クリフォード - みる会図書館


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1. SFマガジン 1980年6月号

SF スキャナー だが彼は、その論文をこっそり月へ送った。 に、突然見知らぬヒッビー風の男から電話がか就けない。失業だ。まあ、どこか教師のロくら 2 いあるだろうと、妙に生々しく、妙にさわやか 著名な天体物理学者のハインリッヒ・チンマー かってくる。それがオープだった。月のチンマ 2 マン教授の目にとまるように。 な日々が訪れる。このあたりは小説としても非 ーマン教授に送ったコビーはあちこちを巡り、 特に何ということもなくひと月が過ぎる。 オープたちのグループもそれに基づく実験をや常によくできた、魅力的な部分だ。 結論からいえば、二人はチンマーマン教授の このあたり、未来の若い研究者の、組織の中っていたのだ。二人はたちまち意気投合する。 コネで、— ( 国際科学財団 ) の重力研究所 での悩みとか、日常生活を描写していて、実感かくてアーコットとモーリイもかくやというコ に勤めることになる。ここで二人は自由な研究 がある。コン。ヒュータと電話をミックスしたよンビが誕生する。 うなインフォネット・システムとか、いろいろ結局、彼の論文には軍も興味をもった。評価をつづけ、さまざまな新発見をおこなう。オー 一一十一世紀を思わすディテールはあるけれど、 が高まると、 O でもプロジェクト・チー ・フはクリフォードが予想した高次元輻射の検出 この手のものならもう十年もすれば実現しそうムをつくって彼の研究をつづけるようにとの器を作り、これが後に〈ジェネシス・マシー な感じで、それほど″未 ン〉のもととなるのだ。 来的″ではない。 再び政府の干渉がはじまる。部品の入手も困 オードと、地域の病院で 難となり、家庭用電化製品のジャンクまで利用 週三日働いている妻のサ してがんばり、ついに検出器の改良型〈マーク ラとの生活も、ごくあた、 』Ⅱ〉を完成する。これは統一場理論の六次元連 りまえの質素なものであ 続体のうち、ふつうでは観測できない高次元波 機 スペース・ライク る。最近のに登場す 記動の、空間的な成分をグラフィックに表示す 世 る活動的な女性たちにく 6 る能力をもつ。最初の実験でスクリーンに現わ らべれば、サラはごく古 れたのは、地球の横断面像だった。 典的な″科学者の美しく とうとう政府の圧力に屈する時がきた。彼ら 聡明な助手″タイ。フで、 は今度は逆に、その立場を利用して、積極的に 主人公たちにコーヒーを 行動する。操作する人間の脳と直接インターフ 運んだり、ウィットのあ エースをとる超コンビュータ〈— O 〉も導 る会話で場をなごませたりする以上の存在では″命令″が下される。自由な研究は圧殺され、入し、〈マークⅢ〉は宇宙のエネルギーを局所 ない。はっきりいって、この小説に出てくる人外部との接触は禁じられ、どれだけの予算でい集積できる超兵器となる ( いや、この辺も実に 間たちは、クリフォードをのそけば、だれも個つまでに″結果″を出すようにとのしめつけがきっちりと理論がつけられているのだ ) 。 性というほどのものをもっていないのだ。もつはじまる。 東西の対立はいよいよ危機的局面に達し、あ とも、それでも別にかまわないし、パターンとついにクリフォードは辞表をたたきつける。 らゆる近代兵器をおもちや同然にしてしまうこ しての魅力は充分にある。 現代的ヒーローの誕生だ。同じころオープも・ハの超兵器の出番がきた。しかし、軍に協力して さて、ここでクリフォードの片腕となる男が ークレイをやめ、クリフォードの家に身ひとっ いたように見えたクリフォードの脳裏には、ま 登場する。 ークレイの実験物理学者、オープで転がりこんでくる。二人とも、プラックリスったく別の考えがあったのだ : ・ というような、よくあるストーリ ーである。 ・フィリツ。フスである。クリフォ 1 ドの自宅トに載ってしまった。もう政府関係の仕事には

2. SFマガジン 1980年6月号

S F スキャナー これ以上詳しく書くのはよすが、これを出発 でも書き込みはしつかりしているし、楽観的確率分布に他ならない。 すぎる結末も悪くない。超兵器が作動するとこ高次と低次の共鳴が共存するとき、″質量″点にして実に多くのアイデアが出てくるのだ。 ろなど、昔のス。ヘース・オペラの迫力と現代科が生まれる。五次元の共鳴では小さな質量が生まず宇宙論だ。無からの物質創生でわかるよう まれ、それは電磁相互作用と弱い相互作用によに、クリフォードが提出するのはホイル流の定 学のとけあった大スペクタクルである。だが、 何といっても、この小説の一番すごいところって相互作用する。六次元になると、より大き常宇宙論だ。じゃあ輻射はどうなるのか ? 輻射とはビッグ・・ハンの熱輻射の名残りで は、あちらの批評がいうように、その科学的スな質量が生まれ、強い相互作用が可能になる。 ベキ = レーションのおもしろさにある。今まで高次元の波動が時空成分をもたないとき、相はなく、実は宇宙の重力波発生のとき生じる高 ーのいたるところでそれは互作用はするが質量をもたない粒子ーー光子、次粒子の相互作用によるものなのだ。ビッグ・ 述べてきたストーリ ハン理論で問題となるヘリウムの量も、ここか 現われ、しかも論理的に首尾一貫しているのニュートリノなどーーとなる。相互作用が時間 ら説明される。 ・こ。だからホーガンの仮 クリフォードの理論では、物質の中で素粒子 空理論は、まるで本当の が消減するとき重力波が生じるのだ。通常の物 仮説のように見える。そ 質ではわずかなものだが、プラック・ホールで れをもとに仮空科学解説 顔はこの効果が重大となる。観測の結果、・フラッ を書いたとしたら、まる の ク・ホールから来る輻射は、ホーキング効果 で本当の科学解説のよう っ ( プラック・ホールの境界面での量子力学的蒸 に見えるだろう。そのう の 発によりエネルギーが流出する効果 ) から予想 え、いろいろと意表をつ 日 一明されるものより大きいことがわかった。これは く結果が現われて、実に クリフォードの計算どおり、重力波に伴う高次 おもしろいのだ。説明し 粒子によるものだった。 てみよう。 そのほか、次のような理論的予想がある。 まず、電磁気力、強い 相互作用、 弓い相互作 相対論に矛盾しない超光速。 用、そして重力を統合する、統一場理論があ軸の方向に対称におこったとき、それは粒子・ 人工プラック・ホール。 る。これらの力はすべて、六次元直交座標空間反粒子の対消減となる。 重力ビーム。 複合体 ( 略して空間 ) という連続体の中を伝クリフォードは、この空間での回転を考え 宇宙空間のエネルギーの局所集積。 播する波東の、アインシュタイン的な時空へのた。空間の高次領域のみで意味をもっ粒子を その他もろもろ。 投映として表わされる。 考え、それを高次粒子と呼ぶ。これは通常の物 低次の四次元の各共鳴モードは時空のわく組理的手段では関知できない。しかし高次粒子ど みを決定し、より高次な共鳴モードとの交点うしの相互作用によって、最終的には低次領域こうして、ついに〈ジェネシス・マシーン〉 が完成するのだ。 が、われわれには素粒子として見える。素粒子での共鳴も発生する。これは何を意味するか ? ードファンの方、ね、おもしろそうで はすべて空間の波動方程式に従って相互作用無からの物質創生である ! 同様に素粒子の 1 しよ、つ - 2. し、その″半径″というのは単に関数の空間 ( 対消減でない ) 消滅もあり得る。 E 物第 0 ne 毛ア引み引、 M HDGRN A n 、 pe 「・ scien ( ・市「川部曾 om the ou 市 0 「 Ot ー INH THESTARS ー 2 3

3. SFマガジン 1980年6月号

SF スキャナー は、ごく近いうちに某社から翻訳が出るらし や、となっちゃうロでして。・ハラ色の科学信仰『創世記機械』 "The Genesis Machine"' また、 "The Gentle Giants of Gany- の名残りみたいのがあるんですね。ちょっとナ『ガニメデの優しい巨人たち』 "The Gentle い 》の続篇なので、ここ ィーヴすぎると思われるかも知れないけれど、 Giants of Ganymede" の三冊の長篇をたて mede" も "lnherit たとえば深夜のコンビ = ータ・ルームで一人、続けに出し、最近また『明日の二つの顔』会 The では "The Genesis Machine" を紹介するこ 大型コンビュータのパワー ・シーケンサのスイ Two Faces of Tomorrow" を出した。どれとにしよう。ぼくの印象では、これはホーガン もペー ー・ハックにして三百ページ前後というの人工知能を扱った最新作まで含めた四篇の中 ッチを入れるときなんか、相当すり切れてい ードとしてずば抜けているといって るはずなのに、一種の″感動″があるのです長い話で、おまけに全部デル・リイ・・フックスで、ハ しいと思う。 という、ふつうならあまり読む気をそそられな ( わ、恥ずかしい ! ) 。カチ、カチ、カチ、と、 まず、あちらの例にならって、はじめにスト リレーの入る音がして、しだいに各装置に電源い新人作家の書きおろし長篇なのだが、どうい 1 ーリ′ ーを紹介しておこう。 が入ってゆく。縁色のパイロットラン。フが一つうわけかちゃんと買っているのだ。いずれもサ 理論物理 ードで ( もっと主人公はプラッド・クリフォード。 一つ点燈し、プーンと音をたてて磁気ディスクイエンスに重点をおいたハ も "lnherit the stars" など、月の軌道の扱学の若い天才科学者である。時代は二十一世紀 が回転をはじめる。やがて、メイン・コンソー ・ロシアをも含め ルのスクリーンが明るくなり、カタカタという いがおかしいとケチつけられていたけど ) 、書のはじめ。世界はヨーロッパ た″西側″と、アラブと中国を中心に、独立し 。フリンターの印字音とともに、初期入力を促が評では意外と好意的に書かれている。ジョン・ たシベリアも含む″東側″とに分裂し、両者は す緑色の文字がディスプレイに現われる : ・ ・キャンベルの若いころを思い出す、などと 一種のフェティッシ = かしら ? だろうね。書かれると一瞬ギョッとするが、考えてみるとほとんど戦争直前の危険な膠着状態にある。プ ラッド・クリフォードはアメリカ政府の研究機 まるつきり、コン。ヒュータ神の祭壇だもんね、これは誉め言葉なのだ。話はそれほど大したこ これじゃ。どうもいけませんな : となく、登場人物もまあまあのところだが、と関である ( 高等通信研究所 ) に属し、 とまあ、ずいぶん下らない前置きが長くなつ前置きして、しかし科学的ス。へキ、レーション衛星ミサイルに対する新型レーザーの開発にあ とくる。 たっていた。しかし、彼の本当の興味はそんな たけれど、今回はとにかくガチガチの、誰が見はすばらしい ても間違えようのない本物のハードを紹介実際に読んでみると、なるほどと思った。っところにはなかった。 しようと思うのだ。すでに鏡明さんがあちこちまらないと思う人は最初の数。ヘージで投げ出すクリフォードは理論物理のきわめて抽象的な で紹介しているのだが、その作者とは、・だろう。でも、彼のアイデアにつきあってやろ研究に没頭していたのである。それは重力を含 ・モーガン、じゃな、 、・・ホーガンであうと思う人なら、おそらく、多少のことは気にめた統一場理論の、新しい展開だった。しか し、の首脳部はそれを苦々しく思って ならないで最後まで読んでしまうに違いない。 る・・モーガンも好き ! ) 。 いた。彼が論文を外部に発表しようとすると、 ジ = ームズ・・ホーガンは一九四一年生まいや、アイデア自体はそれほど驚くべきものじ れのイギリス人。コン。ヒ・ = ータのシステム設計やないのだ。むしろよくあるアイデアだ。で彼らはそれを握りつぶした。彼らの論理はこう も、その深め方が、というか、科学の手続きだ。もしそれが軍事機密に属するものなら、そ などをやっていたが、後セールス部門に転じ、 ( と非常に良く似たもの ) を駆使したその突っれを大っぴらにするのは国家に対する反逆だ。 やハニウエル、 20 などで働いてい ードファンを喜もしそうでないなら、国民の税金を使ってそん た。七七年からはアメリカへ移り、現在マサチ込み方が徹底していて、 な役に立たない趣味的な研究をするとは許せな ューセッツに住んでいる。七七年から七八年にばすのだ。 聞くところによると、 "lnherit the Stars" かけて『星々を継ぐもの』 "lnherit the Stars"

4. SFマガジン 1980年6月号

物があった。むろんダ・ガよりはうんと小ぶりだが、庁舎のふつうているようであった。通用ロもあって、木製の戸で仕切られるよう の建物の親玉ぐらいの感じなのだ。 だが、今は開いており、その間から、外のーーやはり畑が見えてい リプヤのツ・エン・ニは、ここにタガノヤのクリ・フがおり、クリ リ・フヤのツ・エン・ニの説明では、土塁の外にも、広い面積の耕 ・フヤの集まりもここで行なわれるのだといった。 どうやらそれがタガノヤの行政庁になるのであろう。そして、こ作地があるのだという。 午後の陽光を浴びた、そうした田園的な風景は、まことにのびや の行政庁も、青く塗られている。 「色の濃い薄いの違いはあるけれども、公共建築物というのは、みかで、間もなく戦争がおこるなどとは、とても思えないのであっ な青色なのね」 シェドÄO が首をかしげた。「青といえば、剣を吊った人たちの 一行はそのあたりから土塁を背にし、右へ廻った。右手には林が 服はみな青色よ。どうしてかしら。何かいわくがあるに違いない あり、その中を抜けて行くのである。林といっても疎林ではなく、 わ」 森に近い感じであった。 「説いたらどうだ ? 」 もっとも、その林は、どうやらただの林ではないらしい。という ヘンゼルがい、 シェド O はロポットにたずねさせた。 のは、かれらが通っている道からは、さらに小道がいくつも分岐し リ・フヤのツ・エン・ニは、質問に答えた。はじめは当然のことのて、中へ入っているのだが : : : 原住者たちがあるいはひとりで、あ ように、後半は幾分誇らしげな態度で、である。 るいは二、三人のグルー。フをなして、奥へ入って行ったり、こちら 「あれはダガの色である。ダガの色は海の色でもあるといっていまの道へ出て来たりするのである。それに、林の中には下生えだけで はなく、大きな石がころがっていたり、土が盛りあがったりしてい ロポットが翻訳した。「だから、その色の服を着るのは、ダガにるのだ。 特に認められたしるしである、ともいっています」 リ・フヤのツ・エン・ニは、この林全体がタガノヤの住民の墓地だ 「そういうことなのだろうな」 といった。死体はみなここへ埋めるのだけれども、名前と身分と略 ヘンゼル papa が、まあそんなところだろうという気分をこめて、歴をしるした木片がダ・ガにいったん入れられる。ダ・ガではそこ 呟いた。 で、ダガの意にかなったとされる者の札は海へ流し、そうでないと 行政庁があとになると、もう建物らしい建物はなく、畑であっされた者の札は燃やされるというのであった。 墓地である林が尽きると、小さな家々のひしめく通りに出た。港 た。よく耕された土の間に、平服の原住者たちが点在して働いてい 3 るのだ。畑のむこうは土塁である。土塁の高さは五メートルぐらのあたりとさほど変らぬ景色だが、こちらには倉庫のようなものは 。上部には一応樹が茂っているものの、いずれも低く刈り込まれなく、住居だけのようである。くわしくは分らないが、いずれも二

5. SFマガジン 1980年6月号

・前回までのあらすじ・ 通常、慣例に対する異議申し立て側が相手の領域に入り、相手のダ 司政制度の黎明期、司政官ャトウ・・キーンは惑星ミロー ガを占拠し相手のカルダガを殺す旨を宣言し、行動をおこすことで ゼンに赴く。連邦軍の駐屯隊と協力して植民の適否を調査するのが はじまる。受ける側はそれを阻止し、相手がたたかいの停止宣言を 任務だった。ミローゼンでは、数万の島々の各島群域ごとに閉鎖社 するまで守らなければならない。この攻撃と防御に結着がついたと 会が形成されているため、調査は困難を極めた。そんな矢先、漂流 き、勝利した側はヤ・ゴ・デの五つのダガのクリプあるいは主要ク していた原住者を故郷に送り届ける機会を得たため、交渉団が派遣 リ・フヤの集まるヤ・ゴ・デ・ヤ・ゴ・デにおいて、自己の正当性を される。ャトウも加わるが、団長のヘンゼルは彼を邪魔者と見 確認する。タガノヤは過去たびたび他のダガと衝突したが、たいて ていた。目的地タガノヤでは、上陸する先発メン・ハーに団長のほか いは勝った。ことに守りの側になった場合、負けたことがない。そ に、原住者にくわしくャトウに好意的な女性のシェド QO 、若いテ イト OO 、それにヤトウが選ばれる。連行した原住者のおかげで上 れにもかかわらずジャチャは、またもや鉱山に関する異議申し立て 陸は許可されたものの、彼らの応接は厳格な手続きに満ちていた。 を行ない、攻撃宣言をして来ている。宣言の文書によれば攻撃はあ 青衣帯剣のリプヤのツ・エン・ニが一行の応接にあたる。やがて、 す以降とされているものの、これまでの例から見て、ジャチャは宣 クリプヤのダ・レ・ ' ハンガをまじえた長く厄介な質疑応答ののち、 言を発したその日に攻撃担当者と配下を進発させ、文書に示された 一行は二日間の滞在と、食事の供与、リプヤの案内によるタガノヤ 日づけであるあすの朝には、タガ / ヤの正領域である土塁の内側に 見学を認められる。リプヤのツ・エン・ニは案内をきようのうちに 入って来るものと思われる。従ってタガ / ヤの防御担当クリ・フヤと したいと告げる。あすは、戦争になるかもしれないというのだ。 リプヤ、それに動員指令を受けた、あるいは志願したクリ・フヤとリ ブヤ、さらに一般住民の志願者は、きようの夜には土塁の重要地点 ヘンゼルが、しばらくして呟いた。「どうやらこれは、原住 に集結して、守りの態勢を固める必要がある : ・ 者の宗教らしきものと、鉱山に象徴される利害問題がからんでいる 「私ーーっまり、リ・フヤのツ・エン・ニは、防御担当ではないし、 ようだ。しかし : : : 正確に事情を理解したのかどうか、それは私自 動員指令も受けていない。私に与えられている命令は、あなたがた シェド O 、どうだ ? 」 身には何ともいえない。 いっています」 の世話を見、案内することだ、と、 シェド O は、かぶりを振った。 ロポットは訳した。「しかしながら、たたかいがはじまれば、ち「意味不明の単語が多すぎます。わたしにも自信はありません」 ゃんとした案内は不可能になるであろう。それゆえに、きようのう「それがはっきりするまで、うかつな行動はしないほうがいいんじ ちにタガ / ヤを案内しておきたい、ということです」 ゃないでしようか ? 」 テイト 00 が発言した。「相手がわれわれをおどかして、いうこ 説明のあと、こちらの人々は、ちょっとの間、沈黙した。 とに従わせようとしているのかも知れませんし : : : 」 「そんなことはないと思うけど : : : でも慎重に考えたほうが安全で 「大体のところは分ったような気がするな」 220

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とう追い出されるはめになったのか ? ちょうど、未開地の呪術医 ・作者紹介・ 一九四三年に生まれる。オックス に、病気の悪神が祓い出されるように。なんでも、聞くところによ フォードで英語を学び首席で卒業。 ると、フィリ。ヒン土民の祈治療師は、病人の体から、病巣や節を ) 」を一七〇年までタンザ = ア、東京で英語 引っぱり出して、病気を治してしまうそうだ。とすると、私は、窮 をー・を教える。六九年、ニ、ー・ワールズ 3 誌に処女作を発表。以後、いくつか 鼠猫をかむの伝で、治療師になってしまったってことか ? 今や、 の短篇を発表したのち、七三年の長 病人の所へ出かけていって、腹や胸や管に手をつつこんで、のたく 篇 "Enbeddihg" がキャンベル記 っている恙の虫を生きたまま招み出せるようになったのか ? 私は 念賞の次点となり、注目を浴びる。 ぜん さらに "The Jonah Kit" ( 七五 ) 指でそれをつついてみた。それは蠕虫のように、収縮したかと思う で七八年の英国賞を受賞。また と今度は反対側に迫り出した。いかにも、これは生き物である。 ファウンデーション誌等での活発な や、むしろ、反生物というべきか。い っそ、水で流してしまおう 評論活動もよく知られるところだ。 か ? それとも、マッチ箱の中に追いこんで、閉じ込めてしまうべ きか ? は、どことなく気おくれしたようなところがあった。 私は洗面台の排水孔を閉じて、ぬるま湯を中に入れた。すると、 「わからないの ? それは、あなたの魂よ。あなたは、自分の魂を それは水面に浮き上がり、のろまなオタマジャクシのようにゆっく なくしたんだわ」 りと泳ぎまわった。 「えっ ? 僕の : : : 僕の魂だって ? 冗談きつい・せ。なんで、これ 「メアリー ! ちょっと、きてみろよ。咳をしたら、変なものが出が僕の魂なんだよ ? 」 てきたそ。生きてるんだ、そいつが ! 」 彼女は後ずさりした。私のそばに寄るまいとしているようだ。浴 室は、まるで手術室のように真白く、清潔で、一点のしみもない。 彼女は浴室にやってきて、洗面台の中をのそきこんだ。 「見えるかい ? ほら、ここだよ」私は、それを指先でつついた。洗面台の中で例のものは泳ぎ回り、一回、びよんとはね上がった。 「じゃあ、何だっていうの ? 何かほかのものが、あなたの体の中 すると、それは湯の中で反転し、また元に戻った。「いまの見ただ ろう ? 見えたなら、見えたっていえよ。たった今、僕の体から出で生きていられて ? 何かほかのものをなくすことができるってい てきたんだぜ。ごらんの通り、生きてるんだよ」 うの ? 」 「ちゃんと、見てるわよ」 彼女は、私をじっと見つめた。 ししこと、 「こりや、たぶん、病気のもとになる悪霊かなにかだよ。とうと「あなたには、もう魂がないのよ。魂っていうのはね、 、僕はこいつを吐き出したんだ」 ほんのちつぼけなものなの。誰の体の中にも隠れているけど、これ 「そんなんじゃないわ、トム」彼女は体を起したが、その表情にまで、誰も見つけたことなんかないわ。変装の名人なのよ。その分 つつが

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なたがなさることです」 はありますわね。といって、ここで・ほんやりしているわけにも行か 「それも一案だな。というより、今はそれが一番ましな方法かも知 ないんじゃないかしら」 と、シェド O 。 れん」 ヘンゼルは頷いた。「よし。そうと決めよう。みんな、その ヘンゼルは、即答しなかった。リ・フヤのツ・エン・ニのほう を見ながら : : : わずかに迷った風である。 つもりでいてくれ。ただ、そうはいっても、ロポットに全面的に頼 るわけには行かないのだから、各人、気のついたことがあったら、 「団長」 司政官、あなたは今のことを、あなた ~ 凰ちに私にいうように。 ャトウはロを開いた。「ひとつ、提案してもよろしいでしよう の部下のロポットに命じてよろしい」 か ? 」 「分りました。、私のいったことを実行してくれ」 「何だ ? 」 ャトウはに指示した。その表現で、ヘンゼルの、中途半 ヘンゼルが視線を向ける。 「今の場合「 . あたらしい言葉や状況に接するたびに分析し把握しょ端な制限部分が排除されて、自分の意向通りにが働くことにな うとしていては、ことがスムーズに運ばないのではないでしようるのである。もまた、簡潔に答えた。 「了解しました」 か ? 」 そのときにはもうへンゼルは、原住者との通訳用の例のロポ ャトウは、ヘンゼルを刺激しないよう、表現に気をつけなが ットを通じて、われわれはこれから急いで食事をするから、そのの らいった。「だから、とにかく団長がこれまでのようにみんなをリ ードする一方、ロポットにデータを集めさせ、整理・分析させるとちにタガ / ヤを案内してほしいと、リ・フヤのツ・エン・ニこ、 じめていた。 いう方法をとってよ、、 : 、 。しカカでしよう」 「ロポットに ? 」 「そうです。といっても、軍のロポットは、それぞれすでに仕事をすでに午後である。 持っていますから、これ以上の役目を与えると過負荷の状態になる宿舎に指定された公共集会所を出た一行は、リ・フヤのツ・エン・ 可能性があります。さいわい、私の部下のには充分な余力があニともうひとりの青衣帯剣に連れられて、最初に来た道を戻って行 りますし、それだけの能力も持っています。に、事態の進行とった。 同時にデータを蓄積させ状況を把握させーーもしも危険と見做され リ・フヤのツ・エン・ニの説明によれば、間もなく視界に入って来 る状態になったら、警告してもらうというのは : : どうですか ? 」 た四角っぽい形状のーー窓や戸のある建物群は、クリプャやリ・フャ 「ロポットに判断をゆだねよというのかね ? 」 が仕事をする、いわば庁舎といったものらしい リプヤはクリプャ盟 「いいえ。は警告を出すだけです。判断はあくまでも団長、あの指示を受けて仕事するのであり、クリ・フヤの筆頭者あるいは長と

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「長老。行こう。これ以上、近寄らない方がいい」 フセウはあとじさった。 「あれを伝ってゆけば上れるそ」 スターズが指さした。 そびえ立っ壁面に、横棒が打ちつけられただけの簡単なラッタル しだいに風が強くなってきた。 が、長く長くのび上っていた。 風は遠い沖の方から、幾つもの波頭を突き崩しつつ渡ってきて、 ヒシカリは壁面を見つめていた。 汐しぶきとなって砂浜をかけ抜け、内陸へ吹き込んでゆく。 「よし。上ってたしかめてみよう」 フセウは、いつも北の方から吹き渡ってくる風はこれだったのか 「いや。それは止した方がいい。先へ進もう」 と思った。 「どうした。フセウ。恐ろしいのか」 汐風と砂は、容赦なくフセウの体にたたきつけてきた。同化葉に 「恐ろしいことも恐ろしい。村を出てからいろいろ恐ろしい目にあ 刺すような痛みが走った。 ってきた。先を急ごう」 フセウはそびえる建造物のかげに身を移した。 「少し気になることがある。あれを調べよう」 風はいよいよはげしくなり、灰色の海は逆巻いてごうごうとどよ ヒシカリはもう歩き出していた。スターズがそのうしろに従っ めいた。大きな波が、砂浜をなめつくし、攻めこんでくる。 こ 0 建造物の側面に砕ける波は、壁面の半ばまで跳ね上った。波が砕 「おれはここにいる」 けるたびに、砂浜は地震のように震えた。 フセウは急いで言った。 フセウは始めて見る光景に心を奪われた。 ヒシカリはふりかえったが、何も言わなかった。 それは気を失うほど恐ろしい光景だったが、心の底に、しびれる ヒシカリとスターズは砂浜の斜面を降りていった。 ような感動をもたらした。フセウは、身動きもせす、荒れ狂う海を 赤い建造物の前頭部は、砂浜へかなり喰いこんでいた。その最先見つめた。 端部は、波うちぎわよりも数十メートルも陸上にせり上っている。 心の奥底のどこかに、かすかな記憶が翳を落していた。 ヒシカリがラッタルに這い上り、スターズが続いた。 それが、具体的に何の記憶なのかはわからなかった。海などこれ ヒシカリは大きな古い体を動かして、意外に器用に上ってゆく。 まで見たことはなかったし、このような浜辺に居たことも来たこと スターズの動きは、機械のように確実だった。 もなかった。 二人はしだいに高く高く上っていった。 だが、記億の底にあるものは、海のどよめきであり、砕ける波だ 最上部にたどり着くと、豆粒ほどの大きさになった。二人の姿はった。 見えなくなった。 9

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のは長老ではないか」 まで見たことがなかった。 「ここを渡ることができるかどうか」 「長老。動いているな。オアシスの水とは違うのか ? 」 「渡る ? 」 「あれは波というんだ。海の水はたえず動いているのだ」 「これがどのぐらいの広さなのか、わしにもわからぬ」 「すいぶん広いな。深いのか ? オアシスよりも深いんだろうな」 「長老。何のことを言っているのか、わからないが」 「ああ。通ってきたあの大きな窪地よりもまだ深いだろう」 ヒシカリは車から降りた。フセウもつづいて地上に降り立った。 「長老。長老はこれまでに海を見たことがあるのか ? 」 ヒシカリは遠い水平線に目を凝らした。 なまり色の平原は、前方三十メートルほどの所からはじまってい た。今、フセウの立っている所からは、ゆるやかな傾斜でそこへつ 「昔、東へ旅をした時に見た」 づいている。 「すると、東の方にも海があるのか ? 」 ヒシカリは砂を踏みしめて歩み寄ってゆく。そして、なまり色の 「おそらく、その東の海と、この海はつながっているに違いない」 「と、 平原のふちにうずくまると、その中に手を入れた。 いうと、あっちからずうっとこう、海がつながっているの フセウは驚きで声も出なかった。 か。長老。東から北にかけては、陸地はこれで終りなのか ? 」 「長老 ! これは何だ ? 」 「北の果の都というのは、この海の向うにあるのだろう」 ヒシカリは立ち上り、手を振った。水滴が飛び散った。 「どうやって渡るんだ ? 自走車は海の上はだめなんだろう ? 」 「海だよ。そうか。おまえはまだ海を見たことがなかったのだな」 「沈んでしまう。何か方法を探そう。フセウ。波うちぎわに沿っ 「これは何だ ? オアシスか ? 」 て、東へ走れ」 「水だよ。水がたまっているのだ」 長い長い単調な海岸線は、果もなく続いていた。 「これがみんな水かー これはすごい。長老。これでもう水に困る その単調さを破るのは、時おり弧状に浸触された海岸線だった。 「長老。海には生き物はいないのか ? ォルドやナギのなかまはい ことはないぞ。そうか。こんなに水がたまっていたのか」 その時になって、ようやく気がついた。 るんだろう ? 」 その広大ななまり色の平原は、大きく揺れ動いていた。遠方はご 「いないようだ。遠い昔には、海にはたくさんの生き物が棲んでい くわずかな明暗の斑紋を描くだけだったが、二十メートルほど向う たといわれるが」 から足元へ、低いひだが盛り上り、ゆっくりと近づいてきては、砂「長老は見たことがあるか ? それを」 の斜面にせり上ってくる。だが、すぐそれもカつき、形をくずして「わしが見た東の海でも、生き物は何ひとついなかったよ。遠い昔 平らになり引き退いてゆく。その単調なくり返しは、魂を奪われのことなのだろう。生き物が棲んでいたというのは」 るほど魅力的だった。これほど雄大で確実な動きを、フセウはこれ「長老。海だの陸地だのが、たくさんあるのだろうか ? おれたち 4 2

10. SFマガジン 1980年6月号

エド・マワべイン作品六 庫一挙 7 点刊行ー 文 0 分署シリ 灰色のためらい高橋泰邦訳 寒風吹きすさぶ空の下に起る男女の悲喜こもごもの人生模 様ーー初めて犯者側から事件を描く ーズの色作ー ス 人形とキャレラ宇野輝雄訳 ¥三四〇 いまをときめくファッション・モデルに男は包丁を持って 襲いかカたー 残虐な殺人の動機は、またその鍵とは ? ワ 久良岐基一訳 八千万の眼 >+ 三四〇 カ 四千万の視聴者が見守るなか、 > 界の寵児キフォードが 伊オたー 一つの事件を平行して 井上一夫訳 警 ( さっ ) 官 復讐の鬼と化し、大胛極まる予告殺人を重ねる天才的犯罪 者。犯人と刑の熾烈な頭渮戦を描くス丿 ングな傑作ー 井上一夫訳 ショットガン 夫婦が、ンヨットガンでふきとばされ、ひとリ主まいの女が 刺し殺された。 陰惨な連続殺人劇の間にはどんな関係が ? 井上一夫訳 はめ絵 殺された男の手には奇妙な写真の一片が : : : 六年前の銀行 強盗にからむ写真の争奪戦のさなかにとび込む刑事たちー 0 ノン・シリ 久良岐基一訳 拳 ( ガン ) 銃 』行少年ものを得意としてきた著者が、ニューヨークの下 町を皆に銃に魅せられた若者の末路を苗く沖身の作ー グイン・サーガ・シリー 栗本薫 0 第三巻 ノスフェラスの戦い 隣国ゴーラの侵略に滅び去 った王国パロ。そして、王 家の血をひくリンダとレム スの二人は、豹頭の怪人グ インに守られて妖魅の支配 する魔境ノスフェラスへと 逃れたカ : : : そこにもなお ゴーラの大軍が迫ったー 〇。 0 第一巻 豹頭の仮面 0 第一一巻 庫荒野の戦士 ~ ( 近刊 ) 三四 0 円 ・ダーテイベア・シリーズエ ワ カダーティベアの大冒険 高千穂遙 ( 世界福祉事業協会 ) の犯罪ト 『 = ラコンの美女 ( ! ) ニ人組ュリとケイが 」」、むくつけき男どもを相手に大活躍凵安 彦良和のイラストを満載して五月発売ー \ 320