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検索対象: SFマガジン 1976年2月号
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1. SFマガジン 1976年2月号

である。そこから探査艇が切り離されて、平衡線に沿って、星団のスポーッカー程度の加速度には快楽を覚えられなかった。タキは人 内部へ落下してゆく予定だった。 類の中で最も高度の加速を体験しつくしていたからだ。 ビビッと腕に巻いた通信機が鳴った。 タキは核融合推進時代の最後の宇宙飛行士だった。太陽系の辺境 「タキ、出発三時間前だ。搭乗してくれ」司令室からの連絡だつまでの到達が終り、恒星間飛行が検討されはじめていた。訓練の経 過から考えて、タキは亜光速で恒星間を渡る最初の船に乗り込める 冫した。「いよいよお別れだ。 「了解」タキは答えて、ヤマモトこ、 ことは確実だった。恒星間飛行士に要求された特性は、まず長時間 おれには三ヶ月だがきみには二十年だからな。 : : : 資料の採集はかの高下の生活に耐えられることであり、つぎに″時代″に執着し ないことだ。 ならず成功させる」 超空間回路の原理が発見されなければ、タキは 「期待しています」ヤマモトは眼を輝かせた。 ″現在″を捨てて高の加速に耐えつつ、せいぜい数十光年以内の 。タキは思った。おれがアダ空間を飛んでいたにちがいない。 この眼だ。この眼の黒い光りだ : ・ マスへの飛行を引き受けたのは、あの日、薄暗い研究室でヤマモト 超空間回路の原理の発見から十年目に、早くも十光年のワープ航 が見せてくれた一本のフィルムのせいだ。が、厳密に考えてみる行が成功した。移送体に加減速の負荷はかからず、発着点の同時性 と、彼のプラックホールに似た瞳の輝きに負けたからかもしれなは保たれていた。 この時、タキは自分の時代が終ったことを知 った。人類の認識の最前線から、一介の運送屋に成り下がったのだ 精神の充実をともなわない加速は快楽につながらない。タキは太 陽系内の航路を低速で飛ぶことには急速に興味を失った。 ただ、一度だけ、裏の仕事で飛行したことがある。木星に投下さ カリフォルニアの五月は、体を動かさない限り、最高の季節だ。 レイプ 強姦に最適、といった日本の若い作家がいたことをタキは思い出しれる無人探査体を大気圏ぎりぎりで回収する仕事だった。その探査 た。タキは女への関心は希薄だった。芝生に寝そべって動かぬ限体のメーカーのライ・ハル企業の極秘の依頼だった。厳密に計算され た戦道を飛行したのだが、その軌道は人間が耐えうる限界ぎりぎり り、五月の乾いた風は宿酔いの頭に最適だった。 タキは自分を″加速度愛好症という一種の性的異常者と定義しという意味で厳密だった。だから大赤点の上空で木星の重力から脱 ていた。自分の体にかかる加速度が不思議に血を沸き立たせるの出する時に体にかかった加速度は、非合法飛行であるという意識と の相乗効果で、タキを一瞬の至福に導いた。 だ。決して特異な欲求ではない。人間なら誰もが潜在的に持ってい る欲望だ。とタキは考えていた。例えばスポーッカーがそうだ。あそれが最後の飛行だった。木星表面のサーカスじみた飛行は発覚 : ・。だが、今さらし、タキは飛行士としての資格を剥奪された。 れはス。ヒードよりも加速性能で買われるからな : ・ 地球 幻 4

2. SFマガジン 1976年2月号

一つの未来は決定された。ドラゴンフライ号は、けっしてその性能とどれぐらいすれば目を開けても安全だろうかと考えているとき、 だしぬけにすぐ身ちかで、なにかをかみ砕くような音がした。その を月面で示すことはないだろう。 音のほうへごくそろそろと頭を向けてから、かれは思いきってまた あと百メ 1 トル。対地速度は許容できそうだが、どれぐらいのス 。ヒードで落下しているのか ? しかし、一つだけ運のいいことがあ目をひらきーーー・そして、あやうく意識をふたたび失いかけた。 るーー・地形は完全に平坦だ。渾身の力をふりし・ほって、最後の推カ五メートルたらずのむこうで、大きいカ = に似た生き物が、あわ れなドラゴンフライ号の残骸を平らげているようすなのだ。分別を をつけよう。用意ーーーはじめ ! 右の翼が、その義務を果たし終って、ついに根もとからもぎとれとりもどしたジミーは、ゆっくりと静かに体を横にころがして、怪 た。ドラゴンフライ号は横転に移り、それを防ぐために、かれは全体物から遠ざかりはじめた。いまにもはさみで捕まえられるのではな いかと、胸がどきどきした。むこうが、すぐ隣にうまそうなごちそ 重をかけて、ス。ヒンに抵抗した。かれが十六キロ彼方のアーチのよ 。しかし、怪物はかれに一顧も うがあるのを発見したら最後だ : うに弧を描いた風景をまっすぐ見つめているとき、衝撃がおそった。 空がこんなにも堅いのは、不公平でしかも不合理なことに思われ与えなかった。相互の距離が十メートルまで開くのを待って、かれ は用心深く上体を起した。 さっきよりも離れたここからだと、相手はそれほど恐ろしくは見 えなかった。低く平べったい体は、幅一メートル、長さ二メートル 第二十九章最初の接触 ぐらいで、三つの関節のある六本の脚に支えられている。ジ は、さっき相手がドラゴンフライ号を食べているように思ったの れるよ パックが意識を回復して最初に気づいたのは、」 うな頭痛だった。かれはむしろそれを歓迎したい気持になった。すが、まちがいなのを知った。事実、どこにも口らしいものは見当ら ない。怪物がやっているのは、実は手ぎわのいい取り壊し作業たっ くなくとも、まだ自分が生きているという、それは証しだ。 それからかれは身動きしようとしたが、とたんに体の節々の多種た。鋭いはさみを使って、飛行自転車をこまぎれに切り刻んでいる 多様な痛みに見舞われた。しかし、ためしてみたかぎりでは、どこのだ。つぎに、不気味なほど人間の手に似かよった、ずらりと並ん だ操作肢が、そのこまぎれを拾い上げて、生物の背中の上へ山に積 の骨も折れていないらしい そのあと、かれは思いきって目を開けてみたが、すぐに閉じてしみ上げてゆく。 だが、こいつは動物だろうか ? それはジミーの最初の反応だっ まった。この世界の内壁にそった帯状太陽を、まともに見つめたの たわけだが、いまかれは再考にとりかかっていた。相手の行動には、 に気づいたからである。頭痛の治療には、ちょっとおすすめできか 5 ねる眺めだった。 かなり高い知能をほのめかすような目的意識がある。純粋に本能だ かれがまたその場に横たわり、体力がもどるのを待ちながら、あけで動く生物が、飛行自転車の残骸をこんなにていねいに収集する

3. SFマガジン 1976年2月号

しかし沈黙を破ったのは、スズダル自身のほうだった。「進路を に選ばれたのは、ひとえに彼が、温厚で、勇敢で、知性のある男だ ったからである。アラコシア人の訴えかけは、その三要素のすべて定め、眠りにはいる前に、わたしは公安官のキー・フを作動し、物 語をチ = ックさせるようにしました。彼らは、けつきよく、アラコ をゆさぶるものだった。 それからすっと後にな 0 て逮捕されたとき、スズダルはこうたすシアにおこったできごとの真相をつかみました。遭難カプセルから ねられた、「スズダル、ばかものめ、きみはなぜメッセージを分析得られる情報パターンを分析解読し、ちょうどめざめようとしてい しなかったのだ ? 愚劣な訴えひとつのために、全人類の安全をおるわたしに、手早く話してくれたのですー 「で、きみは何をした ? 」 びやかすことになったのだそ ! 」 「したとおりのことをしました。それに対して罰せられる覚悟はあ 「愚劣ではありません ! 」スズダルは反論した。「遭難力。フセル は、悲しい、すばらしい女の声で語りかけてきたうえ、物語にも異ります。そのときには、アラ 0 シア人はもう船の外側を歩きまわっ ていました。船を、わたしを、捕獲していたのです。どうしてわた 常はないという結論が出ました」 しにわかりますか ? 女の話したすばらしい、悲しい物語のうち、 「だれと話しあって ? 」調査官はものうげにそっけなくいった。 その点に答えるスズダルの声には、疲れと悲しみがあ 0 た。「わ正しいのは最初の二十年だけだなんて。そのうえ彼女は、女でさえ なかった。ただのクロプトだった。最初の二十年だけが : : : 」 たしの本、わたしの知識と照合した結果です」彼は不承不承つけ加 アラコシア人にとって、最初の二十年は万事順調に進んだ。その えた、「それから、わたしの判断と : : : 」 とき災厄がおそった。、しかし、それは遭難カプセルが語る物語とは 「きみの判断は正しかったか ? 」 、それが自分の口から出る最後の言葉異なっていた。 「しいえ」とスズダレよ、 彼らには理解できないことだった。なぜそれが自分たちにおこら であるかのように、不自然な間をおいた。 ■現代イタリアの文学第 9 巻 あることの夢 アッカトー、不他 2 篇 ノ ) ーニ ピエル・パオロ・′、ー 米川良夫 / 訳 衝撃的な内容、表現に対するあくなき実験によってスキ ャンダルを産み出し、現代という不毛の荒野に生と死の 深淵をきりひらく鬼才パゾリーニ。本書に収録した代表 作四篇は、変貌をとげつつある現代文学の未踏地に迫る ( ゾリーニ文学の全体像を伝える。定価一〇〇〇円 8

4. SFマガジン 1976年2月号

見るようなまなざしをしてはいたが、いつもの漠然として不明瞭な仕事の指導をしたり、新たに誘導された数学モデルをコイヒュータ 話し方とは打って変って、歯切れのいい明確な言葉づかいだった ーに入れるのを簡単にするための新しい表記法を考案したりしてい ふくれあがるデータの流れが中断しそうになると、その直前に察知た。彼女は夢を見ているかのように歩きまわっていたが、質問が出 するとみえて、すかさず割りこんで穴を埋めていた。一五時になっされたり何かが遅くなったりすると、彼女の反応は夢見心地どころ て、やっとヒロマカが、誰も昼食をとっていないことに気づいた。 ではなかった。レジデントの多くや、何人かのコンビューター技手 グリーンベルグは食事を取りよせ、二三時にもう一度、そして九時や、アプトン自身さえ、こんなわかり切った間違いをやって、と指 にもう一度、持ってこさせた。 摘する彼女の歯切れの いい小言を浴びせられた。時間が経ち、作業 誰もが、頬はこけ、着物は皺だらけになり、眼の下には隈ができがますます猛烈になってゆくにつれて、日頃は厳しいアンナの顔の て、ひどい様子だった。だが、彼ら全員の眼には、最近入ったレジ線は柔らぎ、彼女はいつもの前かがみの姿勢に代って胸を張って歩 いていた。これまでは絶対に必要なとき以外は彼女と話もしなかっ デントの末にいたるまで、これまで顧問会議が取組んだ最も複雑な た数理気象学者の何人かは、いつの間にか、自分の持場についての 気象の問題に関与していることからくる炎が燃えていた。 アプトンは、惑星としての地球に関する数学的モデルをまとめる兄の指導を進んで彼女から受けるようになっていた。 仕事を引き継いだ、彼は、次のような変量に関係する回帰解析の結 果を統括していた。地球の太陽からのさまざまな可能な距離。太陽翌朝の一一時、初めて最初の部分解が完全に導きだされた。それ ーセントの適合度しかなかったが、最初の中休みとしては に対する地球の自転位置。二つのヴァン・アレン放射能帯の形、位は八一バ 、い結果だった。すぐに他の結果も出てくるだろう。だが、アプト 置、密度、変差電荷。ジェット・ストリームの速度、温度、方向、 幅、質量。主要な海流の熱流量。各主要地塊における気流の影響。ンは欠点を見つけた。「だめだ」と彼はいった、「この解だと問題 地塊の熱容量。コリオリのカの影響。そして、これらおよびその他のオーストラリアの旱魃まで十二倍に大きくしてしまうぞ。ひどい 多くの因子に加えて、現在および予定された気象の地球全表面に対もんだ。そんなことをしでかしてみろ、一人残らず観測係に逆戻り するのは請けあいだな」 する影響。 グリーンベルグは太陽を引受け、各黒点の連動、太陽の自転、光この言葉は一同の心に思いがけない反応をひきおこした。笑い声 球・彩層・反彩層・コロナにおける温度と圧力の変動、スペクトル が拡がり、それはますます高くなっていった。あっという間に、顧 変化、炭素サイクルおよび陽子・陽子連鎖からの相対的出力などに 問会議ビルじゅうの人間という人間は腹をかかえて笑いころげてい た、長い間の緊張が遂に激烈な捌け口を見出したのだった。しばら ついての解析結果を処理した@ 7 4 くしてから、やっと皆は涙を拭き、また仕事に戻っていった。グリ アンナはそこら中を歩きまわって、ア。フトンの背中越しに覗いた 2 ーンベルグがいった。「さて、ここが我々にとっての落し穴だな。 り、ワシントンのコンビューターに電話したり、レジデントに次の

5. SFマガジン 1976年2月号

何もオーストラリアと限った話じゃなくて、どこに出るかわからん渡していった。「これを太陽での作業に分解して、気象局へ送付し のだ。どこかにひどい反作用が出ないように確かめねばならんな」たまえ。我々がやったような苦労をさせないですめばいいがな」彼 4 2 アンナ・・フラックニーにこれが聞こえた。「デピンザが、望ましは顔を撫でた。「まあ、我々はそのために給料をもらっているんだ くない反作用が一つも出ないように、限定解析をやっていますわ。 から」 一時間で結果が出るでしよう」彼女は、目を丸くしたグリーンベル レジデントは、紙を受けとって出ていった。他の者たちは三々五 グをしりめに、向うへ歩いていった。 五出てゆき、後にはグリーンベルグとア。フトンだけが残された。ア 最後の一連の方程式が完結したのは一五時だった。その適合度はプトノよ、つこ。 、。しナ「これでアンナ・・フラックニーの株はぐっと上る ことになりますな。彼女はいったい、どうやってあのアイディアを 九四パーセント、デピンザの解析に対するチ = ックは一〇二パーセ ントだった。グリーンベルグが結果を検討している間、レジデント一 思いついたんですかね」 や数理気象学者たちは大きなテー・フルを取り囲んだ。検討はなかな 「私にもわからん」とグリーンベルグは答えた。「ただ、彼女が今 か終らなかった。彼らが導きだした処置は、太陽での作業を二番方度指をくわえたら、私は辞職した方がよさそうだよ」 の開始から三時間後に行なうことを要求していたが、それは今から アプトンは、おもしろそうに笑った。「これがうまくいったら、 四時間後にあたるのだ 0 た。グリーンベルグは伸びた濃い鬚を撫で我々はみんな指のくわえ方を教わった方がよさそうですね」 ながらいった。「これを実行に移すべきかどうか、私にはわから ん。この処置は未経験のものだから、すぐに採用すべきではないと ジェームズ・エデンは、寝台からとび起きると、爪さきで平衡を 報告する道もあるのだ」 とった。やはり、デッキが微かな、やっと聞きとれるほどの音を立 一同の眼はアンナ・・フラック = ーに向けられたが、彼女は全く落てていた。 = デンはくびを振った。太陽が荒れている。今日はひど ちつき払っているようだった。ア。フトンは皆の気持を代弁していっ い日になるそ。基地で音がする日には、セサイル・ポートは操作が た。「これには我々一人一人の心がこもっているんです」彼は方程難しくなる。そうでなかったためしはないのだ。何かきわどい作業 式の方へくびを振って見せた。「これは我々の全能力を結集した結をしようとすれば、最悪の条件で仕事をしなければならないし、何 果なんですから、採用すべきでないなどと報告する理由はないと思か決まりきった作業をしようとすれば、条件は完璧だった。だが、 うんです。目下のところ、この方程式は顧問会議の最高の作品でそれが気象局というものなんだ。教科書にさえ、そのことは出てい す。その意味で、これは顧問会議そのものだといえます。我々も、 るーー古いフィネイグルの法則の変形なのだ。 我々をこの職務につけた人々も、我々の最善の努力と運命を共にす エデンは、今日はどんな仕事をやらされるのかなと思いながら、 るしかありますまい」 鬚を除き服を着た。我々は最後の最後まで聾棧敷におかれているの グリーンベルグはうなずき、その二枚の紙を一人のレジデントに に、面倒な仕事を全部やるのは自分たちなのだ。気象会議全体は気

6. SFマガジン 1976年2月号

「ケンタウロス」筆者案 「ベガサス」 " 筆者案 か ) においてポーン十個ずつ、ルーク、ナイとにその次元数だけの駒が新たに生まれてく いるゲームはわずかである。文献に登場するこ ト、ビショップ、ユニコーン各二個ずつ、キンる。こうして五次元チェス、 - 六次元チェス : とも珍しい、失われたゲームは、失われた言語 グ、クイーン各一個ずつで勝負される。私も手と同様に考えてみることだけはできる。私も五や失われた民族と同じく、二度と帰ってこな 製の立体チェス盤を持っているが、相手がいな次元チェス ( 駒の種類十八、マスの数なんと三 。最初に碁を考えた人も、最初にトランプを いので、挑戦を歓迎する。 千百二十五 ) までは考案してみた。ただし、指した人も、そして数々の改良者も名前は知られ ところで、私の考えでは、このほかにさらにしてみる気はまったくない。 ていない 一一種の駒がないと、立体化は完成しない。それ 5 ><uo の立体碁を高校時代に考案して打先年発掘された中国の馬王堆の中から、双六 らは、いわば三次元ナイトで、例えば前に二 ってみたが、なかなか面白かった。面と面との様のゲームが出てきたと新聞が伝えた。「スワ つ、そこから斜めに一つというふうに動く駒闘いになるからだ。活路が四つでなく六つあるツ」と飛びついたが写真もなく、記事もわずか ( これをケンタウロスと名付けた ) と、斜めにので石が死ににくい。 ところで、クイズを一であった。あげくの果てに「説明がないのでル 二つ、そこから例えば上下に一つというふうにつ。盤面中央において、普通の碁では最低七石ールは不詳」ときた。しかし考えてみれば、当 動く駒 ( これを。へガサスと名付けた ) とであでつながった一眼をつくることができる ( 二眼時の常識であったろうそのゲームの説明書を、 る。 をつくるのには十石で充分だが ) 。では立体碁誰が副葬品にするだろうか。 ドーソンによると、四次元チェスでは、ビシでは最低いくついるだろう。四次元碁では ? タイムカプセルにを入れたとして、未来 ョップからユニコーンが出たように、四次元的五次元碁では ? 人はそれを何と思うだろうか。そしてその時代 斜方向に動く・ハルーンという駒が必要になると に、果たして遊びは「解放」されているだろう 一 5 いう。が、私はこの他にも三種類の駒 ( ミノタ カ ウロス、フェニックス、ドラゴンと名付けたがゲームには無限の可能性がある。また不明な 必要になると考える。一般に、一つ次元が増すところもあまりにも多い。歴史のよくわかって 立体チェスの″駒の進み方 ( 中央の黒い部分が起点。そこから出ている線が経路。 0 が終 2 8

7. SFマガジン 1976年2月号

「行きますか ? 」 「もっと外界の探険に利用したら ? 」 「わたしたちパペッティア人は、抽象的な知識には興味がありませ「報酬は ? 」 ん。なのに、なぜ探険などする必要がありますか ? 、つまり、船を「飛行に十万スター。手記に五万スターと、売り上げに応じた歩合 です」 とばすのは、それによって何かの利益を得るためだ、というのだ。 だが、パペッティア人は、単身で船をとばすような危険など、金輪「よし、買った」 際冒そうとはしないのである。「わたしたちに必要なのは、たくさ それ以来、私のただひとつの懸念は、。ハペッティア人が、私にか んのお金と、それから、もう少しのろくてもいいからもっと小型の ものを設計するための知識をあつめることです。それにはわたしたわって「中性子星」の記事を書きあげてくれたゴースト・ライタ】 ち知的種族が、最高の人材と、最大の投資を、持ちよらなければなを、見つけだしはしないかということであった。 まったくの話が、最初のうちは、ゼネラル・プロダクツが、なぜ りません。べーオウルフ・シェイフア】、あなたに、ひと役買って 私を信用する気になったのか、ふしぎな気分だった。はじめて連中 ほしいのです」 の仕事を請け負ったとき、私は船を盗もうとした。それが早道だっ 「つまり、広告用の冒険かい ? 」 たからだが、私がいま「ロング・ショット」と名づけたこの船は、 「そう。ひとりで、銀河系の中心部までいって、もどってきていた 盗んでも意味のないものだった。どんな故買屋でも、この船を扱う だきたい」 そんなことができる速さなののは危険すぎて、手がつけられない。おまけに、買って何になる ? 「なある : : : じよ、冗談じゃないー 「ロング・ショット」でなら、例えば球状星団の調査も可能だろ か ? 」 「中心までいくのに約二十五日、帰りも同じだけかかります。そのう。が、それ以外の用途は、結局、造船技術のたけだ。 その点で、核恒星系へこの船を送りこむというのは、たしかに卓 基礎の数字は、おわかりかとーーー」 しい。だが、なぜ、抜なアイデアだった。 「たくさんだ。わざわざ説明してくれなくても、 おれを ? 」 考えてもみたまえ。ウイ・メイド・イットからジンクスまで、あ 「その旅をなしとげ、そして、手記を書いてほしいからですよ。筆りきたりの船だと十二日、それが「ロング・ショット」では十二時 いったい、その差がどうだというのか ? 旅行のため の立っパイロットは大ぜいいます。が、これまでのところ、誰もひ間になる。 きうけてくれませんでした。地上にいて、ものを書いているほう に、十二年も倹約したあとの話だとしたら。しかし、銀河の核とな が、未知の船をテストするより安全だというのです。わたしも、そると、話は別だ ! 燃料補給や準備の問題はさておくとしても、私 の気持はよくわかります」 の古い船では、核にいきつくのに、三百年はかかるだろう。既知空 「おれもわかるよ」 間に住む種族で、核恒星系を目にしたものは、まだひとりもいない ー 20

8. SFマガジン 1976年2月号

へ発表した、一一十枚くらいの短篇であった。この小説も私はハッキリおぼえている。延原さんから、いま『し は、海野十三のどの短篇集にも入っていないらしく、極くやっくりをする蝙蝠』の作者がきているからという話 一市 最近、この小説の話を海野さんにしたところ、あなたは に、出向いていくと、そこに色白の小柄な紳士が腰をお - ~ 夜物憶えがいい、私自身そんな小説のあることを忘れて いろしていた。それが当時の逓信省技師佐野昌一、後年の ましたよといわれた。いま、詳しい筋は忘れたがだいた探偵小説界の異れる星、海野十三で、その時頼んで書い い、つぎのようなものであったと思う。 てもらったのが『電気風呂の怪死事件』である。 ある有名な学者が死ぬ間際に、『しやっくりをする蝙 蝠』と、叫んで死ぬ。この言葉の意味を解こうと、弟子こうして、探偵文壇に大型新人としてさっそうとデビ がいろいろ研究する。蝙蝠が果してしやっくりをするでユーした海野十三であったが、彼はいわゆる本格ものと あろうか。しやっくりをするからには、横隔膜がなけれ呼ばれる探偵小説を好まず、変格ものーーその中でも特 ばならぬが、蝙蝠には果して横隔膜ありや、と、いうよにないしミステリー系作品に力を注ぎ、それま うなことを、海野十三一流の筆で書いてあり、最後の下で科学小説と呼ばれていた作品とは一味ちがう、現代 げとして、学者のいった蝙蝠とは動物の蝙蝠ではなくに近い作品を次々と発表していく。 その創作態度は、どのようなものであったか、石川喬 て、蝙蝠傘のことであった。学者の持っている蝙蝠傘の ・ハネが狂っていて、さしていると、始終、ガクン、ガク司氏はハヤカワ v-v シリーズの海野の短篇集「十八時の ンとゆるんでくる。それがいかにもしやっくりをするよ音楽浴」の解説「海野十三ノオト」に、海野十三の最初 うである、と、 いうことを弟子が発見するーーーと、いうの短篇集「地球盗難」のあとがきを引用されている 筋なのでが、このあとがきは彼のに対する考えかたを理解す ある。 るうえで、非常に参考となるのでぼくもまた、引用して 私はこみることにしたい。 の小説が 本書は、僕がこれまでに作った科学小説らしいものを 気に入っ といっ たので、殆んど全部集めたものだ。科学小説らしい 延原さんて、これを科学小説と云い切らぬわけは二つある。一つ 物一。」「イハに頼んでは僕が探偵小説として発表したものが一、二混っている ~ を 0 一第作者にあこと、もう一つは本当に企図しているところの科学小説 わせて貰としては、まだまだ物足らぬ感がするから、本当の科学 小説はいよいよ今後に書くそという作者の意気ごみを示 いまでしたいことと、この二つの事由によっている。 : ー 07

9. SFマガジン 1976年2月号

′、ヤカワ・ノン刀クション コーネーア・ライアン最期の傑 嶂の空乍戦ー 辷かな橋 勇訳 19 羸年 9 卩 17 日 ーンド全域の飛行場がら戦闘機 爆撃機、輸機 5 讐 0 機グ ? イ名 5 四 0 機が飛び立た。 ガデン作戦〉の開始であるらだが第オーン 、ダのアシうムペミの連合軍の急襲定的な敗北終 らた。上最大の作戦翁の著者の遺作となた本書ぼ ーの厖大な戦闘を描いて余すところがない / 上下各 \ 1200 最新刊 近刊 土方梅子自伝 華族の令嬢として生まれ、 16 歳で土方与志と 結婚、築地小劇場の創立に参加して衣裳を担 当、政府の弾圧を逃れてモスクワからバリに 亡命、帰国後も夫の入獄と生活苦と戦うなど 闌の生涯をつづる異色の自伝 ! ⑦¥ 1600 メイエルホリド 佐藤恭子著 1800 ロシャの鬼才演出家、メイエルホリドの 生涯を厖大な文献を駆使して始めて描く

10. SFマガジン 1976年2月号

り、じっさいの試運転のさいにはそこからはなれるようにとなんとの人工的遺物が再作動される最初の瞬間になるわけだ。つまりそれ か上官を説得しようとした。だが、フリツツは、実験の結果破減的は、その、どちらかといえば、歴史的瞬間だ。その場に立ちあうよ な損害がひきおこされるかもしれないと予想していながら、なお実うに招待されて当然ではないだろうか」 験することによって二度と使用することが不可能になってしまうか「わたしのことばも誤解されているようです」フリツツが言った。 もしれない機械装置が一度だけ作用するところを、現場にいて観察「どんな実験においてもかならず、〈実験中、立入禁止〉という掲 示を出して、部外者の見学をことわる過程が存在します。もちろん したいと決心していたのである。 ゼロ・アワー五分前、フリツツは自分の道具に最後の点検をおこわれわれの知るかぎり、タズーの地下鉄は完璧なもので、保存状態 なった。補助機器にスイッチをいれるように、ジャッコに信号したも完全です。技術的な観点から言えば、二百万年前とおなじように あとになって、プラットフォームに通じる廊下に、足音と人声とが電流を通してうごかしていけないという理由はありません」 「それで ? 」ナッシュが険悪な口調でたずねた。「それではどんな 反響するのを聞いた。通話装置を彼はひったくった。 「一時中止た、ジャッコ。こちらに仲間ができたようだ。もう一度問題があるのだ」 「こういうことです」フリツツが言った。「たとえタズー人にとっ 連絡するまで何もするな」 「わかりました」ジャッコが言った。「しかしうちの者は誰も下にてはごくふつうのことであったものでも、それが地球人には遠くに いてさえも危険なものでないと言いきることはできません。そもそ 降りてはいません。それは確かですー 「うむ」フリツツが言った。「わたしの耳にまちがいなければ、あも、この一つの地区だけに入力する動力の大きさが、地球人の標準 から見るとまったく道理にはずれているものです。タズー人が動力 のしやがれた低音はナッシュ大佐とその副官だ。もちろん、出てい ってもらう。一つの仕事のたびに将官級をいちいち皆殺しにしてし変換の効率について無知だったとはとても思えませんから、結局タ まったら、悪名がたってしまう」通話装置を投げすて、ナッシ = とズーの地下鉄組織はじつに動力を消耗するものだったのだと結論す る以外ありません。上で主スイッチをたおすとき、タズーの機械文 副官が到着したときにはプラットフォームに出てきていた。 「ヴァン・ヌ 1 ン中尉」ナッシ = が冷やかな声音で言った。「きみ明の生のサンプルが手に入ります。その瞬間に、地下のここには実 たちがタズーの地下鉄を再作動させようとしているという情報を、験の成功に完全に必要な最小限の人間以外いてほしくないのです」 ナッシュ大佐は、いらたって鼻を鳴らした。 たったいま聞いたところだ。これほど重要度の高い実験は、もっと 「現在までに得られた知識によれば、タズー人は骨の細い、どちら 直接に情報をうけたかったものだ」 かといえばかよわいような鳥類型の生物だった。地球軍異星探検隊 「報告すべきことが入手できしだい、御報告します」 「きみは、わたしのことばをまったく理解していないようだ」ナツの士官であるわたしが、旧住民が耐えられた状況に耐えられないは シが言った。「もしきみがこの実験に成功するとしたら、タズ 1 ずはない。しかし、きみ自身それほど確信がないのなら、なぜ一時 7