四十七パーセント、という数字は大きすぎたーーわれわれは恐慌にしつづけてきた人間なのに、たった一人の子が母親の腹をくいやぶ 追いこまれてしまった。母親は何を生み出すかわからない 長って生まれ出たといって、人類は、種の明日を火にくべてしまった 2 年、あまりにも同胞について想像力を欠いていたつけが、一度にまのだ : : : 」 わってきたのだ。遺伝も環境もすべてを説明してはくれなかった。 「だが だがしかし : : : 」 誰が矢にあたり、誰が助かるかは、まったく前もって知るすべがな ル 1 はふるえる声でいった。 かったし、それゆえに、われわれは、そうした不条理を理由づける「それでもなおモンスターベビイは生きのこったのか。まるで どんな論理も生み出せなかった。運命というにはあまりに放恣すぎまるで、母親の肉だけでなく、人類という母体まで、食いやぶって るーーしかも、これまでと何が違っているともさし示すことができ生まれ出たように ない、つまりは悔い改めようがないのだ。 「あんたまで、そんな迷いごとを云うのかね」 モンスターベビイはそんなときにあらわれたのだ。考えなしの新田村はおちついてたしなめた。 聞と雑誌が手柄顔でこの話をすつば抜いた。かれらにしても、その 「それがただの例えだということは、あんたにもわかってる筈だ 結果が直接世界の破減につながっているなそとは、考えもしなかつよ。ト ーキヨーを焼土とし、人間のいとなみを瓦礫にうもれさせて たにちがいない。だがそうだったのだ , ーー人びとは唯一の希望の病しまったのはわれわれ自身であってほかの誰でもない。モンスター にむしばまれかけていることに、恐慌をおこしかけていた。まさに ベビイに責任をなすりつけることなどできはせんよ。もっとも、 そのとき、かれらは、生まれ出るために母親を殺してしまった赤んつだって、人間は誰か運のわるい奴に責任をなすりつける以外のこ 坊の話をきいたのだーー・母の腹をくいやぶって出てきた、すでに狼となど、一切してこなかったといったっていいだろうがね」 のような牙が生えそろっていた、なそというデマがとびーーそれは「あんたはこの化け物に味方したそうだな」 たちまち、そうした子供が奇形児増加のはてに、各地に生まれはじ苦々しくルーは云った。 めた、という流言になり、そしてそれはーー・親殺しの子どもの昔な「おおかた、情がうつりでもしたんだろうよ」 がらの悪夢をよびさまし 「わしはただ、これの母親と同様、これにたって生きる権利がある そして、あの暴動になったというわけだ ! 親は子どもを殺し、 と云いたいのさ。ふつうの赤ん坊は母親と戦えぬから水に流されて 普通人は奇形児をもっ隣人を殺しにゆき、そしてさいごには自ら何しまう。モンスターベビイは母親の生きる権利と戦い、これの生き もかもうちこわしてしまったーーー・何よりもおそろしい死を逃れるたる権利が勝った。むろん残酷なことだが、それ以上に卑劣なことを めに、ただ動物として一日でも永く生きのびようとして人間たちはわれわれはやってるのだ」 希望を自ら殺したのだ。そのうちに再生しえたかもしれない自らの 「母親は子を生かし、自分だって生きられるはずなんだ」 血肉を叩きつぶし、焼いたのだ。子殺しは平気で何千年ものあいだ・「花は実をつければしぼむ。親が老いて死んでゆくと、子供が生ま
ほかならない。 ち、上顎から二本の立派なひげを生やしてい カナズは、地震を予知するか 0 男 ヒヒこれは、古くして、新しい問題である。 る。長い尻びれは、そのまま尾びれにつなが 2 ム月 り、それをくねらせながら、ゆらゆらと泳ぐ姿 〃古いというのは、日本では、ナマズと地震のところでナマズというとき、私が第一に思い 関係が、昔からいろいろに取沙汰されてきたか出すのは、ナマズ川のことである。 は、幼魚とはいえ、他の魚にはない風格のよう の らだ。 子供の頃、見渡す限りの田んぼに囲まれて、なものがあって、少年にとっては素晴らしい魅 下 ズ たとえば、 蛙の声ばかりがしきりの生家の近くに、小さな力であった。 マ「地下の大ナズが暴れると地震が起こる」 川があったのだ。 もっとも見飽きた後は、たいていニワトリの A 」カ、 ナ 三河平野を灌漑する明治用水の一支流であっ餌になるのが、小ナマズたちの運命ではあった 「ナマズが騒ぐのは、地震の前ぶれだ」 て、稲田の間を縫い、東海道線の土手下を二本が : ・ 。ともあれ、そんな少年の私に、 と、いった類いである。 の太い土管でくぐる何の変哲もない小丿ナ 日・こつ「地震が起こるのは、地下に大ナマズが棲んで 昭和の初期の、私の子供の頃には、 た。が、どういうものか、ナマズの幼魚がウョ いて、暴れるせいなんだよ」 知 「地震の主は大ナマズである」 ウョいたのである。私の考えでは、昼なお暗き と、初めて教えてくれたのは、慶応一一年生れ という俗説は、 この土管の中に、たぶん大ナマズたちの棲家がの祖母であった。私はむろん、にわかには信じ 一震「まさか、そんなことがあ 0 てたまるか」 あったにちがいない。 難かった。が、隣りの市場のおやじが、タライ という思いが一方にありながらも、ごく自然私は、よくこの川へ、一人でポンツクに行っの中を一周り半するほどの大ナマズを捕えてき に受け入れられているというふうなところがあた。ポンツクという語が、どういう意味をもって、それが水中から横に広い大口を開けて天を った。はっきりしたことは分からないのであるていたのか。いまでも、そんな言葉があるのにらみ、悠々と身を横たえているさまを見たと か、どうか。残念ながら、故郷を離れて数十年きには、一種、畏敬の念に打たれたものであ 「ナマズが地震と深いつながりをもっている」 ・ : 以来、私はナマズの虜になってしまっ になるいまの私には、すべては闇の彼方に沈んる。 という考えは、一片の真理をふくむものとしでしまって、皆目見当もっかない。 たといっていい。 て、子供たちの世界では、容認されていたよう が、要は小型の網の一端を夏草の生い茂る川 に田 5 、つ 0 縁につけ、数メートル先から、ドンドンジャプ室町時代の画家如拙の『瓢鮎図』という有名 そのナマズが、近頃は、東海大地震など、今ジャ・フと、勢いよく川底を足でたたきながら、 な画には 川の中に大ナマズがおり、それを 後発生する確率が高いと思われる地震を予知す魚を追いこむのである。 川岸に立った男が、ひょうたんを持って、押え るためのセンサー ( 感知器 ) として、注目されすると小ブナやモロコなどに混って、体長一こもうとしているさまが描かれている。 るようになってきた。 〇センチくらいのナマズの子が、二、三匹は入瓢は、ひょうたん、鮎はいまのアユではな く、ナマズのことである。そしてこの画は、ナ ナマズについての古くからの言い伝えや迷説っている、という寸法だった。 を整理し、地震予知という、いまの科学でも最私はナマズを見ると相好をくずし、ポンツクマズが暴れて地震が起こるのを必死に防いでい も困難な問題に役立てようという風潮が、脚光はすぐにやめてしまい、急いで家に帰る。そしるものと解されている。 を浴びてきたのである「 てタライに入れて、いつまでも、しげしげと眺魚博士の末広恭雄氏によると、宝暦元年 ( 私が冒頭で、ナマズと地震の問題を、古くしめ人るのが常だった。 七五一年 ) に、大垣城下十カ町が八幡神社に献 て新しい問題といったのは、まさにこの意味に彼らは、平たくて黒味を帯びた大きな頭をもじた山車も、地震とナマズの関係を表わした面 でん
正直いって、原稿ができあがったとき、 注文主はもう忘れているのではないかと思 った。また、予定の三倍の長さではとても 営業的に成立しないのではないかとも思っ た。そのときは自費出版でもーーーと考えて いたのだが、幸いにも「売れなくともよ 。あとで引用されるような内容であれば ・ : 」という浮世ばなれした担当者の考え で、出版してもらえることになった。 ・フルー・ハックスから出た『銀河旅行 / Ⅱ』がそれである。もともと五、六冊分あ った資料や計算結果を数分の一にまで圧縮 したがそれでも注文の三倍になってしまっ という本なので、電車の中などで読 むには重すぎると感じていたのだが、営業 成績もとしてはまあまあーー・・とのこ とで担当者にもそう迷惑はかけず、ほっと している。 さて、三番めの夢である近距離恒星地図 航宙図ーーーについてであるが、これへ のアプローチは多分に僥倖に助けられてい 『銀河旅行』執筆中に、とうぜんのことな がら、近距離恒星の地図 ( 銀河地図と呼ん でいる ) を描く必要にせまられた。必死に なって資料をあさったが、完全といえるも のはどこにもなかった。しかたなくジェイ 9 ムズ・ストロングの先駆的な仕事である こ
で、その敬遠していたファンタジー文ジーと騎士物語のパロディ ( とにかく原 庫をようやく、読んでみようか、と思っ題の原題が「聖ドラゴンとジョージ」っ ゴ 1 ドン・・ディクスン著 まり「聖ジョ 1 ジとドラゴン」のひっく たのは、ゴ 1 ドン・・ディクスンとい えばポール・アンダースンとのあの「ホり返しなのがすてきだ。このタイトル、 ュ『ドラゴンにな 0 た青年』 1 カ・シリーズ」、だが、私はあれが物かえねばよかったのに ) であると同時に ハロディのもっ原典への依存性、自己完 凄く好きでたまらなかったからなのだ。 そして、はたしてその期待は裏切られな結性をちゃんとのりこえている。 中島梓 レ っこ 0 その魅力の大半をもたらしているのは この「ドラゴンになった青年」はすごこの中に出てくるさまざまなキャラクタ 私はどっかで書いたことだが、ヒロイ ーの存在感である。ドラゴン、騎士、悪 くおもしろい。ファンタジー嫌いの私が ック・ファンタジーは好きでたまらない が、「ただの」ファンタジ 1 はどうも性云うのだから間違いない。むしろ、これい騎士、老魔法使い、イングランドのオ はファンタジー文庫に入れることないのオカミ、お姫さま、男装の麗人、それら にあわない。これがどういう理由なのか はそのうち分析してみようと思っているにな、という気がした。とてもちゃんとはみな、お伽話のキャラクターの典型で した小説であり、背骨も肋骨もみんなああるかに見えて実はきわめて現代的な描 し、「ただの」ファンタジー、なそとい うものが本当にあるのかどうかというこる。少しも軟弱ではな・ とも、そうかんたんにすむ問題ではない が、ともかく手にとってみても読む気に いまに我々はパロデ ならないのはしかたのないことで、それイ機能の洗礼をうけ、 で実をいうとこのハヤカワ・ファンタジそれをあえてのりこえ 1 文庫というやっ、てんから敬遠してい たものをしか正道とは 呼び得なくなるかもし オしという考えは 前にこのレビューで「夢の十セント銀れよ、 貨」に麻丘ちあき女史 ( ? ) が憤慨してたしかに私の中にある おられたが、あの感じというのは、たし が、これもそういう意 かに私にもあったのである。ええいこの味での正道をうけつぐ 軟弱者が、という、ですね。 作品であり、ファンタ 英国幻想文学賞受賞 ! 7
「すくなくとも時間つぶしにはなるでしよう」 「ティモシー、あなたのお母さんについてのどんな質問にも答える ・ほくはため息をついた。その時には本当に重要じゃなかったん 3 わよ」 だ、知りたかったことを知ることは。 彼女が・ほくを怒らせたのはこれがはじめてたった。タンクをいっ 「よろしい。質問その一。な・せドロシーはこっちへ来たとき、きみ ばいにしておかなかったことについては腹が立たなかった。冷却にを置いて行ったのか ? 」そう説いたとたん、その質問が突然また重 ついてでさえそうだ。それはむしろぼくの失敗だった。冷却の強度要なものとなった。 について、生き残るための予備を確保しておくことがどんな大切な 「なぜなら、彼女はわたしたちの母親ではないから。わたしたちの ことか本当には告げないまま、軽く見ていたのだ。彼女はまじめに母親とは、わたしが十歳のときに絶縁したわ」 とらなかった。そして今・ほくらは、・ほくのささやかな冗談のつけを ・ほくは起き上が・つた、ひどくショックを受けて。 支払っているわけだ。彼女がルナの安全に関する専門家だというの 「ドロシーがちがうって : : : じゃ彼女は : : : 彼女は・ほくの養母 ? で、自分のことは自分でできるたろうと仮定したのがまちがいだっ今までずっと聞いてきた話ではーーー」 た。もし彼女に危険に対する現実的な推測がなかったとしたら、 「しいえ、彼女、あなたの養母じゃないわ。専門用語でいえば、彼 ったいどうしてそれができるというのか ? 女はあなたの父親よ」 「なんだって ? 」 しかし、この申し出には酸素に対する報償のようなニュアンスが あり、そしてきみは水星でそんなことをしてはいけないのだ。進退「あなたの父親なの」 きわまったようなとき、空気はいつでもタダで分かち合われるもの「誰がいったいーー父親 ? これはどういうたぐいの気違いじみた なんだ。感謝なんて礼儀知らすた。 冗談なんだ ? 自分の父親が誰かなんていったいどこの誰が知って 、るんだ ? 」 「ぼくに何か借りがあるなんて考えないでくれ。それはよくないこし とだ」 「わたしが知ってるわ」と、あっさりいった。「そして今じゃあな 「そのために申し出たんじゃないわ。もしわたしたちがこの地の底たもね」 で死ぬことになるのなら、秘密をもったままだなんて・ハカげている「はじめから話してくれた方がいいと思うな」 と思うの。これは筋が通ってるかしら ? 」 彼女はそうした。それはまったく説得力があり、実に奇怪だっ 「いいや。もしぼくらが死ぬのなら、・ほくに話して何になるんだ そうすることで・ほくに何の利益があるというんだ ? それに ドロシー、そしてジュビラントの母親 ( ・ほくの母親だ ! ) は、 筋も通っちゃいないよ。ぼくらには死が迫っているわけでさえな〈第一原理〉という宗教団体の一員だった。彼らはたくさんの おかしな考えを持っていたという話だが、中でも奇妙なのは″核家 ファースト・リンシプル
ルーは、しびれた頭の中で、その考えを自ら訂正した。かれら「心配するな。あんたは人間だろ・ーーおれたちもだ 9 やつらから逃 は、そのからだの ( ンディキャップをわきまえているらしく、いずげて、壁をさがしてるとこだーー・それに」 れにしても決して単独行動をとることはないのだ。それと、一定の気づいてルーはつけたした。 習性に頑固なまでに従っている。そのおかげで、狂った田村とただ「少しばかり食いものもあるそ」 二人とりのこされたルーも、何とか生きつづけ、逃げのびつづけて しばらく彼は耳をすませた。応答はなかった。しかし、灰色の・ほ いるのだ。 ったりした闇はいくぶん明度を増しーーちょうど、よわよわしい白 い円盤の、日も上りかける時刻だったのだーーそしてやがて、つい とすれば、かれら二人とまったく同じように、何かの事情で仲間 とはぐれ、何とかして普通人たちのいるところまでたどりつこうとに、彼は、ゆっくりと身を起こした。 している、逃げおくれた人間かもしれない。 光が彼のうしろに、コロナのような光背となって、その姿をあい ル 1 は唇をかんだ。これがワナならそれはそれでしかたないさ、 まいにした。しかし、彼が立ち上がり、そしてこちらへ歩いてくる という気になった。彼は田村をおさえつけたままゆっくりと身をおのをみたとき、ルーの唇から、獣のような呻きがもれた。 こし、胸をどきっかせながら呼ばわった。 逃げたい。だが身体が動かない。恐怖と絶望がルーをつらぬいた 「誰か しるのか ? 」 そのとき、彼はゆっくりとル】たちに近よってきたのだった。 返事はな、。 「そこに誰かいるのか ? 」 ルーの声がこころもち大きくなる。そしてもっと。 灰色の闇は、なおもしばらくのあいだ、こちらの気を挫くような ことばカ / 沈黙を保っていた。それでいて、ルーの胸には、しだいに、そこに ・ : レーののどにひっかかり、上顎にはりついた。 言かがじっとうずくまっていることが、明らかに、つよく、感じと「お前はーーー」 れるようになっていた。闇には重さとかたちと、そして生命とが明 云おうとするのだが、まともに声にならないのだ。おどろき、と 瞭にひそめられていた。それだけではなく、そこに息をひそめてい いうのではなかった。あまりにも激しいショックをうけたとき、人 るのが、かれらの群をはぐれた一人とか、そういったものでなく、 間の心はうちのめされ、それだけで、もう何ひとつ情動を自らの内 に感じる余地を失ってしまうのかもしれない。 人間であることは断言してもいいとルーは思った。 お前は、何だーーーそう、ルーは云おうとした。しかし、突然に、 どうしてそう思ったのかよくわからない。だが要するに、存在ー ー生命ある存在というものはそれなりのりんかくと匂い、そして雰そんなことはどうでもよくなっていた。 「お前はーーー」 囲気をまわりに照射しているものなのだ。 幻 6
よって、人類は太陽系 ェイト・ヴールド 内の八世界に追放を ジョン・ヴァーリイ著 ン 余儀なくされた。水 星、金星、月、火星、 タイタン、オペロン、 ュ『、びつかい座ホ〉トライン』 トリトン、冥王星 座第 この八つの星が人類の : 物 亀和田武 レ 亡命星である。彼らの っ 今年の星雲賞、翻訳短篇部門には、ジ文明復興に大きく貢献”一 したのは、ヘびつかい ョン・ヴァーリイの作品が二篇ノミネー へ トされていた。「残像」と「さような座の方向から送られて ら、ロビンソン・クルーソー」がそれくるメッセージだっ ーリイの筆力が並外れているということ で、惜しくも = ーヴン「無常の月」にタた。誰が、一体、どのような理由で送っ イトルは奪われたが、紹介初年度にしててくるのか不明だが、そのおかげで確実はある。しかし、その筆力というアイマ これだけの反響があった作家も最近マレに人類の生活は向上した。そこではクロイな形容を解剖してみると、どういうこ とになるか いわばスレッカラシの ーニング、性転換が常識となっている。 ・こっ一つ 0 ジョン・ヴァーリイは、アメリカそんな未来社会で、ふとしたことから人ファンまでも満足させる、彼の特質が 界でも最大の期待をかけられている新人類の敵として処刑されそうになった女性浮かび上がってくるのではないか、とい の一人であるとは、よく耳にする情報で科学者リロと、そのクローンたちが、こうのが私の考えである。 ます、第一に指摘できるのは あるが、洋の東西を問わぬ、この人気のの長篇のヒロインである。 個々のアイデア、素材という点では、ヴンとも共通する点であるがーーー従来の 理由は何なのだろう。 「へびつかい座ホットライン」は七七年決して目新しいものはない。しかし、こ英米が開発した様々なアイデア、シ の「へびつかい座ーー」といい、先に挙チュエーションを自家薬籠中のものとし に刊行された彼の長篇第一作であるが、 、、、ジョン・・ヴァーリイのていること。たとえば、本篇中に再三、 二一げた短篇とし 設定は次のようなものである。 世紀半ば、突如襲来してきた、人間の理作品は、私たちに新鮮さを感じさせるー再四登場するーー・というより、それ自体 がストーリイの必要不可欠の大きな柱で 解を遙かに越えた存在日インべーダーにー何故だろう。もちろん、ジョン・ヴァ ー翻訳権独占 , ・ , ・・、・ 宇宙からの謎の通信 へびつかい座 70 番星の方向から来る謎の メッセージいそれは人類を飛躍的に発展 さ . せたカ莎・朝プア - ン待望の本格ハードい 0 、物早川書第 田 4
実現できませんでした。しかし、近いうち必ず 日本へ行きみなさまとお会いしたいと思いま す』というメッセージをいただいた。 お礼にホシヅルのぬいぐるみをプレゼントし 氏たら、「ペリー・グッド ! 」と大よろこびで、 ン そのぬいぐるみを抱いたまま食事をするほど。 ス ク このころになると、なんとかス。ヒーチができ るほどの度胸がついてきた。 るそこで、「日本沈没」にひっかけた冗談を言 せ ったら、・ほくの下手な英語が通じたのかみんな の ドッと笑ってくれた。 肩 それからおもむろにポケットからホシヅルの を ぬいぐるみをとり出し、「この日本界のシ ンポルとも言えるホシヅルを、キャプテンのリ シ ・・スホム・シリーズに登場させるよう、キャンペーン を張ろう」と好きかってなことを・フチあげた ら、笑い声と拍手がおこった。 するとキャプテンが立ち上り "I will try" ( よし、やってみよう ) とひとこと。 やった ! しんだ後、八月十日から四日間にわたって開か こんなにうまくいくとはー ーという役員のひとりが「アイザック・アシモ れたオーストラリア大会 (Syncon ・ 79 ) ともかくどのプログラムも、参加者の野次とフさ」と答えてくれた。 に参加した。 拍手と笑い声の絶えない楽しいものであった。 「飛行機ぎらいのアシモフをオーストラリアへ 出席者、約二五〇名。小じんまりとした大会オークションでフィンレイの原画をせり落とせ呼ぶために、まずキャ。フテンにアメリカへ行っ で、・ほくは野田昌宏さんからいただいた加藤直なかったのはくやしい思い出だけど、みんな気てもらい、そして彼の船でアシモフをつれてく 之氏デザインの「銀河辺境・ ( ッチ」を名刺がわ軽に話しかけてくれたし、・ほくにとってはすべるんだ。いい考えだろう」と = ッコリ笑ってみ りに配って歩いた。この・ ( ッチが大好評で、ホて面白く、すべておどろきで、そしてほんの少せた。その時には、ぼくももう一度オーストラ テルのフロントの女性までがよろこんでつけてしうろたえ気味の大会だった。 リアを訪れてみたいと思っている。豪日交流基 いた。 広大なその大地と同じように、さまざまな可金のみなさん、ありがとうございました。 この大会のゲストは、アメリカからやってき能性をひめたオーストラリアファンダム。 野田さん、柴野さん、キャプテン、本当にお たゴードン・・ディクスン氏。 数年後には、世界大会をオ 1 ストラリアで世話になりました。オーストラリアのファ 陽気できさくな人で、日本のファンあて開くべく、今着々と準備中ときいた。 ンのみなさん、いっか又お会いしましよう に『数年来、訪れたいとは思いながらなかなか「その時のゲストは誰 ~ 」ときいたら、ビータ日本が沈没してしまうまでにね。 チャンドラー夫妻。大会のディナーにて ロ 6
変化は老体にはかなりの負担だったろう。しかし式典好きで有名 「なにか言ったか」 な大将はそんなことで背を丸めたりはしなかった。 電源車によりかかったまま零は肩をすくめた。「予審のことさ。 准将の態度も腑に落ちない。なんでガミガミ言われるのかわから零と・フッカー少佐は式典準備の任務から解放されて、地上の収容 庫裏の草原へ行った。零はポータ。フル・テレビを、少佐は趣味のプ ん」 「シルフでもジャムでもなかったのかもしれない。ガンカメラの撮ーメランを持って。草はやわらかく、空気は暖かだった。青い空が った絵はおれも見たがーー似てるが、はっきりシルフだとはいえ見えないことをのぞげば、上々の休暇日和だった。 うとうとと昼寝をしていた零は、少佐に起こされた。「なに」 ん」 「そろそろ始まる。をつけろよ」 「どういうこと」沈んだ声で零。 「地球からの侵入機の可能性があゑということだ。通路は高さ十「なにが・ : : ・そうか」零は身を起こした。 セレモニーは管制塔付近の広場で行なわれているはずだった。草 キロほどの細い紡錘型を地に突き刺したような格好だというから、 原からは遠い。滑走路は広大だ。テレビを入れると、いきなり「フ 空から出入するほうが容易だ。国際法で禁じられてはいるが」ー。 ' ェアリイ空軍をたたえる歌」の録音軍楽隊演奏が響いた。 「なんでそんなことをーー幽霊機の目的だよ」 ・ : その国はス・ハイ機を墜「長 . ったらしい挨拶が終わったところだろう : : : さあて、観兵が始 「この緑の大地を見ろよ。空気もうまい : とされたのだから文句はいえない。公になれば国際世論が黙ってなまるそ」、日本空軍参謀長はフュアリイ空軍将校を一人従えて幽霊戦 一方フェアリイとしても、主権を持った独立国ではないのだか士の方へ歩き出す。胸を張り、しかし腹のほうが威厳がある。さ あ : 、うまくいったらおなぐさみ」 ら地球側の機を撃墜したなどと自慢したら、これまた大問題だ。 ーおれの、考えだ。真実はわからん。ジャムだったのだろう。忘れ「ジャック ( あの将校ーー 4 」 ・「他にだれがやる ? , 、あれくらいはやってもらわなくては。責任は たほうがいい」 「おれにはまったくわけがわからん」 彼女にあるー 「手を貸してくれ。木偶の坊を起こす」 「ああ。 しかしこの額の傷は消えない。相棒は死んだ」 『よくやっ・ておるかね』と大将。 「脛にある傷はどうだ。人はいずれ死ぬ」 はい閣下、光栄であります』と一戦士。 『出身はどこかね』 天気は下り坂だがどうにかもつだろうという・フェアリイ航空気象はい閣下 ? 光栄であります』 画面に白い文字が流れる。 班の予想だった。 賓客は「通路」を抜けてフ = アリイ基地にやってきた。急激な環〈こちらはフ = アリイ空軍・・サービ不 : : ・解説提供はプーメ スネ 2 5
「おまえのことなそどうでもいい」少佐はごく普通の調子でこたえ いらいらとプーメランで肩をたたいていた手を止めて、少佐は首 をかしげた。 た。「おれの好ききらいなどおまえには関係のないことじゃない 「アンドロイドだよ」と零は説明した、「いや、ロポット、人形で か」 言葉を返そうとした零だったが、しかしもっともだと思い、無言いい。どうせ並んで、せいぜい挙手するくらいだろう。人工知能ュ で、プーメランを取りにゆく少佐を見送った。再び大地に身を任せニットも必要ないと思うよ。顔つきと膚の質感さえうまくでれば : : ・たしかあの空軍参謀司令は近眼で老眼だ、無限遠から目の表面ま ようとしたとき、制服の胸に入れてあったエレベータ・リモコンが 皀 2 っこ 0 でどこにも焦点は合わないはずだーー大丈夫だよ、近よるのは彼だ けなんだから」 「こちら深井少尉。三号基は使用中ーー」 ・フッカー少佐を知らないかとの声。クーリイ准将が呼んでいると「おお坊やーー・・馬鹿なことを」 「あんたならわけなく作るだろう」 声は言った。 「少佐、しわしわ婆さんがお呼びです」 「准将に馬鹿呼ばわりされるのはこのおれなんだぞ。彼女が許可す 少佐は肩をすくめた。 「どうか、日本の御大将が墜死したというるものか」プーメランを持ち直し、しかし、とブッカ 1 少佐は言っ ニュースでありますように」 た、「しかしーー一考の価値はあるな。目茶苦茶だが、なんとなく 「来フ = アリイの日付とスケジールが決ったそうだよ。予定表をもっともらしいアイデアではある」深井少尉、とあらたまって、 「准将に提言し、説得することを命ずる。少佐命令だ。計画書はお 渡すからって」 「神よーー独りでは死なんそ。仲よく壁の前に立とう。全員を道づれがでっちあげるから・ーー」 「いやだよ、スーパー婆さんは苦手だ」 れにしてやる」 人間二人を運ぶにはもったいない巨大な = レベータ・システムを「上官命令服従違反・抗命罪、反逆罪、逃亡罪で軍法会議に訴えて 動かして下りる途中、零はブッカー少佐の対電子技術はたいしたもやる」 のだと感心し、な・せ手で木片を削るのか理解に苦しみーー安全性な「アホか。なんで逃亡ーー」 なあ零、考えてもみろよ、三十人から どいくらでも高められるだろうに、と零は思った。要するに危険だ「上官侮辱罪が加わる。 からという理由ではなく、直観的に電子機器がきらいになったんだの隊員を説得するのと、一人の女をまるめこむのと、どっちがい それから儀仗兵がみんな鉛の人形になった光景がふっと頭に浮 んだ。 「女のほうがおとすには難しいよ」 「あの、ジャック」少々ためらった後、零は考えを口にした。「人整備場階についた。零はリモコンを壁にもどした。 「女なら隊員にもいるーー・いもか、おまえが言い出したんだ。おれ 形を作ったらどうかな」 7 4