可能性 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1980年4月号
231件見つかりました。

1. SFマガジン 1980年4月号

のわかっている恒星はひとつもない。 が、とにかくこういった数値のとりあっか うので、気づいたものをここで記しておき こういうたぐいの数値は、観測時の誤差 いについては、あまりこまかいところまでたい 要因をきちんとおさえて、「誤差論」とい 信じすぎないようにしていただきたい。 印刷のミスプリもあるが、私自身の誤り う学問によって計算をして、ある確率のも もある。印刷のミスについては、とても編 とにありうる範囲というのを明確にしなけ ②絶対実視等級と星数 集部は責められない。学術論文の場合には れば、学問的には無価値である。そういう 等級による星の頻度の棒グラフを作成しかならず著者校正があるが、娯楽誌ではそ 吟味をなされていない観測値は参考データておいた。つまり、絶対実視等級がどのてれがないからである。しかも商業娯楽誌 にすぎない。 いどの星が、どのくらいの数あるかーーーと に数字や記号が並ぶのは珍しいことであ 恒星の距離についての学問的な数値は、 いうグラフである。 る。 昨年一〇月臨時増刊号の二三三ページのカ こういうグラフを援用することによっ 珍事を扱っているにしては、ミスプリは タログに記した″視差値″のみである。すて、″光世紀宙域″の星界のイメージは、 少ない。編集部が熱心にみてくれるからで べてプラス・マイナスの範囲が明確にされますますはっきりしたものとなるだろう。 ある。正直にいって担当者がノイローゼに ていることに気づかれるたろう。 図 7 がそれである。 ならないかと心配である。今度早川書房に これに対して光年のほうは参考値であ たたし星数は可視星のみをひとつひとっ 行って肩をもんであげるつもりである。 る。とくに、小数点以下二桁めは学問的な数えたものである。 昨年の一〇月臨時増刊号の『近距離恒星 意味はまったくない。気休めの数字であ 一〇等から一二等がもっとも多く、太陽カタログ』について る。 はそうとう明るいほうに属していることが 星団表記法は星図表記法が正しい。要す 光世紀カタログ番号六一の″へびつかい よくわかる。 るに恒星の名称のことである。 座三六番星″を例にとってみよう。 暗い星は未発見である可能性が大きいか 銀河座標の夜は 2 である。これは銀経の この視差値は〇・一八九土九だから、真ら、このアン・ ( ランスは実際はもっと極端ことである。 の値は〇・一八〇から〇・一九八の間にあなものだった。 一〇番めの星の絶対等級一三・八は一五 る可能性がきわめて高い。光年に換算する 全体の平均等級は約一〇・三等であり、 ・八である。またその名称にはカッコづき と、一六・五から一八・一光年までの間ー 標準偏差は約三・六等である。 で ( くじら座星 ) を入れていただきた ーーということになる。 図の一部に閃光星と白色矮星の分布も記 い。これは私の方のミスである。 だから、この星の距離は一七・二六光年してある。 スペクトル型にとかとかいう記 ではなくて、一七光年ぐらいと言ったほう 号がついているが、カタログ番号で 2 と がむしろ正確である。がんばっても一七・ ③ミスプリについて 3 、四と、と、はまたはと 三光年である。 記号や数字についてのミスは、あとで使していただきたい。 学問的にあっかうのはむずかしいことだ用するときにややこしいことになってしま とのスペクトル型はその後判明し ー 08

2. SFマガジン 1980年4月号

レヒウ 能性を奪われた存在としてはじめから投 げ出されている。 『エデン』に登場する″複体生物″はそ の意味で、まだまだ人間の理解の枠内に第 近いところにいるわけだ。 悪夢のような社会に支配され、姿形もー 川又千秋 また悪夢のようであっても、″複体生・ 物″は、人間とのコミュニケーションに 『エデン』のグロテスクは、そのまま、対して、少なくとも関心と理解を示し、 スタ = スワフ・レムの激しい内的な模索その努力に応じてくる。ラスト近くで ~ 、 を表現しているものと言えるだろう。 は、コンビューターの助けをかりて、言レムの描く世界は、美しさを増してく 実際、これに続く『ソラリス』、『無語による相互のやりとりにまで、行きつる。『無敵 ( 砂漠の惑星 ) 』になると、 敵 ( 砂漠の惑星 ) 』で、いわゆる″未知きさえするのだ。 一種抽象絵画に似た詩情すらただよわせ との出会い″をテーマとする三部作を成だが、結局、人間は複体生物と真に通ていると言っていいだろう。 す流れの中で、最もコミュニケーションじあうことはできずにエデンを去る。 このイメージと、内容の変化 ( 深化 ) の可能性に接近しているのが本書なのであと一歩なのだ。しかし、それはレムは明らかに対応していると考えることが ある。 にとって絶対に越えることを許されないできそうだ。 『ソラリス』で描かれる人知を越えた海ぎりぎりの接近だったのだろう。 人間とのコミ ・ユニケーションの可能性 : 『無敵 ( 砂漠の惑星 ) 』の、完全な〈宇宙は、銀河系の規模にまで拡大されを徴かにでも保持している複体生物とそ 無機物から進化した機械生物 : : : と、そた地球ではない〉とレムは言った。 の社会のグロテスク : : : また、その可能 れらが、決定的に人間的なコミュニケー そして複体生物は、ソラリスの″海″性を発端から奪われている砂漠の惑星 ションを拒絶する存在として登場することなり、最後にただエネルギ】を得るたの、機械生物たちの、隔絶されオプジェ とに比べて、『エデン』には、まだ模索めだけに進化し、自己増殖を繰り返す機化されることによっての美しさ・ : されるべき迷路が残っているのだ。 械生物と姿を変えて、コミ ュニケーショ思いすごしかもしれないが、僕は『エ ソラリスの″海″は、人間の無意識をン拒絶のヴィジョンを徹底化してしまうデン』の端々に、レムの非常な不安と政 具象化して送り届けてくる、といったのだ。 治的寓意を感じた。それは、あくまでも ″遊び″に似た反応を人間に対して示しそれにつれて消えてゆくのが、グロテ人間とその社会における不安とアビール たけれど、『無敵 ( 砂漠の惑星 ) 』の機スクだ。 の反映である。 械生物は、全く完璧に人間との交流の可人間の理解から離れれば離れるだけ、 レムはその模索にやがて疲れ、物言わ スタニスワフ・レム著 『エデン』 工デン 占 独感をを ・たをレ・を 8

3. SFマガジン 1980年4月号

ありとあらゆる可能性が、すべての情報伝達媒体の中で、人類の陽系気象探査機が俄かに沈黙し、一分後にまた送信機能を回復した 2 すべての議会の中で、うんざりするほど議論された。慈悲深い神ののだった。記録を吟味すると、装置が強い輻射線によって、しばら 到着から、吸血こうもりの侵略にいたるまで、に使われてきたく機能を喪失したことがわかった。探査機は訪問者のビームをまと あらゆる筋書が発掘され、まじめに分析された。ロンドンのロイドもに横切ったのだったーーとすれば、そのビームが厳密にどこを向 社は、 ( 一文を受けとれない可能性をも含めて ) あらゆる可能な未いているかを計算するのは、苦もないことだった。 来に対して備える人々から、相当な額の保険金を集めた。 その方向には、五二光年先のところに、極めて微かな ( そしてお その後、異星の客が木星の就道を通過する頃、人類の計器はいくそらく極めて古い ) 赤色矮星がーーー銀河系の壮麗な巨星たちが燃え らかの事実を明らかにしはじめた。最初の発見は、一時的な恐慌状つきた後も数十億年にわたって平穏に輝ゃいていると思われゑ例 態をひきおこした。その物体は直径五百キロ、つまり小さな衛星のの小さくつつましい太陽の一つがあるだけだった。その星を注意深 大きさだったのである。やつばり、ことによると、これは移動するく調べたことのある電波望遠鏡はなかった。いまや、近づいてくる 惑星であって、侵略軍を乗せているのかも・ : 訪問者から手を抜ける望遠鏡はすべて、その出発地と推測される星 さらに精密な観測が行なわれて、侵入者の実質的な本体はさしわに集中された。 たし僅か数メートルであることが明らかにされると、この恐怖は消そして、果せるかな、そこからは一センチ波帯域に鋭く調整され えた。それを取りまく五百キロの光背は、全くおなじみのもの た信号が発せられていたのである。建造者たちは、数千年前に送り 繊細でゆっくり回転する放物面反射鏡、つまり天文学者たちの電波だした機体と、今も接触を保っているのだった。だが、そこでいま 望遠鏡衛星に酷似したものだったのである。おそらくこれは、訪問受信しているはずの通信は、やっと半世紀前のものなのだ。 者が遠い基地と接触を保っためのアンテナと思われた。そして、 やがて火星の就道の内側に人った訪問者は、人類の存在に気づい まもなお、太陽系を走査し人類のあらゆるラジオ、テレビ、データていることを、考えうる最も劇的かっ明白な形で初めて示したのだ 伝送を傍受して得た発見が、これを通して送り届けられていることった。相手は標準の三〇七五線数のテレビ画像を送信しはじめ、そ は明らかだった。 こへ堅苦しくはあるが流暢な英語と標準中国語によるヴィデオ・テ 続いて、もう一つの驚きが待っていた。その小惑星サイズのアンキストを挿入したのである。最初の宇宙の会話が始まったーーーしか テナは、アルフア・ケンタウリにではなくて、天のまったく別の場もいつも想像されてきたように数十年の遅れを伴ないながらではな くて、僅か数分の遅れでだった。 所に向いていたのである。ケンタウルス系は機体の出発地ではなく て、一つ前の寄港地にすぎないように思われてきたのだった。 夜明けの影 天文学者たちがまだこのことについて考えこんでいる頃、彼らは 千載一遇の幸運に恵まれた。火星の外側での定期巡回をしていた太

4. SFマガジン 1980年4月号

てずに努力し続ければ、なれる可能性も今さら宇宙への憧れでもないだろうつ 大きいけれど、各職業別のギルドが高度て ? それはまあそうですが、ジョ 1 ン に発達しているこの作品の世界では、田ズ君の思いはそれほど哲学的・思想的に 舎の農家の息子が宇宙船の乗組員になる受け取る必要もないのでして、最初に言 なんてことは、まず不可能といっていし った子供の夢みたいなもので、しかも、 だろう。とにかく、そういう困難なこと作者もジョーンズ君と同じくらいその夢 ヒ をわれらがジョ 1 ンズ君は望んで、そしにひたりきっているとしたら、これは逆彎 に大変なものだと思いません ? ) 第御都合主義という形容を使うとした皮肉を言「てるのではなくて、本当に = ら、この作品ほどそれにびったりと当て こんな世の中でしよう、・今は。燃え はまる小説もそう多くはない。腹が空いるエネルギーの塊りというような人を見五三年。数年後には『夏への扉』が」 ~ 一〔か た時には食い物が、遠くへ行きたい時にたら、正直うらやましくなりますよねれるはずで、まだ″問題作″『宇宙の戦 は乗り物が、宇宙船にもぐり込みたい時え。思いこんだら命がけ、というとまる士』は彼の頭の中にはなかっただろう にはそれを手配してくれる。へテン師が、 で日本的だけど、アメリカ風のその信し、後年のエロ親父つぼいところもそれ 船の中には魅力的な女の子が、しかも主念。一点突破。その気でやればうまくゆほど露骨ではない。ややマイナーではあ 人公には超能力に近いような写真的記億くに決まってるーーーこの楽天的なエネルるとしても、ハインラインの最も魅力的 力が : : : 。結局、ジョーンズ君の望みはギーがある限り、御都合主義などなんのなところが存分に出ている作品じゃなか ほとんど思うがままに、というよりは思その、いざ進め、いざ進めと、かけ声まろうか、そんなふうに思いました。 ( 『ス ってもみなかったほど都合よく、かなえでかけたくなったりして : シビアー ターマン・ジョーンズ』 / 著者日ロ・ハー られてしまう。めでたし、めでたし。 な現実認識ばかりさせられていると、カト・・ハインライン / 訳者日矢野徹 / いやいや、これで『スターマン・ジョサカサした気持にならざるを得ないでし文庫判 / 382 頁 / 亨 420 / 早川書 ーンズ』のレビューを終わるわけではなよ。 うこういう作品に会うとホッとする房 ) いのです。これだとまるでけなしているんですよね。 みたいに思われてしまう。もちろんこれそれに、操縦室で宇宙船をあやつると はハインラインの小説ですから、こんないうことが、いかに人間的な営みである ことが欠点になるはずがないのでして、 かということも実にそれらしく ( 現実的 「あれあれ」とため息ぐらいはっきながというのではないけれど ) 書かれていて らも、私は上気嫌でページを繰ったので良いのです。 ありました。 ハインラインが本書を書いたのは一九 ◇ ◇ 田 4

5. SFマガジン 1980年4月号

には気付いていないようだった。 かもしれない。魂の兄弟という言葉のもたらす意味が、私の心の中 「地球人たちが、魂の兄弟などという馬鹿げたことに夢中になりだで、薄まっているのがわかる。それは、何も、ウイストの話が原因 したのは、クローンたちが、地球外に輸出されはじめた頃からだとというわけではない。一人で行動すること、そして、自分にそれが いうのを知っているかね ? 」 可能だということに気付いたときから、魂の兄弟という言葉の呪縛 ウイストが尋ねる。私は、知らないと答えた。 から、解き放たれたのかもしれない。かって、・フラウンといっしょ 「面白いものだ。輸出する側も、輸入する側も、それを秘密にしてにいる時に感じた安らぎは、なっかしい。だが、それはなっかしい いたのに、人間は、無意識の内に気付く。人口が過密になり、常にという以上のものではなくなっていた。メレディンに会いたいとい 他人と接しているという地球の環境も、手伝ったのだろうが、みんう欲求は、まったく消え失せていた。 な、自分の分身を求め出した。地球人たちは、それを放置した。そ銃をまだ握っていることに気付き、放り投げる。壁に当たり、鈍 の方が、人々を管理しやすいと考えたからだろう。だが、まさか、 い音がした。地球人か、私は、ポケットから、パスポートを取り出 ここまで分身を求めてやってくる人間がいるとは思わなかったよ」して、写真を見つめた。それは、やけに弱々しい顔をしているよう ウイストは、私に笑いかけた。私は、その顔を見ながら、確信しに思えた。 た。それは敗者の顔ではない。勝利の瞬間が来ることを知ってお り、それを待っている者の顔だった。そして、・フラウンたちが、そ ウイストが病院から出てぎたのは、二週間後だった。まだ杖を頼 の顔の意味に気付く前に、ウイストの勝利の瞬間がやってきた。ド りにしなければ、歩くことは、できない。だが顔色は良かったし、 アを蹴破って、武装した男たちが、乱入してきたのだ。 以前よりも太ったように見えた。 男たちの三人が死に、プラウンだけが、無傷のまま、押え込まれ メレディンたちの一件は、すっかり片が付いていた。メレディン た。私にできることは、何もなかった。ウイストが、武装した男たの組織したクローンたちは、思いのほか、少なかったのだ。そし ちに抱えられて出ていった。・フラウンたちも、そのまま、連れ出さて、メレディン一人を追放すれば、もう一度、行動に移ることがで れていった。私は、急に、大きくなった部屋の中に立ち尽くしてい きるほどの能力を持った者は、この中には、いそうもなかった。し た。ウイストがプロだとすれば、メレディンたちは、結局、アマチかも、ウイストの口から、直接、真相を聞いて、生きているのは、 ュアだったということだ。おそらく、ウイストは、或る時間までに私とプラウンだけだった。おそらく、残されたクローンたちも、す 戻らなければ、人をよこすことにしておいたのだ。ブラウンたちべてを信じていたわけではあるまい。 は、その可能性にまったく気が付かなかったわけだ。 「二人とも、元気で発っていったかね ? 」 プラウンか。プラウンが、何人かの男に押えつけられ、自由を奪ウイストが、私の横にやってきて言った。 われていくのを、自分が黙って見ていたということは、衝撃的だっ 「元気でしたよ。プラウンが、あなたによろしくと言ってました」 た。それは、今までの私には、想像もできないことだった。・フラウ私は、・フラウンとしか会わなかったのだ。メレディンとは、つい ンが射殺されたとしても、私は黙って見ていたかもしれない。 に顔を会わせなかった。その方が良いと思えたのだ。 「変ったわね」たしかに、プラウンは、そう言っていた。変ったの 「プラウンのことは、ショックだったな」 幻 6

6. SFマガジン 1980年4月号

調査や、磁力防止法の研究なども進めなければ speed su 「 face Transport の略で、名付けて 「高速地表輸送機」。一九七六年から神奈川県「 ならない。 このリニアモーターカーは、実用化第一号と川崎市東扇島の埋め立て地に長さ一・三キロの しては、現在の東海道新幹線より北側を走り、軌道を作り、走行実験を繰り返し、一九七八年 東京ー名古屋ー大阪を結ぶ「中央新幹線」とな一一月、時速三百七・八キロと、目標の三百キロ る可能性が強い。技術的には一九八〇年代後半台に乗せる記録をマ 1 クした。 には建設が可能になるはずだ・・ーーと、国鉄技術こちらは、すでに八人乗りの車両 ( 長さ六 陣は研究開発に自信をみせている。名古屋市が八メートル、幅二メートル、高さ一・七五メー トル ) を作り、時速百キロ前後ながら、千人を 誘致運動を展開している「名古屋オリンビッ ク」が一九八八年に開催されることになれば、超す人が試乗した。 ところが、日航の泣きどころは、国鉄方式と その開催年に間に合わせたいとの声も関係者の 違って、浮上、推進用の磁石が普通の磁石を用 間で上がっている。 いていて、超電導磁石でないことだ。このた 一一十一世紀の夢の高速鉄道といわれるこのリ ニアモーターカーが実用化されると、現在の東め、磁力がどうしても弱く、国鉄方式では十セ 海道新幹線の最高時速二百八十六キロの二倍近ンチ浮上するのに、日航方式では一センチしか い時速五百キロで突っ走ることになる。東京ー浮かない。このため、カープするときや風や地 大阪間は現在、超特急「ひかり」で約三時間か震などにより、上下、左右に揺れると、この一 センチの間隔で大丈夫か、との懸念がっきまと かるが、それがわずか一時間余にス。ヒードアッ 。フされるわけだ。 日航技術陣は「これまでの走行実験で安全性 国鉄に対する日航のリニアモーターカーは、 クと呼ばれる。とは、 High は実証されている。カープでも大丈夫だ 0 た結ぶアクセス ( 交通手段 ) とする計画だ。こう し、東京湾からの強風を受けても問なると、遠い空港として悪評高い成田空港も、 により東京都心とわずか十四分間で結 題はなかった」という。 ばれる。 今後、技術研究組合という新しい 一開発組織を作り、車両メーカー、重磁気浮上鉄道の研究は日本ばかりでなく、西 カ電機メーカー、土建業界など各企業ドイツ、フランス、アメリカ、カナダなどでも 一に参加を求め、一一 0 ー三〇キロの実行われている。しかし、なんとい 0 ても研究の タ験線を新たに建設し、実用化へ向け進んでいるのは日本。実験軌道の長さや車両の 開発でも、他国をリードしており、鉄道王国ら モての実験に入りたいという。 エ・ ア青写真によると、実用車両は、一しく世界一である。 イ ニ両の長さが一一十メートル前後で、幅ところが、現在の新幹線網の建設もままなら 6 三・八メートル、百一一十人乗りとなないのに、その上を行くリ = ア新幹線がすんな 鉄っている。一一両編成で、時速三百キりと実現するかどうか、その前途には「技術」 国ロで走行する。成田空港ー東京都内だけでない問題がいくつか横たわっている。そ ー羽田空港、札幌ー新千歳空港ー苫して、国鉄と日航のいずれが先に実用化に成功 7 小牧、伊丹空港ー大阪市内ー新関西するか , ーー。未来鉄道の先乗り合戦は、いよい 空港ーのように、空港と都市の間をよ白熱化し、興味深い 日航のⅡ S S T

7. SFマガジン 1980年4月号

に告げるな、と言ったことになる。それは、私とプラウンの間でとまで、知っていたのかもしれない。暗闇の中では、考えること以 は、起こる可能性のないことだ。ホテルの男が、嘘をついたのかも外、できることはない。けれども、考えれば考えるほど、わからな しれない。だが、嘘ならば、あんな状態で言う必要もない。私が最いことが増してくる。そして、核心から、離れていくばかりだ。実 初に尋ねたときに、言えば済むことだ。 際、何が自分の周囲で起きているのか、見当もっかなかった。これ 考えられるのは、まったく、逆のケースだ。つまり、ホテルの男まで、地球でめぐりあったすべてを上回るほどの事件が、私を襲っ に、そう告げることで、彼女は自分の危機を私に教えようとしたのている。私は、それに対応するだけで必死だった。それが、どうい ではないか。自分の意志で、何も告げずに魂の兄弟から去ることな う意味を持っているのか、考えるだけの余裕はなかった。 ど、実際問題として、私たちにできることではない。アショ力の人・フラウンさえもいなくなってしまった今、私の唯一の支えは、そ 間たちにとっては、わからないことかもしれないが、おそらく、・フれらの事件に、何とか自分が耐えているということだけだった。コ ラウンはそれを逆手に取ったのだろう。私自身、プラウンと同じ立ンビ = ーターのアウト・ブットを見つめているだけの生活しかなか 場にあり、彼女に自分が連れ去られたことを知らせるとしたら、同った自分に、これだけの行動ができるというのは、驚きであった じような行動を取るたろう。しかも、自分が監視されているとしたし、誇りにも思えた。 ら、そうするよりない。問題は、あのホテルの男が、意外なほどロ私が、どうあろうとも、朝は勝手にやってくる。倉庫から、おそ が固かったということだ。あの男に言われなくとも、結局は、同じるおそる出てみると、すっかり明るくなっていた。空腹の筈だった 結論を得たかもしれないが、あの男のロの固さのために、彼女の意 が、食欲は、まったくなかった。まず、私がやったのは、ウイスト 図が少々、狂ったということになる。 に連絡することだった。この世界で、少しでも私を助けようとして それにしても、な・せ、あの男が殺されねばならなかったのだ。しくれたのは、彼しかいなかったのだし、今の状況で、何らかの援助 かも、私の荷物の中に銃が隠されていたことからすれば、私があのを期待できるのも、彼しかいないと思えたのだ。こんな時間に、彼 男を痛めつけている間に、誰かがあの男を殺すことを決め、私をそをつかまえることができるか、どうか、それが問題だったが。 の犯人に仕立て上げようと決めたことになる。私の部屋に忍び込む驚いたことに、ウイストは、新聞社にいた。 時間は、そこしかなかった筈だからだ。計画的なものではなかった「誰だ ? 」 だろう。だが、それだからこそ、恐ろしいとも言える。つまり、一受話器の向こうで、ウイストが尋ねてくる。顔が見えないという 瞬のチャンスを有効に使えるだけの柔軟性を相手が持っていることのは、相手と自分の距離がおそろしく遠く離れているように感じさ になるからだ。 せるものだ。私は、思わず、大声で、自分の名前を告げた。あわて あのホテルの男は、私に語った以上のことを知っていたにちがい て周囲を見回す。人通りは、ほとんどない。 ない。たとえば、・フラウンを連れ去った男たちが、何者かというこ「君か ! 今、どこにいる ? 」 207

8. SFマガジン 1980年4月号

稼ぎの感覚を抱いているのかも分らなかった ) そのためには多少のって司政を行なうときが来る。それまでは耐えるのだ。耐えて 強行手段もやむを得ないし、また、上陸にさいしてもそれなりの武 , チャンスがあれば頭を出す。どんな小さなチャンスでもとらえて、 2 2 装をして行くのがいい。だから先発メン・ハーは今夜のうちにその用司政官の存在を意味づけなければならないのだ。 意をしておこうというわけであった。当然ながらこれには反対意見そう考えているうちに、彼は例によってだいぶ落ち着いて来た。 こんなことではいけないな。 が出た。そんなことをすればあとに禍根を残す可能性がある、と、 二の者はいったのだ。ャトウもむろん反対であった。今回の交っねに冷静でなければならないのが司政官というものなのに : 渉のことだけを意識したそんなやりかたは、将来、どんな影響が及 ぶか分ったものではない。そういう軍人的発想は司政官としては迷苦笑しながら、彼は夜の海に目を向け、・斜め前方にくろぐろと横 たわる島を見やった。 惑千万である。そのことを彼もまた、遠まわしな表現ではあるが、 いわずにはいられなかった。・、 カ : : : ヘンゼルは強硬だった。そ島の、海面に近いあたりには、暗い灯がいくつか浮かんでいる。 ういう強いやりかたも時には有効であり、今回はそれでいいのだともうあらかた寝静まったらしい原住者たちの集落の、まだいくつか 突っ張り : : : 団長の権限を以て、そう決定してしまったのである。残っている灯なのであった。 横暴であった。 「何を考えているの ? 」 司政官がもしもあるべき立場、持つべき力を有していたら、決し 思いもかけぬ近くから女の声がしたので、彼はそちらへ顔を向け てそんな真似は許せないところである。 た。島を眺めていた彼のすぐ後方の舷側に、・ほんやりとシェド gao 残念ながらャトウには、それだけの立場も力もなかった。現在のの姿があった。 彼はいわばミローゼン駐屯隊の食客であり、この交渉団においても「 いや。別に」 客員に過ぎない存在なのだ。押し切られてしまうしかなかった。そ彼が応じると、シェドÄO はやはり島の灯のほうを見ながら、ぼ して、どうせ押し切られるのなら、今後の連邦軍との関係を考慮しつんといった。 て、相手に敵意や憎悪を抱かせないように、あっさりと引き下がる「あの集落ね」 しかないのであった。 会議が散会になったあと、彼は自分の部屋に戻る途中、ひとり舷「わたしは思うんだけど : : : あそこに上陸してから、わたしたちは 側にもたれて、気を静めにかかった。 予想もしなかったような厄介な場面に、それも何度も出くわすんじ 腹を立てても仕方がない。 ゃないのかな」 今は・・・・ : こういうことなのだ。 「とは ? 」 いずれ、司政制度の理念が理解され、司政官がおのれの方針に従相手のいいたいことをほぼ推察していたものの、彼はうながし

9. SFマガジン 1980年4月号

私は、頭を振った。、プラウンが、メレディンと性的な関係を結ん「地球人が、地球の船を襲ったのだから、誰も傷つかずに済みます でいたことは、うすうす感じていたことたった。それを聞かされてしね」 も、驚きはなかった。たた、あの・フラウンが、自分の魂の兄弟とそ メレディンを追放するといっても、アショ力の上では、危険すぎ ういう関係を持っことができたということに、驚かなかったといえる。ウイストは、彼を殺したかった。だが、プラウンが、私に泣き ば、嘘になる。かって、私の心に生じたであろう嫌悪感の名残りついてきたのだ。そして、私が考え出した解決策が、メレディン が、かすかに、私の内を横切っていった。プラウンといっしょの部に、私のパスポートを与えることだった。 屋で寝たときの性夢が、突然、よみがえった。 宇宙船に乗れるのは、地球人だけなのだから、そうするよりなか 「気にすることはない。時間が解決してくれる」 ったのだ。ウイストは、それでもまだ、メレディンを生かしておく ウイストが、肩を軽く叩いた。 ことに不安を感じていたが、メレディンとプラウンの計画を聞き、 「それよりも、聞きたいことが、一つあるんですがね、なぜ、メレその成功の可能性を考え、最後には、納得してくれた。外見だけ ディンは、私を罠にはめようとしたのか、そして、プラウンを連れで、私とメレディンを区別するのは、容易なことではない。 去ってしまったんですかね」 メレディンとプラウンが、幾つものチェックを無事に通過して、 「君たちの正体を知ろうとしたんだろうな。そのときは、まだ彼宇宙船に乗り込み、出発したのは、三日ほど前のことだった。私 は、魂の兄弟というものの意味を知らなかったのだし、・フラウンか は、空港の横で、その宇宙船を見送った。それは、私が地球に戻れ ら、それを聞き出した途端、私たちが、君をどう扱うつもりか、た なくなるという決定的な瞬間だったが、私の心は何なくそれに耐え めしてみたかったんじゃないか。だが、君が、予想以上に、素早くた。 行動したために、彼らは、次の手の打ちょうがなくなったというわ「で、君は、どうするつもりだね ? 」 けだ」 ウイストが、私の顔を見て笑いかけた。 「あの前に、あなたに会っておいて良かったですよ」 「できれば、今までどおり、あなたの手伝いをしてみたいと思いま 「ああ、ついていたな。メレディンたちも、ついていると、 しいのすね。一つの世界が、生まれていくのに立ち会えるなんて、そうは だが」 なさそうですから」 私は、ウイストに新聞を差し出した。その一面には、宇宙船が行「私は、きびしい上司だよ」 方不明になったことが、大きな活字で印刷されていた。その乗客の ウイストは、今度は、力いつばい、私の肩を叩いて、笑った。 中には、私とプラウンの名前が含まれていた。 このアショ力に骨を埋めることになりそうだったが、私は満足だ 「正式に、乗取られたという連絡があった後で、他の乗員たちは、 った。何よりも、ここが気に入っていたし、今、宇宙の中を、私の 無事に救助されたという連絡が入ったらしいですよ」 分身たちが飛んでいるのだ、新らしい世界を求めて。魂の兄弟たち ウイストは、軽い笑い声をあげた。 よ、いっかまた会えることがあるかもしれない。私たち自身が会え 「あとは、メレディンと・フラウンの運しだいというわけだな。これることがなくとも、私たちの子供たちが、会うことになるだろう、 で、メレディンも本望だろう」 必ず。 2

10. SFマガジン 1980年4月号

ろうか。 ぎたにちがいない。あるいは、戻ってこれないほど重要な手がかり 「それは、可能性が強そうですな」 を、彼女がんだのかもしれない。 ウイストは言った。 冷気がただよいはじめた街を、私は急いだ。だが、目的の場所に 「何人か、ダライ出身の知り合いがいますから、尋いてみましょ着いてみても、彼女の姿はなかった。すっかり暗くなるまで、私 う」 は、そのあたりをうろっき回った。だが、もちろん、彼女の姿は見 「すみません、いそがしいのに」 当らなかった。やがて、あきらめが心に忍び寄り、きっとホテルに 「いそがしい ? 」 帰っているにちがいないと、ささやぎはじめた。私は、そのささや ウイストは、奇妙な微笑を浮かべた。その表情の意味が、お・ほろきにしたがい、ホテルに戻った。不安と期待が混じり合っていた。 げにわかったのは、それからしばらく経ってからだった。彼らの新けれども、ドアを開けてみても、そこには・フラウンはいなかっ 聞に、社交欄が登場するのは、数週間に一回程度だったのだ。しか た。部屋の中を見回した私は、恐るべきことに気付いた。・フラウン も、ほんの申し訳程度でしかない。考えてみれば、アショ力のようが運び込んできた筈の荷物がない。私が留守にしていた間に、何者 な世界に、社交欄の存在が必要とは思えないわけだ。けれども、そかがやってきて、持ち出していったのだ。少なくとも、プラウンの のときは、アショ力の社会に食い込む唯一の手がかりを得たようなやったことなら、何らかの連絡が残されている筈だ。 気持になって、ウイストのことまで考える余裕はなかったのだ。 私は、フロントに飛んでいった。中にいたのは、すっかり顔なし とにかく、・フラウンに、そのことを知らせたかった。ホテルの部みになった鈍重そうな男だった。 屋でおちあう約東をしていた時間には、まだ早かったが、私は戻る「・フラウンさん ? 朝から、見かけませんでしたよ」 ことにした。 「彼女じゃない。彼女の荷物を運び出した奴がいた筈だ」 私は待った。約束の時間まで、おそろしく長くかかったように思 ホテルの男は、細い目を、一層、細くして私を見つめた。 えた。けれども、約束の時間が過ぎてからの時計の針は、一層、ゆ「お客様の荷物を無断で運び出す者など、当ホテレこよ、 ノ冫。しなしと つくりとしか進もうとしない。私は、一時間、待ち、二時間、待っ思いますがーーー」 た。だが、ブラウンは戻ってこない。そろそろ、夕日のショーの時男のことさらにゆっくりとした口調は、逆に私の怒りを煽りたて 間が近付く頃になっても、戻ってこないのだ。何度か、彼女の部屋た。 をのぞきにいってみたのだが、もちろん、誰もいなかった。 「このホテルの人間のことを尋いているんじゃないんだ。いいか、 最初は、いらだった。だが、それは不安に変り、心配に変ってい プラウンの荷物を持って出ていった奴が、絶対にいるんだ。この三 った。じっと待っていることに耐えられなくなり、私は、ブラウン時間程の間に、だ」 が行っている筈の昨日の場所に出かけてみることにした。何かが起男は、薄い笑みを唇に浮かべた。 202