? ) こちらから要請して引揚げてもらったのだった。もっとも、彼名は、今や地球建設公社の最大の偉業と結びついているのである : を不安にさせた最大の要因は、小さな秘密などではなくて、自分が 五里霧中でいることにあった。地球建設公社の技術部長 ( 陸地部それは〈最後の橋〉と命名されたが、それも故あることだったろ 門 ) ともあろう者が、ただ自分のサインを求めたり、ありきたりのう。その最後の部分がグラーフ・ツェッペリン号 ( これ自体が当代 観光客の愚問を発するたけのために、はるばる数千キロをやってくの驚異の一つなのだが ) によって空へ静かに持ちあげられるのを、 るはすはなかった。何か特別な目的をもってここへ来たにちがいな ラージャシンゲは世界の大半の人々といっしょに見ていた。重量を いのだ。ところが、いくら知恵をし・ほってみても、ラージャシンゲ減らすために、飛行船の豪華な備品はすべて取り除かれていた。有 には想像もっかなかったのである。 名な水泳。フールは排水され、原子炉は揚力を増すために余剰熱を気 まだ公務員であった頃でも、ラージャシンゲは地球建設公社と関嚢に送りこんでいた。一千トンを越す死荷重が三キロの上空へ真直 ぐに吊りあげられるのはこれが初めてだったが ( おそらく数百万と 係したことはなかった。その三つの部門ーー陸地、海洋、宇宙 は巨大なものではあったが、おそらく世界連邦のあらゆる専門機関いう者たちの期待を裏切って ) 一切は支障なく終った。 の中でも最も知名度が低かった。世間に知れわたるような技術的失今からは、この人類によって建設された ( また、おそらく今後と 敗とか環境や歴史のグルー。フの正面衝突がおこったとき、はじめても建設されることのない ) 最大の橋に敬意を表することなく〈ヘラ クレスの柱〉を通過する船は、ありえないのである。地中海と大西 地球建設公社の名が表面化するのだった。最近この種の対決がおこ ったのは、例の南極。ハイプラインーーー極地の広大な鉱床から液化し洋の境目にある二本の柱は、それ自身が世界最高の建造物であり、 た石炭を世界の発電所や工場へ送るために建設された二一世紀の奇ジプラルタル橋という驚くべき優美なアーチのほかには何一つない 蹟に関するものたった。生態学的な陶酔状態にあった地球建設公社十五キロの空間を隔てて相対しているのである。これを考えついた 。ハイプラインの残存する部分を揃去して、陸地をベンギンに返男に会えるのは名誉というべきだろう。相手が一時間遅刻したとい ってもた。 還することを提案したのだった。たちまち抗議の声をあげたのは、 「申し訳ありません、大使」モーガンは三輪車から降りながらいっ このような文化破壊行為に憤激した産業考古学者たちと、ペンギン は遺棄されたパイ。フラインが大好きなのだと指摘する動物学者たちた。「遅れてご迷惑だったんじゃないでしようか」 だった。それは彼らにこれまでの最高水準の住居を提供し、このた「ちっとも。何も予定はありませんから。食事はできたんでしよう め鯱たちももてあますほどの爆発的繁殖率をひきおこしたのだつね ? 」 「ええ た。そこで、地球建設公社は、一戦も交えずに降伏したのである。 ローマでの接続をふいにされたとき、少なくともすばら ラージャシンゲは、モーガンがこの小敗北に関与していたかどうしい食事は出してくれましたよ」 「たぶんャッカガラ・ホテルのよりも上等だったでしような。今晩 かは知らなかったが、それは大した問題ではなかった。モーガンの 4
だ。けれども、作者自身によればまだ発おそらく、この作品の力は、そうしたファンタジー」と云われては、日本 端でしかないというこの物語に限れば、 そのものに根ざす力と、川又千秋とのヒロイック・ファンタジー作家たる私 4 川又千秋は、見事にその危険を切り抜けいう作家の内的な力とが、重なりあったが「なんだなんだ」と仰天し、「しまっ ていると言っていいだろう。 部分に存在している。ただ、この物語のた。やられたか」ととびあがったのも当 その一つは、彼の言葉を改造する力の最後のエ。ヒソードで、アリス・ドライプ然だろう。 強さであり、もう一つは、その宇宙にゲの乱用が現実と虚妄の世界の混乱を招きで、読んでみた。その結果がどうだっ まあ、いろいろある ームとしてのあり方を与えてしまったこはじめるというイメージが、強く打ち出たかというと とによる。それは、スペースオペラとしされているわけで、それと、ゲームとしが、ひとことでいうと、もう私は焦って . し子ーし 「しまった」という気分も、・せ 上ての枠組に関係するのだが、「白王」とての世界の構造が、どう関 0 てくるの しか、それがどのように次なる物語の中でんぜんなくなった。 「紅后」という謎の存在が指し続けて、 る宇宙規模のチェス・ゲームによって、処理されていくのか、そこのところに多なぜかというに、結局早い話が、この 永久戦争が戦われている世界という設定少の不安と多大な期待を感じる。まだ進小説が、出来のわるい作品、ダメなファ そのものだ。いや、もちろん、チェス・ 行中の物語だ「この先のエビソードが続ンタジーの典型みたいなものであること ゲームの世界というアイディアそのものけて語られることを心から望む。 ( 『反がわかったからで、そうである以上、た は、必ずしも珍らしいものではない。け在士の鏡』 / 著者日川又千秋 / 四六判上とえそれがどう日本神話に取材していよ うと、私が日本のヒロイック・ファンタ れども、それらの作品の多くは、登場人製 / 234 頁 / Y950 / 早川書房 ) ジー作家であろうと、そんなこととはか 物がそのことを知らないことによって成 かわりなくこの作品はダメだ、と云える 立している。それに対し、川又千秋の世 リチャード・ ・ルポフ からである。次に、なぜこれがダメなフ 界では、登場人物たちが、その真相に気 アンタジーであるか云おう。 付くところからはじまるわけだ。 『神の剣、悪魔の剣』 まず、この作品は、ファンタジーに必 そして、それこそ、どうだ、人生はチ 要な、イメージの自由奔放なふくらみ、 エス・ゲームだったんだそ、驚いたかー 中島梓 というものを欠いている。はじめ私は、 と言われても驚くことのできなくなって これは私が日本人だから、スサノオだ しまった世代に属する川又千秋の出発点 なのではないかと思うのた。そして、同この本を読む前、実は私は少しばかりの、ヤマタのオロチだの、一寸法師の既 じ世代に属する・ほく自身にとっても、そ焦っていたのである。副題が「ファンタ成イメージに眩惑されて、それでルポフ れは読みたい物語の出発点であるわけジー日本神話」、そして能書きが、「弥勒のイメージをつかみそこねているのかと スサノオ / ミコト だ。というジャンルそのものの成長菩薩と愛染明王、鬼子母神、須佐之男命、疑ってみた。しかしそうでないことがわ の原動力である筈だ。 一寸法師と大国主まで入り乱れる雄大なかって安心した。、太安萬侶と稗田阿礼が
し準矮星がかなりあるので、わが光世紀宙というか明るさというか、輝きも問題であ 域は″矮星 ( 主系列星 ) ″の天下だというろう。 それはやはり未知の世界である ことになる。 そういう観点からは、黄色矮星は数は第 いま仮に、型も型も黄色矮星と呼ぶ 二位だがかなりカのある存在ーーーというこ ″光世紀宙域″のカタログにのった星々をことにすると、光世紀宙域の勢力分布はー とができるだろう。 分析してみると、前回大いに強調したよう 黄色矮星と赤色矮星とでは、放射してい に、型の赤色矮星が圧倒的に多い。全体 ①赤色矮星が過半数をしめる圧倒的多数る可視光線のエネルギーは数百倍から数千 の五五パーセントにも達する。 派。 倍もちがうので、″輝く″ということに重 黄色矮星である c.5 型とその前後の型お ②黄色矮星が三分の一をねらう第二勢点をおいてみれば、それはまったく比較に 力。 よび型の主系列星がそのつぎに多く、三 ならない。 〇パーセント弱である。 ③その他 ( 白色矮星、型星、準巨星な 月とスッポンというか、灯台と懐中電灯 五五パーセントと三〇パーセントを合わ ど ) はチョポチョボの少数派。 というか、映画館でいえばテアトル東京と せると八五パーセントになるから、のこり ということになる。 横須賀金星座のちがいぐらいはある は一五パーセントにすぎないが、そののこ もっとも、勢力分布というのは数だけで いや、金星座や水戸口マンス座や藤沢映 りのなかにも主系列星とほとんどちがわな きめることはできない。一個一個の大きさ画をもってきたのではあまり、 しいたとえに 連載銀河旅行と特殊相対論 章 3 見えない世界での冒険ー集知恒星の話ー、 石原藤夫 イラストレー、ンヨン・宮武一員 4
でしよう。勉強ではなくて : 趣味・遊びと考えてください。そしるようになる : : : そうなるために、・われわれ全体がほんのすこしで もいいから協力しましよう。 て、乱歩先生のいわれたとおり、の両輪は「創作と翻訳」で、 どちらかなくなっても、車は倒れます。それに、時代とともにその これは日本のの発展だけではなく、世界のよりよい明日が訪 中身も変わっていきます。日本国内だけでを考え、書き、出版れてくるための役に立っことです。こうすることも、がわれわ し、販売するだけではなく、「という土壌の上で世界はひとれに与えてくれた効用でしよう。 つ、お父さんお母さんを大事にしよう。世界のどの地域ので現在の日本の輸出以上に大切になるのが、先ほどもふれた新 も、 いものはみな読みましよう」という時代がそこまで来ているしい作家と翻訳家の出現です。新人作家は発掘できても育成できな のです。世界中の人々が日本の ()n を、読みたければいつでも読め いことかも知れません。ある作家が新人を教育すれば、その人の亜 流を作り出すだけだというのも真実に近いでしよう。ですが、アメ リカの各地で昔からおこなわれている創作教室、中でも有名になっ たのがクラリオン・ワークショップですが、そういった創作教室から 次々と優秀な新人作家が輩出しているのは、まぎれもない事実です。 氏 野 たとえ教える内容に触発されなくても、作家と話をしているだけで 矢 る も何かが触発される場合が多いものです。いうなれば、有名作家の 」いが、 《咳に接するだけで、隠れた才能が引き出される場合が多いのです。 日本国中の作家のみなさんにお願いします。 ()0 大会のみな て らず、あらゆる機会に作家志望者の相談相手になってあげてくださ に 。作り方・考え方を教えてあげてください。われわれは新しい日 伏本と世界を作りつつあるのです。 新人翻訳家、これは作家の場合と違って、語感の先天的に悪い人 を別にすると、育成できます。ただし、高校三年までの英語教科書 回をよく勉強しておくことが必要です。もちろん他の外国語の場合も 同じで、語学の基礎力をつけておく必要があるのです。の翻訳 第 をやりたい方は、大会でどうか翻訳家のみなさんに相談してく ださい。だれもみな親切丁寧にお相手するはずです。 でも、創作翻訳志望者の両方にお願いしておきます。勉強、つま 5 2
の眼を欺くように、現実をあざむいて孤立していた。 われわれの主人公たちは、向うみずな若さと、魂のバランスをと ここに踏みいるものは、不眠症患者が入念な就寝儀式を必要とすることへの天才を生まれながらにそなえていた。それで彼らは冒険 る以上に、手のこんだイニシェイションをくぐらねばならなかったを冒険とも思わずに、荒野へ、未開の海へ乗りだすことができたの が、ひとたびュマジュニートの市民権を獲得した、彼らオルフェのである。無知は不可能を可能にする。目隠しをされて、知らずに綱 末裔はすでに光と闇、生と死の世界を自在に交通する術を身につけをわたっているようなものだ。 ていたのである。 いずれは彼らも、何もない空間への白い恐怖を理解し、すいこま しかし戦争という、生命の光が最も強くかがやく現象をさけ、怯れそうな高度に目がくらむことを知るだろう。その時こそ、彼らの 儒なエスケープに耽る彼らにも、動きうる限界というものはあっ背後に夢の森は吼え、眼前の海は貪婪な波の舌をのばすにちがいな しかし、物語はけして破減そのものをは語らない。ただ、その た。あたかも夜光虫が夜の波にただようしかないように、あるいは はまた螢の幼虫である輝く蛆が半生を暗い土牢に囚われているよう経緯を告けるだけである。 ュマジュニート市は、死の世界に設けられた租借地なのだ。それ 〔これまでのあらすじ〕 は、その市民にある種の通路をくぐって現実の世界と行き来するこ ひっこくこだわる 王国を追われた美貌の王子ナリンは、王国再建の野望と革命政 とを許した。 : 、 カ市の境界をこえて〈こちら側の世界〉を探検する ことは素晴しく危険なことだった。 権へのルサンチマンとに引き裂かれていたが、この心の迷いが現実 年若い世代には、冒険のための冒険が生きることそれ自体だ。だ世界に彼の住む場所をうしなわせたのだった。 から、亡命生活の不安と屈託をまぎらすだけの目的で森へ行く者も父王と新政府の敵意と銃口をさけるために彼がえらんだ唯一の道 は、ここュマジュニート の町へ通じていた。しかし、ローマを獲る 少なくなかった。そして、帰らない数もまた多かった。 森は、偽りの生と本物の死が溶けあう夢の原形質そのもので出来のにあらゆる手だてがあると同じく、この町はすべての卑怯な黄い ていゑそこに迷う者は、すでに還るべき生の輝きも辿り着くべきろい魂が集まる煉獄なのであった。 死の安らぎもなく、醜怪な絶望のなかで別な生き物にわれとわが身愛の不可逆反応という刑が彼らには科せられていた。 を変えてしまうという。ハルピーのすだく伝説の自殺者の森のようすなわち四人の亡命者は、各々の熱い片想いの相手を、だが空し く追いもとめ、ついに得られない。学生ジョルジュは技官アルンハ さらに森をこえて死の荒野をわたり、万物の根源と称される〈虚イムを、彼は亡国の姫シャオリーヌを、彼女は王子ナリンを、そし 無の海〉をみることはーー限られた強固な精神の持主にだけ許されてナリンは見果てぬ王政復古の夢を見つづけるのである。 だが、真に恐るべきは、こんなキャラクタ 1 設定が物語のス る巡礼であった。 329
連載⑩スタシオぬえの 夛」ンツフ。ライフ一フリイ の月は地獄だ月だ。論理思考をしていたらしかし、現代の写真に未来が、未知なるものあるのだろうか。実はあるのである。ギブンン 〆切が片端から飛んでゆく。そこで今回は長谷が写せるだろうか。今のところ答は否定的だ。の「肌の勾配」という言葉を聞いたことはない ー、青井両先生に御足労をお願いした。全員刮見えない世界を見るには、擲々は自分の手とイだろうか。 ( 先月、肌の遠近法として少し紹介 目すべし。 ( 宮武 ) メージを駆使せねばならないのだ。我々がこれしてあります。カタい言い方をすると、材質の から描いていこうとする世界は新しい宇宙であ連続的変化による奥行知覚ということになりま ・ : 日曜日、二人がスタジオぬえで顔を合わり、そこには新しい秩序があるはずである。こす ) これを応用したものとしてディスカ・ ( リー せなければ、こんな悲劇はおきなかったろうの空間表現のためには我々が宇宙遠近法と呼ん号などの細かな表面処理をした宇宙船があげら でいるものを必要とする。今までの遠近法はレれる。さらに、スターウォーズでは表面をよご さて、今回はもっと美術学校調でいってみよオナルドの手記の言葉を借りれば、 すことにより、この効果を高めている。それで う。アートには異世界、、メカ、あ「第一は縮小の理法に関するもので、眠から遠は、講義めいたことはこれくらいにして、宇宙 れやこれや色々画題があるわけだが、一言でいざかってゆく対象を縮小遠近法という。第二の遠近法の一例を紹介してもらおう。 ってしまえば、それはセンス・オ・フ・ワンダー性質は眼から遠ざかってゆく色彩の変化する方 以上、文目長谷川正治 の視覚面からの追求ということになるだろう。法をば意味する。第三にして最後のものはいか 以下、文 / 絵共日青井邦夫 で、追求するにも色々方向があるのだが、そのに対象が遠ざかれば遠ざかるだけ・ほやけねばな宇宙遠近法を持ち出さねばならないような巨 一つとしてここでは新しい視覚の確立もしくはらぬという証明に関するものである」ーーー杉浦大建造物が出てくると言えば、まず思い出 新しい空間の視覚化というテーマを取りあげて平訳・岩波書店 ( ひどい訳だ。宮武 ) されるのが『リングワールド』。さて、この人 みることにしよう。 だったのである。では、例によって巨大な宇工世界、宇宙遠近法を考える上で都合の良い部 このテーマは、二十世紀初頭からの実験的造宙船によって説明していこう。パース。〈クティ分があるのだ。つまり、大気を持っているの 形運動が行なってきたことと一脈通じるような・フで宇宙船を描くとき、形は視点から遠ざかれで、空気遠近法を併用出来るのである。と言っ 気がする。十九世紀から始まった産業革命は造ば遠ざかるほど小さくなるのだが、宇宙船の輪ても、とにかくやたら大きい。半径一億五千万 形美術の分野にまで多大の影響を与え、それま郭は大気中と違いぼやけないのである。 ( 表現キロメートル、こうなってくると、場所によっ ・ハースペクティヴ で西洋美術の持っていた遠近法を一瞬のうち技術をしてわざと・ほかして描いているものもあては、環が環として見えないのだ。詳しくは図 に崩壊させてしまった。芸術家ドラジェロにる。これは奥行の表現のための嘘であり、できを見てもらおう。実際、感覚で理解できる限界 「今日で絵画は終った」と言わせたほど、画家ることなら使わないで済ませたい技法である ) を越えたサイズなのだが、この桁はずれな所 にとって写真の出現は大ショックだったのだ。 これを・ほかさないで描き、奥行きを出す方法がが、の面白さたと思うのだ。 射 6
銀河中心方向 がマッドサイエンティストみたいな貧弱な るところも同じである。とてもいいふんい きだ。 話の筋はだいぶちがっていたかもしれな 格好で研究している。そこになぜか美人の いが、要するにそういった種類の話だっ ーマンというのがまたいい。 お姫さまみたいな娘がいる さっそうと空をとぶのである。 そのお姫さまを、なぜかとっぜん黒覆面た。 マントをひるがえしてー・ーというか、フ 黒タイツの宇宙怪人が奇声を発して群舞 ・黒タイツの宇宙怪人の群が襲ってきて、 つれさってしまう。 するのは、この種の映画ではずっと伝統が ロシキみたいな布をひらひらとさせて あって、現在のいくつかの e > ものにも正むやみやたらに空をとぶのだ。 そこへなぜか、とっしょ間に合わせたよ しく伝承されている。 見ているほうはハラハラする。そんなに うに正義のスーパーマン ( みたいなもの ) がとんできて、お姫さまを救出するのであ むやみやたらとトンポをきり宙がえりす長いこと空中にいないで、はやくお姫さま のところへ行かなくちゃ、まにあわないで / し、カ る だが、ちゃんとまにあうのだ。 あ か 正義はさいごに勝っ ! そして悪は亡び 団星 るーーかと思うと、それがなかなか亡びな 星 くて、退散はするものの、 いっこうに絶減 開間 するようすはなく、次回にまた出てきそう ス域と な雰囲気でおわるのである。 デ宙 も団 私はいつも、ほっとしたようなイライラ ヤのに星 ヒ年域開したような気もちで映画館の便所の匂いと 光、光宙散 別れをつげたものである。 6 紀ス 精神年齢一〇歳ぐらいのままで暦の年齢 径世デ 銧ャ だけがすぎてしまった私は、研究の世界で カヒ わ 大人 ( 研究所たから一般にくらべれば大人 近 年 ではないのだが ) の世界に投げこまれるの 図 がいやで、一種の逃避をしていたのであろ う。考えてみると逃避だらけの人生がつづ いている。 それはともかく、フロシキをはためかせ 7 て宙を舞っていたスーパ 1 マンが、しまを 陽 る 光世紀世界 0 、
残念にも年ごとに数の減ってゆく友人たちは、彼をヨー : 、ノと呼政務特別補佐官 ( 臨時大使 ) にすぎず、スタッフの数も十人を越え 2 んでいた。世界は、まだ彼のことを覚えていた頃には、彼をラージ たことはなかったーー〈アリストートル〉を勘定に入れれば十一人 3 ヤと呼んだものだった。彼の正式な名前は、五百年の歴史の縮図だ になるが ( 彼のコンソールは今でも〈アリ〉の記億および処理・ハ ヨーハン・オリヴァー ・ディ・アルウイス・スリ・ラージ ンクに直接つながっており、彼らは年に何回か会話を交すのだっ ヤシンゲ。 た ) 。しかし、時がたつにつれて評議会は必ず彼の助言を採用する ″岩みを訪れた旅行者たちがカメラとレコーダーを携えて彼を探しようになり、世間は賞賛も敬意も払われない平和部門の官僚たちに 求めた時代もあったが、今ではどんな世代も、彼が太陽系で最もよ帰すべき名誉の大部分を彼に与えたのだった。 く知られた顔であった時代のことは、知らないのである。過去の栄そういうわけで、紛争の場所から場所へと歩きまわり、ある所で 光を悔みはしなかった。それは全人類の感謝をもたらしたのだか は自尊心をもみほぐし、別の所では危機の火種を取除き、絶妙な手 ら。だが同時に、自分の犯した誤まりへの空しい悔恨をもーーそし腕で事実を操る無任所大使ラージャシンゲが名声を一人じめするこ てもう少しの慎重さか忍耐があれば救えたかもしれないのに大死にとになったのである。もちろん、実際に嘘をついたわけではなかっ させてしまった者たちへの悲しみをももたらしたのだった。もちろた。そんなことをしたら、取りかえしのつかないことになっただろ ん、いま歴史を振りかえってみれば、オークランド危機を回避するう。〈アリ〉の絶対に確実な記憶がなければ、人類の平和な暮しの ために、あるいはサマルカンド協定の消極的な調印国たちをまとめために時には張りめぐらさざるをえなかった複雑な網の目をさばき るために何をすべきだったかは誰冫 こでもわかる。過去の避けられぬとおすことは、とてもできなかったろう。駆引きそのものが楽しく 過誤について自分を責めるのは愚かなことだが、時として例のパタなりはじめたとき、それが引退の潮時だった。 ゴニアでの古い弾丸傷の消えかけた疼き以上に良心が痛むこともあそれは二十年前のことだったが、自分の決断を後悔したことは一 るのだった。 度もなかった。権力への誘惑では不足でも退屈には負けるたろうと 彼の引退がこれほど長く続くと信じた者は、誰一人としていなか予言した者は、彼の人物を知らないか、それとも彼の生い立ちが理 った。「君は六カ月以内に戻ってくるさ」とチュー世界大統頭はい解できなかったのだ。彼は若き日の野や森に戻り、少年時代を大き ったものである。「権力は麻薬のようなものだ」 く占めていた、巨大な、のしかかるような岩から僅か一キロのとこ ろに住んでいるのだ。それどころか、彼の屋敷は″庭園を囲む広 「私にとってはそうじゃない」と彼はありのままに答えた。 なぜなら、権力は向うからやってきたのであって、自分で求めたい濠のまさに内側にあり、カ 1 リダーサの建築技師が設計した噴水 ノの家の中庭でしぶきをあげ ものではなかったのだ。しかも、その権力たるや、いつでも極めては、二千年の沈黙の後、今ではヨーハ、 特殊で限定された種類の権力・ーー行政上の権力ではなくて相談役的ているのである。水は今でも元の石の導管の中を流れていた。今で な権力だった。彼は大統領および評議会に対して直接の責任を負うは岩の上の方に設けられた水槽が奴隷たちの重労働に代ってポンプ
る事実によって、″光世紀世界″がいぜん 関係を知らなければならない。 として未知の世界であることが、定量的に 星の明るさをしめす等級にもいろいろな どのような星が見えないか ? 明確となった。 定義がある。まず第一に、ここで言ってい そして、未発見の星々のほとんどが、九 るのは″実視等級″である。 等より暗い型の赤色矮星か、あるいはそ 遠いほど未発見の星が多いことを数量的 実視等級とは、人間の眼で見たときの明 れと同じくらい暗い白色矮星などの星々で にしめしたのが図 1 だった。 るさの等級で、現在は光電管やフィルター あることもまた、明らかである。 ( 赤色矮 また、くらいほど未発見の星が多いこと によって物理学的に定められているが、要 星その他の星の定義については、前号のを数量的にしめしたのが図 2 だった。 するに可視光線がどれぐらい出ているかー 図をごらんください ) つぎには、このふたつの重要な問題を、 ーということを意味している。 等級が一等級ちがうと、光のエネルギー 年地球上における観測の は二・五一二倍ちがう。五等級ちがうと一 刪光な能力とむすびつけて、 よ数値的にはっきりさせ〇〇倍ちがうーー・というふうに決められて 少てみよう。 星の明るさはこの実視等級で表現するこ ほと書くと、めんどう る とができるわけであるが、明るい暗いはそ くさい話のように聞こ な の星からの距離によってもちがってしまう くえるが、要するに、 「見かけの明るさ第 ので、何らかの基準をもうけなければなら 離離等級まで観測できる望ない 距距 その基準によって、実視等級には二種類 径遠鏡 ( 視差測定装置 ) の値ができる。 。半煢があったとして、どの 4 比距離ならば絶対等級 ①見かけの実視等級 星 ( ほんとうの明るさ ) ②絶対実視等級 がそれである ( ただしふつう″実視″は が何等級の星まで検出 るできるだろうか・ 省略することができる ) 。 ①の見かけの等級とは、その星を地球上 で眺めたときの明るさの等級である。した という問題である。 タ がってこの等級は、同じエネルギーの星で この問題を解くため カ には、見かけの等級と も、距離が遠いか近いかによってまったく 図絶対等級とのあいだのちがった数値となる。 9 等より暗い星 ( 型 ) の比率 正しいと推定される値 カタログでの値
思い出は現れなかった。私には改造後、潜在意識すら、共同の記億 「その結果、こうしてカロン通信基地へ向っている訳ですか」 装置として使用していたのでしよう。夢すらも私は奪われたので 8 私は 0 " 3 0 を切ったデジタル表示を見ながらいった。 3 「そう、あれはまさしく″神の手″ならぬ、猿の手でした」レビイす」 コクピット は断言した。「あらゆる可能性を提供する能力があるといったのは警報が狭い操縦室に響いた。デジタル表示が 0 【 0 0 を示し、自 偽りではなかったのです。それは、情報のみで構成された世界を私動操縦装置がプログラムの完了を告げていた。 曳航船は太陽から六十三億キロの闇の中に停止した。 の希望した状態の″多元宇宙″へシフトする機能を持っているとい 「この闇の向うに猿の手があります」レビイは展望窓の闇を見据え えるでしよう」 ていった。「そこまで私を運んで下さい。通信基地の機能を停止さ 「多元宇宙 : : : 」 コンプレック人 その後の処置はあなたの判断に 「コン。ヒ = ータ複合体は情報のみで構成された世界です。今、こうせるのは私にしかできません。 して完全に切り離されてみると実感としてわかります。そこで情報まかせる他ありません。私にはまだ最終的に判断がっかないので が補充され、あるいは加工され、消去された時、内部には別の世界す。あれは何なのか。人類の進化の可能性を摘み取る存在なのか、 が生じていゑ私がひとつの世界を願った時、猿の手はその願望に情報を喰う生物なのか、太陽系外へ進出する試練として神が置いた : ・。ただ、私の任務は、人類の情報を流出させた回路 応じて情報を切り捨てた。正確には、奪っていったのです」レビイものなのか : は息をついた。「エルゴード仮説を考えれば当然の結果でした。望を切断することだけです」 レビイの言葉に推されるように、私は曳航船を手動で発進させる み得る多くの世界からそれに近似した世界を選ぶ時、確率的に低工 ネルギー・レベルの世界に最も移行しやすいように、私が願望した作業に取りかかった。頼りはレーダー探知のみ。私は探知器のスイ 世界が選ばれる時、次第に情報量の少いレベルへ移行していった訳ッチを入れた。スクリーンに直ちに反応があった。 それは二万キロ先にあった。 です。 : : : 猿の手は私から情報管理官としてのすべてを奪っていっ た。われわれがコンビュータ複合体の中に共有していた情報量の豊 3 かさが、失ってはじめてわかった。人類は情報的にきわめて豊かな 状態にあったのです。私が″野心″をいだいたばかりに、その多く を失う結果になってしまった」 それはまさしく巨大な猿の手だった。想像していた以上に無気味 カ次の言葉で、 私にはレビイの落胆はまだ実感できなかった : 、 な形状をしていた。五百メートルを越える巨大な腕は、今、私が出 力を全開して噴射する小惑星曳航船に曳かれて、太陽系外へ移動し 彼の失ったものの価値が想像できたのだった。 つつあった。 : ここまでの航程で、幼年期の思い出ばかりに浸っていた。 が、夢の中で、どうしても情報管理官としての改造を受けて以後の操縦室から直接それは見えない。黒くねじくれた巨大な腕は、重 コクビット