、しきりに立とうとしていたのである、 オスは、ほかのものより少し大柄で、七十センチぐらいの身長がで、茶目で、そして疑いもなく、好色であった。 見れば見るほど、彼らのヒュ ーマノイド的な特質は、明らかにな あった。顔と胸と腹部を除いて、全身が柔らかな、金いろに近い ってくる。たとえば、腰から、臀部にかけてのカー・フだ。肩胛骨と ぶ毛で覆われている。金いろの毛のないところの皮膚は、ピンクい ろだった。頭と、オスの肩の上には、チンチラのようなふわふわし胸骨が、不釣合なまでに逞しいのはもちろんだが、それでいて、メ た毛の房が、おっ立っている。顔つきは、びつくりするぐらいに人スたちは一対の乳房しか持っていない。おとがいとあごは、サルと いうより人間に近く、歯もそれに見あった構造をしていた。それが 間的で、目だけが、まんまるい、夜行動物の眼だった。頭蓋と体と なにを意味するかを、やがてわたしは、あるショックとともに思い の比率も、人間のそれと変わりはない。 オスが両腕を広げると、さしわたしは百二十センチ近かった。わ知らされることになった。 マットレスに膝をついて、まるで小犬と遊ぶように、オスをあっ たしは「彼の腕をつかまえたまま、なんとか翼指を展がせようと、 つついてみた。べつに、目あたらしいものではない翼指は、わたちこっち押しころがしているわたしの背中へ、メスのひとりが茶目 しの育種コロニーでは、数年まえから、見なれたものになっているつ気たつぶりに、よじ登ってきた。わたしはうしろに手をまわし のだ。ニジンスキーの手にはじめて現われた ( おそろしく細長い第て、肩ごしに彼女を抱ぎ上げ、マットレスにすわらせた。柔らかな 五指を、連続的に突然変異させていった結果なのである。すでに指毛の生えた頭を撫でながら、わたしはいった。「よう、べっぴんさ 関節のなくなったそれは、手首にそってうしろに折れ曲り、ほとんん、こんにちは」 ど肱にまで達していた。強力な手首の筋肉が、そいつを前後に動か オスのほうは、ニャニヤ笑いながら、わたしを見まもっていた。 せるのだ。わたしがオスのヴォルプラをからかっているとき、だしそして、いったのである。「よう、よう」と。 ぬけに、それは起きた。》 翼指のおかげで、彼のさしわたしが、左右・二十センチずつ、さら このとてつもない冗談での・ほせぎみのわたしが、キッチンに入り に広がったのである。翼指がぐっと前に伸びると、それまで襞になかけたとき、家内がこう知らせた。「ガイとエムが、夕食にやって って垂れさがっていた体側部の皮膚が、翼指の先端から腰へ、さらくるのよ。きのう砂漠で発射したロケットは、大成功だったらしい にそこから、十センチほどの幅にせばまって、趾のさきまで張りわわ。すっかり雲の上に昇った気分で、お祝いをしたいんですって」 たされた金いろの翼にかわった。 わたしはっニジンスキーそっくりに、ステップを踏んだ。「そり ど ガイのやっ、でかしたー そりや、すてきだ ! いままでわたしの育てたなかで、これほどみごとな翼は、はじめや、すごい ! てだった。これは ( ほんもののグライダーだ。いや、本格的なソア いつもこいつも、大成功だ。すごいじゃないか。すてきじゃない ラーかもしれない。背筋がそくそくするような感動を、わたしは味か。あいつぐ成功また成功とは ! 」 脚 3