太陽 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1976年6月号
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1. SFマガジン 1976年6月号

絽時引分秒 着地成功の知らせ が届きました い、つまでもな / 、 5 時問分前に 発せられた電波 今はただ無事な 帰還を祈るばかり ですのよ 0 帰ってきたらで ございますか ? ・ さよですね・ まず彼の好物の ジュースを : 7 プルート 3 号ま 太陽系の極限を きわめたので あります を 0 冒険者の 復権です ( の はるかなる太古 丸木舟をあやつって 大にのりだした 一冒険者たちー 男のロマン チシズムです こ . れはー 人類は 新しい夜明けを むかえました あたくし あなたの妻 ですよ 光范千里をへだて 今、英雄の胸に 去来するものは いかなる感慨で ↓の・土 6 ー ) よ、つわ、 日 7

2. SFマガジン 1976年6月号

このほか測地衛星、航行衛星、地球観測衛星のン、青色色素タンパク質のフィ 0 シア = ンなどがれた。一一月末、日本の夕方の西の空に現われ、続 - 研究が進んでいるが、まだ打ち上げをいつにするあり、光合成細菌も何種類が見つかっているには いて、太陽を回った三月初めから下旬にかけ明け か計画は具体化していない。 いたが、今度発見された「紫・ハクテリア」は、エ方の東の空に見えた。三月二、三日ごろ、彗星の ネルギー変換効率がよく培養しやすいのが特徴核の光度はマイナス二等と明るかった。 尾も、一筆書きしたようなすーっとしたもので ・光合成する紫バクテリア発見 生物電池を作ることのほかに新しいエネルギーはなく、カーテン状のオーロラのように開いてい 葉素に代わり光合成の基となる「紫色素」が源として注目されている水素ガスを得ることにもた。各地で天文ファンらが、この華麗な姿をカメ 登場した。太陽光線をエネルギーや食物に変える使われそう。また医療、農業、海水の脱塩、太陽ラにおさめることに成功した。 エネルギーを利用した発電など幅広い利用が行え スミソニアン天文台などの専門家の軌道計算に 働きがあり、大きな話題となっている。 この紫色素は、カリ そうで、関係者の注目をよると、ウエスト彗星が太陽に最も接近したのは 集めている。 フォルニア大学医療セ 二月二十五日で、太陽までの距離は約二千九百四 ンターのワルサー・ス 十万キロ。水星の軌道 ( 太陽から約六千万キロ ) よりはるかに内側に入り、太陽に″肉薄″した。そ ■見事な テ , ケ = ウス博士ら、、一、。ノ第 が、死海と地中海の周 の後、次第に遠ざかっており、太陽から最も離れた ウエスト彗星 辺の塩干潟から採取し 時の距離は約千一一百天文単位 ( 一天文単位は太陽 ″宇宙のさすらい者″とと地球の平均距離で約一億五千万キロ ) になると た細菌の中から発見さ一 いわれる彗星が見事な姿みられる。最も遠い惑星の冥王星が三十九・七天文 れた。この細菌は「紫 を現わし、天文ファンは単位だけ太陽から離れているから、それより三十 ハクテリア」と名付け もとより一般の人々も、倍も遠くからやってきて、再び戻っていくわけだ。 られた光合成細菌。塩 その神秘的な長い光の尾彗星は、太陽系の放浪者とかさすらい者とかい 水中に生息し、学名は 、 - 」・しの観測を楽しんだ。 われる。氷にメタン、アンモニア、チリなどが混 「ハロ・ハクテリューム・ ロビューム」とい 今度現われた彗星はウざっていて、太陽に近づくと熱で氷が蒸発、ガス エスト彗星。一昨年のコとともに太陽風によって吹き飛ばされ、美しい尾 う。紫色素は「ハクテ ホーテク彗星は「今世紀ができる。ウエスト彗星は、頭のシンの大きさは リオロドプシン」と呼 最大の彗星になる」と前十ー五十キロ、尾の長さは太陽と地球の距離の約 ばれ、タン。ハク微分子 評判が高かったが、いざ半分の〇・五天文単位にの・ほり、大型彗星の一つ。 レ J い、つ。 新光合成色素「バクテリオロドプシン」の構造を この紫色素は太陽光表わすスケッチを示す力リフォルニア大の科学者彗星が太陽に接近して彗星は、太陽系の初期の原始状態を保っている といわれ、その核の光のスペクトル分析などによ 線を受けると陽子水素の原子核を放出する。つまも、さつばりシンポルの光の尾が伸びなかった。 り太陽エネルギーを電気工ネルギーに変換するわそれに比べウエスト彗星は、それほど事前に騒がり、太陽系の起源の解明につながるデータが得ら けだ。放出される陽子による電位差を利用して一れなかったが、視角で三〇度近くもある長いオーれると期待されている。 ロラ状の尾を現わし、六年前のベネット彗星と肩冥王星と太陽の距離の一万倍ぐらいも離れた太 種の生物電池を作ることも可能となる。 緑色植物は、色素の一種である葉緑素を持ってを並べる今世紀で最も見事な彗星の一つと折り紙陽系のはるかな軌道を回る″彗星のもと″となる 物質があって、そこの近くを星が通ると″もと″ いて、太陽エネルギーを吸収、でんぶんや炭水化を付けられた。 物を合成し酸素をはき出している。これは光合成ウエスト彗星は、昨年十一月、南米チリにあるとなるガス状物質がちぎれて太陽に接近するコー といわれ、太陽エネルギーを化学物質に変えるわ南ヨーロッパ天文台が撮影した星図作製用の写真スをたどるのが彗星だという説がある。ナゾを秘 ・ウェめてウエスト彗星が地球の近くに再びやってくる けだ。このほかに太陽エネルギーを吸収する生物より発見された。発見者のリチャード・ 色素には、紅色色素タンパク質のフィコエスリスト博士の名前にちなんでウエスト彗星と命名さのは何年あとのことか。 」 0 以 8

3. SFマガジン 1976年6月号

「シンヤ。あの氷河は・ハリャーによってさえぎられているんだ。そ洞くつはゆるやかな角度で、地下に向っていた。階段の痕跡が残 っていた。凍土を刻んだ階段を一歩一歩下る。途中、ほとんど崩壊 のパリャーも出力が落ちている。そのシーソーゲームの結果があの 地震だ。この震動のパターンはおれにも記憶がある。シンヤ。このした岩石で閉されているところがあった。熱線銃で破砕し、かろう 意味はひとっしかない」 じて、通路を作って前進する。 来い ! ヴァルハラは大きく腕をふった。 たび重なる地震で崩壊したことは確実だった。このつぎ、地震が 襲ってきたら、地上へもどることができるかどうか、ひどく不安だ 2 百メートルも下ったかと思われる頃、とっぜん、二人の目の前に 盆地を囲む尾根の上に、地球から見た満月ほどの大きさの、暗い広大な回廊があらわれた。 オレンジ色の天体がふたっ、しんきろうのように上っていた。ひと 幅は二十メートル以上もあり、天井の高さは十数メートルもあ つはやや小さく、より暗い。小さい方が第三アルテア。大きい方がる。その壁も、床も、天井の高さは十数メートルもある。その壁 第四アルテアだった。暗い星空は、おそいタ映えのように色あせたも、床も、天井も、すべて美しい光沢を持ったばら色の金属板で張 暗紅色に染まり、尾根の稜線が、小さな太陽と同じ色の縁飾りをつられていた。 けた。 「なんだろう ? これは ? 」 「ステンレスでもないし、アルミニュウムでもない」 二百日におよぶ、長い昼がはじまろうとしていた。 遠い小さな太陽は、それでもわずかに温度を持った光を投げか「オリハルコンとでも言ったら、いちばん近いかな」 「さあ。おれはそいつを見たことがねえんだ」 け、ひび割れた凍土は、はるかな太古の湖を思わせる色に映えた。 二人の前に、おしひしがれた古い洞くつが、千古の闇と影を呑ん床には厚く土ほこりが積っていた。それは乾いて軽く、二人の動 でロを開いていた。 きにつれてけむりのように舞い上った。 大氷河の先端は、三百メートルほどなこうまで迫っていた。盆地投光器の光芒が、長大な回廊の床を低く這った。その長くのびた を囲む尾根を突き破り、高大な山脈のずれ動くように、盆地の中央光芒も、床に積った砂ほこりの上に印された、いかなるものの跡を ふきんまで前進してきた大氷河は、そこまで進んでくるのに、何百もとらえられなかった。それは、永い永い時の移り変りにもかかわ 万年、何千万年、あるいは何億年もかかったのであろう。その前進らず、その土ほこりの上を、何ものも歩かなかったことを示してい をさえぎるもののエネルギーが、いつまでつづくのか、やがてはこ 5 の洞くつの入口も、大氷河の足下に踏みつぶされてしまうのであろ 二人は奥へ奥へと進んだ。やがて回廊の両側に列柱があらわれ た。数百本の列柱は、みごとな彫刻で飾られ、浮彫された奇妙な龕 こ 0 っこ 0

4. SFマガジン 1976年6月号

ル OT, 〃ど H RIB もう一人のイヴ マリオン・ジマー・プラッドリイ ・ウ工 ) レス・ ジョン・ 訳 = 谷口高夫 画 = 山里予辺進 ←ー ついに地球型の惑星を探しあて 帰投した探険隊を待っていたのは 冥王星すらも呑みこんで拡がる 故郷のソル = 太陽だったーーー ! ! 37

5. SFマガジン 1976年6月号

冫しいから、早く、私の言ったようにしなさい ! 》 ように収縮すると、その下から透明な球体におさめられた電子装置 《そんなことよ、 があらわれた。 「おまえは何をしているんだ ? 、ヴァルハラはどうした ? 」 リーミンー」 シンヤは、自分の手足が自由になっていることに気づいた。脳ず「 もはや答えはなかった。いままで、リーミンだと思っていたもの いを侵していたつめたい波動も消えていた。 《シンヤ。私とヴァルハラは、この地下都市を破壊する任務をおびの姿は、もうどこにもなかった。 てやってきたのです。私は、ある磁カ装置をもってこのマザー・マ シンヤは林立するマシンの間をぬけ、貯えられている厖大な資材 シンの中枢神経を狂わせ、機能を停止させているのです。その間 の間を通り、暗い長いトンネルをくぐって地上へ出た。 に、ヴァルハラがこの地下都市を爆破します》 「よし ! それでは作業が終ったらいっしょに引き揚げよう」 赤い小さな二つの太陽が、盆地を囲む稜線の上に、少し不そろい な眼のようにならんでいた。 《引き揚げるのは、シンヤ。あなただけです》 「なぜ ? 」 この惑星の住人たちは、この二つの小さな太陽に、どのような明 日を夢見たのたろうか ? その夢が、やがて自分たちを減ぼすこと 《シンヤ。私たちは、この目的のために造られたマシンです》 になるのを知っていただろうか ? 知っていたかもしれない。あの 「そんな ! 」 《シンヤ。このマザー・マシンは生命体に異常な興味を持っていまマザー・マシンとみすから呼んだコンピューター複合体は、シンヤ した。かれらの神の生命がっき、新しい神を必要としていたのでしが来るのを知っていた、と言った。自分たちの減亡が予測できたと よう。連合の調査局は、そのことを、お・ほろげながら探知していましても当然のことであろう。それを作ったものは、まさしく神だっ した。そして辺境側と協力して、この作戦を計画したのです。シン たのであろう。減びに至る神はすでになく、その神を討とうとして ャ。あなたは、りつばに任務を果した。あなたは、マザー・マシン はるばる旅を重ねてきた多足類の勇者たちも、すでに塵と化した。 の注意を引くことに成功しました。マザー・マシンは、私たち、破すべては遠い遠いむかしのことであった。 そして、今は。 壊班の意図には気がっきませんでした。シンヤ。あなたをだました ようだけれども、もし、あなたが、このマザー・マシンが決してあ 遠い小さな太陽は、、 しよいよ赤鉄色に燃えた。 なたの生命を奪わないであろうということを知っていたとしたら、 私たちの任務がこううまく果せたかどうかわかりません》 最初の爆発が大地をゆるがせ、さえぎるものの失せた大氷河は、 急速に前進しはしめた。それが盆地をおおいつくすまでには、一時 《シンヤ。ヴァルハラから合図がきました。あなたが変換機から送間もかからないのではないかと思われた。 り出されたら、すぐに、ここを爆破します。早く行ってください》 リーミンの声が、ふっととだえた。宇宙帽が裂け落ち放射能よけ 表紙の言葉 コートが異様にふくらみ、幾つにも千切れると、その下から、銀色 ″暗雲をついて出発″ にかがやく紡錘形の物体があらわれた。顔面のひふや筋肉が干肉の ね ( 完 ) ソコロフ・レオーノフ協同制作 232

6. SFマガジン 1976年6月号

のが、サべナ・シティ航路管理局資料部二八年版緑表紙というやっ 「それも外へ出てたしかめてみるといい」 なんだが、それにも出ていない。もっともこのあたりは、ほとんど 「距離は ? 」 調査されていない空域だから、何とも言えないが」 「八十二光時間」 「しかし、小惑星のような小さな天体だったとしても、これまで発 「このへんはどのあたりなんだ ? 」 見されなかったということはあるまい」 ヴァルハラは肩をすくめた。 ヴァルハラは大きくうなずいた。 「そういう質問には答えようがない」 「そうなのだ。それにこの反応はどうもなっとくがい力ない。小惑 ・「まあ、わかりやすく一一一口え」 「あれを見ろよー 星ならこんなかたちの反応はあり得ない」 「小惑星なら、というど、そうでなければこのような反応もある、 ヴァルハラはスクリーンにあごをしやくった。 「ふしんせつなやつだな。あれを見てわかるぐらいなら聞くわけがというのか ? 」 ヴァルハラはロをつぐんだ。スクリーンにしばらく目を当ててい ねえだろう」 ヴァルハラは、情なさそうに、手にした定規でスクリーンを指したが、やがて視線をシンヤにもどした。 こ 0 レーダーの反応をうち消すような方法が 「いや。これは想像だが。 「太陽からの実距離七十二光時。方位は太陽系黄道面座標マイナスあるとしたら、そして、それが間けっ的にはたらいているとした 銀河系黄道面変換値で、三九・〇三一。七八・二九四。 0 〇〇ら、こうなるのではないか、と考えたのだ」 「それはカモフラージュのためか ? それとも他に何か目的がある ・四七五。第四恒星間軌道上視線で方向鯨座タウから青の魚座アル のか ? 」 フアへの切線上だ」 「それはわからない。ただ、レーダーの反応を完全に打ち消せるも 「つまり、太陽系から三光日離れたところを、銀河系の中心を真うのならそうするだろう。あれがおれたちの近づくのを好まぬのな しろに見て、銀河系の直径上を銀河系の外に飛び出す方向へ突走っら、あのような目立っことをするわけがない」 「何かの信号とは考えられないか ? 」 ているわけだ。わかるか ? 」 「あの点減のリズムを収録して、コン。ヒューターにかけてみた。だ 「おれは百メートルぐらいまでなら、想像でも実感できるんだ」 めたった。何の意味もない」 「りつばなもんだよ」 「おほめにあずかって恐縮です。ところで、このへんに、そんな天「それじゃ、きまったぜ。あれは、おれたちを引き寄せて、・ハッサ リやろうとする、わなだよ。わなにちがいねえ ! 体があるのかね ? 」 「それが無いんだなあ ! 航星図でもっとも信頼できるといわれる「そうかもしれない。シンヤ。あれは、まさしくおれたちの予定航 幻 3

7. SFマガジン 1976年6月号

同一一月の国ってなーンのことはない山ばツかりでつまらんでござる 飛が月世界にいく話なんか書くからいけないのです。・ほ姫さまを王のもと くは、てつきりこのマンガがネタになっていると思ってに帰し、自分はそ ; ' のまま月世界に飛 買ってしまったのですから : : : ) しかし、高いお金をだして購入したものを、そのままんでいく。 放っておくわけにもいかないので、北海道のさんの強月世界に到着し 迫に便乗して、ここで紹介することにした。自分のミスてみても、どこか ~ ~ 一第」い を、こんなところでとりもどされる読者は気の毒だけらともなく聞こえ「ツを、 ど、・ほくも生活がかかっているので乞ご容許 ! ( そのかてくる女の泣き第、 わり、来月号では正統日本古典史上に重要な作品を声。猿飛がなにご とだろうと声のほ・ ~ 紹介しますから ) 、つにい ~ 、と、これ 時は x 年 x 月 x 日。難攻不落の大阪城が、徳川の砲撃がメリエス先生も でついに落ちたところが、この「ンガの発端。主君を失ま 0 青の月世界の画 ~ 一窄 した猿飛佐助は、一人最後の抵抗を試み徳川家康を痛め住人、女の人魚。、 ( 「鸞《 0 受、 「わたしたちは、 つけて、アメリカへ旅だった。ジャーン ! ファッシス 「拙者の主君真田幸村公は、民主日本をつくろうとなさ月の世界の海に住む人魚でございます。 タ 1 という黒い悪魔がきて海の水をすっかり吸いとって れて秀頼公によい政治をすすめておられたのだったのに 。拙者は今から、アメリカへ行く・ : ・ : 。今度かえっしまったのでございます」 て来る時には、アメリカ大学を卒業して同志をつれて来そこへ現われたのが西遊記の金角大王みたいに大きな る : : : そして、その時こそ封建日本の悪夢をさましてやヒョウタンを持った黒ィモリの化けもの。ヒョウタンの ヒ 中に吸いこまれてみると、中には月の水がいつばい。 る ! 家康よ ! 首を洗って待っていろ ! 」 戦前の「暴れキング・コング」と比べてみよう。このヨウタンの尻を破って水を人魚たちに返してやると、ロ ケットがわりにしてきた怪神像 ( いつのまにかナチーズ マンガがいかに戦後を物語っているか実によくわかる。 そこで、日本をとびだした猿飛佐助、すぐアメリカにと名前がある ) と黒ィモリを衝突させて、太陽に向かっ 向かうかと思うと、これが向かわない。な・せか、やってて吹きとばした。 それでも、まだ抵抗する黒ィモリを、太陽と力を合わ きたところはシャムのメナム河のそば。怪しい寺院があ って、シャムの王のお姫さまが、捕われている。ここにせてやつつけると、なにやら前方に怪しい黒雲。のびて 乗りこんだ猿飛、スフィンクスに化けるとロポットの怪いる黒ィモリをポールに変えると猿飛が投げつけた。黒 神像と大決戦。神像を忍術でロケットに改造すると、お雲がバットをかまえてはじき返す。 92

8. SFマガジン 1976年6月号

マクリンはぎくりとして、年上の男をふりかえった。「なんだっ 空にあっては、ほかのなにも見えはしない。木星の輝きに浸された この衛星は、つねにたそがれだ。夜と昼のあいだの凍りついた一瞬 「十万ドルでその仕事をひきうけよう、といったんだよ」穏やか が、もう永劫にわたってつづいているのだ。その輝きは星ぼしを洗 で、控え目な、淡々とした口調たった。 い流し、それ以外のなにものをも見えなくする。 「しかしーー」 ただし、こっちが向きをかえて、反対側の地平線を眺めれば別 「むこうがそれをよこさないと思うのかね ? 」 だ。すると、闇の中へためらいがちに星ぼしが現われる。そして、 「いや、むろんよこすだろう。むこうの全予算に比べれば、べつに いくつかの惑星も。そして、明るい黄色の光点も・ーーそれが、遠い 法外な金額じゃない。しかし、なぜ ? なぜ、余分な地獄をくぐり火花の一つにまで薄れてしまった太陽なのだ。 たがるんだ ? 」 それからもう一度木星のほうをふりむくと、いま見た太陽のこと ハリッシ = はほほえんた。「いまの地獄をくぐってきたのとおなも、地球のことも、頭上に弧を描いた宇宙ステーションのことも、 じ理由ですよ、マック博士さま。わたしにはその金が必要なんだ、すべて忘れてしまう。 慰謝料の支払のために、そしてあの子たちのために」べットとロー なに ? そう、わたしは : : : わたしは一部始終をお・ほえている。 ラのほうに首をうなずかせて、「十万ドルあれば、別れた女房への木星は地平線にうずくまるでぶの酔っぱらいだ。血走った目を思わ 慰謝料も一度で片がつく。わたしも、もう自分の心をひさがなくてせる赤斑が、気ちがいじみた光をたたえて、われわれを見すえてい すむ。あんたの研究との縁が切れるのは残念だがね、マック。しか た。その酔っぱらいが何重にも締めたベルト 堅く巻きつけられ し、 しいじゃないか、被験者はほかにもいるんだから」 た黄や緑や茶の帯をもってしても、赤道のたいこ腹は隠しきれなか った。どちらを眺めても、それはそこにあった : マクリンはため息をもらした。「それが今日の名言らしいね」か ろうじて、彼は気の乗らない微笑をうかべた。「じゃ、そういうこ まず三角測量を、マザーズとケニンといっしょにやったことか とにしよう。ウオリスはすぐにこっちへ飛ぶといっていた。サンチら、話を始めるのが順序だろう。わたしは器具を据えつけた。その エスの死体も、きっともうむこうを出発していることだろう。あい あいだも、教会にきた子供が神の目を恐れるように、たえず空の巨 つらは、いまいましいほど自信たつぶりだからな」 人をちらちらと見あげていた。ジュビター それがこの世界の唯 一神なのだ。 「それだけの理由があるのさ。つねにね」。 ハリッシュが悲しげにい わたしは遠くに目をこらした。この世界はどこへ行っても岩ばか 。遠くの山山は、斃れた戦士の記念碑として作られた石積みのよ 思いだすのは星・ほし。 うに見える。それとも、天から墜ちた神族のだれか、巨神ジュビタ お・ほろげに、お・ほろげにガニメデの空に現われる星・ほし。木星が ーに刃向かって盲目にされたひとりの記念碑だろうか。宗教的なイ

9. SFマガジン 1976年6月号

航空救難隊 華氏四五一度 宇野利泰訳 / \ 320 ジョン・ポール / 村上博基訳 \ 2 9 0 大型ハリケーンの真只中で故障した大型機。ぶし救い出そう 太陽の黄金の林黐 とする航空救難隊の、飛行機に生きる男たちの苦難の物語ー 小笠原豊樹訳 / \ 360 刺青の男 文ハイラム氏の大冒険 小笠原豊樹訳 / \ 380 ワ よろこびの機械 カ ャ 火星年代記 ポール・ギャリコ / 高松一一郎訳 3 5 。 陳腐な風体で、世界中のつわものどもをしり目に闊歩する、 謎の男 ( イラム氏。その彼が巻き起こす痛快無豼大冒 , アーサー王宮廷のヤンキー・トウイン ・クライトン アンドロメダ病原体 近 ロ最新刊 黒いカーニバル 0 好評発売中 ・フラッド ) べーの作品 吉田誠一訳 / \ 3 8 0 小笠原豊樹訳 / \ 350 伊藤典夫訳

10. SFマガジン 1976年6月号

されているもののーーある種の不可能性を含んでいるのである。基を独自の思索にすごした。ときにはそれはただ一冊のすぐれた書を 本的な原理は、宇宙船およびその内部のすべてのもののカの均衡し意味することもあった。 た停止の場を、ある相対的な地点から他へ移動させることにある。 しかも、彼らは囚人護送船を操縦するために選ばれた乗組員たっ たとえば、宇宙船が地球の表面に停まっているときは、それが停また。しかもその航路はほかのどんな宇宙航路よりも長かった。長い っている地表に対して相対的な均衡状態にある。その宇宙船を地球旅行中拘禁状態がつづけば危険であると考えられているのだが、し の中心に相対的な均衡力の中へ投入すれば、それはたちまち地球のかし彼らの記録はいまだかって前例のないほど正確な計測能力と、 表面の自転速度ー。ー毎時約一千マイルーーーに等しい実効速度を与え肉体的心理的な衰弱への抵抗を示した。惑星から惑星へと、飛行は られる。同時に太陽に相対的な均衡力は地球をその就道回転速度で順調につづけられ、各惑星への着陸もスケジュールどおりなんらの ガラクティック・ハプ 宇宙船からひき離す。また銀河の中心に相対的な均衡力は、宇宙船事故もなくくり返された。寄港地に降りると、ルーツはまっしぐら を太陽の角速度で銀河の中心の周囲を飛行させる。この広大な宇宙に歓楽街へ飛んで行って、出発の一時間前までにぎやかに悦楽にふ 間のどんな単純な、あるいは複雑な集団の中心も、宇宙船の飛行にけった。一方グランティはまっさきに連絡事務所へ行き、次に本屋 利用され、もちろん銀河の流動力も利用できる。合成運動もあり、 を探した。 乗法運動もあって、その実効速度は巨大なものになり得る。だが、 彼らはダー。ハヌへの飛行に選ばれたことを喜んでいた。ルーツは 宇宙船は一瞬のうちに力の平衡状態に入って停止するので、慣性の地球に一大センセーションを湧き起こした新奇な楽しみを運び去る 要素はまったくない。 ことを、惜しいとも思わなかった。なぜなら、彼はそれに無感覚な この宇宙船の一つの欠点は、ある起点からべつの場所へ移動数少ない者の一人だったからだ ( 彼ははじめて出会ったとき、「く する際に、精神生理的原因から乗組員をかならす一時的な意識喪失だらねえ」といった ) 。グランティはただうなっただけだったが、 状態にすることだった。この失神期間は多少の個人差があって、おおほかのあらゆる人がそうだった。ラヴァー・ハ ードの驚異の表情は前 よそ一時間から二時間半。ルーツの場合はつねに二時間以上意識をよりいっそう強まっていたが、地球上にいたときの彼らのはげしい 失っていたが、しかしグランティはその巨体に特異な回復力がひそ喜びは消え去っていた。その明白な事実をルーツは気づかなかった んでいて、失神期間を三十分ないし四十分に短縮させた。彼の内部し、グランティはそれについて何もいわなかった。ラヴァー・ ( ード に孤独の時間を絶対に必要とするものがあったのだ。人間はときど たちは後部キャビンの新たに取りつけられた透明なガラスの向う き独りになる必要があるのに、グランティはだれかがそばにいるに、厳重にしかし居心地よく監禁されていたので、メイン・キャビン と、そんなふうになれなかったからだ。しかし、宇宙船が飛行をはや操縦席から彼らの動きがよく見えた。彼らはたがいの体に腕をか じめると、彼の指揮者がプラックアウト台の上に大の字になってのらませ、びったりと寄り添って笑っていた。その触合いの喜びは依乃 びている間、一時間ほどの独りの時間を持っことができ、彼はそれ然として薄らぎはしなかったが、しかしそれは暗いかげりを帯びた