状況 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1976年3月号
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1. SFマガジン 1976年3月号

ルを失うようなことはあるのか ? ・ だけはやっています。あなたにお渡ししたのは、手持ちのうちの最 「ありえます」 高品です。だから、自制心をなくしたり、なんらかの精神的発作が 6 「な。せだ ? 」 起ることは原則としてないわけではありませんが、同じ状況におか 「それは避けられないからですよ。たとえていえば、ニュートリ / れたときの人間よりはかれらの方がその確率ははるかに小さいとい あるいはクリスタルのシステムに取り入れられている制動は、これえます」 はあくまでも相対的なものですし、はずしたり、ゆるくしたりもで「そういう実験をやったんだな ? 」 きます。あなたには本当のことを知っていただかなくちゃなりませ「もちろん」 んから、中しあげているんです。しかも、この問題に関する文献を「ではその実験に人間も使った ? 」 多少なりとも読んでおられたら、知能水準が人間と同じでいて、嘘「そういうことはよくありますよ」 もつけなければ人もだませないようなロポットがいたら、それはフ 「生命にかかわるような状況にしたのか ? 命とりになるおそれは イクションだというぐらいのことはおわかりのはすだ。人間とそっあったんだろ ? 」 くり同じコビーか、あるいは操り人形かのどちらかですーーーそれ以「まったくそのとおりです」 外のものを作るわけにはいきません。どっちつかずというのはあり「で、結果は ? 」 ません」 「人間のほうがたよりになりませんでしたね」 「ある水準の複雑な行為ができる存在は、同じ水準のほかの行為を「連中の攻撃性はどうだ ? 」 するだけの能力がある、そうだな ? 」 「あなたが関心のあるのは人間との関係でですね ? 」 「ええそのとおり。もっともそれは採算性を度外視しての話です「そうとはかぎらん」 よ。すくなくとも当面は。人間的外観のことはさておき、心理的に「安心していただいてけっこうです。連中には特に抑制機構が組み こまれていて 完璧なことはすごく価値があります。あなたが受取られたモデル いわゆる逆放電装置といわれているやつです ポテンシャル は、採算がとれないのでごくわずかな数しか生産されていません。攻撃電位を低くするようになってますよ」 どれひとっとっても、コストが超音速爆撃機一機分に相当したんで 「ふだんも ? 」 「いいや。そんなことはありえませんよ。脳はわたしゃあなたと同 「たいしたもんだ」 じで確率システムですから、ある状態の確率を高くすることもでき 「もちろん予備研究の費用もこみですが。たぶん市場用にこのオー ますが、けっして完全にそれに頼りきるようなことはない。ま、そ トマトンをコンべアシステムで生産できるようになりますし、もうの点では人間よりすぐれていることはたしかですよ」 いまいじようは不可能だろうとは思いますが、それでも改良の試み「わたしが連中のうちの誰かの頭に穴をあけようとしたら、どうす

2. SFマガジン 1976年3月号

「船長、それで気がすむなら永久にそう思っていることもできます「あります。負けたことがわかっているときだってそうしました よ。ほかになにかわたしのことでお聞きになりたいことは ? 」 よ」 「きみはいろんなテストの場面で人間と競争してきた。いつも勝っ 「なぜだ ? 筋がとおらん話じゃないか ? 」 たのはきみのほうだったのか ? 」 「きわめて論理的ですわたしがそうするときめたんですから」 「いいえ。課題をやるのに精度やアルゴリズムや数学が必要な度合「たすかった、礼をいう。きみはたしかにわたしを助けてくれたよ いが多いとわたしの真価が発揮できます。勘がわたしのいちばんのうだ。もうひとつだけききたいが、帰遠後なにをするつもりだ ? 」 弱点です。計算機から生れたから、そのむくいをうけてるんです「わたしの専門はサイ・ハネチックスと神経学です。しかもその方面 よ」 じゃまあまあの評価をされています。創作能力はありません、あれ 「実際の様子がどうなのか具体的に話してくれないか ? 」 だけは勘と切っても切れない関係にありますからね。でもそれがな 「状況がきわめて複雑で、新しい要因の量が増えすぎると、わたしくったってけっこう面白い仕事がたくさんあります」 は手がつけられません。わたしにわかっている限りでは、人間は推「ありがとう」ビルクスはもういちど礼をいった。 測っまり近似的解答にたよろうとしますし、ときにはそれがうまく ・ハーンズは立ちあがるとひかえめにうなずいて部屋を出ていっ いくこともあります。ところが、わたしにはそれができません。わた。ピルクスはドアが閉るとすぐべッドからたちあがり、部屋の中 たしはいつも正確かっ明解に計算しなきゃなりませんから、それがをいったりきたりしはじめた。 やれないとなるとわたしの負けです」 『いまいましい、なんで俺がこんなことにかかわらなきゃならんの ーンズ。つまり 「きみが話してくれたことはたいへん重要だよ、・ハ だ。こうなるともうなにがどうなってるのかさつばりわからん。あ 危険な状況、かりになにか惨事でも起ったときは、という意味でだ りやットだろうか ? ・それとも : : : やつばり本当のことを話し たとしか思えん。しかしどうしてあんなに長話をしていったんたろ 「ところがそれほど単純じゃないんです、船長。恐怖という感情をう ? 人間の歴史の総まくりにプラスやつの〈外からの批評〉、か わたしは持ちあわせてないんですからねーーいずれにせよ、人間が : かりにやつの話に嘘はない、としておこう。だとすれば、うん 感じるようなふうには感しないんです。だから死ぬおそれはあってとやっかいな状況を引き起こさなきゃならんわけだ。しかし、俺が もそんなことはわたしにはたいした意味はありませんし、要するにしくんだことがばれんようにいかにももっともらしくみせかけなき 途方にくれるなんてことはないんです。そういうときは、その冷静ゃならん。つまりその状況が実際に起ってくれたらいうことはない さで勘のないことを相殺できるんです」 はずた。要は命がけでやる必要がある、ということだそ。人工的に 「そういう状況で最後のどたんばまでふみこたえた経験はあるのか設定した危険が、しかしひとりでにいつのまにか本物の危険になっ 3 ちまうようなことはないだろうか ? 』

3. SFマガジン 1976年3月号

「その間船長はなにか指示とか命令とかださなかったのか ? 」 にたいし注意をあたえ、わたくしの質問に答えるよう命じていただ 「全然。指図も命令もされませんでした。パイロットがどんな行動きたい」 をとるか様子をみようとされたのだと思います。原則的には可能性「裁判長、質問には答えるつもりですが、検事はわたしになにも質 がふたつありました。推力を上げてあっさりその惑星から引きあ門 口されておりません。ただ船内で起った事態に、検事の観点から所 げ、任務の遂行を放棄して、双曲線航法で帰還の途につくか、ある見をのべたにすぎません。こんどはわたしがその所見にたいして意 いは、目標の軌道に三号人工衛星を送りだすのをやるだけやってみ見をのべるべきだと思いますが ? 」 ることでした。脱出するということは、すでに空隙にいるロケット 「検事は証人にたいして聞きたいことがあれば、質問の形式にまと が漂浮のすえ数時間後には、それ以上かかることはますありませめてするように、証人は証言する場合、できるかぎり誠実に発言し ん、だめになってしまいますから、計画全体が失敗に終るというこなさい」 とになります。外部から〈見張り〉のロケットで軌道修正をしてや「証人は、船内で発生した事態にたいして、船長が具体的な決定を くだし、それを命令形式で。ハイロットに伝達すべきだったとは思わ る必要がどうしてもあったからです」 「そのうちどちらにするか決めなければならんのはとうぜん船長のないのか ? 」 責任だったはずだが ? 」 「検事殿、服務規定にはいちいち : : : 」 「裁判長、あの質問にどうしても答えなければなりませんか ? 」 「証人は法廷にたいして話せばよろしい」 「わかりました。裁判長。服務規定には船内で起りうるあらゆる事 「原告側の質問には答えなさい」 「それはたしかに船長が指図できたはずですが、かならすそうしな態をいちいちこまかく予測して決められてはいません。そんなこと きゃならないということもなかったと思います。船長が、舵をとつができるわけがありません。かりにそれが可能で、乗組員一人一人 ている人間と話す時間がないことがよくあるのですから、乗船服務が服務規定をまる暗記できるなら、命令系統なんて必要なくなって 規定第十六項にあるとおり、原則としてある状況ではパイロットにしまうんじゃありませんか」 船長の職務を代行する全権があたえられています」 「原告側としては、証人のこういう皮肉めかした発言にたいし抗議 「だが本件の状況では船長は命令がくだせたはすだ。ロで命令を伝を申したてざるをえません」 達するのに障害になるほど加速していたわけでも、母船が破壊され「証人は簡潔に検事の質問にたいしてだけ答えるように」 「わかりました。それでは申しあげますが、船長はあの状況で、特 るような直接の脅威があったわけでもないんだから」 になんらかの命令をくだす必要があったとは思えません。あの場に 「船内時間で十五時をいくらかまわっていたでしようか、パ いて、ことの成りゆきを見ていて、よく承知しておられました。か トは推力を調整して船を安定させました : : : 」 りになにもいわれなかったにしろ、服務規定第二十二項により、パ 「証人はなぜわたしが聞いたことを無視するのだ ? 本法廷が証人 3 4

4. SFマガジン 1976年3月号

「ええそうです。なにか邪魔しているものがあったんだと思いま噴射の衝撃をうけたら、船はとん・ほがえりをはじめるにちがいあり す。・フ 1 スターが作動するまでにまだ三十秒ほど間がありましたかません。土星の方を向いていた右舷にロケットの衝撃をもろにうけ ら、カルダーはもう一度ロケットを押しだそうとして、圧力を高くます。つまりそれは舷側が反射器のような効果をするにちがいない してみました。圧力計の針は限界を示しているのに、ロケットはあということです。わたしは、とん・ほ返りと遠心力効果がはじまるの 、を今か今かと待ちました。そうなれば、船に推力をつけてそれをと いかわらずびくともせずに腰をすえたままでした。そこでカルダー はプランジャーを引いたり、また押したりしました。まるでそれはめるのがパイロットのやるべきことです。そういう状況では、どう 、う手を打つべきかあらかじめ予測するなんてことはできません。 ハンマーでじかにロケットをぶったたいているような感じがしましし いずれにせよ首尾よくとめなくちゃなりませんでした」 た」 「つまり、証人は当直のとき、ベルトをはずして航宙士の任務につ 「そうやってロケットを押しだそうとしたんだね、かれは ? いていたということだね ? 」 「そうです。カルダーがすこしすっ圧迫を加えるのを強めていくん 、え、ベルトは一度もはすしていません。ただゆるめていただ ではなくて、いっぺんにシステムにどかっと圧力を加えていたら、 ますロケットはだめになっていたと思いますよ。しかし、彼はよくけです。あるていど調整できるようになっていますから。・ ( ックル わきまえていました。なにしろ予備のロケットはありましたが、本をきっちりと固くしめると、われわれはそうすることを〈重しをす る〉といってるんですが、自由に体がうごかせなくなってしまうか 船の予備はありませんでしたからね」 「それは皮肉ととるべきだろうな ? ここでそういういいかたはつらです」 「規則では、ベルトをゆるめたり、調整してはならないことになっ っしんでもらいたいー 「つまり、プランジャーで衝撃を加えたのですが、ロケットは飛びているのは知っているのだろう ? 」 「そのとおりですし、服務規定でも似たりよったりのことをいって だしませんでした。時間だけどんどんたっていきました。だから、 わたしは大声で、ベルトをつけろとどなって、しつかりと体を固定います。しかし、いつもそうしています」 しました。わたしのほかにも少なくとももう二人、同じことをどな「証人はなにがいいたいのだ ? 」 「実際にわたしが乗ったどの船でも、ベルトの・ハックルは調整して ったはすです。一人が船長だったことは、その声で分りました」 いました。それは仕事がやりやすいからです」 「どうしてそんなことしたのか法廷に説明したまえ」 「わたしたちは環上空の円軌道を飛んでいました、つまりそれは「規律違反が横行しているからといって、それで正当化されるわけ 実際に無重力状態だったということです。・フースターが作動したらではない。証言を続けたまえ」 「思ったとおり、・フースターは作動しました。船は横軸に沿って回 どういうことになるか分っていました。発進装置にはすでにスイツ チが入っていたのですから、それは避けられませんでした。舷側に転をはじめると同時にいそれまで飛んでいた軌道から、非常にゆっ マキシマム スタータ 4

5. SFマガジン 1976年3月号

ば、ラーマは彗星だった。恒星間の奥深い所からやってくるのは彗ことは本当にそう思っているのだということを知っていた。 アステロイに 星だけで、多くはラーマよりも太陽に接近する双曲線軌道をとるで「ラーマと名づけられた巨大な宇宙船もしくは人工の小惑星は一年 をないか。どんな宇宙法律学者でもこの点ではかなりよい判決を得前に木星外の境域で発見されていました。はじめは自然のものと思 られるだろうーーおまけに水星大使は名うての宇宙法律学者なのわれており、双曲線就道をとって太陽をめぐりまた星の世界へ飛ん でいくものとされていたのです。 その真の素性が発見されるや太陽系調査局宇宙船エンデヴァー号 「水星大使閣下の発言を認めます」 が命令を受け、ランデヴーを行いました。みなさんもそうでしよう 各代表者の席次は太陽からの距離の順に左回りになっていたの が、わたしもこのユニークな任務をかくもみごとに能率よく成しと で、水星人は議長のすぐ右隣りに坐っていた。本当にぎりぎりまでげたノートン中佐とその乗組員にお祝いを述べたいと思います。 かれはコン。ヒュータに顔をうずめていた。そして同調メガネを片づ はじめ、ラーマは死んでいると信じられていました。何十万年も けてしまって表示スクリーンになにが写っていたのか誰にもわからの間凍りついていては復活の可能性などないと考えられたのです。 ないようにしてしまった。覚え書の東を手にするときびきびと立ち純粋に生物学的な面だけから見れば、この考え方はまだ正しいのか 上った。 もしれません。この方面の研究者の一致した意見として、複雑な有 サスペンデッドアニメーション 「議長並びに著名なる代表諸君、まずわれわれが直面している状況機体生物は生体仮死保存の状態でもけっして数世紀以上生きられ の簡単な説明からはじめたいと思います」 、ということです。絶対零度であっても、残滓物質が不可避的 代表の何人かは″簡単な説明″という言い方をきいて、静かにうに作用して復活するのに必要な細胞質の記憶をぬぐい去ってしまう めき声をもらしたようだった。けれどもみなが、水星人がロにしたのです。これらを考慮すると、ラーマは考古学的にはまことに重要 中 房 し 発 好 日本 T2 ノヴェルズ スフィンクスを殺せ \ 8 ′ 0 0 田中光ニ スピーディな文体がイマジナリ不・ランドに展開する冒険者の群像 ! スフィンクスを殺せ : 田中光三 人類のあなき争ー 的悪物リ看ぐ 、ゞ新たなイクもンの第を」 四六判上製 ロ 3

6. SFマガジン 1976年3月号

◆村◆◆△界 19 75 にはちがいないのだが、その滲透がもつばら局 ) 、石川喬司『ア ・・ - ここ数年の日本界は、日本経済同様、中間小説界へ向けてなされている現状では、 丿スの不思議な ・艱・・・急成長によるヒズミで″繁栄のなかの不況″それがいつ「変質と解体」につながるかもし旅』 ( 早川書房 ) 、 司 、◆◆状態にある、といえそうだ。あるいは、ようれない危険をはらんでいることも忘れてはなそのほか福島正 ◆・◆・◆・△やく大人の仲間入りをして、しだいに世俗のるまい 実、石原藤夫、河 ョ ◆・◆・◆・△垢に染まりはじめた、とみるべきかもしれな『週刊読書人』恒例の年度・ヘスト 5 野典生らの諸短 ( 山野浩一選 ) はつぎのとおりで、ここには篇 : 石 - ・富年度の界回顧で、・ほくはこう書い はっきり以上の状況が反映している。 新人では、山田 日本作品Ⅱ豊田有恒『持統四年の諜者』正紀 ( 『神狩り』 蜘◆◆た。昨年は、そうした状態が、さらに慢性化 本 ◆・◆・◆・△していった一年だった。 ( 河出書房新社 ) 、福田紀一『オデュッセウス『弥勒戦争』 ◆・◆・◆人話題としては、半村良の第た回直木賞受賞周遊券』 ( 同・ただしこれは年度の作品 ) 、 いずれも早川書 日一 ( ・・ - がまずあげられるが、過去十回の候補作品が半村良『妖星伝』 ( 講談社 ) 、荒巻義雄『時房 ) が注目され ・・ - 一すべてだったのに、今回の受賞作が風俗の葦舟』 ( 文化出版局 ) 、半村良『回転扉』 ( 文た。《マガジ ン》コンテスト出 ・・小説 ( 『雨やどり』 ) だったという事実は、きわ藝春秋 ) 。 ◆・◆・◆人めて象徴的である。選考委員の一人である村海外作品日アルフレッド・ジャリ『超男性』身のかんべ・むさしも、これから期待したい ◆・◆・◆人上元三が選評で書いているように「実力のあ ( 白水社 ) 、 『緑のこど一人である。 ( ・・・る作家だけに、この人には長篇ので、直も』 ( 河出書房新社 ) 、カート・ヴォネガット 異色作品では、藤島宇内・宇策『鬼窩山戦 ・・・木賞を得てほしかった」というのが大方の思 ・ジュニア『プレイヤー・ビアノ』 ( 早川書争』 ( 大和書房 ) 、都筑道夫『怪奇小説という ◆・◆・◆人 房 ) 、アレホ・カルペンティエル『この世の名の怪奇小説』 ( 桃源社 ) 、それに安部公房 ・・・いだろう。 ◆・◆・◆・△第 2 回角川小説賞を受賞した河野典生の王国』 ( 創土社 ) 、レジス・メサック『減びの『笑う月』 ( 新潮社 ) 。 ◆・◆・◆人『明日こそ鳥は羽ばたく』も、この作者が近島』 ( 牧神社 ) 。 評論・研究では、福島正実『「衝突する宇 ・・年意欲的に取組んでいるファンタジーの領域選者の山野は、年を「というものが宙」以後』 ( 大陸書房 ) 、加納一朗『推理・ ・・・の収穫ではなかった。 ジャンルとして成立しなくなった年であった映画史』 ( インタナル出版社 ) 、紀田順一郎 ・・同じことは、昨年活躍が目立った豊田有恒といえる」と結論しているが、極論すればそ編『出口なき迷宮』 ( 牧神社 ) 、横田順弥『日 本こてん古典』 ()o マガジン連載中 ) 。 9 9 の『親魏倭王・卑弥呼』や『持統四年の諜ういうことになるかもしれない。 ◆・◆・◆人者』などの歴史小説、さらには星新一が父親しかし個々の作家についてみれば、″ アンソロジーでは、筒井康隆編『日本 マインド″を色濃くとどめた地道な蓄積作業ベスト集成』 ( 徳間書店 ) 、伊藤典夫編『吸血 ◆・◆・◆・△の青春を描いた『明治・父・アメリカ』などに ( ・・ついてもいえる。つまり、界から巣立つがおこなわれていることがわかる。それらを鬼は夜恋をする』 ( 文化出版局 ) 、浅倉久志編 『救命艇の叛乱』 ( 文化出版局 ) 。 ・・・た作家たちが、それそれの個性を生かした多列挙すると 小松左京『無ロな女』 ( 新潮社 ) 、『おしゃべ雑誌では、『国文学』三月臨時増刊号《ミ ・・角的な仕事に取組んでいく過程で当然生じて ( ・、・くる現象な 0 である。そしてそ 0 背景にはりな訪問者』 ( 筑摩書房 ) 、星新一『お 0 そみテリーと世界》、『幻影城』の香山滋 ・・◆「いかに世間的にがク 0 ーズア , 。フされの結末』 ( いんなあとり「ぷ社 ) 、筒井康隆 特集。 ◆・◆人ていようと、内容はを書きつづけている『七瀬ふたたび』、半村良『夢の底から来た 美術・漫画・演劇その他では、『真鍋博 0 ◆・◆人作家が全部で十数人という日本の現状男』 ( 角川書店 ) 、光瀬龍『征東都督府』 ( 早』 ( 講談社 ) 、昭和一一 ◆・◆・《た。あまり期待が大きすぎると、書いている川書房 ) 、眉村卓『変な男』 ( 文化出版局 ) 、 0 年代の漫画のリ、、 ( イ。 ( ル ( 手塚治虫 ◆・・◆・・側としては息切れしてしまうのである」 ( 筒豊田有恒『タイムスリップ大戦争』 ( 角川書『虫の標本箱』、横井福次郎『ふしぎな国の ・井康隆『第日本ベスト集成』解説 ) とい店 ) 、平井和正『狼のレクイ = ム』 ( 祥伝社 ) 、・フ〉チャー』など ) 、筒井康隆の戯曲『スタ ア』の上演 ( 劇団「欅」。創作劇の上演は ・った作家の層の薄さがある。 矢野徹『昇天する箱舟の伝説』 ( 早川書房 ) 、 おそらく日本で最初だろう ) 。 ・・このような現象を、筒井康隆は「日本田中光一一『スフィンクスを殺せ』 ( 早川書房 ) 、 全集では、『星新一の作品集』 ( 全巻・新 レレの滲透と拡散」と呼んでおり、たしかにそう高斎正『クラシックカーを捜せ』 ( 文化出版潮社 ) が完結した。

7. SFマガジン 1976年3月号

「なんだね ? 」 を踏み変えたり、顔を手でなでたりするもんです。ところが・ハーン 「手紙を書かないんです。これについては百パーセント確信があっ ズときたら、こおりついたみたいにじっと動かないんです」 ートンが手紙を ていってるんじゃないんですが、でも、たとえば・ハ 「いつもなのか ? 」 え。かならずしもいつもだとはいえません。だからよけいくボストにほうりこんでいるのは目撃したことがあるんです」 「手紙をだすことは許可されているんだろ ? 」 さいんです」 「どうしてだ ? 」 をし力にもさりげなく自然な「きみが契約条件をじっくり調べていることはわかっている」ビル 「とくにそのことを意識してるとぎよ、、、 動作のようにみせかけていますが、つい忘れていると、そういうふクスがつぶやいた。かれはべッドの上でしゃんと姿勢をただすと、 ートンに顔を近づけて、なぜきみが自分でした約東を破ったん うにじっと動かないでいるんだと思うんです。ちょうどわたしたち だ、とゆっくりした口調できいた。 とは逆ですよ。わたしたちだったら、ある時間体を全然動かさない でいようとしたら、そうするために精神を集中しなきゃなりませ「なにをお 0 しやるんですか ? どう、約東を破 0 たりします か ? 船長」 ん」 「真相は秘密にしておくと、約束したんじゃないのか ? 」 「それも一理あるな。で、ほかになにかまだ ? 」 「ああそのことですか ! ええそうです。約東しましたとも。しか 「全部たべるんですよ、かれは」 し、人間は、たとえそうする権利がなくともそうせざるをえないよ 「全部、とはどういうことだ ? 」 うな状況があると思います」 「だされたもの全部、という意味です。なんでもかんでもおかまい なし、てんで気にしないんです。それはかそえきれないくらい何度「たとえば ? 」 「まさにいまのような状況がそうだ、といえます。金属製の人形 も目撃しました。旅行してる間、大西洋を飛んできた機内でも、 アメリカでも、宇宙空港のレストランでもだされるものはなんでをも 0 てきて、それにプラスチックを貼りつけ、色をぬりたく 0 て も、てんで気にしないで全部たいらげてしまいました。人間だ 0 たおいて、印をつけたインチキのトラン。フカード式に人間とま・せてお ら誰しもなんか好みがあるのが普通で、きらいなものがあるもんでく。それでしこたま金もうけをしようというこんたんなんです。ち ゃんとしたまっとうな人間だったら誰たってわたしと同じようなこ すよ」 とをしたと思います。ほかに誰も話しにこなかったなんて、まさか 「そりや証拠にはならん」 「ええ、それはわか 0 てます。無条件にはそうはいえません。でおっしやるんじゃないでしようね ? 」 も、最初のことと考えあわせれば、わか 0 ていただけると思います「いいや。誰もこんよ、きみがト ' プだ。しかし、まだ発進したば かりのところたから・ : : ・」と、ビルクスがいった。ロではいかにも が : : : それにもうひとつあるんです」

8. SFマガジン 1976年3月号

「いかなる団体・個人といえども、植民世界の存立がおびやかされ ボウダは、・ゆるやかに、大きく首を左右に振ってみせた。「それ る状況下、またはあきらかに存立がおびやかされると思われる状況は、経営上の秘密に関する事項です。私にはそれをお話しする権限 9 下では、植民世界の存立を維持するための司政官の指示に従わなけがありません。許可を貰わなければ洩らすことはできないのです ればならない」 よ。たとえ相手が司政官であってもね」 はなめらかな合成音で、条文を誦しはじめた。「これは「本当に、このラクザーンが平和で繁栄しているとお考えですか 連邦を構成するすべての、正規の手続きによって任命された司政官 ? 」 の置かれた植民世界で適用されるものでありーーー」 「さあ : : : そうなのではありませんか ? 外見的には、私どもには 「司政官」 そうとしか思えませんが : : : 。第一、それは司政官、あなたが判断 ボウダがうんざりしたような声を出したので、マセは片手をあげなさることでしよう ? 」 て、の言葉を止めさせた。 そこ迄いってから、ボウダはちらりと目を向けた。「それとも司 「そんな、司政官の緊急指揮権の条項を引用して頂かなくても、わ政官、こんなことをいって失礼に当るなら、あらかじめお詫びして れわれはよく知っています」 おきますが : : : まさか、ご自身の判断に自信がなくなったと、そう ボウダは、まだ微笑を消さなかった。「だがそれはあく迄も緊急 いうわけではないのでしようね ? いや、そんなことは絶対にあり 指揮権です。そんなものを持ち出して、何をいいたいのですか ? ますまい。司政官が万能に近い能力を持っていることは、惑星司政 われわれに何を要求しようというのですか ? 」 にうとい私どもでもよく存じあげていますよ」 「だから、中上げているはずです」 マセは、その挑発にはひっかからなかった。 「支部の閉鎖をやめろと ? 」 「それじゃ、お聞きしたいのですが」 「ええ」 マセは、あく迄も紳士的にいった。「もしもですよ、あなたがた 「驚きましたな」 が今の支部を閉鎖することによって、このラクザーンの存立がおび ボウダは、軽く息をついた。「その必要はないと、今いったじややかされるとしたら、閉鎖は思いとどまって頂けますか ? 」 ありませんか。あなたはどういうつもりか、緊急指揮権などを持ち「これはまた大げさな。そんなことはあり得ませんよ。私どもの片 出された。しかし、今のラクザーンでそんなことが出来ますか ? 片たる支部のひとつやふたっ、オープンしようが閉鎖しようが、そ 緊急指揮権を発動するような何があるというんです ? こんなに平れ程の影響を与えるとは、とても思えませんな」 「もしも、そうだとしたら ? 」 和で、こんなに繁栄している世界なのに」 「それなら、なぜ支部を閉鎖しなければならないんです ? 」 「仮定の質問にはお答えできませんよ」 「それは、いえません」 「そうですか」

9. SFマガジン 1976年3月号

ことを証明すると同時に、《ゴリアテ》に乗っている他の人間と一 くカッシーニの空隙を通過するか、それをただ手をこまねいてまっ ていられなかったことと、しかし全員が助かることが約束されてい緒にわたしを殺すことになったはずである、と思ったし、今もその 9 たそのどっちつかず状態のかわりに ) 船内の人間はまちがいなく全考えに変りはないからだ。なぜかれがそんなことをしたのか、それ はおおいに問題があるところだが、ここで推測することはできる。 減するにちがいないほうを選んでしまったことにあった。そのカル ダーの行為が、かれの信用を完全に失墜させるようなものだったとそこでまず、二号ロケットの件からはじめてみよう。あの事故は いくつもまずい状況がかさなって起ったと、技術面の専門家たちは いうことはよくわかるが、しかし、それはわたしがそのときすでに かれに疑いを持ちはじめていたこととくらべればはるかに、とるにた証言した。地球のドックで綿密に検査しても、サポタージ、の痕跡 らないことだ。だから、現実に起ったことがなにもかもまったくちはまったくみあたらなかった。かれらには真相がさぐりだせなかっ がった様相をていしていると確信するようになると、つまらないこたのだと思う。 とでカルダーをとがめることはできなくなった。だが、証拠がない カッシーニの空隙に導入することになっていた最初のロケットが ので、より重大で危険な犯罪的陰謀をおおやけに暴露することはで作動しなければ、調査用の計器や器具が積みこまれていない残りの きなかったから、むしろ法廷の判決のでるのを期待するほうを良し二基ではその代役はっとまらないのだから、任務を遂行しないでた だちに引き返すはずであった。三号ロケットが作動しないのなら、 としたのだ。 判決のおかげであらゆる非難から身をかわすことができたし、同二号ロケットがその任に当るはずであるから、一号ロケットの《見 時に、この事件全体にとってたぶん最も重要だと思われる問題、っ張り役》はそれでじゅうぶんことがたり、任務を遂行してから、引 まり どういう命令をくだすべきだったか、という問題がわきへきあげることができた。だが、任務の遂行がすでにはじまっている 押しやられて影にかすんでしまった。この問題は、わたしがすぐれとき、まさにそれがわれわれの手をやかせ、立ちおうじようさせて た知識と職業的な航行経験にたよって、規定にしたがった行動をししまったのだ。 いったいなにが起ったのか ? 点火線の電源が早く切れすぎて、 た、と法廷が決定をくだすと、たちまちどういうわけか自動的に立 ち消えになってしまった。そもそも命令をくだす義務はなかったんそれでカルダーは自動始動装置のスイッチがいれられなかった。専 だ、ということになると、誰ひとりとして、どんな命令が必要だっ門家たちは、ケープルが引掛って、からみあっているとそういうこ たのか聞くものはいなかった。そのことはそれを聞かれても、答えとが起ることがあるといっていた。たしかにわたしは事故が発生す があまりにもじみたものに聞えるから、わたしには好都合だる四日前にそのケー・フルが巻いてある円筒部を綿密によく見たが、 った。なぜならロケットの事故は偶然おこったのではなく、カルダそんなことはなかった。 ところがロケットの頭部が変形しつぶれて、発射装置にしつかり 1 が仕組んだことで、しかもわれわれが土星へ接近する相当前から その計画をねっており、そのたくらみはわたしの行動が正しかったとくいこんでしまっていて動かなかった。専門家たちは、どうして

10. SFマガジン 1976年3月号

ーンズ軍曹はいかだを完全に停止させると、一心に状況を検討 しはじめた。その彼女の表情を見てノートンは大いに安心した。怯 5 第三十二章波 えの色は少しもなく、ちょうど熟練した競技者が挑戦を受けて立っ そんなショックを受けた瞬間にも、ノートンがます心配したのは ときのような、ある種の熱情を感じさせる興奮が、その表情にうか 船のことであった。 がえたからだった。 「エンデヴァー号 ! 」と、かれは呼んだ。「状況を報告しろ ! 」 「水深測定ができればいいのですが」と、彼女はいった。「十分な 「なにも異状ありません、艦長」というたのもしい返事が副長から水深のあるところにいれば、何も心配することはありませんー 戻ってきた。「ちょっと震動は感しましたが、被害を受けるほどの 「それなら大丈夫だ。われわれは岸からまだ四キロも離れている」 ものではありません。船体が〇・二度ぐらい傾いたとプリッジは言「そうですね。でも、きちんと確かめておきたいわ」 っています。ラーマの回転速度もいくらか変化したのではないかと彼女はふたたびエンジンを動かすと、レゾリーション号をまわ のことです。正確な数値を出すにはあと二、三分かかります」 して、近づいてくる波にまっすぐ舳先が向くようにした。ノートン それではいよいよ始まったんだな、とノートンは考えた。思っては、かなりのスピードで進んでくる波の中央部分が、かれらの場所 いたよりもずっと早い、近日点まではまだ大分あるし、理論的にもに達するまであと五分とないとふんだが、その波もとくに危険なも 軌道を変えるには早すぎる。しかし、ある種の軌道調整が行なわれのにはなりえないとも思うようになっていた。たかだか一メートル たことは疑いようもない もっと驚くようなことがどんどん起るの何分の一しか高さのない波が押しよせてきたところで、船はろく かも知れないそ。 に揺れもしないだろう。問題はそのはるか後から遅れてくる泡の その間にも、この最初の震動の影響は、いまにも落ちてきそうに壁で、それこそ本当の脅威なのだ。 見える頭上の〈円筒海〉に明らかに表われていた。波はまだ十キロ突然、海のまっただ中に砕け波の帯が現われた。水面からわすか ほどむこうだったが、〈円筒海〉の北岸から南岸までいつばいに広下に隠れていた長さ数キロにもおよぶ壁に、波がぶち当ったのだ。 がっていた。岸に近いところでは泡立っ白い壁のようだが、水深の同時に両側の砕け波は、深みへさしかかったように衰えていく。 抑 あるところではやっと目につくぐらいの青い線で、両側に砕け散っ波板だ、ノートンは思った : : : エンデヴァー号の燃料タンクにも同 ている部分よりずっと早く動いている。岸辺の浅い部分にひきずらじものがある、もっともこれはその何千倍のスケールだが。波をで れて、波はすでに弓なりにそりはじめ、中央の部分だけが、先へ先きるだけ早く散らせ抑さえるために、〈円筒海〉中に複雑なパター へと進んでいるのだ。 ンの壁がつくられているにちがいない。たった今注意しなければな 「軍曹」と、ノートンは切迫した口調でいった。「これはきみの役らないのはそれだ、われわれはその壁の真上にいるんじゃないか ? 割だ。どうすればいし ーンズ軍曹の方がかれよりワンテンポ早かった。レゾリューシ スキツ・ハ