問題 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1976年2月号
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1. SFマガジン 1976年2月号

は、きつばり断絶しているみたいですが、場 けではなく、目につくままひろってみただけだ 一回 ) ◎「アレフ・ゼロより小さな無限大」の可能性が、全体の傾向はここからも見てとれるし、ま合によっては、例えばラッセルの定義だと有 た、しかつめらしい表題のものも、内容はむし限になる、つまり無限とも有限ともいえない について ( 第七十二回 ) ような集合も出てきます」 こ終始している場合がか ◎ふたたび「ラッセルの。ハラドックス」についろとりとめのない雑談冫 「無限なんて存在しないという数学者の一派 なり多い。また、それが楽しい て ( 第七十三回 ) ◎論争論 : : : 説得技術とは何か ? 日常言語は例えば、終りから三つめ ( 第八十五回 ) の場もあるそうだから : : : 」 合も、だんだんと話題がずれて、メイン・テー「うんと大きな数があるだけだという : ・ : ・直 論理的か ? ( 第七十四回 ) 観派の一部の主張ですね」 ◎残像の問題 : : : 動物の視覚は、変化を識別でマそっちのけのおしゃべりになってしまった。 その一端を、かいつまんで再現してお目にかけ「大きな数を表わすのに、こんなことを考え きるだけだ ! ( 第七十五回 ) てみたんですが。まず、『和』の累積が『積』 ◎「食べるべきか ? 」 : : : 人肉嗜食を含む食物よう。 ですね。例えば、十川ⅱ川 x 2 、川十川十 連鎖からの脱却について ( 第七十六回 ) ◎重力理論と重力波研究の現状に関するレポー「不完全性ね。結局、無限を含むあらゆる論、川十川十川十川川 : : : 」 理は、どこかに『どっちともいえない』もの「それで ? 」 ト ( 第七十八回 ) 「『積』の累積が『累乗』。『冪』ともい 、ま、ってくるらしいな」 ◎ヴィトゲンシュタインによる神の肯定、それが冫、 ますね。つまり、川 x 川 = 、 x 川 x 川 がゲーデルの不完全性定理に関連してくる「その『どっちともいえない』かどうかも、 0 、 0 x 川 x 川 x 0 ⅱ伊 . 『どっちともいえない』んだろう」 ( 第八十回 ) ◎フリードマンによれば、現代のインフレーシ「そういう発展のさせかたは危険だ。どこか「つぎは『冪』の累積か」 「ええ。それを『超乗』と名づけて、を川 ョンは、アメリカン・ドリームの世界的普及に絶対的なものがあるはずだ」 「そういえば、単位系にかわる絶対単の 2 超乗、 16 を川の 3 超乗と : : : 」 のせいである ( 第八十一回 ) 「ガモフだったかアシモフだったかが書いて ◎ゲームについて : : : とくに卓上ゲームは「言位系ってアイデアがあったね」 るね。たいへんな巨大数がつくれる」 語」とよく似ている。法則を学ぶより、まず O 「小松さんの短篇に使われてましたね。『こ ういう宇宙』 ( 本誌一八二号 ) でしたつけ ? 」「 2 の川乗の川乗というと : : : 」 実地に接するのがよい ( 第八十三回 ) ◎インド、スリランカの自然保護区をたずねて「ああ。光速度と、作用量子と、万有引「ちがうちがう。川の川乗の川乗なんて、た いしたことないよ。川の ( の乗 ) 乗だか カ定数を基礎にするという : : : 」 ( 第八十四回 ) ら、たいへんなんだ」 ◎ふたたびゲーデルの不完全性定理について O 「と -< はいいけど、重力定数はちょっと問 題があるので、実際には、長さの単位を浮か「だから、川の 4 超乗は、川のの ( 川の ( 第八十五回 ) 川乗 ) 乗 ) 乗というわけです」 せておいて、場合に応じて重力や電磁力をい ◎超能力について : : : その実例と理論、および 「ちょっと、さん。多元宇宙の総数が、た れていくんですが : : : 」 測定など ( 第八十七回 ) 一同沈黙、やがて、きようの講師役しかそのくらいに : ・ ◎簡単な原爆のつくりかた ( 第八十八回 ) 「多元宇宙なんて、雲をつかむようなものよ のが、話題をもとへもどす それらはいずれも、各回の中心議題というわ「無限が問題だというと、何か、有限と無限り、まずこの宇宙にある素粒子の総数を : べき 9

2. SFマガジン 1976年2月号

には、名古屋大学文学部の新村猛研究室で助手をしていた朝倉剛氏 ~ キリスト教の伝統をもたない日本人にとって「神」の信仰はは ~ なはだ理解しにくいけれど、その信仰が彼の人間性に対する信 ~ ( 当時歳 ) を紹介した『若い研究』という記事が貼ってあった。 〇・・・・・・現代に生きる文学者である以上、はげしく動」て」る現 ~ 一頼に 0 なが 0 て」る = とだけは、うかがえる。人間性に対する ~ 信頼こそ、フランスのヒ、ーマニズムの歴史に脈々と波うって一 実の社会となんのつながりもなく過すことはできない。戦後の いるものだ。人間の尊厳がナチの軍靴で踏みにじられるのを見 フランスで " アンガージ = ( 社会参加 ) の文学。がやかましく ~ ることは、彼にとってたえられない苦痛であったに違いない。 唱えられ、日本でも、おくればせながら「文学と政治」の問題 このことが彼を対独抵抗の行為にまで走らせたのではなかろう が真剣にとりあげられているのは、このためである。 ・フォ 1 レの匿名で秘密出版物である″深 ~ か。彼はムッシュ 1952 年度のノーベル文学賞を受けたカトリック作家、フ ~ ~ ~ 夜叢書。に「黒い手帖」を執筆し、同志を集めるためみすから・ ランソワ・モ 1 リャックは、第二次大戦中、征服者ナチスに対 ~ 危険をおかして占領下のフランスをかけずり回った。・ するレジスタンス ( 抵抗 ) 運動の先頭に立った。それまで彼を ~ ノーベル文学賞の彼に対する受賞の理由にはこう述べられて 保守的なプルジョア作家だときめつけていた人々にとって、こ いる。「人間の魂の透徹した分析、ならびに小説という形式の の果敢な「人間の敵」との戦いは驚異のコトだった。母と子の ~ もとに人生を解釈したその芸術的強烈さに対して」と。その芸 ~ 愛情や、ドストエフスキー的な人間心理を異常な執拗さで追求 ~ ~ ~ ~ 術的強烈さは、彼を書斎に閉じこめてはおかなかったのであ していたこの作家が、なぜ力強く立上るに至ったのか、どのよ る。しかし、戦争が終り、抗独の線で結ばれていた人々が再び うにして「書くとは行為することだ」という信念が彼に芽ばえ ~ それそれの道を歩み出したいま、カトリシズムとともにフラン るに至ったのか スの思想界を三分している実存主義、共産主義の陣営は、モー 戦中、戦後のモーリャックの動きをとおして、このテーマを リャックをなまぬるいヒ、ーマニスト、進歩の敵として、また ~ 研究することは、現代文学の当面している問題に、ひとつのカ そろ非難しはしめている。これはどういうことなのか。この大 ~ ギを与えてくれるだろう。こう朝倉氏は考える。 きな問いを、朝倉氏はつぎのように解釈する。 「これまでジイド、ヴァレリイを研究してきた・ほくの当然の発 ~ ~ ~ モーリャックにも限界はある。彼の育ってきた・フルジョア社 展として、彼らにつづく世代のモーリャックの問題につきあた 会を・ほくらの世代は踏みこえていこうとしているが、モーリヤ った。一一十世紀の二つの大きな事件にまたがって生きた作家と ックは行きづまったさまざまのプルジョアのモラルをかかえす ~ して、これを研究することは、新しい文学研究の足場になるだ ~ ぎている。また〕 = 。 ( 一。。 ( 正義 ) を。 h 主 ( 0 ( 神の慈悲 ) とい ろう」と氏はいう。 7 ~ いかえたり、 frate 「 nité ( 友愛 ) の観念が完全に理解できなか 〇 : : : モーリャックはなによりもまずカ下リック作家である。 ~ ったりする世界観の狭さをもっている。

3. SFマガジン 1976年2月号

「そんなことはない」とフリツツが言った。「文化の基盤自体は共「分解するというのはわかります。だがなぜくみたてなおさなけれ 通のもので、ただタズー人はそのなかで重点をおく場所が地球人とばならないんですか」ジャッコが言った。 ちがっているだけのことだ。まだこの文化を理解しようにも手がか「な・せなら」フリツツ・ヴァン・ヌーンがこたえた。「もしできる なら、おれはタズーの地下鉄をうごかしたいのだ。地表におれたち りもないが、しかしタズー人の科学技術が解明されるときがきた ら、きっと地球の文化との共通性がかなり多く存在することがわかは輸送機関をつくりあげることができないのは、もう明らかだが、 ここに問題を半分解決したかたちで、できあいの土台が存在すると るはすだ」 いうわけだ」 「それで、車輪もなければレールもない、鉄の浮彫りのあやしげな 小屋が、列車以外のものには何も見えないからというだけの理由「発狂してしまった、という理由で、わたしを軍務から解放し地球 で、それは列車なのだとみなすようにですか」 におくりかえしてくださいよ」ジャッコが言った。「発狂したのは 「そのとおり」とフリツツが言った。「機械自体は、文明全体と切あなたですが。前回のキャニス惑星では、わたしたちはりつばな鉄 いままでに発見したかぎりで道を敷設することができたじゃないですか」 りはなして考えなければならない。 は、タズー人は地球人がまったく知らない原理にもとづいた科学技「それはまた話がべつだ」フリツツが言った。「あそこでの問題 は、火山の妨害という物理的な困難だった。今回のばあいは、技術 術をほとんど利用してはいない。もちろん、分野によっては彼らは 地球よりひじように進歩しており、またべつの分野ではまったく知的な問題なのだ。この鉄道システムのうち、どの部分がうごきどの 識が欠けていたりする。たとえばタズー人は、有機化学という分野部分がうごかないように本来つくられているのかだけ決めていけば 。それほどむずかしい問題ではないだろう」 を知らなかったようだ。だが、神秘主義に彼らがおかされていたよ うにも見えないから、もしこれが列車であるなら、どうやってうご 「そういうふうに単純なことばで言いかえてしまえばですね」ジャ かすかはわれわれにつきとめることができるはすで、それはただ時ッコは同意したが、その声音は陰気だった。「わたしにはあなたの 間の問題であるだけだ」 性格がわかっています。あなたはたとえ敗北しても、敗北したこと その奇妙な複雑な構築物をもっとよく見ようと、二人はトンネルをけっしてみとめようとはしないのです」 の壁とそれとのあいだに、注意深く身をおしこんだ。 「前にも言ったが」とフリツツがきびしい声を出した。「物理的な 問題には不可能などはない。限界というのも心のもち方ひとつで、 「これはとてつもない鳥籠ですよ」ジャッコが、やっと言った。 「とてつもない鳥をとじこめるための道具です」 絶対的なものではないのだ。いま眼前にあるのは完全に地球人とは フリツツは、奇妙な構造の複雑な機械装置から目をあげた。「照ことなった異星人の仕事だが、荒つぼい比較でいえばその科学的技 明ももっとたくさんいるし、人手も必要だ。このでかい機械を・ハラ術的水準ほけっして地球の水準よりまさっているわけではない。そ 3 のことさえしつかりわかっていさえすれば、この惑星上にあるどん ・ハラにばらして、部品をしらべ、そしてくみなおしてみよう」

4. SFマガジン 1976年2月号

下鉄は、真に重要とされる地点だけをむすんで建設される。ネヴィ 転することができますが」 ルにこの都市の地下鉄をおしえてやれば、彼はまたたくまに、タズ 7 「気にしないでいい」大急ぎでフリツツが言った。「それをやるに は、中継装置と無人テレビカメラが何台か必要だ。百パ 1 セントの 1 人が重要だとみなした地点にとんでいくことができる。輸送手段 動力で試験運転するときには、おれはぜったいにここにいるつもりを発見したばかりではなく、タズー人自体の心理や文化傾向を指標 するものまで手に入れたことになるのだ」 はない」 「何か発見がありましたか」 「じゅうぶんあった。まず、このシステムの潜在的な弱点は、その フリツツが幹部会議の議場についたとき、彼はその一時間も前か 乗客の問題にあったのだろう。タズー人は電車に交流直線モーター ら会議が召集されていたのではないかという感じがした。到着のと をつかっていたにちがいない。それと反発する極を線路の路床としきにすでに、参加者が白熱した討論をくりひろげていたのである。 てつかったのだ。磁束の反発力で列車を地面からもちあげ磁界で宙ネヴィルはひとりでノートの分厚い束をめくって拾い読みしてお に浮かせていた。おなじ原理で、トンネルの壁を利用して両側からり、ナッシュ大佐は椅子に掛けていた。 列車を中央にたもっ作用もおこなわせていただろう。そこまで効果「やあ、中尉、席についてくれ。どのようにしてきみが、きのうの が出るほどおれたちは動力をじゅうぶんにおくりこまなかったの地下鉄のショ 1 をおこなえるだけのおどろくべきエネルギー源をみ だ。考えてもみるんだ。すばらしい考えじゃないか。機械の摩擦なっけたのか、明らかにしてもらいたいのだ」 しで列車をささえ、あとは慣性と空気抵抗と乱気流の問題がのこる「それ以上のことをしましよう」フリツツが言った。「タズー人自 だけだ。電流をどうやってとりいれたのかがわからないが、これも体に関する知識をつけくわえることができると思います。だが、ハ やはり誘導電流をつかったのだろう。すぐにこれをおれたち自身の ープのことからはじめましよう。タズーのハープです。わたしはと 課題に利用することができるんだ、とだけ言っておこう」 っぜん、それが何なのか気づきました」 「けっこうです」ジャッコが言った。「ただそれではわたしたちの「何だったのだ」 目標に到達するには限界がありますね。要求されたのは交通機関と「機械工ネルギー転換器です。おのそみなら、圧電発電機と言って 。あのハープは、弦の振動によって作用する高度の効率をも いうことだったのに、こちらの答が地下鉄では、路線も出入口もかもいし ぎられた数しか提供できないのですから。ネヴィルがこれでどれだ った圧電結晶のいれものにすぎません。弦はタズーの夜の烈風によ け満足すると思いますか」 って振動するのです」 「一生満足しているだろう」フリツツが言った。「地下鉄の建設と「わたしは科学者ではないが」とナッシュが言った。「だが圧電効 いうのは、どの文明においてもその絶頂期におこなわれる。技術的果というのは、そんなに小さな規模でエネルギー転換をおこなった な背景が一定水準まで進歩しなければっくれないからだ。そこで地ら利用するに足るだけの電気はつくりだせないのではないかね」

5. SFマガジン 1976年2月号

はそれでも広すぎると思っていた。デスクは、実際よりも狭苦しい だった。部屋の彎曲した壁は、顧問会議の耳目をなす「気象ネッ ト」を構成する計器類で埋まっていた。部屋全体は、目まぐるしくような錯覚をおこさせるために、片隅に壁に向って置かれてあっ 変る地球儀、跳ねまわる光、ちかちかする目盛盤などで、まるで悪た。アンナは、仕事をしている間は、広い空間という感覚に耐えら 夢を見ているようだった。アンナは、長いこと見慣れたことからくれないのだった。どの壁にも窓や絵はなく、無地の暗灰色の壁に は、精神集中を妨げるようなものは何もなかった。他の顧問官たち 彼女は、あの奇妙なリク る冷淡さで、見向きもせずに通り抜けた。 , エストがもう届いているかどうかを見るために、気象評議会からのは、仕事をするのにふさわしい環境という点では、別の考えを持っ ていた。ある者は鮮やかな色彩を散らし、ある者は森林や海洋の風 専用電報を探しにいった。 評議会連絡室にいた警備員は、敬礼して傍へ寄り、彼女を通し景を使っていた。グリーンベルグは壁を黒と白の迷路で覆っていた た。彼女は入りこんで腰を下し、夜の間に評議会から来た通信を繰し、ヒロマカの壁はヌードで埋まっていた。アンナは、それを思い りはじめた。彼女はオーストラリア北部に旱魃を課すことに関するだすたびに、気色の悪さに身震いするのだった。 ものを拾いあげ、それを読んだ。読み終ると、彼女は鼻先で笑い、 彼女は、デスクに坐らずに、小部屋の真ん中に立ったまま、アン 大声で独り言をいった。「何だ、つまらない。こんなものを片づけドリュース問題に自分を選任するように、どうやってグリーンベル るのは、子供だってできるわ」そして、なおも通信の山をかきわけグを説き伏せることができるか考えていた。グリーンベルグが自分 ていった。 を好いていないこと、それは彼が男で自分が女であるからだ、とい うことは知っていた。自分を好いている男は誰もいないし、その結 彼女はそれを見つけて注意深く読み、もう一度読み直した。ニュ ース・フラッシュで報道されたとおりだった。カリフォルニア南部果として、自分の仕事は正当な評価を受けたことが一度もない。男 の一平方マイルの地域に七月の雪だった。その地域の経緯度が示さの世界にいる女は、仕事だけを基準にして評価されることは絶対に れ、それで終りだった。だが、アンナ・プラックニーは、興奮がこないのだ。だが、もしアンドリュース問題をもらうことができれ みあげてくるのを感じた。これは、この数十年の間に顧問会議が取ば、彼らに思い知らせてやる。彼らに一人残らず思い知らせてや 組む最も手ごわい問題で、おそらく標準的な手法では解けないものる。 と思えた。彼女は指をくわえた。これこそ自分が待ち望んでいたも だが、ぐずぐずしてはいられなかった。アンドリュース問題は、 の、自分の理論を実証する機会だ。あとはグリーンベルグを説得し直ちに解かねばならなかった。顧問会議の気象計画は、時には作業 て、この問題を自分の担当にさせさえすればいいのだ。彼女はそのに移すまでに数週間を要することがあり、もしこれがそういう問題 通信を元に戻して、自分の部屋へ行った。 だとわかれば、もう手遅れになるだろう。十分な時間があるかどう 3 かを知るためには、いま計算して解かねばならないのだ。彼女はく るりと向きを変えると、部屋を走り出て、エスカレーターを駆け降 それは八フィート四方の小部屋だったが、アンナ・プラックニー

6. SFマガジン 1976年2月号

り、建物の正面扉に続く階段へ行った。時間を無駄にすまい。グリ 彼よ、、、 し返そうとしたが、思い直してそこへ入ってゆき、通信 ーンベルグが入ってくるところを損まえるのだ。 を読んだ。彼女はいった。「さあ、私にいただけます ? 」 彼女は十分間待った。そして、グリーンベルグは、その点では早「おい、よく聞けよ。このリクエストは、細部を研究してみるまで かったのである。アンナは、彼が階段の上に着くやいなや跳びつい は、ほかのリクエストと同じように扱うんだ。私は、これを、ほか た。「グリーンベルグ博士、アンドリ = ース問題にすぐとりかかれのリクエストと同じようにアプトンに渡し、予備的な判定や選任に ます。私は : : : 」 ついての勧告をしてもらう。その勧告をもらったら、どうするかを 「私を待っていたのかね ? 」と彼はいった。 決めよう。さあ、アプトンがこいつに目を通すまでは、うるさくい 「アンドリュース問題を解くには、私がいちばん適任だと思いまわんでくれ」彼はアンナのロが歪んで、眼が涙であふれそうになる す。新しい解法が必要でしようから。そして : : : 」 のを見た。彼はこういった愁嘆場を前にも経験したことがあり、こ 「いったい、アンドリュース問題とは何だね ? 」 れは苦手だった。「では、後で」というなり、彼は走らんばかりに 彼女は、ぽかんとして彼を見つめた。「だって、夜のうちに来たして自分の部屋に入ると、ドアに鍵をかけた。顧問会議ビルの中で ついいことがあった。鍵のかかったドアは神聖だったのであ 問題ですわ。そして、私はそれをやりたいと : : : 」 「しかし、君は私に中へ入るチャンスも与えずに、この階段に釘づる。それは中にいる人物が邪魔されたくないことを意味しており、 けにしているじゃないか。夜のうちにどんな問題が来たか、どうし仕事の重要さに鑑みて、この願望は尊重されたのだった。 て私にわかるんだ。まだ、上にも行ってないんだそ」 アンナ・・フラックニーは憤然と自室に戻った。またしてもだ。こ 「だって、知っているはずですわ : : : 聞いたでしよう。あれだけニこでは女に勝ち目はないのだ。彼らは自分を男のように扱おうとは ュースでいったのに」 しないのだ。それから彼女は、一部始終を説明するために、アプト ンの部屋へ行って待った。 「ニュースでは、我々の仕事について下らんことを山ほどいってい る。大部分はウソだがね。さあ、私がそれを一目見て、君が何のこ アプトンは、物事にこだわらない性格と剃刀のような頭脳を持っ とをいっているのか知るまで、どうして待てないんだね」 た、小肥りの男だった。そのうえ、彼は単細胞的な思考の動きを理 二人は、沈黙したまま、連れだって = スカレーターで上っていっ解していた。アンナの涙ながらの物語を半分聞いただけで、一日じ た。彼は、こんなふうに強引に話をもちかけられたことを不快に感ゅうアンナにつきまとわれないですますためには、アンドリュース じており、彼女は明らかに彼が自分の希望を受けいれるのを引延ばのリクエストに目をとおすしかないことが、彼にはわかった。彼は そうと苦労していることを不快に感じていた。 それを取りよせ、一目見てひゅうとロ笛を吹くと、 % / 大型コン 彼は、まず自分の部屋へ行こうとしたが、彼女はいった。「あな ビューターの前に坐りこんだ。三十分かかってデータを送りこむ たの部屋ではなくて、評議会連絡室にあるんです」 と、彼は椅子にもたれて、コンビューターがそれを消化し、結果を 244

7. SFマガジン 1976年2月号

「知るもんか。知りたくもない。たぶん、おとな二人と、四人の子 、もちろん」 「そこからどういう法律問題が派生するかを、調べてみたことはあ供のうち一一人が、毎日・フ 0 ーベルにな 0 たり、地球人にな 0 たりを くりかえすからかな。たぶん、そのストレスに耐えられなくなった るか ? 」 「あー、いや、別に。それは、わたしには関係ないことですから」んだろう。もし心理学的なアドヴァイスを与えてやりたいなら、彼 「国連法に違反する行為を患者にすすめた場合、責任を問われるのらと話してみるんだな。じゃ、これで」国連法務省の役人は、電話 を切った。 は知っているだろうね ? 」 あの二人に結婚をすすめたのは、まちがいだったろうか、とジョ 「・フローベルと地球人の結婚を禁じる法律は、ないはずです」 ーンズ博士は自問した。もう一度、あの二人に会ってみるべきでは 「わかったよ、博士。では、そのふたりのカルテを見せてもらうと なかろうか。すくなくとも、わたしにはそうする義務がある。 いうことで、手を打とうじゃないか」 ロサンジェルスの電話帳をひらいて、ジョーンズ博士はの部を 「それは絶対にだめです。医師の倫理にもとります」 調べはじめた。 「よろしい。では会状を発行して、カルテを差し押さえる」 「ご自由に」ジョーンズ博士は耳の後ろに手をやって、スイッチを 切ろうとした。 マンスター夫妻にとって、それは苦しい六年間だった。 まずジョージは、サンフランシスコからロサンジェルスに引越し 「待て。こういえば興味があるだろう。マンスター夫妻は、いまで た。彼とヴィヴィアンは、それまでの 2 から 3 のアパート は四人の子持ちだ。しかも、メンデルの法則どおりに、子供たちは 一日の四分の三、地球人の に移って、世帯を持っことにしたのだ。 一の割合に分かれている。・フローベルの娘が一 びったり一、二、 人、混血の息子が一人、混血の娘が一人、地球人の娘が一人。法律姿をたもてるヴィヴィアンには、職が見つかった。第五ロサンジ = 問題が生じたのは、こういうわけだ。プローベルの最高会議が、夫ルス空港で、ジ = ット旅客機のフライト・インフォメーションを、 妻の子供のうち、純粋なプローベルの娘にタイタンの公民権がある堂々と人前でアナウンスする仕事だ。しかし、ジョ 1 ジは と主張し、また、混血の二人のうち一人を、最高会議の支配下へひ彼は、自分の恩給が妻のサラリーの四分の一にもたりないのを、 きとりたいと要求してきた。いいかね、つまりマンスター夫妻の結痛切に感じた。なんとか収入をふやそうと、彼は家でできる内職を 婚生活はうまくいってないんだ。別れ話が持ちあがっているんださがしまわった。やがて、ある雑誌の中で、こんな広告が目をひい が、夫妻とその子供たちに、どっちの法律を適用したものか、そのた 解釈で頭が痛い」 「なるほど。そういうこともありましようね。いったいなぜ、結婚〈団地で居ながらにどんどんお金がもうかる ! 木星産の巨大ウシ ガエルを育ててみませんか。跳躍能力二十五メートル。用途 がうまくいかなかったんです ? 」

8. SFマガジン 1976年2月号

「ビショップ」 めるのを争う占拠式と、連珠や四子棋やスコアどの石取りゲーム、③マスターマインドや海戦他に多くの分類法が考えられるのは当然であ フォー、あるいはユルゲーム、またヘックスゲームのような数あて位置あてのゲームの三つる。例えば競技人口で分けたり、競技民族で分 ( 連結碁 ) やナポレオンのように、ある特定のになる。前述したレースゲームやダイスゲーム類したりしても面白い結論が得られそうだし、 形を敵より速く作るのを争う列置式とがある。 にを運がっきもので、この点カードゲームに近何人でするかなどの点からの分類も可能だろ 占拠式と列置式ではだいぶ性格が違う。 い。三山崩し ( ニム ) は運なしでむしろパズルう。しかし、どのような場合にも、私が 3 で述 ③最後がレースゲーム ( 走戯系 ) だが、これに近く、ポードゲーム的である。マンカラはそべた分類は、そこで何らかの役割を果たすだろ すごろく は要するに双六である。正月の絵双六や朝鮮のの中間といえようか。 う。さらに、私は、冒頭に述べたような目的を 擲柧 ( ニュウト ) 、中央アメリカはアズテック以上、駆け足で概観してみたが、勿論、問題かかげているのだから、この分類は一つの踏み のパトリなど、レースゲームの歴史は、人類のも多い。フ科会で提出された疑問では、トラン台である。つまりこれを道具に、過去のゲーム 歴史とともにあった。それにしても、これらの・フの一人遊び ( ソリテア ) は一体どこに分類すを発掘し、未来のゲームを創造していくことが 完成形態とも言えるックギャモンと、日本古るのかと言った点から、ゲームの一人遊び性と遊びの復権につながるのだと、私は考える。そ 来の古制双六の酷似には驚かされる。 闘争性の関係などが話題となり、今その点を解の意味で、この分類に対する例外はむしろ大歓 ③テープルゲーム ( 卓戯族 ) 決すべく準備中である。 この辺の話は、パ 迎である。さらにいうなら、ゲームの創造こそ これは実は上記のどれにも属さないものを集チンコとボクシングとを比較してみれば考えや最高のゲームである ! めたものであって、この辺の分類の弱さはフ科すいだろう。 新しいゲームの考案は、一つの創造活動であ 会でも衝かれた。 る。しかしまったくの新作を考案することは非 4 テープルゲームも細分すると、①丁半やポー 常に困難だろう。現在残っているあらゆるゲー カーダイスのように純粋にサイの目だけを問題分類には様々な分類基準があり得るから、 ムは、すべて歴史の審判にかなったものばかり にするダイスゲーム、②三山崩しやマンカラなまあげた私の分類の不完全性とは無関係に、 で ( ただし将来へ向けての保証はないが ) それ 立体チェスの″駒の進み方 ( 中央の黒い部分が起点。そこから出ている線が経路。〇が終点 ) 'IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIUIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIJ 0 8

9. SFマガジン 1976年2月号

れは地下鉄だけをうごかそうとしているのだ。おれの見積りでは、隊員は全員、タズー人がかって供給をうけていた、見当もっかない 必要とする動力は多分、彼らの千万分の一かそれ以下ですむと思動力源をさがす仕事に従事していたからである。 この後者の問題においては、ネヴィルにもなんの援助をすること う。そう考えてみれば、それほどむずかしい課題ではないように思 えないか」 もできなかった。埋もれたこの都市の各地区のくわしい地図はでき あがりつつあったが、しかしそこには、動力発生装置も動力分配施 設もまるで存在がみとめられなかったのである。ただし、そのこと 自体はたいして意味のあることではなかった。なぜなら、都市が建 ネヴィルの隊は、まず高層ビルの最上階のみを徹底的に調査しててられた地表の層より下まで発掘されたのはまだごく一部の地域だ けで、地下に何が埋まっているかはいまだに推測の問題だったから しまおうと精力を集中していた。砂の浸透は全面的なものではなか ったから、資源が発見されれば最終的にはおこなわれるはずの完全である。だが地中深くに向って消えている導線の様子を見るとフリ ツツは、たとえその源がどんなものであろうと、たぶんこの都市域 な清掃を待っことなく、タズーの巨大な建築物にはいりこむことが できた。ひとたび建物の内部にはいれさえすれば、そのあと低い層内にはそれは存在しないのではないかと確心しないわけにはいかな 、つこ。・ノヤッコの報告もこの状況を明るくするようにはみえなか の中味全部を探検することは比較的自由なのだった。考古学的に見カナ、、 れば信じがたいほど豊富な発見があり、完全な整理と研究には何十った。 年もかかるほどだった。そして専門研究グループが組織され、あと「こういうことです、フリツツ。あなたが主動力入力線だと言った になって新しい地域が発掘されたときすぐにその独特さを見分けらものは、ぜんぜんそんなものとちがいました。十五日ものあいだた れるような指標としての、典型的なものを追求するという方法がとどりつづけたのです。それは電線ではあるでしようが、いずれにし られた。代表的な標本にはていねいに移送され地球にはこばれたても配電用の回線にしかすぎません」 フリツツは顔をしかめた。「一度見うしない、まちがって別の線 が、より徹底的な調査がそこでおこなわれるはずであった。 つぎの二週間、フリツツは異星科学技術の権威者としての役割りをたどったりしたんではないだろうな」 に没頭していた。そして目の前にたちふさがる仕事の全体量は、す「なんとでも言ってください ! 」ジャッコが言った。「スイッチ室 くなくとも一生を何度かくりかえしてやっとかたづくというほどので信号を入力し、その線をたどっているあいだじゅう信号をたしか ものだった。たとえ百人の単位をこえる考古学者が動員されたにしめていたんです。その回線が地下鉄の建物に向っているのではなく ろ、発見される物の量をこなしきれるはずのないことが、いたましそこからはじまっていることにまちがいありません」 フリツツがさっと立ちあがった。「動力をどこに分配するという 9 くも明らかになってきた。発掘現場ではフリツツは、助手もなしに たった一人で仕事をつづけなければならなかった。異端技術部隊のんだ ? 」 6

10. SFマガジン 1976年2月号

した・ まったのです」 「問題にまきこまれていますよ、フリツツ。計画がはじまったとき 5 「それがおこったのはーー・・その砂の侵入がはじまったのは、いつの に準備された地上車は百舌ですが、そのうち現在うごいているのは ことなのですか」 「確実なことは言えません。しかし、タズー人減亡の直前の時期に二十台だけです。タズ 1 惑星の上で二百時間稼動させると、もうス 符合するようです。二つのできごとがたがいに関連をもっているのクラップ値段でだって買手がっかないというていどにまでやられて かどうかは、これからの研究が明らかにするはずのことです。あなしまうんです。つかえる部品をあちこちからひろいあつめれば、あ と五台ばかりの地上車をつくりあげることができるでしようが、そ たの質問に、これでこたえたことになるでしようか」 「ええ。だがそれでは、ただべつの疑問におきかわっただけのことれもあてになるのは最大限で六千稼動時間、あとは降りてあるくと です」フリツツが言った。「衛星を探検するほどの科学技術をもついうわけです」 フリツツはわびしい気分で、まっさらの / ートに目をやった。 た文明が、土壌の侵食というくらいの、予見可能、対策のほどこし ようもある災害で、な・せ減亡してしまったのかということが理解で「トラクターや重車両はどうなっているんだ」 「こっちは悪くはないです。だが、その理由というのが、それらの きません。それに、温帯にまだ肥沃な土壌がのこっているのに、な ほとんどがまだ密閉の梱包から出してないからっていうことなので ・せ熱帯にまで移動しなければならなかったのかも不思議です」 「わからないのです」ネヴィルが言った。「むずかしい問題です。す。一席外に出してしまえば、地上車より長もちするはすはありま タズー人は亜人類ですらありませんでした。つまり、体質も考えせん。摩耗と腐食が二ついっしょになっておそいかかってくるんで 方も、われわれ人類とはまったく異質なものがあったのでしよう。すから、たとえ機械ネズミだっておちおちしていられないわけで おなじような条件のなかで、われわれがおこなうことをそのまま彼す」 らがおこなうだろうと単純に類推してしまうと、誤解することにな「言い分はわかった」フリツツが言った。「現在の要求量から言え るかもしれません」 ば、それではあと六十日間の輸送能力しかのこっていないわけだ。 しいことを聞きました」フリツツが言った。「その意見に完全にどんな防御手段をつかえば、その寿命をのばすことがでぎるんだ」 ィッ「基地の建物にほどこしてあるような防御膜をほとんどの車両に吹 承服はしませんが、心にはとめておきます。ありがとう、フリ きつけるという手があります。そのばあい、エンジンをどうするか プ。考えてみる種をもらいました」 異端技術部隊が順調に活動をつづけていることをみとどけ、それが難点としてのこります。エンジンをふつうのアルミ合金でおおう からフリツツは輸送問題に心を集中した。そこで輸送問題の数字をということを考えた馬鹿がいました。その合金が、タズーの大気に 検討しているジャッコのところにもどることになった。ジャッコはふれたらどうなるか考えただけでもそっとします。たとえガラスで 報告書を、まるで自分の生命保証書みたいにいきおいこんでさしだおおったにしても不透明化し、珪土の微粒子を解放してべアリング ヒューマ / イド