星域 - みる会図書館


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1. SFマガジン 1975年9月号

辺境星域派遣軍報告第七一八一一号 三一九一年二三二日一九時五分。わが辺境星域派遣軍は冥王 星イカルス平原に進入を開始した。 イカルス平原における戦いは、太陽系内での人類相 互の間のさいごの戦いにふさわしい劇的なものだった。巡洋艦 コロイハスの奮戦、第七一ルナ・サ 1 ・カスの全減などこの時期 のものだ。実際それらの劇は、人間の手によって書かれ上演さ れる最高の劇よりもより劇的であった。それら数々の物語は、 やがて人々の記憶から完全に喪われてゆくであろう。しかし今 日なお、星々の光にぬれるつめたく乾いたイカルス平原の風光 がそこに立つ人々の胸にある悽愴な感慨をもたらすとすれば、 そのとき、せめて平原の西のはずれに知る人もなく放置された ままになっている一個の記念物、すなわち焼けただれ見るかげ もなく変形した一隻の宇宙船の残骸をおとずれ、その前に立っ 太陽系連合資料編纂局フィルム・ラ・ホラトリー 「戦史」 セクション・フィルム・ナンバー 二四—<< 一八 三八ー四九 より抜粋 ラマ 序章Ⅲ 三一九二年〇〇二日惑星間経営機構発表 第三次統合戦争の終結により、辺境星域派遣軍を撤収し、兵員 てみるとよい。 かくて辺境星域派遣軍の先鋒はついに辺境星域の首 都ォルドウ・ハリクに突入した。それはまことに古代におけるト ロイの落城を彷彿せしめた。 ォルドウ・ハリク市街の壊減をおそれた辺境星域代表カラ・ ルガッスンは全軍に停戦を命じるとともに、惑星間経営機構に 対し、戦争終結に関して積極的意志のあることを通告した。 これによって辺境星域派遣軍遠征の目的は完全に終った。 火星・東キャナル市郊外 辺境星域派遣軍記念碑 銘文より 火星・東キャナル市郊外 辺境星域派遣軍記念碑 銘文より 幻 9

2. SFマガジン 1975年9月号

れて都市連合は惑星間経営機構の傘下を離れて辺境星域へ接近 していった。都市連合を支配するものが大圏航路を支配する、 という言葉は、単に、人工惑星テンホイヤーロの居住区食堂の 軽金属の壁に刻まれた落書の意味するところ以上に重大な意味 を持っていた。辺境星域は都市連合を対象とした《物資貸与 法》を設け、全面的な経済援助にのり出した。かくて大圏航路 に関する辺境星域の発言権は急速に増大し、惑星間経営機構に 所属する宇宙船で、大圏航路に定期的に配船されるものについ てはある種の電子装置、航法装置を辺境星域の指定する規格型 に変更しなければならないことになった。惑星間経営機構は大 圏航路関税を従来の一律五・二 % から等級別較差四・三 % に引 き下げ、また都市連合に対して化学工業プラントの無償援助を おこなうと発表した。火星、金星の開発都市群はいっせいにそ の非を掲げ、惑星間経営機構に対し、至急、辺境星域との会談 を開くことを申し入れた。大圏航路関税のうち、特別船腹課税 のほ・ほ二七 % を辺境星域が、一一一 % を惑星間経営機構が、そし て五二 % を都市連合が負担しているという状況のもとでは、関 税引き下げによる辺境星域と都市連合の惑星間経営機構に対す る優位はもはやゆるがし難いものとなる。事態は急迫し、無能 のそしりに耐えて宇宙開発委員会は再三にわたって斡旋の労を とった。 この点について今少し詳細に観察を加えると、金星、地球、 火星およびその近傍の小惑星、人工惑星の間を連絡する宇宙船 の性能は、辺境で使用されるものよりも全般的に小型であり、 とくに通信、航法装備に関しては、古代地球の造船学用語をも ってすれば外航船に対する内海航路用の船ほどの差があったと いわれる。それに対し、辺境星域の所有する宇宙船は極めて大 型であり、艤装的にも性能的にも、若干の改造をほどこしさえ すれば近距離の恒星間飛行にも使用できるほどのものであっ た。都市連合に属する人工惑星の幾つかは、すぐれた造船能力 を持ち、従来から惑星間経営機構の厖大な出費の幾部分かを補 ってきたのだが、その造船能力が辺境星域の需要を満たし、結 果的にそれらの宇宙船が大圏航路を支配することになった。 かって古代の地球において、商船の性能が海上貿易を左右 し、一国の市場制覇を決定づけたと同じように、三千年代のな かばにあっては、宇宙船の性能が太陽系空間をせばめもし、広 くもした。かってそれが海上権の争奪を内包したように、三千 年代にあってもまた、地球とその植民地の命運に深いかかわり を持っていた。 惑星間経営機構は火星都市群に対して、都市連合へ の長期信用にもとづく経済援助を検討せしめた。東キャナル市 をはじめとする火星都市群はそれに対して強い不満の意を表明 したが、惑星間経営機構の要望はかたく、金星のビーナス・ク リークをリーダーとする金星都市群もまた独自の立場から惑星 間経営機構に強い態度をもって経営機構の組織再編成を要求し た。この時点における惑星間経営機構の主導権は完全に地球連 邦の手を離れて火星都市群、金星都市群に移っている。これは 連邦内部の政治的危機および経済的ゆきづまりによるものとみ られる。こうした惑星間事情に決定的な破局を与えたのは例の 《、辺境星域・都市連合相互経済援助条約》だった。これに よって都市連合は化学工業プラントおよび真空冶金、鍛造。フラ 幻 3

3. SFマガジン 1975年9月号

ントをはじめとする各種の厖大な生産設備と、それにともなう 技術を導入することにより、経済力の飛躍的な強化を図った。 惑星間経営機構はこの経済条約が惑星間経済を不断の混乱にお としいれるものとして辺境星域に厳しく抗議を申し入れるとと もに新たな会談を要請した。この事態に対し、金星都市群およ び火星都市群はそれそれ都市評議会を結成し、さらにその二つ の都市評議会をもって都市評議会連合を組織した。 今や惑星間経営機構は内外から崩壊の兆しをあきらかにしは じめた。 この時期における惑星間勢力の構成は、連邦統計局統計資料 版。図版八八五一につぎのごとく図示されている。 ( 注 ) ( 注連邦統計局統計資料版なるものは今日、実物は 現存していない。『アルテア 4 』タ・ハイ図書館所蔵の地球連邦 調査局ナン・ハー、、 ノ四九一一 ()5 刻印マイクロ・フィルムの記録 に基づいたものである ) ①は二〇〇〇年代末期における宇宙開発委員会と惑星開発組 織の関係を示している。人工惑星都市連合と辺境星域は、宇宙 開発委員会が直接経営に当り、委員会に代表を送ることはなか った。また地球連邦は連邦宇宙省を介して宇宙開発委員会に強 い影響力を持っていた。 ②は三〇〇〇年代初期における状態であり、人工惑星都市連 合と辺境星域の間に締結された相互経済援助条約機構は、宇宙 互助構ー人工惑星都市連合 援機 済約 相経条ー辺境星域 会構火星都市群 員機一 委営 「金星都市群 開間 宙星ー地球連邦 宇惑 連邦宇宙省 工惑星都市連合 辺境星域 会構 員機火星都市群 委営 発ーー経ー金星都市群 開 宙星ー地球連邦 宇惑 ー連邦宇宙省 ー「都市評議会連合 幻 4

4. SFマガジン 1975年9月号

戦いは太陽系の各所ではげしくくりひろげられた。 そのほとんどがエレクトロニクスどうしの妻絶な破壊戦であ り、死の恐怖や破減への不安を知らぬメカニズムがたがいに 放っ際限のないたたき合いであったが、時に不幸にも生身の 人間がぶつかり合う場面もあった。それは悲惨な結果を招い 辺境星区の有する原子力兵団は極めて優秀であり、惑星間経 営機構の辺境星域派遣軍はしばしば危険な状態におちいった。 その甚大な損害は時に作戦を全面的に停滞せしめた。とくに火 星、木星間大圏航路第三ホフマン軌道周辺における遭遇戦は人 類戦史上にかってその比を見ない苛烈、凄惨を極めるものであ 辺境星域原子力兵団探察部隊と、経営機構・辺境派遣軍の補 給輸送船団が、強烈な磁気嵐という不測の事態がわざわいして 一ないし二光秒の至近距離で遭遇したのだった。三百隻の輸送 エスコート・クルーザー 船団を守る四十隻よりなる護衛巡洋艦戦隊は輪形陣をもってこ の緊急の事態に対処した。 << ・ O ・・・はよくミサイル の防禦網を突破し、果敢な突撃を反復した。その戦闘の詳細は 太陽系連合資料編纂局フィルム・ラボラトリー 「戦史」 セクション・フィルム・ナン 二四—< 九 より抜粋 今日にいたるもあきらかでない。それはおそらく永久に知られ ることはないであろう。 星々の光は戦場となった広大な空間につめたくかがやきわた 、破壊された宇宙船は針路を失っていたずらに狂奔し、誘導 装置の機能を喪ったミサイルのむれはま・ほろしのようにあても スペース・スーツ なく暗黒の奥へと消えていった。内容物の噴出した宇宙服や 溶融したヘルメットがただよい、マイナス二百度 O の冷たく暗 い空間は、そのまま死のおびただしく占めるところとなった。 一瞬の遭遇戦に両軍ともにその兵力の九〇 % をうしない、辺 境星域の探察部隊は残存兵力をまとめ、なお追尾する巡洋艦戦 隊のしつような攻撃を排しつつ海王星シャングリラ平原に撤収 した。 三千百年代の終り頃には、戦いはようやく冥王星の 上に移っていた。第五扇形大陸、イカルス平原における会戦は 攻防両軍にとってそれがさいごの組織的戦闘であろうと思われ た。惑星間経営機構も、辺境星域もすでに疲労ははなはだし く、その多年にわたる巨額な戦費の捻出は双方の広大な経済圏 を荒廃に帰し、人類の文化は急速に崩壊しつつあった。 ォルドウ・ハリク・メモリアルホール所蔵 ・ O ・・・記録 ファイル七一—ga 6 より 2

5. SFマガジン 1975年9月号

開発委員会と全く対等な立場と歴史的意味を持っていた。 ーーーーーー宇宙開発委員会は三一一九〇年、金星のビーナス・ク リークに、地球連邦、都市評議会連合、人工惑星都市連合、辺 境星域の代表者会議を招集した。 都市評議会連合は相互経済援助条約機構に対し、個 別に条件付接触の用意があることを表明した。評議会連合はさ らに最新の医療設備、数百ュニットとそれに必要な医療技術員 の提供を申し入れ、将来の技術交流の可能性について覚書を手 渡した。 代表者会議は紛糾のうちに終り、強い不満を表明した地球連 邦はその十二時間後、惑星間経営機構の名をもって経営機構域 内の都市連合のすべての資産を凍結した。 さらに地球連邦は権利を保護するという名目で、火星、金星 および木星に武力進駐をおこなった。 これに対して辺境星域は厳重な警告を発し、火星、金星から 武装勢力の撤退を要求すると同時に、木星における侵入武装勢 力は一定時間経過後に武装解除することを通告した。 三二九〇年〇六三日八時一五分。木星の第四酵素原は脱水素 ハクテリア、イシイ・ヘルムート O タイの急激な繁殖に よって壊減した。辺境星域はこれを地球連邦の生物化学兵器に 。、こ集結中の地球連邦武 よる攻撃と断定「木星の衛星オイロー / 冫 装勢力を駆逐した。木星近傍の第三大圏航路上を航行中の辺境 星域船団はミサイル攻撃を受けた。 宇宙開発委員会はなお現状打開のいとぐちを見出そうとして 努力をつづけていたが、地球連邦は辺境星域および都市連合と の間にすでに戦闘状態が存することを布告した。九六時間後、 評議会連合もこれに同調すると発表した。 ュイ・アフテングリ著 『星間文明史』第六巻〈概論〉 より抜粋 ーーーー、ーー宇宙空間における戦力はすぐれた通信能力に集約さ れる。一光日あるいはそれ以上の広範な戦域における情報の時 空的処理は、情報そのものの伝達技術以上に重要な意味を持 つ。秒速十一万ないし十五万キロメートルもの速度を持っ惑星 アンチ 間戦略ミサイルおよび迎撃ミサイルに対する長距離警戒レーダ ーやホーミング・システムの情報処理、また太陽系空間に展開 する兵力の集中的運用とその補給・支援の。フログラムなど、す べての戦略的課題に亜光速に近い速度域における物理的特性が 考慮されなければならない。 ・・・・ーー・・・・ーーーー宇宙空間に一一一次元縦深的に配置された長距離警戒レ 1 ダー・サイトおよび迎撃ミサイル発射用のスペース・ト 力は、そこを通過するミサイルをほ・ほ一〇〇 % に近い確率で阻 止するであろう。しかしこうした場合っねに問題となるのが、 単位時間内における一〇〇 % の阻止率が、そのまま任意の継続 時間内における阻止率とは考え難い、という点である。惑星間 アンチ 戦略ミサイルは迎撃ミサイルに対する防禦手段として、アンチ ・ミサイル・ミサイルを搭載する。この・・は弾頭に多 幻 5

6. SFマガジン 1975年9月号

辺境の開発は火星や金星の開発とは比較にならぬほ どの厖大な予算を必要とした。それは開発によって獲られる何 ものによっても相殺されることはなかった。ようやく太陽系の 縁辺に達し、さらに遠い星々の間に入りこんでゆこうとする人 類の意志と、冷厳な経済法則とは、あらゆる問題解決にとって 不可逆的前提条件となった。しかし惑星間経営機構は、なおい まだ多分に哲学的意味ではあるにせよ、太陽系連合の方向へそ の規模を拡大してゆくべく性格づけられていた。それはむしろ 情緒の問題であったのかもしれない。歴史的状況における選択 は、あれかこれかではなく、つねにあれもこれも、である。 経済的にも心理的にも地球連邦に直結し、その必要 がある時はいつでも地球に帰ってくることのできる惑星間経営 機構の人々と異なり、辺境の開発に従事する者たちにとって、 天王星や海王星、また冥王星などの千古の静寂に閉された暗黒 の氷原はすなわちそこでの生活の営みのすべてを意味してい た。かれらにとって帰るべき土地はどこにもなかった。最初の うちこそ、辺境勤務員の交代は頻繁になされたが、やがて交代 要員に関する任務のいっさいは、辺境星域でもっとも開発の進 プランクトン・シティ んだ木星の浮游都市と呼ばれる一群の基地が分担することに なった。やがて辺境開発に必要な物資の何分の一かは、辺境基 地みずからが生産しなければならなくなった。連邦の四次に わたる予算縮小とそれにともなう惑星間経営機構の辺境開発支 援の肩代り計画の破綻などによるものであった。辺境の多くの 開発基地は閉鎖され、わずかな保安要員だけが、いっ再開され るかしれぬ基地の維持に残された。長い年月ののち、ふたたび 辺境の基地が厚いモスポールを解いたとき、事情はすでに大き く変化していた。辺境基地に必要なものは、半永久的に自活で きる能力であることが今やあきらかにされていた。辺境は新た な構想によって整備され、充実した開発前線となった。連邦お よび惑星間経営機構に負担をかけないという方向が、宇宙開発 委員会の束縛から解放され、独自な開発路線をたどることにあ る、ということを知った宇宙開発委員会は苦慮した。ここでま たアム・コダイの言を引用するならば、『マルコニー方式によ る通信手段の限界が連邦権力の時空的限界であった』という意 味を連邦はすでに痛烈に理解していたといえよう。その後、二 百年の間に辺境星域からの宇宙開発委員会の人事権の後退、査 察制の廃止、辺境の自由都市化と自治権の確立、司法権の分離 など、飛躍的な地位向上を果した辺境は、三一一八年《グリー ン・グリーン、クク・ヤンダル協定》をもって事実上、惑星間 経営機構を離脱した。これは連邦宇宙開発委員会の提唱する太 陽系連合の終熄を意味している。 ーーーーーー成長のテンポを早める辺境星域にとって、太陽系内 に散在するニ百四十におよぶ人工惑星を経済圏に吸収すること が緊急に必要とされた。人工惑星はいずれも航路標識、中継 港、修理施設などの多目的基地であり、当時太陽系内の宇宙船 の航行には不可欠なものであった。これらの人工惑星は電気、 熱、化学工ネルギ 1 に関しては莫大な発生施設を持ってはいた が、基地の自活能力は皆無だった。人工惑星は都市連合とよば れる組合を結成し、惑星間経営機構の内部にあってひとつの有 力な勢力を形成していたが、地球連邦の経済力が低下するにつ 幻 2

7. SFマガジン 1975年9月号

舶連営班は現地で解散、ただちに帰遠地別の輸送体形の編成を おこない、 一八四個の輸送船団に分乗、逐次海王星を離れて大 2 2 圏航路を火星、地球、金星へと向った。なお、第七、第八巡洋 派遣軍が遠ってくる。連邦は都市の大きさに比例して、連邦兵団艦戦隊は木星近傍に在り航路を警戒中である。 への兵員供出割当てを定めていた。そして都市はつねにその割当て 数を維持するように義務づけられていた。百五十年にわたる長く苦 どこのスペ】ス・ポートも混雑していた。収拾のつかなくなる一 しい戦いに、連邦兵団ははげしい損耗をつづけ、都市はその補充兵 歩手前でかろうじて業務を支えているような緊張と投げやりが浮わ 員を送るために悲惨な努力を重ねなければならなかった。 シティ 市に割当てられた兵員の数は六万。実際には五十年にわたってのついた酔いのようにすべてを支配していた。長かった戦争の間に、 べ八十五万。そのうち十五万六千が失われていた。恐るべき数字だ広大な太陽系の全域に送られ、使われ、たくわえられていた厖大な った。そして今、帰還しようとする者は約五万、戦いの始まった年量のあらゆる物資が、今、汐が寄せるようにあとからあとからすべ には八十万を数えた市の人口は、帰って来るはずの者をもふくめててのスペース・ポートに向って送りかえされていた。戦後の復興に も二十三万に減少していた。それでも還って来る人々は、市をよみ必要とするものだけを送りかえし、他はすべてそのまま宇宙空間に がえらせるに十分な数と力を持っていた。だが衰えきった今の市で投棄するはずになっていたのだが、その計画もどうやら実際にはお こなわれてはいないようだった。現地側にしてみれば無理もないか はさし当ってその五万人の急増人口をどうやって食べさせてゆくか ・、深刻な問題だった。しかしすべての生産機構がふたたびその能力もしれなかった。ようやく戦争が終った今、綿密な計画も充分な連 を拡大させてゆく間の期間、連邦が各都市に特別助成を計ると言明絡ももうどうでもよいのだろう。 していた。しかしそれが何の保障になるだろうか。生きる為の真の遠く辺境に設けられていた何千もの原子力発電所が解体されて送 りかえされてきた。宇宙空間で極めて重宝されて使われていた何万 苦しみは実はこれから始まるのだ。 基もの宇宙船ドックが幾つもに切断されて曳かれてきた。またおび 二九九九年三一九日惑星間経営機構発表 ただしい食料、医薬品、予備燃料、地上車、そしてときには小さな 辺境星域に展開中の辺境星域派遣軍は海王星『。フンクツーム 人工惑星までが送りかえされてきた。スペース・ポートの周囲一帯 氷大陸』に集結を完了し、逐次、撤収を開始した。すなわち の地域はそれらの器材や物質で幾つもの高大な山ができた。地球で は南極大陸の氷原やグリーンランド、アフリカの砂漠などがやがて ち、派遣軍第一、第二、第五、第七宇宙戦任務部隊と支援群。 第一一、第一七、第一九宇宙戦任務部隊と支援軍。および経それらの物資のなかば永久的な保管場所になった。月のクレーター の内部や、火星の東部地溝帯、木星の半泥状のメタンの海も同様た 営機構航路管制局作業グループ、通信ネットワーク定点群。船 こ 0 シテ ( 市は今や荒廃していた。そして地球連邦は崩壊しようとしてい シティ シティ

8. SFマガジン 1975年9月号

MAGAZINE SP ( リこ A 02 & ドに 02 FANTASY VOL. ー 6 NO. 9 SEPTEMBER ー 9 7 5 とに七わ期」、しキュお」まこ、ヴ。 し還長 た面旧み時 ( みまッジをり - たノレたま軍 し一、澄のなみマ・々なしの、しし遣 cn 宿を星もこ ( 。ちで・一数く集ビでで結派ド 野砂れ河もすにん z リのな特レま家完「 を流のりま節組・ト ) がでテ」作で 、を・なー天祭れ季をダブ雲一号らば c.k 号の こま、 ? 、ぐ星わ・の集ンイ星タ月かか cn 格々 たしょは、思り特オテ ス 8 行、す本久 の い出のてもと祭でヴ・ラン年 r.n 宙一 てい火け説い星賞、ズュイ格宇テ . 氏た い想花か伝し、ラフムビラ和本「龍し 歩を、にのわ節ュルイネ ・昭〔ンヴ、るの瀬ま ) タ星盆女さ季ビウェ いいイもたヨい祈塞光ー 星なら織ふいネ、ジしさレでしシ広を要てま 、、たうか牛んし、ン、新だマ誌ま一の福間っし めよろ牽ば美は一ア 、本りゼイ冥空わは て眺たこ、ちの号ジイみ日。あィリの亜かがす 夏つにいのりい星月。タアし先たがラト人「 ■かき撒タたが・今たンニ楽・しとエ一故・たる篇 0

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そして底知れぬ暗黒のかなたへ消えていった。意志あるもののよう 巨体はさらに突進をつづけた。 前方の星の海の奥に、とっぜん強くかがやく一つの光点があらわに円蓋は閉じられた。宇宙レーダーはその見えない触手を、遠く遠 れ、そのまま凝固したかに見えてまた音もなく消えていった。それく紡錘形の物体の消え去った方向にのばして反応を待った。やがて から間もなく、ふたたび第二、第三の長い物体が白光を曳いて発進電子頭脳はふたたび前回と同じ指令をくだした。 していった。 隕石防護シェルターのなだらかな大円蓋にふたたび円孔が開き、 紡錘形の物体は流星のように星の海をすべっていった。 遠い遠い星々の間に火花が散った。一つ、また一つ。それはしば 三度、宇宙警戒レーダーの警急信号を受けた電子頭脳はなお七秒 らくの間そこにとどまり、そしてあらわれた時と同じようにあえか 間の時間的余裕をみてとると、全迎撃組織の再点検をおこなった。 に消えていった。 ダメジ・コントロールは完全に作動していた。レーダーの機能は全 巨体はさらに突進をつづけた。内部の電子頭脳は一秒の数分の一 く正常だった。時間はなお四秒あった。つぎに電子頭脳は二次電子 の時点ごとに微妙な航路の算定をくりかえし、いよいよさいごのコ頭脳、補助電子頭脳を使っておのれ自身を点検した。いささかの異 ースに入った。 状も発見されなかった。そこで電子頭脳は既知のデーターにもとづ いて三度、迎撃ミサイルのランチャーに発射信号を送った。迎撃ミ 立ちふさがる迎撃ミサイルを反迎撃ミサイルでうちはらいながらサイルは白熱のイオン・ガスをまき散らしながら秒速十四万キロメ インター・プラネット ひたすらに目標に向って突進するこれは惑星 間ミサイルだっ 1 トルの速度で発進していった。 宇宙警戒レ 1 ダーの警急回路が、今や失われゆく最後の機会を報 じはじめた。電子頭脳は残された一秒間に、もっとも重要な通信の 宇宙警戒レーダーはこくこくと接近してくる目標を正確にとらえ発信回路を入れた。 ていた。巨大な電子頭脳はその目標が描くであろう未来のコースを 青灰色にかがやく海王星の大半球が全天のなかばをおおってい すでに誤差数千万分の一光日の範囲内に収めて算定を終っていた。 た。アンモニアの分厚い氷雲につつまれた海王星は青く汚れた巨大 回路は電光の早さで形成され、新しい指令はつぎつぎとおびただし なドライアイスの塊のようだった。幾つかの衛星がそのかがやく氷 い機構に生命を吹きこんでいった。 やがて隕石防護シェルターの中央部に円孔が開いた。星々の海を雲の上にあざやかな小黒斑を落していた。遠い太陽が暗いオレンヂ 暗黒の円弧で裁る巨大なシェルターを、一瞬、灼熱の白光で染めて色の光球を見せている。 その広大な空間に一点の位置を占めてこの物体は浮かんでいた。 紡錘形の物体が飛び出した。白光は長い槍のように星の海を灼き、 こ 0 アンチ アンチ・アンチ チェック 209

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直径二千メートルの扁平な楕円形は暗黒の海に沈む巨大な一一枚貝だ ったその平滑なシェルターから突き出た数基のレーダーはその三 次元受信面をじっと遠い空間のある一点に向けつづけていた。その いま、新しく戦機は動いた。 触手は一瞬のあとに迫った確実な死の気配を正確にとらえていた。 木星近傍で待機していた輸送船団はその熱核反応炉につぎつぎと もとより、ここには死に対する不安も恐怖もなかった。すべて最後火を入れていった。、 システム の瞬間まで非情な正確さで作動しつづける機構しかない。一人の人三百隻の大型宇宙船はその船腹に宇宙基地設営器材を満載し、開 間もここには存在しなかった。 かれたばかりの啓開空域へ向って発進しようとしていた。その大船 フリゲイト やがて星々の海の中に幻のような光の尾があらわれた。 団をほぼ球状にとりまいて、三光分の距離には護衛艦群が長距離警 巨大な反射傘から放出されるすさまじい光の東は、星々の海を切戒レーダーの触手を遠くのばしてしのび寄る危険にそなえていた。 り裂き、吸いつけられるように扁平な楕円体に突き刺さっていった。敵にとって反撃の絶好の機会であり、またとない奇襲の一瞬がめぐ ランデブー・ポイント 永遠の静寂の中で青い大きな光球が生れた。ほんのしばらくの ってきていた。敵も当然、すでにこの船団の任務と集合位置は察 間、それはそのままの大きさをたもち、やがてしだいに鮮烈なオレしているはずであった。護衛艦群も船団も極度に緊張していた。 オールファイヤー ンヂ色に変ってふくれあがった。水素核融合反応の生み出した数万《全群、点火 ! 》 度の高熱のガスの雲はおそろしい勢いで膨脹していった。オレンヂ船団指揮官は高らかにサインを送った。 オーロラ レーグー・・ヒケット 色は暗い赤に変り、それがみるみる多彩な光の波を極光のようには 先ず、遠く五光分のかなたを先行する哨戒艇の編隊が動き出し ためかせ、やがて静かに消えていった。そのかがやきの消えたあと た。それは敵のレーダー・ネットワークに対してデモンストレーシ アノチ には、千億の星々がいよいよ悽愴な光を放っているのみだった。星 ョンをおこなってミサイル射線を吸収し、さらに迎撃ミサイルによ の海の奥から飛来した銀色の巨体も、この空間に浮かんでいた直径って進路を切り開いてゆくいわば掃海隊の役目を持った無人のドロ 二千メートルの楕円体ももはやどこにもなかった。 ンどっこ。 フリゲイト そして護衛艦群にすつぼりとつつまれた船団が、熱核反応炉から 迎撃の失敗を報する電波は、やがて遠い戦区管制所の通信機にほ 目のくらむ白光を噴き出してつぎつぎと発進していった。 のかな灯をともした。 ミサイル迎撃ニョリ機能フ ノ一スペース・トーチカハ 『ーー海王星近傍で作戦中の O 五機動部隊・任務部隊は地球時間「 喪失シタ。三八一スペース・トーチカハ 一六日二三時三九分、同空域における辺境側の防衛拠点である三八 通信の絶えたその瞬間が三八一スペース・トーチカが高熱のガス 一スペース・トーチカを粉砕した。これによって同空域の辺境側防 と化したときだった。 衛線に対し、近日点における海王星の北極を中心とする半径一・一 リフレクター 幻 0