「われわれにはレーザーガンがある。出ようと思えばいつでも出ら「こちらのことは心配ない。何かあったらまた連絡する。きみは船 れる」 に気をつけていてくれ」 ヘンゼルは、声の調子を少し落とした。「ともかく今は、む「承知しました」 こうの出方を見定めることだ」 連絡は終了した。 「分りました」 このあたり、やはり軍のロポットの使いかただな・ーと、ヤトウ テイト OO は答えた。 は思った。ロポットは自分の送受信機能を持っているものの、ちゃ テイト 00 が自分の動転ぶりを恥じて赤面したのかどうかは、ヤんとした連絡となると人間が言葉を送り、先方の言葉が戻って来る トウには分らなかった。表戸がしまってしまうと、中は結構暗いののを待つのである。そうしなければ正式のやりとりとは見做されな である。上のほうにあかりとりの細い窓があることはあるが : : : 人 。記録として残るのは人間どうしが行なった会話であり、表現な 人の表情や内部の状態は、今のところ、人間の目には識別困難なののだ。ロポットはそれを伝達するための機械なのであった。 であった。 この点、司政官と、それに他のロポットたちの関係はことな 「あかりをつけますか ? 」 っている。こちらはあくまでも情報の内容本位で、どういういいま 静かにいったのは、シェド O だ。 わしをしたか、とか、どんな形式の連絡だったかということは、必 「いや、待て」 要上伝えなければならぬ場合以外には、ナマでは伝えられない。要 ヘンゼルは応じた。「まずは、目が慣れるのを待とう」 約されるのがつねだ。というのも、連絡のネットワークがロポット 「そうですね」 のだからであり、もとの記録を保持するのも coo の仕事だから と、シェド O 。 である。その意味で人間とロポットは特質による役割分担があり、 そのままでヘンゼルはロポットに命じて、船と連絡をとらせ命令の上意下達の系統はあるにしても、本質的には対等なのであっ た。ロポットにとってはそんな作業にあかりの有無は関係がない。 た。対等というのがおかしければ、ロポットは人間の単なる補助者 すぐに船との連絡はっき、ヘンゼルは出て来たハーケンダインや縁の下のカ持ちではなく、それ自体公的な、おもてに出られる存 に、これまでの経過と現況を要約して知らせた。船のほうはそ在なのだ。また周囲からは ( ここでは連邦軍の人々を指すわけだ ) の後変ったことはないようだが : ーケンダインは、こちらそうと公認されてはいないし、現在の段階ではだいぶぎくしやくし の事態が意外に速く進展しているのに驚いたようであった。 ているとはいえ、そうあるべきで : : : 司政官はそのように訓練さ 「大丈夫ですか ? 」 れ、ロポットはそうなれるように設計されているのである。 ) ゆくゆ ーケンダイン O はいい、 ヘンゼルはびしやりと返事をしくは、あらゆるデータはまず r.nO が把握し、必要な事項だけを司政 官に知らせるというかたちが望ましい。 coO は少しずっその方向に 226
邦軍の区分による海域Ⅱグループについてもくわしくは知らない りこれからは自分があなたがたの世話を見、案内もするとつけ加え ようであった。その証拠に、はじめのうちかれらは、基地島が自分た。 すぐに案内をしたいがどうか、という。 たちの島群のひとつではないかと、漠然と考えていたようである。 ヘンゼルは他の人々やロポットの助けも借りて、基地島からこ 「その前に、われわれが寝泊りする宿舎へ連れて行ってくれないか こまでの距離を話し、略図を描いて渡さなければならなかった。が ヘンゼルは異議を唱えた。「それに、われわれは腹も減って ・ : 略図があれば原住者たちにとってはそれでよかったらしい。そ んなに遠い距離をどういう構造の船でやって来たか、・ とういう航海来ている。食べものは自分たちで持って来ているから、勝手に用意 をして来たのか、というようなことは、全然たずねなかったのであするが : : : それだけの時間もないのかね ? 」 る。 リ・フヤのツ・エン・ニは、いささか戸惑ったようである。 これらの長い説明が終ると、クリブヤのダ・レ・・ハンガはリプャ「ここがあなたがたの宿舎だ、と、いっています」 ロポットが通訳した。「ここは公共集会場だが、天井が高い。ほ のツ・エン・ニに声を投け、リプヤのツ・エン・ニが、こちらへ申 かに建物はないわけではないが、あなたがたがゆっくり出来る場所 し渡した。 「これから、今聞いたことを、別の場所にいる救助されたふたりので、今使われていないのは、ここだけだとのことです」 申し立てと、照らし合わせるといっています」 ロポットが伝達した。「それで間違いがないと分れば、お礼の待「食事を自分たちでするなら、それでいいが、早くしてくれともい っています」 遇をする、それまで待つように、とのことです」 ロポットはつづける。「出来ればタガ / ヤの案内は、きようのう こちらの人々が、疲れた表情で頷くのを見てから、五名の原住者ちにしてしまいたい。あすになると、戦争がおこるかも知れないと のことです」 は出て行き、内部はまた暗くなった。 ( 以下次号 ) 表戸を開いて原住者たちが再びやって来たのは、それからたつぶ り一時間は経ってからのことであった。 来たのは、リ・フヤのツ・エン・ニと、もうひとりの青衣帯剣だけ である。 リプヤのツ・エン・ニは、ロポットを通じてこちらの人々に、照 合は完了した、何も問題はなかったと告げた。それから、命令によ 2 引
ばすことでタガノヤに利益をもたらすと判断されたとき、及び、同この場でやれというのか ? 」 じく滞在をのばすことでダガに寄与すると信じられる理由があると「そうだ、といっています」 きには、滞在は延長されるとのことです。その決定はリプノヤ会議ロポットが、クリ・フヤのダ・レ・・、 ノンガの言葉を伝える。 によってなされる、ともいっています」 ヘンゼルは少しいらいらした身振りを示したが、原住者を助 けたいきさつを、ただし要点のみを、それも原住者たちが理解する であろう表現で開始した。 ヘンゼルは二、三秒黙り、それから顔をあげていった。 「つまり、われわれの様子を観察して、おめがねにかなえば滞在を厄介な作業だった。 クリプヤのダ・レ・く 延長しようというのだな ? ーー いや、今の言葉はあの連中に伝える / ンガは、よく分らない個所に来ると、わき な。承知したと返事してくれ」 のリ・フヤのツ・エン・ニにささやく。するとリプヤのツ・エン・ニ がロポットをさえぎって、質問するのであった。それらをいちい ロポットは、指示通り、おしまいの部分だけを訳した。 だが、それで一件落着というわけではなかったのだ。 ち、筆記用具を持った青衣帯剣が記録するのである。もっとも、質 問といっても、ヘンゼルが原住者にはどうせいっても分るまい ロポットの返事を聞いたリ・フヤのツ・エン・ニは、青頭巾のクリ という点は適当に・ほやかしたせいもあって、もつばら、日どりとか ・フヤのダ・レ・・ハンガに頭をさげた。するとクリ・フヤのダ・レ・ ンガはゆっくりといいだしたのである。 所要時間とかいった事務的なものが多かったのたが、時間がひどく 「私たちは、仲間を救けてくれた外来者であるあなたがたに、義務かかったのはたしかである。 としてなされるお礼の内容をいった。だから今度は、あなたがたが そのあとの、ひとりひとりの名前をいうことは簡単だった。こち 義務を果たす番だといっています」 らの背丈がむこうの連中よりずっと高いことについて、原住者たち ロポットが翻訳する。「あなたがたの義務は、タガノヤの住人にはそれほど関心がないらしいのである。それどころか、ロポットも してダガのメン・ハーであるふたりをどういう具合に助けたのか、話当然名をいったのだが、かれらはその外見が人間とはひどくことな さなければならない。それからあなたがたひとひとりの名前を告 っていることにも、別に何もいおうとはしなかった。そういった事 げ、どこに住んでいるのかを説明しなければならない。あなたがた柄には興味がないのか、でなければ興味がないふりをしているか がそれをしてくれることによって、今しがた述べたお礼の待遇を実の、どちらかである。 施することになるーーーと、し 、っています」 基地島の位置を説明するのは、容易ではなかった。ここの原住者 「分った」 たちは ( というより、あるいはよその原住者たちだってそうなのか ヘンゼルは低く答えた。「そういう手続きを経なければならも知れないが ) あきらかにそんな遠くの島に関しての知識を持って ないのなら、そうするほかはない。それで : : : その説明はここで、 いなかったのだ。それどころかかれらはこの島を含む島群域ーー・連 230
と、ロポット。 き、呟きながらも、こうしたヘンゼルの傾向がますます強まっ て行くのではないかという気がし、何となく全面的に信頼出来ない ヘンゼルが一歩前へ出た。 乗りものに乗せられて、突っ走るような感覚をお・ほえたのである。 問いかけた青衣帯剣は、名をたずね、ヘンゼルは答えた。 しかし、そんな感情はおもてに出してはならない。メイハーのひ筆記用具を持ったほうが、また忙しく記入する。 とりが少しでも不信の色を見せるのは、全体に大きく影響するからそれが終ると、あとの青衣帯剣も前に出て来た。こちらの列に向 だ。メン・ハーの一員として、彼はむしろ積極的に命令に服すべきで い合うかたちで横列をなしたのだ。 あった。 線を示し、ヘンゼルの名を説いた原住者が、今までよりもや ポートの人間とロポットたちは、ザックに詰めて載せてあった携やゆっくりした調子でいいだした。 帯食糧や当座の生活用品を肩にかけて、次々と岸壁へあがって行っ ロポットが翻訳する。 「私はリプヤのツ・エン・ニである、といっています。ふたりのタ 上陸してみると、原住者たちはやはり小さかった。青衣帯剣の連ガノヤ人を助けてくれたことは聞いた。もっとくわしい事情を聞い 中をも含めて、集まっている人々がみなそうであり、背後の木造のて、どういう扱いをするか決定するために、クリプヤと会ってもら 家々も相応に小ぶりなのだ。ためにヤトウには、ポートから眺めたわなければならない。クリプヤと会う場所へ、これから連れて行く ときに受けた圧迫感めいたものは消えたものの、それだけに、自分 とのことです」 たちがたしかに異様な、不可思議な世界に入り込んだのだという気「われわれのポートはどうする ? 」 分に襲われざるを得なかった。 と、ヘンゼル。 青衣帯剣の原住者たちは目で頷き合い、ひとりが手を出して岸壁「船はそのままでよい、出て行くときまでそのままにしておく、と 沿いに線を描くような仕草をした。そういう具合に並べということのことです」 らしい ロポットが伝える。 「分った」 ヘンゼルの身振りに応じて、みんなは横一列に並ぶ。 別の青衣帯剣が、その前に出て来た。その原住者は、筆記用具と わずかな間をおいて、ヘンゼルは応じた。「われわれは、あ 紙らしいものを持っており、こちらの人数をかそえ、それから何かなたがたのしきたりに合うように努めるが、われわれにも、どうし 記入しはしめた。 ても守らなければならぬしきたりがある。そのときにはそれに応じ 日ーー 手で線を描いてみせた青衣帯剣が、そいつの横に出て来て、 た態度をとる。それでいいのなら、同行しよう」 「それでよい、と、 かける。 いっています」 「まとめる・・ー代表は誰かといっています」 「よし」 222
ミドリちゃんファミリー騒動記⑥ 注文の ) = ミドリちゃんの家ては、忙しいママのためにロボットを雇うことになった。 ロボットのホームヘルハーは、人手不足に悩む家庭にとってもう常識 喜給斟の金額によって派遣されてくるロポットの能力に差があるのだが、 1 ちゃんの家には " 。ヘー。ハー式ロボット。がやってくる , にている ' 。ママは「先に届けられた取扱説明書を検討中。 ~ 〈お一 ) 、買物を頼むのも紙きれ。食事の準備もメニューを書いた 〆紙きれをサービスロから入れるように、だって。何ても。ヘー 「えーっと、給料の渡し方は : : : あら、やつばリべーパー式。 「紙幣ないと受取らないということなのね。 両替しておかなくち そばて聞いていたミドリちゃんは、 第あわててママの袖を引っぱってこう一 = った・ = 言経与振込にしてください、ってこ ロポットには給与明細書を渡す 。へしハーてしよ、あれは」 注給与振込〕給料が会社から 直接預金口座に振込まれる。 ~ ~ ー給料日の朝から引出せ、安全な上に、 利息はその日からっくのて有利 みなさまのお役に立っ = 屯眼 -1
、・いに・き詩 : 第朝を / を : ; : ン毒さ ス宿いをを : 第イい イ。等を↓ツ二 するためにつくられたものです。そのた め、映像の構成や色彩が、すこしばかり見 にくいものになっているかもしれません。 しかし、シグマ星人の感覚を一般の地球の みなさまに理解していただくためには、か えってこのほうが良いと思い、そのまま上 映することにいたしました。むろんナレー ションは地球語に変更してあります : : : 」 それから映像が前方の巨大なスクリーン に拡がり、ロビーはまったく異なった世界 へと変貌した。 ナレータは明快な地球語で、乗客たちを 画面にひきこんだ。 〈一一一世紀の太陽系文明を展望するとき、 われわれは″黄金の六年間″を忘れること はできません : : : 〉 映像は奇妙に赤茶けていた。それがシグ マ星人にとっての自然な色調であるらし 、 0 ニニ博士が 全九八八年にあの有名なパー 誌に光速伸張航法の基礎理論を発 表しました。これはのちに、すべての光世 紀恒星船を推進する基本原理となりまし た。一九八九年には / イマン・ロポット社 が設立され、ロポットの時代の幕をあけま した。一九九〇年には e がタキオンの コントロールに成功し、超光速通信が可能 となりました。一九九一年にはタキオンや 9 光速伸張を専門に開発するタキオン
シャワー ・ルームを出たゲンは、シャッ その音のなかから、いまの女の低いしわが 女の声は低く、しわがれていた。 れた声がきこえてきた。 をまといながらロポットに向かって話しか 「タ方、おうかがいしたいのです。用件は 大きな仕事なのですが、おひきうけいたけた。 お逢いしてお話しします : : : 」 だけるかどうか たしかそう言って言葉「 : 語尾がかすれていて、聞きとりにくかつをにごしていた。 身長九〇センチ、太さ二〇センチの円筒 ゲンははげしく首をふった。筋肉質の胸型のウィーナーは、無言のまま立ってい 「そうですか : : : 」 に湯がはじけた。たくましい背中のいくった。純粋の仕事 ( すなわち計算 ) 以外の質 ゲンは時計をみた。女の指定した時間は かのホクロの上を湯が流れた。 問には、返事をする習慣がないのだ。 常識にはないものたった。ふつうたいてい ゲンはウィーナーの頭をポンとたたく の仕事は午後の三時にはおわる。それから と、ソフアに寝そべり、飲料でのどをうる ゲン・テンミョウは今年二七歳になる。 人々は家族や恋人や友人たちと、自由な時一メートル九〇センチの長身で、東洋系とおした。 をすごすのだ。 東欧系が混ざったような顔つきである。 ゲンは恋人のエリナ・ランのことをちょ 白晳長身ーーー・といっていいだろう。鼻す 魔女の訪問 っと頭にうかべたが、すぐにレンズに向か じがとおり、大きな鋭い眼につやのある黒 ってうなずいた。 い瞳が光っている。しかしきつい感しはし じきに、約束の時間となった。 「承知しました。お待ちしております」 ない。その眼が、いつも何かを夢見ている あらわれたのは、電話の声の印象よりは 生活は楽ではない。妙な依頼主のほう ようにうるんでいるからだろう。 が、かえって金づるをもっているのかもし 家族はいない。子どものころからそばにずっと若い、ほっそりとした女だった。し れないのだ : いる小型ロポットのウィーナーたけが、身かし、電話での話しかたと同じように、奇 「ではのちほど : : : 」 妙な雰囲気をもっていた。ひどく無機質な 寄りたった。 女は電話を切った。 友人もすくない。最近になってようやく感じである。 「お待ちしておりました。どうそお入りく さて、一服して待っことにするか。 恋人ができた。このビルの地階のレストラ ゲンはデスクの脇に神妙にひかえている ださい」 ンで働いているエリナ・ランという娘た。 女は灰色のコートのえりを立てたまま、 小型ロポットのウィーナーの頭をひとなで 磁場デザイナーをはじめてから二年にな した。それから、シャワー ・ルームに入っ るが、どうひいきめにみても仕事が順調におずおずとオフィスを見まわした。そし 進展しているとはいえない。できるのは借て、ゲンの他にはウィーナーしかいないこ とをたしかめてから、ゆっくりとうなずい 服をぬぎ、鏡を一警した。すこし疲れて金ばかりである。 いる顔だった。 「 : : : しかたがない。細々とやるさ。なあた。 彼はぬるい湯をはげしく頭からあびた。 「こちらへどうそ : : : 」
こ一ではないかとヤトウには思われた ) そのわきにたたずんだ。も 「あの青い服の連中は、われわれからくわしい事情を聞いて、どううひとり、これは筆記用具を持ったのが、やや離れた位置を占め 2 2 いう扱いをするか決定するために、誰かに会わせるといった。つまる。あとの二名は護衛らしく、仕切りすれすれのところまで出て来 り説問だ」 て、剣のつかを片手で握り、両足を開いて立った。 ヘンゼルはいう。「むこうがどういう態度に出て来るかはま リプヤのツ・エン・ニとお・ほしいのが、声を出した。 だ不明だが、そのつもりでいたほうがいい。だから、油断をせず、 「クリプヤが話をする、といっています」 隙を見せないことだ。武器もいつでも使えるようにしておいたほう ロポットが伝える。 青頭巾の原住者が、おもむろに喋りはじめた。 そこで、会話はとだえた。 ロポットが翻訳した。 ちょっと警戒し過ぎではないだろうかーー・・と、ヤトウはちらりと「私はクリ・フヤのダ・レ・・ハンガである、といっています。タガ / 考えた。原住者たちに対してはなるべく先入観を持たぬほうがいいヤの住人にしてダガのメン・ハーでもあるふたりを救助し、連れて来 と彼は思っていたのだ。先方には先方の慣習や考えかたがあるだろてくれたことに対して、礼をいう、とのことです」 うからである。けれども彼は何もいわず、他の人々も黙っているう「・ : ちに、次の事態が訪れた。 「かれらは、われわれに、仲間を助けてくれた外来者が得られる待 正面の壇の奥に、光の筋が出来たのである。その筋は音と共に大遇を、すべて与える、といっています」 きくなり、シルエットになった人影が次々と現われた。 「その待遇の内容を聞かせてもらいたいな」 壇のなこうには、外から入れる戸があったのだ。 ヘンゼルの質問に対して、クリプヤのダ・レ・・、 / ンガと称す 同時に、建物の内部はあかるくなった。 る青頭巾は、かたわらをかえりみた。 リ・フヤのツ・エン・ニらしいのが、いいだした。 あかるくなったとはいっても、こちらにいる者の目には、壇の上 「その説明は、リ・フヤの仕事である。リプヤのツ・エン・ニがす の連中は逆光になる。そんなによくは見えない。それに反して壇に る、と、いっています」 立った者には、土間にいる人々ははっきり分るわけであった。 入って来たのは四名 : : : いや、五名の原住者だ。 ロポットが訳した。 いずれも青衣帯剣である。 やはりリブヤのツ・エン・ニだったのだ、自分もだいぶ原住者を のみならず、ひとりは青い頭巾をかぶっていた。 識別出来るようになって来たそーーと、ヤトウは思った。 原住者たちはかれらの背後の戸を開けたままで : : : 青い頭巾をか「仲間を助けてくれた外来者に対して、タガノヤは昔からのしきた ぶった者が壇の中央に進み出、ひとりが ( どうもリプヤのツ・エンりにより、次の事柄を認めている」
進んでいるはずだ。はØO なりに、部下のロポットたちを ( 人びとつあるばかりで : : : ほかには窓はなかった。 間には感知出来なくても ) 掌握し、指令を発しているのである。も足元は土間で、壁ぎわには何かいろいろ積みあげてある。 っとも今度のこの旅行にさいしては、 ooa は自己の仕事を、一応の が : : : 妙なのは、戸口から見て突き当たりの壁の幅一杯に、一段 制限っきで、部下最上位のにゆだねて来ているけれども : ・ 高くなった部分があることだった。一段といっても高さは一メート の手に負えないケースが発生したときはに無電で知らせルはあるだろう。ちょうど講壇のようなので : : : ただ、壇のこちら るなり、飛行機能を有するロポットを派遣するなりして、連絡がと側には木を組み合わせた仕切りがある。 れる仕組みになっている。 「ここは、何でしよう ? 」 テイト O O が呟いた。 しかし、こうしたロポット使用法についてのヤトウの意識は、こ のさい局面とは何のかかわりもないことだった。 ヘンゼルは何もいわず、シェド O が応じた。 それよりも彼にとって重要なのは、自分なり、自分とのグル 「小さな講堂みたいな感じね。あの壇を見ると : : : 」 1 プなりが、メン・ハーでもあり客員でもあるあいまいな立場の中 いいながら、シ出ドÄO は壇のほうへ歩いて行った。「そうする で、どう振舞うのが妥当かということであろう。 と、この仕切りは何のためかしら。それに講壇なら上へあがる小さ な階段があってもいいはずだけど、そんなものは見当らないわね」 ポートに乗ってからずっと、彼はこれまで何ひとっロ出ししてい その間に、ヤトウは壁ぎわに近寄った。 なかった。差し出がましいと思われたくなかったからだ。ことにヘ ンゼルが次々と決定をし命令を下し、しかもそれらの措置が壁ぎわに積んであるのは、乾いた木の枝をくくったものや、それ ( 基本原則の上では彼になじまないものがあったとしても ) おおむに、何に使うのか、四角い小さな板切れがたばねられた山もあっ ね的確なように考えられるときに、何も出しやばる必要はないのでた。 ある。そしてヘンゼルが横槍を入れられたり忠告がましいしし 「こんなものを置いてあるのは、物置きみたいですね」 かたをされるのを嫌っているのは、今のハーケンダイン 0 へのロ そばに来たテイト OO がいう。 調でもあきらかなのであった。じたばたすることはない。自分や「問所さ」 が乗り出してしかるべきときに、はじめて前面に出ればいい。彼不意にヘンゼルが口を開いたので、みんなはそちらへ目を向 はそう自己確認した。 けた。 その時分には、目もだいぶ慣れて来て : ・ : ・建物内部の様子も見て「問所 ? 」 取ることが出来るようになった。 と、テイト O O 。 かれらがいるのは、がらんとした天井の高い場所である。前にも「そう。ここが元来何のためにあるかは別として、今は、原住者た盟 いった通り天井に近いところに横に細長い窓が、入って右と左に各ちがわれわれを調べるための訊問所なんだ」
も、かなり外のほうに柵が植えられ、柵と柵は太い紐でつながれてると、よけいにそうである。が : ・ : ・彼は苦心して、何とか個人差を いるのである。その建物が大きいのでむこうのほうは見えないけれ見つけ出そうと努めていた。だから多少の自信は生れつつあったの ども : : : 柵は全体を取り巻いているようであった。 だ ) は、左手を剣のつかにかけ、右手を高くあげて、大きな声を出 左前方は : : : あかるい青色の、四角つぼい形状の建物群である。 した。 こちらには窓も戸もあって、原住者が出て来たり、そのへんを並ん「中へ入れといっています」 で歩いたりしていた。ただ、そのあたりにいる原住者はいずれも青ロポットが伝える。 衣帯剣であり、中には青い頭巾をかぶっている者もいた。 そのときには、もう、他の青衣帯剣が錠の役目をしている木材を 先導する青衣帯剣の連中は、他の青衣帯剣と出会うと、片手を肩外し、戸を左右に引き開けていた。 ャトウは他の人々と同様、ヘンゼルに目を向けた。 まで横にあげ、それから肱を曲げて立てるという挨拶を交し合うの みんな、入るんだ」 だ。そうしながら、左へ転して建物群の前を過ぎ、なおもどんどん「よろしい。入ろう。 ヘンゼルはいった。のみならず、自分が一番先に立って、開 進むのであった。 かれた戸の奥へと踏み込んで行った。 土塁が近くなって来た。 ャトウたち、ロポットたちは、そのあとにつづいた。 先刻、畑のかなたに望んだときは、随分遠いようだったが : ・ んなにじきにそばになったのは、一行が主として左方へ左方へと登青衣帯剣の原住者たちは、入っては来なかった。タガノヤに帰着 って来たせいもあるけれども、むしろ、土塁そのものがこちらへ急して今まで行を共にしていたふたりも同様である。 に湾曲しているのであろう。 リプヤのツ・エン・ニとお・ほしき影が、戸口に立って叫んだ。 「そこで待つように、とのことです」 そこに、ふたつの建物があった。 そんなに立派なものではない。つくりは頑丈だというものの、古と、ロポット。 びていて、うすく塗られた青色も、褪色し、ところどころ剥落して つづいて、戸はがらがらと閉ざされ、暗くなった。錠の木材をさ しる し込む音が、聞えて来た。 「どういうことだ ? われわれを監禁するつもりか ? 」 先導の青衣帯剣の連中は、その手前の建物に近寄った。 両方へ開く引き戸があり、外から錠がかかる仕掛けになってい 狼狽を帯びた怒声を放ったのは、若いテイト OO である。テイト る。 OO はどなっただけでなく、閉ざされた戸のほうへ取って返し、戸 リ・フヤのツ・エン・ニ ( のはずだとヤトウは思った。原住者たちを開こうとした。 の顔つきや体格でひとりひとりを識別するのは、彼には楽なことで「あわてるな」 うすくらがりの中で制したのは、ヘンゼルだった。 はない。青衣帯剣という、どうやら何かの制服をまとった連中とな 225