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検索対象: SFマガジン 1976年3月号
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1. SFマガジン 1976年3月号

屈しない、 というのは幸せなことなのか。 のあるミニ・ハスが通りすぎてゆく。空港内のうちとうとう来なくなってしまった。ロ たちまち昼になり、機はアメリカ西海岸にをぐるぐるまわって予約客をひろってゆくサンジ = ルスに着いたのは三時半。もう四 そって飛びはじめた。となりの元海軍大尉らしい。荷物をひきすって、ぶスが停まり時半を過ぎてしまっている。ホテルに電話 が、なっかしそうにあちこちを指さし、説 をかけたいのだが、小銭がない。勇気を出 明してくれる。なるほど、これがアメリカ して、空港から出てくる旅行者に、お金を か。だけど禿山ばかりで、都市なんかない くずしてほしいと頼み、五人目ぐらいでよ しゃなしか。上空からながめるロサンジェ うやく小銭が手にはいった。 ルスは、スモッグのせいで池の底のように ダイヤルをまわす。 7 暗く見えた。都市というよりだだっぴろい 「いま空港にいるんだけど、おたくの・ハス ・住宅地だという話は前から聞いていたが、 幻がっかまらないよ」 ー想像以上に平べったい。 「こちらに予約はなさってますか ? 」 ポ 翌日には、カナダへ飛びたってしまう。 ぼくが名前をいうと、ややあって、 ン ロサンジェルスに一泊するのは、旅の疲れ 「イトー様という方の予約は、こちらには 港 " を休めるためと、これからお世話になるク 入っていないんですけれど」 ここにちゃ リス・ネヴィルに挨拶しておくためだ。だ 「そんなことがあるものかー ・から日本を発つ前、空港近くにあるという ~ 一 ~ ュ ~ 以んと予約伝票があ 0 て、それを見て電話を 工かけてるんだから。早く来てくれ ! 」 ホテル、ホリディ・インに予約をすませてを ジ あった。入国手続きは簡単にすんだ。重い どういうことなのかわからない。だが、 ン スーツケースをごろごろ引っぱりながら空 ~ 、 ( , 「サガタガタやっているうちに時間がなくなっ 港を出る。 て、電話が切れてしまった。死にものぐる いになると、あとからあとから英語が出て ついに来たそ ! ☆ア☆メ☆リ☆カ☆ ! やはり外国だ。雰囲気がちがう。まわり くるとわかったのが、たった一つの収穫。 は白人と黒人とメキシコ人ばかり。椰子の 心細いので、クリス・ネヴィルに電話を かけることにした。しかし、今度はこれが 木、映画でよく見る〉ジ = ~ 空港 0 重 ~ 通じないのである。番号に誤りはないはず シンポル・ビル、さわやかというより涼しす - ぎる風。だが、そんなものを楽しんではい なのに。ダイヤルをまわすと、へんな女が そうな場所へ行った。ところが一時間たっ られない。ポーターらしい黒人にたずねるても、この。ハスがっかまらないのだ。道路出てきて、わけのわからないことをいう。 と、ホテルの。ハスが来るから、それに乗れのむこう側を二度ほど通りすぎたが、手を二度ためしたが、同じ結果に終り、絶望し という。なるほど、ホリディ・インの文字ふっている・ほくに気がっかないらしく、そて受話器をおいた。なぜかからなかったの

2. SFマガジン 1976年3月号

「その間船長はなにか指示とか命令とかださなかったのか ? 」 にたいし注意をあたえ、わたくしの質問に答えるよう命じていただ 「全然。指図も命令もされませんでした。パイロットがどんな行動きたい」 をとるか様子をみようとされたのだと思います。原則的には可能性「裁判長、質問には答えるつもりですが、検事はわたしになにも質 がふたつありました。推力を上げてあっさりその惑星から引きあ門 口されておりません。ただ船内で起った事態に、検事の観点から所 げ、任務の遂行を放棄して、双曲線航法で帰還の途につくか、ある見をのべたにすぎません。こんどはわたしがその所見にたいして意 いは、目標の軌道に三号人工衛星を送りだすのをやるだけやってみ見をのべるべきだと思いますが ? 」 ることでした。脱出するということは、すでに空隙にいるロケット 「検事は証人にたいして聞きたいことがあれば、質問の形式にまと が漂浮のすえ数時間後には、それ以上かかることはますありませめてするように、証人は証言する場合、できるかぎり誠実に発言し ん、だめになってしまいますから、計画全体が失敗に終るというこなさい」 とになります。外部から〈見張り〉のロケットで軌道修正をしてや「証人は、船内で発生した事態にたいして、船長が具体的な決定を くだし、それを命令形式で。ハイロットに伝達すべきだったとは思わ る必要がどうしてもあったからです」 「そのうちどちらにするか決めなければならんのはとうぜん船長のないのか ? 」 責任だったはずだが ? 」 「検事殿、服務規定にはいちいち : : : 」 「裁判長、あの質問にどうしても答えなければなりませんか ? 」 「証人は法廷にたいして話せばよろしい」 「わかりました。裁判長。服務規定には船内で起りうるあらゆる事 「原告側の質問には答えなさい」 「それはたしかに船長が指図できたはずですが、かならすそうしな態をいちいちこまかく予測して決められてはいません。そんなこと きゃならないということもなかったと思います。船長が、舵をとつができるわけがありません。かりにそれが可能で、乗組員一人一人 ている人間と話す時間がないことがよくあるのですから、乗船服務が服務規定をまる暗記できるなら、命令系統なんて必要なくなって 規定第十六項にあるとおり、原則としてある状況ではパイロットにしまうんじゃありませんか」 船長の職務を代行する全権があたえられています」 「原告側としては、証人のこういう皮肉めかした発言にたいし抗議 「だが本件の状況では船長は命令がくだせたはすだ。ロで命令を伝を申したてざるをえません」 達するのに障害になるほど加速していたわけでも、母船が破壊され「証人は簡潔に検事の質問にたいしてだけ答えるように」 「わかりました。それでは申しあげますが、船長はあの状況で、特 るような直接の脅威があったわけでもないんだから」 になんらかの命令をくだす必要があったとは思えません。あの場に 「船内時間で十五時をいくらかまわっていたでしようか、パ いて、ことの成りゆきを見ていて、よく承知しておられました。か トは推力を調整して船を安定させました : : : 」 りになにもいわれなかったにしろ、服務規定第二十二項により、パ 「証人はなぜわたしが聞いたことを無視するのだ ? 本法廷が証人 3 4

3. SFマガジン 1976年3月号

おだやかな余波に身をまかせながら浮き沈みしはしめた。 一周して戻ってくるまでに岸につけるだろうか」 いまはかれらも、関節のある九本の腕が中央の円盤から放射状に 5 「駄目でしようね。二十分ほどで戻ってくるでしよう。でも、その 時にはもうすっかり減衰しきっていると思います。ほとんどそれと突き出ている姿を見てとることができた。腕のうち二本は外側の関 気づくこともないくらいでしよう」 節のところでちぎれていた。ほかの腕の先には複雑に組み合わされ 波の脅威が去ったからには、リラックスして航海をのんびり楽した運動機がついていて、ジミーはそれを見たとたん、前に出くわし んでもよかったが、実際には陸地をふたたび踏みしめるまでだれひたあのカニのことをはっきり思い出した。二種の生物は同じ進化系 とり心底から安心できそうになかった。抑波壁のためにあちこちで列に属しているにちがいないーー・・さもなければ、同じ設計台の上で 渦巻きが発生していて、妙に鼻にツンとくるすつばい臭気ーー″蟻製作されたものだ。 がわいて 円盤の中央には、小さな砲塔が突出し、そこに三個の大きな眼がっ をつぶした時みたいな″とジミーがうまい形容をした いた。不快な臭気だったが、懸念されるような船酔いを呼びおこすいている。二つは閉じており、一つは開いていたが、その一つも虚ろ こともなかった。あまりに異質な匂いだったので、人間の生理も反で物を見ているようではなかった。いま自分たちが見ているのは、 応できなかったのだ。 たった今通り過ぎた水中乱流のために水面まで投げ飛ばされた、不 一分後、波の最前線が中の次の障害につきあたって、空高くも思議な怪物の断末魔の姿であることを、だれも疑うものはなかった。 りあがりはじめた。こうして後方から見ると、その光景はまるで何そのときかれらは、生物はそれだけではないことに気がついた。 ということもなく、何分か前にあれほど怯えたことを一同は恥ずかそのまわりを泳ぎまわっては、まだ弱々しく動いている腕にかみつ ぬし しく感じた。かれらはまるで自分たちが〈円筒海〉の主であるかのいているのは、大きくなりすぎたエビそっくりの小さな二匹の生物 だ。そいつらは文字どおり能率的に怪物を切り刻んでいるのに、怪 ように感じはじめた。 だから、それからものの百メートルと行かぬうちに、水面を割っ物はその攻撃者たちに十分立ち向えそうな自分のはさみを使おうと てゆっくりと回転する輪状物体が現われでたときのショックはいやもせず、何の抵抗も見せなかった。 が上にも大きかった。金属的に輝くスポークは長さが五メ 1 トルは ふたたびジミーはドラゴンフライ号を食いつくしたカニのことを あり、水滴を濟らせながら浮きあがってくると、ラーマのきつい白思い出した。かれは一方的な闘争の成りゆきを熱心に観察して、そ 熱光を浴びてしばらくくるくるまわっていたが、やがて、ざんぶとの印象をすばやく確認した。 音をたてて水中へ戻った。まるでそれは、管状の腕をもつお化けひ「ほら、艦長」かれはささやいた。「気づかれましたかーー・・あれは とでを思わせた。 食べてるんじゃありません。やつらにはロなんかないんです。ただ 一見しただけでは、それが生物なのか機械なのかはっきりしなか細かく切り刻んでいるだけなんです。ドラゴンフライ号もまったく った。ついでそれはくるりと寝返りを打っと、身体を半分沈めて、 同じ目に会いました」 スキツ・ハー

4. SFマガジン 1976年3月号

・得ている者はいないからだ。これでみてもわかるようにかの女はべんな王国なんか亡びてしまえと、のろいの言葉をかれにあびせかけ ルトランによかれと願っている。だが羽根ぶとんをかぶってかわする。絞殺された国王の体がまだびくびく痙攣しているのに、殺人者た 会話だけでは我慢も限界にきて、ベルトランの計画を思いとどまらちはたちまち熱がさめてしまいまたもとの宮廷言葉に戻っている。 せることができない。気が狂うか、さもなくば脱走だ。元将校それはただほかに方法がなかったからにすぎない。ドルは賢金だし、 の潜在意識をのそいてみることができれば、タウドリツツにゲームさりとて持ち逃げするようなものも、逃ける当てもない。死んでも を続けざるを得ないようにしている目にみえない力が、きっと欠席タウドリツツはかれらの手足をもつれさせ、王国から誰一人として 裁判の判決や牢獄、法廷と切っても切り離せない現実世界の記憶で出て行かせないでいる。〈国王がお亡くなりになった。国王万歳 ! 〉 あることが明らかになるかもしれない。だが、ベルトランにはそうの謹言にしたがってゲームを続行するしか手は残されていない いう過去があるわけがないのだから、こんなゲームにつきあってい そこでかれらはたちまち国王の遺体の上に新しい王を選んでいる。 るいわれはない。 王位を継承した新しい首領は ( 〈公爵夫人〉のところにかくまわれ だが、現実には前にも触れた陰謀が効力を発揮する段階に移ってていたベルトランなのだが ) おそろしく軟弱である。結局かれが、 いた。宮廷護衛隊の上層部に共謀者をえて、すべて準備が完了したアルゼンチンの騎馬警官隊のパトロールが宮廷の城壁までやってき とき、すでに十人ではなく十四人になっていた廷臣たちは夜半過ぎて、その記録に残っている最後の国王である。その城壁こそこの小 国王の寝殿に押し入る。クライマックスーーー時限爆弾だ ! 本説の最後を飾る物いわぬ巨大な舞台であり、かれがみごと完成させ 物のドルはとっくの昔に使いはたされてしまっていて、名にし負う た唯一のものである。開閉式の橋のところで、ベルトにコルトをは 〈二重底〉にはただの贋金しか残っていないことがわかる。国王はさみ、つば広の、片側を折った帽子と、しわくちゃになった制服姿の 当然それを知っていた。ことここにいたって口論をはじめてみても警官。対するに、胄に鎖惟子を着け、戟を持った衛兵。たがいに仰 しかたがない。橋が焼け落ちてしまった今となっては、謀叛人たち天して相手を見かわす様は、ふたつの時代、ふたつの世界が不自然 は、床下から引っぱりだした〈宝櫃〉を振ったりたたいたりしてぶにも柵をへたてて同じ場所ででくわした感がする : : : その柵が、ゆ っこわしたように縛りあげられ、なすすべもなく床からことのなり つくりと重々しく地獄からひびいてくるようなきしみをさせて上っ ゆきを眺めている国王を殺さざるをえない破目となる。はじめは追ていく : : この作品の価値を高らしむるにふさわしいフィナーレで われるのをさけ、報復されまいとして殺すつもりだったのが、そこある ! だがどうしたことか著者はハムレット日 ベルトランという ではかれらがまがいものの財宝でそそのかされていたことに腹をた人物の中に秘められている大きな可能性を利用することなく、この てて殺すことになる。 人物を見失ってしまっている。筆者は、著者にかれを殺すべきたっ その殺人場面は実によく書けており、描写の完成度は抜群で巨匠たとはいうつもりはない なにもここでシェイクス。ヒアがあなが なみだといいたいところだが、あまりにも不快で反吐がでそうであち最上の手本でなければならないいわれはない だが、どんな人 る。かれらはこの老人にしてやられたぶんだけ取り戻そうとしてた 間にでも、あたりまえの親切な人間の心に眠っている気がっきにく っぷりと苦しめ、弱らせるため、紐で絞め殺す前に収容所のコックい威厳があるという可能性が見失われていることが悔まれる。まこ やゲシュタボの運転手だったころのドイツ語の罵詈雑言で永久にことにもって残念である。

5. SFマガジン 1976年3月号

ことを証明すると同時に、《ゴリアテ》に乗っている他の人間と一 くカッシーニの空隙を通過するか、それをただ手をこまねいてまっ ていられなかったことと、しかし全員が助かることが約束されてい緒にわたしを殺すことになったはずである、と思ったし、今もその 9 たそのどっちつかず状態のかわりに ) 船内の人間はまちがいなく全考えに変りはないからだ。なぜかれがそんなことをしたのか、それ はおおいに問題があるところだが、ここで推測することはできる。 減するにちがいないほうを選んでしまったことにあった。そのカル ダーの行為が、かれの信用を完全に失墜させるようなものだったとそこでまず、二号ロケットの件からはじめてみよう。あの事故は いくつもまずい状況がかさなって起ったと、技術面の専門家たちは いうことはよくわかるが、しかし、それはわたしがそのときすでに かれに疑いを持ちはじめていたこととくらべればはるかに、とるにた証言した。地球のドックで綿密に検査しても、サポタージ、の痕跡 らないことだ。だから、現実に起ったことがなにもかもまったくちはまったくみあたらなかった。かれらには真相がさぐりだせなかっ がった様相をていしていると確信するようになると、つまらないこたのだと思う。 とでカルダーをとがめることはできなくなった。だが、証拠がない カッシーニの空隙に導入することになっていた最初のロケットが ので、より重大で危険な犯罪的陰謀をおおやけに暴露することはで作動しなければ、調査用の計器や器具が積みこまれていない残りの きなかったから、むしろ法廷の判決のでるのを期待するほうを良し二基ではその代役はっとまらないのだから、任務を遂行しないでた だちに引き返すはずであった。三号ロケットが作動しないのなら、 としたのだ。 判決のおかげであらゆる非難から身をかわすことができたし、同二号ロケットがその任に当るはずであるから、一号ロケットの《見 時に、この事件全体にとってたぶん最も重要だと思われる問題、っ張り役》はそれでじゅうぶんことがたり、任務を遂行してから、引 まり どういう命令をくだすべきだったか、という問題がわきへきあげることができた。だが、任務の遂行がすでにはじまっている 押しやられて影にかすんでしまった。この問題は、わたしがすぐれとき、まさにそれがわれわれの手をやかせ、立ちおうじようさせて た知識と職業的な航行経験にたよって、規定にしたがった行動をししまったのだ。 いったいなにが起ったのか ? 点火線の電源が早く切れすぎて、 た、と法廷が決定をくだすと、たちまちどういうわけか自動的に立 ち消えになってしまった。そもそも命令をくだす義務はなかったんそれでカルダーは自動始動装置のスイッチがいれられなかった。専 だ、ということになると、誰ひとりとして、どんな命令が必要だっ門家たちは、ケープルが引掛って、からみあっているとそういうこ たのか聞くものはいなかった。そのことはそれを聞かれても、答えとが起ることがあるといっていた。たしかにわたしは事故が発生す があまりにもじみたものに聞えるから、わたしには好都合だる四日前にそのケー・フルが巻いてある円筒部を綿密によく見たが、 った。なぜならロケットの事故は偶然おこったのではなく、カルダそんなことはなかった。 ところがロケットの頭部が変形しつぶれて、発射装置にしつかり 1 が仕組んだことで、しかもわれわれが土星へ接近する相当前から その計画をねっており、そのたくらみはわたしの行動が正しかったとくいこんでしまっていて動かなかった。専門家たちは、どうして

6. SFマガジン 1976年3月号

0 0 0 0 ー A 」い、つ・八カノノ : 、、レドマンのことを書いている。彼の前に書き忘れていたことを補足しておく。ひとつったら問題はない。だけど、もし、二つ三つと搭載 の思想的なことにも触れられているので、ここに紹は、この作品は〈アナログ〉に断続的に発表されたしていたら、どうなるだろう。敵の宇宙船は、もの 介してみたい。 連続中篇だということ。作者については、よくわかすごいス。ヒードがだせるのだから。 数日後、ロジャーズっていう女の子から、おれの オしへトナム帰りの人物らしいのだが。 「本篇は決してすらすら読める作品ではない。しからよ、。 ' し、決して退屈させることはなく、興味津々で、スもうひとっ忘れていた。この物語、一ページにひところに連絡が入った。第三べイの様子がおかし トーリイは予断をゆるさない。・ ・ : 本書は、訓練をとつやふたつは必ず Fuck とか Shit といった卑い、というのだ。 終え、初めての戦闘におもむくシーンから、その千語がとびだしてくる。この時代には、そういったもそこには、おれのガールフレンド、メアリイゲイ 年後、少佐として、この戦争の最後の戦いをひきいのはただの強調語になっているわけだ。だから、女がいる。おれははだしで部屋をとびだした。第三べ るマンデラまでを描いている。 : この作品なんとの子 ( ゥーマンリプの成果だろう、グループの リーイにつくと、ドアが内側から開き、何人かがフラフ いってもすばらしいのは、作家としてのハルドマンダーを立派につとめている子も少なくない ) も、ボラと出てきた。なにかショックをうけたらしく、痴 の技量である。彼は、千年以上におよぶ戦争の物語ンポンそういう言葉を口にする。 呆状態である。やがて、なかから、「医者を ! 」と どなる声がきこえた。 を二百三十六ページに、過不足なくおさめてしまっ た。説明によってストーリイが中断されることもな おれは部屋にとびこんだ。あたり一面血だらけだ く、言いふるされた描写もない。ただ、ひとっ不満こわくないかって ? そりや、こわいさ。うしろった。メアリイゲイがその血の池のまん中に倒れて がある。主人公マンデラもその仲間も、イデオロギからトーランの宇宙船がおいかけてくるんだもの。 いた。宇宙服が破れ、部屋の気圧が急激に減少した イ的に間違ったことはしない。誤まってるのは、常こわくない奴は、、、ハカか死にたがってる奴かロポッため、皮膚が破れ、肉が裂けて、血がふきだしたの に軍隊なのだ。いけないのは、すべて軍隊である。トしかいないだろうよ。 ど。だが、なせ気圧が下がったのだろう ? そこが気になるのだ。ハルドマンのその偏見が気におれたちは〈アニヴァーサリイ号〉っていう宇宙医者が到着した。ウイルスンという男と、エステ なるのである」 ーモニイという女医だ。そのエステルが、こ ーから 0 ー 4 へと光速の九十 / この作品の特徴は、この批評につくされているとーセントの速度で飛んでいた。ついでに言っとくの〈アニヴァ】サリイ号〉はトーランの攻撃をうけ 思う。特に今回は、ストーリイのおもしろさに重点が、この飛行は八カ月つづいている。けど、地球じたらしい、と教えてくれた。そのため、船体にひび をおいて見ているわけだが、さいわいなことに、 が入るかなんかして、この第三べイの気圧がさがっ こやあ、九年が経過しているんだ。 たのだろう。 の批評も、おもしろさという点では太鼓判をおしてそんなある日、艦長がおれたちを集めて言った。 いや、被害はここだけではなかったのだ。先日、 くれている。あと、タイムズも、この作品を「非常ーー昨日、敵の追撃ミサイルを撃破した、というん ミサイルを撃破した際、そのミサイルから分離した にエキサイティングだ」と評していた。 では、さっそく第一一部以下の紹介にはいるが、そ敵の宇宙船にミサイルが一基しか積んでないのだ子供ミサイルが、〈アニヴァーサリイ号〉にあたり、 」 0 翡 -- ■ に 4

7. SFマガジン 1976年3月号

彼はこぶしを掌にうちつけた。 ラウンはどういうことになるんだ ? やつは・ハーンズのことを疑っ 4 8 ていたし、・ハーンズはあのあとすぐに現われて、その疑いがあたっ 『だがまてよ、あれがやつの戦略的な作戦行動にすぎんとしたら ? だとすれば、自分で自分の首をしめるようなもんだ、そうなればほてるようなことをいっている。少し話がうまくできすぎちゃいない かの人間もいっしょに道づれにすることになる。ところが船は、よ だろうか ? みかたによれば、それが全部たくらんだんじゃなく にごとも起らず平然としてるロポットどもを地球へ運んでいくといて、つまりおたがいに相手とかかわりなく自分だけの考えでやった う筋書きになる。ううん、するとあの紳士づらしたやつらを大よろことだったら、はじめに。フラウンがきて・ハーンズのつげ口をしたこ こびさせることになるそーーーちょっとやそっとのことじややれんよとも、それを確認しに・ハーンズがやってきたことも、間違いなく偶 うな大宣伝だ。そういう乗組員がいる船がどんなに安全が保証され然たったといえるかもしれない。あれを連中が計画してやるんだっ ているか、さんざんふきまくるこったろう。そうじゃない、といし たら、ああいう幼稚なやりかたはしなかったはずたーーーこれはえら 切れるか ? つまりは、やつらの見かたからすれば、告白という釣く頭の痛いことになったもんだ。こんがらかりだしたそ。いやまて 針で俺をひっかけるという思いっきはおそろしく効果的たったのかよ。もしいままた誰かやってきて、ほかのやつは全部、作りものだ もしれん』 なんていいだすかもしれん。こうなると賭た。まず間違いなくもう 。ヒルクスはますます足を早めて歩きまわっていた。 誰もやってこんだろう。そうなるとこの賭は少し結果がはっきりし 『どんなことがあってもそいつをたしかめなきゃならん。俺がなにすぎてるかもしれない。やつらもそれほどあほうじゃない。それに もかも結局はっきとめてしまったと、仮定してみよう。船内にはひしてもあいつらが本当のことを喋っていたら、どうなんだ ? あり ととおり薬品がそろっている。アポモルヒネを食事に一滴すったらえんことじゃないし、まだほかに話したがってるやつがいないとも しこめるかもしれん。人間は薬にやられて眠りこむことになるが、 かぎらんそ : : : 』 す たぶんロポットはそうはならん。当然薬にやられるはずはな、。 。ヒルクスはまた、ひろげた掌をこぶしでばんとたたいた。つまり るとどういうことになるだろう ? ます最初に全員が俺のやったこ なんにもわかっちゃいないということだ。行動にうつるべきか ? とに気づくことはまずたしかだ。それから、プラウンが人間で、。ハ だがどう行動するんだ ? それともまだ待機していたほうがいいの ーンズがロポットということがたとえわかるにせよ、そのことでやか ? たぶん待機しているべきなんだろう。 つらの喋ったことがなにからなにまで本当のことだったということ共同船室で食事をしているとき話をする者は一人もいなかった。 にはまだならんそ。自分たちの出生については本当のことをいった ビルクスは、自分の船室で思いっき、どうしても決心がっかないで ・、、ほかの話はぜんぶ戦略的な作戦だったかもしれん。まてよ。・ハ いた〈化学的テスト〉を試みてみたいという誘惑とまだたたかって ーンズのやっ、たしか俺にはっきりしたやりかたーーーやつの表現で いたので、誰とも口をきかなかった。プラウンは操縦室にいたから いう勘がないことをそれとなくにおわせていた。ううん、すると・フ五人で食事をしていた。五人ともみな食べていたが、人間のふりを

8. SFマガジン 1976年3月号

もをくた かにへいに 、よそ呀 、向て 快平 、ぶ 速等呀う 醤 っ 軍て を つには ゕ っそと思 らん の目リ づのいわほ 方進 と け鋼う れん へし て鉄間 向な る の 、のに けい れ 、と や車 てで が体醤万間 台の 全何走を て の主 速をを 、一ド席 の出 カ疳始 そにを人来 は造事 こ蹂 でち 後がたた造の 車入し しじ ほ主 はスでか 退い。ち人すス懸ーイで、ら醤ゆ 、にれよ ら しめ間 でど醤 をしま間るイけ は黙声主う 、第 は愕席 三去全戦し し、ツ 始た但ち戦 とッ声チ つが席 全か り軍車や 百 めかしも車 、チと を 只て出はざ 〕の キ の た は た、土のは は共 入今頷 、い ロ そー カ . ん ス と て であ人す の電夢 、万入に れ 向れ 進造イ . 見れ まま し、 はべ軍ごと ま第たなだす ・台、 , つ かこ撃で う 0 撃ノ、 えに ツ このいたのた第 す二 。い咽かよを間 のららのあ な チいるをよ いべ方勢ん人 海尚す如っ 。の ろ命戦をよ 0 事 の 評来みかい のれたな手らのき図北き う ズ の ば一間柄せがにに半あ シ 価のか があ中 。う中人 天 で よ後は 命よ あ 説物 言違に いそれ体あ神 えでわて造 リ なよ し、 の、 、いしと退 、ると 、る様り にカ : いいしもけは人 ちカ つ し冫 、す線ィ 、で金間 。の南は は ズか作 こをよ っ な 思さ - や 品やばも博戦 、しい な 名の ろたれひう よる輪ルは半 カ : に 生 . タトつ で後なだはくな士車 のを 、球大ずてカ はきと く う も まなと っ て登半も と の南お思 いちあ北 と馬力 れ勝し り はいのの よ の再 0 : 登機 を半 ゃべ半 で鹿 に後う し 、場に か戦ふ つ なすなだ認金こち場密 こ球は者い日間 わにき 。球してて るろ識博れ 、置油べ用 、違 、を ょ場 っ り でた いる 三実 しがと の のあやた っ で土あ う し士をう面全 い を宙に は紹どが篇 ま験ちらた がた あ人け 天巻 。た ェべよ 悲ひ 。と 金 の る軍て の海介標少の 大 あ を やせのの 力、 との嵌 、す シ ・べ渦 愴た だ野し準な終 。てにや で 博で 東 オよ 信晉り 感す亜 が十な作く そる惜来 ンに巻あ士あ つ け り 彼にれだ巻気るはる す長 もら戦 がと れのしな 、か 奴 な戦 の らいま がでし るはん か 祝 、で 、南の に 者 S 、す め組 し 、意 と よ も たの っ の 積と 半だい う そし 日突 の F 久と 、作 のた 間 の進球 か 自 悪教ち にれま も揚入 こ最占 と みのし す であも な 1 丿、 やら分と な 中ぶろ高は を ちをし 0 ) ん へ 、だ き・ つ来オ ろ謳 の 伝 傑シ さ で りだ の はき け う 設 んう実 作リ やく たあ た ま はにろ と計 の知も 聞 そ自 ー軍 : 在 出ー ~ 軏 油 の 軏う と つん 「毒瓦斯発明官」插絵 叱 / ゝ 幻 4 :

9. SFマガジン 1976年3月号

いった。階段をの・ほりきったところには裸電球がついていて、ほの ジョーンは、コーヒーとサンドイッチを用意してあった。「いま暗い光の下には、 : 。 ホヒーの生前の持ち物がひとまとめにしてあっ は軽く食べておいて、ちゃんとした食事は、あとでしようと思った た。たとえば、大きくなって不用になった三輪車、病気になった頃 の」と彼女はいった。 ようやく乗れるようになった二輪車、山のような本、野球のファー 「自分の家へもどってこられて、安心したよ」とスプルーアンスはスト・ミット、そして、問題の金魚鉢。 いうと、低い声で笑いながら、「それに、おまえも、もどってきた ポビーは自分の病気をよく心得ていて、病気になると、熱帯魚に んでね」とつけくわえた。それから、この言葉の意味を妻に説明し興味をもちはじめた。そして、藻草のあいだを矢のように泳ぎまわ り、大きな鉢の底にしいた砂の上に立っている瀬戸物の城を出入り ジョーンは眉をひそめたまま、夫の話を最後まで聴くと、「で、 する派手な色彩の魚たちを、ほとんど終日、眺めつくしていた。 その、銀行においてきた小切手ね」といった。「それだって、あん そのうちに、ある日、ポビーは、底の藻草や城も現在あるのとそ たが申請すれば、もどってくるわよ」 つくりおなじ鉢を、もうひとっ買ってくれといいだした。両親は、 「あれは唯一の証拠だ。もっとも、なんらかの証拠になるとすれもちろん、すぐに買ってやり、その新しい鉢を本人のべッドのそば ば、の話だがね。それはそと、おまえのほうはどうだ ? なんだ にある最初の鉢のとなりに並べておいてやった。すると、ポビー かわけのわからん二日間を経験しなかったか ? とにかく、おれが は、砂の傾斜から、城の角度、藻草の間隔にいたるまで、なにもか 口をきいた連中は、みんな、なにか変だと感じているようだったけも最初の鉢と寸分たがわぬように調整した。 ど、それを話そうとはしなかった。でも、おまえなら、話してくれ おなじような金魚鉢をどうして二つもおいておくのか、母親には るだろう ? 」 不思議でならなかったが、本人は、これは実験だというだけで、な 「そう、ちょうどそのとき、あたしは屋根裏の部屋にいたの」ジョ にも教えてくれなかった。ある日のこと、ポビーは、母親が自分の ーンはゆっくりした口調でいった。「あのポビーの金魚鉢を見にい いうとおりにドアをしめて部屋からでていくと、魚を古い鉢から新 ったのよ」 しい鉢へぜんぶ移しかえてしまった。 それから間もなく、ポビーは死んだ。やがて、魚もみんな死んで 彼らの息子のポビーは、九つのときに世を去った。ほかに子供は から なかったが、この屋根裏の部屋には死んだ息子の思い出がみちていしまったので、両親は二つの金魚鉢を空にして、屋根裏の部屋へし たので、二人は、その後もずっと、この大きな家に住んでいたのだまいこんだ。 っこ 0 「それで、そのときね、あの金魚鉢をひとつだして、両手でかかえ 「れいの金魚鉢か」と、スプルーアンス。「ポビーが実験に使っててみたの。どれくらい重いのか、もういっぺん持ってみようと思っ て。 いた、あの、おなじような二つの金魚鉢だな」 「そう、まえは、たしかに二つあったわね。それが、いまは、ひと「すると、そのとたん、なにか全身をゆさぶられるような感じがし たの。からだをもちあげられるとか、押されるとか、そんなふうし っしかないのよ」 話によると、その日の夕方、ジョーンは屋根裏の部屋へあがってやなくて、なにかもっと強いカで、つまりゆすぶられているといっ こ 0 掲 0

10. SFマガジン 1976年3月号

して歴史に残りたくはなかったのだ。 タイムは驚異的で二度と破られそうになかった。 台地に着いてみると、それは低速度の落下衝撃にもかかわらず足 が全部折れていた。眼は開いていたが、外部からのテストにはどれ 数時間のうちに何百というくもが現われ、平原中にちらばった。 にもまるで反応を示さなかった。人間の死体の方がずっと生き生き 望遠鏡で見ると南半球も同じようにくもが横行していたが、ニュー ヨーク島はそうではないようだった。 してるわ、とローラは思った。エンデヴァー号に彼女の宝物を持ち それらはもう探険隊を無視するようになり、しばらくすると探険帰ると、彼女はすぐ解剖道具を手に仕事にとりかかった。 隊の方でもあまり構わなくなった。ただ時おりノートンは軍医少佐 くもは実にもろく、ほとんど力もいらずにパラ・ハラになった。足 の眼に食肉獣のようなぎらめきを見つけていた。くもの一匹に不運の関節をはずすと、微妙な本体の甲皮があらわれたが、これもオレ な事故が起きればいいと彼女が願っているのは確かだったが、科学ンジの皮をむくように三等分にきれいにわかれてしまった。 上の興味からそんなことを仕組むのを見逃がすつもりも、かれには見分けたり確認したりできるものが何ひとつなくて、一瞬彼女は よ . かっこ。 わが眼を疑っていたが、気をとり直したように注意深く数枚の写真 実際上くもに知性があるとはほとんど思われなかった。身体も脳を撮ると、おもむろにメスを取り上げた。 を収めるには小さすぎたし、おまけにあれだけ動きまわるエネルギ どこから切ればいいのか ? 眼を閉してぶすぶすと突き刺してや ーをどこかにたくわえているとはとても考えられなかった。しか りたいような気もしたが、そんな非科学的なことができるわけもな し、行動は奇妙なほど目的のある統制のとれたものだった。どんな ところへも出現したが、同じ場所へは二度と行かなかった。ノート 刃はほとんど抵抗もなく沈んでいく。そのすぐ後で、アーンスト ンはしばしば何かを捜しているんだという感じがした。そして、そ軍医少佐のレディらしからぬ悲鳴がエンデヴァー号の艦内一杯に響 れが何であれ、かれらはまだ見つけていないのだ。 きわたった。 かれらは三つの大階段をまるで相手にせずに軸中央部まではるば マッカンドリュース軍曹はすっかりおびえてしまったシンプたち る出掛けていった。ほとんど重力がないとはいえ、どうやって垂直をなだめるのに二十分もかかって大弱りだった。 部分を昇ることができるのかは明らかでなかった。ローラは吸着盤 状のものを装備しているのだと理論づけていた。 第三十四章閣下は遺憾に : そして、彼女が大喜びすることが起った。あんなにほしがってい た標本が手に入ったのだ。〈軸端司令部〉から、くもが垂直壁から「みなさんもすでにお気づきのことでしようが」と火星大使が口を 落ちて、第一台地の上で死んでるのかただ動けないのか、ともかくきった。「前回の会議以来数多くのことが起きております。われわ 倒れていると報告があった。平原から台地まで駆け上ったローラのれが審議し決断を下さねばならぬこともまた多数あります。それゆ