「出てこい。そこにいるのはわかっているんだぞ・ーーーいきなり射た気もないことを考えると、あいての姿を見る前に、いろんな決まり れた方がいいのか」 どおりのことをすましておいた方が無難のようだ。 「射たないで」 「答えるわ。何でも答えるから、射たないで」 細い声が云った。 女の子は必死な声になった。その声は俺の気に人った。細くて高 俺は銃を放り出し、頭をかかえた。イヤになるくらい定石どおり 。男の保護欲をかきたてる声だ。だが心を動かしてはいけない。 だ。それは、きれいな、若い女の子の声だった。少し、発音になま俺は、冷酷非情な宇宙パイロットなのだ。 りがある。〈ギャラクシアン〉は地球のケネディ宙港を出てから火「お前は密航者だな。なぜこんなことをした」 星のマーズボート、冥王星のイトカワ・シティに寄った。マ 1 ズボー 「故郷に帰りたかったのよ」 トまでは異常がなかったはずだから、密航者がのりこんだとすれ「故郷だと」 ば、イトカワ宀田港か。 俺はむかっ腹の立つのをこらえた。 「よし、そこにいるんだな。出て来い いや、まて、まだ出て来「何が故郷だ。お前の生まれたのは、どこだ。カペラのわけがな るな」 。あそこは、まだ開発途上星だ。この船はカペラに行くんだそ」 「知ってたわ。でも、途中で乗りかえれま、 ーししかと思って」 俺は銃と気を取り直して、云い直した。 「そのままだ。ただし、つまらん考えをおこすな。そのままおれの 「下車前途無効だ」 俺は怒鳴った。 質問に答えろ」 万が一彼女が姿をあらわして、それがものすごく俺好みだった場「小田急線と間違えるな」 合、俺としては少々困ってしまう。いまはいろいろ考えて頭に来て「そんな大声でどならないで」 いるから、あいてがカワイコちゃんだろうが松坂慶子だろうがとっ彼女も声を大きくした。 つかまえて、叩き出してやるという強気でいられるが、しかし適性が「ここ、声がひびくのよ」 あってパイロットになり、もう地上人とは比・ヘものにならぬ冷酷非 「かってにもぐりこんだのはそっちだ。なぜこんなまねをした」 情さを身につけているとはいえ、俺も結局この時代の人間なのだ。 「云ったじゃないの。故郷をいっぺん見たかったのよ」 人命尊重、ヒ、ーマニズム、基本的人権、民主主義ーー過去四百「そんなことを云ってるんじゃない。密航はいまきわめて重大視さ 年間にわたってっちかわれてきた根性が、ちょっとやそっとで抜けれている犯罪で、パイロットは見つけしだい、密航者を艇外に遺棄 ようはずもない。 すべし、それは殺人罪を構成せず、と航宙法第条に定められてい 特に俺は我ながら好色な方だと思うし、これから目的地のカペラるのを、きみは知らなかったのかと云ってるんだ」 市へ着くまで、びろい宇宙にたったひとり、女っ気はおろかカマつ「知らなかったわ」 シティ
いちばん自信があるもの、それは声と : : : 戌田飴」 司会の仕事が多いせいか、黒杣 徹子は司会者だと思っていらっ しやる方か多いようてすけど、 个ョはダンスだって楽器だって いろいろてきるのよ。ても、 いちばん自信があるのは声。 から、ノドの健康にはすごーく 気を使うの。 徹子より愛をこめて。 つ = 冱鴈 ノドのおくすり材 ( ま田織 雑誌 01975 ー 6
「ななななな」 云わせれば、それをやってはじめて、長距離輸送パイロットとして 俺は唾をのみこみ、もう一度呼吸をととのえて、やっと気をしずはヒョコから一人前になるのだ、ということになる。俺はこれま 6 めた。考えてみれば、この無邪気な、のんきな声でしゃべっているで、たまたま運よく狂信的な密航者に俺の可愛い船を狙われずにす 娘は、かェアロックを開くまで、あと数分の生命しかないのだ。 んできた。 彼女は自分が何をしでかしたのか、まだビンと来ていないのにちが しかし、ついにそうせねばならなくなったとき、それがよりによ いない。あるいは、おそらく、例の悪質なデマーーー輸送会社は密航って若くて愚かな、軽々しくていかにも罪のない娘であゑという 者を殺さない、どこかへつれていって監禁するだけだ、という のは、予想しなかったことではないとはいえ最悪たった。そうだ、 を盲信しているのだろう。だが、そんな流刑星などはどこにもないと俺はふいに望みをかけて、思い出したささいな事実にすがりつい のだ。かわいそうだが彼女は死ななければならない。その若さで、た。ありていにいって、若くて声がよくて、いかにもかわいいしゃ べりかたをするからといって、彼女が美人である、とは限らんでは どこだか知らないが故郷 ( おそらくは、彼女自身のわけはないか 、、 0 ′し、カ ら、彼女の両親か、あるいはもっと前の先祖が生まれたところとい うていどにちがいない ) をひと目見たい、という美しいが愚かな感何となく、俺は頭から、若くて声がいいから美人だろうと決めこ 傷を抱いた、というだけの罪で。 んでいた。やはりトム・ゴドウインの悪影響で、こういう悲劇的な 彼女がいくつで、何という名だか、できればその顔やすがたも、状況におちいる悲運の少女といえば、美しくてきやしやで清純で悲 何もかも知らずにすませたいものだ、と俺は切実に思った。さっしく愚かで、いつまでもパイロットの胸をいたませる美少女に決ま き、重量超過のブザーが鳴ったとき、すべてをコンビータにまか っている、と思いこんでいたのだ。 せてしまえばよかった。そうしなかったのは、やはり、これまで一 しかし、現実は小説より奇なりだ。密航は美人がするとは限らな 度も〈お客さん〉に会ったことがなかったためについこちらもビン 。プスだって後ろ美人だって兄さんに会いたくなることはあるだ と来なかったのと、それとやはり、同じ人間として一人のうら若いろう。マリリン・クロスが一一〇ポンドでなく、二一〇ポンドあっ 少女が罪もなく死んでゆこうとしているのに、それを冷たい機械のたら、それでも。 ハートンはあんなに親切にしてやったかしら、と俺 死刑執行人にゆだねるのはあまりにも非情だ , ーーせめて、同じ人間は考えた。あるいは、十八でなく、八十一だったら。 である俺の手で、涙ながらに、人間としての尊厳を保ちつつ彼女を たしかにいま俺の当面している問題の事物は声はい、。 しかし、 死出の旅路につかせてやろう、という、これも美しいがしかし愚か声美人ということだってあるし、美人、ないし十人並にせよ、まっ な感傷があったのだろう。 たく俺の好みではない、ということだって ートンより 同じ人間としてーー俺は、ふいに、俺がいまや冗談ごとではなくそれに、俺は思い出した。もしかしたら、俺の方が・ ( 彼女を殺さねばならないのだ、ということに気づいた。先輩たちに分がいいかもしれない。なぜなら、さっきコイヒュータから知らさ
とっぜん背後に新しい声が加わったーー・大たちが追跡に参加したあたりで尽きる。男はこれから先も追ってくるだろうか ? 何も聞 のだ。女は顔をしかめ、スビードを上げた。灰色の大きな影が横かこえない。狼が現われ、陽のあたる岩棚にさし招いた。狼は鼻先を ら近づき、停止すると一本の木のそばで後足をあげ、つぎの木でもっかって女を所定の位置にすわらせると、ジャケットの前を広げた。 また同じことをした。女はほほえみ、。ヘースをゆるめた。 女はせつなげに声を震わせて歌いだし、笑い声でしめくくった。 それからまもなく、狼のしるしを嗅きつけて、大たちの声の調子こだまが止まぬうちに、女は狼に押されて岩場をかけおり、前の が変わった。男のどなり声、キャンキャンという鳴き声。以後、大キャンプ地を通りすぎた。狼はすぐに追いついたが、歯を見せて笑 の声はふつつり途絶えた。 いながら横っとびに消え、あとにはひとり、伸びゆく影をつつきっ 女は走りつづけた。登り坂なので、いまでは早足、小走りだって走る女が残された。うしろをふりかえると、すでに男の赤みがか た。真昼の太陽が頭上から照りつける。かねて用意しておいた第一つたからだが岩場をはねていた。つきしたがう犬の姿はなかった。 の地点に、息も絶えだえにたどりつく。木立ちの中をゆく灰色のか走るうち、足元は闇につつまれ、あたりはたそがれの色に染まっ たちに一警をくれ、わきにとびのいて、そのまま斜面をのばった。 た。たそがれは月明かりに変わった。狼は彼女の先を歩いている。 うしろで鋭い叫びが起こった。ついで穴に落ちこんだ男のうなり曲がった尻尾を高々とあげ、その旗をたよりに彼女は平原を進ん 声、もがく音。女は死んだ蟻塚にもたれかかった。木々はまばらに・こ。 ナここはかっての山羊の土地。イ・ハラが茂みをつくり、山羊が姿 なり、吹く風が疲れを運び去ってゆく。 を消したいま、いたるところで若芽を吹きだしている。 狼が現われ、不機嫌に鼻先をしやくった。女はからだを回し、風しばらくのち狼は女に歩くことを許し、自分もときおり止まっ にむかって駆けだした。木々の梢の上に、はるかに周辺の岩山の青て、うしろの足音に耳をすますようになった。ここではほかに物音 い稜線が見える。早足、小走り。男はいまでは視界に彼女をとらはない。 え、追いせまっていた。 彼らはとうとう足をとめた。狼は霧のように音もなく消え、やが 十分引きつけたうえで、また向きを変えると、うしろで枝の・ほきてばたばたともどると、女をとあるイ・ハラの茂みにみちびいた。彼 ぼき折れる音と怒り狂った叫びが起こった。からだを休めたときに女はそこではじめて・フーツを脱ぎ、水を飲み、がつがっ食らい、ま は、狼がかたわらにいた。人とけものは、衰えた突風のあいまに伝た水を飲んだ。そのあいだ狼は女の足のぐあいを調べながら、それ わってくる激闘の音に聞きいった。やがて女は自発的に走りだしをなめた。だが自分の背負い革を外させようとはせず、女の髪を解 た。つきはなせないことは明らかだった。狼はあたりに目を配りな くこともせず、送信機を出す前に、すでにプーツをはかせていた。 がら、あとに残った。 「ひとり捕まえたわ。かなり頑健。ポンズはだいじようぶなの ? 」 最後の尾根にたどりつき、うしろをふりかえるころには、太陽は質問がこうるさく始まる。狼はスイッチを切り、女を地面に押し 地平線のほこりの中で黄色く輝いていた。野蛮人たちの小道はこの倒すようにして、ひからびたイ・ハラの屑に寝かせた。そして彼女の
合併号。人工授精が行われたのは昨年秋とみら子供は、親に続いてノーベル賞をもらえるようチスのようなことになりかねない」 な業績を上げる保証があるわけではないし、東「人類は、自然に生まれ、さまざまな人間が集 れ、もう出産は間近である。 グラハム氏は「将来は年に百人のペースにし大卒の親から生まれた子が東大へ必ず入れるわまった多様性のある社会がよいものである」 「だいたいノーベル賞受賞者という高齢者の精 . 冫ーし力なしよ、つ・た。 けでもないから、そう単屯こま、 たい」と意気盛んである。 液では、生きが悪く、奇型児などが生まれる危 これに対し、反対の声は多い ところが、この精液銀行の存在が公になって 以来、あちこちから、さまざまな反応の声が上「生命誕生の領域にまで人工の手を加えること険性が高まる」 こうした、さまざまな反対の声の中に混じっ は、人間の尊厳をそこなうものだ」 がってきた。 て、精液銀行の名称に使われている当のマラー まず「ノーベル賞学者の精子をもらえば、秀「意図的に人間改良を進めて行くことになり、 ーマン・マラーの文字を 皿才が生まれるのは間違いないから、将来の入試知能の低い者や身体の不自由な人は排除しよう博士の未亡人から「 ( 使ってもらっては困る」とのクレームがつい Ⅷ地獄に頭を悩ますことがなくなる」と賛成の声という恐ろしい思想につながる」 「かって、優秀なドイツ民族を作ろうとしたナた。 が上がった。とはいっても、ノーベル賞学者の 皿 グラハム氏は、マラー博士が健在だった十数 年前、精液銀行について議論し、ようやくその 夢を現実のものとしたという。 しかし、マラー未亡人によると、そのときマ ラー博士は、精液提供者の「知性」だけでなく る 「人間性」を重視しなければならないとの意見 ~ 、れ氏 。さムを持っていて、グラハム氏の計画に参加するこ ′とをやめたという。マラー未亡人は「夫の計画 保ラ がグが悪者の手に渡って実現された」となげき「ハ , 液ぐ ーマン・マラー」の名前は取り除いてほしいと 〉精そ のそ非難しているわけである。 ・「者を このように議論が高まっているが、すでに牛 、賞素 受窒の精液の場合行われているように、冷凍保存ど ン 賞体ころか錠剤にまでなって、希望のタイプの精液 ル液 べに錠剤を手軽に買える時代がくるかも知れない。 イ 一器やはり、そこまで行きつくことを考えると、空 ノ容 恐ろしく「科学の進歩だ」などといっておれな いような気がする。 「子はさずかりもの」といわれるように、やは 7 り自然の成り行きにまかせるのが、最も自然ロ で、いい方法といえそうだ。
れた、超過重量のデータは、「六十五・七キ」だ 0 た。俺はど 0 れは規則なんだ。そしておれ自身が生きのびるためでもある」 ちかといえばすごいグラマーよりもスリムで可憐な大場久美子タイ「そんなーー」 プが好みなのだ。それに、すごいグラ 1 とい 0 ても、どこに肉が声が、途絶えた。俺は、彼女がわあ , と泣き出すかと思 0 て、身 がまえた。俺は、女の涙がいつもひどく苦手だったことを、突然に どうついているかで、ずいぶん違って来るはずだ。 よかろう、と俺は思 0 た。そう考えると、いくぶん気が楽にな 0 思い出したのだ。 だが、そのふるえるような哀切なすすり泣きは、有難いことに、 た。要するに彼女がわるいのだ。あれほどの、政府と宇宙輸送機関 いつまでたっても俺の耳に届きはしなかった。そのかわりに、ある 団体連合会、略して輸団連の死物狂いの努力と警告と哀願をおしき 0 て、平然と立入厳禁の船舶に密航した。そのつぐないは彼女がし意味では泣かれるよりも 0 とず 0 と耐えがたい、重苦しすぎる静寂 なければならない。この積荷が届かないと、カ。〈ラ市の開拓団が全が、俺と彼女ーーあとは、生命もない、冷たい積荷しかない、殺風 滅するかもしれないのだ。でなくとも、必死の開拓事業がもう = 一景な倉庫をおしつつんだ。 年、遅れるのはたしかだ。彼女を殺すのは俺ではない。それは航宙恐怖のあまり、失神してしま 0 たのじゃないだろうか , ー、ふ 0 法三十七条であり、非情で非人間的な宇宙の冷たい方程式の答えでと、そんな不安にとらわれて、俺が足を踏み出そうとしたときだ。 「そんなーー」 しかないのだ。 彼女のシレッとした声がきこえてきた。 「よし。では、もう話しあう必要はない」 俺は声を大きくし、むりにあくまでも冷たい調子を作ろうとしな「そんなこと、あなたはできないわよ。あなたはしやしないわよ。 そんなことは」 がら云った。 「たとえ君がすなおに反省してくれたところで、もう遅いんだ。お「ところが、できるし、しなけりやいけないんだ。どうも、かわい くないな、お前は」 れは、君を艇外に遺棄しなければならん。これは、航宙法第三十七 パイロヅトに定められた義務だからだ。ほんとうは、こ俺は怒 0 て云 0 た。 条により、 んなに長いこと話したりしないで、発見と同時にそうしていなけれ「悲劇の 0 インなら、も 0 と切なげな声を出したり、泣きくずれ とに ばならなか 0 た。それが、君のしでかしたことの当然の報いなのてみたらどうだ。体重は六十六キ 0 もあるし、ー・、まあ、いい ここへ出てきてみろ。ただし、おれが銃をかまえ かく、出てこい てることを忘れるんじゃないそ。おれは正規の戦闘訓練も受けて 「艇外にーーー遺棄 ? 」 る。それも覚えとけ。さあ、出てこい」 彼女は、一瞬息をのんだようだった。 「出ていっていいの」 「それはどういうこと ? 」 「出てこいと云ってるんだ」 「君は、死ななくちゃならんということさ、密航者君。いいか、こ 6
合都市の中枢 : ・ : ・といえば聞こえはいいが、早い話が堡礁を削って「何もない。ケイトは関係ない。ただ行きたくなっただけだ。もう 無理矢理つくりあげた工場島。ほとんどの作業はロポットまかせ聞かないでくれ」 そのまま研究室を出て、その足でジェフは手続きをとりに大学本 で、人間様はごく僅かしかいない所なんだぞ」 部へ行ってしまったのである。図書館には寄りもせずに。 「わかっている」 彼はポトルを取ってジンをだぶだぶとグラスにそそぎ、あおるよ 「わかっているって、何をわかっている。 リーフなんかでおまえさんがどんな仕事をするというんうにして喉に流し込んだ。焼けつく刺激に涙をうかべ、それを左手 の拳でぬぐってつぶやいた。 「何もない。ケイトは関係ないだって ? 」 「ロポット管理局付の検査工場指導者さ。 先月の末に前任者が辞めて、太平洋開発省が後任を捜しているん待て。 思い出すな。 そこで止めろ。 ヒューツとロ笛を吹き、相手は声を落とした。 ・ e のマスターになろうという男が、検査工場の指導者だ頭の片隅にそう命ずる声が起ぎたのを知り、しかしすでにそれは 不可能だと悟って、彼はもう一度ジンをあおり、涙を噴き出させ と。何とまあ、これはいったい 指導者とはロポットに対しての名称であり、その実体が単なる保た。 守係であることは誰でも知っている。建設中と完成直後は別とし身体がカッと熱くなり、思わず立ちあがって叫んでいた。 て、 リーフへ行こうなどという人間は、無能者か変り者か、そうで「えいくそ、なぜ忘れられん」 なければ離島手当がめあての胡散臭い奴らと、相場が決っているの そして壁の笑顔にむかって言った。 である。・ 「まだ図書館にいるだと ? まだミスだと ? なぜだ。どうしてそ ・のマスターならば、当然本土のカリフォルニア んなことをする。おまえはカナダへ行くんじゃなかったのか。カナ の、太平洋開発省実施統轄局に勤めてしかるべきなのだ。 「いったいどうした。何があった ? 」 ダへ行って : : : そしてミセスに : 「何もない」 あんなフォトははずしてしまえ。はずして叩き破って、火の中に 「ないわけがない。なければおかしい」 投げ込んでしまえ。 黙り込んだジェフを見つめ、相手は言った。 頭の隅からの声を聞きながら、ジェフはちらりとこうも思ってい 「ケイトとうまくいかなかったのか ? 」 と、いままでに何度決めかけたことか のろのろとソフアに腰をおろし、彼はまた、テープルの上の封筒 「それで逃げだそうというわけか ? 」 9 3
ニ - 声ト、ー 連載最終回 メチル・メタフィジー アラララの 吾妻ひておいい 今日は私たちの 学校に新しい 先生か来る日だ ヤバ、ス 新しい先生が 来るのよ 外界人の前では けっして飛んたり してはためー みんな 降りてー 降りてー
か細いキーキー声の応答。 冷たい静まりかえった大地が明るくなるころ、人影は山の頂きに フォーク の・ほった。青白い岩の上で、その姿は黒い肉さしを思わせた。細す「いま頂上。川は西へ約五キロ。下に小道が見える。雨期からあと 3 ぎる体。蛇のようななで肩。それは頂きの下の低木の茂みに沈むは、だれも通っていないみたい。大の声がしていた。暗くなるまで ここで待って、それから無線の影にはいるわ。出たら知らせます。 と、小さな顔を空にむけ、ふたたびうずくまった。 頂きをめぐるように、影が走った。大型の大。ちがう、大きな雄たぶん、あさっての夜ね」 の狼だ。けものは、人のいるすぐ上の岩場にふらりとおり、動きを はじめより大きなキーキー声。女性の声だ。狼はロをあけ、若い とめた。ふさふさした尾の不自然な線が、古い骨折のあとを物語っ女はロもとに笑みをうかべた。 ている。夜はみるまに明けていったが、西の谷はまだ闇の中にあ「いつも気をつけてるわよ。 パトロール、発信終り」 る。谷間からかすかな遠吠えがあがり、まもなく止んだ。 狼はスイッチを切ると、頭を低くし、女のプーツの先を歯でそっ 大と見まがう狼の姿が山の背から消え、人のうずくまる茂みのわとくわえた。腕のない女はきやしゃな足をプ 1 ツから抜き、自由の きに現われた。人影が頭をたれた。狼が近づく。暁の光のなかで大きく足指を冷たい光のなかで屈伸させた。もう一方のプーツが脱け 歯がきらりと光る。狼は首をひねるようにしてかみつき、黒っぱい たところで、女は両足指を使って、狼の分厚い毛の上の背負い皮か キャップをくわえ取った。 ら・ハックをはずした。狼は巨体を思いきり伸ばすと、寝そべり、濃 明るい色の髪が、頭のひとふりで溢れだし、流れた。狼はキャッ いクリーム色の下腹を見せてころがった。 プを落とし、すわると、胸もとの何かが気になるそぶりを見せた。 女は糧食のパックと水筒を足指で取りだした。起きだした狼が、 陽が空にのぼった。岩場の下のすきまにいる人影は、いまではは岩のわきの泉に水筒を運び、前足で支えて流れ落ちる水をためた。 つきりと見えた。きめの粗いジャケットとズボン姿の若い女が、キ食事が始まった。女はあおむけに寝て、顔の上にぶらさげた水筒か ャップの下から髪をふりだしたところ。ジャケットの両肩はパッドら水を飲んだ。女が一度、むせて笑いだした。狼は女の頭をこづ で終わっている。腕の部分はない。女に腕らしいものはなかった。 き、女は膝に顔をのめりこませた。食事のあとは運動の時間だっ フォコそ 腕がまったく欠けていた。アザラシ体だ。女は狼のそばにすわっ た。あたりはすでに昼の明るさで、太陽は針金に吊るされたよう た。朝日のなかで見る狼は、頭が肥大し、奇妙にカールした毛におに、東の丘陵地帯からまっすぐ空にの・ほってゆく。日の出とともに おわれていた。 風が起こり、岩だらけの尾根をヒュルヒュルと吹きすぎた。 狼は小さな物体を取りだし、女の前にある岩の上においた。両者狼は腹ばいのまま頂きに行き、しばらく観察したあと、女のとこ はむかいあう形になった。朝日が狼の眼に黄色く照り映え、女の眼ろにもどった。彼らは茂みをまわりに集めると、ラテライトの岩棚 に青く照り映えた。前足が物体の上にのび、かちりと音がした。 の上に寄りそってからだを丸めた。 「ハトロールから基地へ」女が低くささやく。 高くなった日ざしが、肌寒い風をつらぬいて照りつける。鳥の姿
永井さんのは、テー・フを買う金がなくて録音できせんか。特に関西の人はあまり出演しなかったと ませんでした。 8 思う。しかし、 ( ここで深呼吸をして ) 僕は願 もう、中島さんの美しいお声を聞くことができう、もう一度、新しく、もっと充実して、再び 野 ないなんて、あまりに悲しすぎます。それに今岡〈・ハラエティ〉が帰ってくることを。 さんのお声も : ・ ( そういえば、最後の中島さんと今岡さんの会話『ラゴンの俘囚』『辺境の王者』を早くだしてく は、いつものお二人とちがって発音に活気がなく ださい。②どこかに〈— Z 〉ファ 島 て、鼻がつまったような声でした ) ンクラ・フはないのですか。 西 ( 刪盛岡市山岸四ー二七ー二一佐藤公俊 ) ( 東京都蔦飾区金町三ー一九ー八野崎岳彦 ) 町 この数カ月というの、を手にして最初 五月号の「てれ・ほーと」襴で最近ヒロイック・フ 郡 アンタジイばっかし読んでいると云った人がいるに見るべージはと言えば、吾妻ひでお氏の「メチ 基 レ・メタフィジーク」でも野田さんの「センス・ が、大賛成、僕もこのごろヒロイック・ファンタノ ジイにくるっとる。やはり、これは高千穂遙サンオプ・ワンダーランド」でもなく、何をかくそう 県 と栗本薫サンのせいなのだ。特に栗本サンの〈早川書房の新刊広告の。ヘージなのであります。 賀 いやあ、しかし実にうれしい。五月号を見て飛 — Z << 〉はすごい。今、『 / スフェラ 佐 スの戦い』を読み終えたのだが、この三巻まで、びあがって喜びました。ついに出るんだ、あの ら一う . 一フ : : : 。長 . いこレ」待 一巻のあのポルテージが全く下がっていないのだ「ダーテイベア」が ! ナカし力あったというもんだ。五月発売とは待 から。さらに、ラストの美しさは『豹頭の仮面』っこ、 : 、 のラストにまさるともおとらないものであった。ち遠しい話ではあるが、何はともあれ、めでたい ハッキリいって、このシリーズはこのところのことだ。 界で最大の事件ではないだろうか。もうこの一一一安彦さんも、おからだに気をつけてがんばって 中 巻までで、栗本サンは目ざしているコナンをも越下さい。大いに期待してます。それから、続篇も えているような気がする。 どんどん書いて下さい、高千穂さん。 唐突ですが、僕はこの栗本サンと高千穂サン、 閑話休題、ポリス・ヴィアンはおもろいから、〒札幌市中央区南十一一条西一三塩田隆明気付 そして川又千秋サンを加えてーー亀和田サンを真みんな読まなあかんで、ほんまに。 北海道ファングルー。フ連絡会 似てーートリオ・ザ・エンターティナーと呼んで では、大学も決まったことやし〈空想科学セー います。 カッ〉でも楽しむことにしますか。 Good luck! 大島弓子フェスティバル さて、話はどんどん変わるが、なんと ! 〈 ( 大阪府泉南郡阪南町箱作一五六九ー七〇 「綿の国星が見えるかい」 ・ハラエティ〉が終ってしまった。僕、この番組 益田裕文 ) 日時五月一日 ( 木 ) ~ 五月七日 ( 水 ) 場所池袋西武特別催時場 / 原画展・レコー 間が短いという欠点を持ちながらも、それなりに北海道ファングルーブ連絡会連絡紙創刊 ドコンサート・近況写真展 充実していたと思う。それが終ってしまうなんて在道ファングループの連携と相互発展を意図し五月三日 ( 土 ) 十三時よりスタジオ二 OO 橋 。これからは梓サンの声が聞けない。 て組織された当会は、このたび連絡紙を創刊する本治村上知彦激論会「大島弓子をめぐって」 のミッドナイトショーでは顔を見られますが ) そにあたり、個人の購読会員をあわせて募集しま五月四日 ( 日 ) 十二時 ~ 十三時屋上特設ステ れに、もっと登場してほしかった作家もいる。す。頒価は送料共、一期 ( 五回分 ) 一口で四百 ージにてクイズ大会 / 十三時 ~ 十六時大島弓 作家はまだまだたくさん残っているじゃありま円。御希望の方は、為替にて左記まで。 子サイン会