き見ることなど、光学原理からいってとうる。 銀河旅行と特殊相対論 ( 十三頁より続く ) てい不可能なのだ。 それは、木星級あるいは木星よりも大き 目して、地球型惑星のデザインをすすめる 太陽と地球の関係を例にとってみよう。 な″巨大惑星を力学的な原理で検出しょ ことにしよう。 太陽の質量を一とすると、地球の質量は うという方法である。 だが、そのまえに、すでに発見されてい わずか〇・〇〇〇〇〇三にすぎない。 これがうまくいけば、間接的に地球型惑 る太陽系外惑星について説明しておかなけ また、太陽は自ら輝いているが、地球は星を推定することができる。 ればならない。 その太陽の光のごく一部を反射して光って 太陽系にも巨大な木星があったり、小型 それは、われわれをとても勇気づけるおいるたけたから、遠方から見たときの地球の地球や火星があったりする。 話しなのである。 の明るさというのはまったくわずかで、太 だから、木星級の惑星が発見されれば、 陽の輝きの二二億分の一よりもずっと小さその恒星系には木星級たけではなく、もっ なエネルギーしか反射していない。 と小型の地球型の惑星もあるのではないか すでに見つかっている巨大惑星 これでは、・、 ーナード星とかトリコンと と推理されるのである。 かいったごく近くの星から見たとしても、 木星級以上の巨大惑星といっても、惑星 太陽以外の恒星が惑星を伴っているかど とても地球の有無なんかわかるはずはなであるいじようその光はとても弱いから、 うかという疑間に答える、もっとも良い方 。近距離恒星界で眺めても太陽の光がや光学的に識別することはできない。 法は、望遠鏡でそれを発見することであ っとわかるていどのことなのだから、それ 可能なのは力学的な識別だけである。 る。 よりも何十億という比で弱い地球の反射光 その原理は図 3 ( 6 頁 ) のようなもので しかし、そのような方法を試みたという など、認められるはずがないのである。 ある。 天文学者の話は聞いたことがない。すくな それは、灯台のランプの周囲をぶんぶん 一般に母星の周囲を惑星が公転している くとも現代の第一線の学者は、そういう研まわっているハエや蚊を、沖合いの漁船か とき、その公転就道の中心は、母星の中心 究はしていない ら観測するよりももっとずっと困難なことではない。すこしだけはずれた個所であ なぜなら、理論的に不可能なことがはっ である。 る。 、きりしているからだ。 最近では、 Z のシンポジウムなど 恒星というのは宇宙空間に固定されてい な・せ理論的に不可能かというと、惑星と によって、力学的な徴小運動の検出法など るわけではなく、フワッと浮いている存在 いうのは母星にくらべて小さすぎ、その光が検討されていて、地球上からの太陽系外なので、惑星がその周囲を動けばそれにつ は弱すぎるものだからである。 惑星検出の可能性も決して否定できないと られて微妙に動揺する。 先月号で述べたように、母星ですら、な いわれているが、それにしても現状ではと 動かないのは両者の共通の重心である。 かなか発見できないのだから、まして、そても無理である。 厳密にいうと、母星も惑星も共通重心の の陰にかくれてしまう惑星を望遠鏡でのそ だがしかし、ここにひとつだけ方法があまわりを周回するのである。
「では、なぜポスはフーリエと一緒になって現作戦に反対しないの 宇宙船『オロモルフ号』の乗組員のだれが、このような接近不可 ですか ? 」 能な宇宙の境界を予想しただろうか 「ことはそれほど単純ではない 」コイズミは、デスクの横にあそれは、あらゆる種類の宇宙の理論をこえていた。文字どおり想 るコン。ヒュータのターミナルのランプを消した。「 フーリ = は像を絶する存在たった。しかし、それはたしかにそこに存在してい 明らかに何か新しい提案をして自分の立場を強化しようとしている らしいが、それが最善の策である可能性はすくない」 世紀末の地球人類の驕慢なる文明を象徴して虚空を飛翔する『オ 「ポスは最適解を発見されたのですか ? 」 ロモルフ号』にとって、それは許しがたい存在たった。 = イズミは眉をしかめた。そして、室内の感知機に視線をはしら正則性を唯一絶対のよりどころとする宇宙船『オ。モルフ号』 せながら言った。 にとって、″極点〃でないにもかかわらず、″微分不可能〃なその 「分析して欠陥を見出すのは容易だが、構成はむずかしい。まだ情 " 涯。の存在は、とうてい許容しえない奇怪な攻撃目標だったので 報が不足なのだよ、ガモフ : ある。 プリフニラル しかしガモフはその答を聞いていなか 0 た。ガモフはまるで舞踊その " 涯。は、横方向にだけは無限にひろが 0 ていた。その前面 家のように装置類の間をとびまわりはじめていた。彼は叫んた。 には、幾百億の星々と星雲とが、光りかがやく存在をきそってい 「ポス、たいへんです。室温が異常に上昇しはじめました。このま た。超新星が輝き、クエーサーが異様なエネルギーを放っていた。 ますすむと熔解してしまいます ! 」 『オロモルフ号』が航跡を描いてきたその世界は、まさに、光と自 ハ / ゲット 「予期されていたことだ。作戦本部が気づいていないはずはない」由との饗宴だった。 コイズミは重い足どりで居室を出、狂ったようなガモフの動きを だが、あらゆるエネルギーと運動とは、その″時空の涯″にあっ 一臀すると、装置類の間隙を大股で歩きだした。 て終端されていた。 その歩きかたは、生身の人間とアンドロイドとの稀有な混血児で その先に行くことは、たとえ光線のひとつひとつが不退転の意志 あるジロウ・コイズミの精神が、なにものかに感応しはじめたことをもっていたとしても、不可能だっただろう。 を物語っていた。 まさにそれは時間と空間の終点だったのである。 広い研究室のあらゆる無機物が、コイズミを中心に動きだしたよ あらゆる種類のエネルギーと運動とは、その″涯の直前で前進 うにみえた。 をあきらめ、ひきかえしていた。 ただ、その万物のなかで唯一、宇宙船『オロモルフ号』のみが、 太陽系をはなれること、五〇〇億光年の世界の涯ーーーそこは文字諦観をもっていないようにみえた。 どおり涯だった。 けしつぶのようにしか見えない『オロモルフ号』は、この数百時 ・フリフェラル シ / セシス こ 0 オロモルフィック 6
のいずれもがそうでした。ところが、さいごの″漸近級数法″だ か、わたしは知りません。しかしとにかく、この数群によって、漸 けはちがっていました。級数が無限に発散することは素直にみと近級数は最良の近似度をもっことができたのです。そのあとは、皆 め、ただそのかわり、項を有限でうちきって″近似的に″問題を解さんで承知のとおり、パラメータであるテンソルのビー人を極限に 決しようとしたわけです。しかし、はじめの段階では、項数を過大近づけるだけのことだったのですから : : : 」 サル・ポイント にしてしまったため、鞍部点ができすぎ、近似度が大幅に劣化 し、成功しなかったのです。成功の秘密は、ガポール部長のご決断 ジロウ・コイズミは、それだけ言うと、ガポール部長のそばをは テトラクテュス によって、項数を四元数に限定したことにありました。漸近級数となれ、会場の一角にあるドーム状のスクリーンの下に歩んだ。近く いうのは、項数を増加させると、かえって近似度が劣化してしまうに、・ケラーがいて、ほほえみかけた。 ものなのです : : : 」 そのスクリーンには、宇宙の全景が映っていた。 わずかな人たちがうなすいた。 その全景のどこにも、もはや″時空の涯″の不吉な徴分不能領域 とばりの向こうで、ダランベルト船長のうなずくのが見えた。 はみつけられなかった。 会場の後方で、病的な眼をした・・フーリエがこぶしをわな″時空の涯″が存在していたその方向に、いま見えているのは、人 なかせながら退場してゆくのが見えた。 類を生んだ銀河系星雲の華麗な光の渦だった。 ライ・ハルのポール・トレビア・ペイトマンが、よく通る声で質問 ケラーがスクリーンを操作して、その七彩の光の渦を拡大した。 した。 渦のひとつがクロ 1 ズアツ。フされた。 「鞍部点はなぜできたのですか ? 」 オリオンの腕だった。 コイズミは堅い口調で答えた。 さらにその中に半径一〇〇光年の光世紀世界の輝きがみえた。そ サドル・ポイント 「鞍部点は、積分によって漸近の項を求めるときに必要だったのしてさらに、太陽がクローズアップされ、″地球″がその姿をみせた。 オロモルフィック です」 宇宙船『オロモルフ号』は、その地球をめざして、正則可能性に べイトマンはもうひとっ質問した。 帰した宇宙を疾駆していた。 だが、そこにある″地球″がはたして、勝利に驕る『オロモルフ 「四元数はなぜ選ばれたのですか ? 」 コイズミは・フール ( ーヴ = や ( ン・サイコらのようすをうかがっ号』を生んだ世界なのかどうかーー・それはだれにもわからないこと 。こっこ 0 てから、慎重に答えた。 テトラクテュス 「四元数は、人類最古の数学主義者たちの集団。ヒタゴラス学派にお ける聖なる数群でした。『オロモルフ号』のコン。ヒュータがこの数 群をはじきだした理由が、ビタゴラス学派と関係するものかどう 7 このシリーズは応用数学の解説ではないので、数学的厳密性はま幻 ったく無視していることをおことわりしておきます。ーー作者
AO FO GO KO MO M 5 〔輻射等級〕 = 〔実視絶対等級〕 + 〔輻射補正〕 輻射補正 主系列星の場合 太陽 かであろう。 の発見」である。 私自身も原著に対するあこがれはと 太陽系の内部でその夢を果たすことはー てもつよ い。ただ、私の場合、原著の ーまだあきらめる必要よよ、 。オしカーーー高等生 扱い方は、とても工学的である。 物については不可能に近いことがわかって 」こ。 思索し、理解するよりも、設計し加 工するほうに興味がとんでしまう。 とすれば、つぎの探索の手は他の恒星の たとえば、太陽系以外の恒星に地球世界に対してのばさなければならない。 のような惑星が存在するだろうか : 宇宙生命は地球型とばかりはかぎらない といった問題についても、オリジナル から、恒星の近くを探さなければいけない 法をもとに宇宙の中の人類の存在意義を という理由はないし、またおなじ恒星 る思索するよりも ( むろんあれこれと考の周辺といっても惑星にたけ注目すればい 級め いというものでもない。 求えはするのたが ) 、地球型惑星の。 ( ラ 8 を メータを計算し、地球型惑星をの これはカール・セイガンが一一一口うとおりで 実等舞台として設計するにはどういうグラある。 6 対射 しかし、さしあたっては、現在の科学常 色輻フを作成したら便利かなあーーーといっ た方面に頭がはたらきはじめてとまら識で類推のできる惑星ーーとくに地球型の 級ないのである。 惑星ーーーを探ってみるのが得策であろう。 なにしろ、この地球に生物が満ちあふれ 2 視で、その結果を次節からご報告しょ 実 ているーーーという実例があるからた。 光世紀におけるハビタブル・ゾーン では、何が地球型の惑星の条件なのだろ デザイン 図 ( 生命居住可能域 ) の設計問題であうか : る。 この問に対するこれまでの見解の多く よ、 太陽型の恒星の周辺の惑星ということ 、、こっこ。 太陽系外惑星の見つけ方 だから、オズマ計画などにおいても、ア ンテナが向けられたのは太陽に類似した近 二〇世紀の後半がおしつまってもな距離星である″エリダヌス座イプシロン お、人類が果たすことのできないでい 星 ~ と " くじら座タウ星。た 0 たのであ る大きな″夢″のひとつは、「宇宙人る 9 ・
ラニは、しばらく黙って彼を見つめていたが、いい争っても無駄の解読にこれほど熟達した人間はほかにいないというだけの理由に だと判断した。 せよ ) 、永久に越えられることのないような学問の金字塔だった。 ポールがこのライフワークを始めたとき、二人はどちらも若かっ 「ドラヴィンドラにいいます」と彼女はいった。「それからジャヤ た。ラ 1 ジャシンゲは、当時考古学科の碑文学副手だった彼が、黄 にもーーーあなたを抱えおろすことになるといけませんから」 「よかろうーーもっとも、そのためならドラヴィンドラ一人でも十色い漆喰の上の解読不能に近い痕跡をたどって、頭上の岩の上の美 女たちに捧げた詩を翻訳しているとき、自分はまさにこの地点に立 分だと思うがね」 ラニは、誇らしさと嬉しさの入り混った、こぼれるような微笑をつていたことを思いだした。これだけの年代を隔てた今も、詩文は 見せた。このカップルは国からの割当ての中で最も運のよかった例なお人の心の琴線に触れるものがあった。 だなと、彼はやさしさをこめて考えた。そして、彼らのこの二年間 の社会奉仕が、自分にとってと同じくらいに彼らにも楽しかったの 私は親衛隊長ティッサ。 だとよいがと思った。当節では、個人専用の奉仕者などというもの 雌鹿の眠をした乙女たちに会いに五十リーグを来た。 は特権中の特権で、抜群の功績のあった者だけに与えられるものだ だが、彼女らは話そうとしない。 った。ラージャシンゲの知るかぎりでは、三人も奉仕者を与えられ お前たちに心はないのか ? ている私人は、ほかにはいなかったのである。 体力をたくわえておくために、彼は庭園の中を太陽動力三輪車に 汝らはここに、千年を留まれかし。 乗っていった。ドラヴィンドラとジャヤは、その方が速いといっ 神々の王が月に描いた うさぎのごとく。私はトゥパラマの寺院からきた て、歩く方を選んだ ( そのとおりだったが、彼らは近道をとること ができたのだ ) 。彼は何度も休んで一息いれながら、ゆっくりゆを 僧マヒンダ。 くり登って、ついに〈鏡の壁〉が″岩″の壁面に沿って走っている その願望は、半ば実現し、半ばかなえられなかった。岩の女性た 〈下の廊下〉の通路に達した。 アフリカ諸国の一つから来た一人の若い考古学者が、例によってちは、聖職者の予想した時間の二倍にもわたってここに残り、彼の 物見高い観光客たちに囲まれながら、強力な斜光の助けを借りて、夢想だにしなかった時代にまで生きつづけた。だが、何人が残った 壁に刻まれた文字を調べていた。ラージャシンゲは、新発見ができというのだ ! 刻文のいくつかは″五百人の黄金の肌の乙女たち″ る可能性はほとんどないことを、彼女に注意してやりたい気持だっと述べているのだ。これにはかなりな詩的誇張があるとしても、初 めのフレスコ画のうち、時間や人間の憎悪による破壊を免れたもの射 こ。ポール・サラスは二十年にわたって壁面をしらみつぶしに調べ、 三巻の『ャッカガラの掻き字』は ( 仮に古代タブロ・ハニー語の刻文が、その十分の一もなかったことは明らかなのだ。だが、残された
ことがある。 その代表が″はくちょう座六一番星。や 8 の質い星 解へびつかい座七 0 番星である。 星と強惑 実例をお眼にかけよう。 木期が巨 図 4 から 6 までがそれである。 周説の と、つ星 図 4 の ' ハーナード星は固有運動が大きい 径い ことで有名 ( 全天中最大 ) だが、その動き 半と一 道る ナを何十年にもわたって観測していたとこ 軌あ ろ、惑星が周回しているとしか思えない動 っ 4 きをしめすことがはっきりしてきたのだ。 図 その動きをフーリエ解析という数学的手 法で解析したのが図ので、それからの判 断によって、⑤のように、一個あるいは一一 その動きかたは、惑星が小さく、母星が観測した太陽の中心位置は、十二年を周期個の木星級の巨大惑星の存在が推測されて 大きい場合にはほんのわすかであるが、巨として視角〇・〇〇五秒ほど動くことにな 大惑星があると、ある場合には地球の望遠る。 イギリスのアラン・ポンドらの『ダイダ 鏡でも観測できるていどの大きさになる。 この動きを識別するのはちょっとたいへ ロス計画』で、目的地にこの恒星を想定し だから、比較的近距離の恒星の位置を毎んだが、しかしその気になれば不可能な値ているのは、こういう天文学的事実がある 年たんねんに観測していると、その微妙なではないのである。 からである。 変動から、巨大惑星の存在が想定されるよ だから、もっと惑星の質量が大きいと 図 5 と 6 は、二重星の軌道観測結果か うなことがでてくるのだ。 か、母星の質量が小さいとかすれば、 ( そら、こまかな″うねり″を発見し、それか ひとつのわかりやすい例として太陽系のして距離が近ければ ) 惑星判別の可能性は ら巨大惑星を推定した例である。 巨大惑星である″木星″をバ 1 ナード星か かなり大きくなってくるのだ。 軌道半径に″約〃と記されているのは、私 ら探索できないかーーーを考えてみよう。 そしてその代表的な恒星系が″バ が近似計算をして出した値だからである。 木星の公転周期は一一・八六年であり、 ド星″である。 ″はくちょう座六一番星″のほうは相当確 その軌道半径は五・二である。また太 また、二重星の場合は、その周期や軌道実視されている。 陽の質量との比は約〇・〇〇〇九五五であに興味がもたれるので、とくにくわしい観 この星系はもっとも初期に近距離星であ る。 測がなされる。そこでニ重星軌道の微妙なることが確定した星系で、研究者の名をと これから計算すると、・ハーナード星から うねりから、巨大惑星の存在が推定できる って″ペッセル星〃と呼ばれることがある。 ( 0. 田 ) 2 0 コ O. 2 .0.3 0.4 0.5 1 / 年 (a ) 円 50 ~ 74 年の微小運動の フーリエ解析結果 ( ヴァン・ド・カンプの測定 ) 4.7 AU 26 年 2.8AU に年 4.5 AU 25 年
たとはいえ、空の征服が実は宇宙の征服のささやかな序曲にすぎなす。ところが、最初の人工衛星が打上げられたまさにその時代に、 一人の大胆なロシアの工学者が、ロケットを時代遅れにするような かったことは、今や明白であります。 ー丿 . 物アルッターノフの考えを だが、いま我々は根本的な課題、あらゆる未来の進歩の前に立ち方式を考えだしたのであります。ュ ふさがる障害に直面しています。何世代にもわたる研究が、ケッ真剣に検討する者が出るまでには、何年もかかりました。そして、 トを、これまでに考案された最も信頼性のある推進方式にしたとは我々の技術が彼の構想に追いつくには、一一世紀を要したのです」 いえーーー」 この記録を再生するたびに感ずることだったが、ラージャシンゲ にはモーガンがここまできて急に生き生きとするように思えた。ど ( 「自転車を忘れていやせんか ? 」とサラスが呟いた ) うしてかは明らかだった。今や彼は自分自身の領域に立っており、 「ーー - ー宇宙船は今もはなはだしい低効率であります。そればかり か、環境への影響には恐るべきものがあります。接近回廊を管制しもはや不案内な専門技術の分野からの知識を受けうりしているので ようとする多大の努力にもかかわらず、発進と再突入時の騒音は、 はなかったのだ。そしてラージャシンゲは、さまざまな留保や危惧 幾百万の人々を悩ませております。上層大気に放出される排気生成はありながらも、そうした熱意の幾分かに共感を感ぜずにはいられ 物は気候変化を誘発し、それは極めて重大な結果を招くかもしれま なかった。それは、この頃では自分の生活にめったに入りこんでこ せん。二〇年代における紫外線の異常増加による皮膚癌の危機、そないような資質なのだった。 してオゾン層の修復に要した化学物質の天文学的経費は、誰しも記「いつでも晴れた夜に外へ出てみれば」とモーガンは続けた。「我 億に新しいところであります。 我の時代の日常的な驚異が眠に人ることでしようーーーそれは、昇り しかし、今世紀の終りにおける輸送量の増加を推定するならば、 も沈みもせず、空にじっと静止している星々です。我々はーーーそし 地球から軌道への輸送総トン数は五十パーセント近く増加するにちて我々の親たちもーーーそしてまたその親たちもーー赤道上を地球の がいないことがわかります。我々の生活様式にーーおそらく我々の自転と同じ速さで動き、そのため同じ場所の上に永遠に止まってい 生存そのものにーーー耐えがたい負担をおよ・ほすことなしには、これる同期衛星や宇宙ステーションを、長く見慣れてきました。 アルッター / フが抱いた疑問には、真の天才が示す子供のような を達成することは不可能です。しかも、ロケット技術者には、手の 下しようがありません。彼らは、物理学の法則が定める性能の絶対閃きがありました。たたの利ロな男なら、これは決して思いっかな かったでしようーーあるいは、荒唐無稽なこととして即座に捨てて 的限界に、ほぼ到達してしまったのです。 これに代るべき道があるでしようか ? 人間は何世紀にもわたっしまったことでしよう。 て、反重力あるいは″スペースドライプ〃を夢みてきました。そう天体力学の法則によって物体が空に静止していられるものなら、 いうものが可能たという徴かな手がかりでも発見した者は、まだ誰ケープルを地上へ垂らしーー・地球と宇宙空間とを結ぶレベーター もいません。今日、我々は、それが夢物語にすぎないと信じていまとすることはできないでしようか ? に 5
の得にもならないと考えているのである。そうした〈ンゼルの仕方がない。どうせそのときには、対象となる原住者は二名どころ 信念を口先だけでくつがえそうとしても現実には不可能であり、無か、うんとたくさんいるはずなのだ。それからだって遅れは取り返 2 2 用の摩擦や反目を生み出すのがおちであることを悟っている彼は、 せるに違いないし、取り返さなければならないのである。それでい だから何もいわなかった。司政官とその配下のロポットたちの実力いではないか・・ーーと、みずからにいい聞かせていたのであった。 を見せるつもりなら、もっと適当な、自然に到来するチャンスを待しかし。 たなければならない。それが彼がいつの間にか身につけた流儀なの そのきっかけは、思いのほか早くやって来たのだ。 であった。 というのは、そのとき、一体のロポットがシェドに近づいて そうはいうものの、ヘンゼル CQ のためにいっておくならば、ヤ来て、伝えたからである。 トウは完全に疎外されているのではなかった。船の原住者たちの担「連絡します。ふたりの原住者が、もっと魚が欲しいと要求してい 当に加えてもらえないとしても、彼は間違いなくこれから交渉団のます」 一員になる人間なのである。そのため、交渉の計画や準備のための「 : ・ 船上の団員会議にはいつも出席を求められたし、その会議がシェド 振り返ったシェド no に、ロポットはつづけた。「ご命令に従っ の報告中心のものであることも、すくなくなかった。彼が、原て、私は自分で返答はしませんでした。そのため原住者たちは、な 住者たちと直接接触を持ったわけでもないのに今のように何かと知るだけ早く、返答出来る者に会わせろといっています」 識を得ていたのは、そのためなのである。 横で聞いているヤトウには、なぜロポットがそんないいかたをす もちろん、彼は、原住者との接触を避けているのではない。なろるのか、分り過ぎるほどであった。シ = ド ( ではなく、他の誰 うことならば少しでも早く自分自身とそれにとで、原住者たちかかも知れないが ) は、原住者たちと直接折衝出来そうなあらゆる と話し合い、近くから観察してみたかった。それが当然の好奇心と場面を逃がしたくないので、面倒を見る係のロポットに、 1 」、つ - い、←ノ いうものであり、ことによれば自分たちだけしか気がっかなかった メッセンジャ 1 的な役目をさせているのである。こういう用の中に ようなことを発見出来るかも知れないとの、ひそかな自負もあるか は、ロポット自身で充分処理可能なものも多いだろうが、あえてそ らだ。・、 カ : : : 彼は、ヘンゼルやシ = ド mo に頼み込んでそうさの能力を使わせないようにしているのだ。ロポットの使用法として せてもらうことはもとより、自分がそれを望んでいるという態度をは拙劣な、無駄の多いやりかたである。それに、ある程度以上のレ あからさまに見せることもしないよう、努めて来たのだ。かれらのベルのロポットにとっては、しよっちゅうこんな制限された使われ 作業に割り込もうとして妙な警戒心を持たれるのは馬鹿げているかたをされていることで、欲求不満に似た感覚を抱きはじめる場合 し、いすれチャンスが到来するだろうからである。よしんば目的地も珍らしくないのだ。そして時として、そういう欲求不満を持った に着くまでついに機会が得られなかったとしても、それならそれでロポットが、次に全能力を発揮しなければならぬ仕事を与えられた
べイトマンは緊張して答えた。 「フアドル・ザビエルが不幸な死にかたをしたいま、問題解決のカ ギをにぎる″チェザロ・ロポット″を操作することのできるのは、 「一種類のみです。発散級数の発散を強引におさえて " 総和。を可 考古数学者のドクター しくつもの種類が知られていますが、このロポ ・コイズミと、現代数学を専攻するわたくし能にする方法には、、 と、この二人しかおりません」 ットが地球からたずさえてきたのは、″チェザロの総和法″一種類 フ 1 リエが不快そうにせきばらいをした。 のみです。したがってわれわれは、ただひとつの方法に賭けなけれ ばなりません」 ・ヘイトマンは無視してつづけた。 この説明に対して案の定、・・フーリエがかみついた。 「ゲ・ゴルヒ構成理論部長は、わたしとコイズミとに、その操作を 依頼されました。わたしは了承しました。コイズミくんも協力を約「総和法はたしかに一法だが、あの″時空の涯〃が″チェザロの総 しました。しかし、真に実行にうっすためには、スタッフ会議を介和法〃を受け入れるものかどうか、まったく証明がない。もし、ち がっていたらどうする」 して、ダランベルト船長の命令をひき出していただかなければなり ません・ : : ・」 フー丿工の病的な黄色い顔は、くやしさでみにくくゆがんでい 「作戦の要点を ! 」 「それについては若干の検討をしてみましたがーー」・ヘイトマンは 情報総合学者のアーベルが、小賢しげな態度で、うながした。 口調を変えずに答えた。 「ーーーすくなくとも逆の効果はないと判断 べイトマンは一瞬、眉間にしわをよせたが、気をとりなおして、 できます」 話した。 「″チェザロ 「逆の効果とは卩」 ロポット″はここにあるとおりのものですがー・ーー」 べイトマンは後方に置かれている仏像のような金色の小さなロポッ 「もし、″チェザロの総和可能化法″が失敗におわったとしても、 トを指さした。ロポットは小さく一礼した。「 このロポットをそのために『オロモルフ号』が被害をこうむることはない 工の提案された″収東級数化法″と決 探索して得た情報は、このロポットが、″総和可能化法んとでも呼うことです。その点はフーリ ぶ・ヘき作戦を構成する能力をもっているということでした」 定的にちがっています」 「発散級数を総和してしまうのかね ? 」 「あれはちがう ! 」フーリエはしわがれた声で絶叫した。「ーーあ コールドウエルが蒼白い小柄な身体をのりだした。 れは構成理論部の非協力が原因たったのだ。窮理学部に責任はな 「そうだ」 。まして作戦自体がわるかったわけではない ! 」 一同、眉をしかめた。 べイトマンはうなずいた。 アー・ヘルがハ 1 ル司令室長をうかがった。 「方法は一種類なのかね ? 」 ハール室長は言った。 ハール室長が、核心にふれた質問をした。 ネクシャ
0 惑星から見える母星の見かけの直径 ( 地球からの太陽直径を 1 とする ) 惑星から見える母星の円板面の見かけのエネルギー密度 ( 地球からの太陽面を 1 とする ) 主系列星の場合 見かけの直径 ( 広 / 広 ) 見かけのエネルギー密度 (bx/b@) 0 . 0 田 0 . 00 田 間が立って歩ける惑星もあるし、水星や木 み星のように、宇宙服を着たってとても降り 立っ気になれないような惑星もある。 0 グ る たから、どの恒星にも、①から⑤までの 求条件を満たす惑星がありうるだろうし、ま た満たさない惑星もたくさんあるたろう。 直 安すなわち①から⑤までの条件は、。ヒック 度アップしたり計算したりする性質のもので 密はなく、空想したり仮定したり設定したり ギする性質の条件である。 、 ~ 楽観的にすぎる仮定 ( たとえば、どの惑 工星もみんな地球と同じ大気と重力をもって 級 光いた などという ) をしさえしなけれ ば、どう考えるにせよ、それはを書く 可 視 実と人の自由である。 対直だから、問題は、⑥項だけである。 けこれは、母星の性質が与えられると、必 か然的に、その条件を満たす惑星のパラメー のタもまたきまってしまう という性格の 星 条項である。 る パラメータなどというとむず・かしくきこ め えるが、要するに地球型惑星の母星からの 距離や公転周期 ( その惑星の一年 ) を求め カ 星ようということである。 型そして、この第⑥項が満足されると、必 一球然的に地表や大気など第②、③項の条件も 満足される可能性が大きいのである。 だから、本章では、この第⑥項にだけ着 図 ( 九十八頁に続く ) に 3