二本足 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1976年3月号
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1. SFマガジン 1976年3月号

になるかどうかできればあなたに調、、 へていただきたいのです。おまう。つまり、ユネスコのためだとおっしやるわけですね ? しか けにこの点は強調しておきたいのですが、連中はおたがいに異る別し、よもや商社でも民間企業でもないユネスコが、どこかの会社の 別のモデルであるということです。帰還されたらただちに、多くのための宣伝部をかってでるつもりじゃないでしようね ? 」 項目についてーーー事が職業面にとどまらず別の面、つまり心理面に「なんということをおっしやるんですか。もちろんそうじゃありま づいても問題になっていますからーー全面的な適性判断を提出してせん。われわれは世界的なマスコミにあなたの結論を公表するつも いただくようお願いしたいのです。つまり、オートマンの見かけが りです。結果が、かりに否定的なものであれば、コスモナフと関連 人間の姿とそっくりであるならば、どの程度まで人間に適応してお企業との間に進んでいる交渉の進展をしばらくはおさえることにな り、かれらのすぐれた点、あるいは逆にかれらの心理的欠陥を感じることは間違いありません。まあそんなぐあいに影響を与えられる させるかどうか、ということを判断していただくわけです : : : わたんじゃないかと : : : 」 しどもの組織のしかるべき部局が、すぐれた学者や心理学者が準備「なんども口をはさんで申しわけありません。しかし肯定的な結果 した資料や調査票をおわたしすることになるはすです」 がでたら、とめることも影響をあたえることもできなくなるんじゃ 「それもわたしの任務のうちに入っているんですか ? 」 ありませんか ? 「そうです。いまここでご返事いただかなくともけっこうです。わ 会長は渋い顔をしてせきばらいをし、そして微笑した。 たしが知るかぎりでは、目下のところあなたは船に乗っておられま「司令官、あなたとお話していると、なんだか自分が悪いことをし ているような気がしてきますよ。良心がけがれているみたいで : せんね ? 」 まあそんなことはどうでも、 「六週間の休暇をとっています」 しいことです。ところで、その非線型式 「では、たとえば : : : 二日でこの件についてお考えいただけませんロポットを選んだのははたしてユネスコだったでしようか ? この か ? 」 すべての状況は、われわれのやった研究成果のもたらした結果だと 「まだおききしたいことがふたつあります。わたしがくだす結論が いえますか ? 万人の利益のために客観的に行動しようとしている にすぎんのです : : : 」 なんらかの結果を生むんですね ? 」 「決定的なものになるでしはう」 「そういう考え方は気に入りませんね」 「それは誰にとってですか ? 」 「司令官、あなたはことわることができるんです。しかし、もしわ 「当然われわれにとってです。ュネスコですよ。問題が宇宙事業のれわれがそんな行動をとれば、それは、ポンティア・ビラトのそし 国際化というところまでいくとなれば、あなたの結論は国連の立法りをまぬがれないかもしれないということだけは承知しておいてく 7 委員会にとって重要な助けになると確信します」 ださい。手を引くことがいちばん簡単です。なにしろわれわれは全 5 「失礼ですが、さっきおっしやったように、それは先の話でしょ世界を代表する政府ではないんですから、だれがどんな機械を生産

2. SFマガジン 1976年3月号

たと主張していたが、今聞くと、『環を貫けて行くな』といったそ「法廷は、弁護側の要請を拒否する。テープはすでに再生され、声 8 4 のゆがみの度合で、しゃべっている人物の検証はできたが、どなっ うだが、すると文句は文章として完結している」 「このホールで火事が起き、わたしが『燃えているそ ! 』と叫んだている言葉の内客まではたしかめられないことが明確にされた。こ としても、どこで、なにが燃えているのか言わないかぎり、これはの争点となっている問題については法廷が特別の決定を別におこな 完結した成句とはいえないかもしれませんが、警告としてそれで充うものとする。証人は、船長がどなったあとなにがあったか証言を 続けなさい」 分理解されるはずです」 「視力がもどってみると、環を横切っているところでした。加速計 「抗議します。証人に秩序を保つよう勧告していただきたい」 まなし 「法廷は証人に強く注意をうながす。証人の義務にたとえやことは 2 を指していました。双曲線速度で飛んでいました。船長が、 『カルダー、命令を無視したなカッシーニに入るなと禁じたはす わざで法廷を茶化すことは入っていない。船内でおこったことにつ いての事実にそくした情報たけにかぎって申し述べるように要請すだそ』とどなりつけると、カルダーはすぐに『聞えませんでした、 船長』と答えました」 る」 「しかし、船長はすぐ制動をかけ、引き返せという命令もしなかっ 「わかりました。船長が空隙に船を持ちこむな、とどなってパイロ たんだろ ? 」 ットに禁じたということが船内でありました : : : 」 「そんなことができるわけがありません。秒速でほぼ八十キロの双 「抗議 ! 証人の証言は意図的に事実をゆがめています」 「法廷は寛大であろうと努力している。証人、きみは、本裁判の目曲線速度で飛んでいたのですから。重力・ ( リアでも突破するんでな 的が事実の認定にあることを理解すべきだ。きみは船長のいった言ければ、あのスピードをおさえることなんて論外です」 「その重力パリアとはなんのことか説明してほしい」 葉の断片を引きあいにだせ。 「およそ二十から二十二重力単位の、。フラスあるいはマイナスの一 われわれはたいへんな加速状態のもとにおかれていました。わた しは一時的に視力をうしないなにも見えませんでしたが、船長のど定加速のことです。環を通過しているとき制動をきかせるには毎秒 なり声は聞えました。言葉はいちいちよく聞き分けられませんでしごとにたえず増大する逆重力が必要となります。最初はせいぜい五 たが、なんのことをいっているのかはよく理解できました。しかも十ぐらいでしようが、そのうちきっと百にはなります。そんな , イロットにも聞えていたはずです。わたしよりかれ制動がかかったら、全員あの世行きまちがいなしです。正確にいえ その警告は、。、 ば「、、船内の人間は一人残らす死ぬことになるでしよう」 のほうが船長に近いところにいたわけですから」 ・「技術的には船はそれくらいの加速ができるんだろ ? 」 「弁護側としては、操縦室から手に入れた記録用のテー。フを、とい いましても、船長が大声をあげたという問題の部分だけですが、再「ええ、たぶんだせると思います。・しかし、もう安全装置がふっと んでいいのなら、の話ですが。《ゴリアテ》は、最大限ほぼ一万ト 度この公開の席で聞くことを要請します」

3. SFマガジン 1976年3月号

ののどもとに突出しており、発進装置の金属のシールドで遮蔽されればならんのなら、もとのプログラムのままでは航路の計算なんか たままでした。およそ数分、土星から離れていきましたから、これだせない、と彼にいいました。なにしろとっくにプログラムどおり でカルダーも帰る気になったな、と思いました。彼は、一連の操作にはやれなくなっていました。どのくらいの高度からロケットを軌 はしみち をして、いわゆる《星道》といわれている操船方法をおこないまし道に持ちこむつもりか分りませんでしたから、彼に補足データを要 た。それは船首をしかるべき星に向け、推力を一定に維持するやり求しましたが、しかしかれはそれに答えませんでした。たぶん、そ かたです。コントロールが順調であれば、その星はスクリーンに静ういうやりかたで自分の意図を船長に伝えるためにわたしに話しか 止状態で映ることになっています。もちろん、われわれの場合そうけただけのことでしよう」 「それはきみの想像なんだろ ? しかし、カルダーは直接船長に話 はいきませんでしたし、航行の力学的特性が変りますから、カルダ ーはそれの定量媒介変数をはっきりさせようとしました。なんどかすことだってできたはすだ」 やってみたすえ、けつきよく舷側モーメントの・ハランスをとる推力「そうしたくなかったのかもしれません。かれがどう行動すべきか 値を割りだすことに成功し、そこで船の向きを変え、また引きかえ分らないでいると誰にも思われたくないと、考えていたのかもしれ ませんし。ナヴィゲーターでさえ、つまりわたしのことですが、彼 しました」 「そのときのカルダーの本当の意図がどこにあるのかきみには分っを助けられないような問題にただちにとりかかって、自分がどんな にすぐれたパイロットであるか示したかったことにます間違いはあ ていたのか ? 」 「ええ分っていました。正確にいいますと、船内に残っていた三号りません。しかし、船長はそれになんの反応もしめされませんでし ロケットを軌道に乗せたかったんだと思います。われわれは、太陽たが、カルダーはすでに環に接近をはしめていました。これはわた 側から黄道面の上空にふたたび下りました。そのさいカルダーの働しには気に入りませんでした」 きぶりはそれはもうたいしたもんでした。自分の目で見たのでなけ「もうすこし具体的に話してもらえないだろうか」 れば、舷側にもうひとっエンジンがふえるなどと設計のときには予「わかりました。そのやりかたに危険な匂いがすると思ったので 測もしていなかった、そんな船をあれほど思うままにコントロールす」 できるとはとても想像できなかったと思います。カルダーはわたし「本法廷の注意をうながすことをお許しいただきたいのですが、証 に、航路の修正と三号ロケット用の軌道と修正インパルスを一緒に人は無意識に、起った事態に積極的に介入するのが船長としての義 計算するように命令しました。そうなると、もはやなんの疑問もあ務であるという点をはじめから認めたがっていないことをはからず もただいま認めました。したがいまして、船長は意識して、よく考 りませんでした」 「きみはその命令にしたがったのだね ? 」 えたうえでわざと自分の義務を怠り、まさにそのことにより船と乗 5 いえちがいます 7 。つまり、いますぐちがったやりかたをしなけ組員をあらかじめ予想することがむつかしい危険にさらしたことに

4. SFマガジン 1976年3月号

「その間船長はなにか指示とか命令とかださなかったのか ? 」 にたいし注意をあたえ、わたくしの質問に答えるよう命じていただ 「全然。指図も命令もされませんでした。パイロットがどんな行動きたい」 をとるか様子をみようとされたのだと思います。原則的には可能性「裁判長、質問には答えるつもりですが、検事はわたしになにも質 がふたつありました。推力を上げてあっさりその惑星から引きあ門 口されておりません。ただ船内で起った事態に、検事の観点から所 げ、任務の遂行を放棄して、双曲線航法で帰還の途につくか、ある見をのべたにすぎません。こんどはわたしがその所見にたいして意 いは、目標の軌道に三号人工衛星を送りだすのをやるだけやってみ見をのべるべきだと思いますが ? 」 ることでした。脱出するということは、すでに空隙にいるロケット 「検事は証人にたいして聞きたいことがあれば、質問の形式にまと が漂浮のすえ数時間後には、それ以上かかることはますありませめてするように、証人は証言する場合、できるかぎり誠実に発言し ん、だめになってしまいますから、計画全体が失敗に終るというこなさい」 とになります。外部から〈見張り〉のロケットで軌道修正をしてや「証人は、船内で発生した事態にたいして、船長が具体的な決定を くだし、それを命令形式で。ハイロットに伝達すべきだったとは思わ る必要がどうしてもあったからです」 「そのうちどちらにするか決めなければならんのはとうぜん船長のないのか ? 」 責任だったはずだが ? 」 「検事殿、服務規定にはいちいち : : : 」 「裁判長、あの質問にどうしても答えなければなりませんか ? 」 「証人は法廷にたいして話せばよろしい」 「わかりました。裁判長。服務規定には船内で起りうるあらゆる事 「原告側の質問には答えなさい」 「それはたしかに船長が指図できたはずですが、かならすそうしな態をいちいちこまかく予測して決められてはいません。そんなこと きゃならないということもなかったと思います。船長が、舵をとつができるわけがありません。かりにそれが可能で、乗組員一人一人 ている人間と話す時間がないことがよくあるのですから、乗船服務が服務規定をまる暗記できるなら、命令系統なんて必要なくなって 規定第十六項にあるとおり、原則としてある状況ではパイロットにしまうんじゃありませんか」 船長の職務を代行する全権があたえられています」 「原告側としては、証人のこういう皮肉めかした発言にたいし抗議 「だが本件の状況では船長は命令がくだせたはすだ。ロで命令を伝を申したてざるをえません」 達するのに障害になるほど加速していたわけでも、母船が破壊され「証人は簡潔に検事の質問にたいしてだけ答えるように」 「わかりました。それでは申しあげますが、船長はあの状況で、特 るような直接の脅威があったわけでもないんだから」 になんらかの命令をくだす必要があったとは思えません。あの場に 「船内時間で十五時をいくらかまわっていたでしようか、パ いて、ことの成りゆきを見ていて、よく承知しておられました。か トは推力を調整して船を安定させました : : : 」 りになにもいわれなかったにしろ、服務規定第二十二項により、パ 「証人はなぜわたしが聞いたことを無視するのだ ? 本法廷が証人 3 4

5. SFマガジン 1976年3月号

・こいたい、何しにこんな山の中へやって来たのかね ? 」 鎖している軍や州警察の要員とも接触を避けねばならぬ性質のもの だった。しかし、事件勃発と同時に動員された州兵の将校団の内に「。ヒクニックよ」私は微笑みにこめた情緒のポルテージを上げた。 は、気が利きすぎる者がいたようである。 ・「そのためにわざわざべイカーからやって来たのよ。山の空気に飢 フォード・エステートワゴンはーーーむろん、見かけは何の変哲もえているというわけ。だから、もう少し奥までドライ・フさせてもら ない車だ タイヤからはげしく煙を吐きながら、州兵たちの直えないかしら ? 前で停まったいやな予感を私は覚えた。折角のおだやかな気分を もちろん、すぐに戻って来るわ」 こわされて、目を吊り上がらせたルビーとサファイアの顔を一瞬パ 軍曹の襟章をつけたその若者はゆっくりと首を振った。権力の手 、クミラーにとらえたからだ。 応えを楽しんでいるかのはうな身ぶりだった。 だて この双生児の姉妹ほど、気分のうつろい易い娘たちはいない。そ「残念ながら答えはノーだ、お嬢さん。俺たちは伊達に軍服を着て ちから のとほうもない能力を考え合わせると、いっ爆発するか分からない いるわけじゃないんだぜ」 ニトログリセリン入りの瓶を抱えているようなものである。 そのとき背後でロ笛を聴き、私は体をかたくしながら振り返っ 五人ほどの州兵が車をのそき込んだ。いずれも実直そのものとい た。恐れた事態が起っていた。残った州兵たちが窓に鈴鳴りになっ ったーー悪くいえば愚鈍な顔を持ったーーー若い男たちだった。土地てルビーたちをのそき込んでいる。彼らの目が惹きつけられたのも の農家や牧場の若者たちだろう。そのすばらしく発達した肩に、カ無理はない。彼女たちの美貌とグラマラスな肢体は、どんなビンナ ーキ色の戦闘服がよくフィットしているとはいえない。アーマライ ツ。フガールにも負けぬものだったからだ、 ただし、一瞥した限 ト銃を握った手付も、堂に入っているとはいえなかった。しよせんりにおいてではである。 兵隊ごっこをしているに過ぎないといえるのだ。 すぐに彼らは真相をさとったらしい。讃嘆のロ笛は消え、かわり 好奇心むき出しの、無遠慮な視線を受け止めて、私は微笑んだ。 に嘲りの声が聞こえた。 つむ、、、 「いったい何の騒ぎなの ? まさかこの先は通れないというんじや「何だ、お頭がいかれていやがるらしい・せ。少々付き合っていただ ないでしようね ? 」 いてもいいと思ったが、これじゃ願い下げだな」 「残念ながらその通りだ、お嬢さん」 ばか ! 私は心で鋭く叫んだが、遅かった。たしかに彼女た そばかす 頭をクルーカットにし、雀斑を顔いつばいに散らした若者が、ヘちは白痴と呼ばれる知能レベルの持ち主である。しかしある種の感 ルメットをぐいと押し上げていった。 覚はすぐれている。とくに侮辱に対してはおどろくべき鋭敏な反応 「ラジオを聞かなかったのか ? この辺一帯は封鎖されている。ちを示すのだ。ルビーと、そしてサファイアの白目がぎよろりと反転 よっとした軍関係の事故があってな : ・ : ・この奥の山は立ち入り禁止し、食いしばった唇から泡が吹き出すのが見えた。二人とも寸分た になっているんだ。 がわぬ反応だった。 つき

6. SFマガジン 1976年3月号

うか。カンガルーの燻製はどうだ」 それでも、さすがに一国一城の主らしく用心深い。そ の人造人間戦車が効能書どおりの働きをするかどうか、 ってなわけで、もう、ターイへン。さっそく油学士まず一台だけ作ってみようという。ところが、これに反 に、人造人間戦車とはどんな兵器かを説明させる。 対したのが油学士。天下の金博士の言葉に、ウソやイン チキがあろうはずがない。現に模型を自分で動かしたか 「その人造人間戦車とは、実に人造人間にして、且つら、絶対安心だと主張するのだ。 又、戦車であるのでありまする」 「余には、さつばり意味が分らん」 「お前は動かしてみたかね」 「つまり、ソ / 金博士の申しまするには、ここに百人か「よ、。 ーしもちろん、上海では、やってみました。戦車を ら成る人造人間の一隊がある」 動かしますのは、渦巻気流式エンジンというもので、じ 「ふん。人造人間隊がねえ」 つにすばらしいエンジンですな」 「この人造人間隊が、隊伍を組んで、粛々前進してまい 「渦巻気流式エンジンというと、どんなものちゃ」 ります。お分りでしような」 「これは金博士の発明の中でも、第一級の発明だと思い 「人造人間隊の進軍だねー ますが、つまり、気流というものは、決して真直に進行 「はい。このままで放って置けば何日何時間たっても、 しませんで、廻転するものですが、その廻転性を利用し 遂に人造人間隊でございますが、必要に応じて、司令部て、一種の摩擦電気を作るんですなあ。その電気でもっ より、極秘の強力電波をさっと放射いたしますと、これて、こんどは宇宙線を歪まして : ・ : ・」 がたちまち戦車となります。 : : : フットボール竸技に於「ああ、もういい。渦巻気流を応用するものぢやと、か て、さっと。フレーヤーが、さっとスクラムを組みますんたんにいえばよろしい」 が、つまりあれと同じように、人造人間が、たちまちス頭が痛くなることは、頭の大きい醤主席にとっては、 クラムを組むのでございます。そしてたちまち人造人間苦が手であった。 のスクラムによって、一台の戦車が組立てられまして、 こいつが、轟々と人造人間製のキャタ。ヒラを響かせて前 そんなやりとりをしながら、人造人間を大量生産して 進を始めます : : : 」 いるうちに、たいへんなことが起こった。オーストラリ アの原住民たちが、倉庫に転がされている人造人間を見 鉄腕アトムに、ロポットで宇宙船を組みたてる話があて、人間の死体だと思いこみ、醤買石の一団を食人種と ったように思うが、この金博士の発明はその戦前版。説感ちがいしたのだ。 明を聞いた醤買石さっそくこの強力な兵器の生産にとり あっというまにオーストラリア原住民の戦闘隊が組織 っこ 0 され、手に手に槍をかまえて醤の陣営めざして突進して : 幻 2

7. SFマガジン 1976年3月号

だが、それでいいのだ。 然の災厄としてではなく、あらかじめ知っていて手を打っこともで きるではありませんか」 これで、ともかくも、自分は、連邦開発営社一三二五星系支部の 「ーー馬鹿な」 閉鎖を、ほんのしばらくの間かも分らないが、食いとめるのに成功 : ラクザーンの ボウダは呟いたがいもちろんそれは司政官に向けられたものではしそうなのだ。これが他の事業体にも及ぶならば : 破減以前に、うまい汁だけを吸って先に逃け出そうという者たち 「だからですよ」 に、多少でも打撃を与えることが出来るだろう。この世界、自分が マセは、また笑った。今度もうまく笑うことが出来た。「だから司政官として担当したこの世界では、そんな抜け駈けは許されては ・ : 支部の閉鎖など、とにかく今はして欲しくないのです。せめてならないのだ。ここの先住者、ここの植民者たちをたぶらかすこと になる、そんな真似を許してはならないのだ。そして、その第一ラ ・ : 連邦直轄事業体の活動がある程度常態に復し、人々の不安がな ウンドは ( 彼自身の感じでは ) どうやら相手を制することになりそ くなってからにして欲しいんです・でないと : : : あなたのところが 引金になって、住民の不安がたかまり、爆発するかも知れません」うであった。 それからマセはつけ加えた。「ご協力頂けないでしようか。すく 2 なくともこれは、あなたのところも含めて、連邦直轄事業体が招き 寄せたことなのですから」 が、巡察官を乗せた宇宙船がラクザーンに近接しつつある 「いかがでしよう ? 」 ことを報じて来たとき、マセは科学センターにいた。 センターの所長のハルツ・»-Ä・リードとの会談を終って、帰ろ 「あなたは : : : 」 うとしていたところである。 ボウダは、鋭い目を向けた。「あなたはその妙な注釈とやらをつ ハルツは所長とはいうものの、自己の専攻分野以外にはおよそ関 けた統計資料をばらまくことで、余計に住民の不安をかきたてたと 心のない老学究で、センターの管理にはもつばら副長所のグレイ・ : そうは思わないのですかな ? 」 *-Ä・ドーンがあたっていた。マセはセンタ 1 との折衝をグレイ 「まさか」 マセは肩をすくめてみせた。演技としてはそう拙くはないと彼はとするのが常であったが、それでも所長がハルツである以上、形式 だけでも立てておかなければならず、そのため、グレイと会ったあ 田 5 った。 「失礼だが : : : 司政官 : : : 後悔されたことになるかも知れませんとには、必す所長とも顔を合せて、何がしかの雑談をしてから戻る のであった。あまり他人とは会いたがらないこの老所長が、マセの ぞ」 来訪を必ずしも迷惑がってはいず、機嫌のいいときなどはむしろ引 ボウダの声を聞きながら、マセは立ちあがった。 きとめるようにしてでも話をしようとするのは、所長の専攻が宇宙 結果がどう出るかは分らない。 へたをすると、ーーというより、かなりの高い確率で、自分は責任生物学であり、マセが司政官として当然学ばなければならなかった R 地球人以外の生物の社会形態の知識に興味を持っていたからであ を追及されることになるかも知れない。

8. SFマガジン 1976年3月号

マセは、この自分の推論を、に対しては当面伏せておくこ可及的速かに閉鎖し、資産を処分した上でラクザーンから去ると とにした。 (-DOb-«が同じ結論に達していることは考えられる。それいうものである。 どころか、マセよりも早くそうなっていたに違いないだろうが : 予想通りであった。マセは折返しそのことに異議のある旨を伝え ロポット官僚に、連邦からの指令の出る迄は太陽の新星化というさせ、きよう、予告の上でこの開発営社支部を訪れたのだった。 条件をしまい込んでおくようにとの命令があり、依然としてそれが 働いている以上、マセが受取るの結論は、 (-nc•b-«の本当の結「ふむ」 論ではなく、歪んたものになるはすである。新星化という条件を外マセがそうした経緯を瞬間的に頭の中に生き返らせ、自己の決意 したものにしかならないはずなのだ。すくなくとも司政官にはそうを確認したとき、ボウダ・・ガルがいった。 マセは相手を注視した。 いうものしか提出しないはずである。が司政官経由であろう となかろうと連邦の解禁指令に接したとき、または、連邦の禁止に相手はやはりにこやかであった。 かかわらす行動要因に組み入れなければならぬ緊急事態が発生した「しかし、司政官」 ボウダは椅子に背中をあずけていうのである。「これは、そうい とが認めたとき、そのときには、 ()0 のほうから司政官に 告げるであろう。それ迄はこちらからいいだすことはないのだつうことをいわれる筋合のものではないでしよう ? 営社としては、 こ 0 ある惑星上の支部を閉鎖し、その惑星から引揚げるというのは、単 全体的なその結論をに突ぎつける代りに、マセは、個々なる通告事項だと解釈しておりますよ。司政官に裁決を委ねる必要 の、がストレートに答えてくれる事項をたずねることにしはないと思いますがね」 マセは頷いた。 た。その手はしめが、開発営社の今後についてである。 OI* はさ らに多くのデータを下僚を駆使して収集した。開発営社がこれから「たしかにその通りです。連邦直轄事業体はどの植民世界上でで も、連邦経営機構の認可を得るだけで、自由に業務をいとなみ、自 もラクザーンにとどまるか、でなくてもまた戻って来るかについ て、はその可能性のないこと、このまま支部を閉鎖しラクザ由にやめることが出来ます。連邦直轄事業体の特権ですからね」 ーンから撤退する以外には考えられないことを、推断した。その推「その通り。そして、この件に関しては、連邦の認可を得てありま すしね」 断がーーー二日前だったのだ。 その推断を待っていたマセは、即座に、開発営社一三二五星系支「だが、その世界の担当司政官は、定められた状況、あるいは条件 問い合せさせたので下では、その特権を制限できるのをお忘れではありませんか ? 」 部に対し、事実支部を閉鎖するのかどうかを、 ある。 マセは、横に佇立しているに向って促した。「この方 8 に、それをお話してくれないか ? 」 一日たった、つまり昨日、開発営社から回答があった。

9. SFマガジン 1976年3月号

用したという非難の声があがるのも、また明白なのだ。だから、本 当に対決しなければならない時以外には、減多にそんなものは出し 1 ( 承前 ) てはならず、出すとしても、その結果を覚悟しておく必要があり : ・ ・ : とどのつまりは、何もせず雑務に追われることで司政官としての 開発営社支部の大門 二つの高層ビルと四つの巨大な倉庫、そ れに物資の展示や即売や交渉を行うための簡易店舗を持っ広大な空職責をふさいでいるというつもりになってしまうーーーそれが無難な 地を取り囲む石塀の、その正面に構えている装飾過多ともいうべきやりかたというものなのだ。 正門は、報告を受けていた通り、閉ざされていた。司政官の来訪が マセは、ロ辺に薄ら笑いを浮べた。 前以て予告されていたはすにもかかわらす、そうなのである。それ はたしかに、今回のこのマセの訪問は非公式な、とにかく立入令状泣きごとはよそう。 を携行しないものであるのは事実だったし、それゆえに営社側が大自分は、自分自身に、そういい聞かせたのではなかったか ? 門を開いて待ち受ける義務もないのもたしかではあったから、これから、こうしてやって来たのではなかったか ? 置かれた立場でベストをつくす、それだけでいいのである。 は、やむを得ないことなのかも知れない。 だが : : : 本来、司政官というのは、担当惑星上のいかなる建造物彼は、正門から迂回し、三十メートルほどむこうの、もともとは ・地域であろうと、無条件に踏み込み、査察を行う権利を持ってい休日などに保守要員が出入りする小さな門へと向った。 その門には、警備員がいた。警備員は司政官に対する伝統的な敬 たものなのだ。それが原則であり、また、そうでなければ司政など ということは到底不可能たったからである。長い年月のうちにそれ礼を行い ( そこに、どれ程の敬意が含まれているのか、マセにも判 もいっか、一応の了解を得てからでないと踏み込まないような慣習断がっきかねた。こうした連中の敬礼というものは完璧なまでに形 が出来あがってしまったけれども、それはあくまでも司政官側の善式化されており、そこから相手の感情をくみとるすべはなかったの 意による権利留保として、そうなっていただけのことなのだ。そしである ) それから迎えの無人車を呼んだ。 マセは、宙を滑るその無人車には乗らず、あとを、ロポットたち て、今では、連邦直轄の組織がはっきりと治外法権を認められてい るのである。むろん司政官はその治外法権区域であろうと、必要がとともに徒歩で進み、支部の中枢部に向った。 あるときには立入令状を発行してロポット官僚を差し向けたり、み ずから令状を携行して、任意にそうした場所へ入り込む権限を有し「お待ちしておりましたよ」 てはいる。が、それではたとえ形式上は依然として司政官の絶対権腰をあげて会釈したのは、支部長のボウダ・・ガルであ 3 力があるとしても、令状そのものに責任を持たねばならず、相手にる。支部長といっても、それは兼任であり、本来は十近い星系を受 うまく立廻られて思わしい成果をあげられなかった場合、権利を濫持っ連邦開発営社理事なのた。

10. SFマガジン 1976年3月号

のことですの」 新聞売りは横をむいたまま、つぶやくようにいった。 「いや、わかってます」といって、彼は笑みをうかべた。 「ないですね。すみません」 受付け嬢は電話ロで、「そうです、十七日と十八日のですーーあ 「ところで、この町には地方紙があるかね ? 」 あ、そうですかーーはい、では、そうお伝えしますーーええ、わか 「ええ、あります。でも、まだ出てませんよ」 っております」といい終わると、ス。フルーアンスのほうに向きなお とこ ? ・」 「なるほど。で、その新聞社は、。 って、「あのう、申しわけありません。十七日と十八日のは、まだ 「ここから二プロックばかし先きを右にまがって、半プロックばか ファイルしてないんだそうです」 しいかけて、新聞売りはス し行ったとこにあります。でも : : : 」と、 プルーアンスの顔をみあげたが、すぐにまた、さっと下をむいてし「いや、かまいません。・ハラのままで見ますから」 「いえ、それはできないんです。社はーーー社としては、例外をつく まった。 るわけにまいりませんので」 「でも、なんだい ? 」 「なるほど。そうですか」といって、ス。フルーアンスは、受付け嬢 「いや、べつに」 スプルーアンスは新聞売りに礼をいうと、教えられた道を歩いてがなにか怯えたような顔をしているので、さらにいいそえた。 いった。ところが、途中、すれちがう人びとはみんな、彼の視線をや、べつに大したことじゃないんです。とにかく、どうもありがと う。じゃ、失礼」 避けるか、敵意のこもった目で彼の顏を凝視するか、のいすれかだ よそ あたりは、そろそろ暗くなりかけていた。 った。こんなはずはなかった。この町は、いわゆる他所者に好奇の 目をむけたり、反感を示したりするような、せまい田舎町ではない 九回目のベルで、やっと妻がでた。ベルが鳴っている最中、ふ のだった。スプル 1 アンスは「十セント・ストア」のまえでちょっ と立ちどまって、ウインド 1 をのそいているようなふりをした。数と、あのときと同じ孤独感におそわれて、彼は思わず、人びとがも 人の歩行者が背後をとおりすぎた。そのなかには、カツ。フルもましどってきたままでいるかどうか確かめようと、電話ポックスの外を っていた。彼らの様子をひそかに観察してみると、敵意の対象は自のそいた。そのせいか、妻がでたときの彼の口調は、ひどくとげと 分だけではなく、みんなに共通のものであることがわかった。だれげしかった。 とこにいたんだ、おまえ」 もが、おたがいに相手にたいして、よそよそしい態度を示している「いったい、・ 「屋根裏の部屋よ。どうお、元気、あなた ? すぐ帰ってくるの ? 」 のだった。 新聞社につくと、受付けの若い女性に、最近の新聞をみせてほし「ああ、すぐ帰る。いま、ヘイズヴィルにいるんだ。おれは元気だ けど、ジョーン、おまえはどうだ ? 」 いと頼んだ。 「元気よ。あなた、ほんとに元気 ? 仕事はどうでした ? 」 「いつごろのでしようか ? 」 きのうおとと 「それは、あとで話す。ところで、おまえ、屋根裏の部屋で、いっ 「そう、できたら、昨日と一昨日のを」 たいなにをしてたんだ ? 」 受付け嬢は困惑したような表情をすると、「だとすると、モルグ 通常の意味は死体公示所い別に電話できいてみないと。いえ、資料室「あたしも、あとで話すわ。ちょっと妙な話なの」