十 0 : 03 多少なりとも数式を用いないと、エネル ( または班 ) という四種類のパラメ ギーやカ学的運動形態の本質をつかまえる 8 ータである。 皓量え これだけわかれば、異星の地球型生命圏ことができないからた。 ー質巨 また、グラフを用いないと、一結果を利用 星との における生活環境というものが、われわれ 木期 2 カかなしていただくことができないからだ。 のそれとどのくらいちがうか むろん、延々と文章で記述すれば、以下 周り明白になり、異星描写にそうとうな迫真 のことも数式なしで説明することは不可能 径 0 力がついてくるにちがいない そしてこれ以上のことは、読者のたくまではない。 , - 几 - カ しかしページ数は何十倍にもなってしま しい想像力と、本連載以外からの知識によ うだろう。 びって ' 捻出さるべきものである 9 へ そして、何とはなしに理解できたような それではいよいよ、① ~ ③をもとにして気にはなるけれども、それを使おうと思っ 図 ④ ~ ⑩を求める作業にはいることにしょてもどう使ったらいいのかさつばりわから : そういうような文章になってしま は、次回かそのまた次か・ , : : で触れてみる うだろう。 と書いたところで、私の筆先はどうもシ ことにしたい。 じつをいうと、このことが、世の多くの リンクしてしまったようだ。 とにかく式①とこの三つの性質とは、す ″わかりやすい科学解説書″に対して私が というのは、この作業を説明するために ぐにきまってしまうので、問題はないだろ いだいている不満なのだ。 は、どうしても簡単な数式とグラフが必要 とにかく、ここでは万難を排して数式で つぎに、求めるべきもの ( 求めることのだからである。 受験勉強の複雑怪奇な数学問題と、明治説明する。どうかポイしないでください。 できるもの ) を挙げてみよう ただし、数式による説明のところはとば 以来の富国強兵策にもとづく実利本位の強 それは して読んでもかまわない。 制勉強によって、読者の間にも根強い ④その惑星の軌道半径、 ( すなわち母星と 数学への反感が満ちあふれていることを私 結果たけを利用するのだったら、おわり の間の距離 ( ) は知っている。 のほうの″ふたつのグラフ″で十分なよう ⑩・ての惑星の公転周期、すなわちその惑 したがって、数式がひとつでもあると、 に工夫するつもりである。 星の一年の長さ ( な ) とたんにポイされそうな気がしてしまうの だから、そのようなグラフ ( 図と昭 ) ◎その惑星から母星を眺めたときの視直 ( 、頁 ) があるのだ い、ラことた しかし、ここのところだけはどうしようけ記億にとどめておいていただければ、こ ⑩その惑星で眺める母星の円盤の輝きの もない のッセイは最終的にはお役に立てる 強さ、または地表の可視光の明るさ 円 35 40 円 20 円 25 30 (a ) 刪 4 ~ 42 年の微小運動 ( リウイルとホルムバーグの 分析 / 現代天文学事典 ) 約 3.9A リ 3 年
「ヴェンデルおじさん、ヴェンデルおじさん ! この大きなシャポないものがいくつかあるんだ。いやまったくそうなんだよ ! 真理 ン玉を見てよ ! なんてきれいな色をしているんだろう ! こんなを知っている者は沈黙し、教師は嘘をつかざるを得ない。そうでも 冫しったい、・ 色ま、、 とうしてできるの ? 」と私の小さな息子が窓からしないと、そのときの流行によってーー十字架にかけられたり、焼 下の庭にむかって叫んだ。息子は庭へむかって色とりどりのシャポき殺されたり、漫画雑誌にのせられたりするんだよ。ミクローゲンー ン玉を飛ばせていたのである。 ミクローゲン ! 」 おじのヴェンデルは私と並んで、高い木々のおとす影の中におか このミクローゲンという言葉はおじが勝手につぶやいたものだっ れた椅子に腰をかけていた。私たちの吸っているシガーの香りが美た。彼がよくこの名前をつぶやくのを聞いていなかったなら、私に しい夏の夕暮の浄らかで、かぐわしい空気を一段とすてきなものに はなんのことか分らなかっただろうが、それは彼が最近発明したも していた。 のたった。 おじのヴェンデルは、 いままでたくさんの発明をしていた。い 「フン ! 」とおじは私のほうをむくと、うなるような口調で言っ 「フン、説明してやれよー フン ! 君がどんな説明をするかや、発明以外はなにもしていなかったと言ったほうがよい。彼の住 かんしよう 知りたいもんだ。光が薄い板の表面にあたったとき生じる干渉色だ居はなかば錬金術師の工房、なかば超現代式の物理学研究室さなが とでも言うんだろう、ええ ? 分っているよ。異った波長や条光はらの施設が完備した実験室であり、彼からそのなかへ入れてもらえ 合致しないとかなんとかねーーーあの子には分るかな フン ? 」 たなら、特別の好意を示されたと思ってよかった。というのも、彼 「うん」とちょっと閉ロした私は答えた。「もちろん、あの子にはは発見したものをすべて秘密にしていたからだ。しかしときたま仲 まだ物理的説明は無理だしーーそんなものは全然必要じゃない。説良く対坐しているときに、し 、くつかの秘密の上にかけたヴェ 1 ルの 明というものは、いわば相対的なもので、質問者の見解にあわせて端をそっとめくって見せてくれた。そうしたとき私は彼の知識の豊 やるべきものなんだ。つまり新しい事実をある馴れている思考過程かさに驚いたが、科学的方法とその到達点や文化の進歩がどのよう へ組み込み、馴れている観念に結びつけてやれば、それでいいのに発展していくかということに関する彼の洞察の深さにはさらに驚 さ。 だって数理物理学の公式は息子の現在の思考過程にはまた嘆させられた。しかし彼にその見解と発見を公開させることはどう 無理だよーーー」 しても出来なかった。彼に言わせれば、それらの発見は彼の理論が 「かなりもっともなことを言うね、フン ! 」とおじのヴェンデルは 分らなければ理解出来ぬものだったからである。私のほうは彼が無 うなずいて、「かなり本当のところをついたぜ。君にはこの現象を機物質を使って人工的な方法で蛋白をこしらえるのを見たことがあ 説明したり、馴れた観念に結びつけることは出来ない , ーー共通点がった。おそらくわれわれの社会事情を全面的に変革させるに足る画 全然ないからな ! 問題はまさにこの点にあるんた ! 子供の見聞期的なこの発見を公開するように、いやすくなくとも利用するよう 6 おとな はーー・成人のと全然違うんだ。この世にはどうしても結びつけられに私がすすめるたびに彼は、「自分を笑いものにする気なんか全然
すはずはない。ただわたしは、あそこのスタッフ会議とやらが気に これまでに二度、三度、タイミングを逸しているので、今度こそ くわんのですよ。われわれがせつかく良い情報を提供しても、スタ という気持ちがつよいからだ。 ッフの連中がそれをゆがめて解釈し、ダランベルト船長への報告の しかし、各部長への根回しを省略するわけにはいかない 道をとざすかもしれん。とくに、あのジロウ・コイズミという混血彼はしん・ほうづよく説明してまわることにした。 ーラインである。 は油断がならん。何を考えているのかよくわからんが、やたらに各まずはじめは、情報処理部長の・・エく 部に出没して意見をふりまいている′ 。、ール室長はかなり重んじて どこといって特色のない男だが、油断はきんもつで、もちあげて いるようだが : : : 」 おかなければならない。 「たしかに : 「とにかく、まっさきにご報告にあがりました」 行者姿のハン・サイコウは、・フールハーヴェのみにくくむき出さ コイズミは内容の説明よりも順序のほうを強調した。エ・ハーライ れた白い歯にむかって、陰気に笑いながら、うなずいた。 ンはせわしげにうなずいた。 「うむうむ、そうか。よしわかった。ファイルしておこう。ところ で、きみのところの部長はちかごろ、やけに忙しそうだが、なにか そのとき、秘書が、新しい来客をつげた。 あるのかね : 「ドクター ・コイズミが、おめにかかりたいとのことです」 コイズミはガポール部長が多忙である理由を丁重に説明して、ひ プールハーヴェとハン・サイコウは、どきりとしたように顔を見 0 さがった。 合わせた。 二番めは事務部長のマイケル・フェイ・ハーである。 ゆっくりと唾液をのみこんでから、予言工学部長のプールハーヴ フェイノ くーまガポール部長と仲がわるいうえ、哨戒艇の借用につ 工は秘書に命じた。 「多忙だからあとにしていただくように。ただし、伝言でもあれいてはかなりご機嫌を損じているはずなので、コイズミは思いきり 下手にでた。 ば、うけたまわっておきなさい」 秘書は最敬礼して出てゆき、そして、すぐにもどってきた。その「事務部長のおかげで、わたくしたちも安心して戦闘技術をふるう ことができます : : : 」 カかかえられていた。 腕には、一枚のプレート : そのプレートには、四つの項の″漸近級数がしめされていた。 フェイノを く 1 ようさんくさそうにコイズミの顔に視線を這わせてい たが、やがて、大げさにうなずいた。 「困ったことがあったら、なんでも言ってきなさい。相談に乗りま 9 あうん しよう。″阿伝の呼吸″が大切ですからな : : : 」 そして、コイズミの提案書を書類係に回送した。事務規則との矛 正直にいって、ジロウ・コイズミはかなり焦っていた。 よ 2 日
は、ごく低いと思惟します。ヘンゼルのいうようになるために 「データが不足です。データが不足の場合には、信頼出来るデータ は、原住者側にもこちら側にもそれ相当の前提が必要であります。が充分にそろうまで、推測を控えるべきです」 この前提条件は多岐にわたるのでーー」 「それは、ぼくのせりふではなかったかね ? 」 「それはいし 、よ。分っている」 「そうです。しかし私もそう記憶を植えつけられました」 「承知しました。前提条件は省略します。そして、それらの前提条「分ったよ」 彼は頷いた。「とにかく、タガノヤに着くまでは、そういうこと 件抜きに結論を出すのは、飛躍です」 にしよう。事実をいくつもっかんでから、先入観なしに状況を把握 「そういうことだろうな。・ほくも概して同意見だ」 おやすみ」 「それなら、どうして会議のときに反論なさらなかったのですかすることだ。 「おやすみなさい」 「はすわったままで答え、あとはもう身じろぎもしなくなる。 「きみは会議のとぎ、なぜ黙っていた ? 」 彼もひとっ吐息をついて、横になった。 「私はオ・フザー・ハーとして出席を許されているだけです。発言権が ありません」 っ 0 「だろう ? あの会議では、実質的には・ほくもご同様なのさ。へた に発言しようものなら、本題と関係のないところで確執が生じる。 予定よりも少し早く : : : 七日めの早朝に最初の島影が見えた。 はっきりとはいわれていないけれども、だから・ほくもオ・フザー ( 以下次号 ) でいなければならないのさ。毒にも薬にもならないことをいうだけ の、本質的にはオ・フザー・ハーなんだ。 , ーー当面はね」 「それはどういうことでしようか。よく分りません」 O は食いさがる。「それに、当面というのは、いつまででしょ 「説明するのは厄介だ、 coO 」 彼は手を振った。「それらの問題は、事態がもっと進行してか ら、その都度説明することにするよ」 彼は、服を着替えはじめた。「いずれにしろ、われわれはまだ、 原住者に対して先入観を抱くべきではない、ということなんだろう な」 2 引
いう説に矛盾することを強調し、もしほかの世爨か存在しないなとはサポニール人にとっては、いずれにせよ、命にかかわることだ なったのを見たとき、もう自分を押えられず、飛び出して ら、ルデイプディという巨人よ、、 どこに立ったのかと尋った ねた。旧派の学者たちは学識を誇っていたのにもかかわらず、この発言する許しを乞うた。 理由を説明することが出来ず、もし第三のテーゼがうさん臭く思わ「ハ力な真似はよせよ」とヴェンデルおじが私に飛びついて低い声 れなかったなら、グラグリは最初の二つのテーゼでも勝っていただで言った。「喋ったらたいへんなめに会うぞ ! やつらには分りつ ろう。しかしこの第三のテ 1 ゼが政治的に評判が悪いことは、あまこないんだ ! ひどいめに会うそ。じっとしていたまえ ! 」 りにも明白で、グラグリの友人たちでさえ、このテーゼでは彼を援だが私はひるまずに話し始めた。 助しようとはしなかった。なぜならほかに世界が存在するという主「みなさん ! 私はみなさんの世界の由来を本当に知っております 張は反国家的であり反民族的なものと見なされていたのである。しので、どうか説明させて下さい」 「なんだ ? どうしてなんだ ? み かしグラグリはどうしても自説を撤回しようとしなかったので、ア ここで一座は駈然となった。 カデミーの大半が彼の敵になって、なかでもひどく敵意を抱いた連なさんの世界だって ? ひょっとしたらお前は別の世界を知ってい おい、聞けよ、あの未開人、野蛮人のや 中は、はやくも彼がやわらかくなるまで煮るために、グリセリンのるとでも言うのかい ? 鍋をひつばってきた。 っ ? やつは世界の成りたちについて知っているんたとさ」 私はこのナンセンスな賛否両論の一部始終を聞かされたが、せが「世界がどのようにして成立したかということは」と私は声をはり れが約六秒前にストローで庭に面した窓から吹き出したシャポン玉あげてつづけた。「あなたがたも私も誰も分りません。というのも あなたがた、考かる人々も私たち二人同様、無限の形態をとる無限 の上にいることを確信していたから、この二重に間違った論争が、 まっとうな考え方をする人物の命にかかわることにーー煮られるこの精神のほんの微光のようなものにすぎないからです。だがわれわ 梶尾真治 地球はプレイン・ヨーグルト 甘いラブ・ロマンスから奇想天外なユーモアまで、達者な筆が展 開する世界ー・久々に登場した本格短篇作家の作品集。 好評発売中 ! 三ニ 0 円ハヤカワ文庫 < 早川書房 9
⑦もう一度等級を逆補正して可視光の明⑧母星の円盤の内部の一点の明るさを求 bx B$ 2 めよう。 るさを求めよう : これまで計算してきたシチュエイション 地表からその惑星の太陽をのそむとき、 では、地球型惑星にふりそそぐエネルギー 人間の視覚を刺激するもうひとつの要素 がそれである。 の密度は、総体として地球のそれと同一と は、その太陽の円盤のある部分部分が、ど と している。 のくらいの強い輝きをもっているか 以上で、ひととおりのデザイン法の説明 いうことであろう。 ところが、スペクトルの山型のカープで わかるように、全エネルギ 1 は同じでも、 地表にとどく可視光の強さーーーっまり地を終了する。 式をなるべく言葉で記すようにしたの 眠に見える可視光線のエネルギーはそうと表の明るさ , ーー・が同一であったとしても、 うにちがっているはずである。 母星が巨大な円盤に見えていれば、その円で、長くなってしまっているが、カッコの で、全エネルギーをあらわす輻射等級盤内のひとつの部分はそう明るくは見えな中のような記号をつかった数式で書けば、 とてもみじかなものである。 を、もう一度可視光のところのエネルギー いだろう。 いちばん複雑なものでもベキ ( 何乗とい をあらわす実視等級に直し、それによっ 逆にとても小さな円盤に見えていれば、 う計算 ) があるだけである。 て、人間の眼にうつる明るさを求めてみよそのどの部分も強く輝いて見えるだろう。 その気にさえなれば、中学生でじゅうぶ そのちがいは、きっと、その地球型惑星 ます、輻射補正を求める。 ん計算できる計算式であろう。 の雰囲気を大きく変えるにちがいない。 もっとも、計算ぎらいな人がむりに計算 それと太陽の輻射補正との差を求めて、 ちょうど応接間やリビングルームのムー ドが、ワット数は同じでも照明器具の選びする必要はない。さきにも述べたように、 それをさらに等差的な値に直す。 計算しなくとも④ ~ ⑩のパラメータを求め その結果として、地球型惑星の地表にふ方によってとても変わるのと同じように : ることのできるグラフを次節で作成してい りそそぐ可視光線の強さ、ーーっまりは人間 るのだから・ : そのような母星の円盤の一部分の明るさ の肉眼にうつる明るさーーー・が求められる。 は、式⑦の可視光の明るさの比を、視直径 地球型惑星のデザイン・チャート の二乗で割ることによって求められる。 主系列星の場合 〔知 0 第部 0 田蕪 0 ーま 0 〕 これまでこまごまと説明してきた、計算 法を、ひとまとめのグラフにするまえに、 まったく別種の計算法があることを述べて 9 おこ、つ。 日 2.51 〔直 D まき十 0.3 〕 . ⅱ 2.5 一 ( 毳ー p しⅱ 2.51 ( 毳 + 0•07 ) がそれである・
近づこうとして、強い力を出していたのだった。そのとき、箱が微確に調整された量の徴量元素が、いくらか入っているんです。結晶 かにプーンという音を立てると、ラージャシンゲは自分の指が何かの生長速度に重力が影響しない人工衛星工場でしか、大量生産はで 3 きません」 不可思議な力で前へ曳かれるのを感じた。磁カか、と彼は思った。 もちろん違う。磁石はこんな挙動はしないものだ。自分の即席では「すばらしい」と、ラージャシンゲは、ほとんど独り言のように囁 あるが信じがたい説明は、やはり正しかったのだ。それどころか、そ いた。彼は自分の指がからんだ輪を軽くひつばって、まだ張力が存 れに代るような説明は絶対にありえなかった。二人はいままったく在しているか、自分が夢を見ているのではないかを、確かめようと の綱曳きそのものをやっているのだーーー・それも眼に見えない綱で。 した。「これに各種の応用の道があることは、想像がっきますな。 ラージャシンゲがいかに眸を凝らしても、自分の指をひっかけたすてきなチーズ切りになるでしようーー」 輪と、モーガンが獲物をたぐりこむ釣師よろしく操作している箱と モ 1 ガンは笑った。「これを使えば、数分のうちに一人で木を倒 の間には、糸やワイヤは影も形もなかった。彼は見たところ何もなすこともできますよ。でも、取扱いは慎重を要しますし、危険でさ い空間を探ろうとして、もう一方の手を伸ばしたが、工学者はすば えあります。我々は、それを繰りだしたり巻きこんだりするための やくそれを払いのけた。 特殊な装置を工夫しなければなりませんでした これを〈スビナ 「失礼 ! 」と彼はいった。「誰でも、真相に気がつくと、そうするレット〉と呼んでいます。これは実演用に作られた動力式のやつで んですよ。ひどい怪我をすることもありましてね」 す。このモーターは数百キログラムを持ちあげることができ、私は 「じゃ、ほんとに眼に見えないワイヤがあるんですね。おもしろい絶えず新しい用途を発見しています。今日のちょっとした冒険も、 でも、何に使うんです ? 隠し芸にはいいでしようが」 何も初めてというわけじゃないんです」 モーガンは、相好をくずしていた。「そう早合点されるのも無理 ラ 1 ジャシンゲは、そうするのが心残りのような気持で、輪から はありません。誰でもそうなんです。でも全然ちがうんですよ。こ指を外した。それは下へ落ちかけてから、途中で何も支えていない の見本があなたに見えないわけは、太さが数ミクロンしかないからように見えるのに前後に往復運動を始め、モーガンがボタンを押す なんです。蜘蛛の糸よりずっと細いんですから」 とス。ヒナレットが微かな音を立ててそれを巻きこんだ。 今度ばかりは使い古された形容詞がまったくびったりだな、とラ 「モーガン博士、何もこの最新の科学の驚異で私を感心させるため も ージャシンゲは思った。「それはーーとても信じられん。正体は何に、 ここまではるばるおいでになったわけじゃありますまい です ? 」 ちろん感心はしましたけれど。これが私とどういう関係があるの 「およそ二百年間にわたる固体物理学の成果ですよ。どんな御利益か、うかがいたいものですな」 があるかはともかくーー・これは連続擬一次元のダイアモンドの結晶「非常に関係があるのですよ、大使」工学者の方も急に真剣で形式 なんですーーもっとも実際には純粋の炭素ではありませんがね。正ばった態度になって答えた。「この材料に多くの応用の道があるだ
後のインデックスとがある。 宙塵』のまねをしなかったし、『倶楽 続きが必要であろう。 それと同しことである。 私がずっと前につくったいくつかのイン部』はぜったいに『宇宙気流』のまねをし デックス類と、何から何まで同じなのであなかった。 なぜこんなことを書いたかというと、最る。むろん事前に何の相談もなかった。 インデックス類にしても、『筒井康隆大 近気になることが少しばかりあるからであ 本誌インデックスのほうは、事後に詫び事典』など、ユニークさと資料的価値とを 状がとどいたほか、発行直前に加えたらしあわせもった立派なものである。 い注記があり、また内容にも若干の新しい たとえば『幻世紀宇宙探検』という十一一 私のところに送られてくる多くのファン 月に出たムックに、私の『銀河旅行』の中工夫が見られるので、まだしも愛嬌が感じ出版物から判断しても、ファンダムと られる。 のイラストが、かなりの数、流用されてい いうのは、日本の他の若者のグル 1 プにく しかし某同人誌のものについては、あまらべて、オリジナリティに関する常識は発 『銀河旅行』のイラストは、多くの論文をりにひどすぎる。 達している方だと思う。 もとに私の考えも入れて、私自身が原図を 関係している大人の人にきいてみたとこ だから、これは例外的なことだと信じた 描き、それをぬえにトレースしたりイラスろ、「石原さんの方法がいちばん良いから 。そして、こういう珍事が二度と起こら ト化したりしてもらったものである。 使ったのでしよう」と言われて、のけぞっないことを祈りたい。 てしまった。 もとの論文の図を参考にした場合には、 身銭を切って活動している善意の人たち 次回は、これまであいまいなままに残し すべてその出典を明記しているし、さらに 参考の度合いの大きなものについては論文なのだが、オリジナリティについての感覚ておいた″連星系〃の問題について、具体 的なデータをご披露しよう。 の執筆者に手紙を出して許可を求め、必要がちがいすぎるのだ。 マガジンの編集方法がいちばんいい なものに対しては転載料を支払っている。 さらに、これまでに説明しそこなったい からーーというので、後発の雑誌が表 そうしてできあがった図版を何の連絡も くつかの事項について、アトランダムに説 なしにトレースするのだから、いやになっ紙から目次から内容のレイアウトから解説明してみることにしたい。 てしまう。有名な先生が監修者になってい のしかたまでそっくりにしたら、どういう ( 章 0 で予告した章だてでは、近距離恒星 るというのに : ことになるだろうか : 界についての章は二つですむはずだった。 界でも、ファンダムの一部に、オリ むろん犯罪とみなされる。 それが、今回はもう章 4 になっているとい ジナリティについての感覚がまったく欠如 ファンダムはアマチュアの世界だから、 うのにまだ終らない。手もとのデータが予 している人たちがいる。 あまり堅苦しいことは言いたくないし、措想以上に多かったのと、このテーマが予想 私が数年前に呆然とし、今だに呆然とし置を求めるつもりもないが、これはファン以上に好評だったためである。しかし、あと 二回ほどで次にうつる予定なので、相対論 たままのアマチュア出版として、某著名同ダムでも特異な出版であろう。 同人誌の『宇宙気流』は・せったいに『宇 ファンの皆様はもう少しお待ちください ) 人誌のインデックスと、本誌の一七一号以
それは、恒星の″温度″を手がかりにす ・ : ( 9 ) 桁があえばいいと考えていただかなくて d$ TX 2 D$ はならない。 る方法である。 〇ー〇 D@ 前節で述べたデザイン法では、恒星の放 ほんとうの値とくらべて、二分の一から 射エネルギーを求めるのに、″等級″を出 二倍ぐらいのちがいは当然あるだろう。 発点とした。 ここから先の他の。ハラメータの求め方は しかし、一〇倍以上ちがったり、一〇分 絶対等級をもとに、その恒星の放射エネさきの方法と同じである。 の一以下だったりするようなことは ルギーの太陽との比を求め、そこから軌道 この有効温度を用いる方法は、『ダイダぶんーーーないだろう。 半径その他を求めた。 ロス計画』のトニー・ ロートンが一九七四 この種の計算の精度というのは、そのて いどのものである。 しかし、恒星の放射エネルギーを求める年にスペ 1 スフライト誌に発表している。 には、もうひとっ方法がある。 私が『銀河旅行』上巻で記している表や 一例をあげると、 ・ハーナード星の有効温 それは恒星の表面の″有効温度を出発数値は、このロートンの方法にもとづいた度は、図Ⅱのグラフからは三三〇〇度ほど ものである。 点とする方法である。 になるが、ある天文資料によると、この星 恒星の″有効温度″とは、熱輻射に関す いくつかの試算をしてみた結果では、有は赤色矮星の中でも特殊な性質をもってい るシュテファン・ポルツマンの法則によっ効温度を用いる方法のほうが、パラメータ て、三〇〇〇度よりかなり低い温度しかな ということになっている。 て、その恒星からの放射エネルギーが計算の地球とのちがいはオー・ハーに出るようで ある。 できるような温度のことである。 しかし本資料では、そういう個々の数値 この温度は、スペクトル型が与えられ ただ、温度を求めるときの精度がひじよ は無視して、大づかみな平均値を求めよう れば、天文学の研究成果にもとづいて求めうにわるいので、それがこの方法の問題点というものなのである。 であろう。 ることができて、グラフにすると図Ⅱ ( Ⅱ 逆に言えば、読者がこれを利用する場 頁 ) のようになる。 いずれにせよ、ここで説明している計算合、計算された数値よりも何割かオー・ハー 太陽の有効温度は五八〇〇度である。 式やグラフは、きわめてラフなものであな値を採用したとしても、すこしもまちが レ J し・う - レ」 これをつかうと、戟道半径すなわち母星る。 いを犯したことにはならない とでもある。 との距離は、つぎの式であらわすことがで このことは承知しておいていただきた ぎる。 まあ、気軽にお使いください。 なにしろ、望遠鏡でも見えるか見えない かーーというような星の質量だの直径だの さて、お約東の、安直にイッパッで求め 温度だのを推定して、それをもとに計算しるグラフをご説明しよう。 ているのだ。顔写真をもとに体重を求めて 図 ( 認頁 ) と図蜷 ( 招頁 ) のチャート いるようなものだ。 ・がそれである。 〔麝ャ第ャ 0 冒纛〕 〔第 0 針〕 2 〔第釦 0 ま〕 〔蘿 0 針〕〔暑 0 寐〕
陣一載銀河旅一打と特殊相対ム間 章 4 光世紀ハビタブル・ゾーイー地球型惑星の話ーー 石原藤夫 が多い アーティクルを批判されているわけでもな り」 デビュー以来書きついでいる『惑星シリ いから、こんなところで子どもつ。ほくカみ 宇宙画とアート ーズ』などにしても、科学的なハメの外し かえる必要はまったくないのだが、私の正 直な気もちとしては、やつばりアチコチでかたを楽しみながら、宇宙の巨大人工物上 りき このアーティクルは″科学解説″では での生命進化のパズルを、一貫して追究し カんでおきたいのである。 ているのだけれども、若い読者から時々い それは次のような理由からである。 サイエンス・ / / フィクション 的な Z c-æである。 ただくお便りのほとんどは、「科学的にも 日本における的な Z はまたとて ードプロ うすこし詳しく説明してほしい」という内 的なといっても、それを簡単も未熟であり、それはハ 容である。 の作家が独立しにくい事情と関係がふか に和訳すれば科学解説となってしまうか 私が理工系の研究者で、エ博なんかをも ら、同じようなことだと言われるかもしれ っていることが知られているので、どうし いろいろな意味で、日本ではサイエンス ないが、それでも、私が書きたいと思って いるものはふつうの″科学解説″ではな に対して″ゆとり″をもてない読者が大部ても小説風科学解説とまちがえてしまうの ・こザつ、つ 0 分である。 べつだんとはなんそゃーーーーという だから、私の書くものについても、どう この連載を″天文学の解説″ーーとかん 議論があるわけでもなし、また誰かから本しても ( 善意の ) 誤解が生じてしまうことちがいされている読者がおられるらしいの 0 、 イラストレー、ンヨン・宮武一員 4