0 2 大野万紀 ・ co スキャナー スタジオぬえ ・スターシッフ・ライフラリイ ・サイエンス・トピック精液銀行の波紋 池見照ニ ・レビュウ 鏡明 / 川又千秋 / 高千穂遙 / 中島梓 / 森下一仁 霜月象一 DIMENSION 0 : 0 てればーと 世界情報 ファンダム・スポット・ ・巧 t-D u- マガジン・アンケート 第六回「ハヤカワ・ ou- コンテスト」中間発表・ : : 腕のない女と狼の奇妙な目的は・ 正常であれば生きていけない : 初登場ワトスンの不思議な世界 ョはとけた、ョは消えた 無因果世界 我が魂は金魚鉢の中を泳き ◇連載◇銀河旅行と特殊相対論 亠早 7 光世紀の旋律 ( そのニ ) ーオリオンの腕は人類のふるさとー 野田昌宏のセンス・オプ・ワンダーランド⑧ リータース・ストーリイ ^ 豊田有恒選・評〉 題名未定新コラ乙⑩ 難波弘之のトラック・ダウン④ ◇連載◇メチル・メタフィジーク最終回 アラララの山のあこうに恐山 ジェイムズ・テイプトリー 2 伊藤典夫訳 ジャック・ウアンス 6 浅倉久志訳 4 ィアン・ワトスン 6 美濃透訳 石原藤夫 4 野田昌宏 2 ー又千秋 難波弘之 吾妻ひでお 子 之責香 直一三 藤武藤 加宮安 ン隆国八郎隆 ョ ウ 喜太嘉 ア シ光井 = = ロ冶 イ 一依深楢高佐 レ ト達造子一之貴 カ目 直一 ス慶苑 ラ森淵井井藤武紙次・ 表目扉 イ金岩新桜加宮
ぎはイソカ帝国の豊かさだ。・ : ・アタワルスは、閉じ込められた部一五三三年、ビサロの軍隊はクスコに入城し、アタワルバのイン 屋の、自分の背丈の高さの壁まで金銀をいつばいにすると約東し、 カ帝国はほろんだ。スペイソ人たちは、徹底して掠奪を行ない、古 8 それを実現させた。しかもなお、これだけの財宝が残されていたの代インカ皇帝の神聖なミイラでさえ、宝石をはぎ取られたのである だからな。 いんとく おそらく、中途で隠匿された財宝は、これだけではあるまい。他だが彼らの略奪も、完璧ではなかったわけだ。ばくは、黄金の山 を眺めながらそう考えた。同時に、錏い戦慄がおそって来た。この にもいくつか、かくし場所がある筈だ」 スペインのインカ征服者フランシスコ・ビサロも、そう考え宝の山には、撩奪され、圧迫されて死んでいったインカ人たちの、 おんねん じゅばく やっき ごうもん た。彼は躍起となり、多くのインカ人を拷問にかけたが、ついに彼怨念がこめられているのではないか。彼らの呪縛が、かけられてい るのではないか。 らのロを割らせることは出来なかった。残された財宝の行く方は、 永遠の謎となったのだ。それは、王を殺され、国を奪われたインカ「 : : : さて、いつまでここにいるつもりかね ? 」 サマリー教授が払いし、持ち前のシ = ックな醒めた口調でいっ 人たちの、せめてもの復讐といえたろう。 すべての悲劇は、インカ王アタワルバの優柔不断に端を発する。 「立ち去りがたい気持は分かるが、永遠に宝を眺めているわけにも 一五三二年、北方から上陸し、インカの首都クスコに兵を進めた。ヒ ・ : そろそろ、現実に立ち戻らねばならぬ時期だと思う サロに対し、数百倍する戦士を擁するアタワルバは、どんな積極的行くまい。 が」 な策も打たなかった。 かっちゅう ロクストン卿は、夢から醒めた者のように身じろぎした。 スペイン軍は、甲胄と騎馬、鉄の刀槍で武装しているとはいえわ ずか三百名足らず。それに対してアタワルバは、三万から四万近い 「おっしやる通りですな。われわれは、目的を果たしたのだ。今後 戦士を常に引き連れていた。 なすべき仕事は、黄金都市の存在する証拠を文明世界に持ち帰り、 あいたい 彼らは、アンデス山中の保養地カハマルカで相対し、ビサロは謀大規模な学術探険隊を、組織することです。 この財宝は、われわれ個人のものではない。人類すべてのもの : 略をもって王を生け揄りにし、その扈従を皆殺しにした。王は狼狙 かんげん みしろ ・ : なかんずく、虐げられたインディオの子孫たちにまず還元すべき のあまり、身の丈いつばいの財宝を身の代金として積むと約東し、 ものでしよう。 領内各地に布告を発して、金銀を集めさせた。 王の約東は果たされた。しかしス。ヘイン人の誠実はうすかった。 しかし、インカ人たちも、われわれが今まで払った努力の代慣 ビサロは、王が実権を取り戻すことをおそれ、王座簒奪、近親相姦に、証拠品を兼ねて、多少の記念の品を頂載することには反対はし などの罪名を着せて王を軍事裁判にかけ、絞首刑を宜告し、ただちますまい。めいめいが一個ずつ、気に入った品を持ち帰ることにし ましよう。 に実行に移した。 : いうまでもないが、重くかさばるものは駄目です。 ゴンキスタ・トール さん ろうッ 4 い しいた べき
レヒッウ の結果、いわゆる描写というものはない がしろにされて、こまかいイメージはさ つばり伝わってこないし、物語自身にも 動きが乏しいということにもなる。おま物 けに登場人物は人形のごとく平板で、道 ( 徳観は今日でさえ古めかしく映る。本書 ~ 森下一仁 では、アシモフとしては画期的に、異星一 人のセックスや女性のヌードが登場して アイザック・アシモフという人は結構読者を驚かせはするが、それらとてごく やっかいな作家だと思う。面白いのだけ穏当なもので、常識的モラルにショック を与えるほどのものではない。人間およ作品は、みごとなくらい、そういったも れど、評する言葉に困るのだ。 多くの作品がミステリ仕立てになってび社会問題に関する限り、エキストラボのとは無縁なところにあるからである。 いるのもその一因だが、それが根本的なレーションは皆無というか、逆向きに働話がもとに戻った。では、アシモフの 面白さはどういうふうにいえばいいのか いているといってもいいかもしれない 原因ではない。既成の文学的批評言辞で やはり、、、 し力にも科学者らしい論理 こういった欠点は、「内省なるものに はを把えきることができないという ことの、ひとつの典型がここにあるのではとんと縁がない」という彼の性格にその積み重ねと、その基本に横たわる優れ たアイデアというしかあるまい。不可解 . のままつながるものだろう。現在のアメ はないだろうか、とも思う。 リカ社会のあり方をよしとする保守的なな状況が、ある時点から、突如として整 アシモフの作品の核となるのは、なん といってもアイデアである。アイデアの姿勢は、娯楽性を第一とする観にも然とした形に組み合わさる。あるいは、 ・ウェーヴ華やかなりし解決困難な課題がすっきりと落着する。 みが彼の作品を支えているといってもい反映し、ニュ 1 アイデア・ストーリー の持っ快感で いだろう。その他の点は、たとえば語り頃、彼がとったかたくなな態度は記憶に 口をとってみると、人気作家の中あたらしい。保守的とか革新的とかいつあろう。空理空論の楽しみといづていし かもしれない。 で、これほど文学的、芸術的香気から縁た次元を離れたとしても、アシモフとニ ・ウェ 1 ヴとは基本的なところで相アシモフの小説の書き方は「課題解決 遠い文章を書く人は、ちょっといないのユ 1 ではないだろうか。物語の展開が登場人容れないものがあった。文学の前衛とし型」とでもいうようなものであるらし 有名な『夜来る』誕生の話にして ての役割りを担おうという意気込みがニ 物どうしの会話によって語られるのは、 も、ロポットものにしても、彼は最初自 ・ウェーヴの顕著な特徴だったが、 この作品ではもはや意図してのことだと しか思えないほど徹底されているが、こアシモフにはそういった芸術としての文分に困難な条件を課しておいて、それを れまでの諸作でも目についたことで、そ学への指向はまるでみられないし、彼のうまく解きほぐしてゆくような形で話を アイザック・アシモフ著 『神々自身』 ュ 神々自身 アイザアレを′ 1 問の沈黙を破る一 第を吟物炉、れ ( 、くる舞は、 - な . ; ・、い限の工ツルキら、すが 当ツ参持て ? 、第の、 ロ 8
合併号。人工授精が行われたのは昨年秋とみら子供は、親に続いてノーベル賞をもらえるようチスのようなことになりかねない」 な業績を上げる保証があるわけではないし、東「人類は、自然に生まれ、さまざまな人間が集 れ、もう出産は間近である。 グラハム氏は「将来は年に百人のペースにし大卒の親から生まれた子が東大へ必ず入れるわまった多様性のある社会がよいものである」 「だいたいノーベル賞受賞者という高齢者の精 . 冫ーし力なしよ、つ・た。 けでもないから、そう単屯こま、 たい」と意気盛んである。 液では、生きが悪く、奇型児などが生まれる危 これに対し、反対の声は多い ところが、この精液銀行の存在が公になって 以来、あちこちから、さまざまな反応の声が上「生命誕生の領域にまで人工の手を加えること険性が高まる」 こうした、さまざまな反対の声の中に混じっ は、人間の尊厳をそこなうものだ」 がってきた。 て、精液銀行の名称に使われている当のマラー まず「ノーベル賞学者の精子をもらえば、秀「意図的に人間改良を進めて行くことになり、 ーマン・マラーの文字を 皿才が生まれるのは間違いないから、将来の入試知能の低い者や身体の不自由な人は排除しよう博士の未亡人から「 ( 使ってもらっては困る」とのクレームがつい Ⅷ地獄に頭を悩ますことがなくなる」と賛成の声という恐ろしい思想につながる」 「かって、優秀なドイツ民族を作ろうとしたナた。 が上がった。とはいっても、ノーベル賞学者の 皿 グラハム氏は、マラー博士が健在だった十数 年前、精液銀行について議論し、ようやくその 夢を現実のものとしたという。 しかし、マラー未亡人によると、そのときマ ラー博士は、精液提供者の「知性」だけでなく る 「人間性」を重視しなければならないとの意見 ~ 、れ氏 。さムを持っていて、グラハム氏の計画に参加するこ ′とをやめたという。マラー未亡人は「夫の計画 保ラ がグが悪者の手に渡って実現された」となげき「ハ , 液ぐ ーマン・マラー」の名前は取り除いてほしいと 〉精そ のそ非難しているわけである。 ・「者を このように議論が高まっているが、すでに牛 、賞素 受窒の精液の場合行われているように、冷凍保存ど ン 賞体ころか錠剤にまでなって、希望のタイプの精液 ル液 べに錠剤を手軽に買える時代がくるかも知れない。 イ 一器やはり、そこまで行きつくことを考えると、空 ノ容 恐ろしく「科学の進歩だ」などといっておれな いような気がする。 「子はさずかりもの」といわれるように、やは 7 り自然の成り行きにまかせるのが、最も自然ロ で、いい方法といえそうだ。
グラ ( ム氏の「 / ーベル精液銀行」は、去る 三月初め報道陣に公開されたが、緑色に塗られ祐 たコンクリートの建物の地下室にある。精液 は、直径六十センチの円筒形の外ワクの中に入 れた直径三十センチのガラス容器におさめられ て封印されている。この容器は、液体窒素で極 低温に冷却されている。自然放射線などの放射 線に当たって精子がダメージを受けてはいけな いため、鉛で内張りした洗たく機大の箱に入れ 池見照二 られている。万全の態勢だ。 カット / 島津義晴 ところで、この精液をだれでもほしい人はも らえるかというと、そうま ーいかないようであ あなたも天才が産めますーーというアメリカて、優秀な子孫を得ようーーという発想をもとる。ある条件に・ ( スしないとダメだ。 のノーベル精液銀行の一 : 1 スは、大きな議論にこの精液銀行をつくった。ノーベル医学生理 グラ ( ム氏によると「遺伝学上問題となる病 を呼び起こしている。 学賞受賞者、故 ( ーマン ~ ・マラー博士が、かっ気その他の異常がなく、健康で子ダネのない夫 科学進歩がついにここまできた、と評価するて優秀な男女間の人工授精による人間改造を提婦」に限るという。 人もおれば、逆に人間生誕の神秘に人工の手を唱したことに共鳴して実行したとのことで、正どうや「て、こうした条件の女性をさがした 加える神〈の挑戦だと厳しく批判する人もい式な精液銀行の名称は、この遺伝学者の名前にのか。それは、自らが主宰している知能指数 る。そうした議論をよそに、精液の提供を受けあやかって「胚選択のための ( ーマン・マラー (—O) の極めて高い女性のサークル「メンサ . た三人の女性は、近く出産を迎える。はたし貯蔵所」となっている。 ・ソサエティー」の機関紙「メンサ・プレティ て、精液提供者のようなノーベル賞ものの優秀グラ ( ム氏は、精液提供者として、まずアメ ン」に広告を出して、希望者を募ったのであ な頭脳の神童が生まれてくるのだろうか。興味リカにいる十一人のノーベル賞授賞者に白羽のる。 深いところである。 矢を立てて接触し、これまでに五人から精液の「優秀な男性の精液を提供 ! この精液はノー すでに新聞の = = ースなどで報道されている提供を受けたという。「最も創造的な科学者の ベル賞受賞者の極めて優秀なもの。精液代は無 ため、ご存知の方も多いが、この精液銀行は、子孫の数を増やしたい」というのが、 / ーベル料。だが、送料八ドルと精液輸送用特殊容器の アメリカはカリフォルニア州サンジェゴの東北賞学者を提供者に選んだ理由だという。 保証金一一百五十ドルは負担ください。これだけ 約五十キロの山の中の小さな街、エスコンディ 将来は、オリンビックの金メダル選手の精液で、あなたは必ず素晴らしいベビーに恵まれま ード市にある。設立したのは、ロ ・ ( ート・グラを集めた「金メダル精液銀行」や、偉大な芸術す」 ( ム氏。・フラスチック製のメガネ・レンズを開家の精液を集めた「アーチスト精液銀行」など この広告によって「是非私に・ : ・ : 」と申し出 発した七十四歳になる老実業家である。 を設立したいという。映画の大スターの精液をた女性の中から、夫の同意を得た妊娠経験のな 世界のト「プクラスの頭脳の持ち主の精子集めた「タレント精液銀行」が登場するかも知い女性一一一人がはれたわけである。広告が出た を、知能指数の極めて高い女性に人工授精しれない。 のは、昨年の「メンサ・プレティン」七・八月 サイエンス・トピック 半シ金彳の波糸
ラーーいや、なぜ思い出さなか「たと言うべのであるということは、次の二つの理由からと優れた " 体。を手に入れなければ。今まで きか。とにかく、・ほくはあの激突のシ。ックも証明出来る。一つは、 " 人類。の地球上のだ 0 て、そのことに気が付いた祖先は、何回 で突然目覚めたのだ。ぼく達の祖先が初めて生命群の中に於ける位置付けである。君達はとなく改良を続けて来たのではないか。ーく " 人類″だけが地球上のあらゆるサイクルの達に出来ない訳がない。ああ、意識が不鮮明 この惑星を訪れた時、それ以前に使用してい になって来た。・ほくはもうだめだ。だからこ た生命維持システムが地球の環境に適応出来外に置かれている、という事実に気付いてい ず、やむなく地球上の生物の遺伝系列を = ンるだろうか。例えば、地球上で見られる食物れを読む君達、この事実を認識して、何 トロ 1 ルすることにより、新たな生命維持シ連鎖を考えてみ給え。″人間″を除いたあら ステムを作り出したーーというのが真相なのゆる種族がこのサイクルの中にあって、各々 だった。ぼく達は、細胞組織によ 0 て構成さの・ ( ランスを保 0 ている。そのパランスを崩事故現場に医師が到着した時、男は既に息 れた " 容器。の中に在 0 て初めて、その生命し、数多くの生物を絶減させ、自然を破壊絶えていた。男の左手には、死際に必死に書 を維持することが可能となるのだ。今からちし、勝手放題に地球を改造しているのは誰き残された、数枚の紙切れが握られていた。 ようど三百万年程前、当時の地球で最も進化だ ? 地球に存在する総ての生物に危害を加医師は、それを見て奇跡だと思った。こんな した生き物であった猿人を母体にして、後にえているのは、″人間″ではないのか。では、傷を受けて、よくこれだけのものを。そして 原人と呼ばれることになる最初の生命維持シ一体それは何故なのか。それは、 " 人間。がその紙切れを拾い上げて、その顔に何とも言 ステムを作り出し、その中に住み着いたの地球の自然によって生み出された生き物ではえない表情を浮べた。ーーまるで読めないの だ。そして、システムの不完全な部分を徐々ないからだ。それだからこそ、″人間″は無だ。 に改良して、旧人・新人・現代人と次々に秩序に自然を破壊しても平気でいることが出 、募規定 ″進化″させて行ったのだ。この事実は、来るのだ。ただ快楽の為という理由で、動物 ″人の進化速度″を見れば一目瞭然たろう。を殺せるのだ。二つ目は、″人間″が″自分 ■応募資格一切制限なし。ただし、作 の脳″を半分も使い切ることが出来ないとい 品は商業誌に未発表の創作に限りま 前猿人から猿人までの緩やかな進化に比べ、 す。 う事実。このアイハランスこそ、まだ・ほく達 それ以後の進化は飛躍的に急速になってい る。最初のうちは新しい " 容器。に馴染めの生命維持システムが完全でない、というこ■枚数四百字詰原稿用紙八枚。必ずタ テ書きのこと。 ず、その能力を十分に生かすことの出来なかとの証明ではないか。・ほく達は、このシステ ■原稿に住所・電話番号・氏名・年齢・ った祖先も、体が馴れるに連れて、加速度的ムをこれまでにも数段階に分けて進化させて 職業を明記し、封筒に「リーダーズ にその能力を拡大させて行ったのだ。勿論、来た。しかし、まだ不完全なのだ。・ほく達は、 ストーリイ応募」と朱筆の上、郵 ″容器″だけでなく″・ほく達自身″も進化し何故そのことを思い出さない。何故自分の真 送のこと ( 宛先は奥付参照 ) 。べン ネ 1 ムの場合も本名を併記してくだ たのは言うまでもない。″脳が″人類“の実の姿を見失ってしまった ? これこそ、生 さい。なお、応募原稿は一切返却し 進化と共に巨大化しているのがその証拠だ。命維持システムの欠陥がもたらした障害では ません。 ないか。悲しいことに : ほく達は生命維持装 しかし、これも正確に言うなら″人類″が ■賞品金一封 ■掲載作品の版権および隣接権は早川書 " 脳の進化と共に、と言い直すべきなので置無しには何も出来ない。生きることすら出 あるまた、ぼく達がそれだけで独立した生来ない。だから君達、このままにしてはいけ 房に帰属いたします。 命体であり、本来地球上に存在しなかったもないのだ。早くこの事実に気が付いて、もっ 5
栄利案 「脳細胞単独生命説」 ぼくは、死にかけている。もっと正確に今ら、何処にでもいるようなごく普通の人間だ途中ーー一つの山の岩盤を削って、トンネル の状態を表現するならば、ぼくを取り巻く生った。休日に町を歩けば、忽ちその他大勢の中を貫通させる工事の時ーーものの見事に事故 命維持システムが無残なまでに破壊されて、 に溶け込んでしまい、女の子が振り返ることが起きて、数十名の人間達が岩の下敷になっ ・ほくの天色で皺だらけの体が剥き出しのままもない。会社に勤め、給料を貰い、食べて寝て死んだのだ。それで、当然のことながら他 汚らしい外気に直に晒されているのだ。生憎て、残った金と時間でささやかなレジャーをの人間はやる気を失い、多くの季節労働者達 ・ほくの体は、こんな屈辱に耐えられる程逞し楽しむ毎日の繰り返しだった。その、これとは仕事を放り出した。その為作業は遅れ、労 くはない。だから、・ほくは後数分で確実に死 いって何ということもない私の人生を狂わせ働者に与えられる報酬は、一挙に倍額に跳ね ぬだろう。しかし、その前に一つだけ言ってた いや、正確には正常に近付けたと言う上がっていた。それでその金につられて、つ おきたいことがある。ぼく達サイコイマジネべきかーーーものが有るとすれば、それは・ほく いふらふらと志願してしまったという訳だっ リーと呼ばれる、生命体についてだ。・ほくはの選んだ職業だった。ぼくは元々頭の回転が た。それにぼくの読みの中には、あれだけ派 今、辛うじて生命維持システムの左側半分を速い方ではなかったのでーーーもしかしたら、手な事故の後だから、もう当分は安全だろう、 制御している。ばくは元来″右利き″だった このことは既に書いただろうか ? どうも思それに万が一事故が起きたとしても、ぼくが から、左側のシステムを操るのには慣れてい考が混乱しているーーそれで、頭脳労働より其処に居合せる確立は数百分の一だーー・そん ない。しかし外気に触れた御蔭で、ぼくは右も肉体労働 ( ああ、この言葉の何と心地好いな甘い考えが有ったのだ。そして、その結果 側の制御系統と音声出力系統を犯されてしま響き ! ) を選んだのだった。勿論、その方がぼくは頭に岩石の急降下爆撃を食らい、目か った。だから左側のシステムに頼るしか、意手つ取り早く、しかも長期的な展望を抜きにら出る火花で応戦したという次第だった。し 志伝達の方法がない。後は・ほくのささやかなすれば、収入が多いという理由も有ってのこかも、御丁寧なことに、その時のぼくは頭の る忠告が、君達みんなに正確に伝わることをとだ ( 白状すれば、七三で後者の理由が勝っ汗を拭おうとして、ヘルメットを脱いだ処だ 祈るのみだ。 ている ) まあ、とにかく早い話が、ぼくは建ったのだ。それでぼくの頭骸骨は、まるでプ さて、話を何処から始めたらいいだろう。設会社の従業員、それも全くの肉体労働者にリンかコーヒーゼリーのようにいとも簡単に そうだ、まず初めに自己紹介しなくてはなるなったという訳だった。 口を開け、ぼくの脳細胞を人前にさらけ出し まい。今となっては可笑しなことだが、・ほ ところで、それだけなら別に問題はなかっ たのだ。そしてその瞬間、・ほくは″・ほくの脳 にも君達が自ら名付けたホモサビエンスの仲 たのだ。ぼくの運命を変えたのは、ぼくが自細胞″という表現が誤っているという事実を 間としてその存在を信じていた頃には、田中ら危険なダム建設工事の仕事に志願したこと発見したのだ。だって壊れた頭骸骨の中から 一郎という平凡な名前を持っていた。そしてだった。な・せなら、ぼくは元々その仕事に関姿を現したのは、・ほく自身だったのだから。 その田中一郎である・ほくは、君達流に言うな係などなかったのだ。ところが、その工事の なぜ今までこのことを知らずにいたのだろ 0 入選作 0 4
だないだろう。 う予兆から、ていねいに筋を運んでいくの牛肉とまちがえて、夫の肉を食ってしまう 「痛み」 波多野伸幸 ( 広島市 ) で、説得力がでてくる。オチは幻減した。 というアイデアだけでは、この故事にとても ショート・ショート作家になりたいという「コリタ氏の栄達」永井健三 ( 相模原市 ) 及ばないことが判るだろう。 だけあって、どの作品も水準以上なのだが、 数学だけ進んでいる後進惑星にきた駐在員さて、今月は、締切りを繰りあげたせい なぜか決手になるイン・ハクトがない。早い話が、現地の小学校へ入れられてしまう話。た か、作品数が少なくなり、コメントに残す作 が、巧い文章を書くだけなら、修業次第でなしかに数桁の九九を暗記している地球人なん品も減った。楽な作業のようだが、かえって んとかならないこともない。自分がほんとうているわけがない。珠算の検定でも通ってい難しくなった。 に書きたいことを前面に押しだすことも必要ないかぎり、四 x などという計算を、暗算入選作は、アイデアで採ったが、書き方に である。 では答えられないだろうが、こういう話は、 は満足していない。先祖返りのように、遠い レーシャル・メそリー 「第一度凍傷顛末記」片桐里香 ( 和歌山市 ) もっとドタ・ハタ調で、笑えるようにするか、先祖の種族的記憶が発現するくだりは、論旨 面白かったが、オチは、もう一考だろう。 あるいは、もっと長くするかのどちらかだろが・ほやけている。選者がアイデアだけ貰って ードになる。 しもやけを掻いていると予知能力が発現するう。 かけば、もっとすごいハ という、ナンセンスなアイデアがいい。ただ「牛肉の香り」 轟正都 ( 東京都 ) ところで、なんとか鉛筆書きは、やめても し、こうなったら、ドタ・ハタ調でも、政府が人肉食の話も、よく来るのである。よほどらえまいか。眼精疲労はなおったが、読みに 黙ってないだろう。手錠をかけて南極へつれのアイデアでないと採りにくい。参考までくいことおびただしい。その逆に、一文字ま ていってでも、彼女にしもやけになってもらに、もっとよくできた故事をあげる。 ちがっただけで、カッターで切りとり、裏か わないと困るわけだ。このあたりの展開で、 暴君として有名な設の紂王は、周の比干をら別紙を貼りつけ、書きなおしてくれる人も なます もっと別なオチにたどりつけるだろう。 殺し、その肉を膾にして、甥にあたる周の文いる。そこまで礼をつくしてくれる必要もな 「フリー・ 。線を引いて消し、横に書きなおしてくれ ライフ」和気厚至 ( 東京都 ) 王に食わせようとし、使者を遣わした。中国 イヤフォーン型レコーダー という流行では、聖人は人肉を食わないという。紂王れば充分だ。 に目をつけるところは、さすがだと思うのだ は、人望のある文王に、天下を奪われるのでそれから、アンケート付きの原稿は、かん いちいち答えられな が、いつものように地味すぎるのだ。この人はないかと恐れ、聖人かどうかテストしたのべんしてもらいたい。 ま、ストーリイ・テラーなのではないだろうである。文王は、叔父の肉でつくった膾を使 。この欄をはなれて、選者のところへ届い か。メーカー開発部の雰囲気、そこでの会話者のまえで食ってみせた。使者の報告を聞いたファンレターには、返信を出す必要がある など書きこまないと、魅力がでてこない。そて紂王は、安心した。そのころ、文王は、館と認めたものには、できるだけ返事を書く方 うすれば、当然、四十枚以上にはなる。目下、の裏手に用意した黄金の棺桶のなかへ、たっ針である。 短篇に挑戦とのこと。お父上にもよろしく。 たいま食ったばかりの叔父の肉を、ゲーゲー 西山美佐子さん、改稿うけとった。読ませ 「ワンスモア」 藤田笑 ( 川崎市 ) と吐きもどしていたのであった。文王は、叔ていただく。 ア。ハートのなかに、・フラックホールができ父が帰ってこないので、紂王に殺されたと思 アンソロジー、ようやく進行する。なんと るというアイデアは、実はよく来るのであ つかわされた膾の材料が何かを知りながか時間をつくって、それそれの作品に、プロ る。ただし、展開が面白いので、コメントすら、わざと食ってみせたのである。やがて、作家の解説をつけたい。いろいろな人に、頼 る。部屋のなかのものが、なぜか落ちるとい殷は、周によって亡・ほされることになる。 んである。乞、御期待。 ちゅう ひかん アタビズム ロ 3
0 読者のつくるべー ) ン 0 リータース・ストーリイ 選・評 豊田有恒 今月から締切りが変更になった。これまでろう ? 親類縁者がわっとおどりかかり、プ これも仕方なくコメントする。遊園地とい は、月末に下読みの済んだ数十篇が、選者宅ラチナの義歯、ダイヤを埋めこんだ骨など、 うものに、ある種のつくりものの恐ろしさを へ届けられた。月末月初は自分の締切りと重みんなで解体してしまう などという結末感じることがある。つくりものと判っている なるので辛いため、半月ずらして十五日に変まで書いたらどうだろうか ? 他二篇は苦しのに、そこで何かの恐ろしいことが、ほんと えてもらった。したがって、ここでコメント 。以下、同封の応募予定リストの作品に期うに行なわれるかもしれないと思わせるとこ してなくても来月廻しになっている場合があ待したい。 ろがある。プラッドベリの「黒い観覧車」な るから、がっかりしないで貰いたい。 次点「男と女」 大熊東 ( 浦和市 ) ど、その種の傑作だろう。が、こう淡々と書 入選「脳細胞単独生命説」栄利案 ( 東京都 ) よく書けている。この手の刑事物の応募はかれては、唐突で興覚めする。 タイトルもペンネームも気にくわないが、 よくある。が、アイデアが捨てがたい。語り「名も知らぬ恋人」 曲馬学 ( 札幌市 ) 選者好みのアイデア・ストーリイで、おおまロも巧みである。ただし、本質的には、短篇ほの・ほのとした良い話なのだが、選者には けにまけて入選にする。応募してきた他の一 のアイデアなのだろう。このあたりの見きわ苦手な部類である。この種の話をあまり読ん 篇は、あまり買えなかった。この手の人は、 めをつけるというのは、無理な要求だろう。でいないので、なんともいえないが、これま 出来・不出来が激しいのではないか。平均しプロでも五十枚で書いてしまって、せめてあで、どこかで書かれていていいアイデアであ たレ・ヘルの人より、はげましてあげたくなと二十枚などと、口惜しがるものだ。 る。しかも、もっと巧く自然に。 る。選者が書きはじめたときに似ているから「才能」 須藤修一一 ( 土浦市 ) 「心と身体」 松本昇龍 ( 金沢市 ) かもしれない。つまり、あまり器用でないか いくら死のうと思っても死ねないというギ これまた、ほの・ほのとした話なのだが、い らなのだ。 ャグは、スラブスティック・コメディで何度かんせん十五歳、巧く書けない。純愛物語と 次点「手を握ろう」 飛鳥了 ( 東京都 ) も扱われている。オチが奇抜なのでコメント いうのは、どう考えても & に向いている 就職おめでとう。熱心に書いてきてくれするが、あまり出来はよくない。順不同でコ とは思えない。しかも、肉体の売り買いが行 る。楽しみだ。遺産をサイボーグ化した遺体メントしている。 なわれる未来社会が背景。シチュエーション に隠し、相続税のがれをするわけだが、さ「閉まるドアにご注意下さい」 の説明だけで枚数をくってしまう。しかも、 て、この遺体は、葬式のあと、どうなるのだ 白河道三 ( 成田市 ) たぶん、四十枚の短篇に仕上げる力量は、ま
ルするようにしたんだ」 電気的活動から常に出ているパ もか シグナル・アウト 号 種果 ルスと合致するからだ。脳学者その装置は音楽の考えられる限りのパター ( スビーカーへ ) 機効 9 声流 るなるギル・ ( ート・リスターはこう確ンを探っていくうちに、ついに究極の旋律を 音の定力 夬 < いう o- あ信し、クラシックやポ。ヒ = ラー奏で始める。ギル・ハ ートは自らの作った装置 / ン O てよⅦ釵の有名曲を沢山選び出して。 ( タの奏でるメ 0 デ→のために夢幻の境にさまよ れの。ム月 音 ( プ一音す 0 ・、つ いこんでしまう。 可ーン分析をする。 一夕、降ム ロ一方時ラ 続一使調 「大雑把なやり方だけでやっている ( 傍点筆 エレ出をグ 接ラに変「すべての現存するメ。ディー 者 ) 作曲家にすら、諸君の頭と心を何日も続 には、一つの根本的なメロディー 夬タ LL ヴネの化ロ号 , 部プき . ンエ音変プ信図内ビとと ラ色石 > 、なに近づこうとした悪あがきにすけて支配できるメロディーを生み出すことが ク音フ ガ鍵るし < ぎない。何世紀にも渡って作曲できるのだから、究極の旋律の ( 人間に与え ャ リ打あ欲 > 家たちはその根本的なメロディる ) 影響がどんなものか : ・ : ・。人間の頭脳の イ ーを求めて手さぐりしてきたん記憶回路で果てしなく響き続け、意識そのも 器 咸サ だが、音楽と脳との関係を知らのの物理的な現われである脳波を乱してしま ン ク 果るなかったんで、彼らは自分たちったら、もう一巻の終わりなんだ」 シタ発 ッ をえが何をしているのか、気づいてギ化ハ ートは廃人になってしまったが、し ロ レレ = = ロ ト割考 かし彼の助手には変化がなかった。彼は完全 いなかったんだよ」 ( 同 ) フ 一ュネ調 一役と 一ジェ - の →のチ分析に一年かけたのち、ギルなる音痴だ 0 たのだ。彼にと 0 ては究極の旋 キっッ ハートはその合成にとりかか律も、塀の上で鳴いている猫の声も、同じだ サ器タ 0 0 ったのである。 盤まスる。これが、現在のデジタル・ 辰一 O O 鍵す イ手レ > > マイクロ・コンポーザーっきの これで思い出すのは、かって音楽家と物理 サ発シ ☆ 電 シンセサイザーと驚くほど良く学者の間でたたかわされた議論である。ホロ セ ド定 ヴィッツが弾くビアノの音と、鍵盤の上を猫 似ている。 ン 一決 ポ呈 シ 「大雑把にいえば、彼が明らかが歩いて鳴った。ヒアノの音は同じか、という > 音 キ 0 ( にした法則に従って、音のパタ例の議論だ。同じだとも言えるし、同じでは ク訳 ) 1 ンを自動的に作りあげていく機械を作ったないともいえる。科学と感性の出会う場所、 十シレーター 僕が前回で言いたかったこと、そのものずわけだ。彼は発振器やミキサーを沢山持ってと僕が書いたわけは、まさにここにある。 ・はり文 ~ 。 いたんだよ。事実、普通の電子オルガンに手ところで、クラークの思い描いた装置は、 偉大な旋律やヒット曲が人間の心に強い印を加えて装置の一部に利用したほどなんだ。現実にはどのような形になって実現したのだ ろうか : 象を与えるのは、それが何らかの形で頭脳のそしてそれらを自作の作曲機械でコントロー