タガノヤ - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1980年6月号
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1. SFマガジン 1980年6月号

す。また、リプヤのツ・エン・ニは、タガ / ャ河に架かった橋につ シェド O がいう。 いて、何もいいませんでした。あの橋は本格的な工事によるもの 3 「聞き捨てならない発言だな。いってみろ」 で、それもそんなに古くはありません。これは何度か架け直された ヘンゼルもうながした。 ものであり、タガ / ヤにそれだけの技術があるのを示しています。 「理由を」 これらの技術について案内者なら自慢するのがふつうなのに、リプ と、ヤトウ。 「リプヤのツ・エン・ニは、あすおこると予想される戦争の、防御ヤのツ・エン・ニは何も語りませんでした」 担当でもなく動員指令を受けてもいません」 はいう。「これは、リ・フヤのツ・エン・ニが、リ・フヤの中で「このタガノヤは鉱山を持っているということです」 r-oO はつづける。「鉱山があり金属製品があるのなら、加工工場 も、そういった役目より、われわれを案内するのが適任であること を示しています。タガ / ヤの行政機構がある程度専門化されているも存在しているはずです。リ・フヤのツ・エン・ニはそれを見せるど とすれば、リプヤのツ・エン・ニは、こういう仕事の専門家であるころか、存在することもいおうとはしませんでした。そうした工場 力なりの敷地を必要としますが、そういう重要 と考えられます。それにもかかわらずリ・フヤのツ・エン・ニは、わなりエ場群なりは、、 れわれにタガノヤの全般的な解説もせず、地図も渡しませんでし設備はタガノヤの正領域内にあると考えなければなりません。従っ た。全般的な説明をしたのは、左岸の、あたらしいという地域につて、それらが建てられるとすれば、タガノヤの左岸地域が最適と思 われますが、リプヤのツ・エン・ニは、左岸地域に関してのみ全般 いてだけです」 的説明を行ない、かっ、われわれがそこから引き返すよう、誘導し 「リプヤのツ・エン・ニは、われわれにタガノヤのすべてを見せてました。これらの表面に出なかった事柄から総合すれば、リプヤの ツ・エン・ニは、その目的は不明ですが、あきらかにわれわれがタ いるような態度をとり、質問にも応じました。が、リプヤのツ・エ ン・ニが案内したのは、主としてダガに関連したものと、それに農ガ / ヤを過小評価するように案内計画を樹て、実行したのだと思わ 地でした。ほかのものも見せはしましたが、通りいっぺんの、われざるを得ません」 「それはいえるな」 われが何気なく見過してしまうやりかたをとりました」 ヘンゼルが低く呟いた。「愛想良く案内したのは : : : みな演 「とは ? 」 技だったのかも知れない。 われわれを警戒していたのか ? 」 ヘンゼルがいう。 「リプヤのツ・エン・一一は、土塁の上部の樹木がきれいに低く刈り「つづけて、よろしいですか ? 」 そろえられていることには触れませんでした。このミローゼンで樹はヤトウにたずね、ヤトウは応じた。 「いってくれ」 木をそういう風に常時手入れするには、相当な人手と技術が必要で

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かりな戦争であり、そんなことにでもなれば連邦軍が完勝するに決 まっている、と、考えたのかも知れない。多分そうなのだろうなー ーと、ヤトウが思ううちに、ヘンゼルは次の質問を発してい 「戦争 ? 」 「では、どことたたかうのかね ? 」 ヘンゼルが、不思議そうに反問した。 意外の感にうたれたのは、ヘンゼルたけではない。ャトウも「われわれは、おそらくあす、ジャチャの攻撃を受けるだろう、 いっています」 そうだし、他の人々も同様だったろう。 このタガノヤに上陸してからずっと、ヤトウた ロポットが、リプヤのツ・エン・ニの返事を伝える。 それはたしかに、 ちは未知のーーえたいの知れない世界に迷い込んで行く、というよ「ジャチャ ? 」 りも、陥ちて行くような感覚を持ちつづけていた。自分たちがどん「ジャチャは、ヤ・ゴ・デの、ここから東北の方向、鉱山のかなた な待遇を受けるのか、何が出て来るのか : : : 本当のところはどうもの、山を越えたところにあるそうです」 分らなかったのだ。 「ヤ・ゴ・デ : : : は、この島の名だったな。なるほど。この島にあ いや、今の言葉 しかし、それでも、いや、それだからこそ、ここには戦争というる別の集落との、原始的な戦争というわけか。 語感はなじまなかったのだ。ここでそんな言葉を聞こうとは、ヤト は先方にいう必要はない。しかし、何でまた戦争になったのか、よ ウたちは予想もしていなかったのである。 ければ教えてもらいたいものだな」 ただ : : : さすがに ( ンゼルは連邦軍人だけあって、適応が早「それは伝えますか ? 」 カ - ′ 「訊け」 ロポットは、リ・フヤのツ・エン・ニにたずね、リプヤのツ・エン 「まさかそれは、われわれとタガノヤの連中との戦争という意味で ・ニは喋りだした。どうやら演説の口調のようで : : : ロポットにあ はないだろうな ? 」 きらかに苦労しながら、翻訳を開始した。 ヘンゼルは、ロポットを通じて確認を求めた。 長い話であった。 リプヤのツ・エン・ニは、驚いたように応答した。 要約すると、次のようになるのだ。 「あなたがたと戦争する理由があるのか、と、たずねています」 と、ポット。 タガノヤのダガは、ヤ・ゴ・デのダガの正統である。ダガの定め 「そんなつもりはないといってくれ」 るところによって、タガノヤは鉱山を正しく利用して来た。しかし ヘンゼルは薄笑いをしたようであった。実際にそうだったとジャチャのダガはそれに異議をとなえ、正しく利用出来るのはジャ すると、ヘンゼルがとっさに連想したのは現代兵器による大がチャであるとする。ために従来、何度か衝突があった。たたかいは 4 ( 承前 ) と、 幻 9

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テイト O O がいった。 「司政官、あなたの意見は ? 」 「待て。今はまだそんな話をする段階ではない」 当然従うだろう、従うべきなのだ、というロ調である。 ヘンゼルはさえぎった。「たしかに、シェド O の懸念は、 「方針はそれでいいと思います」 もっともだとは私も思う。だが、その可能性はきわめて低いのでは ャトウはロを開いた。「思いますが : : : とりあえずここで、 ないかな。なぜなら、このタガノヤは、従来防御側に立って負けたのこれまでのデータ蓄積とそれによる分析を聞いてみてはどうでし ことがないというのがその一。もうひとつは、ジャチャなる攻撃軍よう ? 何か役に立つ状況分析が出ればそれを判断の材料にすれば 、し、何もなくてももともとです。どうせ、われわれにはまだ待ち はつねに河のむこうの、左岸地域の土塁から侵入して来るらしいといし いうことだ。われわれはタガノヤの西北か西のはしにいるのだから時間があるのですから : : : 無駄でも聞いてみたらいかがですか ? 」 な。このあたりがそれほどの修羅場になる確率は、そう高くないん「無駄でもな」 じゃないか ? 」 ヘンゼルは頷いた。「よろしい。何かあったらいってみろ」 は応じなかった。それも当然で、は司政官の認める範囲 「また、かりにわれわれが戦争に巻き込まれたとしても、どうにかでしか、他人の言葉に従わないのである。 、ってく 「、これまでの経緯の中で気がついたことがあれば、し なると私は考える。そうなればそのときにこの書類にサインして、 出て行けばいいのだ。例の名の分らぬ青衣帯剣の原住者は、・われわれ」 れがそうするときのことを想定して、錠をかけずに出て行った。い ャトウは命じた。 つでも外へ出られるのだ。外へ出たら : : : テイト OO のいうような「承知しました」 たた力いはしないまでも、身を守って逃げることは、そうむつかし TJO はその場に立ったままで、喋りはじめた。「これまでに収集 くはあるまい」 したデータだけでは、私はまだ、総合的な情勢分析と、助言すべき 判断結果を持ってはおりません。しかし、タガノヤのおよその全体 「これは千載一遇のチャンスなのだ。この機を外せば、われわれは像についての推測と、表面に出ていないい くつかの事項を指摘する 今度はいっ原住者の社会をくわしく調べられるか分らないのだ。多ことは出来ると思惟します」 「それでいい。話してくれ」 少の冒険は、出発したときから全員が覚悟していたはずだがね」 と、ヤトウ。 そこまでいわれると、シェド mo もそれ以上は押せなかったよう「分りました」 である。 はいう。「私の推測では、このタガ / ヤは、二重構造の社会 それを見定めてか、ヘンゼルはヤトウに目を向けた。 を形成しています。タガノヤの全住民はおそらく海と関連のあるダ 228

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しいかたをした。だから相当古い時代のことであろう。そして、 間か三間しかない小住宅で : : : それがまた身長の低い原住者のものう、 であることから、ヤトウには何か模型を眺めているような気がしそれから考えると、先程の右岸のほうは、はるか以前からの歴史を 2 て、仕方がなかった。リ・フヤのツ・エン・ニは、ここは住宅街であ持っていることになる。 ともかく、そんなわけで、こちらのほうには支庁が置かれ、動物 るが、重要な家はこのへんにはない、と、説明した。一般住民のた めの家々というわけであろうか。それを裏づけるかのように、家々を飼っている区画などもあるものの、あとは本質的には、右岸の元 には平服の原住者たちがいて、一行を認めると驚きながら道を開来のタガノヤ正領域と同様であり、住居と畑と土塁が主である き、あわせて、青衣帯剣のふたりに両手をひろげ頭を下げるのであと、リ・フヤのツ・エン・ニはつづけた。だから、あなたがたが求め るならば案内するが、それほど面白いとはいえないであろう。それ に、こちらの地域を廻るとすれば、土塁から畑、ダガ支庁、動物区 家なみが密集して来たころ、河に来た。 画、住居群というコースを経て、一度はいやでもタガノヤ河口に出 タガ / ャ河だ、と、リ・フヤのツ・エン・ニはいう。 なければならない。河口からもう一度この橋へ引き返して来るわけ そのタガノヤ河の岸を少し上流のほうへ行くと、橋が架かってい だから、相当な時間がかかる。今のこの時刻からでは、帰着は完全 た。ちゃんと橋桁を組んだ本格的な橋なのである。 橋を渡って左岸へ到ると、そこに、ひとつの屋根を六本の柱で支に夜になってからであろう。自分としてはここで一応タガノヤ案内 を終えたことにして、さきの公共集会所へ戻ることをすすめたい えた粗末な建物があった。屋根の下には板が張られている。 リ・フヤのツ・エン・ニは、その場所で立ちどまり、身振りをしなし、自分自身もそれを望んでいる、というのであった。 「これまで親切に案内してくれたことを思うと、これ以上は無理を がら、ロポットにいっこ。 いわないほうがいいのかも知れないですね」 「ここは公共休息所だといっています」 話を聞いて、ヘンゼル CQ pa にいったのは、シェド 0 である。 ロ・ホットは伝える。「ここでしばらく休もう、とのことです」 ヘンゼルはそれには答えず、リ・フヤのツ・エン・ニに問い、 「よかろう」 けた。 ヘンゼルが同意し、一同は板張りの床に腰を降ろした。 休んだとはいうものの、リプヤのツ・ = ン・ = は、喋ることまで「河口を右岸まで渡ったら、時間が短縮されるのではないかね ? 」 リプヤのツ・エン・ニは、気が進まない調子で応答し、ロポット やめたのではなかった。すわったままで、なおも説明するのだ。 リ・フヤのツ・エン・ = によれば、河のこちらはあたらしい正領域かいった だということである。こっちの土塁が築かれたのは、そう古い昔で「それでもかなりの時間がかかる。それほどの短縮にはならない、 いっています」 はないのだそうで : : : とはいっても、十年や二十年ではないらしと、 司こ、リプヤの く、リ・フヤのツ・エン・ニは、それを自分の親のまた親の : : : とい ヘンゼルやこちら側の人たちが何もいわない「を

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ツ・エン・ニは、また何か発言した。 顔をあげた。「そういえば、しきたりついでにたずねておきたいが 「どのみち、きようは、河口間の船便は使えないだろう、とのこと われわれはタガノヤに二日間滞在出来ることになっている。そ です」 うだね ? 」 ロポットが伝える。「なぜなら、きようは戦争に備えて、右岸か「その通り、と、 いっています」 ら左岸へ、たくさん人を運ばなければならない。タガノヤからジャ 「それで滞在期間中に戦争がおきたら : : : しきたりでは、われわれ チャへの道は、この左岸地域の南端から海岸線に沿って伸びておはどうなるのだ ? 退去しなければならないのか ? それともここ り、ジャチャの攻撃はいつものように、この左岸地域の土塁からは にいて : : : 何か手伝うことになるのか ? 」 しいといっていま じめられるであろうと予想されており : : : そのために、戦争に関係「あなたがたは、所定の期間中、ここにいても、 のない者の船便利用は、ぎびしく制限されているはずだー - ーと、い す。防御担当者および防御志願者のしるしをつけた者以外に対して っています」 は、ジャチャの連中は手を出さないことになっている、とのことで 「そういうことなら、仕方がないな」 す。すくなくともそれがしきたりだとのことです」 ヘンゼルはやっと折れた。「だが、それにしても、ここの連ロポットは伝える。「また、あなたがたは所定の手続きを経て退 中の戦争というのは、奇妙なものだな。どうせ戦争になるのなら、去することも自由である、ともい 0 ています。これは滞在権の放棄 敵を待ち受けたりせずに、こちらから出向いて迎撃すればいいのにであるが、タガノヤのダガはごく自然な行為であると認めるとのこ : ・そうはしないのかね」 とです」 「それは伝えますか ? 」 「訊いてみろ。いや待て。どうせなら、このこともたずねるんだ。 「ただ、もしもあなたがたが知らなければ困るからいっておくが、 鉱山の使用法をめぐっての戦争だというんなら、鉱山 , ーーどこにあヤ・ゴ・デにおいては、正しい戦闘員以外がたたかうことは、固く る何の鉱山か知らないが、そこで攻防戦が行なわれるのがふつうじ禁じられている。それを銘記しておいてもらいたい、ともいってい ゃないのか、そういうやりかたはしないのか、と、な」 ます。正しい戦闘員とは、ダガに属し、ダガに認められた者に限る ロポットは、それを伝えた。 とのことです」 リプヤのツ・エン・ニは、みじかく一言、答えただけである。 ヘンゼルは、肩をすくめた。 「それがしきたりだそうです」 「まるで、がんじがらめじゃないか。 いや、これは伝えるな」 ロポットが訳した。 リプヤのツ・エン・ニは、腰をあげ、またふたこと、みこと、 「なるほど。しきたりか」 ヘンゼルは、鼻を鳴らし、ついで、ふと気がついたように、 ロポットが通訳した。 225

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物があった。むろんダ・ガよりはうんと小ぶりだが、庁舎のふつうているようであった。通用ロもあって、木製の戸で仕切られるよう の建物の親玉ぐらいの感じなのだ。 だが、今は開いており、その間から、外のーーやはり畑が見えてい リプヤのツ・エン・ニは、ここにタガノヤのクリ・フがおり、クリ リ・フヤのツ・エン・ニの説明では、土塁の外にも、広い面積の耕 ・フヤの集まりもここで行なわれるのだといった。 どうやらそれがタガノヤの行政庁になるのであろう。そして、こ作地があるのだという。 午後の陽光を浴びた、そうした田園的な風景は、まことにのびや の行政庁も、青く塗られている。 「色の濃い薄いの違いはあるけれども、公共建築物というのは、みかで、間もなく戦争がおこるなどとは、とても思えないのであっ な青色なのね」 シェドÄO が首をかしげた。「青といえば、剣を吊った人たちの 一行はそのあたりから土塁を背にし、右へ廻った。右手には林が 服はみな青色よ。どうしてかしら。何かいわくがあるに違いない あり、その中を抜けて行くのである。林といっても疎林ではなく、 わ」 森に近い感じであった。 「説いたらどうだ ? 」 もっとも、その林は、どうやらただの林ではないらしい。という ヘンゼルがい、 シェド O はロポットにたずねさせた。 のは、かれらが通っている道からは、さらに小道がいくつも分岐し リ・フヤのツ・エン・ニは、質問に答えた。はじめは当然のことのて、中へ入っているのだが : : : 原住者たちがあるいはひとりで、あ ように、後半は幾分誇らしげな態度で、である。 るいは二、三人のグルー。フをなして、奥へ入って行ったり、こちら 「あれはダガの色である。ダガの色は海の色でもあるといっていまの道へ出て来たりするのである。それに、林の中には下生えだけで はなく、大きな石がころがっていたり、土が盛りあがったりしてい ロポットが翻訳した。「だから、その色の服を着るのは、ダガにるのだ。 特に認められたしるしである、ともいっています」 リ・フヤのツ・エン・ニは、この林全体がタガノヤの住民の墓地だ 「そういうことなのだろうな」 といった。死体はみなここへ埋めるのだけれども、名前と身分と略 ヘンゼル papa が、まあそんなところだろうという気分をこめて、歴をしるした木片がダ・ガにいったん入れられる。ダ・ガではそこ 呟いた。 で、ダガの意にかなったとされる者の札は海へ流し、そうでないと 行政庁があとになると、もう建物らしい建物はなく、畑であっされた者の札は燃やされるというのであった。 墓地である林が尽きると、小さな家々のひしめく通りに出た。港 た。よく耕された土の間に、平服の原住者たちが点在して働いてい 3 るのだ。畑のむこうは土塁である。土塁の高さは五メートルぐらのあたりとさほど変らぬ景色だが、こちらには倉庫のようなものは 。上部には一応樹が茂っているものの、いずれも低く刈り込まれなく、住居だけのようである。くわしくは分らないが、いずれも二

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・前回までのあらすじ・ 通常、慣例に対する異議申し立て側が相手の領域に入り、相手のダ 司政制度の黎明期、司政官ャトウ・・キーンは惑星ミロー ガを占拠し相手のカルダガを殺す旨を宣言し、行動をおこすことで ゼンに赴く。連邦軍の駐屯隊と協力して植民の適否を調査するのが はじまる。受ける側はそれを阻止し、相手がたたかいの停止宣言を 任務だった。ミローゼンでは、数万の島々の各島群域ごとに閉鎖社 するまで守らなければならない。この攻撃と防御に結着がついたと 会が形成されているため、調査は困難を極めた。そんな矢先、漂流 き、勝利した側はヤ・ゴ・デの五つのダガのクリプあるいは主要ク していた原住者を故郷に送り届ける機会を得たため、交渉団が派遣 リ・フヤの集まるヤ・ゴ・デ・ヤ・ゴ・デにおいて、自己の正当性を される。ャトウも加わるが、団長のヘンゼルは彼を邪魔者と見 確認する。タガノヤは過去たびたび他のダガと衝突したが、たいて ていた。目的地タガノヤでは、上陸する先発メン・ハーに団長のほか いは勝った。ことに守りの側になった場合、負けたことがない。そ に、原住者にくわしくャトウに好意的な女性のシェド QO 、若いテ イト OO 、それにヤトウが選ばれる。連行した原住者のおかげで上 れにもかかわらずジャチャは、またもや鉱山に関する異議申し立て 陸は許可されたものの、彼らの応接は厳格な手続きに満ちていた。 を行ない、攻撃宣言をして来ている。宣言の文書によれば攻撃はあ 青衣帯剣のリプヤのツ・エン・ニが一行の応接にあたる。やがて、 す以降とされているものの、これまでの例から見て、ジャチャは宣 クリプヤのダ・レ・ ' ハンガをまじえた長く厄介な質疑応答ののち、 言を発したその日に攻撃担当者と配下を進発させ、文書に示された 一行は二日間の滞在と、食事の供与、リプヤの案内によるタガノヤ 日づけであるあすの朝には、タガ / ヤの正領域である土塁の内側に 見学を認められる。リプヤのツ・エン・ニは案内をきようのうちに 入って来るものと思われる。従ってタガ / ヤの防御担当クリ・フヤと したいと告げる。あすは、戦争になるかもしれないというのだ。 リプヤ、それに動員指令を受けた、あるいは志願したクリ・フヤとリ ブヤ、さらに一般住民の志願者は、きようの夜には土塁の重要地点 ヘンゼルが、しばらくして呟いた。「どうやらこれは、原住 に集結して、守りの態勢を固める必要がある : ・ 者の宗教らしきものと、鉱山に象徴される利害問題がからんでいる 「私ーーっまり、リ・フヤのツ・エン・ニは、防御担当ではないし、 ようだ。しかし : : : 正確に事情を理解したのかどうか、それは私自 動員指令も受けていない。私に与えられている命令は、あなたがた シェド O 、どうだ ? 」 身には何ともいえない。 いっています」 の世話を見、案内することだ、と、 シェド O は、かぶりを振った。 ロポットは訳した。「しかしながら、たたかいがはじまれば、ち「意味不明の単語が多すぎます。わたしにも自信はありません」 ゃんとした案内は不可能になるであろう。それゆえに、きようのう「それがはっきりするまで、うかつな行動はしないほうがいいんじ ちにタガ / ヤを案内しておきたい、ということです」 ゃないでしようか ? 」 テイト 00 が発言した。「相手がわれわれをおどかして、いうこ 説明のあと、こちらの人々は、ちょっとの間、沈黙した。 とに従わせようとしているのかも知れませんし : : : 」 「そんなことはないと思うけど : : : でも慎重に考えたほうが安全で 「大体のところは分ったような気がするな」 220

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「それでは、元の道を戻ろうではないか、といっています。それわに立っていた。 と、このままではあなたがたは、所定の期間だけタガノヤに滞在す携行して来た照明具を、ひとつは講壇に置ぎ、もうひとつを壁に ることになるが、もしも退去したくなったときには、書類に退去者懸けているため、あかるさはまずまずである。 が署名をして、それを置いて行けばいい。その書類はあとで公共集ヘンゼルの前には、ここへ帰着したときすぐに、リ・フヤのツ 会所に届けさせるが : : : あなたがたは、署名出来るか、出来なけれ ・エン・ニについていた青衣帯剣が持って来た紙が広げられてい と、いっています」 ば簡単な記号だけでもいい、 る。紙といってもお粗末な、あかりに透かせばまだらに見えるもの 「署名ぐらい出来るといってやれ」 だが、そこには大小の円形と鉤形を組み合わせた奇妙な文字がしる ヘンゼルは、いまいましげに応じた。 されており、端は空白になっていた。青衣帯剣は、退去者はそこに 一同は立ちあがり、橋を渡って、帰途についた。 署名すればよいと説明したのだ。署名してそれを置いて行くだけで 手続きは完了したことになるのだそうである。 たしかに太陽は、もうだいぶ低くなっていた。 ヘンゼルが意見を述べたあと、他の三人はちょっと黙ってい 5 た。無理をしてでもこのタガノヤの調査を目一杯にやりたいという のはヘンゼルの強硬な主張であり、その意見も、実際には命令 「ここでの戦争というのが、前近代的なものであることは間違いなと解釈しなければならぬ状況であった。 い」 「どうかね ? 」 と、ヘンゼル。 ヘンゼルがいった。「また、あのリ・フヤのツ・エン・ニは、 敵は正規の戦闘員以外には手を出さないし、正規の戦闘員以外の者「でも、どうでしようか ? 」 シェド O が、ためらいがちに、いいだした。「戦争というのは、 がたたかうのは禁止されている、ともいった。事実がその通りだと 、くらしきたりというもの すれば、われわれには直接的な危険はないはずだ。従って、われわ非常事態でしよう ? 非常事態下では、し れは戦争になろうがなるまいが、与えられた滞在期間を一杯に使っがあるとしても、必ずしも守られるとは限らないんじゃないでしょ て、このタガ / ヤの調査をすべきであると考える」 うか ? 攻めて来るーーーその、ジャチャという集落の原住者たち は、わたしたちにも危害を加えようとするか知れません」 夜である。 夜ではあるが : : : ミローゼン特有の暑さは、公共集会所というよ「その場合には、われわれもたたかえばいいんじゃないですか ? うな閉ざされた建物の内部にいるせいもあって、いっこうにおとろ自衛行為だし : : : むこうがしきたりを破ったんだから、われわれだ えない感じであった。 って破っても構わないんじゃありませんか ? なら : : : われわれに 食事を終えた人間たちは土間に腰をおろし、ロポットたちは壁ぎはちゃんとした武器があるんだから、勝てますよ」 226

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いう立場の原住者は、クリプと呼ばれているようであった。 って、両手をひろげ、それから、歌のようなものを唄いはじめた。 ついで、柵にかこまれた、巨大な濃青色の建物に近づくと、リプ「やはりあのダ・ガというのは、神殿のようね」 ヤのツ・エン・ニは、あれがタガノヤのダ・ガだといった。ダガで 唄っているふたりを見ながら、シェド O が誰にいうともなくい はなく、ダとガに少し間を置いて、ダ・ガと発音するらしい。ダ・ った。「このタガ / ヤの神をまつってあるのでしよう。とすると、 ガの中にはダガがあって、カルダガがダガの言葉を伝える。カルダカルダガとかいうのは、ダガなる神のお告げを伝える巫女の一種じ ガの数は一定しないが現在は三名で、かれらを出せる家は七つしかやないかしら」 というようなこともつけ加えた。 「すると、ここでは神託政治が行なわれているわけですか ? 」 と、テイト O O 。 そういう指令が出ているのか、リ・フヤのツ・エン・ニは、別にも ったいをつけようとせす、気軽に喋った。もっとも実はそれはヤト 「そうは一概にはいえないと思うわ」 ウたちにそう思えるだけで、かんじんのところは・ほかしているのか シェド O は、テイト O O を向いた。「だってカルダガというの も知れないが : : はじめて出会ったさいの尊大で儀式めいた態度には、戦争に負けたら殺されるわけじゃない ? ま、リプヤのツ・エ くらべると、ずっと友好的なのである。 ン・ニのいいかたによれば、カルダガが殺されることが負けになる リ・フヤのツ・エン・ニと一緒に案内についているもうひとりの青んだそうだけど、実質的にはそういうことでしよう ? だからカル 衣帯剣のほうは、しかしながら、ほとんど話をしようとしなかっダガは、このタガノヤの権威の一部を象徴しているだけよ。実際的 なタガ / ヤの運営は、クリプヤとかリプヤとかいった連中がしてい た。リプヤのツ・エン・ニの言によると、その青衣帯剣もやはりリ ・フャだということであるが : : ツ・エン・ニに指示されて従ったるみたいだから : : : いわば、神託と行政部門による二元政治と見る り、一歩さがった言動をしているところから推測すると、リ・フヤと ほうが近いんじゃないのかな」 いっても全部が同じなのではなく、上下の差のようなものが存在す「それが政治と呼べるものなら、な」 るのであろう。 ヘンゼルがいう。 ダ・ガの横手から、リ・フヤのツ・エン・ニたちは道を左にとり、 「来ましたよ」 柵に沿って進んで行った。 リ・フヤのツ・エン・ニたちが歌をやめて戻って来るのを認めて、 それまでの下り道が、ゆるやかな登りになる。 ャトウはみんなの注意を奐起し : : : 憶測談議は、そこで終った。 引き返して来たリプヤのツ・エン・ニは、片手を以てさらに山手 柵に従って右のほうへ曲ると、ダ・ガの正面である。手のこんだ 装飾に鎧われた建物の正面には柵がなく、そこから大きな入口へののほうを示し、一同はそれに応じて、歩行を再開する。 道がついている。リプヤのツ・エン・ニともうひとりのリ・フヤは、 左方には、四角つばい形状の建物群・ーー庁舎がつづいているが、 そこで一行に待つようこ 冫いい、自分たちだけで入口の前へ歩いて行その一番上に来ると、かたちは似ているものの、ずっと大きな建造 222